説明

車両の電源装置配設構造

【課題】この発明は、空調ユニット及び電源装置を車両後部に配設した際に、車室後部前側の空間を確保しつつ、該車室後部の見栄えを確保することができる車両の電源装置配設構造を提供することを目的とする。
【解決手段】車室2の後部の底面を形成するフロアパン7の後部から車室2内に突出する左右一対のリアホイールハウス16と、フロアパン7の上方に配設され、電力の蓄電が可能なキャパシタ30とを備えた構造であって、リアホイールハウス16の後方には、車室2内を空調する後席空調ユニット21が配設されると共に、該後席空調ユニット21と側面視でオーバーラップする位置にキャパシタ30が配設され、後席空調ユニット21とキャパシタ30とは、リアホイールハウス16の車幅方向内側面(ハウスインナ下部26a)より車幅方向外側に位置するように配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室内後部の底面を形成する後部フロアと、該後部フロアから上記車室内に突出する左右一対のリアホイールハウスと、上記後部フロアの上方に配設され、電力の蓄電が可能な電源装置とを備えた車両の電源装置配設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両には、バッテリやキャパシタ等、電力の蓄電が可能な電源装置が備えられている。そして、近年では、ハイブリッドカーや電気自動車等のように車両走行用のモータを備えたものが普及したことに伴い、モータを駆動させるための電源装置をより大型化すること、ないしは電源装置の設置数を複数にすることが望まれている。
【0003】
しかしながら、この場合、電源装置の設置スペースをいかに確保するかが大きな課題となっている。例えば、上述した電源装置をエンジンルームに配設することが考えられるが、エンジンルームには、大型のエンジンに加え、エンジンの冷却装置や車両の制御装置(具体的には、CPU等を実装した電子回路基板等)といった様々な部品がレイアウトされており、新たに電源装置を配設することは困難である。
【0004】
そこで、従来、電源装置を車両後部に配設したものが提案されている。しかし、車両後部では、車体デザインの都合上、リアオーバーハングを極力延長しなことが望まれており、電源装置を車両後部に配設する際には、このような車体デザインを考慮する必要がある。
【0005】
また、車両後部では、例えばその下部のスペースがスペアタイヤの格納スペースとして既に利用されている場合もあり、車両後部においても電源装置のレイアウトにはある程度の制限がある。
【0006】
また、車両後部に電源装置を配設する際には、車両後突時における上記電源装置の挙動によって車室内の乗員へ影響が及ぶことがないように配設位置を考慮しなければならない。
【0007】
そこで、従来、車室後部の側面を構成するトリム部材と、車体パネル部材を構成するインナパネルとの間のスペースに電源装置としてのキャパシタを配設したものが提案されている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−224285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、近年では、車室を空調する空調ユニットを、車両前部のみならず車両後部にも配設したものが数多く採用されている。そこで、このように車両後部に空調ユニットを配設した車両において、電源装置を、上記特許文献1に開示されているように車両後部に配設することも考えられる。
【0010】
しかしながら、空調ユニットと電源装置とを車両後部に配設した場合、そのレイアウトによっては、空調ユニット及び/又は電源装置が車室空間に侵入してしまい、後席シートの居住空間や荷室空間として使用される車室後部前側の空間を狭めてしまう虞がある。
【0011】
また、空調ユニット及び/又は電源装置が車室空間に侵入するようなレイアウトすると、車室側面を構成するトリム部材を車幅方向内側に突出させる虞があり、この場合、結果として車両後部の見栄えの低下を招いてしまう。
【0012】
この発明は、空調ユニット及び電源装置を車両後部に配設した際に、車室後部前側の空間を確保しつつ、該車室後部の見栄えを確保することができる車両の電源装置配設構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の車両の電源装置配設構造は、車室内後部の底面を形成する後部フロアと、該後部フロアから上記車室内に突出する左右一対のリアホイールハウスと、上記後部フロアの上方に配設され、電力の蓄電が可能な電源装置とを備えた車両の電源装置配設構造であって、上記リアホイールハウスの後方には、上記車室内を空調する空調ユニットが配設されると共に、該空調ユニットと側面視でオーバーラップする位置に上記電源装置が配設され、上記空調ユニットと上記電源装置とは、上記リアホイールハウスの車幅方向内側面より車幅方向外側に位置するように配設されたものである。
【0014】
この構成によれば、電源装置及び空調ユニットを、後部フロアの上方においてリアホイールハウスの後方に配設すると共に、該リアホイールハウスの車幅方向内側面より車幅方向外側に位置するように配設したことで、電源装置、空調ユニットの車室空間への侵入を抑制でき、車室後部の側面をフラットに形成することが可能になる。
このように、車室後部の側面をフラットに形成することで、車室後部の側面での凹凸を減らして該車室後部の見栄えを確保することができる。
【0015】
さらに、電源装置と空調ユニットとを、リアホイールハウスの後方において側面視でオーバーラップする位置に配設したことで、車室後部前側の空間を広く確保することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記リアホイールハウスの上方に、上記車室内後部に配設された後部開口部からアクセス可能な荷室空間が備えられたものである。
【0017】
この構成によれば、荷室側面をフラットに形成することが可能になり、荷室側面での凹凸を減らして該荷室の見栄えを確保することができる。
また、電源装置及び空調ユニットを、リアホイールハウスの後方において側面視でオーバーラップする位置に配設し、車室後部前側の空間を広く確保することで、荷室の前部の容量を確保でき、比較的大型の荷物を安定して積載することができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記電源装置が、上記空調ユニットの車幅方向内側に配設されたものである。
【0019】
この構成によれば、車室側から電源装置に容易にアクセスすることができ、電源装置のメインテナンスの必要性が生じた時は、そのメインテナンスを容易に行うことができる。
【0020】
この発明の一実施態様においては、上記電源装置の前方に、該電源装置から供給される電力を制御する電力制御装置が配設され、上記電源装置と上記電力制御装置とが、車幅方向内側で同一平面上に位置するように配設されたものである。
【0021】
この構成によれば、電源装置と上記電力制御装置とを車両前後方向に配設すると共に、車幅方向内側で同一平面上に位置するように配設したことで、これら電源装置及び電力制御装置を車室の後部に配設したとしても、車室側面をフラットに形成しつつ、電力制御装置の車室空間への侵入を抑制して、車室後部前側の空間を広く確保することができる。
【0022】
この発明の一実施態様においては、上記電源装置と上記電力制御装置とが、一体的に配設されたものである。
【0023】
この構成によれば、電源装置及び電力制御装置の車体への組付けを容易に行うことができる。
【0024】
この発明の一実施態様においては、上記電源装置が、ダクトを介して上記空調ユニットと連結されたものである。
【0025】
この構成によれば、空調ユニットからの送風を利用して、電源装置を冷却することができる。
【0026】
この発明の一実施態様においては、上記リアホイールハウスとクウォータウィンドとの間に、下方に凹設する凹設部が備えられたものである。
【0027】
この構成によれば、凹設部をリアホイールハウスの上方に備えることで、この凹設部を、例えば飲料水用容器等のカップを位置決めするカップホルダとして使用したり、小物入れとして使用したりすることができる。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、電源装置及び空調ユニットを、後部フロアの上方においてリアホイールハウスの後方に配設すると共に、該リアホイールハウスの車幅方向内側面より車幅方向外側に位置するように配設したことで、電源装置、空調ユニットの車室空間への侵入を抑制でき、車室後部の側面をフラットに形成することが可能になる。
このように、車室後部の側面をフラットに形成することで、車室後部の側面での凹凸を減らして該車室後部の見栄えを確保することができる。
【0029】
さらに、電源装置と空調ユニットとを、リアホイールハウスの後方において側面視でオーバーラップする位置に配設したことで、車室後部前側の空間を広く確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施形態に係る電源装置配設構造を備える車両を示す側面図。
【図2】車両の後部側面を車室から見た側面図であって、リアサイドトリムを取外した状態を示す図。
【図3】図2のA−A線矢視断面相当の図。
【図4】図2のB−B線矢視断面相当の図。
【図5】図2のC−C線矢視断面相当の図。
【図6】図2のD−D線矢視断面相当の図。
【図7】キャパシタを備える減速回生電力システムユニットを示す斜視図。
【図8】この発明の他の実施形態に係る電源装置配設構造を備える車両を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、本発明の実施形態に係る電源装置配設構造を備える車両1を示す側面図である。本実施形態は、前後方向に3列のシートを備えたステーションワゴンタイプの車両に、本発明の電源装置配設構造を適用した場合の一例である。なお、図中において矢印(F)は車両前方、矢印(R)は車両後方を示す。
【0032】
図1に示すように、車両1の車室2の後部には、荷室3が形成されており、車室2には、運転席を含む左右一対の1列目シート4と、1列目シート4の後側に配置された2列目シート5とが装備され、2列目シート5の後側には、荷室3の直ぐ前方に配置された3列目シート6が装備されている。そして、本実施形態に係る各シート4、5、6は、車室2のフロア面を形成するフロアパン7の上方に設けられている。
【0033】
また、車両1の側面には、1列目シート4の略左右両側方に乗降口9が形成されている。これら乗降口9を開閉自在に覆う左右一対のフロントドア10が設けられている。各フロントドア10は、前端部が車体の本体に鉛直軸心回りに回動自在に連結されたヒンジドアである。
【0034】
また、車両1の側面には2列目シート5近傍の略左右両側に乗降口11が形成され、これら乗降口11を車両前後方向にスライドして開閉自在に覆う左右一対のスライドドア12が設けられている。2列目シート5または3列目シート6の乗員は、いずれも乗降口11を利用して乗降する。
【0035】
また、車室2(荷室3)の後側には、車両後方から荷室3にアクセスすることが可能な後部開口部としての荷室開口部13が形成されている。荷室開口部13は、車両1のルーフ部の後部にて回動可能に支持されたリアゲート14により開閉自在に覆われている。
【0036】
図2は、車両1の後部側面を車室2から見た側面図であって、リアサイドトリム24(後述)を取外した状態を示す図である。図1、図2に示すように、車両1の後部側面のうち、3列目シート6の側方には、クウォータウィンド15が配設されている。このクウォータウィンド15は、車体に固定されたウインドであり、開閉操作が不可となっている。
【0037】
さらに、3列目シート6の側方では、乗降口11の下側後端部に、図1に示す車輪W(ここでは後輪)を覆う左右一対のリアホイールハウス16が備えられ、フロアパン7の後部から車室2内に突出している。
【0038】
図3、図4、図5、図6は、それぞれ図2のA−A線矢視断面相当の図、B−B線矢視断面相当の図、C−C線矢視断面相当の図、D−D線矢視断面相当の図である。なお、図中において矢印(IN)は車両内方、矢印(OUT)は車両外方を示す。本実施形態では、図1〜図6に示すように、フロアパン7の後部上方に、後述する減速回生電力システムユニット17(以下、回生電力システムユニット17と略記する。)、スライドドア12の開閉駆動装置としてのパワースライドドア駆動ユニット18(以下、ドア駆動ユニット18と略記する。)、クーラーダクト19やヒーターダクト20が連結された後席空調ユニット21が配設されている。
【0039】
このうち、回生電力システムユニット17、ドア駆動ユニット18は、図1、図2に示すように、クウォータウィンド15の下方に配設され、側面視で該クウォータウィンド15とオーバーラップしない位置にある。
【0040】
また、後席空調ユニット21は、上述したクウォータウィンド15及びリアホイールハウス16の後方に配設される一方、前方には、2列目シート5(図1参照)用のシートベルト22を巻回した状態で収納するベルトリトラクタ23が配設されている。
【0041】
ここで、車両1の後部側面では、上述したリアホイールハウス16、回生電力システムユニット17、ドア駆動ユニット18、クーラーダクト19、ヒーターダクト20、後席空調ユニット21、シートベルト22、及びベルトリトラクタ23が、図3〜図6に示すように、車室2の後部側面を構成するリアサイドトリム24に覆われている。
【0042】
そして、このリアサイドトリム24には、図2、図6に示すように、リアホイールハウス16とクウォータウィンド15との間において、上部が車幅方向外側に凹設する段差部24aが形成されており、該段差部24aの一部には、下方に凹設する凹設部24bが形成されている。
【0043】
ところで、ホイールハウス16は、図4、図6に示すように、車体パネルを構成するインナパネル25の下部に形成された、車幅方向外側に湾曲する湾曲部25aと、該湾曲部25aの車幅方向内側に配設されたホイールハウスインナ26との接合により構成されている。
【0044】
また、車両1の後部側面では、図3〜図6に示すように、主に上述したインナパネル25と車幅方向外側のアウタパネル27とにより閉断面が形成されている。そして、インナパネル25とアウタパネル27とは、上縁部が接合されており、接合部近傍には、上述したクウォータウィンド15の下端部が位置している。
【0045】
さらに、アウタパネル27には、その一部に車幅方向内側に凹設する段差部27aが形成されており、該段差部27a上には、スライドドア12(図1参照)のスライド方向を規制するレール部28が配設されている。
【0046】
レール部28は、車両前後方向に延設されたカバー部材29によって車幅方向外側が覆われている。このカバー部材29によってレール部28を覆った状態では、その下方に位置するアウタパネル27と略連続した面を形成するように滑らかに連なっている。
【0047】
図7は、キャパシタ30を備える回生電力システムユニット17を示す斜視図である。車室2においてフロアパン7の後部上方に配設された回生電力システムユニット17は、例えば、車両1の減速時に発生する回生電力エネルギーを蓄電すると共に、蓄電した回生電力エネルギーを利用して車両1内の照明機器や、後席空調ユニット21等の空調機器、車両1の制御系統(例えばCPU等)等の各種電装機器に対し電力を供給するものである。
【0048】
回生電力システムユニット17には、電力の蓄電が可能な直流電源装置としてのキャパシタ30と、キャパシタ30から供給される電力の直流電圧を上記電装機器に適した直流電圧に変換制御する電力制御装置としてのDC−DCコンバータ31とが備えられ、これらキャパシタ30やDC−DCコンバータ31が、箱型をなす筐体32内に一体的に配設されている。
【0049】
ここで、上述した筐体32は、側面視で略L字状をなし、後部側の上下方向の幅が前部側の幅よりも大きく設定されている。キャパシタ30は、図1〜図3、図5、図7に示すように、筐体32の後部側に配設されており、車両前後方向に整列された上下2段の複数の蓄電素子30a、30a、…によって構成されている。
【0050】
また、キャパシタ30と共に筐体32内に配設されるDC−DCコンバータ31は、図1〜図4及び図7に示すように、キャパシタ30より車両前方の筐体32の前部側に配設されている。そして、これらキャパシタ30とDC−DCコンバータ31とは、図3に示すように、車幅方向内側で同一平面上に位置するように配設されている。
【0051】
また、筐体32には、図2、図7に示すように、その上部の後側1箇所、下部の前後2箇所の合計3箇所に締結脚部32aが設けられている。筐体32は、この締結脚部32aがボルト33B、ナット33Nといった締結部材によってフロアパン7、リアホイールハウス16、及びインナパネル25に固定されることで車体に固定されている。
【0052】
具体的には、下部前側の締結脚部32aが、図2に示すように、上述したボルト33B、ナット33Nによりリアホイールハウス16の頂部近傍に締結されると共に、下部後側の締結脚部32aが、フロアパン7の後端部に締結固定されている。そして、上部後側の締結脚部32aは、インナパネル25に締結固定されており、さらに詳しくは、インナパネル25のうち、クウォータウィンド15の後方に位置するリアピラー(Dピラー)のインナパネル相当部25Aに締結固定されている。
【0053】
キャパシタ30及びDC−DCコンバータ31は、このように筐体32が車体に固定された状態では、図1、図2に示すように、クウォータウィンド15と側面視でオーバーラップしない位置に配設されている。特に、キャパシタ30は、図1〜図4、図5に示すように、リアホイールハウス16の後方にて後席空調ユニット21と側面視でオーバーラップする位置にあり、これよりも車幅方向内側に配設されている。
【0054】
本実施形態では、上述したキャパシタ30、DC−DCコンバータ31、及び後席空調ユニット21が、図3に示すように、リアホイールハウス16の車幅方向内側面となるハウスインナ下部26aよりも車幅方向外側に位置している。
【0055】
ところで、スライドドア12の開閉駆動装置としてのドア駆動ユニット18には、モータが内蔵されており、このモータの駆動により、ドア駆動ユニット18は、図示しないワイヤを介してスライドドア12(図1参照)に取付けられたセンターローラを移動させることが可能になっている。
【0056】
ここで、スライドドア12のセンターローラは、上述したレール部28上を摺動可能に支持されている。このため、ドア駆動ユニット18のモータを駆動させると、上記センターローラは、レール部28に沿って車両前後方向に摺動し、これによって、スライドドア12は車両前後方向にスライドして開閉されるようになっている。このように、スライドドア12は、ドア駆動ユニット18の上記モータの駆動によって自動的に開閉駆動される電動スライドドアとなっている。
【0057】
また、図3に示す後席空調ユニット21は、空調風を生成して2列目シート5や3列目シート6(図1参照)といった後席シートの乗員向けに車室2内を空調するものであり、図示しないブラケットを介して車体のインナパネル25に固定されている。
【0058】
また、後席空調ユニット21は、車両1の側面に形成された図示しない外気導入口から外気を導入するブロア部21aを有している。後席空調ユニット21は、ブロア部21aによって導入した外気から、公知の方法で温風や冷却風といった空調風を生成する。
【0059】
そして、上述した空調風のうち、冷却風は、後席空調ユニット21に連結された図2に示すクーラーダクト19を通じて前記後席シートの乗員に向けて供給される一方、温風は、後席空調ユニット21に連結された図2〜図4、図6、図7に示すヒーターダクト20を通じて前記後席シートの乗員に向けて供給される。
【0060】
ここで、クーラーダクト19は、後席空調ユニット21から上方に延びるように配設される一方、ヒーターダクト20は、クウォータウィンド15とリアホイールハウス16との間において、車両前方に延びるように配設されている。
【0061】
また、後席空調ユニット21には、そのブロア部21aにおいて、図2、図4、図7に示すように車幅方向内側に延びる補助ダクト34が連結されており、後席空調ユニット21は、補助ダクト34を介して回生電力システムユニット17の筐体32(キャパシタ30、DC−DCコンバータ31)に連結されている。
【0062】
一方、筐体32の上面部には、図2、図4に示すように、開口32bが形成され、補助ダクト34の端部が取付けられている。さらに、筐体32には、その後面部に排気口32cが取付けられており、この排気口32cは、車室2内の空気を排出する図示しないエキストラクタチャンバに連通している。
【0063】
このような構成により、ブロア部21aによって車両1に導入された外気は、その一部が冷却風や温風といった空調風の生成のために用いられることなく、そのまま補助ダクト34を介して筐体32内のキャパシタ30及びDC−DCコンバータ31に向かって送風され、その後、排気口32c及び上記エキストラクタチャンバを通じて車外に排気される。
【0064】
ところで、本実施形態では、電源装置としてのキャパシタ30及び後席空調ユニット21を、フロアパン7の後部上方においてリアホイールハウス16の後方に配設すると共に、図3に示すように、該リアホイールハウス16のハウスインナ下部26aよりも車幅方向外側に位置するように配設したことで、図3、図5に示すように、後席空調ユニット21、キャパシタ30の車室2への侵入を抑制でき、リアサイドトリム24を、筐体32(キャパシタ30)やリアホイールハウス16(ハウスインナ下部26a)に沿ってフラットに形成することが可能になっている。
【0065】
このように、リアサイドトリム24をフラットに形成することで、車室2の後部側面での凹凸を減らしてその見栄えを確保することができる。
【0066】
さらに、キャパシタ30と後席空調ユニット21とを、リアホイールハウス16の後方において、側面視でオーバーラップする位置に配設したことで、車室2の後部前側の空間を広く確保することができる。本実施形態の場合、この空間は、3列目シート6の居住空間として使用されている。従って、本実施形態では、上述した空間を広く確保することで、3列目シート6の乗員の居住性を確保することができる。
【0067】
また、今後、十分な電力を蓄電するためにキャパシタ30が大型化されることが考えられるが、このような場合であっても、乗員の居住空間や荷室空間ができるだけ犠牲にならない位置にキャパシタ30を配設する必要がある。また、キャパシタ30が大型化されると、通常であれば大型化に伴って放熱量も増加するため、別途冷却装置等を配設する必要があり、さらに重量及びコストの増加が懸念される。
【0068】
本実施形態では、多数の補機が車両1に配設されていることによってレイアウトの制限を受ける中で、車体側面となる車室2の側面にキャパシタ30を配設することで、車室2の居住空間や荷室3の使い勝手を確保することができる。そして、車室2に対して可及的に外側の位置にキャパシタ30をレイアウトすることで、車外の走行風の作用によって冷却効果を得ることができ、別途冷却装置を配設することなくキャパシタ30を冷却することができる。
【0069】
また、車両1の後部にキャパシタ30を配設する際には、車両1の後突時におけるキャパシタ30の挙動によって車室2内の乗員へ影響が及ぶことがないように配設位置を考慮しなければならないが、本実施形態では、車室2の側面にキャパシタ30を配設しているため、車両1の後突時における影響を防止できる。
【0070】
また、キャパシタ30を、後席空調ユニット21の車幅方向内側に配設することで、リアサイドトリム24を車体から取外せば、車室2側からキャパシタ30に容易にアクセスすることができる。このため、キャパシタ30のメインテナンスの必要性が生じた時は、キャパシタ30のメインテナンスを容易に行うことができる。
【0071】
また、キャパシタ30とDC−DCコンバータ31とを、車両前後方向に配設すると共に、車幅方向内側で同一平面上に位置するように配設したことで、キャパシタ30及びDC−DCコンバータ31を車室2の後部に配設したとしても、図3、図5に示すように、リアサイドトリム24をフラットに形成しつつ、DC−DCコンバータ31の車室2への侵入を抑制して、車室2の後部前側の空間を広く確保することができる。
【0072】
また、キャパシタ30とDC−DCコンバータ31とを筐体32内に一体的に配設することで、これらの車体への組付けを容易に行うことができる。
【0073】
また、回生電力システムユニット17のキャパシタ30等を、補助ダクト34を介して後席空調ユニット21に連結したことで、該後席空調ユニット21からの送風を利用して、キャパシタ30を冷却することができ、本実施形態では、ブロア部21aによって導入した外気の一部を利用して、キャパシタ30を冷却することができる。
【0074】
しかも、ブロア部21aに補助ダクト34を連結したことで、3列目シート6の乗員向けに用いられる空調風ではなく、該空調風が生成される前の外気の一部をそのままキャパシタ30等に供給することができる。このため、上記乗員に向けて供給される空調風の風量を確保でき、後席空調ユニット32の空調機能を確保することができる。
【0075】
また、クーラーダクト19と補助ダクト34とが分離されているため、例えば、キャパシタ30を冷却した後の熱気が逆流してクーラーダクト19に供給されるといった不都合を防止できる。このため、後席空調ユニット32の空調機能が低下することをより確実に防止できる。
【0076】
但し、本発明は、外気をそのまま供給してキャパシタ30を冷却することに必ずしも限定されない。後席空調ユニット32の空調機能に大きな影響を及ぼすことがない場合には、例えば、クーラーダクト19の一部に分岐ダクトを配設して、この分岐ダクトをキャパシタ30に連結してもよい。
【0077】
また、後席空調ユニット21やキャパシタ30をリアホイールハウス16の後方に配設したことで、車室2の後部前側の側部にスペースを形成することができる。このため、本実施形態では、クウォータウィンド15とリアホイールハウス16との間のリアサイドトリム24に段差部24aを形成して、その一部に凹設部24bを備えることが可能になっている。
【0078】
このように、凹設部24bを、リアホイールハウス16の上方に備えることで、この凹設部24bを、例えば図6に示すように飲料水用容器等のカップCUを位置決めするカップホルダとして使用したり、小物入れとして使用したりすることができる。
【0079】
ところで、本発明は、スライドドアを電動スライドドアとすることに必ずしも限定されるものではなく、手動で開閉するものであってもよい。
【0080】
また、本発明は、車室後部に後部開口部を備える車両全般に適用することが可能であり、必ずしもステーションワゴンタイプの車両に限定されるものではない。
【0081】
また、上述した実施形態では、図1に示すように、フロアパン7の後部上方においてリアホイールハウス16の上方にシート(図1では、3列目シート6)を配設しているが、本発明は必ずしも限定されるものではない。例えば、図8に示す車両50のように、リアホイールハウス16の上方に荷室53を備えたものに本発明を適用してもよい。なお、図8に示す実施形態において、図1〜図7を参照して説明した最初の実施形態と同様の構成要素については、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0082】
図8に示す車両50は、車室52に前後2列のシート4、5を配設したハッチバックタイプの車両であり、車両50では、フロアパン7の後部上方において、2列目シート5の後方に荷室53が備えられている。
【0083】
また、2列目シート5の後方では、乗降口11の下側後端部に、車輪Wを覆う左右一対のリアホイールハウス16が備えられ、フロアパン7の後部から荷室53内に突出している。
【0084】
そして、本実施形態では、上述した最初の実施形態と同様、リアホイールハウス16の後方において、キャパシタ30が後席空調ユニット21と側面視でオーバーラップする位置に配設されている。
【0085】
本実施形態の場合、後席空調ユニット21やキャパシタ30を、該リアホイールハウス16のハウスインナ下部(ここでは不図示)よりも車幅方向外側に位置するように配設することで、荷室53の側面を構成するリアサイドトリム(ここでは不図示)を、キャパシタ30やリアホイールハウス16に沿ってフラットに形成することが可能になり、荷室53の側面での凹凸を減らして該荷室53の見栄えを確保することができる。
【0086】
また、本実施形態の場合、後席空調ユニット21やキャパシタ30を、リアホイールハウス16の後方において、側面視でオーバーラップする位置に配設したことで、最初の実施形態と同様、車室52の後部前側の空間を広く確保することができる。本実施形態の場合、上記空間は、荷室53の空間として使用されており、上述した空間を広く確保することで、荷室53の前部の容量を確保でき、比較的大型の荷物を安定して積載することができる。
【0087】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の、後部フロアは、フロアパン7に対応し、
以下同様に、
電源装置は、キャパシタ30に対応し、
後部開口部は、荷室開口部13に対応し、
リアホイールハウス16の車幅方向内側面は、ハウスインナ下部26aに対応し、
電力制御装置は、DC−DCコンバータ31に対応し、
ダクトは、補助ダクト34に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0088】
2、52…車室
3、53…荷室
7…フロアパン
13…荷室開口部
15…クウォータウィンド
16…リアホイールハウス
21…後席空調ユニット
24b…凹設部
26a…ハウスインナ下部
30…キャパシタ
31…DC−DCコンバータ
34…補助ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内後部の底面を形成する後部フロアと、
該後部フロアから上記車室内に突出する左右一対のリアホイールハウスと、
上記後部フロアの上方に配設され、電力の蓄電が可能な電源装置とを備えた車両の電源装置配設構造であって、
上記リアホイールハウスの後方には、上記車室内を空調する空調ユニットが配設されると共に、
該空調ユニットと側面視でオーバーラップする位置に上記電源装置が配設され、上記空調ユニットと上記電源装置とは、上記リアホイールハウスの車幅方向内側面より車幅方向外側に位置するように配設された
車両の電源装置配設構造。
【請求項2】
上記リアホイールハウスの上方には、上記車室内後部に配設された後部開口部からアクセス可能な荷室空間が備えられた
請求項1記載の車両の電源装置配設構造。
【請求項3】
上記電源装置は、上記空調ユニットの車幅方向内側に配設された
請求項1または2記載の車両の電源装置配設構造。
【請求項4】
上記電源装置の前方には、該電源装置から供給される電力を制御する電力制御装置が配設され、
上記電源装置と上記電力制御装置とは、車幅方向内側で同一平面上に位置するように配設された
請求項3記載の車両の電源装置配設構造。
【請求項5】
上記電源装置と上記電力制御装置とは、一体的に配設された
請求項4記載の車両の電源装置配設構造。
【請求項6】
上記電源装置は、ダクトを介して上記空調ユニットと連結された
請求項1〜5のいずれか一項に記載の車両の電源装置配設構造。
【請求項7】
上記リアホイールハウスとクウォータウィンドとの間には、下方に凹設する凹設部が備えられた
請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両の電源装置配設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−183944(P2011−183944A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51556(P2010−51556)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】