車両ドア自動開閉装置
【課題】コストの増加を抑えながらも、ユーザにとっての快適性を向上させることを可能にする車両ドア自動開閉装置を提供する。
【解決手段】スイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査するように探査波を逐次送信するとともに、その探査波の反射波を受信し、受信した反射波をもとに、スイングドアの開閉軌跡上に存在する障害物を検出するレーザレーダ2を備える。そして、このレーザレーダ2で障害物の検出を逐次行うことによって、探査波の走査範囲内でのユーザの所定のジェスチャを検出し、ジェスチャの検出結果をもとに、当該スイングドアやそれ以外の車両ドアの自動での開閉動作を開始させる。
【解決手段】スイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査するように探査波を逐次送信するとともに、その探査波の反射波を受信し、受信した反射波をもとに、スイングドアの開閉軌跡上に存在する障害物を検出するレーザレーダ2を備える。そして、このレーザレーダ2で障害物の検出を逐次行うことによって、探査波の走査範囲内でのユーザの所定のジェスチャを検出し、ジェスチャの検出結果をもとに、当該スイングドアやそれ以外の車両ドアの自動での開閉動作を開始させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドアを自動で開閉させる車両ドア自動開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両ドアを開扉する際に、障害物との接触を未然に防止するようにする技術が知られている。例えば特許文献1や特許文献2には、車両ドアに超音波等を用いた障害物センサを設け、当該障害物センサによって障害物を検出することで、物理的な開閉スイッチを操作して車両ドアを開扉する際に、この障害物との接触を未然に防止するようにする技術が開示されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示の技術では、障害物に接触しないように自動で車両ドアの開度を調整することが可能であるものの、車両ドアを開閉するためには物理的なスイッチを操作する必要があった。そのため、ユーザの両手が荷物で塞がっている場合には一度荷物を地面において物理的なスイッチを操作する必要があった。また、スイッチが車体に設けられている場合には、雨降り時に濡れた車両ボディに触れて操作しなければならないなどの不都合があり、ユーザにとっての快適性を損なっていた。
【0004】
そこで、この問題を解決する手段として、例えば、特許文献3には、駐車されている車両に対する人物の位置を超音波センサとカメラの画像情報とから取得し、人物が起点位置に存在することを判別した後、動線に沿って終点位置に達したことを判別した場合に、ドアの開放を行う技術が開示されている。また、特許文献4には、ユーザの身振り手振りや音声といった身体表現をカメラや音声検出装置で検出し、検出した身振り手振りや音声に基づいて、車両ドアの開放などを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−336934号公報
【特許文献2】特開2006−256362号公報
【特許文献3】特開2009−208741号公報
【特許文献4】特開2008−2095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に開示の技術では、車両ドアを自動で開放するためには、動線に沿ったユーザの位置の移動を検出する必要があるので、ユーザはドアの開放のためだけに歩行を行う必要があり、ユーザにとっての快適性を損なってしまうという問題点があった。
【0007】
また、特許文献4に開示の技術では、ユーザの身振り手振りや音声といった身体表現を検出するためのカメラや音声検出装置を車両に追加搭載する必要があるので、コストが増加するという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、コストの増加を抑えながらも、ユーザにとっての快適性を向上させることを可能にする車両ドア自動開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の構成においては、探査波を送受信する障害物センサで受信した反射波をもとに、スイングドアの開閉軌跡上に存在する障害物を検出する車両ドア自動開閉装置において、障害物センサで障害物の検出を逐次行うことによって、探査波の走査範囲内でのユーザの体の一部の所定の動き(以下、所定のジェスチャ)を検出するジェスチャ検出手段と、ジェスチャ検出手段での検出結果をもとに、車両のドアの自動での開閉動作を開始させる開閉動作開始手段をさらに備えることになる。
【0010】
これによれば、ジェスチャ検出手段で障害物センサの走査範囲内でのユーザの所定のジェスチャを検出した検出結果をもとに、車両のドア(以下、車両ドア)の自動での開閉動作を開始させるので、ユーザは歩行に比べて小さな動作をするだけでも車両ドアの自動での開閉動作を行わせることが可能になる。また、両手が荷物で塞がっている場合であっても、他の体の一部(例えば足)を動かすことで車両ドアの自動での開閉動作を行わせることが可能になる。他にも、障害物センサの走査範囲内でのユーザの所定のジェスチャを検出して車両ドアの開閉動作を行わせるので、雨降り時に濡れた車両ボディに触れて車両ドアの開閉動作を行わせる必要もない。従って、請求項1の構成によれば、ユーザにとっての快適性を向上させることが可能になる。
【0011】
さらに、請求項1の構成によれば、スイングドアの開閉軌跡上に存在する障害物を検出するために用いる障害物センサを利用して、ユーザの所定のジェスチャを検出するので、ユーザの所定のジェスチャを検出するためのカメラ等を別途新たに車両に設ける必要がなく、その分のコストの増加を抑えることができる。その結果、コストの増加を抑えながらも、ユーザにとっての快適性を向上させることが可能になる。
【0012】
所定のジェスチャを検出可能な物理的範囲が広すぎると、ユーザが意図しない場所でたまたま所定のジェスチャと同じ動きをしてしまった場合にもジェスチャ検出手段での検出が行われて、車両ドアの開閉動作を開始してしまう誤動作が生じる場合がある。これに対して、請求項2の構成によれば、ジェスチャ検出手段は、所定のジェスチャを検出可能な物理的範囲を、障害物センサの走査範囲の一部に限定する。よって、所定のジェスチャを検出可能な物理的範囲をより狭く限定することで、意図しない場所でジェスチャ検出手段での検出が行われることを防止し、車両ドアの誤動作を防止することが可能になる。
【0013】
請求項2のように、所定のジェスチャを検出可能な物理的範囲をより狭く限定する場合には、請求項3のように、物理的範囲を、照明手段から照射する可視光線で照らすことでユーザに提示することが好ましい。これによれば、所定のジェスチャを検出可能な物理的範囲をユーザが認識しやすくなるので、物理的範囲をより狭く限定した場合であっても、より確実にユーザがその物理的範囲内で所定のジェスチャをすることが可能になる。従って、物理的範囲をより狭く限定した場合であっても、所定のジェスチャの検出率を向上させることができる。
【0014】
また、請求項3のようにする場合に、請求項4のようにする態様としてもよい。請求項4の構成においては、スイングドアの開閉状態に応じて物理的範囲を照明手段から照射する可視光線で照らすか否かを照射有無判定手段で判定する。そして、物理的範囲を照明手段から照射する可視光線で照らさないと照射有無判定手段で判定した場合には、物理的範囲を照明手段から照射する可視光線で照らさないことになる。これによれば、スイングドアの開閉状態に応じて、物理的範囲を可視光線で照らさないようにすることが可能になる。
【0015】
例えば、車両の後部のスイングドアが大きく開扉されている場合には、そのスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波はユーザの目線よりも高い位置からほぼ水平方向に送信されたりすることになるので、物理的範囲も上方に位置することになり、その物理的範囲内でユーザが所定のジェスチャをすることが困難になる場合がある。また、車両の側面のスイングドアが開扉している場合には、そのスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波は、車両の側方のドアから乗車や降車しようとするユーザの位置とはそのスイングドアを挟んで反対側にのみ送信される可能性が高くなるので、物理的範囲もユーザの位置とはそのスイングドアを挟んで反対側に位置する可能性が高くなり、その物理的範囲内でユーザが所定のジェスチャをすることは困難と考えられる。請求項4の構成によれば、このように、所定のジェスチャを物理的範囲内で行うことが困難な状態の場合に物理的範囲を可視光線で照らさないようにすることが可能になる。
【0016】
所定のジェスチャを検出可能な時間的範囲が広すぎると、ユーザが意図しないときにたまたま所定のジェスチャと同じ動きをしてしまった場合にもジェスチャ検出手段での検出が行われて、車両ドアの開閉動作を開始してしまう誤動作が生じる場合がある。これに対して、請求項5の構成によれば、ジェスチャ検出手段は、所定のジェスチャを検出可能な時間的範囲を限定する。よって、所定のジェスチャを検出可能な時間的範囲をより狭く限定することで、意図しないときにジェスチャ検出手段での検出が行われることを防止し、車両ドアの誤動作を防止することが可能になる。
【0017】
請求項5のように、所定のジェスチャを検出可能な時間的範囲をより狭く限定する場合には、請求項6のように、時間的範囲を、照明手段及びインジケータランプのうちの少なくともいずれかである提示灯を点灯させることでユーザに提示することが好ましい。これによれば、所定のジェスチャを検出可能な時間的範囲をユーザが認識しやすくなるので、時間的範囲をより狭く限定した場合であっても、より確実にユーザがその時間的範囲内で所定のジェスチャをすることが可能になる。従って、時間的範囲をより狭く限定した場合であっても、所定のジェスチャの検出率を向上させることができる。
【0018】
また、請求項6のようにする場合に、請求項7のようにする態様としてもよい。請求項7の構成においては、スイングドアの開閉状態に応じて時間的範囲において提示灯を点灯させるか否かを点灯有無判定手段で判定する。そして、時間的範囲において提示灯を点灯させないと点灯有無判定手段で判定した場合には、時間的範囲において提示灯を点灯させないことになる。これによれば、スイングドアの開閉状態に応じて、時間的範囲において提示灯を点灯させないようにすることが可能になる。
【0019】
例えば、車車両の後部のスイングドアが大きく開扉されている場合には、そのスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波はユーザの目線よりも高い位置からほぼ水平方向に送信されたりすることになるので、物理的範囲も上方に位置することになり、その物理的範囲内でユーザが所定のジェスチャをすることが困難になる場合がある。また、車両の側面のスイングドアが開扉している場合には、そのスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波は、車両の側方のドアから乗車や降車しようとするユーザの位置とはそのスイングドアを挟んで反対側にのみ送信される可能性が高くなるので、所定のジェスチャを検出する範囲もユーザの位置とはそのスイングドアを挟んで反対側に位置する可能性が高くなり、当該範囲内でユーザが所定のジェスチャをすることは困難と考えられる。請求項7の構成によれば、このように、所定のジェスチャを検出する範囲で所定のジェスチャを行うことが困難な状態にあるときは、所定のジェスチャを検出可能な時間的範囲であっても、その時間的範囲において提示灯を点灯させないようにすることが可能になる。
【0020】
請求項8の構成によれば、携帯機との近距離無線通信に基づいて、車両に搭載された車両側ユニットでコード照合が成立した場合に限り、ジェスチャ検出手段での所定のジェスチャの検出を可能とすることになる。これによれば、所定のジェスチャを検出可能な範囲を、携帯機が車両側ユニット(つまり、車両)と近距離無線通信を行うことができる範囲内に少なくとも限定することができる。よって、所定のジェスチャを検出可能な物理的範囲をより狭く限定することで、意図しない場所でジェスチャ検出手段での検出が行われることを防止し、車両ドアの誤動作を防止することが可能になる。
【0021】
また、請求項8の構成によれば、コード照合が成立した場合に限り、所定のジェスチャの検出を可能とすることになるので、車両の乗員が近くにいる場合にのみ所定のジェスチャによる車両ドアの自動での開閉を可能にすることができる。
【0022】
請求項9のように、スイングドアが車両の側面に設けられたスイングドアであって、開閉動作開始手段は、ジェスチャ検出手段での検出結果をもとに、当該スイングドアを自動で開扉する動作を開始させる態様としてもよい。これによれば、車両の側面に設けられたスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波の走査範囲において、ユーザが所定のジェスチャをすれば、当該スイングドアを自動で開扉させることが可能になる。車両の側面に設けられたスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波の走査範囲は、当該スイングドアの閉扉時には当該スイングドアの側方から後方にかけての領域となる筈である。よって、請求項9の構成によれば、開扉したい車両の側面のスイングドアの近くで所定のジェスチャをすれば当該スイングドアを自動で開扉させることが可能になる。
【0023】
また、請求項10のように、スイングドアは車両の側面に設けられたスイングドアであって、開閉動作開始手段は、ジェスチャ検出手段での検出結果をもとに、当該スイングドアの後方に設けられた当該車両のスライドドアの自動での開閉動作を開始させる態様としてもよい。これによれば、車両の側面に設けられたスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波の走査範囲において、ユーザが所定のジェスチャをすれば、当該スイングドアの後方に設けられたスライドドアを自動で開閉させることが可能になる。車両の側面に設けられたスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波の走査範囲は、当該スイングドアの側方から後方にかけての領域、つまり、当該スイングドアの後方のスライドドアの近辺となる筈である。よって、請求項10の構成によれば、開扉したいスライドドアの近くで所定のジェスチャをすれば当該スライドドアを自動で開扉させることが可能になる。
【0024】
さらに、請求項11のように、スイングドアは車両の後部に設けられたスイングドアであって、開閉動作開始手段は、ジェスチャ検出手段での検出結果をもとに、当該スイングドアを自動で開扉する動作を開始させる態様としてもよい。これによれば、車両の後部に設けられたスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波の走査範囲において、ユーザが所定のジェスチャをすれば、当該スイングドアを自動で開扉することが可能になる。車両の後部に設けられたスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波の走査範囲は、当該スイングドアの閉扉時には当該スイングドアの後方の領域となる筈である。よって、請求項11の構成によれば、開扉したい車両の後部のスイングドアの近くで所定のジェスチャをすれば当該スイングドアを自動で開扉させることが可能になる。
【0025】
また、請求項12のように、スイングドアは車両の側面に設けられたスイングドアであって、開閉動作開始手段は、ジェスチャ検出手段での検出結果をもとに、車両の後部に設けられたスイングドアを自動で閉扉する動作を開始させる態様としてもよい。これによれば、車両の側面に設けられたスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波の走査範囲において、ユーザが所定のジェスチャをすれば、車両の後部のスイングドアを自動で閉扉させることが可能になる。車両の側面に設けられたスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波の走査範囲は、当該スイングドアの側方から後方にかけての領域、つまり、車両の後部のスイングドアにより近い領域となる筈である。よって、請求項12の構成によれば、開扉したい車両の後部のスライドドアにより近い領域で所定のジェスチャをすれば当該スライドドアを自動で閉扉させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】車両ドア自動開閉システム100の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】レーザレーダ2の概略的な構成を示す図である。
【図3】ドア開閉ECU1における運転席ドア自動開閉関連処理のフローの一例を示すフローチャートである。
【図4】運転席ドア自動開閉関連処理が行われているときの各シチュエーションを説明するための模式図である。
【図5】車両ドア自動開閉システム100における運転席後方スライドドア自動開閉関連処理のフローの一例を示すフローチャートである。
【図6】(a)〜(d)は、運転席後方スライドドア自動開閉関連処理が行われているときの各シチュエーションを説明するための模式図である。
【図7】ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かを、運転席ドアの開閉状態に応じて判定する理由を説明するための模式図である。
【図8】2種類のジェスチャ検出範囲を照射可能な構成を説明するための模式図である。
【図9】車両ドア自動開閉システム100におけるバックドア自動開閉関連処理のフローの一例を示すフローチャートである。
【図10】(a)〜(d)は、バックドア自動開閉関連処理が行われているときの各シチュエーションを説明するための模式図である。
【図11】(a)及び(b)は、バックドア自動開閉関連処理が行われているときの各シチュエーションを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明が適用された車両ドア自動開閉システム100の概略的な構成を示すブロック図である。図1に示す車両ドア自動開閉システム100は、車両に搭載されるものであり、ドア開閉ECU1、レーザレーダ2、車速センサ3、開度センサ4、スマートECU5、照明装置8、イルミECU9、及び車両ドアを開扉したり、閉扉したりするための開閉モータ6とラッチ解除モータ7とから構成される。つまり、本実施形態では、車両ドアは、開閉モータ6とラッチ解除モータ7との2種類のモータを用いて開閉される。なお、ドア開閉ECU1、レーザレーダ2、及び照明装置8からなる構成が請求項の車両ドア自動開閉装置に相当する。
【0028】
図1には、1枚の車両ドアを自動開閉するための構成が示されているが、本実施形態による車両ドア自動開閉システム100は、例えば運転席の車両ドアのように、車両のいずれかの車両ドアに対してのみ適用したり、運転席及び助手席の車両ドアに対して適用したり、あるいは、車両の全車両ドアに対して適用したりすることが可能である。ここでは、便宜上、車両ドアとして運転席のスイングドアの自動での開閉に車両ドア自動開閉システム100を適用した場合を例に挙げて以降の説明を行う。
【0029】
レーザレーダ2は、例えば、運転席のスイングドア(以下、運転席ドア)を車両の車体側面に対して回転可能に支持する回転軸近傍の、運転席ドアに取り付けられたドアミラーの下部に設けられる。レーザレーダ2は、例えば図2に示されるように、発光部21、受光部22、及び制御部23を備えている。図2は、レーザレーダ2の概略的な構成を示す図である。発光部21及び受光部22は、運転席ドアの開閉軌跡上に存在する障害物を検出できるように、運転席ドアの外表面の近傍に向けて設けられる。
【0030】
発光部21は、レーザダイオードを備えており、制御部23からの駆動信号に従って、車幅方向及び車高方向それぞれの所定角度の範囲でパルス状のレーザ光を掃引照射(スキャン)する。これら車幅方向及び車高方向それぞれにレーザ光が照射される角度範囲(つまり、走査範囲)によって、レーザレーダ2の検知エリアが規定される。また、発光部21は、検知エリアの全体に対するスキャンを逐次行うものとする。
【0031】
発光部21は、運転席ドアの外表面の近傍を少なくとも走査するようにレーザ光を逐次照射するものとする。例えば、運転席ドアの外表面に対し、運転席ドアが開扉される方向に所定角度ずれた範囲までの領域を走査するようにレーザ光を照射する構成とすればよい。他にも、運転席ドアの外表面に対し、運転席ドアが開扉される方向に所定角度ずれた平面から一定角度までずれた範囲までの領域を走査するようにレーザ光を照射する構成としてもよい。これによれば、運転席ドアを開扉する際に、運転席ドアの可動範囲全体に渡って、運転席ドアと接触する可能性がある障害物を検出することが可能となる。なお、ここで言うところの所定角度及び一定角度については、任意に設定可能であるものとする。
【0032】
受光部22は、発光部21から照射されたレーザ光が障害物で反射された反射光(反射波)を受光レンズで受光し、受光素子(フォトダイオード)に与える。受光素子は、反射光の強度に対応する電圧を出力する。この受光素子の出力電圧は、増幅器にて増幅された後にコンパレータに出力される。コンパレータは増幅器の出力電圧を基準電圧と比較し、出力電圧が基準電圧よりも大きくなったとき、障害物を検出したものとして所定の受光信号を制御部23へ出力する。
【0033】
制御部23は、通常のコンピュータとして構成されており、内部には周知のCPU、ROMやRAMやEEPROMなどのメモリ、I/O、及びこれらの構成を接続するバスライン(いずれも図示せず)などが備えられている。制御部23は受光部22、角度検出部24から入力された各種情報に基づき、各種の処理を実行する。
【0034】
制御部23は、例えばROMに記憶されているプログラムに従って、発光部11がレーザ光を照射する際に検知エリア内を定められたパターンで順番にレーザ光がスキャンするように、発光部11に駆動信号を出力する。このように、レーザ光がスキャンするパターンが定められているので、反射光を受光した場合には、その反射光が得られたレーザ光の照射角度が一義的に定まるようになっている。制御部23は、このことを利用して、受光部22で反射光を受光した場合(詳しくは受光信号が受光部22から入力された場合)に、その反射光が得られたレーザ光の照射角度を求める。
【0035】
また、制御部23は、駆動信号を出力してから受光信号が発生するまでの時間、すなわちレーザ光を出射した時刻と反射光を受光した時刻との時間差を計測する。そして、計測した時間差に基づいて障害物までの距離を算出する。そして、算出した障害物までの距離とこの障害物までの距離を算出するのに用いた反射光が得られたレーザ光の照射角度とを
ドア開閉ECU1に入力する。
【0036】
なお、レーザレーダ2は、運転席ドアを車両の車体側面に対して回転可能に支持する回転軸近傍の、運転席ドア自体に設けられる構成としてもよいが、本実施形態では、ドアミラーの下部に設けられるものとして以降の説明を続ける。
【0037】
また、本実施形態では、車両ドアの開閉軌跡上に存在する障害物を検出するための障害物センサとして、レーザレーダ2を用いる構成を示すが、必ずしもこれに限らない。探査波を走査することで障害物の動きを検出することができる障害物センサであれば、他の障害物センサを用いる構成としてもよい。例えば、超音波センサやミリ波レーダや赤外線センサ等を用いる構成としてもよい。
【0038】
車速センサ3は、車両の走行速度に応じた速度信号を発生する。開度センサ4は、運転席ドアが開扉されたときの運転席ドアの開度を検出して、検出信号を発生する。これら車速センサ3及び開度センサ4からの信号もドア開閉ECU1に入力される。
【0039】
スマートECU5は、各種機器を制御するCPU、予め各種の数値やプログラムが書き込まれたROM、演算過程の数値やフラグが所定の領域に書き込まれるRAM等よりなるマイコンを主体として構成される。そして、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、コード照合、後述するリクエスト信号の送信制御、車両ドアのロック・アンロックの制御などのスマートエントリーシステムに関連する各種の処理を実行する。
【0040】
ここで、周知のスマートエントリーシステムについての説明を行う。周知のスマートエントリーシステムでは、ユーザが携帯式電子キーなどの携帯機を所持して運転席ドアに接近すると、車両側の発信機から近距離無線通信によって常に一定時間おきに送信されているリクエスト信号(例えばLF帯の電波)をこの携帯機が受信し、予めメモリに記憶された自己のIDコードを含むレスポンス信号(例えばVHF帯・UHF帯の電波)を送信する。一方、車両側のチューナでこのレスポンス信号を受信すると、車両側のスマートECU5でレスポンス信号に含まれていたIDコードと車両固有のIDコードとの照合を行い、両者が一致したことを条件にドアの開錠を行わせるようになっている。また、この携帯機を所持しているユーザが車両から離間すると、車両は、この携帯機から送信されるレスポンス信号を受信不能となる。そして、車両は、このレスポンス信号を受信不能になったことをトリガとしてドアの施錠を行わせる。よって、スマートECU5が請求項の車両側ユニットに相当する。なお、本実施形態では、車両側の発振機及びチューナは運転席ドアの近傍に設けられており、通信範囲は運転席ドアの周辺に限定されているものとする。
【0041】
ラッチ解除モータ7は、運転席ドアの内部に設置され、運転席ドアを閉位置に保持する図示しないラッチ機構に作用して、当該ラッチ機構を解除するものである。これにより、運転席ドアは開扉が可能な状態となる。
【0042】
開閉モータ6も、運転席ドアの内部に設置され、図示しないドア開閉機構を駆動することによって、運転席ドアを設定開度(例えば最大開度)まで開扉させたり、閉扉させたりするものである。ただし、運転席ドアの開扉中に、後述する運転席開扉停止ジェスチャが検出されたり、運転席ドアと接触する可能性がある障害物が検出されたりしたときには、設定開度未満の開度であっても、開閉モータ6による運転席ドアの開扉が停止される。この場合、運転席ドアの開度は、開閉モータ6が停止した時点の開度に保持される。
【0043】
照明装置8は、レーザレーダ2の検知エリアの一部(詳しくは後述するジェスチャ検出範囲)に可視光線を照射するものであって、当該検知エリアの一部の物理的範囲を照射可能なように、例えばレーザレーダ2の設置位置の近傍に設置されるものとする。よって、照明装置8が請求項の照明手段に相当する。本実施形態では、例えば照明装置8は運転席ドアのドアミラーの下部に設けられるものとして以降の説明を続ける。
【0044】
イルミECU9は、種機器を制御するCPU、予め各種の数値やプログラムが書き込まれたROM、演算過程の数値やフラグが所定の領域に書き込まれるRAM等よりなるマイコンを主体として構成される。そして、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、車両に設けられている照明装置8やインジケータランプの点消灯の制御等の各種の処理を実行する。本実施形態の例では、イルミECU9は、運転席ドアのドアハンドルイルミの点消灯の制御を行うものとして以降の説明を続ける。
【0045】
ドア開閉ECU1は、レーザレーダ2、車速センサ3、開度センサ4、スマートECU5からの信号を受ける入力インターフェース(I/F)11、予め定められたプログラムに従って各種の演算処理を行うCPU12、プログラムを記憶する不揮発性メモリ13、及び開閉モータ6やラッチ解除モータ7を駆動する駆動信号を出力するモータドライバ14などから構成されている。
【0046】
例えば、ドア開閉ECU1は、レーザレーダ2の制御部23から取得した障害物までの距離をもとに、運転席ドアと接触する可能性がある障害物であるか否かを判定する。詳しくは、レーザレーダ2の設置位置から、運転席ドアを設定開度まで全開した場合の運転席ドアの端部までの距離よりも、算出した障害物までの距離が短かった場合に、運転席ドアと接触する可能性がある障害物であると判定する。これにより、運転席ドアが障害物に接触しない範囲で、運転席ドアを極力大きく開く制御を可能にしている。
【0047】
また、ドア開閉ECU1は、レーザレーダ2の制御部23から取得した障害物までの距離と反射光が得られたレーザ光の照射角度とをもとにして、障害物(詳しくはレーザ光の反射点)の位置データを作成する。詳しくは、発光部21及び受光部22の中心を原点(0,0,0)とし、車幅方向をX軸、車両前後方向をY軸、高さ方向をZ軸とするセンサ座標系におけるX座標、Y座標、及びZ座標を求める。つまり、発光部21及び受光部22の中心(つまり、レーザレーダ2の設置位置に相当)に対する障害物の相対的な位置を求める。前述したように、レーザレーダ2では、発光部21が検知エリアの全体に対するスキャンを逐次行うので、時間経過に伴って障害物が動いた場合には、その動きに伴った相対的な位置が逐次求められることになる。これにより、ユーザの手や足の動きによるジェスチャを検出することを可能にしている。よって、ドア開閉ECU1が請求項のジェスチャ検出手段に相当する。なお、ユーザの手や足の動きに限らず、杖などの動きもジェスチャとして検出できるものとする。
【0048】
ここで、ドア開閉ECU1でのジェスチャの検出について説明を行う。まず、ドア開閉ECU1では、ジェスチャ検出を行う範囲(以下、ジェスチャ検出範囲)を、レーザレーダ2の検知エリア(つまり、走査範囲)のうちの一部に限定している。具体的には、限定したジェスチャ検出範囲以外の走査範囲については障害物の位置データを作成しないようにすればよい。本実施形態では、一例としてジェスチャ検出範囲を、レーザレーダ2の走査範囲のうちの、運転席ドアの先端の位置よりも後方であって、且つ、より運転席ドア寄りの一部の領域に限定するものとする。
【0049】
照明装置8は、このジェスチャ検出範囲をユーザが認識しやすいように、ジェスチャ検出範囲と略同一の範囲を可視光線で照らすように設けられている。
【0050】
ドア開閉ECU1では、ジェスチャ検出範囲内での所定のジェスチャを検出し、検出したジェスチャに応じた制御を実行する。一例としては、ジェスチャ検出範囲内で、若しくはジェスチャ検出範囲を横切って、車幅方向の車両から遠ざかる向きに手足を動かすジェスチャを、運転席ドアの開扉を指示するジェスチャ(以下、運転席開扉ジェスチャ)として検出する。他には、ジェスチャ検出範囲内で手足を一定時間止めるジェスチャを、運転席ドアの開扉を指示するジェスチャ(運転席開扉停止ジェスチャ)として検出する。
【0051】
続いて、図3及び図4(a)〜図4(c)を用いて、車両ドア自動開閉システム100における運転席ドアの自動での開閉に関連する処理(以下、運転席ドア自動開閉関連処理)のフローについての説明を行う。図3は、車両ドア自動開閉システム100における運転席ドア自動開閉関連処理のフローの一例を示すフローチャートである。図4(a)〜図4(c)は、運転席ドア自動開閉関連処理が行われているときの各シチュエーションを説明するための模式図である。本フローは、例えば車両ドア自動開閉システム100に含まれるスマートECU5及びドア開閉ECU1の電源がオンになったときに開始される。
【0052】
まず、ステップS1では、車両が停車している状態であるか否かをドア開閉ECU1が判定する。車両が停車している状態であるか否かは、車速センサ3からの速度信号が、車速=0を示しているか否かに応じて判定する。そして、車速=0を示している、つまり、車両が停車している状態であると判定した場合(ステップS1でYES)には、ステップS2に移る。また、車速=0を示していない、つまり、車両が停車している状態でないと判定した場合(ステップS1でNO)には、ステップS1のフローを繰り返す。
【0053】
ステップS2では、ドア開閉ECU1がスマートECU5に指示を行い、一定時間おきに車両側の発振機からリクエスト信号を送信させるポーリングを開始させ、ステップS3に移る。ステップS3では、スマートECU5でコード照合が成立したことを示す情報をドア開閉ECU1が得た場合(ステップS3でYES)には、照合ありとしてレーザレーダ2の電源をオンにしてステップS4に移る。また、スマートECU5でコード照合が成立したことを示す情報をドア開閉ECU1が得ていない場合(ステップS3でNO)には、照合なしとしてステップS3のフローを繰り返す。
【0054】
つまり、スマートエントリーシステムの近距離無線通信に基づくコード照合を利用することによって、運転席ドアへのユーザの接近の検出を可能にしている(図4(a)参照)。
【0055】
ステップS4では、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かをドア開閉ECU1が判定する。ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かは、例えば開度センサ4の信号が運転席ドアの完全に閉じた状態(完全閉状態)を示しているか否かに応じて判定する。そして、完全閉状態を示している、つまり、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあると判定した場合(ステップS4でYES)には、ステップS5に移る。また、完全閉状態を示していない、つまり、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にないと判定した場合(ステップS4でNO)には、フローを終了する。
【0056】
なお、ドアカーテシスイッチの信号が運転席ドアの完全に閉じた状態(完全閉状態)を示しているか否かに応じて、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かをドア開閉ECU1が判定する構成としてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、完全閉状態を示している場合に、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあると判定する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、運転席ドアの開度が所定値以下であった場合に、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあると判定する構成としてもよい。ここで言うところの所定値とは、任意に設定可能な値である。
【0058】
ステップS5では、ドア開閉ECU1がイルミECU9に指示を行い、照明装置8の電源をオンにさせて、ジェスチャ検出範囲と略同一の範囲を可視光線で照らさせ、ステップS6に移る。ステップS6では、ドア開閉ECU1がイルミECU9に指示を行い、運転席ドアのドアハンドルイルミを点灯させ、ステップS7に移る。これにより、ユーザがジェスチャを検出可能な範囲及びタイミングを容易に認識して、手や足等によるジェスチャをジェスチャ検出範囲内で行うことが可能になる。
【0059】
本実施形態では、ステップS5の処理の次にステップS6の処理を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、ステップS6の処理の次にステップS5の処理を行う構成としてもよいし、ステップS5の処理とステップS6の処理とを並行して行う構成としてもよい。
【0060】
なお、ステップS4において、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にないと判定した場合には、ジェスチャ検出範囲と略同一の範囲を可視光線によって照らすことも、運転席ドアのドアハンドルイルミの点灯も行われない。これにより、ユーザにジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にないことを容易に認識させることができる。よって、ドア開閉ECU1が請求項の照射有無判定手段及び点灯有無判定手段に相当する。
【0061】
ステップS7では、ユーザが手や足で行った運転席開扉ジェスチャの検出(図4(b)参照)がドア開閉ECU1で行われた場合(ステップS7でYES)には、ステップS8に移る。また、運転席開扉ジェスチャの検出がドア開閉ECU1で行われていない場合(ステップS7でNO)には、ステップS7のフローを繰り返す。
【0062】
ステップS8では、ドア開閉ECU1が、モータドライバ14から開閉モータ6及びラッチ解除モータ7に駆動信号を出力して、運転席ドアの開扉を開始させ、ステップS9に移る。よって、ドア開閉ECU1が請求項の開閉動作開始手段に相当する。
【0063】
ステップS9では、運転席ドアの開度が、運転席ドアを自動開扉する際の設定開度になったか否かを、開度センサ4の検出信号に基づいてドア開閉ECU1が判定する。そして、運転席ドアの開度が設定開度になったと判定した場合(ステップS9でYES)には、ステップS12に移る。一方、運転席ドアの開度がまだ設定開度に達していないと判定した場合(ステップS9でNO)には、ステップS10に移る。
【0064】
ステップS10では、レーザレーダ2での障害物の検出結果に基づき、前述したようにして、運転席ドアに接触する可能性がある障害物が存在するか否かを判定する。そして、運転席ドアに接触する可能性がある障害物が存在すると判定した場合(ステップS10でYES)には、ステップS11に移る。また、運転席ドアに接触する可能性がある障害物が存在しないと判定した場合(ステップS10でNO)には、ステップS9に戻ってフローを繰り返す。このように、ステップS9からステップS10までの処理を繰り返し実行することにより、運転席ドアが開扉される間中、運転席ドアに対する障害物の検出が継続して実行される。
【0065】
ステップS11では、障害物を検出した後も、開閉モータ6の駆動を継続し、開閉モータ6によって、障害物を検出した時点の運転席ドアの開度から、障害物に接触しない程度の角度だけ運転席ドアを開扉(図4(c)参照)させた時点で、ステップS12に移る。障害物に接触しない程度の角度については、ドア開閉ECU1で算出した障害物までの距離をもとに求める構成とすればよい。
【0066】
なお、本実施形態では、運転席ドアに接触する可能性がある障害物を検出した場合に、その障害物に接触しない程度の開度で運転席ドアの開扉動作を停止させる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、ドア開閉ECU1で運転席開扉停止ジェスチャの検出が行われた時点で、運転席ドアの開扉動作を停止させる構成としてもよい。
【0067】
ステップS12では、開閉モータ6の駆動を停止することにより、運転席ドアの開扉を停止させ、運転席ドアの開度を保持してフローを終了する。
【0068】
本実施形態の構成によれば、運転席ドア近傍の発振機及びチューナを介した近距離無線通信に基づくコード照合が成立した場合に、ジェスチャ検出を可能にするので、ユーザが運転席ドアの付近にいる場合にのみ、ジェスチャによる運転席ドアの自動での開閉を可能にすることができる。
【0069】
なお、本実施形態では、車両ドアとして運転席のスイングドアの自動での開閉に車両ドア自動開閉システム100を適用した場合を説明したが、助手席のスイングドアについても同様であるものとする。
【0070】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態(以下、変形例1)も本発明の技術的範囲に含まれる。以下では、変形例1について図面を用いて説明を行う。なお、説明の便宜上、前述の実施形態の説明に用いた図に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0071】
変形例1は、車両ドアとして運転席や助手席のスイングドアの後方に設けられたスライドドアの自動での開閉に車両ドア自動開閉システム100を適用した場合の例である。なお、変形例1では、運転席のスイングドアの後方のスライドドア(以下、運転席後方スライドドア)の自動での開閉に車両ドア自動開閉システム100を適用した場合を例に挙げて説明を行う。ここで、レーザレーダ2は、前述の実施形態と同様にして、運転席ドアのドアミラーの下部に設けられているものとする。
【0072】
変形例1においては、スマートエントリーシステムにおける車両側の発振機及びチューナは、運転席後方スライドドアの近傍に設けられており、通信範囲が運転席後方スライドドアの近傍に限定されているものとする。
【0073】
変形例1において、ラッチ解除モータ7は、運転席後方スライドドアの内部に設置され、運転席後方スライドドアを閉位置に保持する図示しないラッチ機構に作用して、当該ラッチ機構を解除するものである。開閉モータ6も、運転席後方スライドドアの内部に設置され、図示しないドア開閉機構を駆動することによって、運転席後方スライドドアを設定開度(例えば最大開度)まで開扉させたり、閉扉させたりするものである。ただし、運転席後方スライドドアの開閉中に、後述するスライドドア開閉停止ジェスチャが検出されたときには、開閉モータ6による運転席後方スライドドアの開閉が停止される。この場合、運転席後方スライドドアの開度は、開閉モータ6が停止した時点の開度に保持される。また、変形例1において、イルミECU9は、例えば運転席後方スライドドアのドアハンドルイルミの点消灯の制御及び照明装置8の制御を行うものとする。
【0074】
変形例1においても、ドア開閉ECU1では、ジェスチャ検出範囲を、レーザレーダ2の検知エリアの一部に限定しているが、前述の実施形態とは異なり、一例としてジェスチャ検出範囲を、レーザレーダ2の走査範囲のうちの、運転席ドアの先端の位置よりも後方であって、且つ、より運転席後方スライドドア寄りの一部の領域に限定するものとする。照明装置8は、このジェスチャ検出範囲をユーザが認識しやすいように、このジェスチャ検出範囲と略同一の範囲を可視光線で照らすように設けられている。
【0075】
また、変形例1において、ドア開閉ECU1では、ジェスチャ検出範囲内で、若しくはジェスチャ検出範囲を横切って、車両の前方向から後ろ方向に向けて手足を動かすジェスチャを、運転席後方スライドドアの開扉を指示するジェスチャ(以下、スライドドア開扉ジェスチャ)として検出する。また、ジェスチャ検出範囲内で、若しくはジェスチャ検出範囲を横切って、車両の後ろ方向から前方向に向けて手足を動かすジェスチャを、運転席後方スライドドアの閉扉を指示するジェスチャ(以下、スライドドア閉扉ジェスチャ)として検出する。他には、ジェスチャ検出範囲内で手足を一定時間止めるジェスチャを、運転席後方スライドドアの開扉を指示するジェスチャ(スライドドア開閉停止ジェスチャ)として検出する。
【0076】
続いて、図5、及び図6(a)〜図6(d)を用いて、車両ドア自動開閉システム100における運転席後方スライドドアの自動での開閉に関連する処理(以下、運転席後方スライドドア自動開閉関連処理)のフローについての説明を行う。図5は、車両ドア自動開閉システム100における運転席後方スライドドア自動開閉関連処理のフローの一例を示すフローチャートである。図6(a)〜図6(d)は、運転席後方スライドドア自動開閉関連処理が行われているときの各シチュエーションを説明するための模式図である。本フローは、例えば車両ドア自動開閉システム100に含まれるスマートECU5及びドア開閉ECU1の電源がオンになったときに開始される。
【0077】
まず、ステップS31では、ステップS1と同様にして、車両が停車している状態であるか否かをドア開閉ECU1が判定する。そして、車両が停車している状態であると判定した場合(ステップS31でYES)には、ステップS32に移る。また、車両が停車している状態でないと判定した場合(ステップS31でNO)には、ステップS31のフローを繰り返す。
【0078】
ステップS32では、ステップS2と同様にしてドア開閉ECU1がスマートECU5に指示を行い、一定時間おきに車両側の発振機からリクエスト信号を送信させるポーリングを開始させ、ステップS33に移る。ステップS33では、スマートECU5でコード照合が成立したことを示す情報をドア開閉ECU1が得た場合(ステップS33でYES)には、照合ありとしてレーザレーダ2の電源をオンにしてステップS34に移る。また、スマートECU5でコード照合が成立したことを示す情報をドア開閉ECU1が得ていない場合(ステップS33でNO)には、照合なしとしてステップS33のフローを繰り返す。
【0079】
つまり、スマートエントリーシステムの近距離無線通信に基づくコード照合を利用することによって、運転席後方スライドドアへのユーザの接近の検出を可能にしている(図6(a)参照)。
【0080】
ステップS34では、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かをドア開閉ECU1が判定する。ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かは、例えば開度センサ4の信号が運転席ドアの完全に閉じた状態(完全閉状態)を示しているか否かに応じて判定する。
【0081】
ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かを、運転席ドアの開閉状態に応じて判定する理由は以下の通りである。運転席ドアが開扉している場合には、運転席ドアの外表面の近傍を少なくとも走査するレーザレーダ2の探査波は、図7に示すように、運転席後方スライドドア(図7中のA)から乗車や降車しようとするユーザの位置(図7中のCで示す破線の円)とは運転席ドア(図7中のB)を挟んで反対側にのみ送信される(図7中の破線の矢印参照)ので、ジェスチャ検出範囲もユーザの位置とは運転席ドアを挟んで反対側に位置することになり、ジェスチャ検出範囲内でユーザがジェスチャをすることが困難なためである。
【0082】
図5に戻って、ステップS34では、完全閉状態を示している、つまり、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあると判定した場合(ステップS34でYES)には、ステップS35に移る。また、完全閉状態を示していない、つまり、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にないと判定した場合(ステップS34でNO)には、フローを終了する。
【0083】
なお、ドアカーテシスイッチの信号が運転席ドアの完全に閉じた状態(完全閉状態)を示しているか否かに応じて、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かをドア開閉ECU1が判定する構成としてもよい。
【0084】
また、本実施形態では、完全閉状態を示している場合に、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあると判定する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、運転席ドアの開度が所定値以下であった場合に、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあると判定する構成としてもよい。ここで言うところの所定値とは、任意に設定可能な値である。
【0085】
ステップS35では、ドア開閉ECU1がイルミECU9に指示を行い、照明装置8の電源をオンにさせて、ジェスチャ検出範囲と略同一の範囲を可視光線で照らさせ、ステップS36に移る。ステップS36では、ドア開閉ECU1がイルミECU9に指示を行い、運転席後方スライドドアのドアハンドルイルミを点灯させ、ステップS37に移る。これにより、ユーザがジェスチャを検出可能な範囲及びタイミングを容易に認識して、手や足等によるジェスチャをジェスチャ検出範囲内で行うことが可能になる。
【0086】
本実施形態では、ステップS35の処理の次にステップS36の処理を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、ステップS36の処理の次にステップS35の処理を行う構成としてもよいし、ステップS35の処理とステップS36の処理とを並行して行う構成としてもよい。
【0087】
なお、ステップS34において、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にないと判定した場合(ステップS34でNO)には、ジェスチャ検出範囲と略同一の範囲を可視光線によって照らすことも、運転席後方スライドドアのドアハンドルイルミの点灯も行われない。これにより、ユーザにジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にないことを容易に認識させることができる。
【0088】
ステップS37では、ユーザが手や足で行ったスライドドア開扉ジェスチャの検出(図6(b)参照)がドア開閉ECU1で行われた場合(ステップS37でYES)には、ステップS38に移る。また、スライドドア開扉ジェスチャの検出がドア開閉ECU1で行われていない場合(ステップS37でNO)には、ステップS40に移る。
【0089】
ステップS38では、ドア開閉ECU1が、モータドライバ14から開閉モータ6及びラッチ解除モータ7に駆動信号を出力して、運転席後方スライドドアの開扉を開始させ(図6(c)参照)、ステップS39に移る。
【0090】
ステップS39では、運転席後方スライドドアの開度が、運転席後方スライドドアを自動開扉する際の設定開度になったか否かを、開度センサ4の検出信号に基づいてドア開閉ECU1が判定する。そして、運転席後方スライドドアの開度が設定開度になったと判定した場合(ステップS39でYES)には、ステップS43に移る。一方、運転席後方スライドドアの開度がまだ設定開度に達していないと判定した場合(ステップS39でNO)には、ステップS39のフローを繰り返す。
【0091】
また、ステップS40では、ユーザが手や足で行ったスライドドア閉扉ジェスチャの検出(図6(b)参照)がドア開閉ECU1で行われた場合(ステップS40でYES)には、ステップS41に移る。また、スライドドア閉扉ジェスチャの検出がドア開閉ECU1で行われていない場合(ステップS40でNO)には、ステップS37に戻ってフローを繰り返す。
【0092】
ステップS41では、ドア開閉ECU1が、モータドライバ14から開閉モータ6に駆動信号を出力して、運転席後方スライドドアの閉扉を開始させ(図6(d)参照)、ステップS42に移る。
【0093】
ステップS42では、運転席後方スライドドアの開度が0(つまり、完全閉状態)になったか否かを、開度センサ4の検出信号に基づいてドア開閉ECU1が判定する。そして、運転席後方スライドドアの開度が0になったと判定した場合(ステップS42でYES)には、ステップS43に移る。一方、運転席後方スライドドアの開度がまだ0に達していないと判定した場合(ステップS43でNO)には、ステップS43のフローを繰り返す。
【0094】
ステップS43では、開閉モータ6の駆動を停止することにより、運転席後方スライドドアの開閉を停止させ、フローを終了する。なお、本実施形態では、例えば、ドア開閉ECU1でスライドドア開閉停止ジェスチャの検出が行われた時点で、運転席後方スライドドアの開閉動作を停止させる構成としてもよい。
【0095】
本実施形態の構成によれば、運転席後方スライドドア近傍の発振機及びチューナを介した近距離無線通信に基づくコード照合が成立した場合に、ジェスチャ検出を可能にするので、ユーザが運転席後方スライドドアの付近にいる場合にのみ、ジェスチャによる運転席後方スライドドアの自動での開閉を可能にすることができる。
【0096】
なお、本実施形態では、車両ドアとして運転席後方スライドドアの自動での開閉に車両ドア自動開閉システム100を適用した場合を説明したが、助手席のスイングドアの後方のスライドドアについても同様であるものとする。
【0097】
また、前述の実施形態と変形例1とを併用する構成としてもよい。この場合、共通する部材については共通化して用いる一方、共通化できないものについてはそれぞれ設ける構成とすればよい。例えば、照明装置8については、照射範囲が運転席ドア側のジェスチャ検出範囲に略同一となるものと、運転席後方スライドドア側のジェスチャ検出範囲に略同一となるものとの2つを設け、図8に示すように2種類のジェスチャ検出範囲を照射可能な構成とすればよい。図8は、2種類のジェスチャ検出範囲を照射可能な構成を説明するための模式図である。そして、図8中のDが、運転席ドア側のジェスチャ検出範囲に略同一となる照明装置8の照射範囲を示しており、Eが運転席後方スライドドア側のジェスチャ検出範囲に略同一となる照明装置8の照射範囲を示している。また、図8中の矢印がレーザレーダ2によって走査される探査波を示している。なお、照明装置8の角度をモータ等のアクチュエータで変化させることによって、1つの照明装置8で上述の2種類のジェスチャ検出範囲を照射可能な構成としてもよい。
【0098】
他にも、スマートエントリーシステムにおける車両側の発振機及びチューナは、運転席ドアの近傍と運転席後方スライドドアの近傍とにそれぞれ設けられており、各々の通信範囲が運転席ドアの周辺と運転席後方スライドドアの近傍とにそれぞれに限定されている構成とすればよい。これにより、運転席ドア側の発振機及びチューナを介してコード照合が行われたか、運転席後方スライドドア側の発振機及びチューナを介してコード照合が行われたかの情報をスマートECU5からドア開閉ECU1が得て、運転席ドアと運転席後方スライドドアとのどちらの開閉をユーザが意図しているかを判定することが可能となる。
【0099】
また、運転席ドアと運転席後方スライドドアとのどちらの開閉をユーザが意図しているかをドア開閉ECU1で判定した場合に、開閉を意図しているドア側でのみ照明装置8でジェスチャ検出範囲を照らしたり、ドアハンドルイルミを点灯させたりすることも可能になる。これによれば、ユーザが開閉を意図しない側では照明装置8でジェスチャ検出範囲を照らしたり、ドアハンドルイルミを点灯させなかったりするので、意図するドアを開閉させるためのジェスチャ検出範囲をユーザが容易に認識できる。
【0100】
また、次の実施形態(以下、変形例2)も本発明の技術的範囲に含まれる。以下では、変形例2について図面を用いて説明を行う。なお、説明の便宜上、前述の実施形態の説明に用いた図に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0101】
変形例2は、車両ドアとして車両の後部に設けられたスイングドアであるバックドアの自動での開閉に車両ドア自動開閉システム100を適用した場合の例である。
【0102】
変形例2においては、レーザレーダ2は、前述したのと同様に運転席ドアのドアミラーの下部に設けられている他に、例えばバックドアの回転軸の近傍であるバックドアの上部にも設けられる。
【0103】
そして、バックドア側のレーザレーダ2は、バックドアの外表面の近傍を少なくとも走査するようにレーザ光を逐次照射するものとする。例えば、バックドアの外表面に対し、バックドアが開扉される方向に所定角度ずれた範囲までの領域を走査するようにレーザ光を照射する構成とすればよい。他にも、バックドアの外表面に対し、バックドアが開扉される方向に所定角度ずれた平面から一定角度までずれた範囲までの領域を走査するようにレーザ光を照射する構成としてもよい。これによれば、バックドアを開扉する際に、バックドアの可動範囲全体に渡って、バックドアと接触する可能性がある障害物を検出することが可能となる。なお、ここで言うところの所定角度及び一定角度については、任意に設定可能であるものとする。
【0104】
変形例2においては、スマートエントリーシステムにおける車両側の発振機及びチューナは、バックドアの近傍に設けられており、通信範囲がバックドアの近傍に限定されているものとする。
【0105】
変形例2において、ラッチ解除モータ7は、バックドアの内部に設置され、バックドアを閉位置に保持する図示しないラッチ機構に作用して、当該ラッチ機構を解除するものである。開閉モータ6も、バックドアの内部に設置され、図示しないドア開閉機構を駆動することによって、バックドアを設定開度(例えば最大開度)まで開扉させたり、閉扉させたりするものである。ただし、バックドアの開閉中に、後述するバックドア開閉停止ジェスチャが検出されたときには、開閉モータ6によるバックドアの開閉が停止される。この場合、バックドアの開度は、開閉モータ6が停止した時点の開度に保持される。また、変形例2において、イルミECU9は、例えばテールランプの点消灯の制御や照明装置8の制御を行うものとする。
【0106】
変形例2においても、ドア開閉ECU1では、ジェスチャ検出範囲を、レーザレーダ2の検知エリアの一部に限定している。具体的には、運転席ドア側のレーザレーダ2については、一例としてジェスチャ検出範囲を、走査範囲のうちの、運転席ドアの先端の位置よりも後方であって、且つ、より車両後部寄りの一部の領域に限定するものとする。一方、バックドア側のレーザレーダ2については、一例としてジェスチャ検出範囲を、走査範囲のうちの、車両の車幅方向における中心寄りの一部の領域に限定するものとする。
【0107】
照明装置8は、これらの各ジェスチャ検出範囲をユーザが認識しやすいように、これらのジェスチャ検出範囲と略同一の範囲を可視光線で照らすように、運転席ドア側のレーザレーダ2とバックドア側のレーザレーダ2とが設けられているのと同様の位置にそれぞれ設けられている。なお、以降では、運転席ドア側のレーザレーダ2のジェスチャ検出範囲を運転席側ジェスチャ検出範囲、バックドア側のレーザレーダ2のジェスチャ検出範囲をバックドア側ジェスチャ検出範囲と呼ぶ。
【0108】
変形例2において、ドア開閉ECU1では、バックドア側ジェスチャ検出範囲内で、若しくはバックドア側ジェスチャ検出範囲を横切って、車両の下方向から上方向に向けて手足を動かすジェスチャを、バックドアの開扉を指示するジェスチャ(以下、バックドア開扉ジェスチャ)として検出する。また、運転席側ジェスチャ検出範囲内で、若しくは運転席側ジェスチャ検出範囲を横切って、車両の上方向から下方向に向けて手足を動かすジェスチャを、バックドアの閉扉を指示するジェスチャ(以下、バックドア閉扉ジェスチャ)として検出する。他には、ジェスチャ検出範囲内で手足を一定時間止めるジェスチャを、バックドアの開扉を指示するジェスチャ(バックドア開閉停止ジェスチャ)として検出する。
【0109】
続いて、図9、図10(a)〜図10(d)、及び図11(a)〜図11(b)を用いて、車両ドア自動開閉システム100におけるバックドアの自動での開閉に関連する処理(以下、バックドア自動開閉関連処理)のフローについての説明を行う。図9は、車両ドア自動開閉システム100におけるバックドア自動開閉関連処理のフローの一例を示すフローチャートである。図10(a)〜図10(d)、及び図11(a)〜図11(b)は、バックドア自動開閉関連処理が行われているときの各シチュエーションを説明するための模式図である。本フローは、例えば車両ドア自動開閉システム100に含まれるスマートECU5及びドア開閉ECU1の電源がオンになったときに開始される。
【0110】
まず、ステップS51では、ステップS1と同様にして、車両が停車している状態であるか否かをドア開閉ECU1が判定する。そして、車両が停車している状態であると判定した場合(ステップS51でYES)には、ステップS52に移る。また、車両が停車している状態でないと判定した場合(ステップS51でNO)には、ステップS51のフローを繰り返す。
【0111】
ステップS52では、ステップS2と同様にしてドア開閉ECU1がスマートECU5に指示を行い、一定時間おきに車両側の発振機からリクエスト信号を送信させるポーリングを開始させ、ステップS53に移る。ステップS53では、スマートECU5でコード照合が成立したことを示す情報をドア開閉ECU1が得た場合(ステップS53でYES)には、照合ありとして運転席ドア側とバックドア側とのレーザレーダ2の電源をオンにしてステップS54に移る。また、スマートECU5でコード照合が成立したことを示す情報をドア開閉ECU1が得ていない場合(ステップS53でNO)には、照合なしとしてステップS53のフローを繰り返す。
【0112】
つまり、スマートエントリーシステムの近距離無線通信に基づくコード照合を利用することによって、バックドアへのユーザの接近の検出を可能にしている(図10(a)参照)。
【0113】
ステップS54では、運転席側ジェスチャ検出範囲やバックドア側ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かをドア開閉ECU1が判定する。運転席側ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かは、例えば開度センサ4の信号が運転席ドアの完全に閉じた状態(完全閉状態)を示しているか否かに応じて判定する。一方、バックドア側ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かは、例えば開度センサ4の信号がバックドアの完全に閉じた状態(完全閉状態)を示しているか否かに応じて判定する。
【0114】
運転席側ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かを、運転席ドアの開閉状態に応じて判定する理由は変形例1において説明した通りである。また、バックドア側ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かを、バックドアの開閉状態に応じて判定する理由は、以下の通りである。バックドアが例えば全開のように大きく開扉されている場合には、そのスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査するバックドア側のレーザレーダ2の探査波は、ユーザの目線よりも高い位置からほぼ水平方向に送信されたりすることになるので、バックドア側ジェスチャ検出範囲も例えば目線の高さよりも高い上方に位置することになり、バックドア側ジェスチャ検出範囲内でユーザがジェスチャをすることが困難になる場合があるためである。
【0115】
ステップS54では、運転席ドア若しくはバックドアのいずれかが完全閉状態を示している、つまり、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあると判定した場合(ステップS54でYES)には、ステップS55に移る。また、運転席ドア及びバックドアのいずれも完全閉状態を示していない、つまり、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にないと判定した場合(ステップS54でNO)には、フローを終了する。
【0116】
なお、ドアカーテシスイッチの信号が運転席ドアの完全に閉じた状態(完全閉状態)を示しているか否かに応じて、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かをドア開閉ECU1が判定する構成としてもよい。
【0117】
また、本実施形態では、完全閉状態を示している場合に、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあると判定する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、運転席ドアの開度やバックドアの開度が所定値以下であった場合に、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあると判定する構成としてもよい。ここで言うところの所定値とは、任意に設定可能な値である。
【0118】
ステップS55では、ドア開閉ECU1がイルミECU9に指示を行い、照明装置8の電源をオンにさせて、運転席側ジェスチャ検出範囲やバックドア側ジェスチャ検出範囲と略同一の範囲を可視光線で照らさせ、ステップS56に移る。具体的には、ステップS54で運転席ドア及びバックドアのいずれも完全閉状態を示していた場合には、運転席側ジェスチャ検出範囲とバックドア側ジェスチャ検出範囲との両方について、略同一の範囲を可視光線で照らさせる。一方、ステップS54で運転席ドアとバックドアとのいずれか一方のみが完全閉状態を示していた場合には、完全閉状態を示していた側のジェスチャ検出範囲のみについて、略同一の範囲を可視光線で照らさせる。
【0119】
ステップS56では、ドア開閉ECU1がイルミECU9に指示を行い、運転席後方スライドドアのドアハンドルイルミやテールランプや照明装置8を点灯させ、ステップS57に移る。具体的には、ステップS54で運転席ドア及びバックドアのいずれも完全閉状態を示していた場合には、運転席後方スライドドアのドアハンドルイルミやテールランプや照明装置8の全てを点灯させる。一方、ステップS54で運転席ドアとバックドアとのいずれか一方のみが完全閉状態を示していた場合には、完全閉状態を示していた側の照明装置8やインジケータランプのみを点灯させる。
【0120】
これにより、ユーザがジェスチャを検出可能な範囲及びタイミングを容易に認識して、手や足等によるジェスチャをジェスチャ検出範囲内で行うことが可能になる。
【0121】
本実施形態では、ステップS55の処理の次にステップS56の処理を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、ステップS56の処理の次にステップS55の処理を行う構成としてもよいし、ステップS55の処理とステップS56の処理とを並行して行う構成としてもよい。
【0122】
なお、ステップS54において、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にないと判定した場合には、運転席側ジェスチャ検出範囲とバックドア側ジェスチャ検出範囲とのいずれについても、略同一の範囲を可視光線によって照らすことは行われない。また、運転席後方スライドドアのドアハンドルイルミの点灯もテールランプの点灯も行われない。これにより、ユーザに運転席側ジェスチャ検出範囲とバックドア側ジェスチャ検出範囲とのいずれでもジェスチャを検出可能な状態にないことを容易に認識させることができる。
【0123】
ステップS57では、ユーザが手や足で行ったバックドア開扉ジェスチャの検出(図10(b)参照)がドア開閉ECU1で行われた場合(ステップS57でYES)には、ステップS58に移る。バックドア開扉ジェスチャの検出は、バックドア側のレーザレーダ2の検出結果をもとに行われる。また、スライドドア開扉ジェスチャの検出がドア開閉ECU1で行われていない場合(ステップS57でNO)には、ステップS62に移る。
【0124】
ステップS58では、ドア開閉ECU1が、モータドライバ14から開閉モータ6及びラッチ解除モータ7に駆動信号を出力して、バックドアの開扉を開始させ(図10(c)参照)、ステップS59に移る。
【0125】
ステップS59では、バックドアの開度が、バックドアを自動開扉する際の設定開度になったか否かを、開度センサ4の検出信号に基づいてドア開閉ECU1が判定する。そして、バックドアの開度が設定開度になったと判定した場合(ステップS59でYES)には、ステップS65に移る。一方、バックドアの開度がまだ設定開度に達していないと判定した場合(ステップS59でNO)には、ステップS60に移る。
【0126】
ステップS60では、バックドア側のレーザレーダ2での障害物の検出結果に基づき、バックドアに接触する可能性がある障害物が存在するか否かを判定する。そして、バックドアに接触する可能性がある障害物が存在すると判定した場合(ステップS60でYES)には、ステップS61に移る。また、バックドアに接触する可能性がある障害物が存在しないと判定した場合(ステップS60でNO)には、ステップS59に戻ってフローを繰り返す。このように、ステップS59からステップS60までの処理を繰り返し実行することにより、バックドアが開扉される間中、バックドアに対する障害物の検出が継続して実行される。
【0127】
ステップS61では、障害物を検出した後も、開閉モータ6の駆動を継続し、開閉モータ6によって、障害物を検出した時点のバックドアの開度から、障害物に接触しない程度の角度だけバックドアを開扉(図10(d)参照)させた時点で、ステップS65に移る。障害物に接触しない程度の角度については、ドア開閉ECU1で算出した障害物までの距離をもとに求める構成とすればよい。
【0128】
また、ステップS62では、ユーザが手や足で行ったバックドア閉扉ジェスチャの検出(図11(a)参照)がドア開閉ECU1で行われた場合(ステップS62でYES)には、ステップS63に移る。バックドア閉扉ジェスチャの検出は、運転席ドア側のレーザレーダ2の検出結果をもとに行われる。また、バックドア閉扉ジェスチャの検出がドア開閉ECU1で行われていない場合(ステップS62でNO)には、ステップS57に戻ってフローを繰り返す。
【0129】
ステップS63では、ドア開閉ECU1が、モータドライバ14から開閉モータ6に駆動信号を出力して、バックドアの閉扉を開始させ(図11(b)参照)、ステップS64に移る。
【0130】
ステップS64では、バックドアの開度が0(つまり、完全閉状態)になったか否かを、開度センサ4の検出信号に基づいてドア開閉ECU1が判定する。そして、バックドアの開度が0になったと判定した場合(ステップS64でYES)には、ステップS65に移る。一方、バックドアの開度がまだ0に達していないと判定した場合(ステップS64でNO)には、ステップS64のフローを繰り返す。
【0131】
ステップS65では、開閉モータ6の駆動を停止することにより、バックドアの開閉を停止させ、フローを終了する。なお、本実施形態では、例えば、ドア開閉ECU1でバックドア開閉停止ジェスチャの検出が行われた時点で、バックドアの開閉動作を停止させる構成としてもよい。
【0132】
本実施形態の構成によれば、バックドア近傍の発振機及びチューナを介した近距離無線通信に基づくコード照合が成立した場合に、ジェスチャ検出を可能にするので、ユーザがバックドアの付近にいる場合にのみ、ジェスチャによるバックドアの自動での開閉を可能にすることができる。
【0133】
また、前述の各実施形態と変形例2とを併用する構成としてもよい。この場合、共通する部材については共通化して用いる一方、共通化できないものについてはそれぞれ設ける構成とすればよい。
【0134】
前述のいずれの実施形態によっても、ユーザの所定のジェスチャを検出した検出結果をもとに、車両ドアの自動での開閉動作を開始させるので、ユーザは歩行に比べて小さな動作をするだけでも車両ドアの自動での開閉動作を行わせることが可能になる。また、両手が荷物で塞がっている場合であっても、他の体の一部(例えば足)を動かすことで車両ドアの自動での開閉動作を行わせることが可能になる。他にも、雨降り時に濡れた車両ボディに触れて車両ドアの開閉動作を行わせる必要もない。従って、ユーザにとっての快適性を向上させることが可能になる。
【0135】
さらに、スイングドアの開閉軌跡上に存在する障害物を検出するために用いるレーザレーダ2を利用して、ユーザの所定のジェスチャを検出するので、ユーザのジェスチャを検出するためのカメラ等を別途新たに車両に設ける必要がなく、その分のコストの増加を抑えることができる。その結果、コストの増加を抑えながらも、ユーザにとっての快適性を向上させることが可能になる。
【0136】
また、前述の実施形態では、ジェスチャ検出範囲を、レーザレーダ2の走査範囲の一部に限定するので、ジェスチャ検出範囲をより狭く限定することで、意図しない場所でジェスチャの検出が行われることを防止し、車両ドアの誤動作を防止することが可能になる。さらに、前述の実施形態では、ジェスチャ検出範囲を、照明装置8から照射する可視光線で照らすことでユーザに提示するので、ジェスチャ検出範囲をより狭く限定した場合であっても、より確実にユーザがそのジェスチャ検出範囲内でジェスチャをすることが可能になる。従って、ジェスチャ検出範囲をより狭く限定した場合であっても、ジェスチャの検出率を向上させることができる。
【0137】
他にも、前述の実施形態では、スマートエントリーシステムにおけるコード照合が成立した後にジェスチャを検出可能とするなど、ジェスチャを検出可能な時間的範囲を限定している。よって、ジェスチャを検出可能な時間的範囲をより狭く限定することで、意図しないときにジェスチャの検出が行われることを防止し、車両ドアの誤動作を防止することが可能になる。さらに、前述の実施形態では、ジェスチャを検出可能な時間範囲に限って、ドアハンドルイルミやテールランプ等のインジケータランプや照明装置8を点灯させるので、ジェスチャを検出可能な時間的範囲をより狭く限定した場合であっても、より確実にユーザがその時間的範囲内でジェスチャをすることが可能になる。従って、時間的範囲をより狭く限定した場合であっても、所定のジェスチャの検出率を向上させることができる。
【0138】
なお、前述の各実施形態では、ジェスチャ検出範囲を照明装置8から照射する可視光線で照らす構成や、ジェスチャの検出が可能なタイミングをドアハンドルイルミやテールランプ等のインジケータランプを点灯させることで知らせる構成や、スマートエントリーシステムにおけるコード照合が行われた場合にジェスチャ検出範囲でのジェスチャを検出可能とする構成を示したが、これらの構成を備えない態様としてもよい。
【0139】
また、前述の各実施形態において、ジェスチャの一例を挙げて説明を行ったが、必ずしもこれに限らず、説明した以外のユーザの体の一部の所定の動きによるジェスチャを用いる構成としてもよい。
【0140】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0141】
1 ドア開閉ECU(ジェスチャ検出手段、照射有無判定手段、点灯有無判定手段、開閉動作開始手段、車両ドア自動開閉装置)、2 レーザレーダ(障害物センサ、車両ドア自動開閉装置)、3 車速センサ、4 開度センサ、5 スマートECU(車両側ユニット)、6 開閉モータ、7 ラッチ解除モータ、8 照明装置(照明手段、提示灯、車両ドア自動開閉装置)、9 イルミECU、21 発光部、11 入力I/F、12 CPU、13 不揮発性メモリ、14 モータドライバ、22 受光部、23 時間計測部、100 車両ドア自動開閉システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ドアを自動で開閉させる車両ドア自動開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両ドアを開扉する際に、障害物との接触を未然に防止するようにする技術が知られている。例えば特許文献1や特許文献2には、車両ドアに超音波等を用いた障害物センサを設け、当該障害物センサによって障害物を検出することで、物理的な開閉スイッチを操作して車両ドアを開扉する際に、この障害物との接触を未然に防止するようにする技術が開示されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示の技術では、障害物に接触しないように自動で車両ドアの開度を調整することが可能であるものの、車両ドアを開閉するためには物理的なスイッチを操作する必要があった。そのため、ユーザの両手が荷物で塞がっている場合には一度荷物を地面において物理的なスイッチを操作する必要があった。また、スイッチが車体に設けられている場合には、雨降り時に濡れた車両ボディに触れて操作しなければならないなどの不都合があり、ユーザにとっての快適性を損なっていた。
【0004】
そこで、この問題を解決する手段として、例えば、特許文献3には、駐車されている車両に対する人物の位置を超音波センサとカメラの画像情報とから取得し、人物が起点位置に存在することを判別した後、動線に沿って終点位置に達したことを判別した場合に、ドアの開放を行う技術が開示されている。また、特許文献4には、ユーザの身振り手振りや音声といった身体表現をカメラや音声検出装置で検出し、検出した身振り手振りや音声に基づいて、車両ドアの開放などを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−336934号公報
【特許文献2】特開2006−256362号公報
【特許文献3】特開2009−208741号公報
【特許文献4】特開2008−2095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に開示の技術では、車両ドアを自動で開放するためには、動線に沿ったユーザの位置の移動を検出する必要があるので、ユーザはドアの開放のためだけに歩行を行う必要があり、ユーザにとっての快適性を損なってしまうという問題点があった。
【0007】
また、特許文献4に開示の技術では、ユーザの身振り手振りや音声といった身体表現を検出するためのカメラや音声検出装置を車両に追加搭載する必要があるので、コストが増加するという問題点があった。
【0008】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、コストの増加を抑えながらも、ユーザにとっての快適性を向上させることを可能にする車両ドア自動開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の構成においては、探査波を送受信する障害物センサで受信した反射波をもとに、スイングドアの開閉軌跡上に存在する障害物を検出する車両ドア自動開閉装置において、障害物センサで障害物の検出を逐次行うことによって、探査波の走査範囲内でのユーザの体の一部の所定の動き(以下、所定のジェスチャ)を検出するジェスチャ検出手段と、ジェスチャ検出手段での検出結果をもとに、車両のドアの自動での開閉動作を開始させる開閉動作開始手段をさらに備えることになる。
【0010】
これによれば、ジェスチャ検出手段で障害物センサの走査範囲内でのユーザの所定のジェスチャを検出した検出結果をもとに、車両のドア(以下、車両ドア)の自動での開閉動作を開始させるので、ユーザは歩行に比べて小さな動作をするだけでも車両ドアの自動での開閉動作を行わせることが可能になる。また、両手が荷物で塞がっている場合であっても、他の体の一部(例えば足)を動かすことで車両ドアの自動での開閉動作を行わせることが可能になる。他にも、障害物センサの走査範囲内でのユーザの所定のジェスチャを検出して車両ドアの開閉動作を行わせるので、雨降り時に濡れた車両ボディに触れて車両ドアの開閉動作を行わせる必要もない。従って、請求項1の構成によれば、ユーザにとっての快適性を向上させることが可能になる。
【0011】
さらに、請求項1の構成によれば、スイングドアの開閉軌跡上に存在する障害物を検出するために用いる障害物センサを利用して、ユーザの所定のジェスチャを検出するので、ユーザの所定のジェスチャを検出するためのカメラ等を別途新たに車両に設ける必要がなく、その分のコストの増加を抑えることができる。その結果、コストの増加を抑えながらも、ユーザにとっての快適性を向上させることが可能になる。
【0012】
所定のジェスチャを検出可能な物理的範囲が広すぎると、ユーザが意図しない場所でたまたま所定のジェスチャと同じ動きをしてしまった場合にもジェスチャ検出手段での検出が行われて、車両ドアの開閉動作を開始してしまう誤動作が生じる場合がある。これに対して、請求項2の構成によれば、ジェスチャ検出手段は、所定のジェスチャを検出可能な物理的範囲を、障害物センサの走査範囲の一部に限定する。よって、所定のジェスチャを検出可能な物理的範囲をより狭く限定することで、意図しない場所でジェスチャ検出手段での検出が行われることを防止し、車両ドアの誤動作を防止することが可能になる。
【0013】
請求項2のように、所定のジェスチャを検出可能な物理的範囲をより狭く限定する場合には、請求項3のように、物理的範囲を、照明手段から照射する可視光線で照らすことでユーザに提示することが好ましい。これによれば、所定のジェスチャを検出可能な物理的範囲をユーザが認識しやすくなるので、物理的範囲をより狭く限定した場合であっても、より確実にユーザがその物理的範囲内で所定のジェスチャをすることが可能になる。従って、物理的範囲をより狭く限定した場合であっても、所定のジェスチャの検出率を向上させることができる。
【0014】
また、請求項3のようにする場合に、請求項4のようにする態様としてもよい。請求項4の構成においては、スイングドアの開閉状態に応じて物理的範囲を照明手段から照射する可視光線で照らすか否かを照射有無判定手段で判定する。そして、物理的範囲を照明手段から照射する可視光線で照らさないと照射有無判定手段で判定した場合には、物理的範囲を照明手段から照射する可視光線で照らさないことになる。これによれば、スイングドアの開閉状態に応じて、物理的範囲を可視光線で照らさないようにすることが可能になる。
【0015】
例えば、車両の後部のスイングドアが大きく開扉されている場合には、そのスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波はユーザの目線よりも高い位置からほぼ水平方向に送信されたりすることになるので、物理的範囲も上方に位置することになり、その物理的範囲内でユーザが所定のジェスチャをすることが困難になる場合がある。また、車両の側面のスイングドアが開扉している場合には、そのスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波は、車両の側方のドアから乗車や降車しようとするユーザの位置とはそのスイングドアを挟んで反対側にのみ送信される可能性が高くなるので、物理的範囲もユーザの位置とはそのスイングドアを挟んで反対側に位置する可能性が高くなり、その物理的範囲内でユーザが所定のジェスチャをすることは困難と考えられる。請求項4の構成によれば、このように、所定のジェスチャを物理的範囲内で行うことが困難な状態の場合に物理的範囲を可視光線で照らさないようにすることが可能になる。
【0016】
所定のジェスチャを検出可能な時間的範囲が広すぎると、ユーザが意図しないときにたまたま所定のジェスチャと同じ動きをしてしまった場合にもジェスチャ検出手段での検出が行われて、車両ドアの開閉動作を開始してしまう誤動作が生じる場合がある。これに対して、請求項5の構成によれば、ジェスチャ検出手段は、所定のジェスチャを検出可能な時間的範囲を限定する。よって、所定のジェスチャを検出可能な時間的範囲をより狭く限定することで、意図しないときにジェスチャ検出手段での検出が行われることを防止し、車両ドアの誤動作を防止することが可能になる。
【0017】
請求項5のように、所定のジェスチャを検出可能な時間的範囲をより狭く限定する場合には、請求項6のように、時間的範囲を、照明手段及びインジケータランプのうちの少なくともいずれかである提示灯を点灯させることでユーザに提示することが好ましい。これによれば、所定のジェスチャを検出可能な時間的範囲をユーザが認識しやすくなるので、時間的範囲をより狭く限定した場合であっても、より確実にユーザがその時間的範囲内で所定のジェスチャをすることが可能になる。従って、時間的範囲をより狭く限定した場合であっても、所定のジェスチャの検出率を向上させることができる。
【0018】
また、請求項6のようにする場合に、請求項7のようにする態様としてもよい。請求項7の構成においては、スイングドアの開閉状態に応じて時間的範囲において提示灯を点灯させるか否かを点灯有無判定手段で判定する。そして、時間的範囲において提示灯を点灯させないと点灯有無判定手段で判定した場合には、時間的範囲において提示灯を点灯させないことになる。これによれば、スイングドアの開閉状態に応じて、時間的範囲において提示灯を点灯させないようにすることが可能になる。
【0019】
例えば、車車両の後部のスイングドアが大きく開扉されている場合には、そのスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波はユーザの目線よりも高い位置からほぼ水平方向に送信されたりすることになるので、物理的範囲も上方に位置することになり、その物理的範囲内でユーザが所定のジェスチャをすることが困難になる場合がある。また、車両の側面のスイングドアが開扉している場合には、そのスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波は、車両の側方のドアから乗車や降車しようとするユーザの位置とはそのスイングドアを挟んで反対側にのみ送信される可能性が高くなるので、所定のジェスチャを検出する範囲もユーザの位置とはそのスイングドアを挟んで反対側に位置する可能性が高くなり、当該範囲内でユーザが所定のジェスチャをすることは困難と考えられる。請求項7の構成によれば、このように、所定のジェスチャを検出する範囲で所定のジェスチャを行うことが困難な状態にあるときは、所定のジェスチャを検出可能な時間的範囲であっても、その時間的範囲において提示灯を点灯させないようにすることが可能になる。
【0020】
請求項8の構成によれば、携帯機との近距離無線通信に基づいて、車両に搭載された車両側ユニットでコード照合が成立した場合に限り、ジェスチャ検出手段での所定のジェスチャの検出を可能とすることになる。これによれば、所定のジェスチャを検出可能な範囲を、携帯機が車両側ユニット(つまり、車両)と近距離無線通信を行うことができる範囲内に少なくとも限定することができる。よって、所定のジェスチャを検出可能な物理的範囲をより狭く限定することで、意図しない場所でジェスチャ検出手段での検出が行われることを防止し、車両ドアの誤動作を防止することが可能になる。
【0021】
また、請求項8の構成によれば、コード照合が成立した場合に限り、所定のジェスチャの検出を可能とすることになるので、車両の乗員が近くにいる場合にのみ所定のジェスチャによる車両ドアの自動での開閉を可能にすることができる。
【0022】
請求項9のように、スイングドアが車両の側面に設けられたスイングドアであって、開閉動作開始手段は、ジェスチャ検出手段での検出結果をもとに、当該スイングドアを自動で開扉する動作を開始させる態様としてもよい。これによれば、車両の側面に設けられたスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波の走査範囲において、ユーザが所定のジェスチャをすれば、当該スイングドアを自動で開扉させることが可能になる。車両の側面に設けられたスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波の走査範囲は、当該スイングドアの閉扉時には当該スイングドアの側方から後方にかけての領域となる筈である。よって、請求項9の構成によれば、開扉したい車両の側面のスイングドアの近くで所定のジェスチャをすれば当該スイングドアを自動で開扉させることが可能になる。
【0023】
また、請求項10のように、スイングドアは車両の側面に設けられたスイングドアであって、開閉動作開始手段は、ジェスチャ検出手段での検出結果をもとに、当該スイングドアの後方に設けられた当該車両のスライドドアの自動での開閉動作を開始させる態様としてもよい。これによれば、車両の側面に設けられたスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波の走査範囲において、ユーザが所定のジェスチャをすれば、当該スイングドアの後方に設けられたスライドドアを自動で開閉させることが可能になる。車両の側面に設けられたスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波の走査範囲は、当該スイングドアの側方から後方にかけての領域、つまり、当該スイングドアの後方のスライドドアの近辺となる筈である。よって、請求項10の構成によれば、開扉したいスライドドアの近くで所定のジェスチャをすれば当該スライドドアを自動で開扉させることが可能になる。
【0024】
さらに、請求項11のように、スイングドアは車両の後部に設けられたスイングドアであって、開閉動作開始手段は、ジェスチャ検出手段での検出結果をもとに、当該スイングドアを自動で開扉する動作を開始させる態様としてもよい。これによれば、車両の後部に設けられたスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波の走査範囲において、ユーザが所定のジェスチャをすれば、当該スイングドアを自動で開扉することが可能になる。車両の後部に設けられたスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波の走査範囲は、当該スイングドアの閉扉時には当該スイングドアの後方の領域となる筈である。よって、請求項11の構成によれば、開扉したい車両の後部のスイングドアの近くで所定のジェスチャをすれば当該スイングドアを自動で開扉させることが可能になる。
【0025】
また、請求項12のように、スイングドアは車両の側面に設けられたスイングドアであって、開閉動作開始手段は、ジェスチャ検出手段での検出結果をもとに、車両の後部に設けられたスイングドアを自動で閉扉する動作を開始させる態様としてもよい。これによれば、車両の側面に設けられたスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波の走査範囲において、ユーザが所定のジェスチャをすれば、車両の後部のスイングドアを自動で閉扉させることが可能になる。車両の側面に設けられたスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査する探査波の走査範囲は、当該スイングドアの側方から後方にかけての領域、つまり、車両の後部のスイングドアにより近い領域となる筈である。よって、請求項12の構成によれば、開扉したい車両の後部のスライドドアにより近い領域で所定のジェスチャをすれば当該スライドドアを自動で閉扉させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】車両ドア自動開閉システム100の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】レーザレーダ2の概略的な構成を示す図である。
【図3】ドア開閉ECU1における運転席ドア自動開閉関連処理のフローの一例を示すフローチャートである。
【図4】運転席ドア自動開閉関連処理が行われているときの各シチュエーションを説明するための模式図である。
【図5】車両ドア自動開閉システム100における運転席後方スライドドア自動開閉関連処理のフローの一例を示すフローチャートである。
【図6】(a)〜(d)は、運転席後方スライドドア自動開閉関連処理が行われているときの各シチュエーションを説明するための模式図である。
【図7】ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かを、運転席ドアの開閉状態に応じて判定する理由を説明するための模式図である。
【図8】2種類のジェスチャ検出範囲を照射可能な構成を説明するための模式図である。
【図9】車両ドア自動開閉システム100におけるバックドア自動開閉関連処理のフローの一例を示すフローチャートである。
【図10】(a)〜(d)は、バックドア自動開閉関連処理が行われているときの各シチュエーションを説明するための模式図である。
【図11】(a)及び(b)は、バックドア自動開閉関連処理が行われているときの各シチュエーションを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明が適用された車両ドア自動開閉システム100の概略的な構成を示すブロック図である。図1に示す車両ドア自動開閉システム100は、車両に搭載されるものであり、ドア開閉ECU1、レーザレーダ2、車速センサ3、開度センサ4、スマートECU5、照明装置8、イルミECU9、及び車両ドアを開扉したり、閉扉したりするための開閉モータ6とラッチ解除モータ7とから構成される。つまり、本実施形態では、車両ドアは、開閉モータ6とラッチ解除モータ7との2種類のモータを用いて開閉される。なお、ドア開閉ECU1、レーザレーダ2、及び照明装置8からなる構成が請求項の車両ドア自動開閉装置に相当する。
【0028】
図1には、1枚の車両ドアを自動開閉するための構成が示されているが、本実施形態による車両ドア自動開閉システム100は、例えば運転席の車両ドアのように、車両のいずれかの車両ドアに対してのみ適用したり、運転席及び助手席の車両ドアに対して適用したり、あるいは、車両の全車両ドアに対して適用したりすることが可能である。ここでは、便宜上、車両ドアとして運転席のスイングドアの自動での開閉に車両ドア自動開閉システム100を適用した場合を例に挙げて以降の説明を行う。
【0029】
レーザレーダ2は、例えば、運転席のスイングドア(以下、運転席ドア)を車両の車体側面に対して回転可能に支持する回転軸近傍の、運転席ドアに取り付けられたドアミラーの下部に設けられる。レーザレーダ2は、例えば図2に示されるように、発光部21、受光部22、及び制御部23を備えている。図2は、レーザレーダ2の概略的な構成を示す図である。発光部21及び受光部22は、運転席ドアの開閉軌跡上に存在する障害物を検出できるように、運転席ドアの外表面の近傍に向けて設けられる。
【0030】
発光部21は、レーザダイオードを備えており、制御部23からの駆動信号に従って、車幅方向及び車高方向それぞれの所定角度の範囲でパルス状のレーザ光を掃引照射(スキャン)する。これら車幅方向及び車高方向それぞれにレーザ光が照射される角度範囲(つまり、走査範囲)によって、レーザレーダ2の検知エリアが規定される。また、発光部21は、検知エリアの全体に対するスキャンを逐次行うものとする。
【0031】
発光部21は、運転席ドアの外表面の近傍を少なくとも走査するようにレーザ光を逐次照射するものとする。例えば、運転席ドアの外表面に対し、運転席ドアが開扉される方向に所定角度ずれた範囲までの領域を走査するようにレーザ光を照射する構成とすればよい。他にも、運転席ドアの外表面に対し、運転席ドアが開扉される方向に所定角度ずれた平面から一定角度までずれた範囲までの領域を走査するようにレーザ光を照射する構成としてもよい。これによれば、運転席ドアを開扉する際に、運転席ドアの可動範囲全体に渡って、運転席ドアと接触する可能性がある障害物を検出することが可能となる。なお、ここで言うところの所定角度及び一定角度については、任意に設定可能であるものとする。
【0032】
受光部22は、発光部21から照射されたレーザ光が障害物で反射された反射光(反射波)を受光レンズで受光し、受光素子(フォトダイオード)に与える。受光素子は、反射光の強度に対応する電圧を出力する。この受光素子の出力電圧は、増幅器にて増幅された後にコンパレータに出力される。コンパレータは増幅器の出力電圧を基準電圧と比較し、出力電圧が基準電圧よりも大きくなったとき、障害物を検出したものとして所定の受光信号を制御部23へ出力する。
【0033】
制御部23は、通常のコンピュータとして構成されており、内部には周知のCPU、ROMやRAMやEEPROMなどのメモリ、I/O、及びこれらの構成を接続するバスライン(いずれも図示せず)などが備えられている。制御部23は受光部22、角度検出部24から入力された各種情報に基づき、各種の処理を実行する。
【0034】
制御部23は、例えばROMに記憶されているプログラムに従って、発光部11がレーザ光を照射する際に検知エリア内を定められたパターンで順番にレーザ光がスキャンするように、発光部11に駆動信号を出力する。このように、レーザ光がスキャンするパターンが定められているので、反射光を受光した場合には、その反射光が得られたレーザ光の照射角度が一義的に定まるようになっている。制御部23は、このことを利用して、受光部22で反射光を受光した場合(詳しくは受光信号が受光部22から入力された場合)に、その反射光が得られたレーザ光の照射角度を求める。
【0035】
また、制御部23は、駆動信号を出力してから受光信号が発生するまでの時間、すなわちレーザ光を出射した時刻と反射光を受光した時刻との時間差を計測する。そして、計測した時間差に基づいて障害物までの距離を算出する。そして、算出した障害物までの距離とこの障害物までの距離を算出するのに用いた反射光が得られたレーザ光の照射角度とを
ドア開閉ECU1に入力する。
【0036】
なお、レーザレーダ2は、運転席ドアを車両の車体側面に対して回転可能に支持する回転軸近傍の、運転席ドア自体に設けられる構成としてもよいが、本実施形態では、ドアミラーの下部に設けられるものとして以降の説明を続ける。
【0037】
また、本実施形態では、車両ドアの開閉軌跡上に存在する障害物を検出するための障害物センサとして、レーザレーダ2を用いる構成を示すが、必ずしもこれに限らない。探査波を走査することで障害物の動きを検出することができる障害物センサであれば、他の障害物センサを用いる構成としてもよい。例えば、超音波センサやミリ波レーダや赤外線センサ等を用いる構成としてもよい。
【0038】
車速センサ3は、車両の走行速度に応じた速度信号を発生する。開度センサ4は、運転席ドアが開扉されたときの運転席ドアの開度を検出して、検出信号を発生する。これら車速センサ3及び開度センサ4からの信号もドア開閉ECU1に入力される。
【0039】
スマートECU5は、各種機器を制御するCPU、予め各種の数値やプログラムが書き込まれたROM、演算過程の数値やフラグが所定の領域に書き込まれるRAM等よりなるマイコンを主体として構成される。そして、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、コード照合、後述するリクエスト信号の送信制御、車両ドアのロック・アンロックの制御などのスマートエントリーシステムに関連する各種の処理を実行する。
【0040】
ここで、周知のスマートエントリーシステムについての説明を行う。周知のスマートエントリーシステムでは、ユーザが携帯式電子キーなどの携帯機を所持して運転席ドアに接近すると、車両側の発信機から近距離無線通信によって常に一定時間おきに送信されているリクエスト信号(例えばLF帯の電波)をこの携帯機が受信し、予めメモリに記憶された自己のIDコードを含むレスポンス信号(例えばVHF帯・UHF帯の電波)を送信する。一方、車両側のチューナでこのレスポンス信号を受信すると、車両側のスマートECU5でレスポンス信号に含まれていたIDコードと車両固有のIDコードとの照合を行い、両者が一致したことを条件にドアの開錠を行わせるようになっている。また、この携帯機を所持しているユーザが車両から離間すると、車両は、この携帯機から送信されるレスポンス信号を受信不能となる。そして、車両は、このレスポンス信号を受信不能になったことをトリガとしてドアの施錠を行わせる。よって、スマートECU5が請求項の車両側ユニットに相当する。なお、本実施形態では、車両側の発振機及びチューナは運転席ドアの近傍に設けられており、通信範囲は運転席ドアの周辺に限定されているものとする。
【0041】
ラッチ解除モータ7は、運転席ドアの内部に設置され、運転席ドアを閉位置に保持する図示しないラッチ機構に作用して、当該ラッチ機構を解除するものである。これにより、運転席ドアは開扉が可能な状態となる。
【0042】
開閉モータ6も、運転席ドアの内部に設置され、図示しないドア開閉機構を駆動することによって、運転席ドアを設定開度(例えば最大開度)まで開扉させたり、閉扉させたりするものである。ただし、運転席ドアの開扉中に、後述する運転席開扉停止ジェスチャが検出されたり、運転席ドアと接触する可能性がある障害物が検出されたりしたときには、設定開度未満の開度であっても、開閉モータ6による運転席ドアの開扉が停止される。この場合、運転席ドアの開度は、開閉モータ6が停止した時点の開度に保持される。
【0043】
照明装置8は、レーザレーダ2の検知エリアの一部(詳しくは後述するジェスチャ検出範囲)に可視光線を照射するものであって、当該検知エリアの一部の物理的範囲を照射可能なように、例えばレーザレーダ2の設置位置の近傍に設置されるものとする。よって、照明装置8が請求項の照明手段に相当する。本実施形態では、例えば照明装置8は運転席ドアのドアミラーの下部に設けられるものとして以降の説明を続ける。
【0044】
イルミECU9は、種機器を制御するCPU、予め各種の数値やプログラムが書き込まれたROM、演算過程の数値やフラグが所定の領域に書き込まれるRAM等よりなるマイコンを主体として構成される。そして、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで、車両に設けられている照明装置8やインジケータランプの点消灯の制御等の各種の処理を実行する。本実施形態の例では、イルミECU9は、運転席ドアのドアハンドルイルミの点消灯の制御を行うものとして以降の説明を続ける。
【0045】
ドア開閉ECU1は、レーザレーダ2、車速センサ3、開度センサ4、スマートECU5からの信号を受ける入力インターフェース(I/F)11、予め定められたプログラムに従って各種の演算処理を行うCPU12、プログラムを記憶する不揮発性メモリ13、及び開閉モータ6やラッチ解除モータ7を駆動する駆動信号を出力するモータドライバ14などから構成されている。
【0046】
例えば、ドア開閉ECU1は、レーザレーダ2の制御部23から取得した障害物までの距離をもとに、運転席ドアと接触する可能性がある障害物であるか否かを判定する。詳しくは、レーザレーダ2の設置位置から、運転席ドアを設定開度まで全開した場合の運転席ドアの端部までの距離よりも、算出した障害物までの距離が短かった場合に、運転席ドアと接触する可能性がある障害物であると判定する。これにより、運転席ドアが障害物に接触しない範囲で、運転席ドアを極力大きく開く制御を可能にしている。
【0047】
また、ドア開閉ECU1は、レーザレーダ2の制御部23から取得した障害物までの距離と反射光が得られたレーザ光の照射角度とをもとにして、障害物(詳しくはレーザ光の反射点)の位置データを作成する。詳しくは、発光部21及び受光部22の中心を原点(0,0,0)とし、車幅方向をX軸、車両前後方向をY軸、高さ方向をZ軸とするセンサ座標系におけるX座標、Y座標、及びZ座標を求める。つまり、発光部21及び受光部22の中心(つまり、レーザレーダ2の設置位置に相当)に対する障害物の相対的な位置を求める。前述したように、レーザレーダ2では、発光部21が検知エリアの全体に対するスキャンを逐次行うので、時間経過に伴って障害物が動いた場合には、その動きに伴った相対的な位置が逐次求められることになる。これにより、ユーザの手や足の動きによるジェスチャを検出することを可能にしている。よって、ドア開閉ECU1が請求項のジェスチャ検出手段に相当する。なお、ユーザの手や足の動きに限らず、杖などの動きもジェスチャとして検出できるものとする。
【0048】
ここで、ドア開閉ECU1でのジェスチャの検出について説明を行う。まず、ドア開閉ECU1では、ジェスチャ検出を行う範囲(以下、ジェスチャ検出範囲)を、レーザレーダ2の検知エリア(つまり、走査範囲)のうちの一部に限定している。具体的には、限定したジェスチャ検出範囲以外の走査範囲については障害物の位置データを作成しないようにすればよい。本実施形態では、一例としてジェスチャ検出範囲を、レーザレーダ2の走査範囲のうちの、運転席ドアの先端の位置よりも後方であって、且つ、より運転席ドア寄りの一部の領域に限定するものとする。
【0049】
照明装置8は、このジェスチャ検出範囲をユーザが認識しやすいように、ジェスチャ検出範囲と略同一の範囲を可視光線で照らすように設けられている。
【0050】
ドア開閉ECU1では、ジェスチャ検出範囲内での所定のジェスチャを検出し、検出したジェスチャに応じた制御を実行する。一例としては、ジェスチャ検出範囲内で、若しくはジェスチャ検出範囲を横切って、車幅方向の車両から遠ざかる向きに手足を動かすジェスチャを、運転席ドアの開扉を指示するジェスチャ(以下、運転席開扉ジェスチャ)として検出する。他には、ジェスチャ検出範囲内で手足を一定時間止めるジェスチャを、運転席ドアの開扉を指示するジェスチャ(運転席開扉停止ジェスチャ)として検出する。
【0051】
続いて、図3及び図4(a)〜図4(c)を用いて、車両ドア自動開閉システム100における運転席ドアの自動での開閉に関連する処理(以下、運転席ドア自動開閉関連処理)のフローについての説明を行う。図3は、車両ドア自動開閉システム100における運転席ドア自動開閉関連処理のフローの一例を示すフローチャートである。図4(a)〜図4(c)は、運転席ドア自動開閉関連処理が行われているときの各シチュエーションを説明するための模式図である。本フローは、例えば車両ドア自動開閉システム100に含まれるスマートECU5及びドア開閉ECU1の電源がオンになったときに開始される。
【0052】
まず、ステップS1では、車両が停車している状態であるか否かをドア開閉ECU1が判定する。車両が停車している状態であるか否かは、車速センサ3からの速度信号が、車速=0を示しているか否かに応じて判定する。そして、車速=0を示している、つまり、車両が停車している状態であると判定した場合(ステップS1でYES)には、ステップS2に移る。また、車速=0を示していない、つまり、車両が停車している状態でないと判定した場合(ステップS1でNO)には、ステップS1のフローを繰り返す。
【0053】
ステップS2では、ドア開閉ECU1がスマートECU5に指示を行い、一定時間おきに車両側の発振機からリクエスト信号を送信させるポーリングを開始させ、ステップS3に移る。ステップS3では、スマートECU5でコード照合が成立したことを示す情報をドア開閉ECU1が得た場合(ステップS3でYES)には、照合ありとしてレーザレーダ2の電源をオンにしてステップS4に移る。また、スマートECU5でコード照合が成立したことを示す情報をドア開閉ECU1が得ていない場合(ステップS3でNO)には、照合なしとしてステップS3のフローを繰り返す。
【0054】
つまり、スマートエントリーシステムの近距離無線通信に基づくコード照合を利用することによって、運転席ドアへのユーザの接近の検出を可能にしている(図4(a)参照)。
【0055】
ステップS4では、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かをドア開閉ECU1が判定する。ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かは、例えば開度センサ4の信号が運転席ドアの完全に閉じた状態(完全閉状態)を示しているか否かに応じて判定する。そして、完全閉状態を示している、つまり、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあると判定した場合(ステップS4でYES)には、ステップS5に移る。また、完全閉状態を示していない、つまり、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にないと判定した場合(ステップS4でNO)には、フローを終了する。
【0056】
なお、ドアカーテシスイッチの信号が運転席ドアの完全に閉じた状態(完全閉状態)を示しているか否かに応じて、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かをドア開閉ECU1が判定する構成としてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、完全閉状態を示している場合に、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあると判定する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、運転席ドアの開度が所定値以下であった場合に、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあると判定する構成としてもよい。ここで言うところの所定値とは、任意に設定可能な値である。
【0058】
ステップS5では、ドア開閉ECU1がイルミECU9に指示を行い、照明装置8の電源をオンにさせて、ジェスチャ検出範囲と略同一の範囲を可視光線で照らさせ、ステップS6に移る。ステップS6では、ドア開閉ECU1がイルミECU9に指示を行い、運転席ドアのドアハンドルイルミを点灯させ、ステップS7に移る。これにより、ユーザがジェスチャを検出可能な範囲及びタイミングを容易に認識して、手や足等によるジェスチャをジェスチャ検出範囲内で行うことが可能になる。
【0059】
本実施形態では、ステップS5の処理の次にステップS6の処理を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、ステップS6の処理の次にステップS5の処理を行う構成としてもよいし、ステップS5の処理とステップS6の処理とを並行して行う構成としてもよい。
【0060】
なお、ステップS4において、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にないと判定した場合には、ジェスチャ検出範囲と略同一の範囲を可視光線によって照らすことも、運転席ドアのドアハンドルイルミの点灯も行われない。これにより、ユーザにジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にないことを容易に認識させることができる。よって、ドア開閉ECU1が請求項の照射有無判定手段及び点灯有無判定手段に相当する。
【0061】
ステップS7では、ユーザが手や足で行った運転席開扉ジェスチャの検出(図4(b)参照)がドア開閉ECU1で行われた場合(ステップS7でYES)には、ステップS8に移る。また、運転席開扉ジェスチャの検出がドア開閉ECU1で行われていない場合(ステップS7でNO)には、ステップS7のフローを繰り返す。
【0062】
ステップS8では、ドア開閉ECU1が、モータドライバ14から開閉モータ6及びラッチ解除モータ7に駆動信号を出力して、運転席ドアの開扉を開始させ、ステップS9に移る。よって、ドア開閉ECU1が請求項の開閉動作開始手段に相当する。
【0063】
ステップS9では、運転席ドアの開度が、運転席ドアを自動開扉する際の設定開度になったか否かを、開度センサ4の検出信号に基づいてドア開閉ECU1が判定する。そして、運転席ドアの開度が設定開度になったと判定した場合(ステップS9でYES)には、ステップS12に移る。一方、運転席ドアの開度がまだ設定開度に達していないと判定した場合(ステップS9でNO)には、ステップS10に移る。
【0064】
ステップS10では、レーザレーダ2での障害物の検出結果に基づき、前述したようにして、運転席ドアに接触する可能性がある障害物が存在するか否かを判定する。そして、運転席ドアに接触する可能性がある障害物が存在すると判定した場合(ステップS10でYES)には、ステップS11に移る。また、運転席ドアに接触する可能性がある障害物が存在しないと判定した場合(ステップS10でNO)には、ステップS9に戻ってフローを繰り返す。このように、ステップS9からステップS10までの処理を繰り返し実行することにより、運転席ドアが開扉される間中、運転席ドアに対する障害物の検出が継続して実行される。
【0065】
ステップS11では、障害物を検出した後も、開閉モータ6の駆動を継続し、開閉モータ6によって、障害物を検出した時点の運転席ドアの開度から、障害物に接触しない程度の角度だけ運転席ドアを開扉(図4(c)参照)させた時点で、ステップS12に移る。障害物に接触しない程度の角度については、ドア開閉ECU1で算出した障害物までの距離をもとに求める構成とすればよい。
【0066】
なお、本実施形態では、運転席ドアに接触する可能性がある障害物を検出した場合に、その障害物に接触しない程度の開度で運転席ドアの開扉動作を停止させる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、ドア開閉ECU1で運転席開扉停止ジェスチャの検出が行われた時点で、運転席ドアの開扉動作を停止させる構成としてもよい。
【0067】
ステップS12では、開閉モータ6の駆動を停止することにより、運転席ドアの開扉を停止させ、運転席ドアの開度を保持してフローを終了する。
【0068】
本実施形態の構成によれば、運転席ドア近傍の発振機及びチューナを介した近距離無線通信に基づくコード照合が成立した場合に、ジェスチャ検出を可能にするので、ユーザが運転席ドアの付近にいる場合にのみ、ジェスチャによる運転席ドアの自動での開閉を可能にすることができる。
【0069】
なお、本実施形態では、車両ドアとして運転席のスイングドアの自動での開閉に車両ドア自動開閉システム100を適用した場合を説明したが、助手席のスイングドアについても同様であるものとする。
【0070】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態(以下、変形例1)も本発明の技術的範囲に含まれる。以下では、変形例1について図面を用いて説明を行う。なお、説明の便宜上、前述の実施形態の説明に用いた図に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0071】
変形例1は、車両ドアとして運転席や助手席のスイングドアの後方に設けられたスライドドアの自動での開閉に車両ドア自動開閉システム100を適用した場合の例である。なお、変形例1では、運転席のスイングドアの後方のスライドドア(以下、運転席後方スライドドア)の自動での開閉に車両ドア自動開閉システム100を適用した場合を例に挙げて説明を行う。ここで、レーザレーダ2は、前述の実施形態と同様にして、運転席ドアのドアミラーの下部に設けられているものとする。
【0072】
変形例1においては、スマートエントリーシステムにおける車両側の発振機及びチューナは、運転席後方スライドドアの近傍に設けられており、通信範囲が運転席後方スライドドアの近傍に限定されているものとする。
【0073】
変形例1において、ラッチ解除モータ7は、運転席後方スライドドアの内部に設置され、運転席後方スライドドアを閉位置に保持する図示しないラッチ機構に作用して、当該ラッチ機構を解除するものである。開閉モータ6も、運転席後方スライドドアの内部に設置され、図示しないドア開閉機構を駆動することによって、運転席後方スライドドアを設定開度(例えば最大開度)まで開扉させたり、閉扉させたりするものである。ただし、運転席後方スライドドアの開閉中に、後述するスライドドア開閉停止ジェスチャが検出されたときには、開閉モータ6による運転席後方スライドドアの開閉が停止される。この場合、運転席後方スライドドアの開度は、開閉モータ6が停止した時点の開度に保持される。また、変形例1において、イルミECU9は、例えば運転席後方スライドドアのドアハンドルイルミの点消灯の制御及び照明装置8の制御を行うものとする。
【0074】
変形例1においても、ドア開閉ECU1では、ジェスチャ検出範囲を、レーザレーダ2の検知エリアの一部に限定しているが、前述の実施形態とは異なり、一例としてジェスチャ検出範囲を、レーザレーダ2の走査範囲のうちの、運転席ドアの先端の位置よりも後方であって、且つ、より運転席後方スライドドア寄りの一部の領域に限定するものとする。照明装置8は、このジェスチャ検出範囲をユーザが認識しやすいように、このジェスチャ検出範囲と略同一の範囲を可視光線で照らすように設けられている。
【0075】
また、変形例1において、ドア開閉ECU1では、ジェスチャ検出範囲内で、若しくはジェスチャ検出範囲を横切って、車両の前方向から後ろ方向に向けて手足を動かすジェスチャを、運転席後方スライドドアの開扉を指示するジェスチャ(以下、スライドドア開扉ジェスチャ)として検出する。また、ジェスチャ検出範囲内で、若しくはジェスチャ検出範囲を横切って、車両の後ろ方向から前方向に向けて手足を動かすジェスチャを、運転席後方スライドドアの閉扉を指示するジェスチャ(以下、スライドドア閉扉ジェスチャ)として検出する。他には、ジェスチャ検出範囲内で手足を一定時間止めるジェスチャを、運転席後方スライドドアの開扉を指示するジェスチャ(スライドドア開閉停止ジェスチャ)として検出する。
【0076】
続いて、図5、及び図6(a)〜図6(d)を用いて、車両ドア自動開閉システム100における運転席後方スライドドアの自動での開閉に関連する処理(以下、運転席後方スライドドア自動開閉関連処理)のフローについての説明を行う。図5は、車両ドア自動開閉システム100における運転席後方スライドドア自動開閉関連処理のフローの一例を示すフローチャートである。図6(a)〜図6(d)は、運転席後方スライドドア自動開閉関連処理が行われているときの各シチュエーションを説明するための模式図である。本フローは、例えば車両ドア自動開閉システム100に含まれるスマートECU5及びドア開閉ECU1の電源がオンになったときに開始される。
【0077】
まず、ステップS31では、ステップS1と同様にして、車両が停車している状態であるか否かをドア開閉ECU1が判定する。そして、車両が停車している状態であると判定した場合(ステップS31でYES)には、ステップS32に移る。また、車両が停車している状態でないと判定した場合(ステップS31でNO)には、ステップS31のフローを繰り返す。
【0078】
ステップS32では、ステップS2と同様にしてドア開閉ECU1がスマートECU5に指示を行い、一定時間おきに車両側の発振機からリクエスト信号を送信させるポーリングを開始させ、ステップS33に移る。ステップS33では、スマートECU5でコード照合が成立したことを示す情報をドア開閉ECU1が得た場合(ステップS33でYES)には、照合ありとしてレーザレーダ2の電源をオンにしてステップS34に移る。また、スマートECU5でコード照合が成立したことを示す情報をドア開閉ECU1が得ていない場合(ステップS33でNO)には、照合なしとしてステップS33のフローを繰り返す。
【0079】
つまり、スマートエントリーシステムの近距離無線通信に基づくコード照合を利用することによって、運転席後方スライドドアへのユーザの接近の検出を可能にしている(図6(a)参照)。
【0080】
ステップS34では、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かをドア開閉ECU1が判定する。ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かは、例えば開度センサ4の信号が運転席ドアの完全に閉じた状態(完全閉状態)を示しているか否かに応じて判定する。
【0081】
ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かを、運転席ドアの開閉状態に応じて判定する理由は以下の通りである。運転席ドアが開扉している場合には、運転席ドアの外表面の近傍を少なくとも走査するレーザレーダ2の探査波は、図7に示すように、運転席後方スライドドア(図7中のA)から乗車や降車しようとするユーザの位置(図7中のCで示す破線の円)とは運転席ドア(図7中のB)を挟んで反対側にのみ送信される(図7中の破線の矢印参照)ので、ジェスチャ検出範囲もユーザの位置とは運転席ドアを挟んで反対側に位置することになり、ジェスチャ検出範囲内でユーザがジェスチャをすることが困難なためである。
【0082】
図5に戻って、ステップS34では、完全閉状態を示している、つまり、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあると判定した場合(ステップS34でYES)には、ステップS35に移る。また、完全閉状態を示していない、つまり、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にないと判定した場合(ステップS34でNO)には、フローを終了する。
【0083】
なお、ドアカーテシスイッチの信号が運転席ドアの完全に閉じた状態(完全閉状態)を示しているか否かに応じて、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かをドア開閉ECU1が判定する構成としてもよい。
【0084】
また、本実施形態では、完全閉状態を示している場合に、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあると判定する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、運転席ドアの開度が所定値以下であった場合に、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあると判定する構成としてもよい。ここで言うところの所定値とは、任意に設定可能な値である。
【0085】
ステップS35では、ドア開閉ECU1がイルミECU9に指示を行い、照明装置8の電源をオンにさせて、ジェスチャ検出範囲と略同一の範囲を可視光線で照らさせ、ステップS36に移る。ステップS36では、ドア開閉ECU1がイルミECU9に指示を行い、運転席後方スライドドアのドアハンドルイルミを点灯させ、ステップS37に移る。これにより、ユーザがジェスチャを検出可能な範囲及びタイミングを容易に認識して、手や足等によるジェスチャをジェスチャ検出範囲内で行うことが可能になる。
【0086】
本実施形態では、ステップS35の処理の次にステップS36の処理を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、ステップS36の処理の次にステップS35の処理を行う構成としてもよいし、ステップS35の処理とステップS36の処理とを並行して行う構成としてもよい。
【0087】
なお、ステップS34において、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にないと判定した場合(ステップS34でNO)には、ジェスチャ検出範囲と略同一の範囲を可視光線によって照らすことも、運転席後方スライドドアのドアハンドルイルミの点灯も行われない。これにより、ユーザにジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にないことを容易に認識させることができる。
【0088】
ステップS37では、ユーザが手や足で行ったスライドドア開扉ジェスチャの検出(図6(b)参照)がドア開閉ECU1で行われた場合(ステップS37でYES)には、ステップS38に移る。また、スライドドア開扉ジェスチャの検出がドア開閉ECU1で行われていない場合(ステップS37でNO)には、ステップS40に移る。
【0089】
ステップS38では、ドア開閉ECU1が、モータドライバ14から開閉モータ6及びラッチ解除モータ7に駆動信号を出力して、運転席後方スライドドアの開扉を開始させ(図6(c)参照)、ステップS39に移る。
【0090】
ステップS39では、運転席後方スライドドアの開度が、運転席後方スライドドアを自動開扉する際の設定開度になったか否かを、開度センサ4の検出信号に基づいてドア開閉ECU1が判定する。そして、運転席後方スライドドアの開度が設定開度になったと判定した場合(ステップS39でYES)には、ステップS43に移る。一方、運転席後方スライドドアの開度がまだ設定開度に達していないと判定した場合(ステップS39でNO)には、ステップS39のフローを繰り返す。
【0091】
また、ステップS40では、ユーザが手や足で行ったスライドドア閉扉ジェスチャの検出(図6(b)参照)がドア開閉ECU1で行われた場合(ステップS40でYES)には、ステップS41に移る。また、スライドドア閉扉ジェスチャの検出がドア開閉ECU1で行われていない場合(ステップS40でNO)には、ステップS37に戻ってフローを繰り返す。
【0092】
ステップS41では、ドア開閉ECU1が、モータドライバ14から開閉モータ6に駆動信号を出力して、運転席後方スライドドアの閉扉を開始させ(図6(d)参照)、ステップS42に移る。
【0093】
ステップS42では、運転席後方スライドドアの開度が0(つまり、完全閉状態)になったか否かを、開度センサ4の検出信号に基づいてドア開閉ECU1が判定する。そして、運転席後方スライドドアの開度が0になったと判定した場合(ステップS42でYES)には、ステップS43に移る。一方、運転席後方スライドドアの開度がまだ0に達していないと判定した場合(ステップS43でNO)には、ステップS43のフローを繰り返す。
【0094】
ステップS43では、開閉モータ6の駆動を停止することにより、運転席後方スライドドアの開閉を停止させ、フローを終了する。なお、本実施形態では、例えば、ドア開閉ECU1でスライドドア開閉停止ジェスチャの検出が行われた時点で、運転席後方スライドドアの開閉動作を停止させる構成としてもよい。
【0095】
本実施形態の構成によれば、運転席後方スライドドア近傍の発振機及びチューナを介した近距離無線通信に基づくコード照合が成立した場合に、ジェスチャ検出を可能にするので、ユーザが運転席後方スライドドアの付近にいる場合にのみ、ジェスチャによる運転席後方スライドドアの自動での開閉を可能にすることができる。
【0096】
なお、本実施形態では、車両ドアとして運転席後方スライドドアの自動での開閉に車両ドア自動開閉システム100を適用した場合を説明したが、助手席のスイングドアの後方のスライドドアについても同様であるものとする。
【0097】
また、前述の実施形態と変形例1とを併用する構成としてもよい。この場合、共通する部材については共通化して用いる一方、共通化できないものについてはそれぞれ設ける構成とすればよい。例えば、照明装置8については、照射範囲が運転席ドア側のジェスチャ検出範囲に略同一となるものと、運転席後方スライドドア側のジェスチャ検出範囲に略同一となるものとの2つを設け、図8に示すように2種類のジェスチャ検出範囲を照射可能な構成とすればよい。図8は、2種類のジェスチャ検出範囲を照射可能な構成を説明するための模式図である。そして、図8中のDが、運転席ドア側のジェスチャ検出範囲に略同一となる照明装置8の照射範囲を示しており、Eが運転席後方スライドドア側のジェスチャ検出範囲に略同一となる照明装置8の照射範囲を示している。また、図8中の矢印がレーザレーダ2によって走査される探査波を示している。なお、照明装置8の角度をモータ等のアクチュエータで変化させることによって、1つの照明装置8で上述の2種類のジェスチャ検出範囲を照射可能な構成としてもよい。
【0098】
他にも、スマートエントリーシステムにおける車両側の発振機及びチューナは、運転席ドアの近傍と運転席後方スライドドアの近傍とにそれぞれ設けられており、各々の通信範囲が運転席ドアの周辺と運転席後方スライドドアの近傍とにそれぞれに限定されている構成とすればよい。これにより、運転席ドア側の発振機及びチューナを介してコード照合が行われたか、運転席後方スライドドア側の発振機及びチューナを介してコード照合が行われたかの情報をスマートECU5からドア開閉ECU1が得て、運転席ドアと運転席後方スライドドアとのどちらの開閉をユーザが意図しているかを判定することが可能となる。
【0099】
また、運転席ドアと運転席後方スライドドアとのどちらの開閉をユーザが意図しているかをドア開閉ECU1で判定した場合に、開閉を意図しているドア側でのみ照明装置8でジェスチャ検出範囲を照らしたり、ドアハンドルイルミを点灯させたりすることも可能になる。これによれば、ユーザが開閉を意図しない側では照明装置8でジェスチャ検出範囲を照らしたり、ドアハンドルイルミを点灯させなかったりするので、意図するドアを開閉させるためのジェスチャ検出範囲をユーザが容易に認識できる。
【0100】
また、次の実施形態(以下、変形例2)も本発明の技術的範囲に含まれる。以下では、変形例2について図面を用いて説明を行う。なお、説明の便宜上、前述の実施形態の説明に用いた図に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0101】
変形例2は、車両ドアとして車両の後部に設けられたスイングドアであるバックドアの自動での開閉に車両ドア自動開閉システム100を適用した場合の例である。
【0102】
変形例2においては、レーザレーダ2は、前述したのと同様に運転席ドアのドアミラーの下部に設けられている他に、例えばバックドアの回転軸の近傍であるバックドアの上部にも設けられる。
【0103】
そして、バックドア側のレーザレーダ2は、バックドアの外表面の近傍を少なくとも走査するようにレーザ光を逐次照射するものとする。例えば、バックドアの外表面に対し、バックドアが開扉される方向に所定角度ずれた範囲までの領域を走査するようにレーザ光を照射する構成とすればよい。他にも、バックドアの外表面に対し、バックドアが開扉される方向に所定角度ずれた平面から一定角度までずれた範囲までの領域を走査するようにレーザ光を照射する構成としてもよい。これによれば、バックドアを開扉する際に、バックドアの可動範囲全体に渡って、バックドアと接触する可能性がある障害物を検出することが可能となる。なお、ここで言うところの所定角度及び一定角度については、任意に設定可能であるものとする。
【0104】
変形例2においては、スマートエントリーシステムにおける車両側の発振機及びチューナは、バックドアの近傍に設けられており、通信範囲がバックドアの近傍に限定されているものとする。
【0105】
変形例2において、ラッチ解除モータ7は、バックドアの内部に設置され、バックドアを閉位置に保持する図示しないラッチ機構に作用して、当該ラッチ機構を解除するものである。開閉モータ6も、バックドアの内部に設置され、図示しないドア開閉機構を駆動することによって、バックドアを設定開度(例えば最大開度)まで開扉させたり、閉扉させたりするものである。ただし、バックドアの開閉中に、後述するバックドア開閉停止ジェスチャが検出されたときには、開閉モータ6によるバックドアの開閉が停止される。この場合、バックドアの開度は、開閉モータ6が停止した時点の開度に保持される。また、変形例2において、イルミECU9は、例えばテールランプの点消灯の制御や照明装置8の制御を行うものとする。
【0106】
変形例2においても、ドア開閉ECU1では、ジェスチャ検出範囲を、レーザレーダ2の検知エリアの一部に限定している。具体的には、運転席ドア側のレーザレーダ2については、一例としてジェスチャ検出範囲を、走査範囲のうちの、運転席ドアの先端の位置よりも後方であって、且つ、より車両後部寄りの一部の領域に限定するものとする。一方、バックドア側のレーザレーダ2については、一例としてジェスチャ検出範囲を、走査範囲のうちの、車両の車幅方向における中心寄りの一部の領域に限定するものとする。
【0107】
照明装置8は、これらの各ジェスチャ検出範囲をユーザが認識しやすいように、これらのジェスチャ検出範囲と略同一の範囲を可視光線で照らすように、運転席ドア側のレーザレーダ2とバックドア側のレーザレーダ2とが設けられているのと同様の位置にそれぞれ設けられている。なお、以降では、運転席ドア側のレーザレーダ2のジェスチャ検出範囲を運転席側ジェスチャ検出範囲、バックドア側のレーザレーダ2のジェスチャ検出範囲をバックドア側ジェスチャ検出範囲と呼ぶ。
【0108】
変形例2において、ドア開閉ECU1では、バックドア側ジェスチャ検出範囲内で、若しくはバックドア側ジェスチャ検出範囲を横切って、車両の下方向から上方向に向けて手足を動かすジェスチャを、バックドアの開扉を指示するジェスチャ(以下、バックドア開扉ジェスチャ)として検出する。また、運転席側ジェスチャ検出範囲内で、若しくは運転席側ジェスチャ検出範囲を横切って、車両の上方向から下方向に向けて手足を動かすジェスチャを、バックドアの閉扉を指示するジェスチャ(以下、バックドア閉扉ジェスチャ)として検出する。他には、ジェスチャ検出範囲内で手足を一定時間止めるジェスチャを、バックドアの開扉を指示するジェスチャ(バックドア開閉停止ジェスチャ)として検出する。
【0109】
続いて、図9、図10(a)〜図10(d)、及び図11(a)〜図11(b)を用いて、車両ドア自動開閉システム100におけるバックドアの自動での開閉に関連する処理(以下、バックドア自動開閉関連処理)のフローについての説明を行う。図9は、車両ドア自動開閉システム100におけるバックドア自動開閉関連処理のフローの一例を示すフローチャートである。図10(a)〜図10(d)、及び図11(a)〜図11(b)は、バックドア自動開閉関連処理が行われているときの各シチュエーションを説明するための模式図である。本フローは、例えば車両ドア自動開閉システム100に含まれるスマートECU5及びドア開閉ECU1の電源がオンになったときに開始される。
【0110】
まず、ステップS51では、ステップS1と同様にして、車両が停車している状態であるか否かをドア開閉ECU1が判定する。そして、車両が停車している状態であると判定した場合(ステップS51でYES)には、ステップS52に移る。また、車両が停車している状態でないと判定した場合(ステップS51でNO)には、ステップS51のフローを繰り返す。
【0111】
ステップS52では、ステップS2と同様にしてドア開閉ECU1がスマートECU5に指示を行い、一定時間おきに車両側の発振機からリクエスト信号を送信させるポーリングを開始させ、ステップS53に移る。ステップS53では、スマートECU5でコード照合が成立したことを示す情報をドア開閉ECU1が得た場合(ステップS53でYES)には、照合ありとして運転席ドア側とバックドア側とのレーザレーダ2の電源をオンにしてステップS54に移る。また、スマートECU5でコード照合が成立したことを示す情報をドア開閉ECU1が得ていない場合(ステップS53でNO)には、照合なしとしてステップS53のフローを繰り返す。
【0112】
つまり、スマートエントリーシステムの近距離無線通信に基づくコード照合を利用することによって、バックドアへのユーザの接近の検出を可能にしている(図10(a)参照)。
【0113】
ステップS54では、運転席側ジェスチャ検出範囲やバックドア側ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かをドア開閉ECU1が判定する。運転席側ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かは、例えば開度センサ4の信号が運転席ドアの完全に閉じた状態(完全閉状態)を示しているか否かに応じて判定する。一方、バックドア側ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かは、例えば開度センサ4の信号がバックドアの完全に閉じた状態(完全閉状態)を示しているか否かに応じて判定する。
【0114】
運転席側ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かを、運転席ドアの開閉状態に応じて判定する理由は変形例1において説明した通りである。また、バックドア側ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かを、バックドアの開閉状態に応じて判定する理由は、以下の通りである。バックドアが例えば全開のように大きく開扉されている場合には、そのスイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査するバックドア側のレーザレーダ2の探査波は、ユーザの目線よりも高い位置からほぼ水平方向に送信されたりすることになるので、バックドア側ジェスチャ検出範囲も例えば目線の高さよりも高い上方に位置することになり、バックドア側ジェスチャ検出範囲内でユーザがジェスチャをすることが困難になる場合があるためである。
【0115】
ステップS54では、運転席ドア若しくはバックドアのいずれかが完全閉状態を示している、つまり、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあると判定した場合(ステップS54でYES)には、ステップS55に移る。また、運転席ドア及びバックドアのいずれも完全閉状態を示していない、つまり、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にないと判定した場合(ステップS54でNO)には、フローを終了する。
【0116】
なお、ドアカーテシスイッチの信号が運転席ドアの完全に閉じた状態(完全閉状態)を示しているか否かに応じて、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあるか否かをドア開閉ECU1が判定する構成としてもよい。
【0117】
また、本実施形態では、完全閉状態を示している場合に、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあると判定する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、運転席ドアの開度やバックドアの開度が所定値以下であった場合に、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にあると判定する構成としてもよい。ここで言うところの所定値とは、任意に設定可能な値である。
【0118】
ステップS55では、ドア開閉ECU1がイルミECU9に指示を行い、照明装置8の電源をオンにさせて、運転席側ジェスチャ検出範囲やバックドア側ジェスチャ検出範囲と略同一の範囲を可視光線で照らさせ、ステップS56に移る。具体的には、ステップS54で運転席ドア及びバックドアのいずれも完全閉状態を示していた場合には、運転席側ジェスチャ検出範囲とバックドア側ジェスチャ検出範囲との両方について、略同一の範囲を可視光線で照らさせる。一方、ステップS54で運転席ドアとバックドアとのいずれか一方のみが完全閉状態を示していた場合には、完全閉状態を示していた側のジェスチャ検出範囲のみについて、略同一の範囲を可視光線で照らさせる。
【0119】
ステップS56では、ドア開閉ECU1がイルミECU9に指示を行い、運転席後方スライドドアのドアハンドルイルミやテールランプや照明装置8を点灯させ、ステップS57に移る。具体的には、ステップS54で運転席ドア及びバックドアのいずれも完全閉状態を示していた場合には、運転席後方スライドドアのドアハンドルイルミやテールランプや照明装置8の全てを点灯させる。一方、ステップS54で運転席ドアとバックドアとのいずれか一方のみが完全閉状態を示していた場合には、完全閉状態を示していた側の照明装置8やインジケータランプのみを点灯させる。
【0120】
これにより、ユーザがジェスチャを検出可能な範囲及びタイミングを容易に認識して、手や足等によるジェスチャをジェスチャ検出範囲内で行うことが可能になる。
【0121】
本実施形態では、ステップS55の処理の次にステップS56の処理を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、ステップS56の処理の次にステップS55の処理を行う構成としてもよいし、ステップS55の処理とステップS56の処理とを並行して行う構成としてもよい。
【0122】
なお、ステップS54において、ジェスチャ検出範囲でジェスチャを検出可能な状態にないと判定した場合には、運転席側ジェスチャ検出範囲とバックドア側ジェスチャ検出範囲とのいずれについても、略同一の範囲を可視光線によって照らすことは行われない。また、運転席後方スライドドアのドアハンドルイルミの点灯もテールランプの点灯も行われない。これにより、ユーザに運転席側ジェスチャ検出範囲とバックドア側ジェスチャ検出範囲とのいずれでもジェスチャを検出可能な状態にないことを容易に認識させることができる。
【0123】
ステップS57では、ユーザが手や足で行ったバックドア開扉ジェスチャの検出(図10(b)参照)がドア開閉ECU1で行われた場合(ステップS57でYES)には、ステップS58に移る。バックドア開扉ジェスチャの検出は、バックドア側のレーザレーダ2の検出結果をもとに行われる。また、スライドドア開扉ジェスチャの検出がドア開閉ECU1で行われていない場合(ステップS57でNO)には、ステップS62に移る。
【0124】
ステップS58では、ドア開閉ECU1が、モータドライバ14から開閉モータ6及びラッチ解除モータ7に駆動信号を出力して、バックドアの開扉を開始させ(図10(c)参照)、ステップS59に移る。
【0125】
ステップS59では、バックドアの開度が、バックドアを自動開扉する際の設定開度になったか否かを、開度センサ4の検出信号に基づいてドア開閉ECU1が判定する。そして、バックドアの開度が設定開度になったと判定した場合(ステップS59でYES)には、ステップS65に移る。一方、バックドアの開度がまだ設定開度に達していないと判定した場合(ステップS59でNO)には、ステップS60に移る。
【0126】
ステップS60では、バックドア側のレーザレーダ2での障害物の検出結果に基づき、バックドアに接触する可能性がある障害物が存在するか否かを判定する。そして、バックドアに接触する可能性がある障害物が存在すると判定した場合(ステップS60でYES)には、ステップS61に移る。また、バックドアに接触する可能性がある障害物が存在しないと判定した場合(ステップS60でNO)には、ステップS59に戻ってフローを繰り返す。このように、ステップS59からステップS60までの処理を繰り返し実行することにより、バックドアが開扉される間中、バックドアに対する障害物の検出が継続して実行される。
【0127】
ステップS61では、障害物を検出した後も、開閉モータ6の駆動を継続し、開閉モータ6によって、障害物を検出した時点のバックドアの開度から、障害物に接触しない程度の角度だけバックドアを開扉(図10(d)参照)させた時点で、ステップS65に移る。障害物に接触しない程度の角度については、ドア開閉ECU1で算出した障害物までの距離をもとに求める構成とすればよい。
【0128】
また、ステップS62では、ユーザが手や足で行ったバックドア閉扉ジェスチャの検出(図11(a)参照)がドア開閉ECU1で行われた場合(ステップS62でYES)には、ステップS63に移る。バックドア閉扉ジェスチャの検出は、運転席ドア側のレーザレーダ2の検出結果をもとに行われる。また、バックドア閉扉ジェスチャの検出がドア開閉ECU1で行われていない場合(ステップS62でNO)には、ステップS57に戻ってフローを繰り返す。
【0129】
ステップS63では、ドア開閉ECU1が、モータドライバ14から開閉モータ6に駆動信号を出力して、バックドアの閉扉を開始させ(図11(b)参照)、ステップS64に移る。
【0130】
ステップS64では、バックドアの開度が0(つまり、完全閉状態)になったか否かを、開度センサ4の検出信号に基づいてドア開閉ECU1が判定する。そして、バックドアの開度が0になったと判定した場合(ステップS64でYES)には、ステップS65に移る。一方、バックドアの開度がまだ0に達していないと判定した場合(ステップS64でNO)には、ステップS64のフローを繰り返す。
【0131】
ステップS65では、開閉モータ6の駆動を停止することにより、バックドアの開閉を停止させ、フローを終了する。なお、本実施形態では、例えば、ドア開閉ECU1でバックドア開閉停止ジェスチャの検出が行われた時点で、バックドアの開閉動作を停止させる構成としてもよい。
【0132】
本実施形態の構成によれば、バックドア近傍の発振機及びチューナを介した近距離無線通信に基づくコード照合が成立した場合に、ジェスチャ検出を可能にするので、ユーザがバックドアの付近にいる場合にのみ、ジェスチャによるバックドアの自動での開閉を可能にすることができる。
【0133】
また、前述の各実施形態と変形例2とを併用する構成としてもよい。この場合、共通する部材については共通化して用いる一方、共通化できないものについてはそれぞれ設ける構成とすればよい。
【0134】
前述のいずれの実施形態によっても、ユーザの所定のジェスチャを検出した検出結果をもとに、車両ドアの自動での開閉動作を開始させるので、ユーザは歩行に比べて小さな動作をするだけでも車両ドアの自動での開閉動作を行わせることが可能になる。また、両手が荷物で塞がっている場合であっても、他の体の一部(例えば足)を動かすことで車両ドアの自動での開閉動作を行わせることが可能になる。他にも、雨降り時に濡れた車両ボディに触れて車両ドアの開閉動作を行わせる必要もない。従って、ユーザにとっての快適性を向上させることが可能になる。
【0135】
さらに、スイングドアの開閉軌跡上に存在する障害物を検出するために用いるレーザレーダ2を利用して、ユーザの所定のジェスチャを検出するので、ユーザのジェスチャを検出するためのカメラ等を別途新たに車両に設ける必要がなく、その分のコストの増加を抑えることができる。その結果、コストの増加を抑えながらも、ユーザにとっての快適性を向上させることが可能になる。
【0136】
また、前述の実施形態では、ジェスチャ検出範囲を、レーザレーダ2の走査範囲の一部に限定するので、ジェスチャ検出範囲をより狭く限定することで、意図しない場所でジェスチャの検出が行われることを防止し、車両ドアの誤動作を防止することが可能になる。さらに、前述の実施形態では、ジェスチャ検出範囲を、照明装置8から照射する可視光線で照らすことでユーザに提示するので、ジェスチャ検出範囲をより狭く限定した場合であっても、より確実にユーザがそのジェスチャ検出範囲内でジェスチャをすることが可能になる。従って、ジェスチャ検出範囲をより狭く限定した場合であっても、ジェスチャの検出率を向上させることができる。
【0137】
他にも、前述の実施形態では、スマートエントリーシステムにおけるコード照合が成立した後にジェスチャを検出可能とするなど、ジェスチャを検出可能な時間的範囲を限定している。よって、ジェスチャを検出可能な時間的範囲をより狭く限定することで、意図しないときにジェスチャの検出が行われることを防止し、車両ドアの誤動作を防止することが可能になる。さらに、前述の実施形態では、ジェスチャを検出可能な時間範囲に限って、ドアハンドルイルミやテールランプ等のインジケータランプや照明装置8を点灯させるので、ジェスチャを検出可能な時間的範囲をより狭く限定した場合であっても、より確実にユーザがその時間的範囲内でジェスチャをすることが可能になる。従って、時間的範囲をより狭く限定した場合であっても、所定のジェスチャの検出率を向上させることができる。
【0138】
なお、前述の各実施形態では、ジェスチャ検出範囲を照明装置8から照射する可視光線で照らす構成や、ジェスチャの検出が可能なタイミングをドアハンドルイルミやテールランプ等のインジケータランプを点灯させることで知らせる構成や、スマートエントリーシステムにおけるコード照合が行われた場合にジェスチャ検出範囲でのジェスチャを検出可能とする構成を示したが、これらの構成を備えない態様としてもよい。
【0139】
また、前述の各実施形態において、ジェスチャの一例を挙げて説明を行ったが、必ずしもこれに限らず、説明した以外のユーザの体の一部の所定の動きによるジェスチャを用いる構成としてもよい。
【0140】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0141】
1 ドア開閉ECU(ジェスチャ検出手段、照射有無判定手段、点灯有無判定手段、開閉動作開始手段、車両ドア自動開閉装置)、2 レーザレーダ(障害物センサ、車両ドア自動開閉装置)、3 車速センサ、4 開度センサ、5 スマートECU(車両側ユニット)、6 開閉モータ、7 ラッチ解除モータ、8 照明装置(照明手段、提示灯、車両ドア自動開閉装置)、9 イルミECU、21 発光部、11 入力I/F、12 CPU、13 不揮発性メモリ、14 モータドライバ、22 受光部、23 時間計測部、100 車両ドア自動開閉システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともスイングドアを備える車両に搭載され、
前記スイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査するように探査波を逐次送信するとともに、その探査波の反射波を受信し、受信した反射波をもとに、前記スイングドアの開閉軌跡上に存在する障害物を検出する障害物センサを備える車両ドア自動開閉装置であって、
前記障害物センサで障害物の検出を逐次行うことによって、前記探査波の走査範囲内でのユーザの体の一部の所定の動きである所定のジェスチャを検出するジェスチャ検出手段と、
前記ジェスチャ検出手段での検出結果をもとに、前記車両の車両ドアの自動での開閉動作を開始させる開閉動作開始手段を備えることを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ジェスチャ検出手段は、前記所定のジェスチャを検出可能な物理的範囲を、前記障害物センサの走査範囲の一部に限定することを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【請求項3】
請求項2において、
可視光線を照射する照明手段をさらに備え、
前記物理的範囲を、前記照明手段から照射する可視光線で照らすことでユーザに提示することを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【請求項4】
請求項3において、前記スイングドアの開閉状態に応じて、前記物理的範囲を前記照明手段から照射する可視光線で照らすか否かを判定する照射有無判定手段をさらに備え、
前記照射有無判定手段で前記物理的範囲を前記照明手段から照射する可視光線で照らさないと判定した場合には、前記物理的範囲を前記照明手段から照射する可視光線で照らさないことを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、
前記ジェスチャ検出手段は、前記所定のジェスチャを検出可能な時間的範囲を限定することを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記時間的範囲を、前記車両に予め設けられているインジケータランプ及び可視光線を照射する照明手段のうちの少なくともいずれかである提示灯を点灯させることでユーザに提示することを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【請求項7】
請求項6において、前記スイングドアの開閉状態に応じて、前記時間的範囲において前記提示灯を点灯させるか否かを判定する点灯有無判定手段をさらに備え、
前記点灯有無判定手段で前記時間的範囲において前記提示灯を点灯させないと判定した場合には、前記時間的範囲において前記提示灯を点灯させないことを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項において、
前記ユーザに携帯される携帯機との近距離無線通信に基づいてコード照合を行って前記車両の車載機器の動作を制御する、前記車両に搭載された車両側ユニットとの間で情報のやり取りが可能なものであって、
前記車両側ユニットから前記コード照合が成立したことを示す情報を得た場合に限り、前記ジェスチャ検出手段での前記所定のジェスチャの検出を可能とすることを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項において、
前記スイングドアは前記車両の側面に設けられたスイングドアであって、
前記開閉動作開始手段は、前記ジェスチャ検出手段での検出結果をもとに、当該スイングドアを自動で開扉する動作を開始させることを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【請求項10】
前記1〜8のいずれか1項において、
前記スイングドアは前記車両の側面に設けられたスイングドアであって、
前記開閉動作開始手段は、前記ジェスチャ検出手段での検出結果をもとに、当該スイングドアの後方に設けられた前記車両のスライドドアの自動での開閉動作を開始させることを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項において、
前記スイングドアは前記車両の後部に設けられたスイングドアであって、
前記開閉動作開始手段は、前記ジェスチャ検出手段での検出結果をもとに、当該スイングドアを自動で開扉する動作を開始させることを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項において、
前記スイングドアは前記車両の側面に設けられたスイングドアであって、
前記開閉動作開始手段は、前記ジェスチャ検出手段での検出結果をもとに、前記車両の後部に設けられたスイングドアを自動で閉扉する動作を開始させることを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【請求項1】
少なくともスイングドアを備える車両に搭載され、
前記スイングドアの外表面の近傍を少なくとも走査するように探査波を逐次送信するとともに、その探査波の反射波を受信し、受信した反射波をもとに、前記スイングドアの開閉軌跡上に存在する障害物を検出する障害物センサを備える車両ドア自動開閉装置であって、
前記障害物センサで障害物の検出を逐次行うことによって、前記探査波の走査範囲内でのユーザの体の一部の所定の動きである所定のジェスチャを検出するジェスチャ検出手段と、
前記ジェスチャ検出手段での検出結果をもとに、前記車両の車両ドアの自動での開閉動作を開始させる開閉動作開始手段を備えることを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ジェスチャ検出手段は、前記所定のジェスチャを検出可能な物理的範囲を、前記障害物センサの走査範囲の一部に限定することを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【請求項3】
請求項2において、
可視光線を照射する照明手段をさらに備え、
前記物理的範囲を、前記照明手段から照射する可視光線で照らすことでユーザに提示することを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【請求項4】
請求項3において、前記スイングドアの開閉状態に応じて、前記物理的範囲を前記照明手段から照射する可視光線で照らすか否かを判定する照射有無判定手段をさらに備え、
前記照射有無判定手段で前記物理的範囲を前記照明手段から照射する可視光線で照らさないと判定した場合には、前記物理的範囲を前記照明手段から照射する可視光線で照らさないことを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、
前記ジェスチャ検出手段は、前記所定のジェスチャを検出可能な時間的範囲を限定することを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記時間的範囲を、前記車両に予め設けられているインジケータランプ及び可視光線を照射する照明手段のうちの少なくともいずれかである提示灯を点灯させることでユーザに提示することを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【請求項7】
請求項6において、前記スイングドアの開閉状態に応じて、前記時間的範囲において前記提示灯を点灯させるか否かを判定する点灯有無判定手段をさらに備え、
前記点灯有無判定手段で前記時間的範囲において前記提示灯を点灯させないと判定した場合には、前記時間的範囲において前記提示灯を点灯させないことを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項において、
前記ユーザに携帯される携帯機との近距離無線通信に基づいてコード照合を行って前記車両の車載機器の動作を制御する、前記車両に搭載された車両側ユニットとの間で情報のやり取りが可能なものであって、
前記車両側ユニットから前記コード照合が成立したことを示す情報を得た場合に限り、前記ジェスチャ検出手段での前記所定のジェスチャの検出を可能とすることを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項において、
前記スイングドアは前記車両の側面に設けられたスイングドアであって、
前記開閉動作開始手段は、前記ジェスチャ検出手段での検出結果をもとに、当該スイングドアを自動で開扉する動作を開始させることを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【請求項10】
前記1〜8のいずれか1項において、
前記スイングドアは前記車両の側面に設けられたスイングドアであって、
前記開閉動作開始手段は、前記ジェスチャ検出手段での検出結果をもとに、当該スイングドアの後方に設けられた前記車両のスライドドアの自動での開閉動作を開始させることを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項において、
前記スイングドアは前記車両の後部に設けられたスイングドアであって、
前記開閉動作開始手段は、前記ジェスチャ検出手段での検出結果をもとに、当該スイングドアを自動で開扉する動作を開始させることを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項において、
前記スイングドアは前記車両の側面に設けられたスイングドアであって、
前記開閉動作開始手段は、前記ジェスチャ検出手段での検出結果をもとに、前記車両の後部に設けられたスイングドアを自動で閉扉する動作を開始させることを特徴とする車両ドア自動開閉装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−7171(P2013−7171A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138803(P2011−138803)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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