説明

車両ドライバの特定装置及び車両ドライバの特定方法

【課題】車両ドライバの特定にかかる利便性が維持される運転操作の学習を通じての車両ドライバの特定をより高精度に行うことのできる車両ドライバの特定装置及び車両ドライバの特定方法を提供する。
【解決手段】車両100には、ドライバによる運転操作の特徴量を示すデータが当該運転操作の行われた地点の別に記録されるデータベース140が搭載されている。また、車両100に搭載される車載制御装置130には、特定対象とするドライバの該当する地点における運転操作の特徴量とデータベース140にデータとして記録された地点別の運転操作の特徴量との比較を通じてドライバを特定する処理を行うドライバ特定処理部133が設けられている。ドライバ特定処理部133は、ドライバの運転操作の特徴量と当該運転操作が行われた地点に基づいて車両100のドライバを特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を運転操作するドライバの特定に利用して有益な車両ドライバの特定装置及び車両ドライバの特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両のセキュリティーを高めるべく、車両のドライバを特定し、この特定結果に基づいて車両のドライバが正規ユーザであるか否かを認証するようにしたシステムなどが開発されている。また、この特定結果に基づき、ルームミラーやシートポジションの位置調整などを車両のドライバに合わせて自動的に行うシステムの開発も検討されている。
【0003】
一方、こうしたドライバの特定に際しては通常、認証用のIDキーやIDカードなどの物理的な認証用の媒体を正規のユーザに予め配布するとともに、それらIDキーやIDカードに付与されるID情報を車載機に予め登録するようにしている。そして、IDキーやIDカードに付与されているID情報と車載機に予め登録されたID情報とを照合することにより、IDキーやIDカードの所有者、すなわち車両のドライバを特定するようにしている。
【0004】
ところで、このようにIDキーやIDカードといった物理的な媒体を利用してドライバを特定しようとすると、それらIDキーやIDカードが不正入手された場合には、正規ユーザではないドライバが正規ユーザであると誤って認証されてしまうなど、セキュリティーを担保することは難しい。さらに、このような物理的な媒体を用いてドライバを特定しようとすると、ドライバは、車両を利用する都度、いちいち同媒体を用いて認証を受ける必要があるなど、利便性を欠くものともなっていた。
【0005】
そこで、例えば特許文献1に記載のシステムを含む従来のシステムでは、各ドライバが行うドアロック手順やアクセルペダルの踏み込み周期、ステアリングの操作速度などの特徴量を学習し、この学習した特徴量をドライバの別にデータベースに記録するようにしている。そして、データベースに登録された特徴量とドライバにより実際に行われた運転操作の特徴量とを比較し、データベースに登録された特徴量と同一の特徴量についてはデータベースに登録されたドライバの運転操作によるものとして、同ドライバを特定するようにしている。これにより、IDキーやIDカードなどの物理的な媒体を用いずとも、また、ドライバを特定するための所定の操作をドライバに要求せずとも、ドライバを特定することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−63400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、例えばアクセルペダルの踏み込み周期やステアリングの操作速度など、道路上を走行する車両のもとで行われる運転操作の内容や各種操作要素の操作量とは、交通量や道路線形などのように車両周辺の走行環境によって大きく変化する。すなわち、たとえ同一のドライバであっても、アクセルペダルの踏み込み周期やステアリングの操作速度などが必ずしも一定の傾向となるとは限らない。また、アクセルペダルの踏み込み周期やステアリングの操作速度等の個々の運転操作の特徴量は、走行環境のもとで行われるときには各ドライバ間でも類似する傾向にあり、そのような環境下では各ドライバの運転操作の特徴量の差が十分に現れないことも想定される。
【0008】
こうしたことから、ドライバの運転操作の特徴量のみに基づいてドライバを特定することは難しく、その特定精度を向上する上ではなお改良の余地を残すものとなっている。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両ドライバの特定にかかる利便性が維持される運転操作の学習を通じての車両ドライバの特定をより高精度に行うことのできる車両ドライバの特定装置及び車両ドライバの特定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、車両を運転操作するドライバの運転操作態様に基づいてドライバの特定を行う車両ドライバの特定装置であって、ドライバによる運転操作の特徴量を示すデータが当該運転操作の行われた地点の別に記録されるデータベースと、特定対象とするドライバの該当する地点における運転操作の特徴量と前記データベースにデータとして記録された地点別の運転操作の特徴量との比較を通じてドライバを特定する処理を行うドライバ特定処理部と、を備えることを要旨とする。
【0010】
請求項7に記載の発明は、車両を運転操作するドライバの運転操作態様に基づいてドライバの特定を行う車両ドライバの特定方法であって、ドライバによる運転操作の特徴量を示すデータを当該運転操作の行われた地点の別にデータベースに記録するステップと、特定対象とするドライバの該当する地点における運転操作の特徴量と前記データベースにデータとして記録された地点別の運転操作の特徴量との比較を通じてドライバを特定するステップと、を含むことを要旨とする。
【0011】
車両の走行する各地点では、その地点に応じた運転操作が行われる傾向にあり、こうした運転操作にはドライバに固有の癖等が反映される傾向にある。そして、同一のドライバが或る地点のもとで行う運転操作の特徴量は共通もしくは類似する傾向にあり、地点毎に行われる運転操作にはドライバ固有の癖が特に反映されるものとなっている。すなわち、地点毎に行われる運転操作の特徴量は、同一のドライバのものは共通もしくは類似する一方、異なるドライバ間では相違する蓋然性が高い。
【0012】
そこで、上記構成あるいは方法によるように、まず、ドライバの運転操作の特徴量を示すデータをデータベースに記録する。そして、ドライバの特定に際しては、特定対象とするドライバが或る地点のもとで行った運転操作を示すデータを取得し、この取得したデータとデータベースに登録した同地点における運転操作の特徴量を示すデータとを比較する。この比較の結果、特定対象とするドライバの運転操作を示すデータと共通もしくは類似するデータがデータベースに存在するときには、特定対象とするドライバが同データベースに登録されたデータにて示される運転操作を行ったドライバであると特定することが可能となる。このため、認証のための操作をドライバに何ら要求することなく、ドライバが車両の運転操作を行う過程で同ドライバを特定することが可能となる。また、地点毎に行われる運転操作の特徴量といったドライバ毎に固有の要素に基づきドライバを特定することが可能となり、ドライバの特定にかかる利便性が向上されるようになる。
【0013】
また、上記構成あるいは方法によれば、ドライバの運転操作の特徴量を示すデータが各運転操作の行われた地点毎に記録される。このため、道路上を走行する際に継続的に行われる一連の車両操作を混合させることなく各地点毎に記録することが可能となり、地点毎に行われる運転操作の特徴量といったドライバ毎に固有の要素に基づいてドライバを特定することが可能となる。これにより、ドライバの特定をより高精度に行うことができるようになる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両ドライバの特定装置において、前記ドライバ特定処理部は、ドライバの特定に際し、該当する地点におけるドライバの運転操作の特徴量を示すデータが前記データベースに存在しないとき、当該地点と走行環境の類似する地点における運転操作の特徴量を示すデータを用いて前記特定対象とするドライバを特定することを要旨とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の車両ドライバの特定方法において、前記特定するステップにおいて、該当する地点におけるドライバの運転操作態様を示すデータが前記データベースに存在しないとき、当該地点と走行環境の類似する地点における運転操作の特徴量を示すデータを用いて前記特定対象とするドライバを特定することを要旨とする。
【0016】
例えば、特定対象とするドライバが初めて訪れるエリアにあっては、同ドライバの運転操作の特徴量を示すデータがデータベースに登録されていない状態となっている。しかし、道路上に存在する各種地点の走行環境とは、エリアが異なる場合であっても類似するものが多く存在する。そして、この類似する走行環境のもとで同一のドライバによる行われる車両操作とは共通もしくは類似する傾向にある。
【0017】
そこで、上記構成あるいは方法によるように、該当する地点におけるドライバの運転操作の特徴量を示すデータがデータベースに存在しないときには、この地点と走行環境の類似する地点における運転操作の特徴量を示すデータを用いて特定対象とするドライバを特定する。このため、ドライバが運転操作する車両が走行した地点における運転操作の特徴量を示すデータがデータベースに存在しないときでも、同地点と走行環境が類似する地点のもとで行われた運転操作の特徴量を示すデータさえ存在すれば、このデータに基づいてドライバを特定することが可能となる。これにより、ドライバの特定に際して同ドライバの各地点における運転履歴を用いながらも、特定に用いるデータの選定範囲が拡大されるようになり、ひいては、ドライバの特定にかかる自由度が向上されるようになる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両ドライバの特定装置において、前記ドライバ特定処理部は、該当する地点におけるドライバの運転操作の特徴量を示すデータが前記データベースに存在しないとき、前記特定対象とするドライバの特定に併せて、当該ドライバによる運転操作の特徴量を示すデータを前記データベースに新規登録することを要旨とする。
【0019】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の車両ドライバの特定方法において、前記特定するステップにおいて、該当する地点におけるドライバの運転操作の特徴量を示すデータが前記データベースに存在しないとき、前記特定対象とするドライバの特定に併せて、当該ドライバによる運転操作の特徴量を示すデータを前記データベースに新規登録することを要旨とする。
【0020】
上記構成あるいは方法によれば、該当する地点におけるドライバの運転操作の特徴量を示すデータがデータベースに存在しないときには、走行環境の類似する地点で既に取得済みのデータに基づいてドライバを特定しつつ、未登録の新規な地点で行われた運転操作の特徴量を示すデータがデータベースに新規登録される。このため、同データがデータベースに新規登録されて以降は、新規登録されたデータに基づいてドライバを特定することが可能となる。これにより、走行環境の類似する地点で取得されたデータに基づくドライバの特定と新規地点で行われた運転操作の学習とが並行して行われることとなり、新規地点で運転操作を行ったドライバを特定可能しつつ、データベースの拡充が漸次図られるようになる。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の車両ドライバの特定装置において、前記走行環境の類似する地点とは、道路線形、道路勾配、及び交差点形状の少なくとも1つが類似する地点であることを要旨とする。
【0022】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の車両ドライバの特定方法において、前記走行環境の類似する地点として、道路線形、道路勾配、及び交差点形状の少なくとも1つが類似する地点を選択することを要旨とする。
【0023】
道路線形、道路勾配、交差点形状といった走行環境が類似する地点で行われる運転操作とは、こうした走行環境毎に固有のものであり、またドライバに固有の癖も反映され易い。また、このように道路線形、道路勾配、及び交差点形状といった要素は、道路上に多く存在し、エリアが異なったとしても類似する傾向にある。
【0024】
そこで、上記構成あるいは方法によるように、データベースに該当する地点における運転操作の特徴量を示すデータが存在しないときには、走行環境の類似する地点として、道路線形、道路勾配、及び交差点形状の少なくとも1つが類似する地点で行われた運転操作の特徴量を示すデータを用いる。これにより、道路線形、道路勾配、及び交差点形状といった各走行エリアに多数存在し、かつドライバ固有の癖が反映される地点において取得されたデータに基づきドライバを特定することが可能となり、走行環境の類似する地点で取得されたデータを用いたドライバの特定をより高精度に実現することが可能となる。
【0025】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両ドライバの特定装置において、前記運転操作の特徴量が、特定の交通要素のもとで行われる複数種の運転操作要素の操作態様であり、前記地点が、特定の交通要素のもとで行われる複数種の運転操作要素による一連の運転操作が行われる連続した地点であることを要旨とする。
【0026】
請求項11に記載の発明は、請求項7〜10のいずれか一項に記載の車両ドライバの特定方法において、前記運転操作の特徴量として、特定の交通要素のもとで行われる複数種の運転操作要素の操作態様を求め、前記地点として、特定の交通要素のもとで行われる複数種の運転操作要素による一連の運転操作が行われた連続した地点を選定することを要旨とする。
【0027】
例えば、交差点等の交通要素では、交差点に進入してから同交差点を通過するまでの間に、車両の減速、加速、方向転換等をさせるための複数種の運転操作要素の一連の運転操作が交差点を含む所定の走行区間の各地点で行われる。そして、こうした運転操作要素の運転操作が行われる地点、換言すれば、各種運転操作が行われるタイミングとは、ドライバ毎に相違し、ドライバ固有の癖が反映されやすい。すなわち、こうした運転操作要素の一連の運転操作の組み合わせ態様は、同一のドライバにおいては共通もしくは類似する一方、異なるドライバ間では共通もしくは類似する蓋然性が極めて低い。
【0028】
そこで、上記構成あるいは方法によるように、運転操作の特徴量として、一連の運転操作が行われる連続した地点のもとで行われる複数種の運転操作要素の操作態様を示すデータを、データベースに記録する。そして、この記録したデータに基づいてドライバを特定することとすれば、特定の交通要素のもとで行われる一連の運転操作のパターンに基づいてドライバを特定することが可能となり、ドライバの特定精度の一層の向上が図られるようになる。
【0029】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の車両ドライバの特定装置において、前記運転操作要素が、アクセルペダル、ターンランプ、及びブレーキペダルの少なくとも2つの要素からなることを要旨とする。
【0030】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の車両ドライバの特定方法において、前記運転操作要素として、アクセルペダル、ターンランプ、及びブレーキペダルの少なくとも2つの要素を選定することを要旨とする。
【0031】
アクセルペダル、ターンランプ、及びブレーキペダルといった運転操作要素は、交差点やカーブといった所定の交通要素の各地点でその特性に応じて操作されるものであり、これら運転操作要素が操作される頻度は高く、こうした運転操作要素の運転操作態様はドライバ間でも特に相違する傾向にある。また、こうした運転操作要素毎の操作態様のみならず、アクセルペダル、ターンランプ、及びブレーキペダルの各々が操作される順序やタイミングもドライバ間で相違する傾向にある。
【0032】
そこで、上記構成あるいは方法によれば、一連の地点のもとで行われるアクセルペダル、ターンランプ、及びブレーキペダルといった通常の運転操作において利用されやすくドライバ固有の癖が反映されやすい要素に基づいてドライバを特定することが可能となる。これにより、ドライバの特定をより多くの地点における運転操作の特徴量に基づき行うことが可能になるとともに、その特定精度の一層の向上が図れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明にかかる車両ドライバの特定装置及び車両ドライバの特定方法の第1の実施の形態について、同車両ドライバの特定装置が搭載される車両の概略構成を示すブロック図。
【図2】データベースに登録された運転操作の特徴量と当該運転操作の行われた地点とを示すデータの一例を示す図。
【図3】交差点の手前の連続する各地点で行われる運転操作の一例を、車両の走行速度の推移とともに示す図。
【図4】交差点の手前の連続する各地点で行われる運転操作要素の操作態様の一例を、ドライバの別に示す図。
【図5】同実施の形態の車両ドライバの特定装置及び車両ドライバの特定方法によるドライバの特定手順の一例を示すフローチャート。
【図6】本発明にかかる車両ドライバの特定装置及び車両ドライバの特定方法の第2の実施の形態について、同車両ドライバの特定装置が搭載される車両の概略構成を示すブロック図。
【図7】(a)は、交差点に向かう車両の走行態様の一例を示す図。(b)は、(a)に例示した交差点の手前の連続する各地点で行われる運転操作の一例を、車両の走行速度の推移とともに示す図。(c)は、(a)に例示した交差点に類似する交差点に向かう車両の走行態様の一例を示す図。(d)は、(c)に例示した交差点の手前の連続する各地点で行われる運転操作の一例を、車両の走行速度の推移とともに示す図。
【図8】或る交差点と同交差点に類似する交差点のもとで行われた同一のドライバによる運転操作要素の操作態様の一例を示す図。
【図9】類似する交差点のもとで行われた各ドライバによる運転操作要素の操作態様の一例を示す図。
【図10】同実施の形態の車両ドライバの特定装置及び車両ドライバの特定方法によるドライバの特定手順の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかる車両ドライバの特定装置及び車両ドライバの特定方法を具体化した第1の実施の形態について図1〜図5を参照して説明する。なお、本実施の形態の車両ドライバの特定装置及び車両ドライバの特定方法は、例えば複数のユーザに共有される車両に適用されるものである。
【0035】
図1に示すように、本実施の形態の車両ドライバの特定装置及び車両ドライバの特定方法が適用される車両100には、同車両100に設けられた各種運転操作要素の操作態様を検出する運転操作検出手段110が設けられている。
【0036】
運転操作検出手段110は、例えば、アクセルセンサ111、ブレーキセンサ112、ウィンカスイッチ113、及び操舵角センサ114等を備えている。運転操作検出手段110は、各センサ等111〜114の検出結果を、同検出結果に基づき各種車載機器を制御する車載制御装置130に出力する。
【0037】
アクセルセンサ111は、車両100のドライバによるアクセルペダルの踏み込み量を検出し、この検出した結果を車載制御装置130に出力する。ブレーキセンサ112は、車両100のドライバによるブレーキペダルの踏込み量を検出し、この検出した結果を車載制御装置130に出力する。ウィンカスイッチ113は、車両100のドライバによるターンランプ、すなわち方向指示器の使用状態を検出し、その検出結果を車載制御装置130に出力する。また、操舵角センサ114は、車両100のドライバにより操作されるステアリングの操作角度を検出し、その検出結果を車載制御装置130に出力する。
【0038】
また、車両100には、衛星信号を受信し、この受信した衛星信号をもとに車両100の絶対位置、すなわち緯度経度を検出するGPS120が設けられている。GPS120は、車両100の移動に伴って変化する車両100の緯度経度、換言すれば、車両100が走行した各地点の緯度経度を検出し、その検出結果を示す緯度経度データを車載制御装置130に出力する。
【0039】
このように、本実施の形態の車載制御装置130には、運転操作検出手段110により検出される各種運転操作要素の操作態様を示すデータと車両100の緯度経度を示す緯度経度データとが適宜入力される。
【0040】
車載制御装置130は、運転操作検出手段110から入力される検出結果、すなわち、ドライバによる各種運転操作要素の操作態様を示すデータに基づき、エンジン、ブレーキ、ターンランプ、及びステアリング等の各種車載機器を制御するシステム制御部131を備えている。また、車載制御装置130は、運転操作検出手段110及びGPS120から入力されたデータをデータベース140に記録するデータベース化処理部132を備えている。さらに、本実施の形態の車載制御装置130は、車両100のドライバを特定する処理を行うドライバ特定処理部133を備えている。
【0041】
このうち、システム制御部131は、運転操作検出手段110から各運転操作要素の検出結果が入力されると、その検出結果に基づいて各種車載機器を制御する。これにより、例えば、ドライバによりアクセルペダルが踏み込まれたことによってアクセルセンサ111の検出結果が変化すると、この検出結果に応じてエンジンの制御量が算出され、この算出結果に応じてエンジンが制御される。
【0042】
また、データベース化処理部132は、運転操作検出手段110から各運転操作要素の検出結果が入力されると、この検出結果を示すデータにGPS120から入力された緯度経度データを関連付ける。そして、データベース化処理部132は、それら関連付けたデータを、緯度経度データによって示される地点の別にデータベース140に記録する。
【0043】
本実施の形態のドライバ特定処理部133は、運転操作検出手段110及びGPS120から各運転操作要素の検出結果及び車両100の緯度経度データが入力されると、データベース140に既に記録されている過去の各運転操作要素の操作態様を示すデータ及び該当する緯度経度データに基づいて、ドライバを特定する処理を行う。また、ドライバ特定処理部133は、ドライバの特定結果を、同特定結果に基づいて各種運転支援を行う運転支援部150に出力する。
【0044】
一方、データベース140には、ドライバによる運転操作によって各運転操作要素が運転操作される都度、各運転操作要素の操作態様を示すデータが車両100の走行した地点を示す緯度経度データとともに記録される。
【0045】
なお、本実施の形態のデータベース化処理部132は、図2に例示するように、アクセルペダル、ターンランプ、ブレーキペダル、及びステアリング等の運転操作要素の操作内容を示すデータと、各運転操作要素が操作されたときの車両100の走行地点、すなわち緯度経度を示すデータとを、交通要素の別にデータベース140に登録する。
【0046】
また、本実施の形態のデータベース化処理部132は、図1に示すように、例えば、車両100のイグニッションキーがオンとされてからオフとされるまでの間に取得される運転操作要素の操作態様を示すデータと緯度経度データとを、一つの運転履歴、すなわち、同一のドライバの運転履歴としてデータベース140に登録する。これにより、データベース140には、地点毎に行われる運転操作要素の操作態様を示すデータがドライバ毎に登録されることとなる。なお、本実施の形態のデータベース140には、例えば、運転操作要素の操作態様を示すデータに、ドライバ毎のシートポジションやドアミラーの位置などを示すデータが関連付けられて記録されている。
【0047】
運転支援部150は、ドライバ特定処理部133からドライバの特定結果が入力されると、特定されたドライバのシートポジションやドアミラーの位置などを示すデータをデータベース140から抽出する。そして、運転支援部150は、この抽出したデータにて示される位置にシートポジションやドアミラーの位置を調整する。これにより、シートポジションやドアミラーが車両100のドライバ固有の癖に応じて自動的に調整される。また、運転支援部150は、ドライバ特定処理部133からドライバの特定結果が入力されると、この特定されたドライバの運転操作要素の操作態様、換言すれば、同ドライバの運転操作パターンを識別する。そして、運転支援部150は、この識別したドライバの運転操作パターンに応じた運転支援を、音声案内や画像案内、半自動運転等を通じて実行する。この運転支援としては、例えば、特定されたドライバが、交差点やカーブなどの減速を要する地点においてアクセルペダルをオフとするタイミングが遅く、ブレーキペダルの踏込み量が過剰である傾向にあるとき、通常よりも早いタイミングでのアクセルペダルのオフやブレーキペダルのオンを促す運転支援が行われる。また、例えば、車両100の減速時にブレーキペダルの適正な踏込み量を案内する運転支援や、車両100の発進時にアクセルペダルの適正な踏込み量を案内する運転支援が行われる。逆に、特定されたドライバが車両挙動の少ない安定した運転操作や省燃費な運転を行う傾向にあると識別できたとき、運転支援部150は、同ドライバに対する運転支援を行わない。これにより、各々特定されるドライバ固有の癖や運転技量に応じた運転支援が自動的に行われることとなる。
【0048】
次に、本実施の形態の車両ドライバの特定装置及び車両ドライバの特定方法によるドライバの特定原理について図3及び図4を参照して説明する。
図3に示すように、道路上を走行する車両100が交差点SCに向かって走行しており、この車両100が交差点SCを左折しようとしていたとする。
【0049】
この際、車両100のドライバにより、例えば、車両100が交差点SCの手前の地点P1に到達するタイミングt1において、アクセルペダルをオンからオフとする操作が行われる。次いで、地点P1を通過した車両100が地点P2に到達するタイミングt2において、車両100が左折する旨を示すべく進行方向左側のターンランプがオンとされる。そして、地点P2を通過した車両100が地点P3に到達するタイミングt3において、車両100を減速すべくブレーキペダルが踏み込まれる。
【0050】
このように、交差点やカーブ等の特定の交通要素のもとでは、車両100が同交通要素に進入してから同交通要素を通過するまでの各地点で、例えば、アクセルペダル、ターンランプ、及びブレーキペダルなどの複数の運転操作要素が操作される。
【0051】
一方、ドライバ毎の運転操作要素の操作態様の一例を図4に示すように、たとえ同一の交差点SCであっても、各ドライバD1〜D3がアクセルペダル、ターンランプ、及びブレーキペダルのそれぞれの運転操作要素を操作する地点、並びに各運転操作要素の操作回数は相違するものとなっている。また例えば、ドライバD1は、アクセルペダルのオンオフ操作を複数回繰り返し行ったのちにターンランプをオンとする操作を行う傾向にある一方、ドライバD2は、アクセルペダルを一度オフとしたのちにターンランプをオンとする操作を行うなど、交差点SCのもとで行われる各種運転操作要素の組み合わせは異なるものとなっている。
【0052】
そこで、こうした特性に鑑み、図4に例示するドライバD1〜D3等の各運転操作要素の地点毎の操作態様がデータベース140に記録されており、交差点SC付近の連続する地点において或るドライバにより行われた運転操作要素の操作態様がドライバD1のものと共通もしくは類似するときには、車両100を運転しているドライバがドライバD1であると特定できる。
【0053】
また、図4に例示するように、ドライバD1〜D3の運転操作要素の操作態様は、各要素が操作される地点や操作回数等が大きく相違するものとなっている。よって、異なるドライバの地点毎の運転操作要素の操作態様が一致する蓋然性は極めて低いものとなっている。
【0054】
以下、本実施の形態の車両ドライバの特定装置及び車両ドライバの特定方法の作用を図5を参照して説明する。
図5にステップS100として示すように、特定対象とするドライバの運転操作する車両100が定期的に通過する或る交差点の手前に到達すると、この交差点における地点毎の運転操作要素の操作態様のデータベース化が完了しているか否かが判断される(ステップS101)。なお、例えば、車両100を運転する各ドライバによる運転操作要素の操作態様を示すデータがデータベース140に所定数以上記録されているとき、データベース化が完了している旨判断される。
【0055】
そして、データベース化が完了していないときには(ステップS101:NO)、車両100のドライバによるアクセルペダルをオフとする操作、ターンランプをオンとする操作、及びブレーキペダルをオンとする操作がそれぞれ検出される(ステップS102)。
【0056】
そして、この検出結果が各々の検出位置を示す緯度経度データに関連付けされてデータベース140に記録される(ステップS103)。なお、ここでの例では、例えば緯度経度データとして交差点から手前の距離を示すデータが関連付けられる。
【0057】
次いで、ステップS104において、アクセルペダル、ターンランプ、及びブレーキペダルの各要素が操作された地点と共通もしくは類似する地点のデータがデータベース140に存在するか否かが判断される。そして、共通もしくは類似する地点のデータがデータベース140に存在しないときには(ステップS104:NO)、そのとき車両100を運転しているドライバの同地点における運転履歴が未登録であるとして、当該交差点における同ドライバの運転履歴がデータベース140に新たに登録される。
【0058】
一方、共通もしくは類似する地点のデータがデータベース140に存在するときには(ステップS104:YES)、当該ドライバの運転履歴として、ステップS102で検出された運転操作要素の操作態様を示すデータがデータベース140に新たに追加されることにより、当該ドライバの運転履歴が更新される(ステップS106)。
【0059】
また、先のステップS101において、交差点における運転操作要素の操作態様のデータベース化が完了している旨判断されたときには(ステップS101:YES)、まず、アクセルペダルのオンからオフへの変化が検出される(ステップS107)。そして、アクセルペダルがオフとされた地点がデータベース140に記録済みの地点と共通もしくは類似するとき、車両100を運転操作しているドライバがデータベース140に記録済みのドライバであると特定される(ステップS108、S109)。
【0060】
一方、アクセルペダルの操作態様に基づきドライバを特定できないときには(ステップS109:NO)、例えば、ターンランプがオンとされた地点が共通もしくは類似する旨を示すデータがデータベース140に存在するか否かに基づいてドライバの特定が行われる(ステップS110、S111)。
【0061】
そして、ターンランプの操作態様に基づきドライバを特定できないときには(ステップS112:NO)、例えば、ブレーキペダルがオンとされた地点が共通もしくは類似する旨を示すデータがデータベース140に存在するか否かに基づいてドライバの特定が行われる(ステップS113〜S115)。
【0062】
そして、当該交差点においてアクセルペダル、ターンランプ、及びブレーキペダルのいずれの運転操作要素の操作態様によってもドライバを特定できないときは(ステップS115:NO)、異なるエリアに存在する交差点やカーブ等のもとで行われた運転操作要素の操作態様に基づいてドライバが特定されることとなる(ステップS116)。
【0063】
こうして、ドライバが特定されると、例えば、データベース140に登録された運転操作要素の操作態様を示すデータに関連付けられているシートポジションやドアミラーの位置などを示すデータに基づいてシートポジションやドアミラーの位置調整が行われる。また、例えば、特定されたドライバ固有の走行パターンに応じた運転支援が行われる(ステップS117)。なお、ドライバを特定できなかったときには、例えば標準のドライバ向けの運転支援が行われる。
【0064】
以上説明したように、本実施の形態にかかる車両ドライバの特定装置及び車両ドライバの特定方法によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)ドライバによる運転操作の特徴量を示すデータを、当該運転操作の行われた地点の別にデータベース140に記録した。そして、特定対象とするドライバの該当する地点における運転操作の特徴量とデータベース140にデータとして記録された地点別の運転操作の特徴量との比較を通じてドライバを特定した。これにより、ドライバを特定するための認証コードの入力やIDカードやIDキーによる認証をドライバに要求せずとも、ドライバが車両の運転操作を行う過程で、同ドライバの運転操作の特徴量に基づいて同ドライバを特定することが可能となる。また、これにより、地点毎に行われる運転操作の特徴量といったドライバ毎に固有の要素に基づき、ドライバを特定することが可能となり、ドライバの特定にかかる利便性が向上されるようになる。さらに、これにより、道路上を走行する際に継続的に行われる一連の車両操作を混合させることなく各地点毎に記録することが可能となり、地点毎に行われる運転操作の特徴量といったドライバ毎に固有の要素に基づいてドライバを特定することが可能となる。よって、ドライバの特定をより高精度に行うことができるようになる。
【0065】
(2)運転操作の特徴量として、特定の交通要素のもとで行われる複数種の運転操作要素の操作態様を選定した。また、上記地点として、特定の交通要素のもとで行われる複数種の運転操作要素による一連の運転操作が行われる連続した地点を選定した。このため、特定の交通要素のもとで行われる一連の運転操作のパターンに基づいてドライバを特定することが可能となり、ドライバの特定精度の一層の向上が図られるようになる。
【0066】
(3)運転操作要素として、アクセルペダル、ターンランプ、及びブレーキペダルの少なくとも2つの要素を選定した。このため、一連の地点のもとで行われるアクセルペダル、ターンランプ、及びブレーキペダルといった通常の運転操作において操作されやすくドライバ固有の癖が反映されやすい要素に基づいてドライバを特定することが可能となる。これにより、ドライバの特定をより多くの地点における運転操作の特徴量に基づき行うことが可能になるとともに、その特定精度の一層の向上が図れるようになる。
【0067】
(4)ドライバを特定するとともに、特定したドライバの運転操作パターンに応じた運転支援を実行した。このため、ドライバが車両100を運転する過程で同ドライバを特定しつつ、この特定したドライバの運転操作パターンに応じた運転支援を実行することが可能となる。これにより、ドライバに対して同ドライバを特定するための各種操作を要求せずとも、ドライバの嗜好に応じた運転支援を行うことが可能となる。
【0068】
(第2の実施の形態)
次に、本発明にかかる車両ドライバの特定装置及び車両ドライバの特定方法の第2の実施の形態を、第1の実施の形態との相違点を中心に、図6〜図10を参照して説明する。なお、本実施の形態にかかる車両ドライバの特定装置及び車両ドライバも、その基本的な構成は第1の実施の形態と同等であり、本実施の形態においても第1の実施の形態と実質的に同一の要素にはそれぞれ同一の符号を付して示し、重複する説明は割愛する。
【0069】
図6に示すように、本実施の形態の車両100は、道路線形、交差点形状、及び道路勾配がそれらの緯度を示す緯度経度データとともに予め登録された地図データ160を保有している。
【0070】
また、本実施の形態のドライバ特定処理部133Aは、ドライバの特定に際して、車両100が走行中の地点と走行環境の類似する地点における運転操作要素の操作態様を示すデータをデータベース140から抽出する類似データ抽出部134を備えている。
【0071】
類似データ抽出部134は、例えば、特定対象とするドライバが運転する車両100の走行した地点と一致する緯度経度のもとで取得されたデータがデータベース140に存在しないとき、同地点の緯度経度をもとに地図データ160を参照し、同地点の道路線形、交差点形状、及び道路勾配を識別する。また、類似データ抽出部134は、それら識別した道路線形、交差点形状、及び道路勾配を識別した地点と、道路線形、交差点形状、及び道路勾配の少なくとも1つが類似する地点をデータベース140に登録されている地点の中から特定する。そして、類似データ抽出部134は、この特定した地点における運転操作要素の操作態様を示すデータを抽出し、ドライバ特定処理部133Aに出力する。
【0072】
ドライバ特定処理部133Aは、類似データ抽出部134によりデータベース140から抽出されたデータの中から、車両100のドライバの運転操作要素の操作態様が類似するデータを特定する。ドライバ特定処理部133Aは、この特定したデータが、車両100を運転中のドライバの運転操作に基づき取得されたデータであると特定する。
【0073】
また、データベース化処理部132は、データベース140に未登録の地点でドライバにより行われた運転操作要素の操作態様を示すデータをデータベース140に新規登録する。
【0074】
次に、本実施の形態の車両ドライバの特定装置及び車両ドライバの特定方法によるドライバの特定原理について図7〜図9を参照して説明する。
図7(a)に示すように、道路上を走行する車両100が交差点SC1に向かって走行しており、この車両100が交差点SC1を左折しようとしていたとする。
【0075】
この際、図7(b)に示すように、車両100のドライバにより、例えば、車両100が交差点SCの手前の地点Paに到達するタイミングtaにおいて、アクセルペダルをオンからオフとする操作が行われる。次いで、地点Paを通過した車両100が地点Pbに到達するタイミングtbにおいて、車両100が左折する旨を示すべく進行方向左側のターンランプがオンとされる。そして、地点Pbを通過した車両100が地点Pcに到達するタイミングtcにおいて、車両100を減速すべくブレーキペダルが踏み込まれる。
【0076】
また、図7(c)に示すように、同一のドライバにより操作される車両100が交差点SC1に道路幅や交差点形状、車線数などが類似する交差点SC2に向かって走行しており、この車両100が交差点SC2を左折しようとしていたとする。
【0077】
この際にも、図7(d)に示すように、例えば、車両100が地点Pd、Pe、Pfに到達する各タイミングtd、te、tfにおいて、アクセルペダルのオフ、ターンランプのオン、ブレーキペダルのオンといった操作が順次行われる。
【0078】
そしてこのとき、交差点SC1に類似する交差点SC2の手前でアクセルペダルのオフ、ターンランプのオン、ブレーキペダルの各操作が行われる各地点Pd、Pe、Pfから交差点SC2までの距離はそれぞれ、交差点SC1から各地点Pa、Pb、Pcまでの距離に近似するものとなっている。
【0079】
すなわち、同一のドライバはたとえ車両100の走行する地点が相違したとしてもその走行環境が類似するときには共通もしくは類似する運転操作を行う傾向にあり、運転操作要素が操作される地点、タイミングは近似する傾向にある。
【0080】
よって、図8に例示するように、同一のドライバにより交差点SC1の手前で行われるアクセルペダル、ターンランプ、及びブレーキペダルの操作態様と、同交差点SC1に類似する交差点SC2の手前で行われるアクセルペダル、ターンランプ、及びブレーキペダルの操作態様とは、類似するものとなっている。
【0081】
これに対し、図9に例示するように、交差点SC1に類似する交差点SC2においてドライバD1〜D3がアクセルペダル、ターンランプ、及びブレーキペダルのそれぞれの運転操作要素を操作する地点、並びに各運転操作要素の操作回数は相違するものとなっている。すなわち、走行環境が類似する地点のもとで行われる運転操作は、ドライバが同一であるときには類似するもののドライバが相違するときには非類似となる。よって、本実施の形態では、こうした運転操作の特性に鑑み、共通の地点で取得された運転操作要素の操作態様を示すデータがデータベース140に存在しないときには、走行環境の類似する地点のもとで取得されたデータに基づいてドライバの特定が行われる。
【0082】
以下、本実施の形態の車両ドライバの特定装置及び車両ドライバの特定方法の作用を図10を参照して説明する。
図10にステップS200として示すように、ドライバを特定するために必要なデータが取得されていない経路を車両100が走行しており、この経路における運転履歴がデータベース140に未登録であったとする。
【0083】
次いで、車両100が走行中の地点と走行環境の類似する地点におけるデータがデータベース140に存在するか否かが判断される(ステップS201)。そして、走行環境の類似する地点におけるデータがデータベース140に存在するとき(ステップS201:YES)、このデータベース140に存在するデータにて示される操作態様と車両100のドライバにより行われた操作態様とが比較される(ステップS202)。ここでは、例えば、交差点の手前から所定の距離に存在する各地点で行われた運転操作要素の操作態様が共通もしくは類似するか否かが比較される。
【0084】
そして、この比較を通じて、車両100のドライバによる運転操作要素の操作態様に共通もしくは類似する操作態様を示すデータがデータベース140に存在するときには、同データの取得源が同ドライバであると特定される(ステップS203)。
【0085】
次いで、この特定されたドライバの走行パターンがデータベース140に登録されている運転履歴をもとに識別され、この識別された走行パターンをもとに運転支援が行われる(ステップS204、S205)。ここでは、例えば、車両100が交差点等の減速地点から所定距離手前の地点に到達すると、運転支援として、アクセルペダルのオフやブレーキペダルのオンなどをドライバに促す音声案内や画像案内が行われる。なお、所定距離としては、例えば、省燃費を実現するための十分な距離が設定されている。また、こうした所定距離は、特定されるドライバ固有の走行パターンに応じて動的に変更される。そして、例えば、ドライバが減速を開始するタイミングが遅く、急ブレーキを行う傾向にあるときには、標準的な減速開始地点よりも余裕を持った距離が設定されることとなる。
【0086】
以上説明したように、本実施の形態にかかる車両ドライバの特定装置及び車両ドライバの特定方法によれば、前記(1)〜(4)の効果が得られるとともに、さらに以下の効果が得られるようになる。
【0087】
(5)ドライバの特定に際し、該当する地点におけるドライバの運転操作の特徴量を示すデータがデータベース140に存在しないとき、当該地点と走行環境の類似する地点における運転操作の特徴量を示すデータを用いて特定対象とするドライバを特定することとした。このため、特定に用いる地点における運転操作の特徴量を示すデータがデータベースに存在しないときでも、同地点と走行環境が類似する地点のもとで行われた運転操作の特徴量を示すデータさえデータベース140に存在すれば、ドライバを特定することが可能となる。これにより、ドライバの特定に際して同ドライバの各地点における運転履歴を用いることとしながらも、特定に用いるデータの選定範囲が拡大されるようになり、ひいては、ドライバの特定にかかる自由度が向上されるようになる。
【0088】
(6)該当する地点におけるドライバの運転操作の特徴量を示すデータがデータベース140に存在しないとき、特定対象とするドライバの特定に併せて、当該ドライバによる運転操作の特徴量を示すデータをデータベース140に新規登録することとした。このため、同データがデータベース140に新規登録されて以降は、新規登録されたデータに基づいてドライバを特定することが可能となる。これにより、走行環境の類似する地点で取得されたデータに基づくドライバの特定と新規地点で行われた運転操作の学習とが並行して行われることとなり、新規地点で運転操作を行ったドライバを特定可能しつつ、データベース140に登録されるデータの拡充が漸次図られるようになる。
【0089】
(7)走行環境の類似する地点として、道路線形、道路勾配、及び交差点形状の少なくとも1つが類似する地点を選択した。これにより、異なるエリアにも多数存在し、ドライバ固有の癖が反映される地点で取得されたデータに基づきドライバを特定することが可能となり、走行環境の類似する地点で取得されたデータを用いたドライバの特定をより高精度に実現することが可能となる。
【0090】
(他の実施の形態)
なお、上記各実施の形態は、以下のような形態をもって実施することもできる。
・上記第2の実施の形態では、走行環境の類似する地点として、道路線形、道路勾配、及び交差点形状の少なくとも1つが類似する地点を選択した。これに限らず、道路線形、道路勾配、及び交差点形状の全てが類似する地点を走行環境が類似する地点として選択するようにしてもよい。また併せて、道路線形、道路勾配、及び交差点形状の少なくとも1つが類似し、かつ、運転操作の特徴量を示すデータが取得されたときの路面状態、時間帯や車両100周辺の天候が車両100の走行時における路面状態、時間帯や天候と類似しているとき、それら各要素が類似する地点を走行環境の類似する地点として選択するようにしてもよい。また、走行環境の類似する地点として、車両100の走行時における路面状態、時間帯、及び天候の少なくとも1つが類似する地点を選択するようにしてもよい。この他、走行環境の類似する地点とは、同地点におけるドライバに固有の運転操作のパターンが反映されるものであればよく、適宜選択することが可能である。
【0091】
・上記第2の実施の形態では、該当する地点におけるドライバの運転操作の特徴量を示すデータがデータベース140に存在しないとき、特定対象とするドライバの特定に併せて、当該ドライバによる運転操作の特徴量を示すデータをデータベース140に新規登録することとした。これに限らず、走行環境の類似する地点における運転操作の特徴量を示すデータがデータベース140に存在するときには、当該ドライバによる運転操作の特徴量を示すデータの新規登録を行わないこととしてもよい。この場合には、データベース140に登録されるデータ量を必要最小限としつつ、データベース140に登録されたデータと同データの取得された地点と走行環境の類似する地点で実際に行われた運転操作の特徴量とに基づいて、ドライバを特定することが可能となる。
【0092】
・上記第1の実施の形態では、ドライバを特定できなかったとき、標準のドライバ向けの運転支援を行うこととした。これに限らず、ドライバを特定できなかったときには、第2の実施の形態と同様に、運転支援を行わないようにしてもよい。また、上記第2の実施の形態において、ドライバを特定できなかったときには、標準のドライバ向けの運転支援を行うようにしてもよい。
【0093】
・上記各実施の形態では、ドライバを特定するとともに、特定したドライバの運転操作パターンに応じた運転支援を実行した。これに限らず、例えば、車両100に搭載される車載情報端末等で利用可能なアプリケーションやコンテンツデータが課金制であるとき、課金したドライバ、すなわち正当な利用権限を有するドライバを、同ドライバの運転操作の特徴量に基づいて特定するようにしてもよい。この場合には、ドライバが車両100の利用中にアプリケーションやコンテンツデータに課金したとき、同ドライバがアプリケーションやコンテンツデータに課金した旨を示すデータが、同ドライバの運転操作の特徴量を示すデータに関連付けられてデータベース140に登録される。そして、ドライバの運転操作の特徴量に基づき同ドライバが特定されると、同ドライバがアプリケーションやコンテンツデータの利用権限を有するか否かが併せて特定されることとなる。またこの他、例えば、データベース化が完了したデータベース140に記録済みのデータに基づいてドライバを特定するときができないときには、この特定できないドライバが車両100の不正利用者であると特定するようにしてもよい。そして、正規のドライバに車両100が不正利用されている旨を報知したり、不正利用者であると特定されたドライバに対して警告を促すようにしてもよい。またこの他、例えば、ドライバの自宅等の拠点やドライバの利用頻度の高い訪問地点に関するデータをドライバの運転操作の特徴量を示すデータに関連付けて、それら各データをデータベース140に登録するようにしてもよい。この場合には、運転操作の特徴量に基づきドライバが特定されると、同特定されたドライバの特徴量を示すデータに関連付けられている拠点や利用頻度の高い訪問地点が特定される。そして、例えば、この特定された拠点や訪問地点が経路案内に際しての目的地の候補として提示されることとなる。このため、ドライバが車両100を運転操作する過程で同ドライバの拠点や利用頻度の高い訪問地点が自動的に特定され、それら特定された拠点や訪問地点をドライバ毎に提示することが可能となる。これにより、拠点や訪問地点が異なる複数のドライバが車両100を利用するようなときにも、ドライバ毎に拠点や訪問地点を提示したり、それら拠点や訪問地点までの経路案内を行ったりすることが可能となる。
【0094】
・上記各実施の形態では、運転操作要素として、アクセルペダル、ターンランプ、及びブレーキペダルの少なくとも2つの要素を選定した。これに限らず、運転操作要素としては、アクセルペダル、ターンランプ、及びブレーキペダルのうち一つの要素であってもよい。またこの他、ドライバの特定に用いられる運転操作要素としては、道路上の各地点の特性に応じて操作される要素であればよく、例えば、ステアリング、エンジンブレーキ、手動変速機等の少なくとも1つであってもよい。
【0095】
・運転操作の特徴量として、特定の交通要素のもとで行われる複数種の運転操作要素の操作態様を選定した。これに限らず、運転操作の特徴量としては、例えば、特定の交通要素のもとで行われるアクセルペダルのみの操作態様といったように、一種の運転操作要素の操作態様を選定するようにしてもよい。また、ドライバの特定に用いられる地点とは、同地点の特性に応じて運転操作要素の操作量や操作タイミングなどの運転操作の特徴量が変化する地点であればよく、交差点やカーブ等の特定の交通要素が存在しない地点であってもよい。
【0096】
・上記各実施の形態では、上記地点として、複数種の運転操作要素による一連の運転操作が行われる連続した地点を選定した。これに限らず、上記地点としては、複数種の運転操作要素による一連の運転操作が行われる連続した地点のうちの一つの地点であってもよい。この場合には、例えば、図3に示した例では、交差点SCの手前の連続した地点P1〜P3のうち、地点P1で行われた運転操作のみや地点P2で行われた運転操作のみに基づいてドライバが特定されることとなる。
【0097】
・上記各実施の形態では、データベース化処理部132、ドライバ特定処理部133、及びデータベース140を車両100に搭載した。これに限らず、データベース化処理部132、ドライバ特定処理部133、及びデータベース140を、ドライバの運転操作の特徴量を示すデータが集約される管理センターに設ける構成としてもよい。この構成では、この管理センターと車両100との間での通信を通じて、車両100のドライバによる運転操作の特徴量と運転操作の行われた地点とを示すデータが車両100から管理センターに送信される。そして、管理センターでは、車両100から送信されたデータとデータベース140に登録されているデータとに基づいて、車両100のドライバが特定される。これにより、車載制御装置130の構成の簡略化が図られるようになる。また、これにより、ドライバの特定に必要なデータを管理センターで一括管理することが可能になるとともに、ドライバの特定に必要な処理を管理センターで一括して行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0098】
100…車両、110…運転操作検出手段、111…アクセルセンサ、112…ブレーキセンサ、113…ウィンカスイッチ、114…操舵角センサ、120…GPS、130…車載制御装置、131…システム制御部、132…データベース化処理部、133…ドライバ特定処理部、133A…ドライバ特定処理部、134…類似データ抽出部、140…データベース、150…運転支援部、160…地図データ、SC、SC1…交差点、SC2…SC1に走行環境が類似する交差点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を運転操作するドライバの運転操作態様に基づいてドライバの特定を行う車両ドライバの特定装置であって、
ドライバによる運転操作の特徴量を示すデータが当該運転操作の行われた地点の別に記録されるデータベースと、特定対象とするドライバの該当する地点における運転操作の特徴量と前記データベースにデータとして記録された地点別の運転操作の特徴量との比較を通じてドライバを特定する処理を行うドライバ特定処理部と、を備える
ことを特徴とする車両ドライバの特定装置。
【請求項2】
前記ドライバ特定処理部は、ドライバの特定に際し、該当する地点におけるドライバの運転操作の特徴量を示すデータが前記データベースに存在しないとき、当該地点と走行環境の類似する地点における運転操作の特徴量を示すデータを用いて前記特定対象とするドライバを特定する
請求項1に記載の車両ドライバの特定装置。
【請求項3】
前記ドライバ特定処理部は、該当する地点におけるドライバの運転操作の特徴量を示すデータが前記データベースに存在しないとき、前記特定対象とするドライバの特定に併せて、当該ドライバによる運転操作の特徴量を示すデータを前記データベースに新規登録する
請求項2に記載の車両ドライバの特定装置。
【請求項4】
前記走行環境の類似する地点とは、道路線形、道路勾配、及び交差点形状の少なくとも1つが類似する地点である
請求項2または3に記載の車両ドライバの特定装置。
【請求項5】
前記運転操作の特徴量が、特定の交通要素のもとで行われる複数種の運転操作要素の操作態様であり、
前記地点が、特定の交通要素のもとで行われる複数種の運転操作要素による一連の運転操作が行われる連続した地点である
請求項1〜4のいずれか一項に記載の車両ドライバの特定装置。
【請求項6】
前記運転操作要素が、アクセルペダル、ターンランプ、及びブレーキペダルの少なくとも2つの要素からなる
請求項5に記載の車両ドライバの特定装置。
【請求項7】
車両を運転操作するドライバの運転操作態様に基づいてドライバの特定を行う車両ドライバの特定方法であって、
ドライバによる運転操作の特徴量を示すデータを当該運転操作の行われた地点の別にデータベースに記録するステップと、
特定対象とするドライバの該当する地点における運転操作の特徴量と前記データベースにデータとして記録された地点別の運転操作の特徴量との比較を通じてドライバを特定するステップと、を含む
ことを特徴とする車両ドライバの特定方法。
【請求項8】
前記特定するステップにおいて、該当する地点におけるドライバの運転操作態様を示すデータが前記データベースに存在しないとき、当該地点と走行環境の類似する地点における運転操作の特徴量を示すデータを用いて前記特定対象とするドライバを特定する
請求項7に記載の車両ドライバの特定方法。
【請求項9】
前記特定するステップにおいて、該当する地点におけるドライバの運転操作の特徴量を示すデータが前記データベースに存在しないとき、前記特定対象とするドライバの特定に併せて、当該ドライバによる運転操作の特徴量を示すデータを前記データベースに新規登録する
請求項8に記載の車両ドライバの特定方法。
【請求項10】
前記走行環境の類似する地点として、道路線形、道路勾配、及び交差点形状の少なくとも1つが類似する地点を選択する
請求項9に記載の車両ドライバの特定方法。
【請求項11】
前記運転操作の特徴量として、特定の交通要素のもとで行われる複数種の運転操作要素の操作態様を求め、
前記地点として、特定の交通要素のもとで行われる複数種の運転操作要素による一連の運転操作が行われた連続した地点を選定する
請求項7〜10のいずれか一項に記載の車両ドライバの特定方法。
【請求項12】
前記運転操作要素として、アクセルペダル、ターンランプ、及びブレーキペダルの少なくとも2つの要素を選定する
請求項11に記載の車両ドライバの特定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−95291(P2013−95291A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240346(P2011−240346)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】