説明

車両の電動パワーステアリング装置支持構造

【課題】 車両の電動パワーステアリング装置支持構造を改良することで、ステアリングシャフトを短縮するとともに軽量とし、更に、組付性を向上させる。
【解決手段】 ステアリングシャフト38を、車体フレームに複数のベアリングとしてのラジアルベアリング90a(不図示)、ボールベアリング113,138を介して支持し、これらのベアリング90a,113,138の少なくとも1個、即ち、ボールベアリング113を自動調芯式とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電動パワーステアリング装置支持構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両の電動パワーステアリング装置支持構造として、電動パワーステアリング装置の上方及び下方をベアリングで支持したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−231011公報
【0003】
特許文献1を以下に説明する。
特許文献1の図4に示される通り、ステアリングシャフト50は、上側シャフト50aと、下側シャフト50bとをユニバーサルジョイント51で連結したものであり、上側シャフト50aは、左右のアッパパイプ18に渡した上ブラケット53にシャフト支持部材52を介して回転自在に取付けられ、下側シャフト50bは、前クロスパイプ23の左右のフロントサス支持部23bに渡した下ブラケット54にギヤケース55を介して回転自在に取付けられる。
ユニバーサルジョイント51は、シャフト支持部材52とギヤケース55との間に配置される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユニバーサルジョイント51は一対のヨークを備えるため、ステアリングシャフト50の全長が長くなる。また、電動パワーステアリング装置及びステアリングシャフト50を車体フレームに組付ける場合、まず、下側シャフト50bをギヤケース55と共に下ブラケット54に仮組付し、次に、下側シャフト50bに連結したユニバーサルジョイント51の上端を上側シャフト50aに連結することになるが、ユニバーサルジョイント51の上部は屈曲するから、そのユニバーサルジョイント51の上部を押さえながら、上側シャフト50aを連結しなければならず、組付性が劣る。更に、ユニバーサルジョイント51を用いることで、単なるシャフトを用いるのに比べて重くなる。
【0005】
本発明の目的は、車両の電動パワーステアリング装置支持構造を改良することで、ステアリングシャフトを短縮するとともに軽量とし、更に、組付性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車体フレームにステアリングシャフトを回転自在に取付け、このステアリングシャフトの上部にハンドルを取付け、ステアリングシャフトの途中にアクチュエータユニットを設けた電動パワーステアリング装置を備える車両において、ステアリングシャフトを、車体フレームに複数のベアリングを介して支持し、これらのベアリングの少なくとも1個を自動調芯式としたことを特徴とする。
【0007】
ステアリングシャフトとアクチュエータユニットとを連結するときに、これらのステアリングシャフト及びアクチュエータユニットの互いの軸の相対的な傾きを自動調芯式ベアリングで吸収するから、ステアリングシャフト及びアクチュエータユニットの組付が無理なく行え、従来のようなユニバーサルジョイントは必要ない。
【0008】
請求項2に係る発明は、ベアリングのうちの一対を、アクチュエータユニットの近傍の上方及び下方に配置したことを特徴とする。
アクチュエータユニットの近傍の上方及び下方をそれぞれベアリングで支持し、アクチュエータユニットの支持を確実にする。
【0009】
請求項3に係る発明は、自動調芯式ベアリングを、アクチュエータユニットよりも上方に配置したことを特徴とする。
アクチュエータユニットの軸をステアリングシャフトと連結し、ステアリングシャフトを自動調芯式ベアリングで支持するときに、自動調芯式ベアリングがステアリングシャフトの傾きを吸収する。
【0010】
請求項4に係る発明は、ベアリングをホルダで保持し、このホルダを車体フレーム側にボルトで着脱自在に取付けたことを特徴とする。
ベアリング及びホルダの組立体を、車体フレーム側にボルトで締め付けて取付ける、あるいは車体フレーム側からボルトを弛めて取外すので、組付性が向上する。
【0011】
請求項5に係る発明は、ステアリングシャフトとアクチュエータユニットとをセレーションにより結合したことを特徴とする。
セレーションでは、歯のピッチを細かく設定することが可能で、ステアリングシャフト側とアクチュエータユニット側との結合の位相を調整し易い。
【0012】
請求項6に係る発明は、自動調芯式ベアリングを、ステアリングシャフト下端に配置したことを特徴とする。
ステアリングシャフト下端を自動調芯式ベアリングで支持するときに、自動調芯式ベアリングがステアリングシャフトの傾きを吸収する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、ベアリングの少なくとも1個を自動調芯式としたので、自動調芯式ベアリングでステアリングシャフトの組付時の傾きを吸収することができ、従来のようなユニバーサルジョイントが不要になり、コストを低減するとともにステアリングシャフト及びアクチュエータユニットの組付性を向上させることができる。また、ユニバーサルジョイントを必要としないために、ステアリングシャフトを短くすることができるとともにステアリングシャフトの軽量化を図り、コストを削減することができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、ベアリングのうちの一対を、アクチュエータユニットの近傍の上方及び下方に配置したので、アクチュエータユニットを上下の二箇所で挟むように支持することができ、ベアリングによりアクチュエータユニットの支持をより確実に行うことができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、自動調芯式ベアリングを、アクチュエータユニットよりも上方に配置したので、例えば、アクチュエータユニットの上方と下方とをステアリングシャフトで連結するとともにボールベアリングで支持する場合、アクチュエータユニットを下方のベアリングに組付けた後に、アクチュエータユニットの上方のベアリングに組付けるときに、アクチュエータユニットの軸やステアリングシャフトが傾いていても組付を無理なく行うことができ、組付性を向上させることができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、ベアリングをホルダで保持し、このホルダを車体フレーム側にボルトで着脱自在に取付けたので、ベアリングとホルダとのアセンブリで車体フレーム側に取付ける、あるいは車体フレーム側から取外すことができ、組付性を向上させることができる。
【0017】
請求項5に係る発明では、ステアリングシャフトとアクチュエータユニットとをセレーションにより結合したので、セレーションによって、歯のピッチを細かく歯数を多くしてステアリングシャフトとアクチュエータユニットとの結合の位相を細かに調整することができる。
【0018】
請求項6に係る発明では、自動調芯式ベアリングを、ステアリングシャフト下端に配置したので、自動調芯式ベアリングでステアリングシャフトの傾きを吸収することができ、車体フレームに高い精度を求めることがなく、且つステアリングシャフトの組立てを容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る電動パワーステアリング装置を備える不整地走行車両の側面図であり、不整地走行車両10は、車体フレーム11の中央部にエンジン12及び変速機13からなるパワーユニット14を搭載し、変速機13の前部にフロントプロペラシャフト16を介してフロント終減速装置17を連結し、このフロント終減速装置17に図示せぬドライブシャフトを介して左右の前輪18,18に連結し、変速機13の後部にリヤプロペラシャフト21を介してリヤ終減速装置22を連結し、このリヤ終減速装置22に図示せぬドライブシャフトを介して左右の後輪23,23を連結し、前輪18,18を操舵する操舵力を軽減する電動パワーステアリング装置24を備えた四輪駆動車である。
【0020】
車体フレーム11は、前後に延ばした左右一対のアッパメインフレーム31,32(手前側の符号31のみ示す。)と、これらのアッパメインフレーム31,32の前端にそれぞれ連結した正面視逆U字形状のフロントフレーム33と、このフロントフレーム33の下端及びアッパメインフレーム31,32の中間部のそれぞれに連結した左右一対のロアメインフレーム34,36(手前側の符号34のみ示す。)と、上端にハンドル37を取付けたステアリングシャフト38の上部を回転自在に支持するためにフロントフレーム33の上端及びアッパメインフレーム31,32のそれぞれに連結した左右一対のくの字形状のフロントアッパフレーム41,42(手前側の符号41のみ示す。)と、アッパメインフレーム31,32の前端から後下がりにロアメインフレーム34,36に連結した左右一対の傾斜フレーム43,44(手前側の符号43のみ示す。)と、これらの傾斜フレーム43,44の中間部及びフロントフレーム33のそれぞれに渡して連結することで電動パワーステアリング装置24の下部を支持する左右一対のサブ傾斜フレーム46,47(手前側の符号46のみ示す。)とを備える。
【0021】
ここで、55はフロントキャリア、56は前輪18の上方及び後方を覆うフロントフェンダ、57は燃料タンク、58はシート、61はリヤキャリア、62はエンジン12のシリンダヘッド63の後部側に連結したキャブレタ、66はキャブレタ62にコネクティングチューブ67を介して連結したエアクリーナ、68はシリンダヘッド63の前部から車両後方に延ばした排気管、69は排気管68の後端に接続した消音器、71はロアメインフレーム34,36側に対して後輪23,23をスイング自在に支持するスイングアーム、72,72(手前側の符号72のみ示す。)はスイングアーム71とアッパメインフレーム31,32側とに渡して取付けた左右一対のリヤクッションユニット、73はパワーユニット14の側方に配置したボディサイドカバー、74は後輪23の前方及び上方を覆うリヤフェンダ、75はステップフロアである。
【0022】
図2は本発明に係る不整地走行車両の要部側面図(図中の矢印(FRONT)は車両前方を表す。以下同じ。)であり、電動パワーステアリング装置24は、前輪を操舵するためのステアリング装置81と、このステアリング装置81を構成するステアリングシャフト38の途中に設けたアクチュエータユニット77と、図示せぬ制御部とからなり、アクチュエータユニット77は、アクチュエータケース78に、操舵トルクを検出するトルクセンサ部(不図示)と、操舵力を補助する動力を発生させるパワーアシスト部83とを設けたものである。制御部は、トルクセンサ部によって検出した操舵トルク等に基づいてパワーアシスト部83を制御する。
【0023】
ステアリング装置81は、ハンドル37(図1参照)と、このハンドル37を支持するインプットシャフト85と、このインプットシャフト85にトルクセンサ部を介して連結したアウトプットシャフト86と、このアウトプットシャフト86の下端部に取付けたステアリングアーム87と、このステアリングアーム87に取付けた左右一対のボールジョイント88,88(手前側の符号88のみ示す。)と、これらのボールジョイント88,88にそれぞれ一端を連結するとともに他端を前輪18(図1参照)側のナックル(不図示)に連結する左右一対のタイロッド(不図示)とからなり、上記のインプットシャフト85とアウトプットシャフト86とは、ステアリングシャフト38を構成する部材である。
【0024】
インプットシャフト85は、2箇所で支持した部材であり、一方の支持は上部軸受部90で行い、他方の支持は、上部軸受部90の下方に位置する中間軸受部91で行う。
上部軸受部90は、左右のフロントアッパフレーム41,42(手前側の符号41のみ示す。)に渡した支持ブラケット92に2本のカラー95,95を介してボルト98,98で取付けたものであり、インプットシャフト85を回転自在に支持するラジアルベアリング(滑り軸受)90aと、このラジアルベアリング90aを挟んで保持する一対のベアリング保持部材90b,90cとからなる。
【0025】
中間軸受部91は、サブアッパフレーム89,89(手前側の符号89のみ示す。)に取付けた中間ベアリング支持ブラケット(不図示。詳細は後述する。)で支持したものである。
【0026】
サブアッパフレーム89,89は、フロントアッパフレーム41,42とアッパメインフレーム31,32(手前側の符号31のみ示す。)とにそれぞれ渡した部材である。
アウトプットシャフト86は、左右のサブ傾斜フレーム46,47(手前側の符号46のみ示す。)に下部ベアリング支持ブラケット101を介して下部軸受部102で支持したものである。
【0027】
トルクセンサ部は、インプットシャフト85側とアウトプットシャフト86側との間にトーションバー(不図示)を設けたものである。
ハンドル37(図1参照)の操作によりインプットシャフト85を回転させると、インプットシャフト85とアウトプットシャフト86との間に相対回転角が生じ、トーションバーが捩られる。この捩れ量を検出し、トルクに変換することで操舵トルクが求まる。
【0028】
パワーアシスト部83は、電動モータ96と、この電動モータ96の出力軸及びアウトプットシャフト86のそれぞれの間に介在させたクラッチ(不図示)及び減速機(不図示。ウォームギヤ及びウォームホイールからなる。)とで構成した部分である。
【0029】
電動モータ96は、前端部側(アウトプットシャフト86側)をサブ傾斜フレーム46,47に設けたモータブラケット97,97(手前側の符号97のみ示す。)に取付けたものである。
【0030】
制御部は、トルクセンサ部により検出された操舵トルク、舵角センサにより検出された舵角、不整地走行車両10(図1参照)の車速等に基づいてパワーアシスト部83を制御する。
【0031】
アクチュエータユニット77の下方には、フロント終減速装置17が位置するため、本発明では、電動パワーステアリング装置24のステアリングシャフト38の全長を短くして小さなスペースに電動パワーステアリング装置24を配置した。
【0032】
図3は本発明に係る不整地走行車両の要部平面図であり、アクチュエータユニット77に備える電動モータ96を車両後方に延びるように配置し、強制空冷ファン101を、電動モータ96の後方に配置するとともにエンジン12及び排気管68の前方に配置したことを示す。なお、103は前輪18,18(図1参照)用の左右のフロントクッションユニットのそれぞれの上端を支持するためにフロントフレーム33の上部に車幅方向に延びるように取付けたクロス部材である。
【0033】
電動モータ96は、エンジン12及び排気管68との間を強制空冷ファン101によって完全に遮蔽されるから、電動モータ96を車両後方に延びるように配置して電動モータ96とエンジン12、排気管68との距離が小さくなっても、エンジン12及び排気管68からの直接の放射熱が電動モータ96に当たる心配がない。
【0034】
図4は本発明に係る電動パワーステアリング装置支持構造を示す断面図(一部側面図)であり、インプットシャフト85は、アクチュエータ77から突出させたロアシャフト104と、中間軸受部91に支持されるとともにロアシャフト104に連結したアッパシャフト105とからなる。アッパシャフト105は、ハンドルを支持するアッパパイプ107と、このアッパパイプ107の下端部に取付けた下端連結部材108とからなる。
【0035】
中間軸受部91は、中間ベアリング支持ブラケット111にボルト(不図示)で着脱自在に取付けたアッパベアリングホルダ112と、下端連結部材108を回転自在に支持するためにアッパベアリングホルダ112に取付けた自動調芯式のボールベアリング113と、このボールベアリング113をダスト等から保護するためのシール部材114,116とからなる。なお、118はアッパベアリングホルダ112からのボールベアリング113の抜け止めを行う止め輪である。
【0036】
下端連結部材108は、上部に車両後方に突出する後方突出部121を一体に設け、下部に、ナット部材122にねじ結合するためのおねじ123と、ロアシャフト104の外周面に設けたおすセレーション124に結合するめすセレーション126と、先端部に設けたスリット127とを形成した部材である。
【0037】
後方突出部121は、ハンドルを介して下端連結部材108を回転させたときに、アッパベアリングホルダ112に設けたストッパ(不図示)に当たる部分であり、ハンドルの切れ角を所定角度範囲に規制するものである。
【0038】
ナット部材122は、そのめねじ128をおねじ123にねじ込むことで先端122aをボールベアリング113に押し当てたものである。
スリット127は、ロアシャフト104と下端連結部材108とをセレーションにて結合した状態で、下端連結部材108の外周面を締付け部材131で締め付けたときに、そのスリット127の幅が狭くなるようにして締め付け力が有効に作用するようにした部分である。なお、133,134は締付け部材131に設けた締め付け用のボルト及びナットである。
【0039】
下部軸受部102は、サブ傾斜フレーム46,47で支持した下部ベアリング支持ブラケット101の中央部に取付けたロアベアリングホルダ136と、アウトプットシャフト86を回転自在に支持するためにロアベアリングホルダ136にカラー137を介して取付けたボールベアリング138と、このボールベアリング138をダスト等から保護するためのシール部材141,142とからなる。なお、144はロアベアリングホルダ136からボールベアリング138及びカラー137の抜け止めを行う止め輪である。
【0040】
ロアベアリングホルダ136は、前部にアウトプットシャフト86にほぼ沿って下側に突出する下方突出部136aを形成したものであり、ハンドルを切ってアウトプットシャフト86を所定角度回転させたときに、下方突出部136aにステアリングアーム87に設けた側方突出部(不図示)が当たり、アウトプットシャフト86の回転角度範囲が規制される。即ち、下方突出部136aは、アウトプットシャフト86の回転角度範囲を規制するストッパとなる。
【0041】
ステアリングアーム87は、アウトプットシャフト86の端部にナット146で取付けた部材であり、このステアリングアーム87の内周面に形成しためすセレーション147をアウトプットシャフト86の下端部に形成したおすセレーション148に結合し、ステアリングアーム87に一体的に設けたナット部151にボールジョイント(不図示)を取付け、このボールジョイントを前輪側とタイロッド(不図示)で連結する。なお、153はモータブラケット97にボルト(不図示)で電動モータを取付けるときに、そのボルトをねじ込むめねじである。
【0042】
図5は本発明に係るステアリングシャフトを支持する上部軸受部の断面図であり、上部軸受部90は、インプットシャフト85に嵌合させたラジアルベアリング90aと、ベアリング保持部材90b,90cとからなり、ラジアルベアリング90aは、外周面90dを凸状の球面形状に形成した部材であり、この外周面90dにベアリング保持部材90b,90cの凹状の球面形状としたそれぞれの内周面90e,90fを滑り自在に嵌合させたものである。このように、上部軸受部90は、インプットシャフト85が所定の取付け状態に対して傾いて取付けられても、このインプットシャフト86の傾きを吸収可能な、自動調芯式のものである。
【0043】
このように、自動調芯式のラジアルベアリング90aを用いることで、車体フレーム11(図1参照)に高い寸法精度を求めることがなく、ステアリングシャフト38(図1参照)の組付けが可能となる。
【0044】
図6は本発明に係るステアリングシャフトの中間軸受部を示す斜視図であり、左右のサブアッパフレーム89,89に中間ベアリング支持ブラケット111を取付け、この中間ベアリング支持ブラケット111に中間軸受部91のアッパベアリングホルダ112を複数のボルト161で取付けたことを示す。
【0045】
アッパベアリングホルダ112は、ボールベアリング113(図4参照)を収納するものであるから、ボールベアリング113とアッパベアリングホルダ112との組立体を中間ベアリング支持ブラケット111に取付ける、あるいは、中間ベアリング支持ブラケット111から取外すことが容易にでき、組付性を向上させることができる。
【0046】
図7は図6の7矢視図であり、下端連結部材108及びアッパベアリングホルダ112を示す。
アッパベアリングホルダ112は、中央部に設けた筒部163と、この筒部163から一体に両側方に延ばしたプレート部164,165からなり、プレート部164,165に複数の取付穴166を開け、ボルト161を、各取付穴166に通し、中間ベアリング支持ブラケット111(図6参照)の下面に設けたナット(不図示)にねじ込んで、中間ベアリング支持ブラケット111にアッパベアリングホルダ112を取付ける。なお、171,172はストッパであり、下端連結部材108の後方突出部121を当てて、インプットシャフト85の回転角度範囲を規制する。
【0047】
図8は本発明に係る電動パワーステアリング装置支持構造の別実施形態を示す断面図(一部側面図)であり、図4に示した実施形態と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
インプットシャフト85を支持する中間軸受部181は、アッパベアリングホルダ112と、下端連結部材108を回転自在に支持するためにアッパベアリングホルダ112に取付けたボールベアリング182と、このボールベアリング182をダスト等から保護するためのシール部材114,116とからなる。
【0048】
アウトプットシャフト86を支持する下部軸受部185は、ロアベアリングホルダ136と、アウトプットシャフト86を回転自在に支持するためにロアベアリングホルダ136にカラー137を介して取付けた自動調芯式のボールベアリング186と、このボールベアリング186をダスト等から保護するためのシール部材141,142とからなる。
【0049】
ステアリングシャフト38の下端を支持するボールベアリング186を自動調芯式としたことで、車体フレーム11(図1参照)、詳しくは、サブ傾斜フレーム46,47の寸法精度が低い場合でも、ステアリングシャフト38を支障なく組付けることが可能となる。更に、ステアリングシャフト38の組付中、自動調芯式のボールベアリング186によってアウトプットシャフト86を正規の位置から傾けることができ、他の部材の組付けの邪魔にならないようにすることも可能になり、組付作業性を向上させることができる。
【0050】
以上の図1及び図4に示したように、本発明は第1に、車体フレーム11にステアリングシャフト38を回転自在に取付け、このステアリングシャフト38の上部にハンドル37を取付け、ステアリングシャフト38の途中にアクチュエータユニット77を設けた電動パワーステアリング装置24を備える不整地走行車両10において、ステアリングシャフト38を、車体フレーム11に複数のベアリングとしてのラジアルベアリング90a(図2参照)、ボールベアリング113,138を介して支持し、これらのベアリング90a,113,138の少なくとも1個、即ち、ボールベアリング113を自動調芯式としたことを特徴とする。
【0051】
ベアリング90a,113,138の少なくとも1個を自動調芯式としたので、自動調芯式ベアリング113でステアリングシャフト38の組付時の傾きを吸収することができ、従来のようなユニバーサルジョイントが不要になり、コストを低減するとともにステアリングシャフト38及びアクチュエータユニット77の組付性を向上させることができる。また、従来のユニバーサルジョイントが無くなるために、ステアリングシャフト38を短くすることができるとともにステアリングシャフト38を軽量にすることができる。
【0052】
本発明は第2に、ベアリングのうちの一対を、アクチュエータユニット77の近傍の上方及び下方に配置したことを特徴とする。
ベアリング90a,113,138のうちの一対のベアリング113,138を、アクチュエータユニット77の近傍の上方及び下方に配置したので、アクチュエータユニット77を上下の二箇所で挟むように支持することができ、ベアリング113,138によりアクチュエータユニット77の支持をより確実に行うことができる。
【0053】
本発明は第3に、自動調芯式ベアリング113を、アクチュエータユニット77よりも上方に配置したことを特徴とする。
自動調芯式ベアリング113を、アクチュエータユニット77よりも上方に配置したので、例えば、アクチュエータユニット77の上方と下方とをステアリングシャフト38で連結するとともにボールベアリグ113,138で支持する場合、アクチュエータユニット77を下方のベアリング138に組付けた後に、アクチュエータユニット77の上方のベアリング113に組付けるときに、アクチュエータユニット77の軸であるロアシャフト104やステアリングシャフト38の下端連結部材108が傾いていても組付を無理なく行うことができ、組付性を向上させることができる。
【0054】
本発明は第4に、図4及び図6に示したように、ボールベアリング113をアッパベアリングホルダ112で保持し、このアッパベアリングホルダ112を車体フレーム11側、即ち、中間ベアリング支持ブラケット111に複数のボルト161で着脱自在に取付けたことを特徴とする。
【0055】
ボールベアリング113をアッパベアリングホルダ112で保持し、このアッパベアリングホルダ112を車体フレーム11側にボルト161で着脱自在に取付けたので、ボールベアリング161とアッパベアリングホルダ112との組立体を車体フレーム11側に取付ける、あるいは車体フレーム11側から取外すことができ、組付性を向上させることができる。
【0056】
本発明は第5に、ステアリングシャフト38の端部連結部材108とアクチュエータユニット77側のロアシャフト104とをセレーションにより結合したことを特徴とする。
端部連結部材108とロアシャフト104とをセレーションにより結合したので、セレーションによって、歯のピッチを細かく歯数を多くして端部連結部材108とロアシャフト104との結合の位相を細かに調整することができる。
【0057】
本発明は第6に、図8に示したように、自動調芯式のボールベアリング186を、ステアリングシャフト38、詳しくは、アウトプットシャフト86の下端部に配置したことを特徴とする。
【0058】
自動調芯式のボールベアリング186を、ステアリングシャフト38の下端部に配置したので、自動調芯式のボールベアリング186でステアリングシャフト38の傾きを吸収することができ、車体フレーム11に高い精度を求めることがなく、且つステアリングシャフト38の組付けを容易に行うことができる。
【0059】
尚、本実施形態では、図4に示したように、アクチュエータユニット77の上方に位置するボールベアリング113を自動調芯式としたが、これに限らず、アクチュエータユニット77の上方のボールベアリング113とアクチュエータユニット77の下方のボールベアリング138との両方を自動調芯式としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の電動パワーステアリング装置支持構造は、四輪車に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る電動パワーステアリング装置を備える不整地走行車両の側面図である。
【図2】本発明に係る不整地走行車両の要部側面図である。
【図3】本発明に係る不整地走行車両の要部平面図である。
【図4】本発明に係る電動パワーステアリング装置支持構造を示す断面図である。
【図5】本発明に係るステアリングシャフトを支持する上部軸受部の断面図である。
【図6】本発明に係るステアリングシャフトの中間軸受部を示す斜視図である。
【図7】図6の7矢視図である。
【図8】本発明に係る電動パワーステアリング装置支持構造の別実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
10…車両(不整地走行車両)、11…車体フレーム、24…電動パワーステアリング装置、37…ハンドル、38…ステアリングシャフト、77…アクチュエータユニット、90a,113,138,182,186…ベアリング、90b,90c,112,136…ホルダ、113,186…自動調芯式のベアリング、124,126,147,148…セレーション、161…ボルト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームにステアリングシャフトを回転自在に取付け、このステアリングシャフトの上部にハンドルを取付け、ステアリングシャフトの途中にアクチュエータユニットを設けた電動パワーステアリング装置を備える車両において、
前記電動パワーステアリング装置に備えるステアリングシャフトは、前記車体フレームに複数のベアリングを介して支持され、これらのベアリングの少なくとも1個を自動調芯式としたことを特徴とする車両の電動パワーステアリング装置支持構造。
【請求項2】
前記ベアリングのうちの一対は、前記アクチュエータユニットの近傍の上方及び下方に配置されることを特徴とする請求項1記載の車両の電動パワーステアリング装置支持構造。
【請求項3】
前記自動調芯式ベアリングは、アクチュエータユニットよりも上方に配置されることを特徴とする請求項1記載の車両の電動パワーステアリング装置支持構造。
【請求項4】
前記ベアリングはホルダに保持され、このホルダを前記車体フレーム側にボルトで着脱自在に取付けたことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の車両の電動パワーステアリング装置支持構造。
【請求項5】
前記ステアリングシャフトと前記アクチュエータユニットとをセレーションにより結合したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項記載の車両の電動パワーステアリング装置支持構造。
【請求項6】
前記自動調芯式ベアリングは、前記ステアリングシャフト下端に配置されることを特徴とする請求項1記載の車両の電動パワーステアリング装置支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−281826(P2006−281826A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100789(P2005−100789)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】