説明

車両の電池支持構造

【課題】ラゲージルーム内に荷物のための広い利用可能空間を確保することができるだけでなく、電池パック及び関連部品の設置やメンテナンスの作業性が改善された電池パックの支持構造を提供する。
【解決手段】車両12の後端部に設けられたラゲージルーム16とその上方のキャビン22とを分離する分離パネル18、24を有する車両の電池支持構造であって、上方がキャビン22であり且つ下方がラゲージルーム16である車両の前後方向の領域に於いて電池パック30が分離パネルのうちのアッパバックパネル18の低い前方領域18Fの上面に固定され、アッパバックパネル18と共働して電池パック30を覆うカバー34を有し、カバー34又は分離パネルはキャビン22よりアッパバックパネル18とカバー34との間の電池パック収容空間38へアクセスするための孔を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の電池に係り、更に詳細には車両の電池の支持構造に係る。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッドシステムが搭載された自動車等の車両に於いては、二次電池を内蔵する電池パックが搭載されている。電池パックは冷却される必要があり、また遮音される必要があるので、車両の乗員への影響が低くなるよう車両の後方領域、例えば後部座席の背後に配置されることがある。
【0003】
例えば後部座席の後方に位置するパーティションパネルより後方でアッパバックパネルの下方に形成されるラゲージルームに電池パックが配置される構造が既に知られている。特に下記の特許文献1には、電池パックがアッパバックパネルの下面に取付けられるよう構成された電池パックの支持構造が記載されている。この種の支持構造によれば、電池パックがロアバックパネルの上面に取付けられる構造の場合に比して、ラゲージルーム内に荷物のための広い利用可能空間を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−195090号公報
【発明の概要】
【0005】
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし上記公開公報に記載された従来の電池パックの支持構造に於いては、電池パックを後部座席の側からラゲージルーム内に装入しアッパバックパネルの下面に取付けることができない。そのため電池パックを開いたラゲージドアの側からラゲージルーム内に装入し、無理な姿勢でアッパバックパネルの下面に取付けなければならず、電池パック及びこれに接続されるハーネスや冷却ダクトの設置やメンテナンスの作業性が悪いという問題がある。
【0006】
本発明は、電池パックが後部座席の背後、特にラゲージルーム内にてアッパバックパネルの下面に取付けられるよう構成された従来の支持構造に於ける上述の如き問題に鑑みてなされたものである。そして本発明の主要な課題は、ラゲージルーム内に荷物のための広い利用可能空間を確保することができるだけでなく、電池パック及び関連部品の設置やメンテナンスの作業性が改善された電池パックの支持構造を提供することである。
〔課題を解決するための手段及び発明の効果〕
【0007】
上述の主要な課題は、本発明によれば、車両の後端部に設けられたラゲージルームとキャビンとを分離する分離パネルを有する車両の電池支持構造であって、上方が前記キャビンであり且つ下方が前記ラゲージルームである車両の前後方向の領域に於いて電池が前記分離パネルの上面に固定されることを特徴とする車両の電池支持構造(請求項1の構成)によって達成される。
【0008】
上記の構成によれば、電池は上方がキャビンであり且つ下方がラゲージルームである車両の前後方向の領域に於いて分離パネルの上面に固定される。従ってキャビンの側より電池及び関連部品の設置やメンテナンスを行うことができる。また電池がラゲージルームの床の上に固定される訳ではないので、ラゲージルーム内に荷物のための広い利用可能空間を確保することができる。
【0009】
また本発明によれば、前記分離パネルと共働して前記電池を覆い電池収容空間を郭定するカバーを有し、前記カバー及び前記分離パネルの少なくとも一方は前記電池収容空間へアクセスするための孔を有するよう構成される(請求項2の構成)。
【0010】
上記の構成によれば、分離パネルと共働して電池を覆い電池収容空間を郭定するカバーを有するので、カバーが設けられていない場合に比して騒音や電磁波等による車両の乗員への影響を低減することができる。またカバー及び分離パネルの少なくとも一方には電池収容空間へアクセスするための孔が設けられているので、カバーを取り外したりすることなくキャビンの側より電池及び関連部品の設置やメンテナンスを行うことができる。
【0011】
また本発明によれば、前記分離パネルは前記ラゲージルームの上端を郭定するアッパバックパネルであり、前記アッパバックパネルは後方領域と該後方領域よりも低い前方領域とを有し、前記電池は前記前方領域の上面に固定されており、前記カバーは前記ラゲージルームの前端を郭定するパーティションパネルの上縁部と前記アッパバックパネルの前記後方領域の前縁部とを接続しているよう構成される(請求項3の構成)。
【0012】
上記の構成によれば、アッパバックパネルは後方領域と該後方領域よりも低い前方領域とを有し、電池は前方領域の上面に固定されている。従って例えば電池が平板状のアッパバックパネルの上面に固定される構造の場合に比して電池収容空間を郭定する部材がキャビンに過剰に突出しキャビンの空間を低減することを回避することができる。
【0013】
また本発明によれば、前記アッパバックパネルの前記前方領域の前縁部は前記パーティションパネルと接続されているよう構成される(請求項4の構成)。
【0014】
上記の構成によれば、アッパバックパネルの前方領域の前縁部はパーティションパネルと接続されている。従ってアッパバックパネルの前方領域が受ける電池の荷重をパーティションパネルにも担持させることができる。
【0015】
また本発明によれば、前記パーティションパネルの上端の高さは前記アッパバックパネルの前記前方領域の高さと同一であり、前記アッパバックパネルの前記前方領域の前縁部は前記パーティションパネルの上縁部と接続されているよう構成される(請求項5の構成)。
【0016】
上記の構成によれば、パーティションパネルを要することなくアッパバックパネル及びカバーにて電池収容空間を郭定することができると共に、車両の横方向に見て例えば閉じた多角形をなす電池収容空間を郭定することができる。
【0017】
また本発明によれば、前記パーティションパネルは前記アッパバックパネルの前記後方領域と同一の高さまで延在し、前記アッパバックパネルの前記前方領域の前縁部は前記パーティションパネルの上縁部よりも下方に接続されており、前記カバーは前記アッパバックパネルの前記後方領域を車両前方へ延長するよう延在しているよう構成される(請求項6の構成)。
【0018】
上記の構成によれば、アッパバックパネル、パーティションパネル及びカバーにて電池収容空間を郭定することができると共に、車両の横方向に見て例えば閉じた多角形をなす電池収容空間を郭定することができる。またアッパバックパネル及びパーティションパネルが接続される部分以外の部分にカバーを取り付けることができる。
【0019】
また本発明によれば、前記分離パネルは前記ラゲージルームの前端を郭定するパーティションパネルであり、前記パーティションパネルの上方部は車両の後方へ延在し上面に前記電池が固定される棚部を有し、前記棚部の高さは前記ラゲージルームの上端を郭定するアッパバックパネルの高さよりも低く、前記カバーは前記パーティションパネルの前記棚部より前方側の領域の上縁部とアッパバックパネルとを接続しているよう構成される(請求項7の構成)。
【0020】
上記の構成によれば、上面に電池が固定される棚部の高さはアッパバックパネルの高さよりも低い。従って棚部の高さがアッパバックパネルの高さ以上である場合に比して電池収容空間を郭定する部材がキャビンに過剰に突出しキャビンの空間を低減することを回避することができる。また棚部が電池より受ける荷重をアッパバックパネルにも担持させることができる。
【0021】
また本発明によれば、前記アッパバックパネルの前縁部は前記電池よりも上方且つ後方側に位置し、前記パーティションパネルの前記棚部より後方の領域は上端にて前記アッパバックパネルの前縁部と接続されているよう構成される(請求項8の構成)。
【0022】
上記の構成によれば、アッパバックパネルを要することなくパーティションパネル及びカバーにて電池収容空間を郭定することができると共に、車両の横方向に見て例えば閉じた多角形をなす電池収容空間を郭定することができる。
【0023】
また本発明によれば、前記アッパバックパネルの前縁部は前記電池よりも上方且つ前方側に位置し、前記カバーは前記パーティションパネルを上方へ延長するよう延在しているよう構成される(請求項9の構成)。
【0024】
上記の構成によれば、カバーを例えば単純な平板状の部材にすることができると共に、アッパバックパネル及びパーティションパネルが接続される部分以外の部分にカバーを取り付けることができる。またアッパバックパネル、パーティションパネル及びカバーにて電池収容空間を郭定することができると共に、車両の横方向に見て例えば閉じた多角形をなす電池収容空間を郭定することができる。
【0025】
また本発明によれば、前記アッパバックパネルの前縁部は前記アッパバックパネルの主要部より下方に位置し、前記パーティションパネルの前記棚部の後端は前記アッパバックパネルの前縁部と接続されているよう構成される(請求項10の構成)。
【0026】
上記の構成によれば、アッパバックパネル、パーティションパネル及びカバーにて電池収容空間を郭定することができると共に、車両の横方向に見て例えば閉じた多角形をなす電池収容空間を郭定することができる。またアッパバックパネル及びパーティションパネルが接続される部分以外の部分にカバーを取り付けることができる。
〔課題解決手段の好ましい態様〕
【0027】
本発明の一つの好ましい態様によれば、カバーの上面はアッパバックパネルと実質的に同一の平面をなすよう構成される(好ましい態様1)。
【0028】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、カバーは電池収容空間の少なくとも前端を郭定し、アクセス孔はカバーのうち電池収容空間の前端を郭定する領域に設けられているよう構成される(好ましい態様2)。
【0029】
本発明の他の一つの好ましい態様によれば、パーティションパネルは電池収容空間の少なくとも前端を郭定し、アクセス孔はパーティションパネルのうち電池収容空間の前端を郭定する領域に設けられているよう構成される(好ましい態様3)。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ハイブリッドシステムの電池パックの支持に適用された本発明による車両の電池支持構造の第一の実施形態を示す車両の横方向より見た縦断面図である。
【図2】図1に示された第一の実施形態の斜視図である。
【図3】ハイブリッドシステムの電池パックの支持に適用された本発明による車両の電池支持構造の第二の実施形態を示す車両の横方向より見た縦断面図である。
【図4】ハイブリッドシステムの電池パックの支持に適用された本発明による車両の電池支持構造の第三の実施形態を示す車両の横方向より見た縦断面図である。
【図5】ハイブリッドシステムの電池パックの支持に適用された本発明による車両の電池支持構造の第四の実施形態を示す車両の横方向より見た縦断面図である。
【図6】第一及び第三の実施形態の修正例として構成された本発明による車両の電池支持構造の第五の実施形態を示す車両の横方向より見た縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に添付の図を参照しつつ、本発明を幾つかの好ましい実施形態について詳細に説明する。
[第一の実施形態]
【0032】
図1はハイブリッドシステムの電池パックの支持に適用された本発明による車両の電池支持構造の第一の実施形態を示す車両の横方向より見た縦断面図、図2は図1に示された第一の実施形態の斜視図である。
【0033】
これらの図に於いて、10は車両12の電池支持構造を全体的に示しており、電池支持構造10は後部座席14の後方に設定されている。後部座席14の後方にはラゲージルーム16が設けられており、ラゲージルーム16の上下はそれぞれアッパバックパネル18及びロアバックパネル20により郭定されている。アッパバックパネル18はラゲージルーム16とその上方のキャビン22とを分離する分離パネルとして機能する。またラゲージルーム16の前方はパーティションパネル24により郭定されており、パーティションパネル24はラゲージルーム16とその前方のキャビン22とを分離する分離パネルとして機能する。ラゲージルーム16の左右及び後方は車両のボデー26及びラゲージドア28により郭定されている。
【0034】
第一の実施形態に於いては、アッパバックパネル18は後方領域18Rと該後方領域よりも低い前方領域18Fとを有し、後方領域18R及び前方領域18Fは傾斜壁部18Mにより一体に接続されている。前方領域18F及び傾斜壁部18Mの車両の横方向の側縁にはそれぞれブラケット18FB及び18MBが設けられており、これらのブラケットはスポット溶接等の固定的連結手段により車両のボデー26の側面部に固定されている。
【0035】
前方領域18Fの前縁部はパーティションパネル24に沿って延在し、パーティションパネル24の上縁部にスポット溶接等の固定的連結手段により一体的に接続されている。また前方領域18Fの上面にはハイブリッドシステムの電池パック30がボルトの如き取外し可能な固定手段により固定されている。従って電池パック30は上方がキャビン22であり且つ下方がラゲージルーム16である車両の前後方向の領域に於いてアッパバックパネル18の上面に固定されている。電池パック30は箱形のケーシング32の内部に図には示されていない電池モジュール及び電子機器を収容している。
【0036】
尚電池パック30の上端がアッパバックパネル18の後方領域18Rよりも低くなるよう、前方領域18Fと後方領域18Rとの間の高さの差は電池パック30の高さよりも大きい値に設定されている。このことは後述の第二の実施形態に於いても同様である。
【0037】
電池パック30の上方及び前方にはカバーパネル34が配置されており、カバーパネル34は電池パック30を覆っている。カバーパネル34はパーティションパネル24に沿って延在する前側平面部34Fとアッパバックパネル18の後方領域18Rに沿って延在する後側平面部34Rとを有する実質的に断面L形をなす板部材である。前側平面部34Fの下縁部及び後側平面部34Rの後縁部はビスの如き取り外し可能な連結手段によりそれぞれパーティションパネル24の上縁部及びアッパバックパネル18の後方領域18Rの前縁部に実質的に一平面をなすよう接続されている。
【0038】
図2に示されている如く、カバーパネル34の前側平面部34Fの車両の横方向の端部近傍にはアクセス孔36が設けられている。アッパバックパネル18及びカバーパネル34は車両の横方向に見て閉じた矩形をなし電池パック30を収容する電池パック収容空間38を郭定しており、電池パック収容空間38は車両の横方向の端部に於いて車両のボデー26の側面部により実質的に閉じられている。しかしアクセス孔36がカバーパネル34の前側平面部34Fに設けられているので、アクセス孔36を経て電池パック収容空間38にアクセスすることが可能である。尚アクセス孔36は必要に応じて例えば樹脂製の蓋にて塞がれてよい。
[第二の実施形態]
【0039】
図3はハイブリッドシステムの電池パックの支持に適用された本発明による車両の電池支持構造の第二の実施形態を示す車両の横方向より見た縦断面図である。尚図3に於いて図1及び図2に示された部材と同一の部材には図1及び図2に於いて付された符号と同一の符号が付されている。このことは後述の他の実施形態についても同様である。
【0040】
この第二の実施形態に於いては、アッパバックパネル18は第一の実施形態の場合と同様の構成を有しているが、パーティションパネル24はアッパバックパネル18の後方領域18Rと実質的に同一の高さまで上方へ延在している。従ってアッパバックパネル18の前方領域18Fの前縁部はパーティションパネル24の上縁部に接続されるのではなく、パーティションパネル24の上縁部と下縁部との間の部分にスポット溶接等の固定的連結手段により一体的に接続されている。
【0041】
またカバーパネル34はアッパバックパネル18の後方領域18Rと実質的に同一の平面をなすよう平板状に延在している。カバーパネル34の前縁部はパーティションパネル24に沿って延在するよう下方へ屈曲され、パーティションパネル24の上縁部にビスの如き取り外し可能な連結手段により接続されている。カバーパネル34の後縁部はアッパバックパネル18の後方領域18Rの前縁部にオーバーラップし、ビスの如き取り外し可能な連結手段によりこれに接続されている。また図3には示されていないが、アクセス孔36はカバーパネル34には設けられておらず、アクセス孔36に対応するアクセス孔がパーティションパネル24の上方部分の車両の横方向の端部近傍に設けられている。
【0042】
従って第二の実施形態に於いては、車両の横方向に見て閉じた矩形をなし電池パック30を収容する電池パック収容空間38はアッパバックパネル18、パーティションパネル24、カバーパネル34により郭定されている。またパーティションパネル24の上方部分は電池パック30を覆うカバーの一部として第一の実施形態のカバーパネル34の前側平面部34Fと同様に機能する。
[第三の実施形態]
【0043】
図4はハイブリッドシステムの電池パックの支持に適用された本発明による車両の電池支持構造の第三の実施形態を示す車両の横方向より見た縦断面図である。
【0044】
この第三の実施形態に於いては、アッパバックパネル18は段差部を有しておらず、電池パック30よりも車両の後方側の領域に於いて実質的に水平に平板状に延在している。パーティションパネル24の上方部分は車両の後方へ延在する棚部24Aと、棚部24Aより上方且つ後方へ延在する傾斜壁部24Bとを有し、棚部24Aの上面に電池パック30がボルトの如き取外し可能な固定手段により固定されている。傾斜壁部24Bの上縁部はアッパバックパネル18に沿って延在するよう屈曲され、アッパバックパネル18の前縁部の下面又は上面にスポット溶接等の固定的連結手段により固定的に連結されている。
【0045】
カバーパネル34は第一の実施形態の場合と同様の構成を有し、パーティションパネル24に沿って延在する前側平面部34Fとアッパバックパネル18に沿って延在する後側平面部34Rとを有する実質的に断面L形をなす板部材である。前側平面部34Fの下縁部及び後側平面部34Rの後縁部はビスの如き取り外し可能な連結手段によりそれぞれパーティションパネル24の下方部の上縁部及びアッパバックパネル18の前縁部に実質的に一平面をなすよう接続されている。また図には示されていないが、アクセス孔36は第一の実施形態の場合と同様にカバーパネル34の前側平面部34Fに設けられている。
【0046】
従って第三の実施形態に於いては、車両の横方向に見て閉じた矩形をなし電池パック30を収容する電池パック収容空間38はパーティションパネル24の上方部分及びカバーパネル34により郭定されている。またパーティションパネル24の棚部24A及び傾斜壁部24Bがそれぞれ第一の実施形態に於けるアッパバックパネル18の前方領域18F及び傾斜壁部18Mと同様に機能する。よって棚部24Aとアッパバックパネル18との高さの差は電池パック30の高さよりも大きい値に設定されている。このことは後述の第四の実施形態に於いても同様である。
[第四の実施形態]
【0047】
図5はハイブリッドシステムの電池パックの支持に適用された本発明による車両の電池支持構造の第四の実施形態を示す車両の横方向より見た縦断面図である。
【0048】
この第四の実施形態に於いては、アッパバックパネル18は段差部を有しておらず、電池パック30よりも車両の前方側且つ上方まで実質的に水平に平板状に延在している。またパーティションパネル24は上述の第三の実施形態の場合と同様に構成され、棚部24Aと傾斜壁部24Bとを有し、棚部24Aの上面に電池パック30が固定されている。傾斜壁部24Bの上縁部はアッパバックパネル18に沿って延在するよう屈曲され、アッパバックパネル18の前縁部よりも車両の後方側にてアッパバックパネル18の下面にスポット溶接等の固定的連結手段により固定的に連結されている。
【0049】
カバーパネル34はパーティションパネル24に沿ってこれを上方へ延長するよう延在する平板状の板部材である。カバーパネル34の下縁部及び上縁部はビスの如き取り外し可能な連結手段によりそれぞれパーティションパネル24の下方部の上縁部及びアッパバックパネル18の前縁部に設けられパーティションパネル24に沿って延在するブラケットに接続されている。また図には示されていないが、アクセス孔36はカバーパネル34の車両の横方向の端部近傍に設けられている。
【0050】
従って第四の実施形態に於いては、車両の横方向に見て閉じた矩形をなし電池パック30を収容する電池パック収容空間38はアッパバックパネル18の前方部分、パーティションパネル24の上方部分及びカバーパネル34により郭定されている。またこの第四の実施形態に於いてもパーティションパネル24の棚部24A及び傾斜壁部24Bがそれぞれ第一の実施形態に於けるアッパバックパネル18の前方領域18F及び傾斜壁部18Mと同様に機能する。
[第五の実施形態]
【0051】
図6は第一及び第三の実施形態の修正例として構成された本発明による車両の電池支持構造の第五の実施形態を示す車両の横方向より見た縦断面図である。
【0052】
この第五の実施形態に於いては、アッパバックパネル18は第一の実施形態の場合と同様に傾斜壁部18Mを有しているが、前方領域18Fを有してはいない。またパーティションパネル24は第三の実施形態の場合と同様に棚部24Aを有しているが、傾斜壁部24Bを有してはいない。傾斜壁部18Mの下縁部及び棚部24Aの後縁部はスポット溶接等の固定的連結手段により固定的に連結されている。この実施形態の他の点は第一及び第三の実施形態の場合と同様に構成されている。
【0053】
尚第五の実施形態に於いては、アッパバックパネル18及びパーティションパネル24は傾斜壁部18Mの下縁部及び棚部24Aの後縁部にて互いに連結されている。しかしアッパバックパネル18及びパーティションパネル24は傾斜第一の実施形態の前方領域18F又は傾斜壁部18Mの領域に於いて互いに連結されていてもよい。
【0054】
以上の説明より解る如く、上述の各実施形態によれば、電池パック30は上方がキャビン22であり下方がラゲージルーム16である車両の前後方向の領域に於いて分離パネルとしてのアッパバックパネル18又はパーティションパネル24の上面に固定される。また電池パック30を覆うカバーパネル34が取外し可能にアッパバックパネル18及びパーティションパネル24に固定される。
【0055】
よってカバーパネル34を取外すことによりキャビン22の側より電池パック30及び関連部品の設置やメンテナンスを行うことができる。従ってラゲージルーム16の側からしか電池支持構造にアクセスできない場合に比して遥かに容易に且つ能率よく電池パック30及び関連部品の設置やメンテナンスを行うことができる。また電池パック30がラゲージルーム16の床の上に固定される訳ではないので、ラゲージルーム16内に荷物のための広い利用可能空間を確保することができる。
【0056】
また上述の各実施形態によれば、カバーパネル34はアッパバックパネル18若しくはパーティションパネル24と共働して車両の横方向に見て閉じた矩形をなす電池パック収容空間38を郭定している。そして電池パック収容空間38は車両の横方向の端部に於いて車両のボデー26の側面部により実質的に閉じられている。従ってカバーパネル34が設けられていない場合や電池パック収容空間38が車両の横方向に見て閉じた矩形をなしていない場合に比して電池パック30等が存在することに起因する騒音や電磁波等が車両の乗員に及ぼす影響を確実に低減することができる。
【0057】
また上述の各実施形態によれば、カバーパネル34又はパーティションパネル24に電池パック収容空間38へアクセスするためのアクセス孔36が設けられている。従ってカバーパネル34を取外すことなくキャビン22の側よりアクセス孔36を経て電池パック収容空間38へアクセスすることができ、これにより電池パック30の関連部品の設置やメンテナンスを容易に且つ能率よく行うことができる。
【0058】
また上述の各実施形態によれば、電池パック収容空間38の上方部分を郭定するパネルはアッパバックパネル18の車両の後方側の部分と実質的に同一の平面をなすよう延在している。従って電池パック収容空間38が設けられることに起因して後部座席の後方のアッパバックパネルの領域に不必要な段差が存在しない。
【0059】
また上述の各実施形態によれば、電池パック収容空間38へアクセスするためのアクセス孔36はラゲージルーム16とその前方のキャビン22とを分離する分離パネルに設けられている。従ってアクセス孔36がラゲージルーム16とその上方のキャビン22とを分離する分離パネルに設けられている場合に比して、電池パック収容空間38へ埃などが侵入する虞れを低減することができる。
【0060】
また上述の第一及び第二の実施形態に於いては、アッパバックパネル18の前方領域18Fと後方領域18Rとの間の高さの差は電池パック30の高さよりも大きい値に設定されている。同様に上述の第三乃至第五の実施形態に於いては、パーティションパネル24の棚部24Aとアッパバックパネル18との高さの差は電池パック30の高さよりも大きい値に設定されている。従って電池収容空間38を郭定する部材がキャビン22に過剰に突出しキャビンの空間を低減することを回避することができる。
【0061】
また上述の第一及び第二の実施形態に於いては、アッパバックパネル18の前方領域18Fの前縁部はパーティションパネル24と接続されている。よってアッパバックパネル18の前方領域18Fが受ける電池パック30及び関連部品の荷重をパーティションパネル24にも担持させることができる。従ってアッパバックパネル18の前方領域18Fの前縁部がパーティションパネル24と接続されていない場合に比して電池パック30等に対する支持強度や支持剛性を高くすることができる。
【0062】
同様に上述の第三乃至第五の実施形態に於いては、パーティションパネル24の棚部24Aより後方の領域又は棚部24Aの後端はアッパバックパネル18と接続されている。よってパーティションパネル24の棚部24Aが受ける電池パック30及び関連部品の荷重をアッパバックパネル18にも担持させることができる。従ってパーティションパネル24の棚部24Aより後方の領域が上端にてアッパバックパネル18と接続されていない場合に比して電池パック30等に対する支持強度や支持剛性を高くすることができる。
【0063】
特に上述の第一、第三、第五の実施形態によれば、カバーパネル34を取外すことにより、車両の横方向に見て電池収容空間38を車両の前方及び上方の二方向に開放することができる。よってそれぞれ電池収容空間38を上方及び車両の前方の一方向にしか開放することができない上述の第二及び第四の実施形態の場合に比して、電池パック30及びその関連部品の設置等を容易に且つ能率よく行うことができる。
【0064】
また上述の第二、第四、第五の実施形態によれば、三つのパネルが重なり合う領域がないので、第一及び第三の実施形態の場合に比してパネル同士の固定的連結及び取外し可能な接続を容易に行うことができる。また第二及び第四の実施形態によれば、カバーパネル34は実質的に平板状の部材であってよいので、第一、第三、第五の実施形態の場合に比してカバーパネル34を単純なものにすることができる。
【0065】
以上に於いては本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
【0066】
例えば上述の各実施形態に於いては、カバーパネル34はアッパバックパネル18若しくはパーティションパネル24と共働して車両の横方向に見て閉じた矩形をなす電池パック収容空間38を郭定している。しかし他のパネルに接続されるカバーパネル34が省略され、電池パック30等を覆うカバーが設けられてもよい。またカバーパネル34が設けられていても、電池パック収容空間38が車両の横方向に見て閉じた矩形をなしていなくてもよい。
【0067】
また上述の第一及び第二の実施形態に於いては、電池パック収容空間38を郭定するアッパバックパネル18の前方領域18F及び傾斜壁部18Mは後方領域18Rと一体に形成されている。しかし前方領域18F及び傾斜壁部18Mに対応するパネルが後方領域18Rに対応するパネルとは別の部材として形成され、それらが例えばスポット溶接等の固定的連結手段により一体的に連結されてもよい。
【0068】
同様に上述の第三及び第四の実施形態に於いては、電池パック収容空間38を郭定するパーティションパネル24の棚部24A及び傾斜壁部24Bはパーティションパネル24の下方部と一体に形成されている。しかし棚部24A及び傾斜壁部24Bに対応するパネルがパーティションパネル24の下方部に対応するパネルとは別の部材として形成され、それらが例えばスポット溶接等の固定的連結手段により一体的に連結されてもよい。
【0069】
また上述の各実施形態に於いては、アクセス孔36は電池パック収容空間38の前側の境界を郭定するカバーパネル34又はパーティションパネル24に設けられている。しかしアクセス孔は電池パック収容空間38の上側の境界を郭定するパネルに設けられてもよく、また電池パック収容空間38の前側の境界を郭定するパネル及び電池パック収容空間38の上側の境界を郭定するパネルの両方に設けられてもよい。
【0070】
また上述の各実施形態に於いては、電池パック収容空間38の上側の境界はアッパバックパネル18と実質的に同一の平面をなしているが、境界の少なくとも一部がアッパバックパネル18の平面に対し上側又は下側に位置していてもよい。電池パック収容空間38は車両の横方向に見て閉じた矩形をなしているが、任意の多角形又は他の形状をなしていてもよい。
【0071】
また上述の各実施形態に於いては、アクセス孔36は電池パック収容空間38の前側の境界を郭定するカバーパネル34又はパーティションパネル24に二つ設けられている。しかしアクセス孔の数は任意の数であってよく、また各アクセス孔の大きさが相互に異なっていてもよい。
【0072】
更に上述の各実施形態に於いては、電池はハイブリッドシステムの電池パックであるが、本発明の電池支持構造は電気自動車の蓄電池や燃料電池車の燃料電池の如く車両に於いて任意の電池を支持するための用途に適用されてよい。
【符号の説明】
【0073】
10…電池支持構造、12…車両、16…ラゲージルーム、18…アッパバックパネル、22…キャビン、24…パーティションパネル、30…電池パック、34…カバー、36…アクセス孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の後端部に設けられたラゲージルームとキャビンとを分離する分離パネルを有する車両の電池支持構造であって、上方が前記キャビンであり且つ下方が前記ラゲージルームである車両の前後方向の領域に於いて電池が前記分離パネルの上面に固定されることを特徴とする車両の電池支持構造。
【請求項2】
前記分離パネルと共働して前記電池を覆い電池収容空間を郭定するカバーを有し、前記カバー及び前記分離パネルの少なくとも一方は前記電池収容空間へアクセスするための孔を有することを特徴とする請求項1に記載の車両の電池支持構造。
【請求項3】
前記分離パネルは前記ラゲージルームの上端を郭定するアッパバックパネルであり、前記アッパバックパネルは後方領域と該後方領域よりも低い前方領域とを有し、前記電池は前記前方領域の上面に固定されており、前記カバーは前記ラゲージルームの前端を郭定するパーティションパネルの上縁部と前記アッパバックパネルの前記後方領域の前縁部とを接続していることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の電池支持構造。
【請求項4】
前記アッパバックパネルの前記前方領域の前縁部は前記パーティションパネルと接続されていることを特徴とする請求項3に記載の車両の電池支持構造。
【請求項5】
前記パーティションパネルの上端の高さは前記アッパバックパネルの前記前方領域の高さと同一であり、前記アッパバックパネルの前記前方領域の前縁部は前記パーティションパネルの上縁部と接続されていることを特徴とする請求項3に記載の車両の電池支持構造。
【請求項6】
前記パーティションパネルは前記アッパバックパネルの前記後方領域と同一の高さまで延在し、前記アッパバックパネルの前記前方領域の前縁部は前記パーティションパネルの上縁部よりも下方に接続されており、前記カバーは前記アッパバックパネルの前記後方領域を車両前方へ延長するよう延在していることを特徴とする請求項3に記載の車両の電池支持構造。
【請求項7】
前記分離パネルは前記ラゲージルームの前端を郭定するパーティションパネルであり、前記パーティションパネルの上方部は車両の後方へ延在し上面に前記電池が固定される棚部を有し、前記棚部の高さは前記ラゲージルームの上端を郭定するアッパバックパネルの高さよりも低く、前記カバーは前記パーティションパネルの前記棚部より前方側の領域の上縁部とアッパバックパネルとを接続していることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の電池支持構造。
【請求項8】
前記アッパバックパネルの前縁部は前記電池よりも上方且つ後方側に位置し、前記パーティションパネルの前記棚部より後方の領域は上端にて前記アッパバックパネルの前縁部と接続されていることを特徴とする請求項7に記載の車両の電池支持構造。
【請求項9】
前記アッパバックパネルの前縁部は前記電池よりも上方且つ前方側に位置し、前記カバーは前記パーティションパネルを上方へ延長するよう延在していることを特徴とする請求項7に記載の車両の電池支持構造。
【請求項10】
前記アッパバックパネルの前縁部は前記アッパバックパネルの主要部より下方に位置し、前記パーティションパネルの前記棚部の後端は前記アッパバックパネルの前縁部と接続されていることを特徴とする請求項7に記載の車両の電池支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−103690(P2013−103690A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250919(P2011−250919)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】