説明

車両キーレス装置用携帯機

【課題】 携帯機の電気消費量を減らし、携帯機の電源電池の寿命を引き伸ばすことができる車両キーレス装置用携帯機を提供すること。
【解決手段】 車載機2からの電波信号を受信する携帯機受信部15と、車載機2へ応答電波信号を送信する携帯機変調部12及び携帯機発振部11と、携帯機変調部12及び携帯機発振部11の送信出力を変更する携帯機出力設定部14と、電波信号が車載機2の車内送信アンテナ24から送信されたか、車外送信アンテナ25から送信されたかを判断し、受信した電波信号が車内送信アンテナから送信された場合に、受信した電波信号が車外アンテナから送信された場合よりも、前記送信手段の送信出力を小さくする携帯機制御部17とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載機との通信により車両の少なくともドアロックの施錠・開錠を制御する車両キーレス装置に用いられる車両キーレス装置用携帯機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来の携帯機では、車両側送受信装置からの低周波リクエスト電磁波信号をキーレス回路が受信すると、高周波IDコードを車両側送受信装置に対して出力し、また、低周波電力用電磁波をトランスポンダが受信すると、車両側送受信装置に対して低周波IDコードを出力している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2003−269019号公報(第2−8頁、全図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来にあっては、電池切れの際に、所定位置に携帯機を置くことによりトランスポンダの作動を可能にしているものの、携帯機の送信時における出力レベルは通常時においては固定されていたため、携帯機の電気消費量は大きいものであった。さらに、携帯機に遠隔操作機能を持たせる場合には、その遠隔操作による交信距離を確保するために高い出力レベルが必要となり、さらに携帯機の電気消費量は大きくなっていた。
【0004】
本発明は、上記問題点に着目してなされたもので、その目的とするところは、携帯機の電気消費量を減らし、携帯機の電源電池の寿命を引き伸ばすことができる車両キーレス装置用携帯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、車両に設置された車載機との通信により認証を行い、少なくとも車両ドアロックの施錠・開錠の制御を行う車両キーレス装置用携帯機であって、前記車載機からの電波信号を受信する受信手段と、前記車載機へ応答電波信号を送信する送信手段と、前記電波信号が前記車載機の車内アンテナから送信されたか、車外アンテナから送信されたかを判断する送信元判断手段と、前記送信手段の送信出力を変更する出力設定手段と、受信した電波信号が車内アンテナから送信された場合に、受信した電波信号が車外アンテナから送信された場合よりも、前記送信手段の送信出力を小さくする制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
よって、本発明にあっては、携帯機の電気消費量を減らし、携帯機の電源電池の寿命を引き伸ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の車両キーレス装置用携帯機を実現する実施の形態を、実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
まず、構成を説明する。
図1は実施例1の車両キーレス装置の構成を示すブロック図である。
実施例1の車両キーレス装置は、携帯機1と車載機2からなる。携帯機1は、携帯機発振部11、携帯機変調部12、携帯機送信アンテナ13、携帯機出力設定部14、携帯機受信部15、携帯機受信アンテナ16、携帯機制御部17、携帯機操作部18を主要な構成としている。
携帯機発振部11は、携帯機出力設定部14で設定されている電波強度により、携帯機変調部12からの電波信号を携帯機送信アンテナ13から出力させる。
携帯機変調部12は、携帯機制御部17からの情報信号を電波信号へ変調して、携帯機発振部11へ出力する。
【0009】
携帯機出力設定部14は、携帯機制御部17からの指令により、送信出力の設定を変更する。
携帯機受信部15は、携帯機受信アンテナ16により受信した電波信号を処理して情報信号として携帯機制御部17へ出力する。
携帯機制御部17は、携帯機受信部15の受信強度と経過時間から車内送信アンテナ24からの送信か、車外送信アンテナ25からの送信かを判断する。さらに、携帯機操作部18からの遠隔操作の入力がある場合には、その操作入力に応じた情報信号を携帯機変調部12へ出力する。またさらに、車載機2からの送信が車内送信アンテナに24からである場合に、送信出力のレベルを低くするよう携帯機出力設定部14へ指令を出力する。
携帯機操作部18は、ドアロック開などの遠隔操作を入力する。
また、携帯機1は、図示しないが電源電池を備えて、各部へ電源供給を行うものとする。
【0010】
車載機2は、車載機受信部21、車載機受信アンテナ22、車載機送信部23、車内送信アンテナ24、車外送信アンテナ25、車載機制御部26を主要な構成にしている。
車載機受信部21は、車載機受信アンテナ22によって、携帯機1から送信される電波信号を受信し、情報信号に変化して車載機制御部26へ出力する。
車載機送信部23は、車載機制御部26からの情報信号を電波信号に変換して車内送信アンテナ24と車外送信アンテナ25から送信する。
【0011】
車内送信アンテナ24は、車室内に設置され、車室内に携帯機1が位置する場合に、携帯機1との通信を行う。
車外送信アンテナ25は、車外に開放されるように車両外側に設置され、車外に携帯機1が位置する場合に、携帯機1との通信を行う。
車載機制御部26は、携帯機1からの遠隔操作を受信し、その操作に対応する出力を図示しない車両装置に対して行う。また、必要に応じて、認証を要求する指令を携帯機1へ送信するよう出力を行う。
【0012】
なお、実施例1では、図示しない車両装置として、少なくともドアロックアクチュエータまたはドアロックアクチュエータを制御するコントローラを有するものとする。また、車両のドアノブ付近には、リクエストスイッチが設けられているものとし、ドアロックの開錠は、携帯機1の携帯機操作部18からでも、車両のリクエストスイッチからでも可能なシステムとする。
なお、車載機2と携帯機1間で行われるID認証は、車両ごとに識別できるIDコードを、車載機2及び携帯機1でそれぞれ記憶しておき、そのデータを送信または受信して、照合することによって、認証を行なうものとする。
【0013】
次に作用を説明する。
[携帯機における通信処理]
図2は実施例1の携帯機1で実行される通信処理の流れを示すフローチャートで、以下各ステップについて説明する。
【0014】
ステップS1では、各動作を待機したスタンバイモードである。
【0015】
ステップS2では、携帯機操作部18へ操作入力があったかどうかを判断し、携帯機操作部18がスイッチONならばステップS3へ進み、スイッチONでないならばステップS6へ進む。
【0016】
ステップS3では、ID照合の処理と、送信データの暗号化処理を行う。
【0017】
ステップS4では、携帯機1の携帯機出力設定部14の設定を出力の大きい第1出力レベルに設定する。
【0018】
ステップS5では、遠隔操作、つまり携帯機操作部18の操作入力に応じた操作指令となる操作信号を車載機2へ送信する。
【0019】
ステップS6では、車載機2からのリクエスト信号を受信したかを判断し、受信したならばステップS7へ進み、受信しないならばステップS1へ戻る。
【0020】
ステップS7では、ID認証の処理と、送信データの暗号化処理を行う。
【0021】
ステップS8では、車載機2からの送信が車内送信アンテナ24によるものか車外送信アンテナ25によるものかを判断し、車内送信アンテナ24によるものならばステップS9へ進み、車外送信アンテナ25によるものであるならばステップS10へ進む。
【0022】
ステップS9では、携帯機1の携帯機出力設定部14の設定を、第1出力レベルより小さい第2出力レベルに設定する。
【0023】
ステップS10では、携帯機1の携帯機出力設定部14の設定を出力の大きい第1出力レベルに設定する。
【0024】
ステップS11では、車載機2からのリクエスト信号に対する応答信号を車載機2へ送信する。
【0025】
[携帯機の電源電池の電気消費量を低減させる作用]
実施例1の車両キーレス装置用の携帯機1では、まず携帯機操作部18への操作入力があったかどうかを判断する(S2)。携帯機操作部18への操作入力があった場合には、車両キーレス装置それぞれが識別可能なデータであるIDデータを車載機2に送って照合させ、照合成立後、セキュリティ性を向上するために暗号化した遠隔操作信号を出力する(S3→S5)。この際には、ステップS4の処理によって、携帯機1の携帯機出力設定部14は送信出力レベルの大きい第1出力レベルに設定する。これによって、携帯機1を用いた遠隔操作が確実に行われるようにする。
【0026】
次に、携帯機1からの遠隔操作でなく、操作者が車両のリクエストスイッチを操作入力することなどで生じる操作指令、つまりリクエスト信号が発生した場合には、車両側となる車載機2から携帯機1へリクエスト信号が送信される。携帯機1では、リクエスト信号を受信すると、IDデータを車載機2へ送信してID認証を行ない、認証成立ならばリクエスト信号に対する応答信号を暗号化して車載機2へ送信する(S7→S11)。この際に、ステップS8の処理によって、車載機2の送信が車内送信アンテナ24によるものか車外送信アンテナ25によるものかを判断する。
【0027】
なお、実施例1においては、携帯機1と車内送信アンテナ24の位置が固定化し、且つ一定距離より離れることがないことから、所定の受信レベル以上が一定時間以上継続することにより、車内送信アンテナ24による送信であると判断している。この判断により、コストを増加させることなく、車内送信アンテナ24による送信か、車外送信アンテナ25によるものかを判断している。
【0028】
そして、ステップS8の判断により、車内送信アンテナ24による送信であると判断した場合には、ステップS9の処理により携帯機出力設定部14が、携帯機1の送信出力レベルを第1出力レベルより小さい第2出力レベルに設定し、その設定で携帯機発振部11から送信が行われる。
これにより、車内送信アンテナ24を使用している状態での携帯機1の電源電池の電気消費量を減らし、ひいては、携帯機1の電源電池の寿命延長を行うことになる。
しかも、携帯機1からの遠隔操作が必要な際には、送信出力を小さくすることがない。
【0029】
次に、効果を説明する。
実施例1の車両キーレス装置用携帯機にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0030】
(1)車両に設置された車載機2との通信により認証を行い、少なくとも車両ドアロックの施錠・開錠の制御を行う車両キーレス装置用の携帯機1であって、車載機2からの電波信号を受信する携帯機受信部15と、車載機2へ応答電波信号を送信する携帯機変調部12及び携帯機発振部11と、携帯機変調部12及び携帯機発振部11の送信出力を変更する携帯機出力設定部14と、電波信号が車載機2の車内送信アンテナ24から送信されたか、車外送信アンテナ25から送信されたかを判断し、受信した電波信号が車内送信アンテナから送信された場合に、受信した電波信号が車外アンテナから送信された場合よりも、前記送信手段の送信出力を小さくする携帯機制御部17と、を備えるため、携帯機の電気消費量を減らし、携帯機の電源電池の寿命を引き伸ばすことができる。
【0031】
本実施例1では、車載機2が車内送信アンテナ24で送信する場合に送信出力レベルを下げるようにして、電源電池の消費量を抑えている。車室内に携帯機1が位置する場合には、操作者が携帯機1をバッグ等に入れて、手元から離れるようにしたとしても、携帯機1と車載機2との距離は有限で、非常に近い距離となる。これに対し、車外に携帯機1が位置し、さらに例えば遠隔操作を行う場合など、車室内よりも明らかに強い送信レベルが必要になり、遠隔操作の確実性を得るためには、さらに強い送信レベルが必要になる。
【0032】
本実施例1では、この必要レベルの差に携帯機1が対応することにより、携帯機1の消費電気量を低下させるのである。携帯機1の電源電池の交換はなるべく長い方が使用者の手間がかからず、使用感がよくなる。これに反して、近年では、操作できる機能が増える傾向にあり、電源電池への負担は増える傾向である。
そのため、本実施例1の作用効果は、非常に有用となる。
【0033】
(2)携帯機制御部17は、所定値以上の受信強度が一定時間以上継続することによって、車内送信アンテナ24からの送信を受信していると判断するため、コストを増加させることなく、車内送信アンテナ24の送信か、車外送信アンテナ25の送信かを判断することができる。
【0034】
(3)遠隔操作を入力する携帯機操作部18を設け、携帯機制御部17は、携帯機操作部18による送信の場合には、携帯機変調部12及び携帯機発振部11の送信出力を小さくしないため、遠隔操作を確実に行いつつ、携帯機の電気消費量を減らし、携帯機の電源電池の寿命を引き伸ばすことができる。
【0035】
以上、本発明の車両キーレス装置用携帯機を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0036】
実施例では、ドアロックシステムを車載機と携帯機、図示しない車両装置で構成するものとしたが、さらにエンジンスタートを許可する機能を追加したものであってもよく、さらに他の機能を行うようにしたものであってもよい。
また、実施例では、車内送信アンテナからの送信か、車外送信アンテナからの送信かを、所定以上の受信強度が一定時間継続することで判断したが、例えば、車内送信アンテナと車外送信アンテナが異なる周波数の送信を行うものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施例1の車両キーレス装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施例1の携帯機1で実行される通信処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0038】
1 携帯機
11 携帯機発振部
12 携帯機変調部
13 携帯機送信アンテナ
14 携帯機出力設定部
15 携帯機受信部
16 携帯機受信アンテナ
17 携帯機制御部
18 携帯機操作部
2 車載機
21 車載機受信部
22 車載機受信アンテナ
23 車載機送信部
24 車内送信アンテナ
25 車外送信アンテナ
26 車載機制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置された車載機との通信により認証を行い、少なくとも車両ドアロックの施錠・開錠の制御を行う車両キーレス装置用携帯機であって、
前記車載機からの電波信号を受信する受信手段と、
前記車載機へ応答電波信号を送信する送信手段と、
前記電波信号が前記車載機の車内アンテナから送信されたか、車外アンテナから送信されたかを判断する送信元判断手段と、
前記送信手段の送信出力を変更する出力設定手段と、
受信した電波信号が車内アンテナから送信された場合に、受信した電波信号が車外アンテナから送信された場合よりも、前記送信手段の送信出力を小さくする制御手段と、
を備えることを特徴とする車両キーレス装置用携帯機。
【請求項2】
請求項1に記載の車両キーレス装置用携帯機において、
前記送信元判断手段は、
所定値以上の受信強度が一定時間以上継続することによって、車内アンテナからの送信を受信していると判断する、
ことを特徴とする車両キーレス装置用携帯機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の車両キーレス装置用携帯機において、
遠隔操作を入力する操作入力手段を設け、
前記制御手段は、
前記操作入力手段による送信の場合には、前記送信手段の送信出力を小さくしない、
ことを特徴とする車両キーレス装置用携帯機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−107249(P2007−107249A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298548(P2005−298548)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】