説明

車両の電動パワーステアリング装置の取付構造

【課題】 車体フレーム等の製造誤差に影響を受けず、締結手段の締結方向を考慮した車両の電動パワーステアリング装置取付構造を提供する。
【解決手段】 車体フレーム11、詳しくは、サブ傾斜フレーム46,47にアクチュエータユニット77を支持するモータブラケット97,97をそれぞれ設け、これらのモータブラケット97,97にアクチュエータユニット77を締結するボルト154,155を備え、ボルト154,155を、ステアリングシャフト38と直交させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電動パワーステアリング装置の取付構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両の電動パワーステアリング装置の取付構造として、ステアリングシャフトを上下に分割し、これらの上下のシャフトの間に電動式パワーステアリング装置を介在させ、車体フレームにブラケットを介して電動式パワーステアリング装置の上面を取付けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第2663454号公報
【0003】
特許文献1を以下に説明する。
特許文献1の第2図に示される通り、ステアリングシャフト7の上部7aは上部側フレームパイプ101で支持され、ステアリングシャフト7の下部7bは下部側フレームパイプ102で支持され、これらの上部7aと下部7bとの間に電動式パワーステアリング装置8を設け、上部側フレームパイプ101に設けたブラケット9にボルトで電動式パワーステアリング装置8が取付けられる。
ボルトの締め付け方向は、ステアリングシャフト7の延びる方向と同一である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動式パワーステアリング装置8は、上部側フレームパイプ101に取付けたブラケット9で支持されるが、上部側フレームパイプ101及びブラケット9の製造誤差によっては、ブラケット9と電動式パワーステアリング装置8側の取付面とに隙間が出来たり、あるいは、ブラケット9の取付部が電動式パワーステアリング装置8側の取付面よりも下方に位置してブラケット9への電動式パワーステアリング装置8の取付が困難になることがある。また、電動式パワーステアリング装置8には、操舵力のアシスト時に、ステアリングシャフト7の回りに回転力が発生するが、この回転力を回転方向に直交するボルトで支えることになり、ボルトにせん断力が発生するため、ボルトの締結方向の変更が望まれる。
【0005】
本発明の目的は、車体フレーム等の製造誤差に影響を受けず、締結手段の締結方向を考慮した車両の電動パワーステアリング装置の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車体フレームにステアリングシャフトを回転自在に取付け、このステアリングシャフトの上部にハンドルを取付けるとともに、このステアリングシャフトの途中にアクチュエータユニットが設けられた車両の電動パワーステアリング装置の取付構造において、車体フレームにアクチュエータユニットを支持する支持部材を設け、この支持部材にアクチュエータユニットを締結する締結手段を備え、締結手段を、ステアリングシャフトと直交させたことを特徴とする。
【0007】
締結手段とステアリングシャフトとを直交させることで、ステアリングシャフト組付け時に、ステアリングシャフトの軸中心が左右方向にずれた場合には、アクチュエータユニットも左右にずれることになる。このような場合であっても、車体フレームの寸法精度を高くすることなく、即ち、車体フレームの製造誤差に影響を受けずに、アクチュエータユニットを確実に車体フレームで支持することができる。締結手段には、引張又は圧縮の方向の力のみが作用することになる。
【0008】
請求項2に係る発明は、アクチュエータユニットに、支持部材に対応する位置に締結手段によって締結される締結穴を備え、締結手段を、支持部材と締結穴とを車幅方向に貫通するボルトとしたことを特徴とする。
【0009】
締結手段をボルトとして簡素化したにも拘わらず、ボルトを弛めたり締め付けたりする回転方向とステアリングシャフトの回動方向とが異なるため、ステアリングシャフトの回動時にボルトの回転方向に力が掛からない。
【0010】
請求項3に係る発明は、アクチュエータユニットに、支持部材に対応する位置に締結手段によって締結される締結穴を備え、この締結穴を、側面視でアクチュエータユニットのほぼ重心に配置したことを特徴とする。
アクチュエータに備える締結穴に締結手段を締結し、支持部材にアクチュエータユニットを締結することで、アクチュエータユニットの重心に作用する力を支持部材で効率良く受ける。
【0011】
請求項4に係る発明は、アクチュエータユニットに、電動モータを覆うモータハウジングと、ステアリングシャフトに電動モータの回転を伝えるウォームギヤを覆うウォームギヤハウジングと、電動モータハウジングとウォームギヤハウジングとを連結する継手ハウジングとを備え、締結穴を、継手ハウジングに設けたことを特徴とする。
【0012】
継手ハウジングで重量物である電動モータを支持しつつ、ステアリングシャフトの回動に伴って電動モータがステアリングシャフト回りに回動しないようにする。継手ハウジングは、電動モータハウジングとウォームギヤハウジングとを連結する部分であるから、内側に電動モータとウォームギヤとを連結する連結部材が通るだけであり、締結穴を設ける壁を形成し易い。
【0013】
請求項5に係る発明は、ステアリングシャフトのうちのアクチュエータユニットの下方を車体フレームで支持するとともにステアリングシャフトを回転自在に支持する軸受支持部材を備え、軸受支持部材と支持部材とを車体フレームを構成する同一の構成部材に設けたことを特徴とする。
軸受支持部材と支持部材とを車体フレームを構成する同一の構成部材に設けたことで、アクチュエータユニットを支持する複数の支持部材同士の組付精度が高まる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明では、車体フレームにアクチュエータユニットを支持する支持部材を設け、この支持部材にアクチュエータユニットを締結する締結手段を備え、締結手段を、ステアリングシャフトと直交させたので、ステアリングシャフト組付け時に、ステアリングシャフトの軸中心が左右方向にずれてアクチュエータユニットが左右にずれた場合であっても、車体フレームの寸法精度を高くすることなく、アクチュエータユニットを確実に車体フレームで支持することができる。
【0015】
また、ボルトの締め付け方向がアクチュエータに発生する回転力の方向にほぼ一致するので、ボルトにはほとんど引張、圧縮の方向の力しか発生しないため、せん断力が発生せず、ボルトの長寿命化を図ることができる。
【0016】
請求項2に係る発明では、締結手段を、支持部材と締結穴とを車幅方向に貫通するボルトとしたので、締結手段をボルトとして簡素化したにも拘わらず、ボルトを弛めたり締め付けたりする回転方向とステアリングシャフトの回動方向とが異なるため、ステアリングシャフトの回動時にボルトの回転方向に力が掛からず、ボルトの締結を良好に保つことができる。
【0017】
請求項3に係る発明では、締結穴を、側面視でアクチュエータユニットのほぼ重心に配置したので、アクチュエータユニットに作用する力を支持部材で効率良く支持することができる。
【0018】
請求項4に係る発明では、アクチュエータユニットに、モータハウジングと、ウォームギヤハウジングと、電動モータハウジングとウォームギヤハウジングとを連結する継手ハウジングとを備え、締結穴を、継手ハウジングに設けたので、継手ハウジングで重量物である電動モータを支持しつつ、ステアリングシャフトの回動に伴って電動モータがステアリングシャフト回りに回動しないようにすることができる。継手ハウジングは、電動モータハウジングとウォームギヤハウジングとを連結する部分であるから、内側に電動モータとウォームギヤとを連結する連結部材が通るだけであり、締結穴を設ける壁を形成し易くすることができる。
【0019】
請求項5に係る発明では、ステアリングシャフトのアクチュエータユニットの下方にステアリングシャフトを回転自在に支持する軸受支持部材を備え、軸受支持部材と支持部材とを車体フレームを構成する同一の構成部材に設けたので、アクチュエータユニットを支持する複数の支持部材同士の組付け精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る電動パワーステアリング装置を備える不整地走行車両の側面図であり、不整地走行車両10は、車体フレーム11の中央部にエンジン12及び変速機13からなるパワーユニット14を搭載し、変速機13の前部にフロントプロペラシャフト16を介してフロント終減速装置17を連結し、このフロント終減速装置17に図示せぬドライブシャフトを介して左右の前輪18,18に連結し、変速機13の後部にリヤプロペラシャフト21を介してリヤ終減速装置22を連結し、このリヤ終減速装置22に図示せぬドライブシャフトを介して左右の後輪23,23を連結し、前輪18,18を操舵する操舵力を軽減する電動パワーステアリング装置24を備えた四輪駆動車である。
【0021】
車体フレーム11は、前後に延ばした左右一対のアッパメインフレーム31,32(手前側の符号31のみ示す。)と、これらのアッパメインフレーム31,32の前端にそれぞれ連結した正面視逆U字形状のフロントフレーム33と、このフロントフレーム33の下端及びアッパメインフレーム31,32の中間部のそれぞれに連結した左右一対のロアメインフレーム34,36(手前側の符号34のみ示す。)と、上端にハンドル37を取付けたステアリングシャフト38の上部を回転自在に支持するためにフロントフレーム33の上端及びアッパメインフレーム31,32のそれぞれに連結した左右一対のくの字形状のフロントアッパフレーム41,42(手前側の符号41のみ示す。)と、アッパメインフレーム31,32の前端から後下がりにロアメインフレーム34,36に連結した左右一対の傾斜フレーム43,44(手前側の符号43のみ示す。)と、これらの傾斜フレーム43,44の中間部及びフロントフレーム33のそれぞれに渡して連結することで電動パワーステアリング装置24の下部を支持する左右一対のサブ傾斜フレーム46,47(手前側の符号46のみ示す。)とを備える。
【0022】
ここで、55はフロントキャリア、56は前輪18の上方及び後方を覆うフロントフェンダ、57は燃料タンク、58はシート、61はリヤキャリア、62はエンジン12のシリンダヘッド63の後部側に連結したキャブレタ、66はキャブレタ62にコネクティングチューブ67を介して連結したエアクリーナ、68はシリンダヘッド63の前部から車両後方に延ばした排気管、69は排気管68の後端に接続した消音器、71はロアメインフレーム34,36側に対して後輪23,23をスイング自在に支持するスイングアーム、72,72(手前側の符号72のみ示す。)はスイングアーム71とアッパメインフレーム31,32側とに渡して取付けた左右一対のリヤクッションユニット、73はパワーユニット14の側方に配置したボディサイドカバー、74は後輪23の前方及び上方を覆うリヤフェンダ、75はステップフロアである。
【0023】
図2は本発明に係る不整地走行車両の要部側面図(図中の矢印(FRONT)は車両前方を表す。以下同じ。)であり、電動パワーステアリング装置24は、前輪を操舵するためのステアリング装置81と、このステアリング装置81を構成するステアリングシャフト38の途中に設けたアクチュエータユニット77と、図示せぬ制御部とからなり、アクチュエータユニット77は、アクチュエータハウジング78に、操舵トルクを検出するトルクセンサ部(不図示)と、操舵力を補助する動力を発生させるパワーアシスト部83とを設けたものである。制御部は、トルクセンサ部によって検出した操舵トルク等に基づいてパワーアシスト部83を制御する。
【0024】
ステアリング装置81は、ハンドル37(図1参照)と、このハンドル37を支持するインプットシャフト85と、このインプットシャフト85にトルクセンサ部を介して連結したアウトプットシャフト86と、このアウトプットシャフト86の下端部に取付けたステアリングアーム87と、このステアリングアーム87に取付けた左右一対のボールジョイント88,88(手前側の符号88のみ示す。)と、これらのボールジョイント88,88にそれぞれ一端を連結するとともに他端を前輪18(図1参照)側のナックル(不図示)に連結する左右一対のタイロッド(不図示)とからなり、上記のインプットシャフト85とアウトプットシャフト86とは、ステアリングシャフト38を構成する部材である。
【0025】
インプットシャフト85は、2箇所で支持した部材であり、一方の支持は上部軸受部90で行い、他方の支持は、上部軸受部90の下方に位置する中間軸受部91で行う。
上部軸受部90は、左右のフロントアッパフレーム41,42(手前側の符号41のみ示す。)に渡した支持ブラケット92に2本のカラー95,95を介してボルト98,98で取付けたものであり、インプットシャフト85を回転自在に支持するラジアルベアリング(滑り軸受)90aと、このラジアルベアリング90aを挟んで保持する一対のベアリング保持部材90b,90cとからなる。
【0026】
中間軸受部91は、サブアッパフレーム89,89(手前側の符号89のみ示す。)に取付けた中間ベアリング支持ブラケット(不図示。詳細は後述する。)で支持したものである。
【0027】
サブアッパフレーム89,89は、フロントアッパフレーム41,42とアッパメインフレーム31,32(手前側の符号31のみ示す。)とにそれぞれ渡した部材である。
アウトプットシャフト86は、左右のサブ傾斜フレーム46,47(手前側の符号46のみ示す。)に取付けた下部ベアリング支持ブラケット101で下部軸受部102を介して支持したものである。
【0028】
トルクセンサ部は、インプットシャフト85側とアウトプットシャフト86側との間にトーションバー(不図示)を設けたものである。
ハンドル37(図1参照)の操作によりインプットシャフト85を回転させると、インプットシャフト85とアウトプットシャフト86との間に相対回転角が生じ、トーションバーが捩られる。この捩れ量をトルクに変換することで操舵トルクが求まる。
【0029】
パワーアシスト部83は、電動モータ96と、この電動モータ96の出力軸及びアウトプットシャフト86のそれぞれの間に介在させたクラッチ(不図示)及び減速機(不図示。ウォームギヤ及びウォームホイールからなる。)とで構成した部分である。
【0030】
電動モータ96は、前端部側(アウトプットシャフト86側)をサブ傾斜フレーム46,47に設けたモータブラケット97,97(手前側の符号97のみ示す。)に取付けたものである。
【0031】
制御部は、トルクセンサ部により検出された操舵トルク、舵角センサにより検出された舵角、不整地走行車両10(図1参照)の車速等に基づいてパワーアシスト部83を制御する。
【0032】
アクチュエータユニット77の下方には、フロント終減速装置17が位置するため、本発明では、電動パワーステアリング装置24のステアリングシャフト38の全長を短くして小さなスペースに電動パワーステアリング装置24を配置した。
【0033】
図3は本発明に係る不整地走行車両の要部平面図であり、アクチュエータユニット77に備える電動モータ96を車両後方に延びるように配置し、強制空冷ファン101を、電動モータ96の後方に配置するとともにエンジン12及び排気管68の前方に配置したことを示す。なお、103は前輪18,18(図1参照)用の左右のフロントクッションユニットのそれぞれの上端を支持するためにフロントフレーム33の上部に車幅方向に延びるように取付けたクロス部材である。
【0034】
電動モータ96は、エンジン12及び排気管68との間を強制空冷ファン101によって完全に遮蔽されるから、電動モータ96を車両後方に延びるように配置して電動モータ96とエンジン12、排気管68との距離が小さくなっても、エンジン12及び排気管68からの直接の放射熱が電動モータ96に当たる心配がない。
【0035】
図4は本発明に係る電動パワーステアリング装置支持構造を示す断面図(一部側面図)であり、インプットシャフト85は、アクチュエータユニット77から突出させたロアシャフト104と、中間軸受部91に支持されるとともにロアシャフト104に連結したアッパシャフト105とからなる。アッパシャフト105は、ハンドルを支持するアッパパイプ107と、このアッパパイプ107の下端部に取付けた下端連結部材108とからなる。
【0036】
中間軸受部91は、中間ベアリング支持ブラケット111にボルト(不図示)で着脱自在に取付けたアッパベアリングホルダ112と、下端連結部材108を回転自在に支持するためにアッパベアリングホルダ112に取付けた自動調心式のボールベアリング113と、このボールベアリング113をダスト等から保護するためのシール部材114,116とからなる。なお、118はアッパベアリングホルダ112からのボールベアリング113の抜け止めを行う止め輪である。
【0037】
下端連結部材108は、上部に車両後方に突出する後方突出部121を一体に設け、下部に、ナット部材122にねじ結合するためのおねじ123と、ロアシャフト104の外周面に設けたおすセレーション124に結合するめすセレーション126と、先端部に設けたスリット127とを形成した部材である。
【0038】
後方突出部121は、ハンドルを介して下端連結部材108を回転させたときに、アッパベアリングホルダ112に設けたストッパ(不図示)に当たる部分であり、ハンドルの切れ角を所定角度範囲に規制するものである。
【0039】
ナット部材122は、そのめねじ128をおねじ123にねじ込むことで先端122aをボールベアリング113に押し当てたものである。
スリット127は、ロアシャフト104と下端連結部材108とをセレーションにて結合した状態で、下端連結部材108の外周面を締付け部材131で締め付けたときに、そのスリット127の幅が狭くなるようにして締め付け力が有効に作用するようにした部分である。なお、133,134は締付け部材131に設けた締め付け用のボルト及びナットである。
【0040】
下部軸受部102は、サブ傾斜フレーム46,47で支持した下部ベアリング支持ブラケット101の中央部に取付けたロアベアリングホルダ136と、アウトプットシャフト86を回転自在に支持するためにロアベアリングホルダ136にカラー137を介して取付けたボールベアリング138と、このボールベアリング138をダスト等から保護するためのシール部材141,142とからなる。なお、144はロアベアリングホルダ136からボールベアリング138及びカラー137の抜け止めを行う止め輪である。
【0041】
ロアベアリングホルダ136は、前部にアウトプットシャフト86にほぼ沿って下側に突出する下方突出部136aを形成したものであり、ハンドルを切ってアウトプットシャフト86を所定角度回転させたときに、下方突出部136aにステアリングアーム87に設けた側方突出部(不図示)が当たり、アウトプットシャフト86の回転角度範囲が規制される。即ち、下方突出部136aは、アウトプットシャフト86の回転角度範囲を規制するストッパとなる。
【0042】
ステアリングアーム87は、アウトプットシャフト86の端部にナット146で取付けた部材であり、このステアリングアーム87の内周面に形成しためすセレーション147をアウトプットシャフト86の下端部に形成したおすセレーション148に結合し、ステアリングアーム87に一体的に設けたナット部151にボールジョイント(不図示)を取付け、このボールジョイントを前輪側とタイロッド(不図示)で連結する。なお、153はモータブラケット97にボルト(不図示)で電動モータを取付けるときに、そのボルトをねじ込むめねじである。
【0043】
図中に示した黒丸は、アクチュエータユニット77の重心150であり、モータブラケット97の上方に且つモータブラケット97の近傍に位置する。即ち、モータブラケット97,97(手前側の符号97のみ示す。)をアクチュエータユニット77の重心150の近傍に配置することで、アクチュエータユニット77の重量をモータブラケット97,97で効率良く支持することができ、中間軸受部91及び下部軸受部102によるアクチュエータユニット77の支持負担を軽減することができる。
【0044】
アクチュエータハウジング78は、トルクセンサ部を収納したセンサハウジング161と、アウトプットシャフト86に設けたウォームホイールに噛み合うウォームギヤを収納したウォームギヤハウジング162と、電動モータ96のハウジングとなるモータハウジング163と、このモータハウジング163をウォームギヤハウジング162に連結するためにウォームギヤハウジング162側に設けた継手ハウジング164とを備える。
【0045】
継手ハウジング164は、側面にめねじ153,153(手前側の符号153のみ示す。)を設け、ウォームギヤハウジング162に収納したウォームギヤと、モータハウジング163に収納したモータ本体の回転軸とを連結する継手を収納した部分である。
【0046】
図5は本発明に係る電動パワーステアリング装置の支持構造を示す説明図であり、インプットシャフト85の軸線方向から見た図である。
電動パワーステアリング装置24のアクチュエータユニット77は、電動モータ96のモータハウジング163の両側面176,178にそれぞれめねじ153を開け、ボルト154,155を、左右のモータブラケット97,97に開けたボルト挿通穴(不図示)に通した後にそれぞれめねじ153,153にねじ込んで取付けたものである。なお、181は右側のモータブラケット97とモータハウジング163との間に介在させるとともにボルト155に被せた筒状のカラー部材である。
【0047】
アクチュエータユニット77は、図4に示したように、その上方及び下方を中間軸受部91及び下部軸受部102で回転自在に支持されるから、図5において、電動モータ96を車体フレーム11側に取付けない状態では、ステアリングシャフト38を中心にして自由にスイングできる状態にある。従って、そのようなアクチュエータユニット77のスイングを、そのスイング方向とほぼ直交する面を有するモータブラケット97,97によって止めるように車体フレーム11側に取付けることで、アクチュエータユニット77を無理なく支持することができる。また、ボルト154,155はアクチュエータユニット77のスイング方向のほぼ接線方向に延びるから、アクチュエータユニット77の作動時に発生する回転力はボルト154,155に引張又は圧縮の方向の力として作用するから、この力をボルト154,155で支障なく受けることができる。
【0048】
電動モータ96は、ウォームギヤハウジング162側から車両後方に延ばしたものであり、電動モータ96の回転軸の軸線184は、車両前後方向に延びる車体中心線185と平行で、軸線184上に電動モータ96の重心187がある。電動モータ96は重量物であるから、電動モータ96の重心187が車体中心線185から離れていると、車体の重心が車体の左側に寄ることになるが、車体の車体中心線185より右側には、この電動モータ96の重量とほぼ同等な重量物を搭載するため、車体の重心をほぼ車体中心線185上に配置することが可能になる。
【0049】
以上の図4及び図5で説明したように、本発明は第1に、車体フレーム11にステアリングシャフト38を回転自在に取付け、このステアリングシャフト38の上部にハンドル37を取付けるとともに、このステアリングシャフト38の途中にアクチュエータユニット77が設けられた車両の電動パワーステアリング装置24の取付構造において、車体フレーム11、詳しくは、サブ傾斜フレーム46,47にアクチュエータユニット77を支持する支持部材としてのモータブラケット97,97(手前側の符号97のみ示す。)を設け、これらのモータブラケット97,97にアクチュエータユニット77を締結する締結手段としてのボルト154,155を備え、ボルト154,155を、ステアリングシャフト38と直交させたことを特徴とする。
【0050】
ステアリングシャフト38の組付け時に、ステアリングシャフト38の軸中心が左右方向にずれてアクチュエータユニット77が左右にずれた場合であっても、車体フレーム11の寸法精度を高くすることなく、アクチュエータユニット77を確実に車体フレーム11で支持することができる。
【0051】
本発明は第2に、アクチュエータユニット77に、モータブラケット97,97に対応する位置にボルト154,155によって締結される締結穴としてのめねじ153,153を備え、締結手段を、モータブラケット97,97とめねじ153,153とを車幅方向に貫通するボルト154,155としたことを特徴とする。
【0052】
締結手段をボルト154,155として簡素化したにも拘わらず、ボルト154,155を弛めたり締め付けたりする回転方向とステアリングシャフト38の回動方向とが異なるため、ステアリングシャフト38の回動時にボルト154,155の回転方向に力が掛からず、ボルト154,155の締結を良好に保つことができる。
【0053】
本発明は第3に、アクチュエータユニット77に、モータブラケット97,97に対応する位置にボルト154,155によってねじ結合されるめねじ153,153を備え、これらのめねじ153,153を、側面視でアクチュエータユニット77の重心150の近傍に配置したことを特徴とする。
【0054】
めねじ153,153を、側面視でアクチュエータユニット77のほぼ重心150に配置したので、アクチュエータユニット77の重心150に作用する力をモータブラケット97,97で効率良く支持することができる。
【0055】
本発明は第4に、アクチュエータユニット77に、電動モータ96を覆うモータハウジング163と、ステアリングシャフト38に電動モータ96の回転を伝えるウォームギヤを覆うウォームギヤハウジング162と、モータハウジング163とウォームギヤハウジング162とを連結する継手ハウジング164とを備え、めねじ153,153を、継手ハウジング164に設けたことを特徴とする。
【0056】
継手ハウジング164で重量物である電動モータ96を支持しつつ、ステアリングシャフト38の回動に伴って電動モータ96がステアリングシャフト38の回りに回動しないようにすることができる。継手ハウジング164は、モータハウジング163とウォームギヤハウジング162とを連結する部分であるから、内側に電動モータ96のモータ本体の回転軸とウォームギヤとを連結する連結部材である継手が通るだけであり、めねじ153を設ける壁を形成し易くすることができる。
【0057】
本発明は第5に、ステアリングシャフト38のうちのアクチュエータユニット77の下方を車体フレーム11に支持されるとともにステアリングシャフト38を回転自在に支持する軸受支持部材としてのロアベアリングホルダ136を備え、ロアベアリングホルダ136とモータブラケット97,97とを車体フレーム11を構成する同一の構成部材としてのサブ傾斜フレーム46,47に設けたことを特徴とする。
【0058】
ロアベアリングホルダ136は下部ベアリング支持ブラケット101を介して、モータブラケット97,97は直接に、同一のサブ傾斜フレーム46,47に設けたので、アクチュエータユニット77を支持する複数の支持部材136,97,97同士の組付け精度を高めることができる。
【0059】
尚、本実施形態では、図5に示したように、車体フレーム11に左右のモータブラケット97,97を設けたが、これに限らず、電動モータ96に近い側のモータブラケット97のみを設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の電動パワーステアリング装置取付構造は、不整地走行車両に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る電動パワーステアリング装置を備える不整地走行車両の側面図である。
【図2】本発明に係る不整地走行車両の要部側面図である。
【図3】本発明に係る不整地走行車両の要部平面図である。
【図4】本発明に係る電動パワーステアリング装置支持構造を示す断面図である。
【図5】本発明に係る電動パワーステアリング装置の支持構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0062】
10…車両(不整地走行車両)、11…車体フレーム、24…電動パワーステアリング装置、37…ハンドル、38…ステアリングシャフト、46,47…構成部材(サブ傾斜フレーム)、77…アクチュエータユニット、96…電動モータ、97…支持部材(モータブラケット)、136…軸受支持部材(ロアベアリングホルダ)、150…アクチュエータユニットの重心、153…締結穴(めねじ)、154,155…締結手段(ボルト)、162…ウォームギヤハウジング、163…モータハウジング、164…継手ハウジング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームにステアリングシャフトを回転自在に取付け、このステアリングシャフトの上部にハンドルを取付けるとともに、このステアリングシャフトの途中にアクチュエータユニットが設けられた車両の電動パワーステアリング装置の取付構造において、
前記車体フレームに前記アクチュエータユニットを支持する支持部材を設け、この支持部材に前記アクチュエータユニットを締結する締結手段を備え、
前記締結手段は、前記ステアリングシャフトと直交することを特徴とする車両の電動パワーステアリング装置の取付構造。
【請求項2】
前記アクチュエータユニットは、前記支持部材に対応する位置に前記締結手段によって締結される締結穴を備え、
前記締結手段は、前記支持部材と前記締結穴とを車幅方向に貫通するボルトであることを特徴とする請求項1記載の車両の電動パワーステアリング装置の取付構造。
【請求項3】
前記アクチュエータユニットは、前記支持部材に対応する位置に前記締結手段によって締結される締結穴を備え、
この締結穴は、側面視で前記アクチュエータユニットのほぼ重心に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の電動パワーステアリング装置の取付構造。
【請求項4】
前記アクチュエータユニットは、前記電動モータを覆うモータハウジングと、前記ステアリングシャフトに前記電動モータの回転を伝えるウォームギヤを覆うウォームギヤハウジングと、前記電動モータハウジングと前記ウォームギヤハウジングとを連結する継手ハウジングとを備え、
前記締結穴は、前記継手ハウジングに設けられることを特徴とする請求項2記載の車両の電動パワーステアリング装置の取付構造。
【請求項5】
前記ステアリングシャフトのうちの前記アクチュエータユニットの下方を車体フレームで支持するとともに前記ステアリングシャフトを回転自在に支持する軸受支持部材を備え、
この軸受支持部材と前記支持部材とは前記車体フレームを構成する同一の構成部材に設けられることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の車両の電動パワーステアリング装置の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−281847(P2006−281847A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101142(P2005−101142)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】