説明

車両システムおよび携帯電話端末

【課題】 車両内の着座位置に応じて携帯電話端末の使用制限を可能とする車両システムおよび携帯電話端末を提供する。
【解決手段】 携帯電話機10は、生体30を介して電界を検出する電極21を有し、電極21が電界を検出しているときは携帯電話機10を使用できなくし、電界を検出できないときは携帯電話機10を使用できるように制御する制御部19を備え、車両1のステアリングホイール2に電極21との間で生体30を介して通信を行う電極42を有し、電極42に車両1が走行中ならば電界を誘起させ、車両1が停止中ならば電界を誘起させないように制御する電界制御部44を車両1内の発信装置6に備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内での携帯電話での通話またはデータ通信等を、車両走行中には出来なくする車両システムおよび携帯電話端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話端末等の普及が著しく、時間的、場所的な制約を受けずに、さまざまな状況で通話、メール等のデータ通信、インターネットアクセス等を行うことが可能となっている。しかし、車両運転中の通話が交通安全上の問題となってきており、法的規制の対象ともされている。
【0003】
このような状況において、車両走行中の通話を強制的に制限する携帯電話システムが特許文献1において提案されている。この携帯電話システムは、車両の走行状態を検出して特定の信号を発信する手段を当該車両内に設け、この信号を受信した携帯電話端末が自身の通話を制限するものである。
【0004】
また、特許文献2では、携帯電話端末へ妨害電波を発射し、携帯電話端末の使用を妨害するシステムが提案されている。
【0005】
しかし、これらのシステムでは、車両内における全ての携帯電話端末の通話が制限されることになり、助手席や後部座席における同乗者の通話等の安全走行上支障のない携帯電話端末の通話も行うことができないという問題がある。
【0006】
一方、特許文献3では、新たな無線通信方式として、送受信データを電界として、例えば人体など電界伝達媒体に誘起して通信を行う電界通信携帯端末が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−333253号公報
【特許文献2】特開2008−136083号公報
【特許文献3】特開2005−303921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、前記問題点に着目し、車両内の着座位置に応じて携帯電話端末の使用制限を可能とする車両システムおよび携帯電話端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、車両内の携帯電話端末の通信可否を制御する車両システムにおいて、前記携帯電話端末は、人体を介して電界を検出する端末用電極を有し、当該端末用電極が電界を検出しているときは当該携帯電話端末を使用できなくし、電界を検出できないときは当該携帯電話端末を使用できるように制御する手段を備え、車両内の運転用ステアリングホイールに前記端末用電極との間で人体を介して通信を行う車両用電極を有し、前記車両用電極に当該車両が走行中ならば電界を誘起させ、当該車両が停止中ならば電界を誘起させないように制御する電界制御手段を車両内に備えた。
【0010】
また、本発明は、前記車両システムにおいて、前記車両内の車両のイグニッションキーを操作して走行可能状態になったときに一定時間内は電界を誘起させると共に、前記携帯電話端末との間で通信し、電界を誘起させる出力を決定する出力決定手段を車両内に備えた。
【0011】
さらに、本発明は、前記携帯電話端末において、電界を検出しているときに当該携帯電話端末がハンズフリー通話可能な状態になっているときは、当該携帯電話端末を使用できるように制御する手段を備えた。または、前記携帯電話端末において、携帯電話網から緊急地震速報を受信したときは、電界の検出有無に関係なく、当該携帯電話端末を使用できるように制御する手段を備えた。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、運転者(生体)が運転用ステアリングホイール(ハンドル)に手を触れると、車両が走行中に運転者は携帯電話端末を使用することができないため安全走行が可能になり、助手席や後部座席では車両走行中でも携帯電話端末を使用することができ、携帯電話端末の利便性が向上する。
【0013】
また、本発明によれば、走行開始前に車両内の電界誘起出力を決定することが出来るため、運転者の季節による着衣の差、または、携帯電話端末の所持位置の差(例えば、シャツの胸ポケットに入れているか、スラックスのポケットに入れているか等)にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】関連機器の車両内配置の一例を示す平面図
【図2】車両システムの構成を示すブロック図
【図3】携帯電話端末の使用制限に係る制御フローを示すフローチャート
【図4】電界出力を決定する処理の一例を示すシーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態では、携帯電話端末のうち携帯電話機に適用した場合を例にあげて説明する。しかし、本発明はこれに限定されない。例えば、スマートホン、電話機能付きウェアラブルコンピュータ等にも使用することができる。
【0016】
図1は、関連機器の車両内配置の一例を示す平面図である。車両1は、いわゆる乗用車タイプの車両であり、運転用ステアリングホイール2(いわゆるハンドル)と、運転席3と、助手席4と、後部座席5とを備えている。発信装置6は、少なくとも後述する電界通信部43、電界制御部44、出力決定部45を収容し、例えば、車両1の助手席4側のグローブボックス内に配置される。
【0017】
次に、図2を用いて、車両システムの構成を説明する。図2は、車両システムの構成を示すブロック図である。車両システムは、携帯電話機10と、生体30と、ステアリングホイール2と、発信装置6とを備えている。なお、ステアリングホイール2は、運転用ステアリングホイール、ハンドル、または、運転用ハンドルともいう。
【0018】
携帯電話機10は、少なくとも、アンテナ11と、無線通信部12と、送話部13と、受話部14と、スピーカ部15と、表示部16と、操作部17と、記憶部18と、制御部19と、電界通信部20と、電極21と、絶縁体22とを備えている。
【0019】
無線通信部12は、携帯電話網を利用した無線通信を行う部分であり、制御部19の制御により、アンテナ11を介して携帯電話機用として予め定められた所定の周波数帯域の電波にて携帯電話網の基地局と無線通信を行う機能を有している。なお、無線通信部12による無線通信に際し、制御部19の制御により、操作部17の各キーは携帯電話機10の所持者が通話する相手先電話番号等の情報を入力するために用いられ、表示部16には相手先電話番号や通話時間、通話料金等の情報が表示される。
【0020】
送話部13は、マイクロフォン(マイク)等で構成され、音声を電気信号に変換し、無線通信部12へ渡される。受話部14は、レシーバ等で構成され、無線通信部12より受けた電気信号を音声に変換し、携帯電話機10の所持者の通話の用に供する。なお、図示していないが、外部のイヤホンマイクを用いて、ハンズフリー通話を行うこともできる。
【0021】
スピーカ部15は、着信音や着信メロディ、あるいは着信通知用の歌、等を送出する。なお、図示していないが、スピーカ部15と、送話部13を用いることにより、外部のイヤホンマイクを用いずともハンズフリー通話を行う構成としても良い。
【0022】
記憶部18は、電話番号や電話帳データ等の不揮発性のデータを記憶しておくものである。
【0023】
制御部19は、無線通信部12を制御し、携帯電話網の基地局からのデータを解析し、緊急地震速報を受信したかを判定する。また、電界通信部20を制御し、電界を検出したか否かを解析し、電界を検出した場合は、その内容を分析し、走行中情報であれば、携帯電話機10を使用不可状態(発信操作無効化、および、着信検出時は無鳴動化、応答メッセージ送出又は留守録動作処理)とする。なお、ハンズフリー通話が可能な場合、または/および、携帯電話網の基地局から緊急地震速報を受信した場合は、携帯電話機10を使用不可状態にしないように構成しても良い。また、電界を検出しない場合は、前記使用不可状態を解除する。
【0024】
さらに、制御部19は、電界通信部20を制御し、電界を検出し、その内容を分析し、出力確認情報であった場合は、電界を検出した旨を返送する。
【0025】
電界通信部20は、図示していないが、電極21へ誘起した電界を受信する回路、および、電極21へ電界を誘起させる送信回路から構成される。なお、電界通信を行うために、前記送信回路と電極21との間に共振手段(例えば、リアクタンス回路)を挿入している。これを挿入することにより、前記送信回路のグランドと車両1のグランドの間に生じる浮遊容量とリアクタンス回路で直列共振回路が構成され、前記浮遊容量の変化による生体30への印加電圧の減衰を防止している。
【0026】
そして、電界伝達媒体である生体30に電界を誘起するために導電性部材からなる電極21、および、生体30に電流が流れるのを防止するとともに電極21による生体30の金属アレルギーの危険性を除去するために電極21と生体30間に配置される絶縁体22
を備えている。なお、生体30とは、運転者のことである。
【0027】
ステアリングホイール2は、少なくとも、絶縁体41と、電極42とから構成される。なお、絶縁体41と、電極42の説明は前述(絶縁体22と、絶縁体21)の通りである。
【0028】
発信装置6は、少なくとも、電界通信部43と、電界制御部44と、出力決定部45とを備えている。なお、電界通信部43の説明は前述(電界通信部20)の通りである。
【0029】
電界制御部44は、車両1内の走行系(図示していない)から、車両1が停止中か走行中かの情報を得る。すなわち、停止中とは、パーキングブレーキをかけている状態、または、パーキングブレーキを解除しており、車速センサーが速度を検出していない状態、もしくは、車速が5km/h以下(予め設定された値である。基本的には設定されないが、緊急車両等に採用された場合に備えて、設定できるようにしておく。)の状態である。走行中とは、停止中以外の状態である。
【0030】
電界制御部44は、車両1の走行系から走行中の情報を得た場合は、電界通信部43へ電界の発生(誘起)を指示し、車両1の走行系から停止中の情報を得た場合は、電界通信部43へ電界の発生(誘起)停止を指示する制御手段である。
【0031】
出力決定部45は、車両1の走行系からイグニッションキー(電気自動車等では、他の呼称となることも想定できるが、要は、車両1を走行可能な状態にするための操作手段である。)を操作した情報を得ると、電界通信部43へ最大出力の電界の発生(誘起)を指示し、携帯電話機10からの電界を検出した旨の返送を待つ。一定時間内に返送があった場合は、電界通信部43へ最大出力より1ランク下の出力(概ね、−10dB程度)の電界の発生を指示し、同じく携帯電話機10からの電界を検出した旨の返送を待つ、以後、これを繰り返す。一定時間内に返送が無い場合は、その一つ前のサイクルで指示した出力を決定値として電界通信部43へ記憶させる出力決定手段である。
【0032】
なお、出力を決定するには、最初は低い出力から発生させ、徐々に出力を上げていくという方法でも本発明の目的を達成することができる。
【0033】
次に、図3を用いて、携帯電話機10の使用制限に係る制御フローを説明する。
【0034】
ステップS50では、電界通信部20が電界を検出したかを判断し、電界を検出しなければ、ステップS54へ進み、携帯電話端末を使用可に設定して処理を終了する。電界を検出したときは、ステップS51へ進む。
【0035】
ステップS51では、携帯電話機10がハンズフリー通話可能な状態になっているか否かを判断し、ハンズフリー通話可能な場合は、ステップS54へ進み処理を完了する。ハンズフリー通話可能になっていない場合は、ステップS52へ進む。
【0036】
ステップS52では、携帯電話機10が緊急地震速報を受信したか否かを判断し、受信した場合は、ステップS54へ進み処理を完了する。受信していない場合は、ステップS53へ進み、携帯電話端末を使用不可に設定して処理を終了する。
【0037】
なお、図示していないが、緊急地震速報を受信してから一定時間内(例えば、2時間)は、携帯電話端末を使用可能にするように制御する。
【0038】
次に、図4を用いて、電界出力を決定する処理のシーケンスを説明する。
【0039】
車両1の走行系からイグニッションキー(電気自動車等では、他の呼称となることも想定できるが、要は、車両1を走行可能な状態にするための操作手段である。)を操作した情報を発信装置6の出力決定部45が得ると、電界通信部43へ最大出力(規定値、以下aともいう。)の電界の発生を指示し、生体30を介して、携帯電話機10からの電界を検出した旨の返送(aに対する返送)を待つ。一定時間内に返送があった場合は、電界通信部43へ最大出力より1ランク下の出力(概ね、−10dB程度)(規定値−1、以下bともいう。)の電界の発生を指示し、同じく携帯電話機10からの電界を検出した旨の返送(bに対する返送)を待つ、以後、これを繰り返す。一定時間内に返送が無い場合は、その一つ前のサイクルで指示した出力を決定値として電界通信部43へ記憶させる。
【0040】
なお、車両1の走行系から走行中情報を発信装置6の電界制御部44が得ると、電界通信部43へ電界の発生(走行中)を指示する。電界通信部43は、記憶している出力で電界を発生させ、生体30を介して、携帯電話機10からの電界を検出した旨の返送(走行中に対する返送)を待つ。図示していないが、一定時間内に返送を受けなかった場合は、電界出力を1ランク上げて電界の発生を指示する。
【符号の説明】
【0041】
1 車両
2 ステアリングホイール
3 運転席
4 助手席
5 後部座席
10 携帯電話機
11 アンテナ
12 無線通信部
13 送話部
14 受話部
15 スピーカ部
16 表示部
17 操作部
18 記憶部
19 制御部
20 電界通信部
21 電極
22 絶縁体
30 生体
41 絶縁体
42 電極
43 電界通信部
44 電界制御部
45 出力決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内の携帯電話端末の通信可否を制御する車両システムにおいて、
前記携帯電話端末は、人体を介して電界を検出する端末用電極を有し、
当該端末用電極が電界を検出しているときは当該携帯電話端末を使用できなくし、電界を検出できないときは当該携帯電話端末を使用できるように制御する手段を備え、
車両内の運転用ステアリングホイールに前記端末用電極との間で人体を介して通信を行う車両用電極を有し、
前記車両用電極に当該車両が走行中ならば電界を誘起させ、当該車両が停止中ならば電界を誘起させないように制御する電界制御手段を車両内に備えたことを特徴とする車両内の携帯電話端末の通信可否を制御する車両システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両システムにおいて、前記車両内に車両のイグニッションキーを操作して走行可能状態になったときに一定時間内は電界を誘起させると共に、前記携帯電話端末との間で通信し、電界を誘起させる出力を決定する出力決定手段を車両内に備えたことを特徴とする車両内の携帯電話端末の通信可否を制御する車両システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の携帯電話端末において、
電界を検出しているときに当該携帯電話端末がハンズフリー通話可能な状態になっているときは、当該携帯電話端末を使用できるように制御する手段を備えたことを特徴とする携帯電話端末。
【請求項4】
請求項1または2に記載の携帯電話端末において、
携帯電話網から緊急地震速報を受信したときは、電界の検出有無に関係なく、当該携帯電話端末を使用できるように制御する手段を備えたことを特徴とする携帯電話端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−115525(P2013−115525A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258380(P2011−258380)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000134707)株式会社ナカヨ通信機 (522)
【Fターム(参考)】