説明

車両上部構造

【課題】車両幅方向外側からルーフサイドレールに入力された荷重をルーフリインフォースメントに効率的に伝達させる。
【解決手段】接合板100の切起片部120の縦壁部122を介して、ルーフサイドレール14からルーフリインフォースメント50へと荷重Fが伝達される。よって、応力が集中する部位のルーフサイドレール14の変形が防止又は抑制される。また、ルーフサイドレール14の接合部28が、接合板100の切起片部120の横壁部124に案内されることで、ルーフリインフォースメント50の端部52の荷重Fの入力点が図心と略同じ位置になる。よって、ルーフリインフォースメント50に発生する曲げモーメントMを略0又は非常に小さくすることができる。したがって、車両幅方向外側からルーフサイドレール14に入力された荷重Fを、ルーフリインフォースメント50に効率的に伝達することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両上部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、側面衝突時にルーフサイドレールが車両幅方向に案内されることによって、ルーフサイドレールの接合部がより適切にルーフリインフォースメントの端部に当接され、これにより側面衝突時におけるルーフサイドレールからルーフリインフォースメントへの側突荷重の伝達をより効率的に行い、車両上部の変形を抑制する構成が開示されている(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献2には、車両側突時における衝突荷重を強固なインフレータを荷重伝達部材の一部として機能させると共にルーフ側のルーフセンタリンフォースに対する荷重伝達の受面を拡大しルーフ変形の安定性を向上させることで、車両側突時におけるルーフの変形量を低減させる構成が開示されている(特許文献2を参照)。
【0004】
しかし、車両幅方向外側からルーフサイドレールに入力された荷重を、ルーフリインフォースメントに、より効率的に伝達し、車両上部の変形をより抑制することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−247189号公報
【特許文献2】特開2010−095088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、車両幅方向外側からルーフサイドレールに入力された荷重を、ルーフリインフォースメントに効率的に伝達させる車両上部構造を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、車両上部の車両幅方向両側に、車両前後方向に夫々延設されたルーフサイドレールと、両側の前記ルーフサイドレール間に車両幅方向を長手方向として設けられ、車両幅方向外側の端部が前記ルーフサイドレールの車両幅方向内側の端部と対向するルーフリインフォースメントと、前記ルーフリインフォースメントの前記端部と前記ルーフサイドレールの前記端部とに接合された接合体と、前記接合体に設けられ、前記接合体から車両上下方向下側に延在し前記ルーフリインフォースメントの前記端部と前記ルーフサイドレールの前記端部との間に配置された縦壁部と、前記縦壁部から車両幅方向外側に延在し前記ルーフリインフォースメントの下端部よりも車両上下方向上側に配置され且つ前記の前記ルーフサイドレールの端部よりも下側に配置された横壁部と、を有する片部とを備える。
【0008】
請求項1の発明では、車両幅方向外側からルーフサイドレールに荷重が入力されると、ルーフサイドレールがルーフリインフォースメントに対して車両幅方向内側へ移動する。そして、ルーフサイドレールの端部とルーフリインフォースメントの端部との間に片部の縦壁部が挟まれた状態となることで、荷重がルーフサイドレールの端部からルーフリインフォースメントへと伝達される。このとき、ルーフサイドレールの端部とルーフリインフォースメントの端部との間に縦壁部が挟まれているので、ルーフサイドレールの端部がルーフリインフォースメントの端部に直接接触する場合よりも、端部の局所的が変形が抑制され、効果的に荷重が伝達される。
【0009】
また、片部の横壁部によって、ルーフサイドレールの端部の車両下方側への移動が抑制される。よって、ルーフサイドレールの端部の下端部にルーフサイドレールの端部が当接し、ルーフサイドレールの端部の下端部から荷重が入力されことによるルーフサイドレールに大きな曲げモーメントが発生することが防止される。つまり、ルーフサイドレールに発生する曲げモーメントが小さくなる。
【0010】
このように、縦壁部と横壁部と備えた片部を有する接合体で、ルーフリインフォースメントの端部とルーフサイドレールの端部とが連結されているので、車両幅方向外側からルーフサイドレールに入力された荷重が、ルーフリインフォースメントに効率的に伝達する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、縦壁部と横壁部とを備えた片部を有する接合体で、ルーフリインフォースメントの端部とルーフサイドレールの端部とが連結されていない構成と比較し、車両幅方向外側からルーフサイドレールに入力された荷重をルーフリインフォースメントに効率的に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両上部構造を有する車両を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両上部構造を示す、(A)は図1における2A−2A線(車両幅方向)に沿った縦断面図であり、(B)はその平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両上部構造を示す斜視図である。
【図4】(A)は図3における接合板を示す斜視図であり、(B)は図3におけるルーフリインフォースメントを示す斜視図である。
【図5】(A)は本発明の一実施形態に係る車両上部構造において、車両幅方向外側からの荷重によって、ルーフサイドレールがルーフリインフォースメントに対して車両幅方向内側へ相対移動して、該ルーフサイドレールの接合部から接合板の縦壁部を間に挟んでルーフリインフォースメントの端部に荷重が伝達された状態を示す拡大断面図であり、(B)は比較例の車両上部構造において、ルーフサイドレールの接合部がルーフリインフォースメントの端部に当接して荷重が伝達された状態を示す拡大断面図である、
【図6】図5(B)の比較例の車両上部構造において、応力が集中することによるルーフサイドレールの変形を模式的に示す斜視図である。
【図7】図5(B)の比較例の車両上部構造において、ルーフリインフォースメントに発生する図心を通る車両前後方向の軸回りのモーメントを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
図1〜図5を用いて、本発明の一実施形態に係る車両上部構造について説明する。なお、各図の車両前後方向前側を矢印FRで示し、車両幅方向外側を矢印OUTで示し、車両上下方向上側を矢印UPで示す。
【0014】
図1に示すように、車両上部構造Sは、車両10のセンターピラー12の上部における、ルーフサイドレール14からルーフ20側への荷重伝達構造に係り、図2及び図3に示すように、ルーフリインフォースメント50と、ルーフサイドレール14と、前記ルーフリインフォースメント50と前記ルーフサイドレール14とを連結する接合板100と、を有している。
【0015】
図2に示すように、ルーフサイドレール14は、車両上部の車両幅方向両外側部分に車両前後方向に夫々延設された構造部材である。また、ルーフサイドレール14は、インナパネル24とアウタパネル(サイメンアウタ)26とを、少なくとも車両幅方向内側の端部における接合部28において接合して構成されている。更に、インナパネル24とアウタパネル26との間には、センターピラー12から延設されたアウタリインフォースメント30が挟み込まれて、車両幅方向内側の接合部(端部)28において共に接合されている。
【0016】
なお、図2では図示されていないが、センターピラー12(図1参照)を外れた位置において、インナパネル24、アウタパネル26及びアウタリインフォースメント30が接合されており、これによりルーフサイドレール14は閉断面に構成されている。
【0017】
ルーフパネル16は、両側のルーフサイドレール14間に跨って配設されたルーフ20の外装部材である。また、ルーフパネル16は、このルーフパネル16の車両上下方向下側に車両幅方向に沿って配置されたルーフリインフォースメント50によって補強されている、
【0018】
また、ルーフパネル16の車両幅方向外側の端部17(図2(A))は、後述する接合板100の側部130の先端部132と共に、ルーフサイドレール14の接合部28に接合されている。なお、この接合部28は、ルーフ20とルーフサイドレール14との境界において車両前後方向に延びる、いわゆるモヒカン溝部42に位置している。
【0019】
図2、図3、図4(B)に示すように、ルーフリインフォースメント50は、ルーフパネル16の車室44側において車両幅方向に延設されたルーフ20の補強部材である。ルーフリインフォースメント50は、車両前後方向に沿った断面が略W字型(断面逆ハット形状が車両前後方向に並んだ形状)に形成されている。言い換えると、溝部54が二つ車両前後方向に並んで形成されている。
【0020】
なお、二つの溝部54の車両幅方向に沿った側壁を、車両前方側から側壁部58A,58B,58C,58Cとする。また、これらを区別する必要がない場合は、符号の後のA,B,C,Dを省略して側壁部58と記すことがある。
【0021】
また、ルーフリインフォースメント50のフランジ部56が、ルーフパネル16の車両上下方向下側に位置するアッパーリインフォースメントアッパー(図示略)の下面に接合されることよって閉断面構造に構成されている。
【0022】
図2及び図3に示すように、ルーフリインフォースメント50は、車両前後方向においてセンターピラー12(図1参照)の位置に対応して設けられている。また、ルーフリインフォースメント50の車両幅方向外側の端部52の端面52Tは、ルーフサイドレール14の接合部28の端面28Tと車両幅方向に間隔をあけて対向して配置されている。
【0023】
接合板100は、ルーフリインフォースメント50とルーフサイドレール14とを連結するように配設された荷重伝達部材であり、ルーフリインフォースメント50の端部52の上面52A(図4(B)を参照)とルーフサイドレール14の接合部28の上面28Aとに接合されている。
【0024】
図2、図3、図4(A)に示すように、接合板100には、車両下方側に延在する切起片部120が設けられしている。切起片部120は、接合板100の車両前後方向の両側の側部130と車両幅方向内側の根元部110とを残して切り起こされて形成されている。
【0025】
切起片部120は、車両前後方向を折筋として下側に折り曲げられて形成され車両上下方向下側方向に延在する縦壁部122と、車両前後方向を折筋として水平方向に折り曲げられて形成され車両幅方向外側に延在する横壁部124と、で構成されている。そして、車両前後方向に見ると、縦壁部122と横壁部124とで略L字状を形成する。
【0026】
接合板100の側部130は、車両幅方向に長い帯状とされており、車両幅方向外側に向かうに従って車両下方側に若干湾曲している。よって、接合板100の根元部110よりも、側部130の先端部132の方が、若干車両下方側に位置する。
【0027】
そして、図2及び図3に示すように、接合板100の根元部110がルーフリインフォースメント50の端部52の上面52Aに、スポット溶接等によって接合され、側部130の先端部132がルーフサイドレール14の接合部28の上面28Aにスポット溶接等によって接合されている。
【0028】
また、図2(B)と図4に示すように、接合板100の切起片部120の縦壁部122は、ルーフリインフォースメントの溝部54が形成された部位よりも車両前後方向に幅広に設定されている。具体的には、二つの溝部54の側壁部58の車両前後方向の最も前側の側壁部58Aと最も後側の側壁部58Dとの幅W1よりも、接合板100の切起片部120の縦壁部122の車両前後方向の幅W2の方が幅広になるように設定されている。
【0029】
また、図2(A)に示すように、接合板100の切起片部120の横壁部124は、ルーフリインフォースメント50を車両前後方向に見た場合の図心G(図7も参照)の車両上下方向の高さと一致又は略一致するように配置されている。
【0030】
<作用及び効果>
つぎに本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0031】
図1及び図2において、車両上部構造Sを有する車両10が、車両幅方向外側から荷重Fを受けると、センターピラー12を介して、車両上部のルーフサイドレール14に入力され、車両上部が車両幅方向に変形する。これにより図5(A)に示されるように、ルーフサイドレール14がルーフリインフォースメント50に対して車両幅方向内側へ相対移動する。このとき、ルーフリインフォースメント50とルーフサイドレール14とを連結する接合板100の側部130が車両上下方向に湾曲し、ルーフサイドレール14の車両幅方向内側への相対移動を許容する。
【0032】
なお、側部130は、車両幅方向に長い帯状とされているので(図2(A),図3、図4(A)を参照)、車両上下方向に湾曲しやすく、車両前後方向には湾曲しにくい構造である。よって、ルーフサイドレール14は車両幅方向内側へ円滑に移動する。このように、車両上部構造Sでは、簡易な構成により、ルーフリインフォースメント50に対するルーフサイドレール14の相対移動を許容することができると共に、その移動方向を車両幅方向に案内することができる。
【0033】
図5(A)に示すように、ルーフサイドレール14の車両幅方向内側に相対移動すると、ルーフサイドレール14の接合部28の端面28Tと、ルーフリインフォースメント50の端部52の端面52Tと、で接合板100の切起片部120の縦壁部122が挟まれた状態となる。そして、ルーフサイドレール14から接合板100の縦壁部122を介して、ルーフリインフォースメント50に荷重Fが伝達される。
【0034】
ここで、比較例として、本発明が適用されていない、すなわち、接合板100でルーフサイドレール14とルーフリインフォースメント50とが連結されていない構成について、図5(B)、図6、図7を用いて説明する。
【0035】
図5(B),図6に示すように、ルーフサイドレール14の接合部28の端面28Tが、ルーフリインフォースメント50の端部52の端面52Tに直接当たる。
【0036】
ルーフサイドレール14の接合部28は略水平の板状であり、当接する端面28Tは車両前後方向に沿った横線状である。また、ルーフリインフォースメント50の端部52の端面52Tの当接部位は溝部54の側壁部58であり、端面は車両上下方向に沿った縦線状である。
【0037】
よって、図6に示すように、当接箇所Qは交差するエッジ同士(縦線状の端面と横線状の端面)が接触するので、当接箇所Qに応力が集中し、例えば、図のようにルーフサイドレール14に局所的な変形が大きくなることがある。
【0038】
また、図5(B)に示すように、ルーフサイドレール14の接合部28が車両上下方向下側に移動することで、ルーフリインフォースメント50の端部52の荷重Fの入力点N2が図心Gよりも下側に位置する。このため図7に示すように、図心Gとの距離Lが大きくなり、ルーフリインフォースメント50に発生する曲げモーメントMが大きくなる(M=F×L)。
【0039】
これらによって、ルーフサイドレール14への荷重Fの伝達効率が低下するので、ルーフパネル16やルーフサイドレール14の板厚を厚くする等を行い荷重Fの伝達効率を向上させる必要が生じることがある。
【0040】
これに対して本実施形態では、図5(A)に示すように、ルーフサイドレール14の車両幅方向内側に相対移動すると、ルーフサイドレール14の接合部28の端面28Tと、ルーフリインフォースメント50の端部52の端面52Tと、で接合板100の切起片部120の縦壁部122が挟まれた状態で荷重Fが伝達される。つまり、接合板100の切起片部120の面状の縦壁部122を介して、荷重Fが伝達される。
【0041】
すなわち、ルーフサイドレール14の縦線状の接合部28が面状の縦壁部122に当接し、面状の縦壁部122にルーフリインフォースメント50の横線状の端部52が当接するので、広範囲に荷重Fが伝達される。したがって、応力が集中することによる、例えばルーフサイドレール14の変形(図6参照)が防止又は抑制される。
【0042】
また、ルーフサイドレール14の接合部28は接合板100の切起片部120の横壁部124に案内されることで、ルーフリインフォースメント50の端部52の荷重Fの入力点N1が図心Gと略同じ位置に案内される。よって、距離Lを0又は略0とすることができ、この結果、ルーフリインフォースメント50に発生する曲げモーメントMを略0又は非常に小さくすることができる(図7参照、M=F×L)。
【0043】
このように、切起片部120を有する接合板100でルーフリインフォースメント50の端部52とルーフサイドレール14の接合部28とが連結されていない構成と比較し、車両幅方向外側からルーフサイドレール14に入力された荷重Fを、ルーフリインフォースメント50に効率的に伝達することができる。言い換えると、ルーフパネル16やルーフサイドレール14の板厚を厚くする等を行い荷重Fの伝達効率を向上させる必要が生じない。また、これにより車両10の上部の変形をより抑制することができる。
【0044】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0045】
例えば、切り起こしによって、接合板100に片部の一例としての切起片部120を形成したが、これに限定されない。どのような方法で、接合板に片部を設けてもよい。例えば、片部を別部材構成とし、溶接等で接合板に接合してもよい。
【0046】
また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0047】
10 車両
14 ルーフサイドレール
28 接合部(ルーフサイドレールの車両幅方向内側の端部)
50 ルーフリインフォースメント
52 端部(ルーフリインフォースメントの端部)
100 接合板(接合体)
120 切起片部(片部)
122 縦壁部
124 横壁部
S 車両上部構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両上部の車両幅方向両側に、車両前後方向に夫々延設されたルーフサイドレールと、
両側の前記ルーフサイドレール間に車両幅方向を長手方向として設けられ、車両幅方向外側の端部が前記ルーフサイドレールの車両幅方向内側の端部と対向するルーフリインフォースメントと、
前記ルーフリインフォースメントの前記端部と前記ルーフサイドレールの前記端部とに接合された接合体と、
前記接合体に設けられ、前記接合体から車両上下方向下側に延在し前記ルーフリインフォースメントの前記端部と前記ルーフサイドレールの前記端部との間に配置された縦壁部と、前記縦壁部から車両幅方向外側に延在し前記ルーフリインフォースメントの下端部よりも車両上下方向上側に配置され且つ前記の前記ルーフサイドレールの端部よりも下側に配置された横壁部と、を有する片部と、
を備える車両上部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate