説明

車両の骨格部構造

【課題】低コストで効果的に骨格部材の断面崩れを抑制させる。
【解決手段】インナパネル130は、第一角部K1の角度変化に対する剛性及び第二角部K2の角度変化に対する剛性が第三角部K3の角度変化に対する剛性よりも大きくなっている。よって、凹部150の底部152の中立軸G側への移動によって、第一角部K1の角度変化及第二角部K2の角度変化よりも第三角部K3の角度変化が大きくなる。凸部140A,140Bの幅方向外側の側面部144A,144Bは、矢印J1で示すように、幅方向内側(中立軸G側)に向かう方向に回転し、フランジ部132が矢印J3で示すように幅方向内側に引っ張られる。これにより、アウタパネルレインフォース120の変形が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の骨格部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
断面ハット形状のインナパネルとアウタパネル、及び両パネルの間に配置されるアウタパネルレインフォースとからなるセンターピラーが知られている。
【0003】
特許文献1には、軸方向の一部の横断面における略ハット形状の底部のうちの少なくとも一部の領域が同じ断面における他の領域よりも板厚が薄い材料又は強度が低い材料により構成することで、曲げ変形によって吸収する単位質量当りの衝突エネルギー量を高めたセンターピラーが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008―68759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、図11に示すように、断面ハット形状のアウタ側骨格部材910と断面ハット形状のインナ側骨格部材920のフランジ912、922同士を接合した閉断面構造のセンターピラー等の車両の骨格部材900が知られている。
【0006】
図10(A)及び図11(A)に示すように、このような構造の車両の骨格部材900は、アウタ側骨格部材910側が凸状となるような曲げモーメントMを受けて撓むと、図10(B)及び図11(B)に示すように、線長が変化しない中立軸Gに対して引張側にあるアウタ側骨格部材910は、線長の不足を補うために内側に短絡しようとするため中立軸G側に寄っていく。一方、中立軸Gに対して圧縮側にあるインナ側骨格部材920は、線長の余長分を吸収するため、やはり中立軸G側に寄っていく。
【0007】
したがって、図10(B)及び図11(B)に矢印Yで示すように、アウタ側骨格部材910の底部914とインナ側骨格部材920の底部924とが接近するように変形(つぶれるように変形)すると共に、図11(B)に矢印Xで示すように、フランジ912、922がそれぞれ幅方向外側に広がるように変形(延びるように変形)する所謂断面崩れが発生する。
【0008】
そして、このように曲げモーメントMを受けて骨格部材900に断面崩れが発生すると、断面崩れが発生していない場合の強度(理論値の強度)よりも強度が低下し、骨格部材900の変形が大きくなる。
【0009】
よって、骨格部材900の強度を確保するために、例えば、断面内にバルクヘッドを挿入して強度をあげることが考えられる。しかし、このようなバルクヘッドを挿入する方法は部品点数が増えると共にコストアップの原因となる。したがって、低コストで効果的に車両の骨格部材の断面崩れを抑制させることが望まれている。
【0010】
本発明は、上記事実を考慮し、低コストで効果的に骨格部材の断面崩れを抑制させた車両の骨格部構造を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、車両幅方向外側に配置された断面ハット形状のアウタ側骨格部材と車両幅方向内側に配置されたインナ側骨格部材とのフランジ部同士が接合された閉断面構造の骨格部材と、前記インナ側骨格部材における前記フランジ部の間に間隔をあけて対を成して形成されると共に、頂面部が前記骨格部材の中立軸よりも車両幅方向内側に位置するように形成された台形状の対を成す凸部と、前記インナ側骨格部材における対を成す前記凸部の間に形成される凹部と、前記凸部における前記中立軸から離れた外側の側面部と前記頂面部とで構成される第一角部と、前記凸部における前記中立軸側の内側の側面部と前記凹部の底面部とで構成される第二角部と、前記凸部における前記内側の側面部と前記頂面部とで構成され、前記第一角部の剛性及び前記第二角部の剛性よりも剛性が小さい第三角部と、を備える。
【0012】
請求項1の発明では、骨格部材に車両幅方向外側が凸状となるような曲げモーメントが加わると、圧縮側のインナ側骨格部材の凹部の底面部が中立軸側に移動する。インナ側骨格部材は、第一角部の剛性及び第二角部の剛性よりも第三角部の剛性が小さいので、凹部の底面部の中立側への移動に伴う第一角部の角度変化及び第二角部の角度変化よりも第三角部の角度変化が大きくなる(第三角度部の角度変化が最も大きくなる)。これにより、凸部の外側の側面部がフランジ部を内側に引き込む方向に回転する。つまり、インナ側骨格部材はフランジ部が内側に引き込まれるように変形する。よって、圧縮側のアウタ側骨格部材のフランジ部が外側に広がることが抑制され、その結果、骨格部材の断面崩れが抑制される。
【0013】
請求項2の発明は、前記インナ側骨格部材には、前記第一角部の剛性及び前記第二角部の剛性を強化する剛性強化部が設けられている。
【0014】
請求項2の発明では、インナ側骨格部材に設けられた剛性強化部によって第一角部の剛性及び第二角部の剛性が強化されることで、例えば第一角部及び第二角部の材質を変えて剛性を変える方法と比較し、容易に第一角部の剛性及び第二角部の剛性が第三角部の剛性よりも大きくなる。
【0015】
請求項3の発明は、前記剛性強化部は、前記第一角部の稜線を跨ぐように設けられた第一ビードと、前記第二角部の稜線を跨ぐように設けられた第二ビードと、を備える。
【0016】
請求項3の発明では、第一角部の稜線を跨ぐように設けられた第一ビードと、第二角部の稜線を跨ぐように設けられた第二ビードと、によって、第一角部の剛性及び第二角部の板厚を変えることなく、第一角部の剛性及び第二角部の剛性が第三角部の剛性よりも大きくなる。
【0017】
請求項4の発明は、前記剛性強化部は、前記第一角部の稜線を含むように設けられた前記第一肉厚部と、前記第二角部の稜線を含むように設けられた前記二肉厚部と、を備える。
【0018】
請求項4の発明では、第一角部の稜線を含むように設けられた第一肉厚部と、第二角部の稜線を含むように設けられただ第二肉厚部と、によって、第一角部の剛性及び第二角部の形状を複雑にすることなく、第一角部の剛性及び第二角部の剛性が第三角部の剛性よりも大きくなる。
【0019】
請求項5の発明は、前記インナ側骨格部材には、前記第三角部の稜線を含むように肉薄部が設けられている。
【0020】
請求項5の発明は、インナ側骨格部材に第三角部の稜線を含むように設けられた肉薄部によって、第三角部の剛性が小さくなり、第三角部がより大きく角度変化するので、骨格部材の断面崩れが更に抑制される。
【0021】
請求項6の発明は、車両上下方向に沿って設けられたセンターピラーは、車両のロールオーバー時に車両幅方向内側に内倒れする方向に曲げモーメントがかかった際の断面崩れが抑制されているので、断面崩れが抑制されていない場合よりもセンターピラーの強度が向上し、その結果、ロールオーバー時におけるセンターピラーの変形が抑制される。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明によれば、例えば断面内にバルクヘッドを挿入する構成と比較し、低コストで骨格部材の断面崩れを抑制することができる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、インナ側骨格部材に設けられた剛性強化部によって、例えば材質を変えて剛性を異ならせる構成と比較し、容易に第一角部の剛性及び第二角部の剛性を第三角部の剛性よりも大きくすることができる。
【0024】
請求項3に記載の発明によれば、第一角部の及び第二角部の板厚を変えることなく、第一角部の剛性及び第二角部の剛性を第三角部の剛性よりも大きくすることができる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、第一角部及び第二角部の形状を複雑にすることなく、第一角部の剛性及び第二角部の剛性を第三角部の剛性よりも大きくすることができる。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、第三角部の稜線を含むように設けられた肉薄部を有しない構成と比較し、骨格部材の断面崩れをより効果的に抑制することができる。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、本発明が適用されていないセンターピラーと比較し、ロールオーバー時等の曲げモーメントが加わった際のセンターピラーの変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(A)は本発明に係る車両の骨格部構造が適用されたセンターピラーを備える車両の側面図であり、(B)は(A)のA−A線に沿った断面図である。
【図2】図1(A)における丸で囲ったB部の第一実施形態のセンターピラーの断面斜視図である。
【図3】図1(A)における丸で囲ったB部のセンターピラーを構成するインナパネルを示す斜視図である。
【図4】図1(A)のC−C線に沿ったセンターピラーの断面図である。
【図5】センターピラーに曲げモーメントが加わった状態を示す図4に対応する断面図である。
【図6】第二実施形態のセンターピラーを構成するインナパネルを示す図3に対応する斜視図である。
【図7】第二実施形態のセンターピラーを示す図4に対応する断面図である。
【図8】第三実施形態のセンターピラーを示す図4に対応する断面図である。
【図9】比較例のセンターピラーに曲げモーメントが加わった状態を示す図5に対応する断面図である。
【図10】参考例としての車両の骨格部材を模式的に示す(A)は側面図であり、(B)は骨格部材に曲げモーメントが加わり湾曲した状態を模式的に示す側面図である。
【図11】参考例としての車両の骨格部材を模式的に示す’(A)は斜視図であり、(B)は骨格部材に曲げモーメントが加わって湾曲し、断面崩れが発生した状態を模式的に示す(A)のD−D線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第一実施形態>
本発明に係る車両の骨格部構造が適用された第一実施形態のセンターピラーについて、図1〜図5を用いて説明する。なお、各図において適宜示される矢印FRは車両前後方向前側を示しており、矢印UPは車両上下方向上側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。また、詳細は後述するが矢印Wはセンターピラーの幅方向を示している。
【0030】
[センターピラーの構造]
図1に示すように、車両10の側部12には、本発明の第一実施形態に係る車両の骨格部構造が適用されたセンターピラー100が設けられている。センターピラー100は、側部12に形成されたフロントドア用開口部14とリアドア用開口部16との間に配置され、略車両上下方向を長手方向として配置された車両10の骨格部材とされている。またセンターピラー100は、車両10の左右の側部12にそれぞれ設けられている。なお、図1(B)に示すように、センターピラー100は、車両幅方向外側に膨出するように若干湾曲している。
【0031】
図1(B)に示すように、センターピラー100の上端部100Aは、ルーフサイドレール30における車体前後方向の中間部に結合されている。ルーフサイドレール30は、ルーフ20の車両幅方向の両側部に接合され、略車両前後方向を長手方向として配置された車両の骨格部材とされている。センターピラー100の下端部100Bは、ロッカ40における車体前後方向の中間部に結合されている。ロッカ40は、車両下部のフロア22の車両幅方向の両側部に接合され、略車両前後方向を長手方向として配置された車両の骨格部材とされている。なお、図1(B)は車両10の左側の側部12のみが図示されているが、右側の側部12も左右対称である以外は同様の構成である。
【0032】
図2と図4とに示すように、センターピラー100は、車両10の外面の意匠面を構成するアウタパネル(外板)110、アウタパネル110の車両幅方向内側に配置されたインナ側骨格部材の一例としてのインナパネル130、及び両パネルの間に配置されたアウタ側骨格部材の一例としてのアウタパネルレインフォース120を有している。
【0033】
アウタパネル110及びアウタパネルレインフォース120は断面ハット形状とされ、車両幅方向内側を開口側として配置されている。そして、アウタパネル110のフランジ部112、アウタパネルレインフォース120のフランジ部122、及びインナパネル130のフランジ部132が、車両幅方向に重ねられ接合されることで、閉断面構造のセンターピラー100が構成されている。なお、図中のGは中立軸Gを示している。
【0034】
なお、センターピラー100の「幅方向」とは、中立軸Gと直交する断面におけるフランジ部112,122,132に沿った方向が幅方向であり、図における矢印Wが幅方向を示している。なお、本実施形態では、幅方向は、車両前後方向と略一致する。また、幅方向Wにおける前述した中立軸Gに向かう方向を「幅方向内側」とし、中立軸Gから離れる方向を「幅方向外側」とする。
【0035】
図2〜図4に示すように、インナパネル130には、幅方向Wに間隔をあけて台形状の対を成す凸部140A,140Bが形成されている。また、これら対を成す台形状の凸部140Aと凸部140Bと間に凹部150が形成される。対を成す凸部140A,140Bの台形の頂面部142A,142Bは、中立軸Gよりも車両幅方向内側(インナパネル130側)に位置する。また、凹部150の底面部152は、頂面部142A,142Bよりも更に車両幅方向内側に位置する(中立軸Gから離れている)。また、本実施形態においては、センターピラー100の凸部140A,140Bは同形状とされ、センターピラー100の断面形状は、中立軸Gを通る直線を軸に対して(幅方向Wに対して)線対称となっている。
【0036】
凸部140A,140Bにおける幅方向外側の台形の側面部144A,144Bと頂面部142A,142Bとで形成された角部を第一角部K1とし、凸部140A,140Bの幅方向内側の台形の側面部146A,146Bと凹部150の底面部152とで形成された角部を第二角部K2とし、凸部140A,140Bにおける幅方向内側の台形の側面部146A、146Bと頂面部142A,142Bとで形成された角部を第三角部K3とする。
【0037】
また、インナパネル130には、第一角部K1の稜線R1を跨ぐように車両幅方向内側に凹んだビード160A,160Bが設けられ、第二角部K2の稜線R2を跨ぐように車両幅方向外側に凹んだビード162A,160Bが設けられている。ビード160A,160B、162A,162Bは、長手方向に所定の間隔をあけて同じ位置に設けられている(図2及び図3を参照)。
【0038】
そして、このようにビード160A,160B、162A,162Bが設けられることで、第一角部K1の角度変化に対する剛性及び第二角部K2の角度変化に対する剛性が、第三角部K3の角度変化に対する剛性よりも大きくなる。言い換えると、第三角部K3の角度変化に対する剛性が最も小さくなる。
【0039】
[作用及び効果]
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0040】
図1(B)に示すように、車両10のロールオーバー時等の際に、センターピラー100には内倒れする方向に曲げモーメントMがかかる。
【0041】
図5に示すように、車両幅方向外側に配置されたアウタパネルレインフォース120は、線長が変化しない中立軸Gに対して引張側にあるので、底面部152が矢印Y1で示すように中立軸G側に寄ろうとすると共に、フランジ部122が矢印Xで示すように幅方外側に広がろうとする。なお、想像線で示されているアウタパネルレインフォース120は、仮にこのように変形した場合の形状を示している。
【0042】
一方、圧縮側にあるインナパネル130は、凹部150の底部152が矢印Y2で示すように中立軸G側に寄っていく。
【0043】
ここで、インナパネル130は、凸部140A,140Bの頂面部142A,142Bが中立軸Gよりも車両幅方向内側に位置し、凹部150の底面部152は更に車両幅方向内側に位置している。そして、ビード160A,160B、162A,162Bによって第一角部K1の角度変化に対する剛性及び第二角部K2の角度変化に対する剛性が第三角部K3の角度変化に対する剛性よりも大きくなっている。つまり、第三角部K3の角度変化に対する剛性が最も小さくなっている。
【0044】
よって、凹部150の底部152の中立軸G側への移動によって、第一角部K1の角度変化及第二角部K2の角度変化よりも第三角部K3の角度変化が大きくなる。つまり、第三角部K3が最も大きく角度変化する。したがって、凸部140A,140Bの幅方向外側の側面部144A,144Bが、矢印J1で示すように、幅方向内側(中立軸G側)に向かう方向に回転し、フランジ部132が矢印J3で示すように幅方向内側に引き込まれる。
【0045】
これにより、フランジ部132と接合されているアウタパネルレインフォース120のフランジ部122も幅方向内側に引き込まれるので、フランジ部122の幅方外側への広がりが抑制され、アウタパネルレインフォース120が中立軸G側へ寄っていく変形が抑制される。つまり、想像線で示されているようなアウタパネルレインフォース120の変形が抑制される。
【0046】
したがって、ロールオーバー時等の曲げモーメントMによるセンターピラー100の断面崩れが抑制されるので、断面崩れによるセンターピラー100の曲げ強度の低下が抑制される。よって、断面崩れが抑制されていない場合(断面崩れが大きい場合)と比較し、センターピラー100の強度が向上するので、ロールオーバー時等のセンターピラー100の曲げ変形が抑制される。
【0047】
なお、図1(B)に示すように、センターピラー100は、車両幅方向外側に膨出するように若干湾曲している。このように湾曲している場合は、凹側に配置されたインナパネル130が圧縮側となる曲げモーメントが加わる方が、インナパネル130が引張側となる曲げモーメントが加わるよりも、断面崩れが大きくなる。よって、車両幅方向外側に膨出するように若干湾曲し、凹側に配置されたインナパネル130が圧縮側となる曲げモーメントが加わることが多いセンターピラー100に本発明を適用して断面崩れを抑制して強度を向上させることは好適である。
【0048】
また、本実施形態では、ビード160A,160B、162A,162Bを設けることで、インナパネル130の全体の板厚を変えることなく、第一角部K1の角度変化に対する剛性及び第二角部K2の角度変化に対する剛性が第三角部K3の角度変化に対する剛性よりも大きくなる構成とした。よって、インナパネル130の加工前のパネル(板材)の製造が容易である。
【0049】
ここで、第一角部K1の角度変化に対する剛性及び第二角部K2の角度変化に対する剛性が第三角部K3の角度変化に対する剛性よりも小さい、言い換えると、第三角部K3の角度変化に対する剛性が最も大きい場合の比較例を考える。
【0050】
図9に示すように、凹部150の底面部152の中立軸G側への移動によって、第一角部K1の角度変化及第二角部Kの角度変化は第三角部K3の角度変化よりも大きくなる。つまり、第三角部K3の角度変化が最も小さい。
【0051】
このような場合、第二角部K2が角度変化すると、矢印J2で示すように、第三角部K3が幅方向外側に押し出される。第三角部K3は剛性が高く角度変化しにくく第一角部K1は角度変化しやすいので、凸部140A,140Bの側面部144A,144Bを、矢印J4で示すように、幅方向外側に押し出そうとする。このため、フランジ部132が矢印Xで示すように幅方向外側に広がろうとする。つまり、アウタパネルレインフォース120のフランジ部122が幅方向外側に広がろうとする変形と同じようにインナパネル130のフランジ部132も変形する。
【0052】
したがって、第一角部K1の角度変化に対する剛性及び第二角部K2の角度変化に対する剛性が第三角部K3の角度変化に対する剛性よりも小さい構成(第三角部K3の角度変化に対する剛性が最も大きい構成)では、センターピラーの断面崩れを抑制させることはできない。
【0053】
これに対して、本実施形態のように、第一角部K1の剛性及び第二角部K2の剛性が第三角部K3の剛性よりも大きい(第三角部K3の剛性が最も小さい)構成とすることで、前述したように、フランジ部122,132の幅方向外側への広がりが抑制止され、これによりセンターピラー100の断面崩れが抑制される(図5参照)。
【0054】
<第二実施形態>
つぎに、本発明に係る車両の骨格部構造が適用された第二実施形態のセンターピラーについて、図6及び図7を用いて説明する。なお、本実施形態のセンターピラー200は、インナパネル230以外は、第一実施形態のセンターピラー100と同一の構造及び部材である。よって、インナパネル以外の部材には同一の符号を付し、インナパネル以外の部材の説明は省略する。また、インナパネルにおいても第一実施形態と同様の構造の部位には同一の符号付し、重複する説明は適宜省略する。
【0055】
[センターピラーの構造]
図6及図7に示すように、センターピラー200のインナパネル230には、幅方向Wに間隔をあけて台形状の対を成す凸部140A,140Bが形成されている。また、これら対を成す凸部140Aと凸部140Bと間に凹部150が形成される。
【0056】
インナパネル230には、第一角部K1の稜線R1を含むように肉厚部260A、260Bが設けられ、第二角部K2の稜線R2を含むように肉厚部262A,262Bが設けられている。肉厚部260A,260B,262A,262Bは、他の部位よりも厚板化された部位であり、稜線R1,R2に沿って延在する
【0057】
そして、このように肉厚部260A,260B、262A,262Bが設けられることで、第一角部K1の角度変化に対する剛性及び第二角部K2の角度変化に対する剛性が第三角部K3の角度変化に対する剛性よりも大きくなる。言い換えると、第三角部K3の角度変化に対する剛性が最も小さくなる。
【0058】
なお、肉厚部260A,260B,262A,262Bを形成する方法、言い換えると厚板化の方法は、どのような方法であってもよい。例えば、インナパネル230をプレス加工する前の状態で予め肉厚部260A,260B,262A,262Bとなる部位を板差厚結合、差厚ロール板、重ね合わせ等の方法で厚板化しておけばよい。
【0059】
[作用及び効果]
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0060】
インナパネル230に肉厚部260A,260B、262A,262Bを設けることで、第一角部K1の角度変化に対する剛性及び第二角部K2の角度変化に対する剛性が第三角部K3の角度変化に対する剛性よりも大きくなっている。したがって、第一実施形態と同様に、センターピラー200に曲げモーメントがかかった際のセンターピラー200の断面崩れが抑制される。よって、ロールオーバー時におけるセンターピラー200の曲げ変形が抑制される。
【0061】
なお、本実施形態では、肉厚部260A,260B、262A,262Bが設けることで剛性を強化しているので、第一角部K1及び第二角部K2の形状が複雑化しない。
【0062】
<第三実施形態>
つぎに、本発明に係る車両の骨格部構造が適用された第三実施形態のセンターピラーについて図8を用いて説明する。なお、本実施形態のセンターピラー300は、第二実施形態のセンターピラー200のインナパネル230に肉薄部360A,360B(詳細は後述する)を設けた以外は、同一の構造であるので、詳しい説明は省略する。
【0063】
[センターピラーの構造]
図8に示すように、センターピラー300のインナパネル330には、第三角部K3の稜線R3を含むように肉薄部360A、360Bが設けられている。肉薄部360A,360Bは、他の部位よりも薄板化された部位であり、稜線R3に沿って延在する。
【0064】
[作用及び効果]
つぎに、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0065】
肉薄部360A、360Bを設けることで第三角部K3の角度変化に対する剛性が小さくなるので、第三角部K3の角度変化がより大きくなる。よって、センターピラー300の断面崩れがより効果的に抑制される。
【0066】
なお、本実施形態では、第二実施形態と同様の肉厚部260A、260B、262A,262Bが設けられたインナパネルの第三角部K3に肉薄部360A,360Bを設けたが、これに限定されない。第一実施形態と同様のビード160A、160B、ビード162A,162Bが設けられたインナパネルの第三角部K3に肉薄部360A,360Bを設けてもよい。更に、ビードや肉厚部などの剛性強化部を第一角部K1及び第二角部K2に設けていないで、第三角部K3に肉薄部を設けた構成のインナパネルであってもよい。
【0067】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0068】
例えば、インナパネル130において、凸部140A,140Bの側面部144A,144B全体を他の部位よりも剛性を大きくし、フランジ部132が幅方向内側に引き込む際の側面部144A,144Bの撓みを抑制し、より効果的に断面崩れを抑制してもよい。なお、側面部144A,144B全体の剛性を大きくする方法はどのような方法であってもよい。例えば、ビードやリブを設けて剛性を大きくしてもよいし、板厚を厚くし剛性を大きくしてもよい。
【0069】
また、例えば、上記実施形態では、車両の骨格部材構造をセンターピラーに適用したが、これに限定されない。他の車両の骨格部材に適用してもよい。例えば、図1に示すルーフサイドレール30やロッカ40に車両の骨格部構造を適用してもよい。なお、ルーフサイドレールやロッカに適用する場合、フランジ部は車両上下方向に沿って配置される。よって、この場合の幅方向Wは、略車両上下方向となる。
【0070】
また、上記実施形態では第一角部及び第二角部の剛性を強化する剛性強化部は、ビード又は肉厚部であったが、これに限定されない。第一角部及び第二角部の剛性を強化することが可能であれば、どのような方法や構造で剛性を強化してもよい。例えば、第一角部及び第二角部の稜線を跨ぐように幅方向に沿ってリブを設けてもよい。
【0071】
また、上記の複数の実施形態は、適宜、組み合わされて実施可能である。例えば、ビードと肉厚部との両方を設けてもよい。
【0072】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0073】
10 車両
100 センターピラー(骨格部材)
120 アウタパネルレインフォース(アウタ側骨格部材)
122 フランジ部
130 インナパネル(インナ側骨格部材)
132 フランジ部
140A 凸部
140B 凸部
142A 頂面部
142B 頂面部
144A 外側の側面部
144B 外側の側面部
146A 内側の側面部
146B 内側の側面部
150 凹部
152 底面部
160A ビード(第一ビード、剛性強化部)
160B ビード(第一ビード、剛性強化部)
162A ビード(第二ビード、剛性強化部)
162B ビード(第二ビード、剛性強化部)
200 センターピラー(骨格部材)
260A 肉厚部(第一肉厚部、剛性強化部)
260B 肉厚部(第一肉厚部、剛性強化部)
262A 肉厚部(第二肉厚部、剛性強化部)
262B 肉厚部(第二肉厚部、剛性強化部)
300 センターピラー(骨格部材)
360A 肉薄部
360B 肉薄部
K1 第一角部
K2 第二角部
K3 第三角部
R1 第一角部の稜線
R2 第二角部の稜線
R3 第三角部の稜線
G 中立軸
W 幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向外側に配置された断面ハット形状のアウタ側骨格部材と車両幅方向内側に配置されたインナ側骨格部材とのフランジ部同士が接合された閉断面構造の骨格部材と、
前記インナ側骨格部材における前記フランジ部の間に間隔をあけて対を成して形成されると共に、頂面部が前記骨格部材の中立軸よりも車両幅方向内側に位置するように形成された台形状の対を成す凸部と、
前記インナ側骨格部材における対を成す前記凸部の間に形成される凹部と、
前記凸部における前記中立軸から離れた外側の側面部と前記頂面部とで構成される第一角部と、
前記凸部における前記中立軸側の内側の側面部と前記凹部の底面部とで構成される第二角部と、
前記凸部における前記内側の側面部と前記頂面部とで構成され、前記第一角部の剛性及び前記第二角部の剛性よりも剛性が小さい第三角部と、
を備える車両の骨格部構造。
【請求項2】
前記インナ側骨格部材には、前記第一角部の剛性及び前記第二角部の剛性を強化する剛性強化部が設けられている請求項1に記載の車両の骨格部構造。
【請求項3】
前記剛性強化部は、
前記第一角部の稜線を跨ぐように設けられた第一ビードと、
前記第二角部の稜線を跨ぐように設けられた第二ビードと、
を備える請求項2に記載の車両の骨格部構造。
【請求項4】
前記剛性強化部は、
前記第一角部の稜線を含むように設けられた前記第一肉厚部と、
前記第二角部の稜線を含むように設けられた前記第二肉厚部と、
を備える請求項2に記載の車両の骨格部構造。
【請求項5】
前記インナ側骨格部材には、前記第三角部の稜線を含むように肉薄部が設けられている請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の車両の骨格部構造。
【請求項6】
前記骨格部材は、車両上下方向に沿って設けられたセンターピラーである請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載された車両の骨格構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−103619(P2013−103619A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249057(P2011−249057)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】