説明

車両の電力線のノイズ低減方法及び車両の電力線に使用されるコネクタ

【課題】 車両の電力線においてAMラジオ周波数帯のノイズを低減する方法を提供する。
【解決手段】電力線は、2本の活線12とそれらの活線12を覆うシールド線13とからなり、活線12及びシールド線13はトロイダルコア15に挿入されている。活線12にノイズが流れると、シールド線13に逆向きのノイズ電流が流れるので、コンポーネント14内部の活線12とグランド間に流れるノイズ電流を少なくできる。これにより、電力線を通ってコンポーネント14に伝導されるAMラジオ周波数帯のノイズを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電力線のノイズ低減方法及びその電力線に使用されるコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車では、高圧バッテリから供給される電流をモータ駆動回路や、モータ駆動回路からモータに供給するための電力線が使用されている。電力線を介してスイチングノイズが電力線を流れる電流に重畳され、そのノイズが低圧系の電源線、あるいは信号線に伝搬する。そのため、電力線の活線をシールド線で覆うことが行われている。
【0003】
特許文献1には、機器の外部に露出するケーブルから放射されるノイズを低減するために、シールドケーブルを使用すること、あるいはそのシールドケーブルにトロイダルコアを挿入して輻射ノイズを低減することが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、コネクタ付き信号伝送ケーブルにおいて、シールド編組の末端を折り返して、コネクタ内部に挿入したトロイダルコアを覆うことでノイズ低減効果を高めることが記載されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、ACインレットソケットタイプのノイズフィルタでシールドケースを有するタイプとシールドケースを有しないタイプの部品を共用できるようにすることが記載されている。
【特許文献1】特開平2−82695号公報
【特許文献2】特開2004−31291号公報
【特許文献3】実開平5−77881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した電力線の活線をシールド線で覆う方法は、活線の輻射ノイズを抑制する効果はあるが、低い周波数、例えば、中波と呼ばれる帯域、数MHz以下のAMラジオ周波数帯のノイズを抑制する効果は少ない。
【0007】
特許文献2には、コネクタ内部にトロイダルコアを挿入する構造が開示されているが、その目的は、ケーブルのシールド線に流れるコモンモード電流を抑制して、30MHz〜数GHzの高い周波数帯での輻射ノイズを低減することである。
【0008】
低い周波数帯のノイズを低減するためには、輻射ノイズより電線を通して伝導されるノイズを低減させる必要があるが、特許文献2に記載の発明はそのような課題を解決するものではない。
【0009】
本発明の課題は、車両の電力線のAM周波数帯のノイズを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、車両の各コンポーネントに電力を供給する電力線のノイズ低減方法であって、前記電力線は活線と該活線をシールドするシールド線とからなり、前記電力線を前記コンポーネントに接続するときに、トロイダルコアに前記活線とシールド線を挿入し、前記活線を通って前記コンポーネントに伝導されるAMラジオ周波数帯のノイズが、前記シールド線を通って帰還されるようにした。
【0011】
この発明によれば、活線に流れるノイズをシールド線を通って帰還させることで、活線に流れるノイズ電流とシールドを流れる帰還電流により、ノイズ成分は相対的にキャンセルされて、電力線に流れるノイズ成分が低減される効果が得られる。これにより、コンポーネント側のAMラジオ周波数帯のノイズを低減し、ラジオチューナ等におけるAM信号のノイズを減らすことができる。
【0012】
本発明は、車両の各コンポーネントに電力を供給する電力線に使用されるコネクタであって、トロイダルコアをインサート成形し、活線と該活線をシールドするシールド線からなる電力線が前記トロイダルコアを貫通するような構造とし、車両の電力線に使用される。
【0013】
この発明によれば、コネクタにインサートしたトロイダルコアにより電力線を通ってコンポーネントに伝導されるAMラジオ周波数帯のノイズを低減できる。さらに、成形時にトロイダルコアの内周部を樹脂で覆うことでシールド線との絶縁を確保することができるので、トロイダルコアに絶縁膜等を形成する作業が不要となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車両の電力線からコンポーネントに伝導されるAMラジオ周波数帯のノイズを低減することができる。また、コネクタにトロイダルコアをインサートすることで電力線にトロイダルコアを挿入する作業が不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態の車両の電力線のノイズ低減方法の説明図である。
電力線は、図1に示すように、例えば、2本の活線12とそれらの活線12を覆うシールド線13とからなる。電力線は、例えば、ハイブリッド車の高圧バッテリ(例えば、200V〜400Vのバッテリ)とモータ駆動回路等のコンポーネント14との間、あるいはモータ駆動回路とモータ等のコンポーネント14間の電力の供給に使用される。
【0016】
活線12とシールド線13の一端にはコネクタ11が接続され、活線12とシールド線13の他端にはコンポーネント14が接続される。なお、図1の活線12及びシールド線13は、電力線の断面を模式的に示したものである。
【0017】
コネクタ11は、例えば、高圧バッテリに接続され、高圧バッテリから供給される大電流が2本の活線12に流れる。活線12及びシールド線13はトロイダルコア15に挿入されており、トロイダルコア15により活線12とシールド線13との結合を高めている。
【0018】
2本の活線12の端部は、コンポーネント14の内部でそれぞれコンデンサC1を介して接地されており、シールド線13の端部はコンポーネント14のグランドに接地されている。また、シールド線13の他端部は、コネクタ11を介して高圧バッテリのグランドに接続される。コンポーネント14には、低圧系の電源線やAM、FM受信機の信号線等が接続されている。
【0019】
ここで、トロイダルコア15を使用しない場合に、コンポーネント14内部の活線12に流れるノイズについて説明する。
トロイダルコア15が無い状態では、コネクタ11を介して高圧バッテリに接続される活線12には、スイチング回路で発生するスイチングノイズが重畳されている。活線12に重畳されたノイズ電流は、コンポーネント14内部のコンデンサC1を通ってグランドに流れ込む。このノイズ電流は、コンポーネント14内部の配線の結合容量等を介して低圧系の電源線、あるいは信号線に伝導される。すなわち、コンポーネント14内部の電源線及び信号線には、比較的低い周波数、例えば数MHz以下のノイズ電流が流れる。これにより、AMラジオ周波数帯のノイズが発生する。
【0020】
これに対して、活線12及びシールド線13をトロイダルコア15に挿入してコンポーネント14に接続すると、活線12を流れるノイズ電流と同じ大きさで、電流の方向が逆の電流がシールド線13に誘起される。これは、活線12を流れるノイズがシールド線13を通ってコネクタ11側に帰還されることと等価である。
【0021】
従って、活線12に流れるノイズ電流とシールド線13を流れる帰還電流により、ノイズ成分は相対的にキャンセルされて、電力線に流れるノイズ成分が低減される効果が得られる。これにより、コンポーネント14の内部・外部にかかわらず、電力線に並走する低圧系の電源線及び信号線に伝導されるAMラジオ周波数帯のノイズを低減することができる。
【0022】
次に、図2は、本発明の第2の実施の形態のトロイダルコアを内蔵したコネクタ21を示す図である。
コネクタ21は、成形時にトロイダルコア22がインサートされ、同時にトロイダルコア22の内周部に樹脂が注入されている。
【0023】
電力線をコネクタ21に接続するときには、活線12とその活線12を覆うシールド線13の一端をトロイダルコア22の内部に挿入し、コネクタ21の電極(図示せず)と電気的に接続する。活線12とシールド線13の他端は、図1と同様にコンポーネント14に接続される。
【0024】
上記のようにコネクタ21の内部にトロイダルコア22をインサートしておくことで、活線12とシールド線13をコネクタ21と接続することで、活線12とシールド線13をトロイダルコア22を貫通させることができる。これにより、上述した第1の実施の形態と同様なAMラジオ周波数帯のノイズの低減効果を得ることができる。
【0025】
さらに、この第2の実施の形態は、コネクタ21に活線12とシールド線13を接続するだけで、それらの線をトロイダルコア22を貫通させたことになるので、配線を行う際に電力線にトロイダルコア22を挿入する作業が不要となる。
【0026】
また、コネクタ21にトロイダルコア22をインサート成形するときにトロイダルコア22の内周部に樹脂を注入することで、シールド線13との絶縁を確保することができる。これにより、トロイダルコア22とシールド線13の絶縁を確保するために、トロイダルコア22の内周部に絶縁膜を形成する等の作業が不要となり、その分部品コストを低減できる。
【0027】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、例えば、以下のように構成しても良い。
コネクタ21にインサートするトロイダルコア22は、リング状の一体の形状のものに限らず、分割された複数のコアをコネクタ21にインサートして全体としてリング状の形状となるようにしても良い。
【0028】
電力線の活線の本数は、実施の形態に示した2本に限らず任意の本数で良い。
また、バッテリは、200〜400Vのものに限らず、より低圧あるいは高圧のバッテリであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1の実施の形態のノイズ低減方法の説明図である。
【図2】第2の実施の形態のコネクタを示す図である。
【符号の説明】
【0030】
11、21 コネクタ
15,22 トロイダルコア
12 活線
13 シールド線
14 コンポーネント


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の各コンポーネントに電力を供給する電力線のノイズ低減方法であって、
前記電力線は活線と該活線をシールドするシールド線とからなり、
前記電力線を前記コンポーネントに接続するときに、トロイダルコアに前記活線とシールド線を挿入し、前記活線を通って前記コンポーネントに伝導されるノイズが、前記シールド線を通って帰還されるようにした車両の電力線のノイズ低減方法。
【請求項2】
車両の各コンポーネントに電力を供給する電力線に使用されるコネクタであって、
トロイダルコアをインサート成形し、活線と該活線をシールドするシールド線からなる電力線が前記トロイダルコアを貫通するような構造とした車両の電力線に使用されるコネクタ。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−120950(P2006−120950A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308653(P2004−308653)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】