説明

車両上部構造

【課題】樹脂ルーフとルーフサイドとを接合する接合剤が車両外側から見えないようにした構造を安価に実現できる車両上部構造を得る。
【解決手段】ルーフサイドレール22のアウタパネル40に段部50を形成すると共に樹脂ルーフ24にフランジ部24Cを形成することで、樹脂ルーフ24及びアウタパネル40に接着剤54が介在される傾斜壁24B、52Aを当該フランジ部24Cによって遮蔽するようにして、当該接着剤54が、車両外側から見えないようにしている。つまり、ここではアウタパネル40及び樹脂ルーフ24の形状を変えることによって接着剤54が車両外側から直接見えないようにしているため、例えば遮蔽手段として別部材を用いた場合と比較して安価に実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両上部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、自動車のルーフにおいて、ルーフパネルの車両幅方向の両側にボディパネル(ルーフサイドレール)が設けられており、ルーフパネル及びボディパネルの車両幅方向の端部側がそれぞれ屈曲されて互いに対向し、接着剤によってルーフパネルとボディパネルとが接合された構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3914525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような構造では接着剤が車両外側から見えてしまい見栄えが良くない。このため、この先行技術では、接着剤の車両外側にシーラント部材が配置されるようにしているが、シーラント部材を取り付けることで費用が別途掛かってしまう。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、樹脂ルーフとルーフサイドレールとを接合する接合剤が車両外側から見えないようにした構造を安価に実現できる車両上部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明に係る車両上部構造は、車両上部に設けられた樹脂ルーフと、前記樹脂ルーフの車両幅方向両端部に車両前後方向に沿って設けられたルーフサイドレールと、前記樹脂ルーフの車両幅方向両端部と前記ルーフサイドレールとを接合する接合剤と、前記樹脂ルーフ及び前記ルーフサイドレールの少なくとも一方に形成され、前記接合剤を車両外側から見えないように遮蔽する遮蔽手段と、を有する。
【0007】
請求項1記載の本発明に係る車両上部構造では、車両上部に設けられた樹脂ルーフの車両幅方向両端部には、車両前後方向に沿ってルーフサイドレールが設けられている。このルーフサイドレールと樹脂ルーフの車両幅方向両端部とは、接合剤によって接合されており、樹脂ルーフ及びルーフサイドレールの少なくとも一方に形成された遮蔽手段によって、当該接合剤が車両外側から見えないように遮蔽されている。
【0008】
接合剤として例えば接着剤が用いられるが、この接着剤を遮蔽手段によって車両外側から直接見えないようにすることで、見栄えが向上する。また、接着剤が直接見えないため、接着剤を隠すモールなどが不要であり、その分のコストを削減することができる。ここで、この遮蔽手段は、樹脂ルーフ及びルーフサイドレールの少なくとも一方に形成されている。このため、遮蔽手段として別部材を用いた場合と比較して安価に実現することができる。
【0009】
請求項2記載の本発明に係る車両上部構造は、請求項1に記載の車両上部構造において、前記遮蔽手段が、前記ルーフサイドレールの車両幅方向内側に設けられると共に、車両下方側へ向かって形成され車両前後方向に沿って設けられた第1段部と、前記第1段部の車両幅方向内側に設けられると共に、車両下方側へ向かって形成され車両前後方向に沿って設けられた第2段部と、前記樹脂ルーフの車両幅方向両端部に設けられると共に、前記第1段部内に配置され車両前後方向に沿って設けられたフランジ部と、前記フランジ部の車両幅方向内側に設けられると共に、前記第2段部を構成する第1縦壁と対向して形成され車両前後方向に沿って設けられ、前記第1縦壁との間に前記接合剤が介在される第2縦壁と、を含んで構成されている。
【0010】
請求項2記載の本発明に係る車両上部構造では、遮蔽手段が、ルーフサイドレールに形成された第1段部及び第2段部と、樹脂ルーフに形成されたフランジ部及び第2縦壁と、を含んで構成されている。第1段部は、ルーフサイドレールの車両幅方向内側に設けられると共に、車両下方側へ向かって形成され車両前後方向に沿って設けられている。また、第2段部は、第1段部の車両幅方向内側に設けられると共に、車両下方側へ向かって形成され車両前後方向に沿って設けられている。
【0011】
一方、フランジ部は、樹脂ルーフの車両幅方向両端部に車両前後方向に沿って設けられており、第1段部内に配置される。また、第2縦壁は、フランジ部の車両幅方向内側に設けられると共に、第2段部を構成する第1縦壁と対向して形成され車両前後方向に沿って設けられている。そして、この第1縦壁と第2縦壁の間に接合剤が介在される。つまり、第1縦壁と第2縦壁とが接合剤を介して接合され、当該第1縦壁及び第2縦壁を介してルーフサイドレールに樹脂ルーフが接合される。
【0012】
ここで、樹脂ルーフに設けられたフランジ部が、ルーフサイドレールに形成された第1段部内に配置されるため、ルーフサイドレールの第2段部は当該フランジ部によって車両外側から見えないように遮蔽された状態となる。つまり、この第2段部を構成する第1縦壁とフランジ部の車両幅方向内側に設けられた第2縦壁との間に介在される接合剤が車両外側から見えることはない。
【0013】
また、第2縦壁は、ルーフサイドレールの樹脂ルーフ側に車両下方側へ向かって形成され第2段部を構成する第1縦壁と対向するように形成されているため、当該第2縦壁は、板状に形成された樹脂ルーフに対して角度を持った状態で形成されることとなる。このように、板状の樹脂ルーフの車両幅方向端部側に第2縦壁を設けることで、当該樹脂ルーフの剛性を上げることができ、樹脂ルーフの振動を抑制することができる。また、ルーフサイドレールも樹脂ルーフと同様、少なくとも第1段部を設けることで当該ルーフサイドレールの剛性を上げることができ、ルーフサイドレールの振動を抑制することができる。
【0014】
そして、樹脂ルーフの第2縦壁とルーフサイドレールの第1縦壁とで壁同士が二枚重ねされた状態で接合されるため、樹脂ルーフ及びルーフサイドレールの車両幅方向端部が補強される。このように、樹脂ルーフ及びルーフサイドレールが補強されることで、別途補強部材を用いることなく、樹脂ルーフ及びルーフサイドレールの剛性が強化されることとなる。つまり、樹脂ルーフの板厚を上げることなく剛性確保が可能なため、結果として樹脂ルーフの軽量化が可能となる。
【0015】
請求項3記載の本発明に係る車両上部構造は、請求項2に記載の車両上部構造において、前記第1縦壁及び前記第2縦壁は、車両下方へ向かうにつれて車両内側へ傾斜する傾斜壁である。
【0016】
請求項3記載の本発明に係る車両上部構造では、第1縦壁及び第2縦壁が、車両下方へ向かうにつれて車両内側へ傾斜する傾斜壁とすることで、車体側にルーフサイドレールが接合された後に、当該ルーフサイドレールの上方から樹脂ルーフを接合させることができる。
【0017】
請求項4記載の本発明に係る車両上部構造は、請求項1に記載の車両上部構造において、前記遮蔽手段が、前記ルーフサイドレールの車両幅方向内側に車両下方側へ向かって形成され車両前後方向に沿って設けられた第3縦壁に設けられ、車両幅方向外側へ向かって形成された凹部と、前記樹脂ルーフの車両幅方向両端部に車両前後方向に沿って設けられ、前記凹部内に配置されて当該凹部の底壁との間に前記接合剤が介在するリブと、を含んで構成されている。
【0018】
請求項4記載の本発明に係る車両上部構造では、遮蔽手段が、ルーフサイドレールに形成された凹部と、樹脂ルーフに形成されたリブと、を含んで構成されている。ルーフサイドレールの車両幅方向内側には、車両下方側へ向かって形成された第3縦壁が車両前後方向に沿って設けられている。そして、この第3縦壁に、車両幅方向外側へ向かって凹部が形成されている。
【0019】
一方、リブは、樹脂ルーフの車両幅方向両端部に車両前後方向に沿って設けられており、凹部内に配置される。そして、このリブと凹部の底壁との間に接合剤が介在される。つまり、リブと凹部の底壁とが接合剤を介して接合され、当該リブ及び凹部の底壁を介してルーフサイドレールに樹脂ルーフが接合される。
【0020】
ここで、樹脂ルーフに設けられたリブが、ルーフサイドレールに形成された凹部内に配置されるため、リブはルーフサイドレールによって車両外側から見えないように遮蔽された状態となる。このため、凹部の底壁とリブとの間に介在される接合剤が車両外側から見えることはない。また、樹脂ルーフの車両幅方向両端部がルーフサイドレールの凹部内に配置されることとなるため、樹脂ルーフとルーフサイドレールとの見切り隙が車両外側から見えることはなく、見栄えが良い。
【0021】
また、樹脂ルーフの車両幅方向両端部にはリブが設けられている。このため、当該樹脂ルーフの剛性を上げることができ、樹脂ルーフの振動を抑制することができる。また、ルーフサイドレールには第3縦壁が設けられている。このため、樹脂ルーフと同様、当該ルーフサイドレールの剛性を上げることができ、ルーフサイドレールの振動を抑制することができる。
【0022】
そして、樹脂ルーフのリブとルーフサイドレールの凹部の底壁とで壁同士が二枚重ねされた状態で接合されるため、樹脂ルーフ及びルーフサイドレールが補強される。このように、樹脂ルーフ及びルーフサイドレールが補強されることで、別途補強部材を用いることなく、樹脂ルーフ及びルーフサイドレールの剛性が強化されることとなる。つまり、樹脂ルーフの板厚を上げることなく剛性確保が可能なため、結果として樹脂ルーフの軽量化が可能となる。
【0023】
請求項5記載の本発明に係る車両上部構造は、請求項1〜4の何れか1項に記載の車両上部構造において、前記樹脂ルーフと前記ルーフサイドレールとの間で車両幅方向において隙間が設けられている。
【0024】
請求項5記載の本発明に係る車両上部構造では、樹脂ルーフとルーフサイドレールとの間で車両幅方向において隙間が設けられているため、樹脂ルーフとルーフサイドレールとが互いに干渉することはない。
【0025】
請求項6記載の本発明に係る車両上部構造は、請求項5に記載の車両上部構造において、前記樹脂ルーフと前記ルーフサイドレールとの間で車両高さ方向において隙間が設けられている。
【0026】
請求項6記載の本発明に係る車両上部構造では、樹脂ルーフとルーフサイドレールとの間で車両幅方向に加え車両高さ方向において隙間が設けられているため、樹脂ルーフのルーフサイドレールへの組付け時に樹脂ルーフがルーフサイドレールに干渉することはない。
【発明の効果】
【0027】
請求項1記載の本発明に係る車両上部構造では、樹脂ルーフとルーフサイドとを接合する接合剤が車両外側から見えないようにした構造を安価に実現できる、という優れた効果を有する。
【0028】
請求項2記載の本発明に係る車両上部構造では、樹脂ルーフ及びルーフサイドレールの振動抑制が可能となる、という優れた効果を有する。
【0029】
請求項3記載の本発明に係る車両上部構造では、車体の組立て作業上の効率が良い、という優れた効果を有する。
【0030】
請求項4記載の本発明に係る車両上部構造では、樹脂ルーフ及びルーフサイドレールの振動抑制が可能となる、という優れた効果を有する。
【0031】
請求項5記載の本発明に係る車両上部構造では、樹脂ルーフとルーフサイドレールとで異音が発生することはないという優れた効果を有する。
【0032】
請求項6記載の本発明に係る車両上部構造では、組付け作業性が向上する、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図2中の1−1線に沿った車両上部構造の縦断面図である。
【図2】第1実施形態に係る車両上部構造が適用された車両の上部を示す斜視図である。
【図3】第2実施形態に係る車両上部構造を示す図1に対応する縦断面図である。
【図4】第3実施形態に係る車両上部構造を示す図1に対応する縦断面図である。
【図5】第3実施形態に係る車両上部構造の変形例を示す図1に対応する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図1〜図5を用いて、本発明の実施形態に係る車両上部構造について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0035】
<第1実施形態>
(車両上部構造の構成)
まず、第1実施形態に係る車両上部構造の構成について説明する。
【0036】
図2には、本実施形態に係る車両上部構造20が適用された車両10の上部が斜視図にて示されている。図1には、図2中の1−1線に沿った車両上部構造20の縦断面図が示されている。図2に示されるように、車両10の側部には、車両前方側から順にフロントピラー12、センターピラー14、及びリアピラー16が配設されている。なお、フロントピラー12、センターピラー14、及びリアピラー16は、車両10の両サイドに左右一対設けられている。フロントピラー12、センターピラー14、及びリアピラー16の上方側における車両10の上部に車両上部構造20が設けられている。
【0037】
車両上部構造20は、車両上部に設けられた樹脂ルーフ24と、当該樹脂ルーフ24の車両幅方向両端部に車両前後方向に沿って設けられた左右一対のルーフサイドレール22と、を備えている。樹脂ルーフ24の前端部と後端部における車両内側には、ルーフサイドレール22の前端部同士を車両幅方向で繋ぐフロントルーフヘッダパネル26と、ルーフサイドレール22の後端部同士を車両幅方向で繋ぐリアルーフヘッダパネル28と、が設けられている。また、樹脂ルーフ24の車両前方側には、フロントピラー12間にフロントガラス34が設けられており、樹脂ルーフ24の車両後方側における車両10の後部には、リアピラー16間にリアガラス36が設けられている。
【0038】
一方、ルーフサイドレール22は、フロントピラー12、センターピラー14、及びリアピラー16の上端部にそれぞれ結合されており、フロントピラー12とセンターピラー14の間にはフロントサイドドア開口部30が設けられ、センターピラー14とリアピラー16の間にはリアサイドドア開口部32が設けられている。
【0039】
図1に示されるように、ルーフサイドレール22は、例えば、車両外側に配置されたアウタパネル40と、車両内側に配置され当該アウタパネル40との間で閉断面を構成するインナパネル(図示省略)と、を備えている。アウタパネル40には、車両上端角部が車両外側に向かって凸となるように突出すると共に湾曲して形成された湾曲面部42が車両前後方向に沿って設けられており、湾曲面部42の車両幅方向外側には、車両下方へ向かうにつれて車両外側へ傾斜する外側傾斜部44が車両前後方向に沿って設けられている。
【0040】
湾曲面部42の車両幅方向内側(樹脂ルーフ24側)には、車両下方側へ向かって形成された第1段部としての段部50が車両前後方向に沿って設けられている。この段部50は、車両下方へ向かって垂下する縦壁50Aと、当該縦壁50Aの下端部から車幅方向内側向かって略水平に延出する底壁50Bと、で構成されている。
【0041】
そして、段部50の車両幅方向内側には、車両下方側へ向かって形成された第2段部としての段部52が車両前後方向に沿って設けられている。この段部52は、段部50の底壁50Bの先端部から車両下方へ向かうにつれて車両内側へ傾斜する第1縦壁としての傾斜壁52Aと、当該傾斜壁52Aの下端部から車両下方側へ向かって延出する縦壁52Bと、当該縦壁52Bの下端部から車両幅方向内側へ略水平に向かって延出する底壁52Cと、で構成されている。なお、縦壁52Bは必ずしも必要ではない。
【0042】
一方、樹脂ルーフ24は、車両上部を構成する本体部24Aを備えており、本体部24Aの車両側端部(車両幅方向外側端部)からは、車両上方へ向かう第2縦壁としての傾斜壁24Bが形成されている。この傾斜壁24Bは車両上方へ向かうにつれて車両外側へ傾斜しており、傾斜壁52Aと対向可能とされている。そして、傾斜壁52A又は段部52の傾斜壁24Bには接合剤としての接着剤54が塗布可能とされる。
【0043】
また、傾斜壁24Bの先端部からは、本体部24Aと略平行に車両外側へ張り出すフランジ部24Cが設けられており、段部50内に配置可能とされる。そして、傾斜壁52A又は傾斜壁24Bに接着剤54が塗布され、当該接着剤54を介して傾斜壁52Aと傾斜壁24Bとが接合された状態で、フランジ部24Cは、段部50の縦壁50A及び底壁50Bとの間にそれぞれ隙間H1、H2を設けた状態で、段部50内に配置される。
【0044】
つまり、フランジ部24Cは、段部50の縦壁50Aとの間で車両幅方向において隙間H1が設けられ、段部50の底壁50Bとの間で車両高さ方向において隙間H2が設けられる。そして、フランジ部24Cが段部50内に配置された状態で、樹脂ルーフ24とアウタパネル40との見切り部において、例えばここではフランジ部24Cの上面25とアウタパネル40の湾曲面部42の上面42Aとが略面一の状態となるように設定されている。
【0045】
(車両上部構造の作用・効果)
次に、第1実施形態に係る車両上部構造の作用・効果について説明する。
【0046】
図1に示されるように、本実施形態では、遮蔽手段として、ルーフサイドレール22を構成するアウタパネル40に、車両下方側へ向かって形成された段部50、52が車両幅方向外側から順番に設けられ、樹脂ルーフ24には、段部50内に配置されるフランジ部24Cが形成されている。
【0047】
そして、フランジ部24Cの車両幅方向内側には、段部52に設けられた傾斜壁52Aと対向する傾斜壁24Bが設けられ、接着剤54を介して傾斜壁52Aと傾斜壁24Bとが接合された状態で、フランジ部24Cが段部50内に配置されるようになっている。つまり、アウタパネル40の段部52は、当該フランジ部24Cによって車両外側から見えないように遮蔽された状態となる。
【0048】
このため、この段部52を構成する傾斜壁52Aとフランジ部24Cの車両幅方向内側に設けられた傾斜壁24Bとの間に介在された接着剤54が、車両外側から見えることはない。したがって、当該接着剤54を隠すモールなどが不要であり、その分のコストを削減することができる。
【0049】
ここで、本実施形態では、ルーフサイドレール22のアウタパネル40に段部50を形成すると共に樹脂ルーフ24にフランジ部24Cを形成することで、樹脂ルーフ24及びアウタパネル40に接着剤54が介在される傾斜壁24B、52Aが、当該フランジ部24Cによって車両外側から見えないように遮蔽されるようにしている。つまり、ここではアウタパネル40及び樹脂ルーフ24の形状を変えることによって接着剤54が車両外側から直接見えないようにしている。このため、例えば遮蔽手段として別部材を用いた場合と比較して安価に実現することができる。
【0050】
また、アウタパネル40に段部50を形成し、フランジ部24Cが当該段部50内に配置可能とされることで、フランジ部24Cとアウタパネル40との間で大きな段差がつかないようにすることができる。このため、見栄えが良い。そして、接着剤54を介して傾斜壁52Aと傾斜壁24Bとが接合された状態で、フランジ部24Cの上面25と湾曲面部42の上面42Aとが略面一の状態となるように設定することも容易である。
【0051】
また、板状に形成された樹脂ルーフ24の車両幅方向外側に、樹脂ルーフ24の本体部24Aに対して角度を有して形成された傾斜壁52Aを設けることで、当該樹脂ルーフ24の剛性を上げることができ、樹脂ルーフ24の振動を抑制することができる。つまり、樹脂ルーフ24の板厚を上げることなく剛性確保が可能なため、結果として樹脂ルーフ24の軽量化が可能となる。また、アウタパネル40も樹脂ルーフ24と同様、アウタパネル40の車両幅方向の端部側に少なくとも段部50を設けることで、当該アウタパネル40の剛性を上げることができ、アウタパネル40の振動を抑制することができる。
【0052】
そして、樹脂ルーフ24の傾斜壁24Bとアウタパネル40の傾斜壁52Aとで壁同士が二枚重ねされた状態で接合されるため、樹脂ルーフ24及びアウタパネル40の車両幅方向端部が補強される。このように、樹脂ルーフ24及びアウタパネル40が補強されることで、別途補強部材を用いることなく、樹脂ルーフ24及びアウタパネル40の剛性が強化される。このため、樹脂ルーフ24及びアウタパネル40の振動抑制が可能となる。
【0053】
また、傾斜壁52A及び傾斜壁24Bは、車両下方へ向かうにつれて車両内側へ傾斜している。このため、車体11側にアウタパネル40(ルーフサイドレール22)が接合された後に、当該アウタパネル40の上方から樹脂ルーフ24を接合させることができるため、車体の組立て作業上の効率が良い。
【0054】
さらに、フランジ部24Cは、段部50の縦壁50A及び底壁50Bとの間にそれぞれ隙間H1、H2を設けた状態で、段部50内に配置される。つまり、フランジ部24Cは、段部50の縦壁50Aとの間で車両幅方向において隙間H1が設けられ、段部50の底壁50Bとの間で車両高さ方向において隙間H2が設けられている。
【0055】
このように、樹脂ルーフ24とアウタパネル40との間で車両幅方向において隙間H1が設けられることで、樹脂ルーフ24とアウタパネル40とが互いに干渉することはなく、樹脂ルーフ24とアウタパネル40との干渉による異音の発生が防止される。また、樹脂ルーフ24とアウタパネル40との間で車両高さ方向において隙間H2が設けられることで、樹脂ルーフ24のアウタパネル40(ルーフサイドレール22)への組付け時に樹脂ルーフ24がアウタパネル40に干渉することはなく、組付け作業性が向上する。
【0056】
なお、ここでは傾斜壁52Aが形成されているが、必ずしも傾斜壁である必要はなく、段部50の底壁50Bと段部52の底壁52Cとを車両上下方向に沿って繋ぐ縦壁(図示省略)であっても良い。但し、この場合、当該縦壁と対向するように、樹脂ルーフ24の傾斜壁24Bに代えて、樹脂ルーフ24の上面に対して車両上方へ向かって起立する縦壁が形成されることとなる。
【0057】
本発明では、樹脂ルーフ24とアウタパネル40(ルーフサイドレール22)とを接合する接着剤54が車両外側から直接見えないようにすることができれば良い。このため、上記の第1実施形態以外にも樹脂ルーフ24及びアウタパネル40形状は様々である。このため、以下において、上記の第1実施形態とは異なる他の形態についてその一例を説明する。なお、以下の実施形態において、第1実施形態と略同一の内容については説明を省略する。
【0058】
<第2実施形態>
(車両上部構造の構成)
次に、第2実施形態に係る車両上部構造の構成について説明する。
【0059】
図3には、第2実施形態に係る車両上部構造を示す図1に対応する縦断面図が示されている。図3に示されるように、アウタパネル60の湾曲面部42の車両幅方向内側には、車両下方側へ向かって形成された第1段部としての段部62が車両前後方向に沿って設けられている。この段部62は、車両下方へ向かって垂下する縦壁62Aと、当該縦壁62Aの下端部から車幅方向内側向かって略水平に延出する底壁62Bと、で構成されている。
【0060】
そして、段部62の車両幅方向内側には、車両下方側へ向かって形成された第2段部としての段部64が車両前後方向に沿って設けられている。この段部64は、車両下方へ向かって垂下する縦壁64Aと、当該縦壁64Aの下端部から車幅方向内側向かって略水平に延出する底壁64Bと、で構成されている。
【0061】
一方、樹脂ルーフ66の車幅方向両端側には、車両前後方向に沿ってリブ68が垂下されており、リブ68の外面68Aは段部64を構成する縦壁64Aと対向可能に形成されている。そして、リブ68の外面68A又は段部64の縦壁64Aには接着剤54が塗布可能とされている。
【0062】
また、リブ68の車幅方向外側には、樹脂ルーフ66の本体部66Aから延出するフランジ部66Bが設けられており、段部62内に配置可能とされている。そして、リブ68の外面68A又は段部64の縦壁64Aには接着剤54が塗布され、当該接着剤54を介してリブ68と縦壁64Aとが接合された状態で、フランジ部66Bが段部62内に配置される。
【0063】
(車両上部構造の作用・効果)
次に、第2実施形態に係る車両上部構造の作用・効果について説明する。
【0064】
図3に示されるように、本実施形態では、遮蔽手段として、ルーフサイドレール22を構成するアウタパネル60に、車両下方側へ向かって形成された段部62、64が設けられており、樹脂ルーフ66には、段部62内に配置されるフランジ部66Bが設けられている。そして、フランジ部66Bの車両幅方向内側には、段部64に設けられた縦壁64Aと対向してリブ68が設けられており、当該リブ68の外面68Aと縦壁64Aの間に接着剤54が塗布されるようになっている。
【0065】
このため、当該接着剤54はフランジ部66Bによって車両外側から見えないように遮蔽された状態となる。そして、この遮蔽手段が、アウタパネル60に形成された段部62、64及び樹脂ルーフ66に形成されたフランジ部66B及び段部64によって構成されている。
【0066】
つまり、この第2実施形態においても、第1実施形態に係る車両上部構造の作用・効果と略同一の作用・効果を得ることができる。
【0067】
ここで、樹脂ルーフ66にリブ68を設けることで、樹脂ルーフ66の上面70側には、樹脂ルーフ66の成形後にヒケが生じる可能性があるが、フランジ部66Bは樹脂ルーフ66の本体部66Aから延出しているため、本体部66Aの上面には、例えば図1で示されるような凹部56は形成されない。なお、この凹部56について、車両上部のデザインとして活かすことも可能である。
【0068】
<第3実施形態>
(車両上部構造の構成)
次に、第3実施形態に係る車両上部構造の構成について説明する。
【0069】
図4には、第3実施形態に係る車両上部構造を示す図1に対応する縦断面図が示されている。図4に示されるように、アウタパネル72の湾曲面部42の車両幅方向内側には、車両高さ方向に沿って垂下する縦壁74が車両前後方向に沿って設けられており、当該縦壁74には車両外側へ向かって凹部76が形成され、車両前後方向に沿って形成されている。凹部76の上壁76Aと下壁76Bとは略平行となるように形成されており、凹部76の底壁76Cは、上壁76Aから下壁76Bへ向かうにつれて車両内側へ傾斜している。
【0070】
一方、樹脂ルーフ78の車幅方向両端側には、車両高さ方向に沿って立設するリブ80が車両前後方向に沿って形成されており、凹部76内に配置可能とされている。そして、リブ80の外面80Aは凹部76の底壁76Cと対向可能に形成されている。また、リブ80の外面80A又は凹部76の底壁76Cには接着剤54が塗布可能とされており、リブ80の外面80A又は凹部76の底壁76Cに接着剤54が塗布され当該接着剤54を介してリブ80の外面80Aと凹部76の底壁76Cとが接合された状態で、当該リブ80は凹部76内に配置される。
【0071】
(車両上部構造の作用・効果)
次に、第3実施形態に係る車両上部構造の作用・効果について説明する。
【0072】
図4に示されるように、本実施形態では、遮蔽手段として、ルーフサイドレール22を構成するアウタパネル72に凹部76が設けられており、樹脂ルーフ78には、当該凹部76内に配置されるリブ80が設けられている。そして、リブ80の外面80A又は凹部76の底壁76Cに接着剤54が塗布されるようになっている。
【0073】
このため、当該接着剤54はアウタパネル72やリブ80によって車両外側から見えないように遮蔽された状態となる。そして、この遮蔽手段が、アウタパネル72に形成された凹部76及び樹脂ルーフ78に形成されたリブ80によって構成されている。
【0074】
つまり、この第3実施形態においても、第1実施形態に係る車両上部構造の作用・効果と略同一の作用・効果を得ることができる。
【0075】
なお、ここでは、アウタパネル72の湾曲面部42の上面42Aと樹脂ルーフ78の本体部78Aの上面82とは面一の状態とはなっていないが、樹脂ルーフ78の車両幅方向両端部がアウタパネル72の凹部76内に配置されることとなるため、樹脂ルーフ78とアウタパネル72(ルーフサイドレール22)との見切り隙が車両外側から見えることはなく、見栄えが良い。
【0076】
但し、図5に示されるように、例えば、樹脂ルーフ84の形状を変えて、アウタパネル60の湾曲面部42の上面42Aと樹脂ルーフ84の本体部84Aの上面86とが略面一となるようにしても良い。この場合、樹脂ルーフ84の車幅方向両端側には、車両高さ方向に沿って垂下した後車両幅方向外側へ向かって略水平に張り出す略L字状のリブ88が車両前後方向に沿って形成されており、当該リブ88の先端部に凹部76内に配置されるリブ90が形成されるようにする。
【0077】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論のことである。例えば、上記の実施形態では、遮蔽手段が、樹脂ルーフ及びルーフサイドレールによって構成された例について説明したが、樹脂ルーフ又はルーフサイドレールで遮蔽手段が構成されても良い。
【符号の説明】
【0078】
10 車両
11 車体
20 車両上部構造
22 ルーフサイドレール
24 樹脂ルーフ
24B 傾斜壁(第2縦壁、遮蔽手段)
24C フランジ部(遮蔽手段)
40 アウタパネル(ルーフサイドレール)
50 段部(第1段部、遮蔽手段)
52 段部(第2段部、遮蔽手段)
52A 傾斜壁(第1縦壁)
54 接着剤(接合剤)
60 アウタパネル(ルーフサイドレール)
62 段部(第1段部、遮蔽手段)
64 段部(第2段部、遮蔽手段)
64A 縦壁(第1縦壁)
66 樹脂ルーフ
66B フランジ部(遮蔽手段)
68 リブ(第2縦壁、遮蔽手段)
72 アウタパネル(ルーフサイドレール)
74 縦壁(第3縦壁)
76 凹部(遮蔽手段)
78 樹脂ルーフ
80 リブ(遮蔽手段)
84 樹脂ルーフ
90 リブ(遮蔽手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両上部に設けられた樹脂ルーフと、
前記樹脂ルーフの車両幅方向両端部に車両前後方向に沿って設けられたルーフサイドレールと、
前記樹脂ルーフの車両幅方向両端部と前記ルーフサイドレールとを接合する接合剤と、
前記樹脂ルーフ及び前記ルーフサイドレールの少なくとも一方に形成され、前記接合剤を車両外側から見えないように遮蔽する遮蔽手段と、
を有する車両上部構造。
【請求項2】
前記遮蔽手段が、
前記ルーフサイドレールの車両幅方向内側に設けられると共に、車両下方側へ向かって形成され車両前後方向に沿って設けられた第1段部と、
前記第1段部の車両幅方向内側に設けられると共に、車両下方側へ向かって形成され車両前後方向に沿って設けられた第2段部と、
前記樹脂ルーフの車両幅方向両端部に設けられると共に、前記第1段部内に配置され車両前後方向に沿って設けられたフランジ部と、
前記フランジ部の車両幅方向内側に設けられると共に、前記第2段部を構成する第1縦壁と対向して形成され車両前後方向に沿って設けられ、前記第1縦壁との間に前記接合剤が介在される第2縦壁と、
を含んで構成された請求項1に記載の車両上部構造。
【請求項3】
前記第1縦壁及び前記第2縦壁は、車両下方へ向かうにつれて車両内側へ傾斜する傾斜壁である請求項2に記載の車両上部構造。
【請求項4】
前記遮蔽手段が、
前記ルーフサイドレールの車両幅方向内側に車両下方側へ向かって形成され車両前後方向に沿って設けられた第3縦壁に設けられ、車両幅方向外側へ向かって形成された凹部と、
前記樹脂ルーフの車両幅方向両端部に車両前後方向に沿って設けられ、前記凹部内に配置されて当該凹部の底壁との間に前記接合剤が介在するリブと、
を含んで構成された請求項1に記載の車両上部構造。
【請求項5】
前記樹脂ルーフと前記ルーフサイドレールとの間で車両幅方向において隙間が設けられている請求項1〜4の何れか1項に記載の車両上部構造。
【請求項6】
前記樹脂ルーフと前記ルーフサイドレールとの間で車両高さ方向において隙間が設けられている請求項5に記載の車両上部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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