説明

車両ルーフ部における緩衝部材取付構造

【課題】 ルーフサイドに緩衝部材を容易に取付けることができる車両ルーフ部における緩衝部材取付構造を提供する。
【解決手段】 緩衝部材11をルーフクロスメンバ3よりも車室側に配置して緩衝部材11とルーフクロスメンバ3とを互いに交差させて配置するように構成し、緩衝部材1の交差部にルーフクロスメンバ3を収容する溝部14を形成すると共に、緩衝部材11にクリップ取付座面21を設けてこのクリップ取付座面21にクリップ20を取付け、緩衝部材11の溝部14にルーフクロスメンバ3を収容した状態の下で、ルーフクロスメンバ3に形成されたクリップ取付孔26にクリップ20を係着させることにより、緩衝部材11をルーフクロスメンバ2に取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ルーフ部における緩衝部材取付構造に関し、さらに詳しくは、平板状のリブを格子状に形成した形状の緩衝部材を、車室側にルーフクロスメンバが配設されるルーフパネルのルーフサイドに沿って配置して、前記ルーフパネルに対応して配設される内装トリムと前記ルーフパネルとの間に取付けるようにした車両ルーフ部における緩衝部材取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両のルーフ部(車両ルーフ部)の側部にあるルーフサイドレールに乗員保護用の緩衝部材を配設する場合には、ルーフパネルに連結されるルーフサイドレールインナパネルに取付部を設け、このルーフサイドレールインナパネルの取付部を利用して緩衝部材を直接的又は間接的にルーフサイドレールに取付けるようにしている(例えば、特開平7−47896号参照)。一方、最近では、自動車のルーフサイドレールよりも車室側に位置しかつルーフパネルの側端部に位置するルーフサイドにも、緩衝部材を配設する傾向にある。
【特許文献1】特開平7−47896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
自動車のルーフサイドには、インナパネルが配設されておらず、また、ルーフパネルに対応して配設される内装トリム(天井トリム)とルーフサイドとの間の隙間が比較的狭い。さらには、左右のルーフサイドレールの間には、ルーフパネルを車幅方向に横切って延びる1本以上のルーフクロスメンバが配設されている。従って、ルーフサイドに緩衝部材を配設するに当たっては、上述のようにルーフサイドにはインナパネルが配設されていないので、緩衝部材の取付部を設けることができない。また、ルーフサイドの全長に沿って緩衝部材を配設しようとすると、複数のルーフクロスメンバが横切っている場合には、これらのルーフクロスメンバが緩衝部材の配設に支障をきたすこととなる。また、互いに隣接するルーフクロスメンバの間に緩衝部材を配設しようとすると、複数本の緩衝部材を必要とすることになる。
【0004】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、ルーフサイドに緩衝部材を容易に取付けることができる車両ルーフ部における緩衝部材取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、本発明では、平板状のリブを格子状に形成した形状の緩衝部材を、車室側にルーフクロスメンバが配設されるルーフパネルのルーフサイドに沿って配置して、前記ルーフパネルに対応して配設される内装トリムと前記ルーフパネルとの間に取付けるようにした車両ルーフ部における緩衝部材取付構造において、前記緩衝部材を前記ルーフクロスメンバよりも車室側に配置して前記緩衝部材と前記ルーフクロスメンバとを互いに交差させて配置するように構成し、前記緩衝部材の交差部に前記ルーフクロスメンバを収容する溝部を形成すると共に、前記緩衝部材にクリップ取付座面を設けて前記クリップ取付座面にクリップを取付け、前記緩衝部材の溝部に前記ルーフクロスメンバを収容した状態の下で、前記ルーフクロスメンバに形成されたクリップ取付孔に前記クリップを係着させることにより、前記緩衝部材を前記ルーフクロスメンバに取付けるようにしている。
また、本発明では、前記緩衝部材の交差部における前記緩衝部材の格子状の升目を閉塞する補強板を、前記クリップ取付座面を延長して形成するようにしている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の本発明は、緩衝部材をルーフクロスメンバよりも車室側に配置して緩衝部材とルーフクロスメンバとを互いに交差させて配置するように構成し、緩衝部材の交差部にルーフクロスメンバを収容する溝部を形成すると共に、緩衝部材にクリップ取付座面を設けてクリップ取付座面にクリップを取付け、緩衝部材の溝部にルーフクロスメンバを収容した状態の下で、ルーフクロスメンバに形成されたクリップ取付孔にクリップを係着させることにより、緩衝部材をルーフクロスメンバに取付けるようにしたものであるから、緩衝部材に取付けたクリップをルーフクロスメンバの取付孔に係着するだけの簡単な作業によりルーフクロスメンバへの緩衝部材の取付を容易に行うことができ、車体への緩衝部材の装着を簡単にしかも短時間で行うことができる。
【0007】
また、請求項2に記載の本発明は、緩衝部材の交差部における緩衝部材の格子状の升目を閉塞する補強板を、クリップ取付座面を延長して形成するようにしたものであるから、升目の厚みが薄い部分(すなわち、緩衝部材を構成している平板状のリブの高さの低い部分)を補強板にて補強することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態に係る車両ルーフ部における緩衝部材取付構造について図1〜図7を参照して説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係る緩衝部材取付構造を備えた車両ルーフ部(自動車のルーフ部)1を示すものであって、自動車のルーフパネル2の下方箇所(車室側)には、車幅方向に沿ってそれぞれ延びる補強部材(リーンフォースメント)としての1本の幅広のルーフクロスメンバ3並びに複数本(例えば、4本)の幅狭のサブルーフクロスメンバ4,5,6,7が配設されている。そして、各ルーフクロスメンバ3〜7は、図2に示すように、車体の両側部にある一対のサイドレールインナパネル8,8(図2においては右側のサイドレールインナパネル8のみを図示)の間に掛け渡されてそれらの端部が左右一対のサイドレールインナパネル8,8にそれぞれ結合されている。
【0010】
ルーフパネル2の左右両端部にあるルーフサイド9,9においては、図3〜図5に示す如く平板状のリブ10を車体の前後及び左右に格子状に形成した形状の緩衝部材11がルーフパネル2の前部から後部に亘ってルーフサイド9,9に沿って配設されている。なお、本実施形態では、樹脂成形型により一体成形して得られる2つの緩衝部材11a,11b(図1及び図2参照)を繋ぎ合わせて成る緩衝部材11が用いられている。そして、この緩衝部材11は、ルーフパネル2に対応して配設される内装トリム12(図7参照)とルーフパネル2との間に配置されると共に、サイドレールインナパネル8から所定の距離だけ離れた位置においてルーフクロスメンバ3〜7にそれぞれ取付けられ、緩衝部材11の格子の升目13(図3〜図5参照)がルーフパネル2及び内装トリム12に向くように配置されている。さらに、上述のサイドレールインナパネル8,8の車室側の面Sには、図2に示すように、車体前後方向に沿って延びる緩衝部材M,Nがネジ止めなどにより取付けられている。
【0011】
次に、幅広のルーフクロスメンバ3への緩衝部材11の取付構造について述べると、以下の通りである。まず、緩衝部材11がルーフクロスメンバ3よりも車室側に配置され、緩衝部材11とルーフクロスメンバとが互いに交差状態で配置されるように構成され、ルーフクロスメンバ3よりも車室内側にも緩衝部材11が配置されるようになっている。ルーフクロスメンバ3に交差する緩衝部材11の交差部α(図1及び図3参照)には、ルーフクロスメンバ3を収容する溝部14が形成され、この緩衝部材11の溝部14の形状がルーフクロスメンバ3の交差部β(図1及び図3参照)の断面形状に対応する形状となされている。
【0012】
さらに具体的に述べると、ルーフクロスメンバ3の交差部βの車体前後方向における断面形状は、図6に示すように、ルーフパネル2に向けて突出する車体前後方向の中間箇所の凸部16と、この凸部16の車体前後方向の前方箇所及び後方箇所にそれぞれ形成された凹部17a,17bと、これらの凹部17a,17bの車体前後方向の前方箇所及び後方箇所にそれぞれ形成されたフランジ部18a,18bとを有する形状となされている。一方、ルーフクロスメンバ3に対して交差する緩衝部材11の交差部αの断面形状は、ルーフクロスメンバ3の交差部βを収容し得るようにこの交差部βの断面形状に対応する形状となされている(図6参照)。このように溝部14とルーフクロスメンバ3の交差部βの断面形状が対応する(合致する)形状となっているので、ルーフクロスメンバ3に対する緩衝部材11の車両前後方向の位置決めがなされて(溝部14の車両前後方向の対向面を構成するリブ10,10が位置決め用の縦壁となる)、ルーフクロスメンバ3への緩衝部材11の組付けが容易になっている。なお、図6は図1におけるA−A線拡大断面図(一部拡大断面図)であって、図6における紙面左右方向にはさらに緩衝部材11が存在している。
【0013】
さらに、上述の緩衝部材11の溝部14には、クリップ20を取付けるためのクリップ取付座面21が設けられており、このクリップ取付座面21にクリップ20が予め取付けられている。本実施形態では、クリップ20は、クリップ取付座面21に一体成形により取付けられている。さらに、クリップ取付座面21を延長して形成された部分が、緩衝部材11の交差部αの溝部14における緩衝部材11の格子状の升目13を閉塞する補強板22として設けられている。補強板22を設けるようにした理由は、次の通りである。すなわち、緩衝部材11に溝部14を設けるのに伴ってその部分のリブ10の高さが相対的に低くなって緩衝部材11の交差部αの強度が低下するので、上述の交差部αの溝部14に補強板22を設けて、緩衝部材11の強度の低い部分を補強するようにしているのである。
【0014】
また、上述の補強板22は、図6に示すように、ルーフクロスメンバ3の凸部16に対応する形状の凸部23、ルーフクロスメンバ3の凹部17a,17bにそれぞれ対応する形状の凹部24a,24bを有し、ルーフクロスメンバ3のフランジ部18a,18bに対応する部分には段部25a,25bを有している。そして、凸部23の上面に設けられたクリップ取付座面21がその周りの補強板22の部分よりも一段低い部分に配置され、このクリップ取付面21上に一体成形されたクリップ20がルーフパネル2の側に向けられるようになっている。
【0015】
一方、ルーフクロスメンバ3には、図3,図6及び図7に示す如くクリップ取付孔(係止孔)26が形成されており、このクリップ取付孔26にクリップ20を差し込んでクリップ20の係止爪20aをルーフクロスメンバ3のクリップ取付孔26に係止させることにより緩衝部材11がルーフクロスメンバ3に取付けられるようになっている。このように、クリップ取付座面21を一段低くすることにより、クリップ20の前端(頭部)がルーフパネル2に干渉するのを回避でき、クリップ20の係止爪20aとクリップ取付座面21との間の隙間を確保することができる。
【0016】
かくして、ルーフクロスメンバ3の一部分を緩衝部材11の溝部14内に収容した状態の下で、ルーフクロスメンバ3に形成されたクリップ取付孔26にクリップ20の係止爪20aを係着させることにより、緩衝部材11がルーフクロスメンバ3に取付けられる(図6参照)。
【0017】
なお、以上においては幅広のルーフクロスメンバ3に緩衝部材を取付ける場合について述べたが、幅狭のルーフクロスメンバ4〜7への緩衝部材11の取付けも上記と同様にクリップ20を利用して行われるようになっている。
【0018】
以上のような緩衝部材取付構造によれば、緩衝部材11をルーフクロスメンバ3にクリップ20のみで簡単に取付けることができ、また、多数に分割した緩衝部材11を互いに隣接するルーフクロスメンバの間にそれぞれ配置して取付ける必要がなく(本実施形態では、2分割の干渉部材11,11を用いている)、従って緩衝部材11の取付作業時間を短縮することができる。さらに、緩衝部材11に厚みの薄い部分(溝部14の部分)を形成し、緩衝部材11の溝部14内にルーフクロスメンバ3の一部分を収容した状態の下で緩衝部材11をルーフクロスメンバ3と交差させて配置しているので、ルーフパネル2と内装トリム12との間の隙間が少ない部分にも緩衝部材11を取付けることできる。
【0019】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。例えば、既述の実施形態では、2分割した緩衝部材11a,11bを用いて、緩衝部材11a,11bの両端部をルーフクロスメンバ3にクリップ20により取付けるようにしているが、緩衝部材11を1本の部材で構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両ルーフ部における緩衝部材取付構造を備えた車両ルーフ部(自動車のルーフ部)を車室側から見上げた斜視図である。
【図2】自動車のルーフサイドにおける緩衝部材の配設状態を示す分解斜視図である。
【図3】幅広のルーフクロスメンバ及び幅狭のルーフクロスメンバに対して交差して配置された緩衝部材を示す斜視図である。
【図4】緩衝部材を車室外の側から見た斜視図であって、緩衝部材に設けられたクリップを示す斜視図である。
【図5】緩衝部材を車室内の側から見た斜視図である。
【図6】図1におけるA−A線拡大断面図である。
【図7】図1におけるB−B線拡大断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 車両ルーフ部
2 ルーフパネル
3 ルーフクロスメンバ
4〜7 サブクロスメンバ
8 サイドレールインナパネル
9 ルーフサイド
10 リブ
11,11a,11b 緩衝部材
12 内装トリム
13 升目
14 溝部
20 クリップ
21 クリップ取付座面
22 補強板
α,β 交差部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状のリブを格子状に形成した形状の緩衝部材を、車室側にルーフクロスメンバが配設されるルーフパネルのルーフサイドに沿って配置して、前記ルーフパネルに対応して配設される内装トリムと前記ルーフパネルとの間に取付けるようにした車両ルーフ部における緩衝部材取付構造において、
前記緩衝部材を前記ルーフクロスメンバよりも車室側に配置して前記緩衝部材と前記ルーフクロスメンバとを互いに交差させて配置するように構成し、
前記緩衝部材の交差部に前記ルーフクロスメンバを収容する溝部を形成すると共に、前記緩衝部材にクリップ取付座面を設けて前記クリップ取付座面にクリップを取付け、
前記緩衝部材の溝部に前記ルーフクロスメンバを収容した状態の下で、前記ルーフクロスメンバに形成されたクリップ取付孔に前記クリップを係着させることにより、前記緩衝部材を前記ルーフクロスメンバに取付けるようにしたこと、
を特徴とする車両ルーフ部における緩衝部材取付構造。
【請求項2】
前記緩衝部材の交差部における前記緩衝部材の格子状の升目を閉塞する補強板を、前記クリップ取付座面を延長して形成したことを特徴とする請求項1に記載の車両ルーフ部における緩衝部材取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−306257(P2006−306257A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131155(P2005−131155)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】