説明

車両の電動パーキングブレーキシステム

【課題】荷重センサに主ばねと副ばねとを備えているものにおいて、パーキングブレーキの解除中に主ばね+副ばね特性から副ばね特性に変化した変化点を検出して、主ばねのゼロ位置を補正することによって、正確に目標引き力を制御することができること。
【解決手段】主ばね+副ばね特性から副ばね特性への変化点に対応したホールIC27の出力電圧Vsを主ばね24のゼロ点電圧Vs0に補正する。このゼロ点電圧Vs0にケーブル3の目標引き力のばね撓みに対応した電圧値ΔVを加算して目標引き力の電圧値Vtcとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキングブレーキの作動、解除をモータとケーブルにて電動で行なうようにした車両の電動パーキングブレーキシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パーキングブレーキの作動、解除をモータとケーブルにて電動で行なうようにした車両の電動パーキングブレーキシステムが提供されており、上記ケーブルには該ケーブルの張力(荷重)を検出するための荷重センサが介装されている。そして、この荷重センサからの出力電圧信号をフィードバックさせてモータを制御することで、パーキングブレーキの作動、解除を行なっている。
【0003】
この種の電動パーキングブレーキシステムとして、例えば、下記の特許文献1が挙げられる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−17158号公報
【0005】
この特許文献1において用いられている荷重センサ(力センサ)は、マグネットが固定されたシャフトと、このシャフトに対して往復動可能でマグネットとの相対変位に応じて出力電圧が変化するホールIC素子が固定されたケースと、シャフトとケース間に介装されてシャフトとケース間に作用する往復動方向の力に応じて弾性変形する主ばねを備えている。
そして、この荷重センサにおいては、主ばねの弾性変形量が略ゼロである状態でシャフトに対するケースの往復動方向にてシャフトのフランジ部と主ばねの一端部間、およびケースと主ばねの他端部間に隙間が生じないように予荷重を付与する副ばねが設けられている。
【0006】
この特許文献1ではかかる構成としていることで、主ばねの弾性変形量が略ゼロとなった時点で、ケースに対するシャフトの復動が副ばねの予荷重により止められて、マグネットとホールIC素子間の相対変位がなくなり、ホールIC素子の出力電圧が変化しなくなる。
かかる作動は、主ばねのヘタリが発生して主ばねの弾性変形方向での寸法が変化した場合においても同様に得られ、これにより、ホールIC素子の出力電圧が変化しなくなる時点を検出することで、力のリリースが完了して時点(力が略ゼロとなったとき)を正確に検出することが可能としている。そして、そのときにモータの逆回転駆動を停止させるように設定すれば、パーキングブレーキの過リリースを防止することが可能としている。
【0007】
また、この特許文献1では、パーキングブレーキに作用する力が略ゼロとなったことが検出されたときに荷重センサからの出力電圧を基準値として更新することで、荷重センサにおける主ばねのヘタリが発生した場合でも、パーキングブレーキを初期の制動状態とすることが可能としている。
【0008】
しかしながら、この特許文献1においては、主ばねだけに対してのホールIC素子の出力電圧が変化した時点で直ぐにモータを停止させるようにしているために、時間的に遅れが発生し、ケーブルの解除力(ケーブルの解き力)を正確に制御できないという問題を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述の問題点に鑑みて提供したものであって、荷重センサに主ばねと副ばねとを備えているものにおいて、パーキングブレーキの解除中に主ばね+副ばね特性から副ばね特性に変化した変化点を検出して、主ばねのゼロ位置を補正することによって、正確に目標引き力を制御することができる車両の電動パーキングブレーキシステムを提供することを目的としているものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明の請求項1に記載の車両の電動パーキングブレーキシステムでは、モータ11の正転駆動によりケーブル3を介してパーキングブレーキを作動状態とし、前記モータ11の逆転駆動により前記パーキングブレーキを前記ケーブル3を介して解除状態に制御するアクチュエータ2と、
前記パーキングブレーキに作用するケーブル3の荷重を検出する荷重センサ15と、
前記荷重センサ15からの出力電圧Vsに応じて前記モータ11の回転駆動を制御する制御装置1とを備え、
前記荷重センサ15は、前記ケーブル3の作動状態では弾性圧縮変形し、該ケーブル3の解除における開放状態では弾性圧縮変形量を略ゼロとする主ばね24と、前記ケーブル3の解除における無負荷域まで該ケーブル3を戻すためであって前記主ばね24とはばね定数が異なる副ばね25と、前記ケーブル3の往復動に伴って往復動するマグネット26と、このマグネット26の往復動により相対変位に応じて出力電圧Vsが変化するホールIC27とを備え、
前記ケーブル3の解除中に前記主ばね24と副ばね25との主ばね+副ばね特性から前記副ばね25の副ばね特性に変化する変化点を検出して、該検出時点を前記主ばね24のゼロ位置として補正を行なう制御手段を備えていることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の車両の電動パーキングブレーキシステムでは、前記主ばね+副ばね特性から副ばね特性への変化点に対応した前記ホールIC27の出力電圧Vsを主ばね24のゼロ点電圧Vs0に補正し、このゼロ点電圧Vs0にケーブル3の目標引き力のばね撓みに対応した電圧値ΔVを加算して目標引き力の電圧値Vtcとしていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に記載の車両の電動パーキングブレーキシステムによれば、前記ケーブル3の解除中に前記主ばね24と副ばね25との主ばね+副ばね特性から前記副ばね25の副ばね特性に変化する変化点を検出して、該検出時点を前記主ばね24のゼロ位置として補正を行なう制御手段を備えているので、正確に目標引き力を制御することが可能になる。
【0013】
請求項2に記載の車両の電動パーキングブレーキシステムによれば、主ばね24にヘタリが発生して主ばね24のゼロ位置が変化しても、ケーブル3の解除中でのばねの撓み量に対応したホールIC27の出力電圧Vsにおける主ばね+副ばね特性から副ばね特性への変化点を検出し、この変化点の検出時点を主ばね24のゼロ位置として、このゼロ位置に対応したホールIC27の出力電圧Vsを主ばね24のゼロ位置に対応したゼロ点電圧Vs0とする補正を行なっている。
そして、パーキングブレーキを作動する場合に、このゼロ点電圧Vs0に予め設定されている目標引き力の副ばね25と主ばね24とのばね撓み量に対応した電圧値ΔVを加算して、この加算した電圧値を目標引き力の電圧値Vtcとする。そして、作動中においてホールIC27からの出力電圧Vsが目標引き力の電圧値Vtcとなるまで、ケーブル3の引き作動を行なう。これにより正確に目標引き力を制御することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。図1は電動パーキングブレーキシステムの概略ブロック構成図を示し、マイクロコンピュータからなる制御装置1と、この制御装置1により制御されるアクチュエータ2と、このアクチュエータ2によりコントロールケーブル3の引き作動、解除されることで、パーキングブレーキの作動、解除が行なわれるブレーキアッセンブリ4等で構成されている。
また、この電動パーキングブレーキシステムには、パーキングブレーキを作動、解除を行なうために制御装置1に指令を送る操作スイッチ5や、各部の異常(故障)を検出した場合に異常を報知するワーニングランプ6や、かかる故障部位情報を上位のコンピュータに伝送するためのCAN( Controller Area Network )バス等が設けられている。
【0015】
アクチュエータ2は、制御装置1により正転、逆転駆動される正逆回転可能なモータ11と、このモータ11の回転数を減速させる減速機構12と、この減速機構12の出力にて回転駆動されるスクリュー13と、このスクリュー13の回転により該スクリュー13の軸方向に往復動し、イコライザー機構を構成しているナット14と、後述する荷重センサ15等で構成されている。
また、ナット14の一方の端部には図中左側のコントロールケーブル3が接続され、ナット14の他方の端部側は荷重センサ15を介したコントロールケーブル3(図中の右側)が接続され、両コントロールケーブル3の他端はブレーキアッセンブリ4側に接続されている。なお、コントロールケーブル3は、外装のアウターケーブルとこのアウターケーブルの内部を摺動自在としたインナーケーブルとで構成されている。
【0016】
この荷重センサ15はコントロールケーブル3のインナーケーブル(以下、単にコントロールケーブル3と言う。)に作用する荷重(張力)を検出するものであり、図1及び図2に示すように、基本的な構成部材として、シャフト20と、ロッド22と、主ばね24と、副ばね25と、マグネット26と、ホールIC27と、これらの部材を収容するケース本体30等で構成されている。
なお、図2(c)は、図2(b)のA−A断面図である。また、上記ケース本体30は、上面が開口した箱状のケース31と、このケース31の開口面を覆設するフタ体32とからなっている。
【0017】
シャフト20はケース本体30に対して該シャフト20の軸方向に往復動可能であり、ケース本体30の外側に突出している端部にコントロールケーブル3が連結されている。シャフト20の端部には円板状のフランジ部21が一体的に連結固定されている。
また、ロッド22はケース本体30より突出している端部がナット14に回動自在に連結されており、ロッド22の端部には円板状のフランジ部23が一体的に連結固定されている。このロッド22のフランジ部23とシャフト20のフランジ部23とが対面している構造となっている。
【0018】
シャフト20のフランジ部21の上面にはマグネット26が配設されており、シャフト20の往復動と共に該シャフト20の軸方向に沿って往復動可能となっている。このマグネット26の上部は、フタ体32に形成した凹所33内に位置しており、この凹所33の長手方向に沿ってシャフト20と共に往復動可能となっている。
上記凹所33を形成している断面が略コ字型の突部34の一方の側面にホールIC27が配設されていて、このホールIC27とマグネット26とは一定の間隔を設けて配設されている。シャフト20と共にマグネット26が往復動することで、マグネット26とホールIC27との相対変位量、すなわち、コントロールケーブル3の荷重に相当する主ばね24と副ばね25との圧縮、伸張変形量に応じた出力電圧Vsを制御装置1に出力するようになっている。
【0019】
コイルスプリング状の主ばね24は、ケース31の内面31aとシャフト20のフランジ部21の側面21aとの間に設けられた圧縮スプリングである。そして、図2に示す状態ではパーキングブレーキが解除の状態であって、主ばね24は開放された状態であり、弾性変形量はゼロの状態である。なお、パーキングブレーキの作動状態においては主ばね24は、弾性圧縮変形される。
【0020】
圧縮コイルスプリング状の副ばね25は、シャフト20の外周面側に組み付けられると共に、ケース31の内面31aとシャフト20のフランジ部21の側面21aとの間に弾発付勢された状態で設けられている。
また、副ばね25のばね定数は、主ばね24のばね定数に比べて小さく設定されていて、副ばね25の弾発力によりシャフト20のフランジ部21を常時ロッド22のフランジ部23側に付勢している。
【0021】
ここで、荷重センサ15の主ばね24は、開放されている状態では、該主ばね24の先端面とシャフト20のフランジ部21の側面21aとが接触ないし弾発している必要はなく、後述するように副ばね25の作用により主ばね24のばねゼロ位置を補正可能にしている。
なお、上記特許文献1の副ばねは、主ばねのガタをとるために使用されているものであり、本発明の副ばね25はコントロールケーブル3のインナーケーブルを確実に無負荷域まで戻すため(インナーケーブルの無負荷摺動抵抗分を確実に戻す)に使用しているものである。
【0022】
図3は本発明の電動パーキングブレーキ装置に関連したブロック図を示し、制御装置1には、モータ11に流れる電流を検知する電流センサ16からの信号と、ホールIC27にて検出した出力電圧Vsと、操作スイッチ5からの信号(作動、解除)が入力される。また、制御装置1からはモータ11を制御する信号と、ワーニングランプ6を点灯、消灯させるための信号が出力される。
【0023】
制御装置1は、電流センサ16からの電流値を監視してモータ11の異常を検出するモータ異常検出部41と、ホールIC27からの出力電圧Vsが入力される電圧値入力部42と、所定の時間毎の出力電圧Vsの傾きを計算する演算部43と、この演算部43による計算結果を前回のと比較する比較部44と、モータ11を駆動制御するモータ駆動制御部45と、タイマー部46と、上記演算部43にて計算した結果(データ)を一時的に記憶するRAMや本制御装置1の制御用プログラムを格納しておくROM等からなる記憶部47と、全体の制御を司る制御部48等で構成されている。
【0024】
図4はホールIC27の出力電圧(ばねの撓み量)Vs(V)と、コントロールケーブル3の引き力(N)との関係を示す図であり、ばね特性線イが初期の副ばね25と主ばね24との特性線である。横軸におけるVss0が副ばね25のゼロ点位置に対応したホールIC27の出力電圧値であり、Vs0が主ばね24のゼロ点位置に対応したホールIC27の出力電圧値であり、Vtcがコントロールケーブル3の目標引き力に対応したホールIC27の出力電圧値である。また、ΔVは、目標引き力の主ばね24のばね撓みに対応した電圧値(Vtc−Vs0)である。なお、上記Vss0及びΔVは予め設定されている数値である。
【0025】
そして、パーキングブレーキを作動する場合には、ホールIC27からの出力電圧Vsが、ばね特性線イに示すVtcとなるまで、モータ11を正転駆動してコントロールケーブル3を作動し、出力電圧VsがVtcとなると目標引き力となって作動を完了する。
また、パーキングブレーキを解除する場合には、ホールIC27からの出力電圧Vsが、ばね特性線イのVss0になるまで、モータを逆転駆動してコントロールケーブル3を解いていき、出力電圧VsがVss0となった時点でモータ11を停止させる。
【0026】
このように、図1に示す構成の電動パーキングブレーキシステムにおいて、荷重センサ15に取り付けてあるばね(主ばね24、副ばね25)の撓みを電圧値(ホールIC27の出力電圧Vs)に変換してコントロールケーブル3の引き力等を制御している。
しかしながら、使用に伴い、主ばね24のヘタリ(ばねの縮み)が発生すると、ばね特性線ロに示すように主ばね24のゼロ位置が変化し、ヘタリが発生すると出力電圧Vs(Vs0)の値が変化することになる。
【0027】
そこで、本発明では、主ばね24のゼロ位置が変化すると、目標引き力を正確に制御できなくなるため、パーキングブレーキの解除中に副ばね特性と、主ばね+副ばね特性の変化点(図4の破線と実線との結合点)を検出して、主ばね24のばねゼロ位置を補正することによって、正確に目標引き力を制御することを可能にしたものである。
【0028】
図4に示すように、副ばね25に対する引き力はばね定数が主ばね24の場合よりも小さいので、コントロールケーブル3の引き力が少しで済み、そのため、傾きは緩やかである。主ばね24に対する引き力はばね定数が大きいため、主ばね24のゼロ位置を経過した時点から引き力が大きくなり、そのため、傾きは副ばね25の場合と比べてかなりきつくなっている。
なお、副ばね25のみの副ばね特性と、主ばね24と副ばね25との主ばね+副ばね特性との傾きは一定であり、副ばね特性から主ばね+副ばね特性、あるいは主ばね+副ばね特性から副ばね特性に変わるときに傾きが変化して、この変化を検出するようにしている。
【0029】
図5はコントロールケーブル3の解除方向における時間(sec)とホールIC27の出力電圧Vsとの関係を示しており、時間に対するホールIC27の出力電圧Vsの傾きは図4の場合と逆になっている。つまり、副ばね25の場合はばね定数が小さいため、時間当たりのホールIC27の出力電圧Vsの変化量は大きく、また、副ばね25+主ばね24の場合はばね定数が大きくなるため、時間当たりのホールIC27の主ばね24の変化量は小さくなる。
この変化量、つまり傾きが大きく変化する点が主ばね24のゼロ位置を示しており、副ばね25に対応した出力電圧Vsの傾きから、副ばね25+主ばね24に対応した出力電圧Vsの傾きを、所定の時間毎に計算を行ない、出力電圧Vsの傾きが大きく変化した点を検出し、その変化点を主ばね24のゼロ位置として補正を行ない、コントロールケーブル3を制御するものである。
【0030】
なお、図5では、計算間隔として、副ばね特性の場合と、副ばね特性から副ばね+主ばね特性の場合と、主ばね+副ばね特性との3つを例示しているが、これは副ばね25から副ばね25+主ばね24へと以降するために分かり易くするために描いたものである。実際はコントロールケーブル3を引き作動の開始から停止するまで、出力電圧Vsの傾きを演算している。なお、主ばね24のゼロ位置に対応した変化点を検出した後は、出力電圧Vsの傾きを演算しないようにしても良い。
【0031】
次に、本発明の制御動作をフローチャートに基づいて説明する。図6はパーキングブレーキを作動する場合を示し、先ず、操作スイッチ5により作動操作を行なうとステップS1に示すようにモータ11が正転駆動される。次に、ステップS2において目標引き力の電圧値Vtcを計算する。ここでは、主ばね24のゼロ位置に対応した電圧値Vs0に目標引き力のばね撓みに対応した電圧値ΔVを加算して得られる。
【0032】
次に、ステップS3に進んで、例えばモータ11が異常がどうかを電流値でもってモータ異常検出部41が監視し、ステップS4で異常(故障)であればワーニングランプ6を点灯させると共に、モータ11を停止し(ステップS5参照)、次いでフェールセーフ制御に移行する(ステップS6参照)。
ステップS4において故障が無い場合にはステップS7に移行して、ホールIC27からの出力電圧Vsと計算にて設定した目標引き力に対応した電圧値Vtcとを比較していく。そして、ホールIC27からの出力電圧Vsが電圧値Vtcに達した場合には、ステップS8に移行してモータ11を停止させることで、作動が完了する。すなわち、パーキングブレーキの作動動作が完了する。
【0033】
次に、パーキングブレーキの解除の動作について図7により説明する。先ず、操作スイッチ5により解除操作を行なうとステップS21に示すようにモータ11が逆転駆動される。次に、ステップS22では、例えばモータ11が異常がどうかを電流値でもってモータ異常検出部41が監視し、ステップS23で異常(故障)であればワーニングランプ6を点灯させると共に、モータ11を停止し(ステップS24参照)、次いでフェールセーフ制御に移行する(ステップS25参照)。
【0034】
ステップS23において故障が無い場合にはステップS26に移行して、出力電圧Vsの傾きVs’を計算する。これは解除中に一定時間当たり、例えば50msec毎の出力電圧Vsの変化量を計算するものであり、この出力電圧Vsの変化量が傾きVs’となる。ホールIC27からの出力電圧Vsは制御装置1の電圧値入力部42に入力されており、タイマー部46からのタイマー信号により上記50msec毎の変化量を演算部43にて計算を行なう。
例えば、上記のように一定時間を50msecとすると、
傾きVs’=(前回の出力電圧Vs−今回の出力電圧Vs)/50msec
であり、上記の「前回の出力電圧Vs」は、50msec前の出力電圧Vsである。
【0035】
このようにホールIC27からの出力電圧Vsの変化量(傾きVs’)を演算部43にて解除中に計算をしていき、ステップS27において、図5に示す主ばね24のゼロ位置では、傾きVs’が主ばね+副ばね特性から副ばね特性に変化するとステップS28に移行する。
ここで、主ばね+副ばね特性では、その変化量(傾きVs’)は図5に示すように小さくなり、副ばね特性のみではその変化量(傾きVs’)は大きくなる。そして、そのときに計算した傾きVs’と、前回に計算して記憶部47に格納しておいた傾きVs’とを比較部44で比較をし、その比較の結果、傾きVs’に変化があった場合には、主ばね24のゼロ位置を検出したとして、その信号を制御部48に出力する。
【0036】
次に、ステップS28に示すように、副ばね特性に変化した場合のホールIC27からの出力電圧Vsを主ばね24のゼロ点電圧Vs0として、補正を行なう。次に、ステップS29に進み、ステップS22の場合と同様に故障の判定が行なわれ、ステップS30に示すように、故障の場合には上記と同様にステップS24、S25に進み、故障が無い場合にはステップS31に進む。
ステップS31では、比較部44において、格納していた記憶部47からの上記副ばね25のゼロ位置に対応した電圧値Vss0と、電圧値入力部42からの出力電圧Vsとを比較し、入力された出力電圧Vsが上記電圧値Vss0になった場合には、ステップS32に移行する。ステップS32に移行するとモータ11がモータ駆動制御部45により停止制御され、これにより解除が完了する。
【0037】
上記のパーキングブレーキの解除中におけるステップS28において、主ばね24のゼロ位置に対応した電圧値Vs0を記憶部47にて更新して格納している。パーキングブレーキを解除動作して次回の作動動作を行なう場合、図6に示すステップS2において更新した電圧値Vs0(主ばね24のゼロ位置に対応した電圧値)を用いて、目標引き力Vtcを計算する。
【0038】
このように本実施形態では、主ばね24にヘタリが発生して主ばね24のゼロ位置が変化しても、コントロールケーブル3の解除中でのばねの撓み量に対応したホールIC27の出力電圧Vsにおける主ばね+副ばね特性から副ばね特性への変化点を検出し、この変化点の検出時点を主ばね24のゼロ位置として、このゼロ位置に対応したホールIC27の出力電圧Vsを主ばね24のゼロ位置に対応したゼロ点電圧Vs0とする補正を行なっている。
そして、パーキングブレーキを作動する場合に、このゼロ点電圧Vs0に予め設定されている目標引き力の副ばね25と主ばね24とのばね撓み量に対応した電圧値ΔVを加算して、この加算した電圧値を目標引き力の電圧値Vtcとする。そして、作動中においてホールIC27からの出力電圧Vsが目標引き力の電圧値Vtcとなるまで、コントロールケーブル3の引き作動を行なう。これにより正確に目標引き力を制御することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態における電動パーキングブレーキシステムの概略ブロック構成図である。
【図2】(a)(b)は本発明の実施の形態における荷重センサの断面図及び側面図であり、(c)は図2(b)のA−A断面図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるホールICの出力電圧(ばねの撓み量)とコントロールケーブルの引き力との関係を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるコントロールケーブルの作動中でのホールICの出力電圧との関係を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるコントロールケーブルの作動の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態におけるコントロールケーブルの解除の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
1 制御装置
2 アクチュエータ
3 コントロールケーブル
11 モータ
15 荷重センサ
24 主ばね
25 副ばね
26 マグネット
27 ホールIC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ(11)の正転駆動によりケーブル(3)を介してパーキングブレーキを作動状態とし、前記モータ(11)の逆転駆動により前記パーキングブレーキを前記ケーブル(3)を介して解除状態に制御するアクチュエータ(2)と、
前記パーキングブレーキに作用するケーブル(3)の荷重を検出する荷重センサ(15)と、
前記荷重センサ(15)からの出力電圧(Vs)に応じて前記モータ(11)の回転駆動を制御する制御装置(1)とを備え、
前記荷重センサ(15)は、前記ケーブル(3)の作動状態では弾性圧縮変形し、該ケーブル(3)の解除における開放状態では弾性圧縮変形量を略ゼロとする主ばね(24)と、前記ケーブル(3)の解除における無負荷域まで該ケーブル(3)を戻すためであって前記主ばね(24)とはばね定数が異なる副ばね(25)と、前記ケーブル(3)の往復動に伴って往復動するマグネット(26)と、このマグネット(26)の往復動により相対変位に応じて出力電圧(Vs)が変化するホールIC(27)とを備え、
前記ケーブル(3)の解除中に前記主ばね(24)と副ばね(25)との主ばね+副ばね特性から前記副ばね(25)の副ばね特性に変化する変化点を検出して、該検出時点を前記主ばね(24)のゼロ位置として補正を行なう制御手段を備えていることを特徴とする車両の電動パーキングブレーキシステム。
【請求項2】
前記主ばね+副ばね特性から副ばね特性への変化点に対応した前記ホールIC(27)の出力電圧(Vs)を主ばね(24)のゼロ点電圧(Vs0)に補正し、このゼロ点電圧(Vs0)にケーブル(3)の目標引き力のばね撓みに対応した電圧値(ΔV)を加算して目標引き力の電圧値(Vtc)としていることを特徴とする請求項1に記載の車両の電動パーキングブレーキシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−128360(P2008−128360A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313915(P2006−313915)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(390000996)株式会社ハイレックスコ−ポレ−ション (362)
【Fターム(参考)】