説明

車両フロア構造

【課題】入力荷重をフロア部へ効率良く伝達させることができる車両フロア構造を得る。
【解決手段】フロア部14の車両幅方向の中央部に車両前後方向に沿って設けられたトンネル部58及びフロア部14の車両幅方向の両端部に車両前後方向に沿って設けられたロッカー部60、62以外に、ロッカー部60とトンネル部58との間に骨格体68を設け、ロッカー部62とトンネル部58との間に骨格体74を設けることで、荷重伝達経路が増え、当該フロントサスメンモジュール28又はリヤサスメンモジュール38からフロア部14へ効率良く衝撃荷重を伝達することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両フロア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1では、車両フロアが樹脂強化材で形成されている。そして、フロア部において、閉断面構造の側部縦骨格部における車両幅方向外側の壁部にエネルギー吸収部が設けられると共に、側部縦骨格部が複数の横骨格部を介して中央縦骨格部に連結されている。これにより、車両幅方向内向きへ入力された荷重が車体前後方向に分散されると共に中央縦骨格部に伝達される技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−155700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、入力荷重を車両前後方向へ伝達するには、さらなる改善の余地がある。
本発明は、入力荷重をフロア部へ効率良く伝達させることができる車両フロア構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明に係る車両フロア構造は、フロア部の車両幅方向中央部に位置して車両前後方向に沿って延在された中央骨格部と、前記フロア部の車両幅方向両端部に位置して前記中央骨格部と平行に形成され、車両前後方向に沿って延在された一対の側端骨格部と、前記一対の側端骨格部間に設けられ、前記フロア部の前端部から後端部に亘って架け渡された縦骨格体と、を有する。
【0006】
請求項1記載の発明に係る車両フロア構造では、フロア部の車両幅方向中央部には中央骨格部が設けられており、車両前後方向に沿って延在されている。また、フロア部の車両幅方向両端部には、中央骨格部と平行に形成された一対の側端骨格部が設けられており、車両前後方向に沿って延在されている。そして、一対の側端骨格部の間には縦骨格体が設けられており、フロア部の前端部から後端部に亘って架け渡されている。
【0007】
このように、一対の側端骨格部の間に、縦骨格体を設けることで、フロア部の剛性及び強度を向上させることができる。また、例えば、フロア部の前端部と後端部には、バンパからフロア部へ荷重を伝達するための荷重伝達部材が設けられるが、中央骨格部及び側端骨格部以外に縦骨格体を設けることで荷重伝達経路が増え、当該荷重伝達部材からフロア部へ効率良く衝撃荷重が伝達される。
【0008】
そして、この縦骨格体をフロア部の車両前後方向に沿って当該フロア部の前端部から後端部に亘って架け渡すことで、前面衝突又は後面衝突の場合に、当該縦骨格体がフロア部の前端部から後端部に亘って架け渡されていない場合と比較して、実質的に荷重が伝達されない空走区間を無くし、当該荷重伝達部材からフロア部へ効率良く衝撃荷重が伝達される。そして、当該フロア部によって衝撃エネルギーが吸収されることとなる。なお、ここでの「平行」は完全に平行であることを要するものではなく略平行であれば良い。このため、中央骨格部に対して側端骨格部が僅かに傾斜している場合も含まれる。
【0009】
請求項2記載の発明に係る車両フロア構造は、請求項1に記載の車両フロア構造において、前記フロア部の前端部に位置し車両後方へ入力荷重を伝達する前部荷重伝達部材を当該フロア部に取り付ける前側取付部と前記縦骨格体の前端部とが対向するように設けられている。
【0010】
請求項2記載の発明に係る車両フロア構造では、フロア部の車両後方へ入力荷重を伝達する前部荷重伝達部材がフロア部の前端部に設けられた前側取付部を介して取り付けられている。この前側取付部と縦骨格体の前端部とが対向するように設けられているため、前部荷重伝達部材からの入力荷重は、少なくとも当該前側取付部を介して縦骨格体へ伝達されることとなる。
【0011】
請求項3記載の発明に係る車両フロア構造は、請求項1又は2に記載の車両フロア構造において、前記フロア部の後端部に位置し車両前方へ入力荷重を伝達する後部荷重伝達部材を当該フロア部に取り付ける後側取付部と前記縦骨格体の後端部とが対向するように設けられている。
【0012】
請求項3記載の発明に係る車両フロア構造では、フロア部の車両前方へ入力荷重を伝達する後部荷重伝達部材がフロア部の後端部に設けられた後側取付部を介して取り付けられている。この後側取付部と縦骨格体の後端部とが対向するように設けられているため、後部荷重伝達部材からの入力荷重は、少なくとも当該後側取付部を介して縦骨格体へ伝達されることとなる。
【0013】
請求項4記載の発明に係る車両フロア構造は、請求項1〜3の何れか1項に記載の車両フロア構造において、前記フロア部が樹脂で形成され、前記縦骨格体が平面視でX形状を成す二本の縦骨格部を含んで構成されている。
【0014】
例えば、鋼板などの金属板をプレス成形した場合、複雑な形状は形成できない場合が生じるが、樹脂成形の場合、プレス成形よりも複雑な形状でも形成することができる。このため、請求項4記載の発明に係る車両フロア構造では、フロア部を樹脂で形成し、縦骨格体が平面視でX形状を成す二本の縦骨格部を含むようにしている。このように、縦骨格部同士が交差してX形状を成すようにすることで、縦骨格部自体の剛性及び強度を向上させることができる。また、縦骨格部はフロア部の車両前後方向に対して角度を有して形成されるため、衝撃荷重が入力された場合、荷重分散を図ることができる。
【0015】
請求項5記載の発明に係る車両フロア構造は、請求項4に記載の車両フロア構造において、前記縦骨格体の前端部の少なくとも一方が、前記フロア部の前端部に位置し車両後方へ入力荷重を伝達する前部荷重伝達部材を当該フロア部に取り付ける前側取付部と対向し、前記縦骨格体の後端部の少なくとも一方が、前記フロア部の後端部に位置し車両前方へ入力荷重を伝達する後部荷重伝達部材を当該フロア部に取り付ける後側取付部と対向するように設けられている。
【0016】
請求項5記載の発明に係る車両フロア構造では、縦骨格体の前端部の少なくとも一方が前部荷重伝達部材の前側取付部と対向しているため、前部荷重伝達部材からの入力荷重は、当該前側取付部を介して縦骨格体へ伝達されることとなる。そして、縦骨格体の後端部の少なくとも一方が、後部荷重伝達部材の後側取付部と対向しているため、後部荷重伝達部材からの入力荷重は、当該後側取付部を介して縦骨格体へ伝達されることとなる。つまり、前部荷重伝達部材及び後部荷重伝達部材からの入力荷重は、少なくとも縦骨格体へ伝達されることとなる。
【0017】
請求項6記載の発明に係る車両フロア構造は、請求項1〜5の何れか1項に記載の車両フロア構造において、前記フロア部の車両幅方向に沿って一方の側端部から他方の側端部に亘って架け渡された横骨格部を有する。
【0018】
請求項6記載の発明に係る車両フロア構造では、フロア部の車両幅方向に沿って一方の側端部から他方の側端部に亘って横骨格部が架け渡されることで、側面衝突の場合に横骨格部へ衝突荷重が入力される。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記構成としたので、請求項1に記載の車両フロア構造によれば、入力荷重をフロア部へ効率良く伝達させることができる、という優れた効果を有する。
【0020】
請求項2に記載の車両フロア構造によれば、前側取付部を介して前部荷重伝達部材から縦骨格体へ入力荷重が伝達される、という優れた効果を有する。
【0021】
請求項3に記載の車両フロア構造によれば、後側取付部を介して後部荷重伝達部材から縦骨格体へ入力荷重が伝達される、という優れた効果を有する。
【0022】
請求項4に記載の車両フロア構造によれば、縦骨格部によるエネルギー吸収量を増大させることができる、という優れた効果を有する。
【0023】
請求項5に記載の車両フロア構造によれば、前側取付部を介して前部荷重伝達部材から縦骨格体へ入力荷重が伝達され、後側取付部を介して後部荷重伝達部材から縦骨格体へ入力荷重が伝達される、という優れた効果を有する。
【0024】
請求項6記載の発明に係る車両フロア構造によれば、横骨格部に衝撃荷重が伝達されることで、車両幅方向内向きの衝撃エネルギーが吸収される、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施の形態に係る車両フロア構造が適用された樹脂フロアを示す斜視図である。
【図2】図1に示される樹脂フロアを示す分解斜視図である。
【図3】図1に示される樹脂フロアを含む車両下部を示す平面図である。
【図4】(A)は、図3の4(A)−4(A)線に沿った断面図であり、(B)は、(A)の変形例である。
【図5】本実施形態の補足(1)に係る車両フロア構造が適用された樹脂フロアを含む車両下部を示す平面図である。
【図6】本実施形態の補足(2)に係る車両フロア構造が適用された樹脂フロアを含む車両下部を示す平面図である。
【図7】本実施形態の補足(3)に係る車両フロア構造が適用された樹脂フロアを含む車両下部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態に係る車両フロア構造について、図1〜図3に基づいて説明する。なお、図中に適宜記す矢印FRは車両前後方向の前方向を、矢印UPは車両上下方向の上方向を、矢印Wは車両幅方向をそれぞれ示す。
【0027】
(車両フロア構造の構成)
図1には、本実施の形態に係る車両フロア構造が適用された樹脂フロア12が示されている。樹脂フロア12は、平面視で略矩形状を成す板状のフロア部14と、フロア部14の前端部から上向きに立設されたダッシュ部16と、フロア部14の後端部から上向きに立設されたバック部18と、を含んで構成されている。
【0028】
一方、図3には、車両フロア構造が適用された樹脂フロア12を含む車両下部の平面図が示されている。図3に示されるように、樹脂フロア12のダッシュ部16の外側には、車両前後方向に沿ってフロントエネルギー吸収部材26(以下、「フロントEA部材26」という)及びフロントサスペンションメンバモジュール28(以下、「フロントサスメンモジュール28」という)が設けられている。
【0029】
フロントサスメンモジュール28は、図示はしないが、荷重伝達部材としてのフロントサスペンションメンバと、左右一対のフロントサスペンションとを少なくとも含んで構成されており、フロントサスペンションメンバの両端側にはフロントタイヤ30、32が設けられている。また、フロントサスメンモジュール28は、例えばフロントサスペンションメンバを介してボルトなどにより車両幅方向の両側でダッシュ部16に締結固定されており(後述する一対の前側取付部34、36)、フロントEA部材26はフロントサスペンションメンバに締結固定されている。
【0030】
これにより、フロントEA部材26に前面衝突荷重(いわゆる前突荷重)が入力されると、当該フロントEA部材26は圧縮変形され、衝撃エネルギーを吸収しつつ、フロントサスメンモジュール28へ荷重が伝達される。そして、フロントサスメンモジュール28へ伝達された荷重は、ダッシュ部16を介してフロア部14へ伝達される。
【0031】
一方、樹脂フロア12のバック部18の外側には、ダッシュ部16と同様、車両前後方向に沿ってリヤサスペンションメンバモジュール38(以下、「リヤサスメンモジュール38」という)及びリヤエネルギー吸収部材40(以下、「リヤEA部材40」という)がそれぞれ設けられている。リヤサスメンモジュール38は、図示はしないが、一例として荷重伝達部材としてのリヤサスペンションメンバと、左右一対のリヤサスペンションとを少なくとも含んで構成されており、リヤサスペンションメンバの両端側にはリヤタイヤ42、44が設けられている。
【0032】
そして、リヤサスペンションメンバモジュール38は、例えばリヤサスペンションメンバを介して車両幅方向の両側でバック部18に締結固定されており(後述する一対の後側取付部46、48)、リヤEA部材40はリヤサスペンションメンバに締結固定されている。これにより、リヤEA部材40に後面衝突荷重(いわゆる後突荷重)が入力されると、当該リヤEA部材40は圧縮変形され、衝撃エネルギーを吸収しつつ、リヤサスメンモジュール38へ荷重が伝達される。そして、リヤサスメンモジュール38へ伝達された荷重は、バック部18を介してフロア部14へ伝達される。
【0033】
ここで、図2には、樹脂フロア12の分解斜視図が示されている。図2に示されるように、樹脂フロア12は、繊維強化樹脂材料で形成されたアッパパネル50及びロアパネル52が上下に重なり合って互いに接合されることで構成されている。なお、繊維強化樹脂材料として、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などの強化繊維を含有する繊維強化プラスチックが挙げられる。
【0034】
ロアパネル52は、平面視で略矩形状を成し樹脂フロア12のフロア部14の一部を構成する板状のフロア下部14Aと、フロア下部14Aの前端部から上向きに立設されダッシュ部16を構成するダッシュパネル16Aと、フロア下部14Aの後端部から上向きに立設されバック部18を構成するバックパネル18Aと、を含んで構成されている。
【0035】
ダッシュパネル16A及びバックパネル18Aは、フロア下部14Aの車両幅方向の略全域に亘る長さを有しており、ダッシュパネル16Aの車両幅方向の両端側には、フロア下部14Aの内側へ入り込む入込部33が設けられている。このため、ダッシュパネル16Aの車両幅方向の両端側では、バックパネル18Aとの離間距離がダッシュパネル16Aの車両幅方向の中央側よりも短くなっている。そして、ダッシュパネル16A、前側壁20、バックパネル18A及び後側壁22の先端部からは、フランジ56がロアパネル52の外側へ向かって略水平に張り出している。
【0036】
また、ダッシュパネル16Aの車両幅方向の両端部には、車両後方へ向かって前側壁20が延出しており、バックパネル18Aの車両幅方向の両端部には、車両前方へ向かって後側壁22が延出している。そして、前側壁20の下部と後側壁22の下部は、下壁54によって架け渡されており、当該下壁54、前側壁20及び後側壁22によって、ロアパネル52の側壁には切欠き部24が形成されている。
【0037】
一方、アッパパネル50は、平面視で略矩形状を成し樹脂フロア12のフロア部14の一部を構成するフロア上部14Bを備えている。このフロア上部14Bの前端部13はロアパネル52のダッシュパネル16Aに接触しており、フロア上部14Bの後端部15はロアパネル52のバックパネル18Aに接触している。つまり、フロア上部14Bの前端部13はダッシュパネル16Aの内面形状に合わせて形成され、フロア上部14Bの後端部15はバックパネル18Aの内面形状に合わせて形成されている。
【0038】
このフロア上部14Bの車両幅方向中央部には、断面形状が略逆U字状を成す、中央骨格部としてのトンネル部58が突設されており、車両前後方向の略全域に亘って形成されている。また、フロア部14の車両幅方向両端部には、トンネル部58と略平行に、断面形状が略逆L字状を成す側端骨格部としてのロッカー部60、62がそれぞれ突設されており、車両前後方向の略全域に亘って形成されている。
【0039】
ここで、車両右側に位置するロッカー部60とトンネル部58との間には、断面形状が略逆U字状を成す骨格部64、66が突設されている。図3に示されるように、骨格部64と骨格部66は平面視でX字状を成して一体的に形成されており(骨格体68)、骨格部64、66はフロア上部14Bの前端部13から後端部に亘って同一平面内で互いに交差した状態で架け渡されている。
【0040】
また、車両左側に位置するロッカー部62とトンネル部58との間には、断面形状が略逆U字状を成す縦骨格部としての骨格部70、72が突設されている。骨格部70と骨格部72は平面視でX字状を成して一体的に形成されており(骨格体74)、骨格部70、72はフロア上部14Bの前端部13から後端部に亘って同一平面内で互いに交差した状態で架け渡されている。
【0041】
図2に示されるように、フロア上部14Bに形成された各突設部76(トンネル部58、ロッカー部60、62及び骨格部64、66、70、72のことを指す)の高さは略同一となるように設定されており、フロア上部14Bの突設部76の上面76Aは略面一となっている。また、隣接する突設部76同士の下部を繋ぐフロア上部14Bのベース面78はフロア下部14Aに接着されており、フロア上部14Bとフロア下部14Aの間で正面断面視において矩形枠状となる閉断面構造を成している。
【0042】
また、図3に示されるように、トンネル部58及びロッカー部60、62の前端部はそれぞれダッシュパネル16Aに接触しており、トンネル部58及びロッカー部60、62の後端部はそれぞれバックパネル18Aに接触している。そして、本実施形態では、トンネル部58及びロッカー部60、62以外に、骨格部64、66、70、72の前端部64A、66A、70A、72Aが、それぞれダッシュパネル16Aに接触し、骨格部64、66、70、72の後端部64B、66B、70B、72Bが、それぞれバックパネル18Aに接触している。
【0043】
さらに、車両右側に位置する骨格体68を構成する骨格部64の前端部64Aは、フロントサスメンモジュール28の取付部(前側取付部34)と対向する位置に設けられており、骨格部64の後端部64Bは、リヤタイヤ42と対向する位置に設けられている。なお、骨格部64の後端部64Bとリヤタイヤ42とは少なくとも一部が対向していれば良い。そして、後述する骨格部66の前端部66A、骨格部70の後端部70B、骨格部72の前端部72Aについても同様である。また、骨格体68を構成する骨格部66の前端部66Aは、フロントタイヤ30と対向する位置に設けられており、骨格部66の後端部66Bは、リヤサスメンモジュール38の取付部(後側取付部46)と対向する位置に設けられている。
【0044】
一方、車両左側に位置する骨格体74を構成する骨格部70の前端部70Aは、フロントサスメンモジュール28の取付部(前側取付部36)と対向する位置に設けられている。そして、骨格部70の後端部70Bは、リヤタイヤ44と対向する位置に設けられている。また、骨格体74を構成する骨格部72の前端部72Aは、フロントタイヤ32と対向する位置に設けられており、骨格部72の後端部72Bは、リヤサスメンモジュール38のバックパネル18Aの取付部(後側取付部48)と対向する位置に設けられている。
【0045】
また、図2に示されるように、各突設部76の上面76Aの前端部からは、略矩形状の接着片80がそれぞれ起立しており、ロアパネル52のダッシュパネル16Aに接着されている。また、各突設部76の上面76Aの後端部からは、略矩形状の接着片82がそれぞれ起立しており、ロアパネル52のバックパネル18Aに接着されている。
【0046】
つまり、ここでは、図4(A)に示されるように、樹脂フロア12のダッシュパネル16A及びバックパネル18Aには閉断面構造が設けられていない。なお、図4(A)は、図3の4(A)−4(A)線に沿った断面図である。このため、当該ダッシュパネル16A及びバックパネル18Aにおいて閉断面構造を設けるべく、図4(B)に示されるように、カバー部材84を設けても良い。
【0047】
カバー部材84には、車両上下方向の両端部に上フランジ84A及び下フランジ84Bが設けられており、上フランジ84Aと下フランジ84Bとは互いに離間する方向へ向かい、かつ略平行となるように形成されている。そして、上フランジ84Aはロアパネル52のフランジ部38に面接触されており、下フランジ84Bはアッパパネル50のフロア上部14Bに面接触されている。
【0048】
また、上フランジ84Aはフランジ部38よりも車両前後方向で長くなるように形成されており、例えば、上フランジ84Aをフランジ部38に接着させ、下フランジ84Bをフロア上部14Bに接着させた状態で、ダッシュパネル16A、フロア上部14B及びカバー部材84との間には閉じた空間86が設けられる(いわゆる閉断面構造)。このようにダッシュ部16において、閉断面構造が設けられることで、当該ダッシュ部16の剛性及び強度を向上させることができる。
【0049】
そして、上フランジ84Aと下フランジ84Bを繋ぐ立壁88には、荷重伝達経路に対応して下フランジ84Bへ向かうにつれてフロア部14の車両後方へ傾斜する傾斜壁88Aが形成されている。この傾斜壁88Aは前側取付部34の車両後方に位置することとなるため、入力された前突荷重を当該傾斜壁88Aで受け易くすると共に荷重分散を図ることができる。なお、バックパネル18A側においてもダッシュパネル16A側と同様である。
【0050】
(車両フロア構造の作用・効果)
図3に示されるように、フロア部14の車両前後方向に沿って、ロッカー部60とトンネル部58との間に骨格部64、66で構成された骨格体68を設け、ロッカー部62とトンネル部58との間に骨格部70、72で構成された骨格体74を設けることで、フロア部14の剛性及び強度を向上させることができる。
【0051】
一方、フロア部14の前端部13及び後端部15には、例えば図示しないバンパからフロア部14へ荷重を伝達するためのフロントサスメンモジュール28又はリヤサスメンモジュール38がそれぞれ設けられているが、トンネル部58及びロッカー部60、62以外に骨格部70、72が設けられることで荷重伝達経路が増え、当該フロントサスメンモジュール28又はリヤサスメンモジュール38からフロア部14へ効率良く衝撃荷重を伝達することができる。
【0052】
ここで、骨格体68を構成する骨格部64の前端部64Aは、ダッシュパネル16Aに接触すると共に、フロントサスメンモジュール28のダッシュパネル16Aとの前側取付部34と対向する位置に設けられている。このため、フロントサスメンモジュール28から入力された荷重は、少なくとも当該前側取付部34を介して骨格部64へ伝達される。また、骨格部64の後端部64Bはバックパネル18Aに接触すると共に、リヤタイヤ42と対向する位置に設けられている。このため、リヤタイヤ42を介して入力された荷重は当該バックパネル18Aを介して骨格部64へ伝達される。
【0053】
また、骨格体68を構成する骨格部66の前端部66Aは、ダッシュパネル16Aに接触すると共に、フロントタイヤ30と対向する位置に設けられている。このため、フロントタイヤ30を介して入力された荷重は、ダッシュパネル16Aを介して骨格部66へ伝達される。また、骨格部66の後端部66Bはバックパネル18Aに接触すると共に、リヤサスメンモジュール38のバックパネル18Aとの後側取付部46と対向する位置に設けられている。このため、リヤサスメンモジュール38から入力された荷重は、少なくとも当該後側取付部46を介して骨格部66へ伝達される。
【0054】
さらに、骨格体68と同様、骨格体74を構成する骨格部70の前端部70Aは、ダッシュパネル16Aに接触すると共に、フロントサスメンモジュール28のダッシュパネル16Aとの前側取付部36と対向する位置に設けられている。このため、フロントサスメンモジュール28から入力された荷重は、少なくとも当該前側取付部36を介して骨格部70へ伝達される。また、骨格部70の後端部70Bはバックパネル18Aに接触すると共に、リヤタイヤ44と対向する位置に設けられている。このため、リヤタイヤ44を介して入力された荷重は当該バックパネル18Aを介して骨格部70へ伝達される。
【0055】
また、骨格体74を構成する骨格部72の前端部72Aは、ダッシュパネル16Aに接触すると共に、フロントタイヤ32と対向する位置に設けられている。このため、フロントタイヤ32を介して入力された荷重は、ダッシュパネル16Aを介して骨格部72へ伝達される。また、骨格部72の後端部72Bはバックパネル18Aに接触すると共に、リヤサスメンモジュール38のバックパネル18Aとの後側取付部48と対向する位置に設けられている。このため、リヤサスメンモジュール38から入力された荷重は、少なくとも当該後側取付部48を介して骨格部72へ伝達される。
【0056】
このように、骨格体68、74をダッシュパネル16A及びバックパネル18Aに接触させ、フロア部14の前端部13から後端部15に亘って架け渡すことで、前面衝突又は後面衝突の場合に、当該縦骨格体68、74がフロア部14の前端部13から後端部15に亘って架け渡されていない場合と比較して、実質的に荷重が伝達されない空走区間(図3において、仮に縦骨格体68、74の前端部が一点鎖線Pの位置で終わっていたとした場合の区間Sのこと)を無くし、フロントサスメンモジュール28等の荷重伝達部材からフロア部14へ効率良く衝撃荷重が伝達される。そして、当該フロア部14によって衝撃エネルギーが吸収されることとなる。
【0057】
また、このように、フロア部14の前端部13から後端部15に亘って骨格体68、74を形成してフロントサスメンモジュール28等の荷重伝達部材からフロア部14へ効率良く衝撃荷重が伝達されるようにすることで、当該荷重伝達部材とフロア部14との間にバルクなどの荷重伝達部材が不要となる。このため、その分のコスト・質量・部品点数が削減されることとなり、経済的である。
【0058】
ところで、骨格体68を構成する骨格部64、66や骨格体74を構成する骨格部70、72は、平面視でX形状を成している。例えば、鋼板などの金属板をプレス成形した場合、複雑な形状は形成できない場合が生じるが、樹脂成形の場合は、プレス成形よりも複雑な形状も形成することができる。
【0059】
そして、このように、骨格体68、74がX形状を成すことで、骨格体68、74自体の剛性及び強度を向上させることができる。また、骨格体68、74はフロア部14の車両前後方向に対して角度を有して形成されるため、衝撃荷重が入力された場合、荷重分散を図ることができる。このため、当該骨格体68、74によるエネルギー吸収量を増大させることができる。
【0060】
(本実施形態の補足)
以下、本実施形態と同じ構成には、同じ符号を付して説明を省略する。
(1)上記の実施形態では、図3に示されるように、フロア部14の車両前後方向に沿って、ロッカー部60とトンネル部58との間に骨格体68を設け、ロッカー部62とトンネル部58との間に骨格体74を設けたが、これに限るものではない。
【0061】
例えば、上記の実施形態に加え、図5に示されるように、フロア部14の車両前後方向の略中央部に位置し、センタピラー(図示省略)の根元を繋ぐように、車両幅方向に沿ってフロア部14の一方の側端部から他方の側端部に亘って架け渡される横骨格部90を設けても良い。ここで、骨格体68を構成する骨格部64と骨格部66との間には互いに交差する交差部92が設けられており、骨格体74を構成する骨格部70と骨格部72との間には互いに交差する交差部94が設けられているが、この交差部94と交差部94とが横骨格部90によって繋がれている。
【0062】
このように、横骨格部90を設けることで、側突(いわゆる側面衝突)の場合に、当該横骨格部90へ衝突荷重が入力される。そして、横骨格部90を介して、フロア部14へ効率良く入力荷重が伝達されることで、当該フロア部14によって衝撃エネルギーが吸収される。また、横骨格部90によって交差部92及び交差部94が繋がれることで、骨格体68、74が強化される。なお、ここでは、横骨格部90が車両前後方向の略中央部に設けられるようにしたが、横骨格部90は1本に限らず複数本配設されても良い。
【0063】
(2)また、上記実施形態では、図3に示されるように、骨格部64、70の前端部64A、70Aは、フロントサスメンモジュール28のダッシュパネル16Aとの前側取付部34、36と対向する位置にそれぞれ設けられている。また、骨格部64、70の後端部64B、70Bは、リヤタイヤ42、44と対向する位置にそれぞれ設けられている。そして、骨格部66、72の前端部66A、72Aは、フロントタイヤ30、32と対向する位置にそれぞれ設けられ、骨格部66、72の後端部66B、72Bは、リヤサスメンモジュール38のバックパネル18Aとの後側取付部46、48と対向する位置にそれぞれ設けられている。
【0064】
しかし、これら骨格部64、66、70、72の突設位置はこれに限るものではない。例えば、図6に示されるように、骨格部100と骨格部102とがトンネル部58を中心に線対称となるように交差しても良い。そして、骨格部100の前端部100Aが前側取付部34と対向する位置に設けられ、骨格部100の後端部100Bが後側取付部48と対向する位置に設けられるようにする。また、骨格部102の前端部102Aが前側取付部36と対向する位置に設けられ、骨格部102の後端部102Bが後側取付部46と対向する位置に設けられるようにする。
【0065】
この場合、図3に示されるように、例えば、トンネル部58とロッカー部60との隙間に二本の骨格部64、66を設ける必要がなくなるため、図6に示されるように、ロッカー部110、114の幅を広くすることができる。これにより、フロア部14の剛性及び強度を向上させることができる。さらに、骨格部100と骨格部102の交差部106を含むようにして横骨格部108を設け、当該横骨格部108以外の箇所に別途横骨格部が設けられるようにしても良い。
【0066】
(3)さらに、以上の実施形態では、例えば、図3に示されるように、フロア部14の前端部13から後端部15に亘って架け渡された骨格体68、74同士が互いに交差する構成となっているが、必ずしも当該骨格体68、74同士を交差させる必要はない。例えば、図7に示されるように、ロッカー部110とトンネル部58との間に骨格部112を設け、ロッカー部114とトンネル部58との間に骨格部116を設ける。そして、骨格部112の前端部112Aが前側取付部34と対向するように設けられ、骨格部112の後端部112Bが後側取付部46と対向する位置に設けられるようにする。そして、骨格部116の前端部116Aが前側取付部36と対向する位置に設けられ、骨格部116の後端部116Bが後側取付部48と対向する位置に設けられるようにする。
【0067】
この場合、骨格部112、116同士を互いに交差させる必要がないため、フロア上部14Bの形状を単純化させることができる。このため、当該フロア上部14Bをアルミ板などの金属で形成することができる。
【0068】
以上、本発明を実施するための一形態として一実施例を用いて説明したが、本発明はこうした一実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上述した一実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0069】
12 樹脂フロア(車両フロア構造)
14 フロア部
28 フロントサスメンモジュール(前部荷重伝達部材)
34 前側取付部
36 前側取付部
38 リヤサスメンモジュール(後部荷重伝達部材)
46 後側取付部
48 後側取付部
58 トンネル部(中央骨格部)
60 ロッカー部(側端骨格部)
62 ロッカー部(側端骨格部)
64 骨格部(縦骨格部)
66 骨格部(縦骨格部)
68 骨格体
70 骨格部(縦骨格部)
72 骨格部(縦骨格部)
74 骨格体
90 横骨格部
100 骨格部(縦骨格部)
102 骨格部(縦骨格部)
108 横骨格部
110 ロッカー部(側端骨格部)
112 骨格部(縦骨格部)
114 ロッカー部(側端骨格部)
116 骨格部(縦骨格部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロア部の車両幅方向中央部に位置して車両前後方向に沿って延在された中央骨格部と、
前記フロア部の車両幅方向両端部に位置して前記中央骨格部と平行に形成され、車両前後方向に沿って延在された一対の側端骨格部と、
前記一対の側端骨格部間に設けられ、前記フロア部の前端部から後端部に亘って架け渡された縦骨格体と、
を有する車両フロア構造。
【請求項2】
前記フロア部の前端部に位置し車両後方へ入力荷重を伝達する前部荷重伝達部材を当該フロア部に取り付ける前側取付部と前記縦骨格体の前端部とが対向するように設けられた請求項1に記載の車両フロア構造。
【請求項3】
前記フロア部の後端部に位置し車両前方へ入力荷重を伝達する後部荷重伝達部材を当該フロア部に取り付ける後側取付部と前記縦骨格体の後端部とが対向するように設けられた請求項1又は2に記載の車両フロア構造。
【請求項4】
前記フロア部が樹脂で形成され、前記縦骨格体が平面視でX形状を成す二本の縦骨格部を含んで構成された請求項1〜3の何れか1項に記載の車両フロア構造。
【請求項5】
前記縦骨格体の前端部の少なくとも一方が、前記フロア部の前端部に位置し車両後方へ入力荷重を伝達する前部荷重伝達部材を当該フロア部に取り付ける前側取付部と対向し、前記縦骨格体の後端部の少なくとも一方が、前記フロア部の後端部に位置し車両前方へ入力荷重を伝達する後部荷重伝達部材を当該フロア部に取り付ける後側取付部と対向するように設けられた請求項4に記載の車両フロア構造。
【請求項6】
前記フロア部の車両幅方向に沿って一方の側端部から他方の側端部に亘って架け渡された横骨格部を有する請求項1〜5の何れか1項に記載の車両フロア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−14217(P2013−14217A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148195(P2011−148195)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】