説明

車両エンジンルームのボンネット用クッションクリップ

【課題】 エンジンルームの熱によってクッション部が変形してその底面とボディパネルとの間に隙間が生じても、がたつきの発生しにくい車両エンジンルームのボンネット用クッションクリップを提供することである。
【解決手段】 クッション部1の底面部6に、軸心よりクッション部1の外周縁部に向かって連続的に厚みが厚くなる傾斜面部19を設ける。エンジンルームの熱により、エラストマーよりなるクッション部1が変形し、その底面部6の外周縁部とボディパネル3の上面3aとの間に隙間eが形成されても、傾斜面部19によってその隙間eを相殺する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のエンジンルームのボディに固定され、そのエンジンルームを覆うボンネットが開位置から閉位置に閉じられるときの衝撃を緩和する車両エンジンルームのボンネット用クッションクリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両(例えば、自動車)において、固定部材と可動部材が衝突する部分においては、固定部材と可動部材のいずれか又は両方にクッションクリップが取り付けられている。このクッションクリップは、例えば車体のエンジンフードとボディパネルとのいずれかの部材や、グローブボックスのボックス本体と蓋体とのいずれかの部材等に取り付けられている。そして、クッションクリップを介して2つの部材を当接させることにより、当接時の衝撃力を緩和し、当接に伴う各部材の損傷や衝撃音の発生を回避する。従来のクッションクリップとして、例えば特許文献1に開示されるものがある。
【0003】
図10に示されるように、従来のクッションクリップ100’は、クッション部51と、クッション部51と一体に成形される取付部52とを備えている。取付部52は、クッション部51の底面部53のほぼ中央部から軸線CLを同一にして突出されている。取付部52には、その外周面から軸線CLと交差する方向に突出し、弾性変形可能な係止爪54が設けられている。クッションクリップ100’は、取付部52の係止爪54を弾性変形させて縮径しながら、被取付部材(例えば、ボディパネル55)に設けられた取付孔56に嵌入される。そして、取付孔56を通過して弾性復元して拡径した係止爪54が取付孔56の内周面を押圧することによって、クッションクリップ100’がボディパネル55に保持される。このとき、係止爪54の最頂部である爪突起部57は、取付孔56よりも外側に配置されているため、クッションクリップ100’の抜止めが図られる。
【0004】
車両のエンジンルームには、そのエンジンルームを覆うボンネット(図示せず)が取り付けられている。そして、エンジンルームのボディパネル55には、ボンネットが閉じられるときの衝撃を緩和するクッションクリップ100’が取り付けられている。車両のエンジンルームは使用時に高温になるため、エラストマーよりなるクッションクリップ100’のクッション部51が熱クリープを起こして変形し、クッション部51の底面部53とボディパネル55の着座面55aとの間に隙間eが生じてしまう場合がある。この隙間eにより、取付け状態のクッションクリップ100’ががたついたり、異音が発生したりするおそれがある。
【0005】
また、この隙間eは、クッションクリップ100’が射出成形によって製造されるときに、クッション部51の底面部53に材料の「ひけ」が発生したりすることによっても生ずる。なお、図10において、変形が生じていないときのクッション部51の底面部53を一点鎖線で示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−196651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した不具合に鑑み、エンジンルームの熱によってクッション部が変形してその底面とボディパネルとの間に隙間が生じても、がたつきの発生しにくい車両エンジンルームのボンネット用クッションクリップを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するための本発明は、
車両のエンジンルームのボディに固定され、そのエンジンルームを覆うボンネットが開位置から閉位置に閉じられるときの衝撃を緩和する車両エンジンルームのボンネット用クッションクリップであって、
前記エンジンルームのボディに形成された取付孔に抜止め状態で嵌入される、樹脂からなる軸状の取付部と、
弾性を有するエラストマーからなり、前記取付部の軸径より大きい外形を有して、その取付部の、前記嵌入側の先端部とは反対側の端部に同軸的かつ一体的に結合した形態をなすクッション部と、を備え、
そのクッション部は、前記ボディの前記取付孔の開口部周辺の着座面に面状に接触する環状の底面を有するとともに、前記エンジンルームで発生する熱に基づく前記エラストマーの変形による前記ボディの着座面からの前記底面の離間分の少なくとも一部を相殺するように、その環状の底面の外周側領域が前記ボディに最も接近するように点状、線状若しくは面状に肉盛りされた肉盛り部を備え、
その肉盛り部が弾性的に圧縮されて前記ボディの着座面に押し付けられる状態で前記取付部が前記ボディの取付孔に固定され、かつ前記エンジンルームの熱による前記エラストマーの変形に伴って前記肉盛り部の前記ボディの着座面に対する圧縮荷重が減少又は消滅することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
車両エンジンルームのボンネット用クッションクリップがエンジンルームのボディに取り付けられるとき、その取付部がボディの取付孔に嵌入される。そして、そのクッション部の底面が、ボディの着座面に対向配置される。本発明に係るクッションクリップではクッション部の底面に肉盛り部が形成されていて、通常の場合には肉盛り部がボディの着座面に押し付けられて、ボディの取付孔に固定される。車両の使用時にエンジンルームが高温になって、エラストマーよりなるクッション部が熱クリープによって変形し、クッション部の底面とボディの着座面と間に隙間が生じると、クッションクリップががたつく場合がある。しかし、本発明のクッションクリップでは、肉盛り部が取付け状態で隙間(底面の離間分)を相殺するように、ボディに接近する。これにより、変形時であっても隙間が小さくなり、クッションクリップのがたつきが防止される。
【0010】
前記肉盛り部は、前記クッション部の前記底面の中心側から外周縁部に向かって漸次厚みが増大するように連続又は不連続な環状に形成され、その外周縁部において肉盛り部の厚さが最大となって、その外周縁部が前記ボディの着座面に最も接近し、該ボディへの取付け状態で前記圧縮荷重が最大となっている。
【0011】
クッション部(エラストマー)の変形は、その外周縁部に近づくほど大きくなる。このため、肉盛り部を上記したように、クッション部の底面の中心側から外周縁部に向かって漸次厚みが増大するように連続又は不連続に形成することにより、肉盛り部の追加による重量の増加を最小にして、変形時の隙間を小さくすることができる。
【0012】
前記肉盛り部は、前記クッション部の環状の前記底面の外周側領域において、そのクッション部の中心に関して等角度で点状に位置する、前記ボディの着座面の側に突出する複数の突起部として形成され、それら複数の突起部が前記クッション部の底面において前記ボディの着座面に最も接近し、該ボディへの取付け状態で前記圧縮荷重が最大となる。
【0013】
また、前記肉盛り部は、前記クッション部の前記底面の外周縁部に沿って、そのクッション部の中心の周りに環状かつ線状の形態で前記ボディの着座面の側へ突出する突条として形成され、その環状の突条が前記クッション部の底面において前記ボディの着座面に最も接近し、該ボディへの取付け状態で前記圧縮荷重が最大となる。
【0014】
このように、肉盛り部を複数の突起部として点状に設けたり、環状又は放射直線状の突条として設けたりすることができる。
【0015】
そして、前記取付部は、自身の側部に所定の角度間隔で側部外方へ突出するとともに、内方への弾性変形が可能な複数の係止爪を備え、その取付部が前記ボディの取付孔に嵌入される際には、複数の係止爪が一旦縮径するように弾性変形した後に、弾性的に拡径することにより前記取付孔に抜止め状態で装着され、その状態で前記クッション部の肉盛り部が所定の圧縮荷重で前記ボディの着座面に押し付けられるようにしてもよい。
【0016】
クッションクリップの取付部がボディの取付孔に嵌入されるとき、その取付部に設けられた複数の係止爪が弾性変形し、取付孔を通過した状態で弾性復元することによって、クッションクリップが抜止め状態で装着される。ボディの取付孔に装着されたクッションクリップの肉盛り部は、抜止めが図られたまま、ボディの着座面に押し付けられる。このため、取付け状態のクッションクリップが安定する。
【0017】
複数の係止爪は、前記ボディの取付孔を通過した後にその取付孔の嵌入側とは反対側の係止側開口縁部に係止して該取付部の該取付孔からの抜止めをなす係止突起と、その係止突起より前記クッション部の側に形成され、前記クッション部の側へ向かうほど前記取付部の軸線に近づくよう傾斜する傾斜部とを備え、各係止爪のその傾斜部が、前記取付孔の係止側開口縁部の内周縁に各係止爪の原形に復帰する方向の弾性力で押し付けられ、その状態で前記クッション部の肉盛り部が所定の圧縮荷重で前記ボディの着座面に押し付けられる。
【0018】
そして、前記クッション部の底面には、前記複数の係止爪を成形するために、各係止爪における前記取付部の軸線との交差面に含まれる長さである幅よりも大きい幅を有する係止爪成形領域が前記係止爪の軸線方向の投影面を含んで、前記底面の外周縁まで形成され、前記肉盛り部は、前記クッション部の底面において前記係止爪成形領域を除く部分に設けられていることが望ましい。
【0019】
これにより、クッションクリップを成形するときに、複数の係止爪を成形する成形型(スライド型)を軸線と交差する方向に抜くことができるため、クッションクリップの成形が容易になる。
【0020】
前記肉盛り部の最大厚さは、0.2mmよりも大きく、0.5mmよりも小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施例のクッションクリップ101の底面斜視図である。
【図2】同じく正面図である。
【図3】同じく一部を破断した側面図である。
【図4】同じく底面図である。
【図5】一部を破断した要部の拡大正面図である。
【図6】取付け状態における傾斜面部19の作用説明図である。
【図7】(a)は第2実施例のクッションクリップ102の底面図であり、(b)は第3実施例のクッションクリップ103の底面図である。
【図8】(a)は第4実施例のクッションクリップ104の底面図であり、(b)は第5実施例のクッションクリップ105の底面図である。
【図9】(a)は第6実施例のクッションクリップ106の底面図であり、(b)は第7実施例のクッションクリップ107の底面図である。
【図10】従来のクッションクリップ100’の要部の拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0023】
図1は第1実施例のクッションクリップ101の底面斜視図、図2は同じく正面図、図3は同じく一部を破断した側面図、図4は同じく底面図、図5は一部を破断した要部の拡大正面図である。
【実施例1】
【0024】
最初に、第1実施例の車両エンジンルームのボンネット用クッションクリップ101(以下、クッションクリップ101という。)について説明する。図1ないし図3に示されるように、第1実施例のクッションクリップ101は、例えば弾性変形可能な熱可塑性エラストマー(TPE)よりなるクッション部1と、例えばポリプロピレン(PP)等の樹脂材よりなる取付部2とが一体に成形(二色成形)されている。このクッションクリップ101は、取付部2が被取付部材(本実施例の場合、エンジンルームのボディパネル3)の取付孔4に嵌入されて取り付けられる。クッション部1は円錐台形状で、その上端部に衝撃吸収用の凹部5が設けられている。また、その底面部6の周縁部には、クッションクリップ101の取付部2がボディパネル3の取付孔4に嵌入されたときに、ボディパネル3の対向面(この場合、上面3a)と密着し、雨水等が浸入することを防止するためのシールリップ部7が、底面部6から外側下方に向かって張り出して設けられている。そして、クッション部1の底面部6の外周縁部とシールリップ部7との間には、シールリップ部7の変形を容易にするために、断面半円形状の周溝部8が底面部6の全周に亘って設けられている。
【0025】
取付部2は先端部が少し細くなった略円筒形状であり、クッション部1の軸線CLと同軸にして取り付けられている。取付部2の上半部は、クッション部1に包み込まれている。取付部2の下半部(クッション部1の底面部6から突出した部分。以下、取付本体部9という。)には、軸線CLと直交する方向に対向配置される一対の係止爪10が、取付本体部9の外周面から張り出して設けられている。各係止爪10は、取付本体部9の軸線CL方向に沿って形成された一対の縦スリット11と、軸線CLと直交する方向に沿って形成され、一対の縦スリット11の上端部を連結する横スリット12とにより、係止爪10の基端部13を残して取付本体部9から分離されている。係止爪10における基端部13よりも上方の部分には、断面略三角形状となるように軸線CLと交差し、かつ軸線CLから遠ざかる方向に斜め上方に伸びる下側傾斜面部14が形成されていて、下側傾斜面部14の最上部に最大突起部15が設けられている。更に、最大突起部15の上方には、下側傾斜面部14と反対の方向に傾斜する上側傾斜面部16が設けられている。一対の係止爪10は、それらの基端部13を回動支点として、矢印Pの方向に回動し、縮径(弾性変形)したり拡径(弾性復元)したりする。
【0026】
取付本体部9の下端部の外径dは、ボディパネル3の取付孔4の内径Dよりも小さく、その最大外径(最大突起部15同士の距離L)は、ボディパネル3の取付孔4の内径Dよりも大きい(L>D>d)。
【0027】
取付部2の内側で一対の係止爪10同士の間の部分には、取付部2の剛性を補強するためのリブ17が、その全長に亘って設けられている。
【0028】
クッションクリップ100の取付部2がボディパネル3の取付孔4に嵌入されたとき、係止爪10の傾斜面14が取付孔4の内周面に押圧され、係止爪10は基端部13を回動支点として、軸線CLと略直交する方向(矢印Pの方向)に弾性変形(縮径)する。そして、最大突起部15がボディパネル3の取付孔4を通過したとき弾性復元(拡径)し、上側傾斜面部16における高さ方向の途中の部分が、ボディパネル3の取付孔4の周縁部4a(係止側開口縁部)を相対的に押圧する。これにより、クッションクリップ100がボディパネル3に抜止め状態で固定される。このとき、クッション部1の底面部6とボディパネル3の上面3aとの間に僅かな隙間が形成されるものの、これによりクッションクリップ101ががたつくことはない。
【0029】
図5に示されるように、第1実施例のクッションクリップ101では、クッション部1の底面部6で、クッション部1と取付部2との接合部18を起点とし、クッション部1の底面部6の外周縁部(周溝部8)の近傍にまで達する面状の傾斜面部19(肉盛り部)が形成されている。傾斜面部19の厚さ(底面部6からの突出長)は、クッション部1の外周縁に近づくにつれて徐々に大きくなっている。クッションクリップ101がボディパネル3に取り付けられたとき(即ち、クッションクリップ101の取付本体部9がボディパネル3の取付孔4に嵌入され、一対の係止爪10が弾性復元してボディパネル3の取付孔4に係止されたとき)、傾斜面部19がボディパネル3の上面3aを弾性的に圧縮する。
【0030】
図6に示されるように、エンジンルームの熱により、クッション部1のエラストマーが熱クリープにより変形し、クッション部1の底面部6とボディパネル3の上面3aとの間に隙間eが形成される。この隙間eは、クッション部1の外周縁部ほど大きい。しかし、本実施例のクッションクリップ101では、クッション部1の底面部6に傾斜面部19が設けられていて、この傾斜面部19によって隙間eが相殺される。即ち、傾斜面部19の底面部とボディパネル3の上面3aとの隙間は、クッション部1の変形がない状態におけるクッション部1の底面部6とボディパネル3の上面3aとの隙間と同一又はそれよりも小さい。この結果、クッション部1が変形した状態であっても、クッションクリップ101のがたつきが防止される。本実施例のクッションクリップ101の傾斜面部19のように、外周縁に近づくにつれて厚みが連続的に(又は不連続的に)増大しているのは、クッション部の外周縁部ほどその変形量が大きくなるので(図6参照)、それに対応するためである。
【0031】
図4に示されるように、上記した傾斜面部19は、クッション部2の底面部6の全面に亘って設けられているのではなく、一対の係止爪10の部分と対応する部分に設けられた溝部20(係止爪成形領域)を除いて設けられている。即ち、クッション部1の底面部6で一対の係止爪10が軸線CL方向に投影された部分には、各係止爪10の幅W1よりも広い内幅W2を有する溝部20が、底面部6における係止爪10の投影部分からその外周縁部(周溝部8の近傍)にまで設けられている。これらの溝部20の底面は、クッション部1の底面部6とほぼ連続している(換言すれば、ほぼ同一平面内に存する)。これらの溝部20は、クッションクリップ101の成形時に、一対の係止爪10を成形する成形型(スライド型)を軸線CLと直交する方向に抜き取るためのものである。
【0032】
第1実施例のクッションクリップ101の作用について説明する。クッションクリップ101の取付部2の取付本体部9を、ボディパネル3の取付孔4に嵌入させる。取付本体部9の下端部の外径dは、取付孔4の内径Dよりも小さいため、クッションクリップ101の取付部2をそのまま嵌入させることができる。取付部2の一対の係止爪10の下側傾斜面部14が、取付孔4の周縁部4aに当接する。更にクッションクリップ101を押し込むと、一対の係止爪10が押圧され、基端部13を支点として、矢印Pの方向のうち軸線CLに向かう方向に弾性変形(縮径)する。一対の係止爪10の最大突起部15がボディパネル3の取付孔4を通過すると、一対の係止爪10が弾性復元(拡径)し、上側傾斜面部16が取付孔4の周縁部4aに係止して固定される。
【0033】
通常の場合、図5に示されるように、クッション部1の底面部6に設けられた傾斜面部19が、ボディパネル3の上面3aを押圧する。そして、エンジンルームの熱により、エラストマーよりなるクッション部1が変形し、その底面部6の外周縁部とボディパネル3の上面3aとの間に隙間eが形成される場合がある。従来のクッションクリップ100’(図10参照)の場合、この隙間eにより、クッションクリップ100’ががたついてしまう。しかし、本実施例のクッションクリップ101では、クッション部1の底面部6に傾斜面部19が設けられていて、傾斜面部19によって隙間eが相殺される。この結果、クッション部1の傾斜面部19の底面とボディパネル3の上面3aとの隙間eが小さくなり、クッションクリップ101が、がたつきにくくなる。
【0034】
本出願人は、変形時におけるクッションクリップ101のクッション部1の底面部6とボディパネル3の上面3aとの隙間eを調査したところ、その大きさは約0.2mmであった。このため、傾斜面部19の突出長は、0.2mmよりも大きくすること、そして、取付性を悪化させないために0.5mmより小さくすることが望ましい。
【実施例2】
【0035】
次に、第2実施例のクッションクリップ102について説明する。図7の(a)に示されるように、第2実施例のクッションクリップ102の突起部は半リング状の突条21であり、クッション部1の中心(軸線CL)を中心に同心円状に設けられている。そして、第1実施例のクッションクリップ101と同様に、クッション部1の底面部6において、一対の係止爪10と対応する部分には、係止爪成形領域22を形成するために分断されている。
【実施例3】
【0036】
図7の(b)に示される第3実施例のクッションクリップ103のように、多数本の線状の突条23を、クッション部1の底面部6における係止爪成形領域22を除く位置に、放射状に設けてもよい。
【実施例4】
【0037】
また、図8の(a)に示される第4実施例のクッションクリップ104のように、多数個の点状の突起体24を、クッション部1の底面部6における係止爪成形領域22を除く位置に、同心円状に設けてもよい。
【実施例5】
【0038】
上記した各実施例のクッションクリップ101〜104では、取付部2に一対の係止爪10を対向配置させて設けている。しかし、図8の(b)に示される第5実施例のクッションクリップ105のように、3個(又はそれ以上)の係止爪10を軸心周りに等角度で設けてもよい。この場合、係止爪成形領域22も、各係止爪10に対応させて同数だけ設けられる。また、リブ25も、各係止爪10の弾性変形を妨げないように、各係止爪10同士の間に配置される。
【実施例6】
【0039】
上記した各実施例のクッションクリップ101〜105におけるクッション部1の底面部6には、爪部10の成形を容易にするため、溝部20又は爪部成形領域22が設けられている。そして、これらの部分には、傾斜面部19、突条21、突起体24等の肉盛り部が設けられていない。しかし、溝部20や爪部成形領域を設けなくても爪部10の成形が可能であれば、上記した肉盛り部をクッション部1の底面部6の全体に亘って設けることができる。肉盛り部が傾斜面部26の場合の実施例(第6実施例)のクッションクリップ106を、図9の(a)に示す。
【実施例7】
【0040】
また、肉盛り部が環状の突条27の場合の実施例(第7実施例)のクッションクリップ107を、図9の(b)に示す。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係るクッションクリップは、車両のエンジンルームのボンネットに使用することができる。
【符号の説明】
【0042】
101〜107 クッションクリップ
1 クッション部
2 取付部
3 ボディパネル(ボディ)
3a 上面(着座面)
4 取付孔
4a 周縁部(係止側開口縁部)
6 底面部(底面)
10 係止爪
15 最大突起部(係止突起)
16 上側傾斜面部(傾斜部)
19,26 傾斜面部(肉盛り部)
20 溝部(係止爪成形領域)
21,23,27 突条(肉盛り部)
22 係止爪成形領域
24 突起体(肉盛り部)
CL 軸線
e 隙間(底面の離間分)
W1,W2 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンルームのボディに固定され、そのエンジンルームを覆うボンネットが開位置から閉位置に閉じられるときの衝撃を緩和する車両エンジンルームのボンネット用クッションクリップであって、
前記エンジンルームのボディに形成された取付孔に抜止め状態で嵌入される、樹脂からなる軸状の取付部と、
弾性を有するエラストマーからなり、前記取付部の軸径より大きい外形を有して、その取付部の嵌入側の先端部とは反対側の端部に同軸的かつ一体的に結合した形態をなすクッション部と、を備え、
そのクッション部は、前記ボディの前記取付孔の開口部周辺の着座面に面状に接触する環状の底面を有するとともに、前記エンジンルームで発生する熱に基づく前記エラストマーの変形による前記ボディの着座面からの前記底面の離間分の少なくとも一部を相殺するように、その環状の底面の外周側領域が前記ボディに最も接近するように点状、線状若しくは面状に肉盛りされた肉盛り部を備え、
その肉盛り部が弾性的に圧縮されて前記ボディの着座面に押し付けられる状態で前記取付部が前記ボディの取付孔に固定され、かつ前記エンジンルームの熱による前記エラストマーの変形に伴って前記肉盛り部の前記ボディの着座面に対する圧縮荷重が減少又は消滅することを特徴とする車両エンジンルームのボンネット用クッションクリップ。
【請求項2】
前記肉盛り部は、前記クッション部の前記底面の中心側から外周縁部に向かって漸次厚みが増大するように連続又は不連続な環状に形成され、その外周縁部において肉盛り部の厚さが最大となって、その外周縁部が前記ボディの着座面に最も接近し、該ボディへの取付け状態で前記圧縮荷重が最大となることを特徴とする請求項1に記載の車両エンジンルームのボンネット用クッションクリップ。
【請求項3】
前記肉盛り部は、前記クッション部の環状の前記底面の外周側領域において、そのクッション部の中心に関して等角度で点状に位置する、前記ボディの着座面の側に突出する複数の突起部として形成され、それら複数の突起部が前記クッション部の底面において前記ボディの着座面に最も接近し、該ボディへの取付け状態で前記圧縮荷重が最大となることを特徴とする請求項1に記載の車両エンジンルームのボンネット用クッションクリップ。
【請求項4】
前記肉盛り部は、前記クッション部の前記底面の外周縁部に沿って、そのクッション部の中心の周りに環状又は放射直線状の形態で前記ボディの着座面の側へ突出する突条として形成され、その環状の突条が前記クッション部の底面において前記ボディの着座面に最も接近し、該ボディへの取付け状態で前記圧縮荷重が最大となることを特徴とする請求項1に記載の車両エンジンルームのボンネット用クッションクリップ。
【請求項5】
前記取付部は、自身の側部に所定の角度間隔で側部外方へ突出するとともに、内方への弾性変形が可能な複数の係止爪を備え、その取付部が前記ボディの取付孔に嵌入される際には、複数の係止爪が一旦縮径するように弾性変形した後に、弾性的に拡径することにより前記取付孔に抜止め状態で装着され、その状態で前記クッション部の肉盛り部が所定の圧縮荷重で前記ボディの着座面に押し付けられることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の車両エンジンルームのボンネット用クッションクリップ。
【請求項6】
前記取付部の複数の係止爪は、前記ボディの取付孔を通過した後にその取付孔の嵌入側とは反対側の係止側開口縁部に係止して該取付部の該取付孔からの抜止めをなす係止突起と、その係止突起より前記クッション部の側に形成され、前記クッション部の側へ向かうほど前記取付部の軸線に近づくよう傾斜する傾斜部とを備え、各係止爪のその傾斜部が、前記取付孔の係止側開口縁部の内周縁に各係止爪の原形に復帰する方向の弾性力で押し付けられ、その状態で前記クッション部の肉盛り部が所定の圧縮荷重で前記ボディの着座面に押し付けられることを特徴とする請求項5に記載の車両エンジンルームのボンネット用クッションクリップ。
【請求項7】
前記クッション部の底面には、前記複数の係止爪を成形するために、各係止爪における前記取付部の軸線との交差面に含まれる長さである幅よりも大きい幅を有する係止爪成形領域が前記係止爪の軸線方向の投影面を含んで、前記底面の外周縁まで形成され、前記肉盛り部は、前記クッション部の底面において前記係止爪成形領域を除く部分に設けられていることを特徴とする請求項5又は6に記載の車両エンジンルームのボンネット用クッションクリップ。
【請求項8】
前記肉盛り部の最大厚さは、0.2mmよりも大きく、0.5mmよりも小さいことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の車両エンジンルームのボンネット用クッションクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−25749(P2011−25749A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171119(P2009−171119)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(308011351)大和化成工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】