説明

車両ルーフ構造

【課題】車両走行時の低燃費化に貢献し、且つ、剛性が高い車両ルーフ構造を提供する。
【解決手段】車両には、車両前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレール102が設けられる。レインフォースメント103は、一対のルーフサイドレール102の間で車幅方向に延びている。ルーフパネル111は、レインフォースメント103の上方で、一対のルーフサイドレール102の間に位置する。ルーフパネル111には、車両前後方向に延びる凹ライン112が、車幅方向に見て左右に並ぶ二箇所に設けられる。接着部113は、レインフォースメント103の上面で凹ライン112との交差箇所に設けられ、ルーフパネル111とレインフォースメント103とを接着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレールの間にルーフパネルが配置された車両ルーフ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレールの間にルーフパネルが配置された車両ルーフ構造の発明が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、ルーフヘッダ13,15やレインフォースメント17〜19の上面に、ウレタンや合成ゴム等の弾性体、又は弾性を有する接着剤等からなる複数の制振材29を設け、制振材29を介してルーフパネル3の前後方向各部を上記各ルーフヘッダ13,15やレインフォースメント17〜19に支持させること、及び、制振材29がルーフパネル3に伝達される振動を低減する役割を果たすことが示されている。
【0004】
特許文献1に記載のループパネル3は、特許文献1の図1及び図3にあるように、上方に凸となるような滑らかな曲面形状をなしている。このような形状のルーフパネルを、説明のために、以下「ノーマルルーフパネル」と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−195361号公報(段落0028、0029、図1、図2及び図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10は、パゴダルーフパネル903を採用した車両901の斜視図である。近年、ボデー902の上部にパゴダルーフパネル903を設けることが行われている。パゴダルーフパネル903は、車幅方向に見て左右対称となる二箇所に、車両前後方向に延びる凹ライン904を設けて、ノーマルルーフパネルと比較して幅方向中央部分905を低くしたルーフパネルである。パゴダルーフパネル903は、ノーマルルーフパネルと比較して、車両前方から見た投影面積が少なく、車両走行時の低燃費化に貢献する。
【0007】
発明者は、パゴダルーフパネルは、ノーマルルーフパネルと比較して車両走行時に振動しやすく、ドライバーが感じる騒音(ノイズ)や振動(バイブレーション)についての快適性(NV性能)を損ねていることに気がついた。そこで、発明者は、特許文献1に記載のように、ルーフヘッダやレインフォースメントにおける多くの箇所に制振材を配置し、パゴダルーフパネルとレインフォースメント等との接合面積を大きくした上でパゴダルーフパネルを支持させ、NV性能を向上させようと試みた。しかしながら、パゴダルーフパネルを制振材に支持させるだけでは、パゴダルーフの剛性が十分に高まらないことがわかった。また、制振材を多くの箇所に用いることにより、車両全体の重量が増大して車両走行時の燃費が悪くなり、さらには、レインフォースメント等の多くの箇所に制振材を配置するための設備投資が増大することにも気がついた。
【0008】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、車両走行時の低燃費化に貢献し、且つ、剛性が高い車両ルーフ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の車両ルーフ構造は、車両前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレールと、前記一対のルーフサイドレールの間で車幅方向に延びるレインフォースメントと、前記レインフォースメントの上方で前記一対のルーフサイドレールの間に位置し、車幅方向に見て左右に並ぶ二箇所に車両前後方向に延びる凹ラインが設けられたルーフパネルと、前記レインフォースメントの上面で前記凹ラインとの交差箇所に設けられ、前記ルーフパネルと前記レインフォースメントとを接着する接着部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両前後方向に延びる凹ラインが設けられたルーフパネルであるがゆえにルーフパネルに生じる振動が、レインフォースメントと凹ラインとの交差箇所に接着部を設けてルーフパネルとレインフォースメントとを接着させることによって効率的に減衰されるので、車両走行時の低燃費化に貢献し、且つ、剛性が高い車両ルーフ構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】車両ルーフ構造の平面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】図1の符号Cで示す円内の拡大図である。
【図5】図4のD−D線断面図である。
【図6】図1の符号Eで示す円内の拡大図である。
【図7】図6のF−F線断面図である。
【図8】変形例における図1のB−B線断面図である。
【図9】変形例における第3レインフォースメントの斜視図である。
【図10】パゴダルーフパネルを採用した車両の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の一形態を、図1ないし図7に基づいて説明する。図1は、車両ルーフ構造101の平面図である。図1において、車両の前方側は紙面の下側に対応し、車両の後方側は紙面の上側に対応する。
【0013】
車両ルーフ構造101は、一対のルーフサイドレール102を有する。一対のルーフサイドレール102は、車両の左右両側部に位置し、車両前後方向に延びている。ルーフサイドレール102の前端部、後端部、これらの中間部からは、フロントピラー、リアピラー、センターピラー(いずれも図示せず)が下方に延びている。
【0014】
図2は、図1のA−A線断面図である。図1及び図2を参照する。一対のルーフサイドレール102の間には、五本のレインフォースメント103が掛け渡される。いずれのレインフォースメント103も、車幅方向に延び、車両前後方向に同等の間隔で並んでいる。これらのレインフォースメント103を、車両前方側から順に、第1レインフォースメント103A、第2レインフォースメント103B、第3レインフォースメント103C、第4レインフォースメント103D、第5レインフォースメント103Eと呼ぶ。
【0015】
第1レインフォースメント103A、第3レインフォースメント103C、第4レインフォースメント103D及び第5レインフォースメント103Eは、いずれも、車幅方向を長手とする長尺をなし、幅寸法が略同じである。第1レインフォースメント103A、第3レインフォースメント103C、第4レインフォースメント103D及び第5レインフォースメント103Eのいずれにも、レインフォースメントの幅方向(車両前後方向)の略中央に下方に落ち込むよう形成され長手方向(車幅方向)に延びる溝部103aが設けられる。この溝部103aの両側には、フランジ部103bが設けられる。第2レインフォースメント103Bは、これ以外のレインフォースメント103と比べて幅広であって、車幅方向を長手とする長尺をなし、センターピラーの上方に位置する。第2レインフォースメント103Bは、長手方向(車幅方向)に延び上方に突出する二つの突出部103cを形成する。このようなレインフォースメント103のいずれも、その両端部が、スポット溶接等によってルーフサイドレール102の下面に固定取付されている。また、いずれのレインフォースメント103も、その上面が、ルーフパネル111に沿う形状に形成されている(図3参照)。
【0016】
図3は、図1のB−B線断面図である。図1、図2及び図3を参照する。車両ルーフ構造101は、ルーフパネル111を有する。ルーフパネル111は、レインフォースメント103の上方に位置し、一対のルーフサイドレール102の間に配置される。ルーフパネル111は、図1において一点鎖線で示されている。ルーフパネル111は、鋼板製パネル等で作られ、板状をなす。ルーフパネル111には、車両前後方向に延びる凹ライン112が、車幅方向に見て左右対称となる二箇所に並べて設けられる。凹ライン112は、図1において点線で示されている。このようなルーフパネル111は、「パゴダルーフ」と呼ばれることがある。
【0017】
図4は、図1の符号Cで示す円内の拡大図である。図5は、図4のD−D線断面図である。図6は、図1の符号Eで示す円内の拡大図である。図7は、図6のF−F線断面図である。図1、図3〜図7を参照する。車両ルーフ構造101は、接着部113を有する。接着部113は、図1に示すように、レインフォースメント103の上面で凹ライン112との交差箇所に設けられる。第1レインフォースメント103A、第3レインフォースメント103C、第4レインフォースメント103D及び第5レインフォースメント103Eにおいて、接着部113は、車室内方向に凹ませるようにしてフランジ部103bに設けられた有底の注入溝113a(図3も参照)と、この注入溝113aに注入される接着剤113bとからなる。第2レインフォースメント103Bにおいては、接着部113は、車室内方向に凹ませるようにして突出部103cに設けられた注入溝113cと、この注入溝113cに注入される接着剤113bとからなる。このようにして、いずれのレインフォースメント103においても、接着部113は、車両前後方向に二つ並び且つ車幅方向に二つ並んで、合計四箇所に設けられる。注入溝113a、113cは、レインフォースメントの幅方向(車両前後方向)の寸法が注入孔114a(後述)の直径と略同等で、レインフォースメントの長手方向(車幅方向)に線状に延びている。注入溝113a、113cに注入される接着剤113bの一例は、マスチック接着剤である。注入溝113a、113cへの接着剤113bの注入は、ロボット等の機械により行われる。
【0018】
図1、図2及び図3を参照する。車両ルーフ構造101は、補助接着部114を有する。補助接着部114は、いずれのレインフォースメント103においても、車幅方向に並ぶ二つの接着部113の中間に設けられる。結果として、いずれのレインフォースメント103においても、補助接着部114が二箇所設けられる。第1レインフォースメント103A、第3レインフォースメント103C、第4レインフォースメント103D及び第5レインフォースメント103Eにおいて、補助接着部114は、車室内方向に凹ませるようにしてフランジ部103bに設けられた円形形状で有底の注入孔114aと、この注入孔114aに注入される接着剤114bとからなる。第2レインフォースメント103Bにおいては、補助接着部114は、車室内方向に凹ませるようにして突出部103cに設けられた円形形状で有底の注入孔114aと、この注入孔114aに注入される接着剤114bとからなる。注入孔114aに注入される接着剤114bの一例は、マスチック接着剤である。注入孔114aへの接着剤114bの注入は、ロボット等の機械により行われる。補助接着部114の注入孔114aに注入される接着剤114bは、接着部113の注入溝113a、113cに注入される接着剤113bよりも少量である。
【0019】
上記のような車両ルーフ構造101は、接着部113の注入溝113a、113cに接着剤113bを注入し、補助接着部114の注入孔114aに接着剤114bを注入し、凹ライン112を接着部113に一致させて、ルーフパネル111とレインフォースメント103とを接着して形成される。このとき、平面視において、接着部113の注入溝113a、113cは、図1に示すように、凹ライン112を車幅方向に跨ぐ。
【0020】
車両ルーフ構造101を採用して製造された自動車は、走行すると、エンジンやトランスミッションの駆動による振動や、走行時にサスペンション等から入力される振動が、車両を構成するピラー等の各種の部材を伝ってルーフパネル111に入力される。ここで、パゴダルーフをはじめとする車両前後方向に延びる凹ライン112が設けられたルーフパネルでは、その形状ゆえにノーマルルーフパネルよりも振動しやすい。この点、本実施の形態では、接着部113が、振動を増幅させやすい凹ライン112を拘束し、ルーフパネル111で生じる振動を減衰させる。
【0021】
ところで、補助接着部114が設けられる箇所は、車幅方向に見て、二つの接着部113の中間である。この箇所の近傍では、ルーフパネル111が、二つの接着部113により拘束されるがゆえに大きく振動する。この点、本実施の形態では、接着部113に拘束されるがゆえに大きく振動するルーフパネル111の一部の箇所が補助接着部114によって補助的に拘束され、ルーフパネル111の振動がさらに減衰する。なお、補助接着部114は、ルーフパネル111を補助的に拘束するものである。このため、補助接着部114の注入孔114aに注入される接着剤114bは、接着部113の注入溝113a、113cに注入される接着剤113bよりも少量にして、接着剤の塗布作業を軽減することができる。無論、補助接着部114の注入孔114aに注入される接着剤114bの量が、接着部113の注入溝113a、113cに注入される接着剤113bより多くてもよい。
【0022】
このように、本実施の形態では、車両前後方向に延びる凹ライン112が設けられたルーフパネル111であるがゆえにルーフパネル111に生じる振動が、レインフォースメント103と凹ライン112との交差箇所に接着部113を設けてルーフパネル111とレインフォースメント103とを接着させることによって効率的に減衰される。このため、車両走行時の低燃費化に貢献し、且つ、剛性が高い車両ルーフ構造が実現される。
【0023】
また、本実施の形態では、接着部113は、車幅方向に延びる線状をなし、凹ライン112を車幅方向に跨いでいる。このため、接着部113は、凹ライン112を中心としてルーフパネル111の下面を挟み込むように拘束し、ルーフパネル111での振動を大きく減衰させることができる。
【0024】
また、本実施の形態では、補助接着部114が、車幅方向に並ぶ二つの接着部113の中間に設けられており、上記のように接着部113が凹ライン112の周辺を拘束するがゆえに大きく振動するルーフパネル111の一部の箇所の振動を効率的に吸収する。このため、ルーフパネル111での振動が、さらに減衰される。
【0025】
上記の実施の形態の変形例を、図8及び図9に基づいて説明する。この場合、上記の実施の形態と同一の箇所には同一の符号を用い、説明を省略する。図8は、変形例における図1のB−B線断面図である。図9は、変形例における第3レインフォースメントの斜視図である。
【0026】
変形例の接着部113は、図8及び図9に示すように、フランジ部103bから上方に押し出し形成された座部113dと、この座部113dに塗布される接着剤113bとからなる。なお、図8では第3レインフォースメント103Cを示したが、第1レインフォースメント103A、第4レインフォースメント103D及び第5レインフォースメント103Eにおいても同様である。第2レインフォースメント103Bにおいては、接着部113の座部113dは、突出部103cに設けられる。座部113dへの接着剤113bの塗布は、ロボット等の機械により行われる。
【0027】
変形例の補助接着部114は、フランジ部103bから上方に押し出し形成された座部113eと、この座部113eに塗布される接着剤114bとからなる。なお、図9では第3レインフォースメント103Cを示したが、第1レインフォースメント103A、第4レインフォースメント103D及び第5レインフォースメント103Eにおいても同様である。第2レインフォースメント103Bにおいては、補助接着部114の座部113eは、突出部103cに設けられる。座部113eへの接着剤113bの塗布は、ロボット等の機械により行われる。
【0028】
このような変形例においても、車両前後方向に延びる凹ライン112が設けられたルーフパネル111であるがゆえにルーフパネル111に生じる振動が、レインフォースメント103と凹ライン112との交差箇所に接着部113を設けてルーフパネル111とレインフォースメント103とを接着させることによって効率的に減衰される。このため、車両走行時の低燃費化に貢献し、且つ、剛性が高い車両ルーフ構造が実現される。
【符号の説明】
【0029】
101 車両ルーフ構造
102 ルーフサイドレール
103 レインフォースメント
111 ルーフパネル
112 凹ライン
113 接着部
114 補助接着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びる左右一対のルーフサイドレールと、
前記一対のルーフサイドレールの間で車幅方向に延びるレインフォースメントと、
前記レインフォースメントの上方で前記一対のルーフサイドレールの間に位置し、車幅方向に見て左右に並ぶ二箇所に車両前後方向に延びる凹ラインが設けられたルーフパネルと、
前記レインフォースメントの上面で前記凹ラインとの交差箇所に設けられ、前記ルーフパネルと前記レインフォースメントとを接着する接着部と、
を備える車両ルーフ構造。
【請求項2】
前記接着部は、車幅方向に延びる線状をなし、前記凹ラインを車幅方向に跨ぐ、
請求項1記載の車両ルーフ構造。
【請求項3】
前記レインフォースメントにおいて車幅方向に並ぶ二つの前記交差箇所の中間に設けられ、前記ルーフパネルと前記レインフォースメントとを接着する補助接着部を更に備える、
請求項1又は2記載の車両ルーフ構造。
【請求項4】
前記補助接着部に注入される接着剤の注入量が、前記接着部に注入される接着剤の注入量よりも少量である、
請求項3記載の車両ルーフ構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−245898(P2012−245898A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119482(P2011−119482)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000157083)トヨタ自動車東日本株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】