説明

車両ランプシステム

【課題】 ハザードランプの点滅と消灯を自動的に行うことにより運転者の負担を無くし、かつ安全走行を確保するとともに省電力化を図る。
【解決手段】 自車の前方道路情報を出力する前方監視手段1と、自車の後方道路情報を出力する後方監視手段2と、前方道路情報と後方道路情報とに基づいて自車のハザードランプTSLの点消灯を制御するランプ点消灯制御手段7を備える。ランプ点消灯制御手段7は、自車の前方の渋滞を検出したときにハザードランプTSLを点滅し、自車の後方に後続車が接近して追従走行となったときにハザードランプTSLを消灯する制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動等の車両のランプに関し、特にハザードランプを点消灯するためのランプシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車では、走行中に自車の前方に障害を発見し、あるいは前方の渋滞を確認して自車が緊急に減速ないし停車する場合に後続車に対して警告を行うためにハザードランプを点滅させることが行われる。ここでハザードランプは車両に独立して設けることも可能であるが、通常では車両の左右に設けられたターンシグナルランプを同時に点滅してハザードランプとして機能させており、本発明におけるハザードランプもこのような形態を含むものである。このようなハザードランプの点滅は運転者がハザードスイッチを手操作して行っているが、その操作時には運転者は視線を前方からハザードスイッチに向ける必要があり、その間の走行中における安全性に問題が生じる。この問題に対しては、特許文献1では車両の前方に存在する先行車までの距離を検出する前方監視センサと、自車速度を検出する車速検出手段を設け、先行車までの距離と自車速度が所定値以下になったときにハザードランプを自動的に点滅させるようにした技術が提案されている。このようにすることで、特に自車の前方に渋滞が生じたときでも運転者がハザードスイッチを手操作する必要がなく走行の安全を確保する上で有益となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−41432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術はハザードランプを自動的に点滅させることができるため、点滅させるための運転者の操作は不要になり、その間における走行の安全性は確保できる。しかし、ハザードランプを消灯させることまでは考慮されていないので、ハザードランプの消灯は運転者が自身の判断に基づいてハザードスイッチを手操作して行う必要がある。すなわち、自車のハザードランプが点滅し、後続車が自車に接近して減速ないし停止したときにもハザードランプが点滅を続けていると、後続車の乗員に煩わしさを感じさせるとともに、自車の電力の無駄な消費となる。そのため、渋滞時に自車のハザードランプが点滅しているときには、後続車のハザードランプの点滅を確認し、後続車のハザードランプが点滅を開始したときには自車のハザードランプの点滅を確認しているものと判断して自車のハザードランプを消灯させている。しかし、このためには運転者は後続車、すなわち自車の後方を監視する必要がありその間の走行時に前方の注意が散漫になり追突を引き起こす原因になる等の安全走行上の問題が生じてしまう。また、ハザードランプを消灯する適切なタイミングの判断が難しく、運転者に無用な負担を強いることにもなる。
【0005】
本発明の目的はハザードランプの点滅を自動的に行うとともに、ハザードランプの消灯も自動的に行うことにより運転者の負担を無くし、かつ安全走行を確保するとともに電力の無駄な消費を改善した車両ランプシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自車の前方道路における交通状態を監視して前方道路情報を出力する前方監視手段と、自車の後方道路における交通情報を監視して後方道路情報を出力する後方監視手段と、前方監視手段からの前方道路情報と後方監視手段からの後方道路情報とに基づいて自車のハザードランプを含むランプの点消灯を制御するランプ点消灯制御手段とを備えており、ランプ点消灯制御手段は、自車の前方の渋滞を検出したときに当該ランプを点滅し、自車の後方に後続車が接近したとき、又は後続車のハザードランプの点滅を検出したときに当該ランプを消灯する制御を行うことを特徴とする。
【0007】
例えば、前方監視手段は、自車の前方領域を撮像する前方監視カメラと、当該前方監視カメラで撮像した画像を画像解析して前方領域の渋滞を検出する前方検出部とを備え、後方監視手段は、自車の後方領域を撮像する後方監視カメラと、当該後方監視カメラで撮像した画像を解析して自車の後方に接近する他車を検出する後方検出部とを備える構成とする。
【0008】
ここで、ランプ点消灯制御手段は、前方検出部で前方の渋滞を検出したときに、自車に備えた車速センサや加減速センサで検出した自車の車速や加減速を参照してランプの点滅を開始するタイミングを制御する。また、ランプ点消灯制御手段は、後方検出部で後続車を検出したときに、当該後続車との車々間通信により得られる当該後続車の車速や加減速を参照してランプを消灯するタイミングを制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自車の前方に渋滞が存在することを検出したときには自動的にハザードランプを点滅し、自車の後方に後続車が接近して自車に追従走行を開始したときには自動的にハザードランプを消灯するので、運転者はハザードランプを点滅・消灯する操作が不要になるとともに、点滅・消灯の判断を行う必要もなくなり、運転者の負担を軽減して安全走行に有効となる。また、ハザードランプを消し忘れる等、ハザードランプの点滅がいたずらに継続されることが防止でき、後続車や隣接他車に対して煩わしさを生じさせることがなく、同時に自車の消電力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の車両ランプシステムのブロック構成図。
【図2】ハザードランプの点滅と消灯のタイミングを説明する模式図。
【図3】ハザードランプの点滅フロー図。
【図4】ハザードランプの消灯フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は本発明を自動車のハザードランプに適用した車両ランプシステムの概念構成図である。ここではハザードランプは自動車の前後左右にそれぞれ配設されているターンシグナルランプTSLを同時に点滅してハザードランプとして機能させるように構成している。前記自動車には自車の前方の状態を監視するための前方監視装置1と、自車の後方の状態を監視するための後方監視装置2と、自車の走行状態を検出するための自車走行情報検出装置3が設けられている。
【0012】
前記前方監視装置1は、自車の前方を撮像する前方監視カメラ11と、この前方監視カメラ11で撮像した画像を画像解析して自車の前方に存在する先行車や障害物を検出する前方検出部12を備えている。また、ここでは前方監視装置1として、ナビゲーション装置4も備えており、ナビゲーション装置4で取得した道路情報から自車の前方の渋滞情報を検出することも可能である。さらに、前方監視装置1として、道路に配設されているITCやVICS等との間の無線通信を行って先行車の走行情報を検出する路車間通信装置5と、先行車との間での無線通信を行って先行車の走行情報を検出する車々間通信装置6を備えている。この先行車の走行情報としては、先行車の車速や加減速、さらには自車との間の車間距離を検出することが可能である。
【0013】
前記後方監視装置2は、自車の後方を撮像する後方監視カメラ21と、この後方監視カメラ21で撮像した画像を画像解析して自車の後方に存在する後続車を検出する後方検出部22を備えている。また、前記ナビゲーション装置4、路車間通信装置5、車々間通信装置6は本発明における後方監視装置2として利用することも可能である。特に、路車間通信装置5は道路に配設されているITCやVICS等との間の無線通信を行って後続車の走行情報を検出する。また、車々間通信装置6は他車との間での無線通信を行って後続車の走行情報を検出する。この後続車の走行情報としては後続車の車速や加減速、さらには自車との間の車間距離を検出することが可能である。
【0014】
前記自車走行情報検出装置3は、自車の走行状態を検出するものであり、ここでは自車の車速を検出する車速センサSvと、自車の加減速を検出する加減速センサ(加速度センサ)Saを備えている。
【0015】
一方、自動車には前記前方監視装置1から得られる自車の前方情報と、前記後方監視装置2から得られる自車の後方情報と、前記自車走行情報検出装置から得られる自車走行情報とに基づいて前記ハザードランプTSLの点滅と消灯(以下、点消灯と称する)を制御するハザードランプ点消灯制御装置7を備えている。このハザードランプ点消灯制御装置7は前記した前方情報と後方情報と自車走行情報に基づいて所定の判定動作を行い、その判定結果に基づいてハザードランプTSLを点滅させ、あるいは点滅しているハザードランプTSLを消灯するような制御を実行するものである。
【0016】
さらに、この実施形態では運転者の手操作によってハザードランプTSLを点滅、または消灯させるためのハザードランプスイッチSW1と、ハザードランプTSLを予め設定した任意の点滅形態に設定するための点滅設定スイッチSW2を備えており、前記ハザードランプ点消灯制御装置7はこの点滅設定スイッチSW2からの設定信号に応じてそれぞれ予め設定した点滅形態でハザードランプTSLを点滅させることができるようになっている。
【0017】
以上の実施形態のランプシステムの動作を説明する。
(a)ハザードランプの自動点滅
図2のハザードランプ点滅フローを参照すると、自車の走行中に前方監視カメラ11で自車の前方を撮像し(S11)、前方検出部12において前方の渋滞を検出すると(S12)、ハザードランプ点消灯制御装置7はハザードランプTSLを点滅するタイミングを判定する(S13)。このタイミング判定ステップS13は、ここでは前方監視装置1の前方監視カメラ11で撮像した画像に基づいて前方検出部12で検出した前方の状態から前方の先行車との車間距離、すなわち自車から渋滞最後尾までの距離を演算する(S131)。同時に車速センサSvや加減速センサSaから自車の走行情報を取得する(S132)。そして、これらに基づいて自車が渋滞最後尾から後方の所定距離に到達するまでの時間を演算する(S133)。その上で、判定を開始してからの時間が所定時間以上であるか否かを判定する(S134)。時間が所定時間よりも小さいときにはステップS134を繰り返し、時間が所定時間以上になったときにハザードランプTSLを点滅させる(S14)。
【0018】
例えば、図4(a)において、自車CAR1が前方の渋滞の最後尾車CAR2を検出したときに、自車CAR1から最後尾車CAR2までの距離L1と、自車CAR1の車速・加減速から自車CAR1が最後尾車CAR2から距離L2に達するまでの時間t1を所定時間として演算し、この所定時間t1以上を経過したときにハザードランプTSLの点滅を開始する。
【0019】
この点滅判定S13に際しては、ナビゲーション装置4から得られる道路情報や渋滞情報、あるいは路車間通信装置5や車々間通信装置6から得られる先行車の走行情報を参照してもよく、これらの情報を参照することでより高い精度で判定を行うことができる。また、前方監視装置1からの情報で渋滞最後尾車CAR2までの距離を検出し、当該距離が所定距離L2以下になったときに自車CAR1のハザードランプTSLを点滅させるようにしてもよい。さらには、前方を撮像した映像から前方検出部12において最後尾車CAR2のハザードランプが点滅していることを確認したときに自車CAR1のハザードランプTSLを点滅する判定を行うようにしてもよい。
【0020】
したがって、自車の前方に渋滞が生じている場合でも、前方監視装置1で監視した自車の前方の状況に基づいてハザードランプ点消灯制御装置7が自動的に自車のハザードランプTSLを点滅するので、運転者はハザードスイッチSW1を操作する必要はなく、また当然にハザードランプTSLを点滅させるための判断を行わなくても自車のハザードランプTSLが自動的に点滅し、後続車に渋滞を報知することが可能になる。自車のハザードランプTSLの点滅は当然のことながら先行車に対して自車が渋滞を認識していることを報知することになる。このように、運転者が前方の渋滞を確認したときには前方を注意しながら減速走行して行けば、渋滞から所定の距離に達した時点で、あるいは先行車のハザードランプが点滅を開始したことを確認した時点で自動的にハザードランプが点滅することになるので、運転者の前方確認が疎かになることはなく自車の減速が完了し、あるいは停止するまでの間の安全走行が確保できる。
【0021】
(b)ハザードランプの自動消灯
図3のフローを参照すると、自車のハザードランプTSLの点滅を確認し(S21)、点滅しているときに後方監視カメラ21で自車の後方を撮像し(S22)、後方検出部22において後続車を検出すると(S23)、ハザードランプ点消灯制御装置7はハザードランプTSLを消灯するタイミングを判定する(S24)。このタイミングの判定ステップS24では、後方監視装置2の後方監視カメラ21で撮像した画像に基づいて後方検出部22で検出した後方の状態から後続車までの距離を演算する(S241)。同時に路車間通信装置5や車々間通信装置6から後続車の走行情報(車速,加減速)を検出し(S242)、これらから後続車が自車の後方の所定距離位置に達するまでの時間を演算(S243)する。そして、判定開始から当該時間以上になったか否かを判定する(S244)。所定時間以上になるまでは自車のハザードランプTSLの点滅を継続するが、所定時間以上になっていなくても、後方監視カメラ21で撮像した後続車の映像から後続車のハザードランプが点滅しているか否かを判定し(S245)、後続車のハザードランプの点滅が開始されているときには、後続車は自車のハザードランプTSLの点滅を確認しているものとして自車のハザードランプを消灯する(S25)。後続車のハザードランプが点滅していなくても、所定時間以上になったときには後続車が自車に追従走行している状態になったものとしてハザードランプTSLを消灯する(S25)。
【0022】
例えば、図4(b)において、自車CAR1が渋滞の最後尾車となっており、後方に後続車CAR3を検出したときに、自車CAR1から後続車CAR3までの距離L3と、後続車CAR3の車速・加減速から後続車CAR3が自車CAR1の後方の距離L4に達するまでの時間t2を所定時間として演算し、この所定時間t2以上を経過したときにハザードランプTSLを消灯する。所定時間t2を経過する前でも後続車CAR3のハザードランプの点滅を確認したときには自車のハザードランプTSLを消灯する。このとき、後続車CAR3のハザードランプの点滅を確認したときには、後続車CAR3が自車CAR1の後方の所定距離L4の位置に達したか否かを判定し、さらにはこれに加えて後続車CAR3の車速が自車の車速にほぼ等しく、あるいは自車の車速以下になったことを判定して自車CAR1のハザードランプTSLを消灯するようにしてもよい。
【0023】
したがって、後続車が自車のハザードランプの点滅を認識していることが自車において確認できたとき、あるいは後続車が自車の後方に接近して自車に追従する走行状態となって追突の恐れが無くなったときには、運転者がハザードスイッチSW1を操作しなくてもハザードランプTSLが自動的に消灯されることになる。そのため、運転者が後続車を確認しながら自車のハザードランプTSLを消灯するタイミングを判断してハザードランプを消灯する作業がなくなり、運転者の負担が軽減されるとともに運転者は自車の前方に注意を集中することができ、自車が先行者に追突する等の事故を未然に防止することができる。また、後続車の追突の恐れが無くなった状態においてもハザードランプTSLが継続して点滅するようなことが無くなるので、後続車や隣接車が自車のハザードランプの点滅で煩わしさを感じることが無くなるとともに、自車のバッテリの省電力化にも有効となる。
【0024】
なお、図2に示したハザードランプの点滅フローにおいて、ステップS12において前方の渋滞を検出しているが、図3のフローのように後方の後続車が接近してくることを検出する前にステップS12において前方の渋滞が解消されたことを検出したような場合には、ステップS12から図2の破線のようにハザードランプ消灯ステップS15に移行するフローに変更し、ハザードランプTSLを消灯するようにしてもよい。これによりハザードランプの点滅を必要最小限に制御し、自車のバッテリの省電力化に有効となる。
【0025】
(c)ハザードランプの強制点滅
運転者がハザードスイッチSW1をオン操作すると、ハザードランプ点消灯制御装置7は強制的にハザードランプTSLを点滅する。このとき、運転者が点滅設定スイッチSW2を操作することで次のように設定した点滅形態での点滅が可能になる。
【0026】
(c1)強制点滅
運転者が点滅設定スイッチSW2を「強制点滅」に設定していると、運転者がハザードスイッチSW1をオンしたときにはハザードランプ点消灯制御装置7は前方監視装置1、後方監視装置2、路車間通信装置5、車々間通信装置6等からの情報にかかわらずハザードランプTSLを強制的に点滅させる。これは、運転者がハザードスイッチSW1をオフするまで継続される。
【0027】
(c2)半自動点滅
運転者が点滅設定スイッチSW2を「半自動点滅」に設定していると、運転者がハザードスイッチSW1をオンしたときにはハザードランプ点消灯制御装置7は直ちにハザードランプTSLを点滅させる。しかし、その後は前記(b)のハザードランプの自動消灯フローが開始され、ハザードランプ点消灯制御装置7は自車の後方を監視し、自車の後方の所定距離位置にまで後続車が接近し、その状態が所定時間継続したときには自動的に自車のハザードランプTSLを消灯する。運転初心者にとってハザードランプTSLを消灯するタイミングの判断は難しく、またハザードランプTSLの消灯忘れが生じることが多いため、消灯を自動的に行うことで後続車等に対する煩わしさを軽減し、かつ自車のバッテリの省電力化に有効となる。
【0028】
(c3)緊急時点滅
例えば、自車において異常が生じて正常な走行が不可能になったとき、あるいは乗員の体調に異常が発生する等、走行する他車に対して自車が緊急状態にあることを報知したいような場合に点滅設定スイッチSW2を「緊急」に設定した上でハザードスイッチSW1をオンする。ハザードランプ点消灯制御装置7は前方監視装置1や後方監視装置2等からの情報如何にかかわらずハザードランプTSLを緊急パターンで点滅する。例えば、モールス符号のSOSを意味する・・・−−−・・・の点滅パターンを繰り返し実行する。あるいは、左右のハザードランプTSLを交互に、しかも通常の点滅よりも高い周波数で点滅する。このように全てのハザードランプTSLが一定の周期で点滅する通常のハザードランプの点滅とは異なる形態で、しかも点滅周期を通常よりも短くした点滅とすることで外部に対して緊急性を報知することによりハザードランプTSLを利用した緊急性の報知に利用できる。また、このとき自車の室内灯も同時に点滅させることにより、運転者に異常が起きており助けを求める状態であることを他者に伝えることもできる。
【0029】
前記(c3)の場合には、当該緊急車における前方監視装置1や後方監視装置2は直接有効となるものではないが、緊急車の前方または後方に存在する他車から見れば、自車の前方監視装置1や後方監視装置2により当該緊急車におけるハザードランプTSLの点滅形態を自動的に検出することにより、その点滅形態が緊急点滅パターンであって当該緊急車が緊急状態にあることを自動的に検出できるようにすることも可能である。
【0030】
(c4)レーン走行時点滅
故障車両を牽引し或いは誘導走行する場合、あるいは運転初心者が熟練車両の後を追従走行する場合のように複数の車両が縦列状態で走行しているときに、合流地点で他車が合流することが好ましくないような場合には点滅設定スイッチSW2を「レーン」に設定した上でハザードスイッチSW1をオンする。ハザードランプ点消灯制御装置7は、車々間通信装置6を利用してこれら縦列走行する車両間での通信により、各車両のハザードランプTSLの点滅を同期制御する。これにより、縦列走行する複数の車両は全て同期してハサードランプTSLが点滅する。このときハザードランプ点消灯制御装置7は、前方監視装置1あるいは後方監視装置2により先行車あるいは後続車のハザードランプTSLの点滅を確認し、自車のハザードランプTSLの点滅がこれに同期するように制御を行ってもよい。レーン走行する車両以外の他車から見れば、縦列走行する複数の車両の各ハザードランプTSLが全て同期して点滅していることから、これら複数の車両はレーン走行していると確認でき、これら車両の間に割り込むことを控えることになる。したがって、牽引走行している車両間に割り込んで牽引ロープ等に接触するような事故が防止でき、また誘導される車両や追従する車両も他車の割り込みを心配することもなく自車の運転に専念でき、安全走行の上で好ましい。特に、将来車両の自動走行システムが実現された場合には、自動走行の車両についてこのレーン走行のハザードランプの点滅や通常とは異なる点滅パターンを適用することで、他車が自動走行であることを認識し、無理や割り込みや、いわゆるあおりを抑制する上で有効である。
【0031】
(c5)譲り走行・優先走行点滅
自車が追い抜き又は追越しが禁止されていない道路を走行しているときに、自車の後ろについた後続車を先に行かせたい場合に、自車が左側に寄っても後続車にその意図が伝わらないことが多い。この場合には、点滅設定スイッチSW2を「譲り」に設定した上でハザードスイッチSW1をオンすると、ハザードランプ点消灯制御装置7はハザードランプTSLの左側のみを通常のターンシグナルランプの点滅よりも長い周期で点滅させる。後続車はこの点滅を確認すると自車が譲られたものと認識でき、当該車両の右側を追い抜き、又は追越して走行する。また、自車が先行車を追い抜き、又は追越したい場合に、点滅設定スイッチSW2を「優先」に設定した上でハザードスイッチSW1をオンすると、ハザードランプ点消灯制御装置7はハザードランプTSLの右側のみを通常のターンシグナルランプの点滅よりも短い周期で点滅させる。先行車はこれを受けて後続車が先に行きたい意思のあることが認識でき、後続車の追い抜きや追い越しを可能にさせる。このようにハザードランプTSLの点滅を利用することでいわゆる大名行列走行が解消でき、車両の円滑な走行が可能になる。
【0032】
前記(c5)の場合には、例えば点滅設定スイッチSW2を「自動譲り・優先」に設定するようにし、前方監視装置1と後方監視装置2、さらには路車間通信装置5や車々間通信装置6からの情報を利用してハザードランプTSLの点滅を行うようにしてもよい。自車の後続車が「優先」の形態でハザードランプTSLの点滅を開始したときには自車の後方監視装置2でこの点滅が検出でき、これに基づいて自動的に自車において譲り形態でのハザードランプTSLの点滅を開始する。あるいは、自車の先行車が「譲り」の形態でハザードランプTSLの点滅を開始したときには自車の前方監視装置1でこの点滅が検出でき、これに基づいて自動的に自車において優先形態でのハザードランプTSLの点滅を開始するようにする。運転者はハザードスイッチSW1を操作することなくハザードランプTSLの点滅に応じて自車を譲り、優先のそれぞれに適切な運転を行うことが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明はハザードランプ、あるいはこれと同じ機能のランプを備える車両に利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 前方監視装置
2 後方監視装置
3 自車走行情報検出装置
4 ナビゲーション装置
5 路車間通信装置
6 車々間通信装置
7 ハザードランプ点消灯制御装置
11 前方監視カメラ
12 前方検出部
21 後方監視カメラ
22 後方検出部
SW1 ハザードスイッチ
SW2 点滅設定スイッチ
Sv 車速センサ
Sa 加減速センサ
TSL ターンシグナルランプ(ハザードランプ)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の前方道路における交通状態を監視して前方道路情報を出力する前方監視手段と、自車の後方道路における交通情報を監視して後方道路情報を出力する後方監視手段と、前記前方監視手段からの前方道路情報と前記後方監視手段からの後方道路情報とに基づいて自車のハザードランプを含むランプの点消灯を制御するランプ点消灯制御手段とを備え、前記ランプ点消灯制御手段は、自車の前方の渋滞を検出したときに当該ランプを点滅し、自車の後方に後続車が接近したとき、又は後続車のハザードランプの点滅を検出したときに当該ランプを消灯する制御を行うことを特徴とする車両用ランプシステム。
【請求項2】
前記前方監視手段は、自車の前方領域を撮像する前方監視カメラと、当該前方監視カメラで撮像した画像を画像解析して前方領域の渋滞を検出する前方検出部とを備え、前記後方監視手段は、自車の後方領域を撮像する後方監視カメラと、当該後方監視カメラで撮像した画像を解析して自車の後方に接近する他車を検出する後方検出部とを備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用ランプシステム。
【請求項3】
前記ランプ点消灯制御手段は、前記前方検出部で前方の渋滞を検出したときに、自車に備えた車速センサや加減速センサで検出した自車の車速や加減速を参照して前記ランプの点滅を開始するタイミングを制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用ランプシステム。
【請求項4】
前記ランプ点消制御手段は、前記後方検出部で後続車を検出したときに、当該後続車との車々間通信により得られる当該後続車の車速や加減速を参照して前記ランプを消灯するタイミングを制御することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用ランプシステム。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−189776(P2011−189776A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55374(P2010−55374)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】