説明

車両下部構造

【課題】車両の下部両側に設けられた取付部の車幅方向における剛性を確保できるようにする。
【解決手段】車幅方向に延在する延在部32と、延在部32の両端部に設けられ、車体前方向又は車体後方向に凸となる底面視略「V」字状の連繋部40と、を含んで構成されたブレース30と、連繋部40によって、車両12の下部両側に設けられた取付部20と締結されるボデー部16と、を有する車両下部構造10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両の下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の下部両側に設けられたトレーリングアームブラケットの車幅方向(左右方向)の剛性確保に利用されるタンク下ブレースは、従来から知られている。このブレースは、車幅方向を長手方向として燃料タンクの車体下方側に配置されており、その車幅方向両端部が、トレーリングアームブラケットとロッカとに跨って取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−279951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このブレースは、燃料タンクとの位置関係から、車幅方向両端部を車体前方側へ湾曲せざるを得ない場合がある。その場合、ブレースに車体後方側へ向かう曲げ変形が励起されてしまうため、トレーリングアームブラケットの左右剛性が確保されないおそれがある。このように、車両の下部両側に設けられた取付部(トレーリングアームブラケット)の左右剛性を確保するためのブレースには、未だ改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、車両の下部両側に設けられた取付部の車幅方向における剛性を確保できる車両下部構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の車両下部構造は、車幅方向に延在する延在部と、前記延在部の両端部に設けられ、車体前方向又は車体後方向に凸となる底面視略「V」字状の連繋部と、を含んで構成されたブレースと、前記連繋部によって、車両の下部両側に設けられた取付部と締結されるボデー部と、を有することを特徴としている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、ブレースの連繋部が、車体前方向に凸となる底面視略「V」字状に形成されている場合、ブレースの延在部に車体後方向の曲げ変形が励起されたときには、その曲げ変形される方向と逆方向の力が、その連繋部に作用する。同様に、ブレースの連繋部が、車体後方向に凸となる底面視略「V」字状に形成されている場合、ブレースの延在部に車体前方向の曲げ変形が励起されたときには、その曲げ変形される方向と逆方向の力が、その連繋部に作用する。したがって、ブレースに車体前方向又は車体後方向の曲げ変形が励起されても、その曲げ変形を抑制することができ、車両の下部両側に設けられた取付部の車幅方向における剛性を確保することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の車両下部構造は、請求項1に記載の車両下部構造であって、前記ボデー部がロッカであり、前記取付部がトレーリングアームブラケットであることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、ブレースの連繋部によって、トレーリングアームブラケットをロッカと締結しているので、車両の下部両側に設けられたトレーリングアームブラケットの車幅方向における剛性を確保することができる。
【0010】
また、請求項3に記載の車両下部構造は、請求項2に記載の車両下部構造であって、前記延在部は、車幅方向に沿った直線部と、前記直線部の両端部で車体前方向又は車体後方向に向かって曲折された曲折部と、を備え、前記連繋部は、前記曲折部を含んで前記延在部に固定されていることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、連繋部が、車幅方向に沿った直線部の両端部で車体前方向又は車体後方向に向かって曲折された曲折部を含んで、延在部に固定されているので、ブレースの車体前方向又は車体後方向の曲げ変形に対する剛性を向上させることができる。
【0012】
また、請求項4に記載の車両下部構造は、請求項3に記載の車両下部構造であって、前記連繋部は、少なくとも車体前方向又は車体後方向に凸とされている頂部で前記トレーリングアームブラケットに締結されており、前記頂部における前記トレーリングアームブラケットとの締結点と、前記ロッカとの締結点とを結ぶ仮想直線が、前記曲折部の車体外方側への仮想延長線と交差する構成とされていることを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、連繋部の頂部におけるトレーリングアームブラケットとの締結点と、ロッカとの締結点とを結ぶ仮想直線が、曲折部の車体外方側への仮想延長線と交差する構成とされているので、曲折部が、その仮想直線と略平行な方向に加えられる振動に対する抵抗部材となる。したがって、ブレースの車体前方向又は車体後方向の曲げ変形に対する剛性を向上させることができる。
【0014】
また、請求項5に記載の車両下部構造は、請求項4に記載の車両下部構造であって、前記連繋部は、前記頂部以外に少なくとも2つの締結点で前記トレーリングアームブラケットに締結されており、前記2つの締結点を結ぶ仮想直線が、車幅方向に沿った直線とされていることを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、連繋部の頂部以外でトレーリングアームブラケットに締結される2つの締結点を結ぶ仮想直線が、車幅方向に沿った直線とされているので、車両のカーブ走行時に受ける遠心力に対して、ブレースの剛性を確保することができる。したがって、車両の操縦安定性を向上させることができる。
【0016】
また、請求項6に記載の車両下部構造は、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の車両下部構造であって、前記連繋部は、前記延在部を車体上方側から覆うように、車体下方側が開放された開断面形状とされているガセットであることを特徴としている。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、連繋部であるガセットが、延在部を車体上方側から覆うように、車体下方側が開放された開断面形状とされているので、その延在部に対してガセットを固定し易い。また、このような開断面形状とすることにより、ガセット内への泥水等の浸入や、ガセット内に水溜まりができるのを抑制又は防止することができる。
【0018】
また、請求項7に記載の車両下部構造は、請求項6に記載の車両下部構造であって、前記ガセットの前記延在部を覆う壁面は、前記延在部の外形状に沿った形状とされていることを特徴としている。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、ガセットの延在部を覆う壁面が、延在部の外形状に沿った形状とされているので、ガセットと延在部との間のがたつきを抑制又は防止することができる。
【0020】
また、請求項8に記載の車両下部構造は、請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の車両下部構造であって、前記ブレースは、燃料タンクの車体下方側に配置されていることを特徴としている。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、燃料タンクの車体下方側に配置されるタンク下ブレースとして最適なブレースとなる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、車両の下部両側に設けられた取付部の車幅方向における剛性を確保できる車両下部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態に係る車両下部構造を示す底面図である。
【図2】トレーリングアームブラケット及びロッカに対するガセットの締結点を拡大して示す底面図である。
【図3】ブレースのパイプ部とガセットを示す底面図である。
【図4】図3のX−X線矢視断面図である。
【図5】トレーリングアームブラケット及びロッカにガセットを締結する前の状態を示す分解斜視図である。
【図6】(A)本実施形態に係るブレースを備えた車両に対して加振した状態を示す底面図である。(B)曲げ変形が励起された本実施形態に係るブレースを示す底面図である。
【図7】(A)本実施形態に係るブレースに曲げ変形が励起されたときの力の方向を示す説明図である。(B)曲げ変形が励起された本実施形態に係るブレースを模式的に示す説明である。
【図8】(A)比較例に係るブレースを備えた車両に対して加振した状態を示す底面図である。(B)曲げ変形が励起された比較例に係るブレースを示す底面図である。
【図9】(A)比較例に係るブレースに曲げ変形が励起されたときの力の方向を示す説明図である。(B)曲げ変形が励起された比較例に係るブレースを模式的に示す説明である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、各図において、車体上方側を矢印UPで示し、車体前方向を矢印FRで示し、車幅方向外側を矢印OUTで示す。
【0025】
図1で示すように、本実施形態に係る車両下部構造10は、車両12の下部で、かつ後輪14のやや車体前方側(燃料タンク15の車体下方側)に、車幅方向を長手方向として配置されるブレース30(「操安ブレース」、「タンク下ブレース」ということもある)を備えている。
【0026】
図1〜図3で示すように、このブレース30は、車幅方向に延在する延設部としての筒棒状のパイプ部32と、パイプ部32の両端部に、そのパイプ部32を延長させるように設けられ(一体に取り付けられ)、車体前方向に凸となる底面視略「V」字状の連繋部としてのガセット40と、を含んで構成されている。
【0027】
そして、後述するように、各ガセット40により、車両12の下部両側に設けられた取付部としてのトレーリングアームブラケット20が、ボデー部としての左右のロッカ16のロッカインナパネル16Aの下部に、それぞれ締結されるようになっている。つまり、各ガセット40は、トレーリングアームブラケット20とロッカ16(ロッカインナパネル16A)とに跨って取り付けられるようになっている(図5参照)。
【0028】
これにより、以下に説明するように、トレーリングアームブラケット20の車幅方向における剛性が確保される構成であり、車両12の操縦安定性が向上される構成となっている。なお、このブレース30(パイプ部32及びガセット40)は、車両12の左右のロッカ16の車幅方向内側への変形を抑制可能なように(ブレース30が車体前後方向に曲げ変形し難いように)、車幅方向の圧縮荷重に対して高剛性の金属合金で成形されている。
【0029】
図4で示すように、ブレース30のパイプ部32は、断面略楕円形状又は断面略円形状に形成されており、図2、図3で示すように、車幅方向に沿った(車幅方向と平行な)直線部34と、燃料タンク15との干渉を避けるために、直線部34の両端部側で車体前方向に向かって折り曲げられて延在する曲折部36と、を備えている。そして、各ガセット40は、その曲折部36を含んでパイプ部32に固定されている。
【0030】
詳細には、各ガセット40は、図3で示す底面視で、その車幅方向内側端部42が、曲折部36に沿った折れ曲がり形状(曲折形状)とされており、図1で示すように、その車幅方向内側端部42間のパイプ部32が直線部34のみとなるように、そのパイプ部32の両端部に固定されている。したがって、ガセット40の車幅方向内側端部42とは、パイプ部32の曲折部36が入り込んで重なっている部分を指している。
【0031】
また、各ガセット40の車幅方向内側端部42は、図4で示すように、パイプ部32の曲折部36を車体上方側から覆うように、その車体下方側が開放された開断面形状とされている。そして、その曲折部36を覆う車幅方向内側端部42の壁面42Aの断面形状が、曲折部36(パイプ部32)の外形状(外周面36A)に沿った形状とされており、この壁面42Aの車体下方側部分が、曲折部36の外周面36Aに溶接によって一体に取り付けられるようになっている。
【0032】
なお、そのガセット40のパイプ部32(曲折部36)との溶接部38よりも車体下方側の両辺縁部44は、パイプ部32(曲折部36)の径方向外側(パイプ部32の軸方向と直交する方向)へ拡がるように、ガセット40の車幅方向内側端部42の内端面42Bを除く全周に亘って形成されている。これにより、その溶接作業がし易くなるとともに、ガセット40内に泥水等が溜まり難くなる構成である。
【0033】
また、図3で示すように、パイプ部32の曲折部36の端面36Bよりも車幅方向外側におけるガセット40の複数箇所(図示のものは4箇所)には、それぞれボルト挿通孔52、54、56、58が形成されている。詳細には、ロッカ16(ロッカインナパネル16A)と締結するための1つのボルト挿通孔52と、トレーリングアームブラケット20と締結するための3つのボルト挿通孔54、56、58が形成されている。
【0034】
ロッカ16(ロッカインナパネル16A)と締結するためのボルト挿通孔52は、ガセット40の車幅方向外側端部46に形成されている。また、トレーリングアームブラケット20と締結するための1つ目(車体最外側)のボルト挿通孔54は、ロッカ16(ロッカインナパネル16A)と締結するためのボルト挿通孔52の車幅方向内側に近接して形成されている。
【0035】
そして、そのボルト挿通孔54を通る車幅方向に沿った仮想直線K1上で、かつガセット40の車幅方向内側端部42寄り(近傍)には、トレーリングアームブラケット20と締結するための2つ目(車体最内側)のボルト挿通孔58が形成されている。また、トレーリングアームブラケット20と締結するための3つ目(車体最前側)のボルト挿通孔56は、ガセット40の車体前方側へ凸となる頂部48に形成されている。
【0036】
一方、図5で示すように、左右のロッカ16のロッカインナパネル16Aの下部には、それぞれ車幅方向内側へ張り出すフランジ部18が一体に形成されている。そして、各フランジ部18に、ボルト挿通孔52と連通するボルト挿通孔18Aが形成されている。
【0037】
また、各トレーリングアームブラケット20は、底面視略逆「U」字状に形成されており、その車幅方向で互いに対向する壁部22、24の車体下方側辺縁部には、それぞれ車幅方向へ張り出すフランジ部26、28が一体に形成されている。
【0038】
そして、車幅方向外側へ張り出すフランジ部26には、1つのボルト挿通孔26Aが形成されており、車幅方向内側へ張り出すフランジ部28には、2つのボルト挿通孔28A、28Bが形成されている。つまり、車幅方向内側へ張り出すフランジ部28に形成されるボルト挿通孔28A、28Bは、フランジ部28の長手方向(車体前後方向)両端部側にそれぞれ形成されている。
【0039】
したがって、図5で示すように、ガセット40のボルト挿通孔52、54、56、58と、それらと連通するロッカ16(ロッカインナパネル16A)のボルト挿通孔18A及びトレーリングアームブラケット20のボルト挿通孔26A、28A、28Bに、それぞれボルト50を挿通し、図示しないナットに螺合することにより、ガセット40が、ロッカ16(ロッカインナパネル16A)とトレーリングアームブラケット20とに跨って締結される構成である(図2参照)。
【0040】
また、図2、図3で示すように、ガセット40のロッカ16(ロッカインナパネル16A)との締結点C1(ボルト挿通孔52)と、ガセット40の頂部48におけるトレーリングアームブラケット20との締結点C2(ボルト挿通孔56)とを結ぶ仮想直線K2は、曲折部36の車体外方側への仮想延長線K3と交差する構成とされている。
【0041】
また、図2、図3で示すように、ガセット40の頂部48以外のトレーリングアームブラケット20との締結点C3(ボルト挿通孔54)と締結点C4(ボルト挿通孔58)とを結ぶ仮想直線K1は、上記したように、車幅方向と平行な(車幅方向に沿った)直線とされている。
【0042】
以上のような構成の車両下部構造10において、次にその作用について説明する。まず、比較例について説明する。図8で示すように、この比較例に係るブレース130には、ガセット40が設けられておらず、燃料タンク15との干渉を避けるために車体前方側へ湾曲されたパイプ部132の両端部134が、それぞれトレーリングアームブラケット20とロッカ16(ロッカインナパネル16A)とに跨って取り付けられている。
【0043】
この比較例に係るブレース130が取り付けられたトレーリングアームブラケット20の車幅方向における剛性を確認するため、そのブレース130が取り付けられた車両12に対して車幅方向へ振動を加える加振試験を行った。図8(A)は加振開始時、図8(B)は加振開始後の状態である。なお、図8(B)は誇張して示されている。この図8(B)で示すように、ブレース130のパイプ部132には、車体後方側へ向かう曲げ変形が励起され易い。
【0044】
すなわち、図9(A)で示すように、パイプ部132に車体後方側へ向かう曲げ変形力F1が加えられると、そのパイプ部132の両端部134には、車体後方側で、かつ車幅方向内側へ向かう引張力F2が加えられる。つまり、そのパイプ部132の両端部134には、車体後方側へ向かう引張力F2の分力F3が加えられる。
【0045】
したがって、比較例に係るブレース130には、図8(B)、図9(B)で示すように、車体後方側へ向かって比較的大きな曲げ変形が励起され、これによって、ブレース130の車体後方向への曲げ変形に対する剛性(軸力)を確保できなくなるおそれがある。つまり、トレーリングアームブラケット20の車幅方向における剛性を確保できなくなるおそれがある。しかしながら、本実施形態に係るブレース30の場合には、その剛性を確保することができる。以下、説明する。
【0046】
本実施形態に係るブレース30が取り付けられたトレーリングアームブラケット20の車幅方向における剛性を確認するため、そのブレース30が取り付けられた車両12に対して車幅方向へ比較例と同レベルの振動を加える加振試験を行った。図6(A)は加振開始時、図6(B)は加振開始後の状態である。この図6(B)で示すように、ブレース30のパイプ部32に励起される車体後方側へ向かう曲げ変形は抑制される。
【0047】
すなわち、図7(A)で示すように、ブレース30のパイプ部32の曲折部36に一体に固定されているガセット40は、車体前方側へ凸となる底面視略「V」字状に形成されている。そのため、パイプ部32の直線部34に車体後方側へ向かう曲げ変形力F1が加えられると、ガセット40の頂部48には、車体上下方向を軸方向とする軸回り(直線部34に向かう方向)の回転力が加わり、仮想直線K2に沿った車幅方向内側へ向かう引張力F2が加えられる。
【0048】
つまり、この引張力F2の分力F3は、車体前方側へ向かうので、直線部34に加えられる車体後方側へ向かう曲げ変形力F1は、その分力F3によって相殺されて低減される。したがって、図6(B)、図7(B)で示すように、ブレース30のパイプ部32(直線部34)に加えられる車体後方側へ向かう曲げ変形力F1は低減され、ブレース30に励起される車体後方向への曲げ変形を抑制することができる。
【0049】
よって、ブレース30の車体後方向への曲げ変形に対する剛性(軸力)を向上させることができ、車両12の下部両側に設けられたトレーリングアームブラケット20の車幅方向における剛性を確保することができる。
【0050】
つまり、このブレース30は、パイプ部32(直線部34)の軸力及びガセット40の面内力で、トレーリングアームブラケット20への応力集中を緩和することができるので、トレーリングアームブラケット20の強度性能を向上させることができる。具体的には、本実施形態に係るブレース30とした場合には、比較例に係るブレース130とした場合に比べて、その剛性を15%程度向上させることができる。
【0051】
また、図2、図3で示したように、ガセット40の車幅方向内側端部42は、曲折部36を含んでパイプ部32に固定されている。このように、パイプ部32の両端部に曲折部36が形成され、その曲折部36を含んでガセット40の車幅方向内側端部42が固定されていると、曲折部36が形成されていないパイプ部(図示省略)に、ガセット40の車幅方向内側端部42が固定される構成に比べて、ブレース30の曲げ変形に対する剛性を向上させることができる。
【0052】
更に、このガセット40は、ロッカ16(ロッカインナパネル16A)との締結点C1と、頂部48におけるトレーリングアームブラケット20との締結点C2とを結ぶ仮想直線K2が、曲折部36の車体外方側への仮想延長線K3と交差する構成とされている。ここで、その仮想直線K2は、加振方向と略平行な方向の直線となっている。
【0053】
したがって、パイプ部32の曲折部36の仮想延長線K3が、その仮想直線K2と交差する(望ましくは略直交する)方向の直線とされることにより、その曲折部36が、加えられる振動に対する抵抗部材となる。よって、ブレース30の車体後方向への曲げ変形を抑制することができ、ブレース30の車体後方向への曲げ変形に対する剛性を向上させることができる。
【0054】
逆に言えば、ブレース30の車体後方向への曲げ変形を抑制することができ、ブレース30の車体後方向への曲げ変形に対する剛性を向上させることができる程度に、仮想延長線K3と仮想直線K2とが交差する構成とされていればよく、仮想延長線K3と仮想直線K2とが略直交する構成とされることが最適であるが、略直交する構成とされていなくてもよい。
【0055】
また、この構成とした場合、パイプ部32には曲折部36が必要となるので、燃料タンク15の容量を低減させることなく、ブレース30の曲げ変形に対する剛性を向上させることができる。つまり、ブレース30に対して荷重が入力されても、その荷重を上記のようにコントロールすることができるので、タンク下ブレース(操安ブレース)として最適なブレースになり、車両12の操縦安定性能を向上させることができる。
【0056】
また、ガセット40の頂部48以外のトレーリングアームブラケット20との締結点C3と締結点C4とを結ぶ仮想直線K1は、車幅方向に沿った(車幅方向と平行な)直線とされている。したがって、車両12のカーブ走行時に、後輪14が地面をグリップすることによって受ける遠心力による荷重に対して、ブレース30の剛性を確保することができる。つまり、これにより、車両12の操縦安定性を更に向上させることができる。
【0057】
また、このガセット40は、パイプ部32(曲折部36)を車体上方側から覆うように、車体下方側が開放された開断面形状とされている。したがって、パイプ部32(曲折部36)に対してガセット40を固定し易い。特に、このガセット40のパイプ部32(曲折部36)との溶接部38よりも車体下方側の両辺縁部44は、パイプ部32の径方向外側へ拡がるように形成されているため、その溶接作業がし易い。
【0058】
また、このガセット40は、車体下方側が開放された開断面形状とされているので、ガセット40内への泥水等の浸入や、ガセット40内に泥水等の水溜まりができるのを抑制又は防止することができる。特に、ガセット40の両辺縁部44は、上記したように、パイプ部32の径方向外側へ拡がるように形成されているため、ガセット40内に浸入した泥水等が排出され易い。
【0059】
更に、このガセット40のパイプ部32(曲折部36)を覆う壁面42Aは、パイプ部32(曲折部36)の外形状(外周面36A)に沿った形状とされている。したがって、ガセット40をパイプ部32(曲折部36)に溶接し易く、かつガセット40とパイプ部32(曲折部36)との間のがたつきを抑制又は防止することができる。
【0060】
以上、本実施形態に係る車両下部構造10について図面を基に説明したが、本実施形態に係る車両下部構造10は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜設計変更可能なものである。例えば、ブレース30が燃料タンク15の車体下方側に配置されない場合には、ガセット40を車体後方向に凸となる底面視略「V」字状に形成してもよい。この場合、曲折部36は車体後方向に向かって曲折されて延在される。
【0061】
また、ガセット40のトレーリングアームブラケット20及びロッカ16(ロッカインナパネル16A)に対する締結点C1〜C4の数量は、図示の4つに限定されるものではなく、4つ以上であればいくつでもよい。但し、ロッカ16(ロッカインナパネル16A)には、少なくとも1つの締結点C1を設ける必要があり、トレーリングアームブラケット20には、その締結点C1を通る(加振方向と略平行となる)仮想直線K2上に、少なくとも1つの締結点C2を設けることが望ましい。
【符号の説明】
【0062】
10 車両下部構造
12 車両
16 ロッカ(ボデー部)
20 トレーリングアームブラケット(取付部)
30 ブレース
32 パイプ部(延在部)
34 直線部
36 曲折部
40 ガセット(連繋部)
48 頂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延在する延在部と、前記延在部の両端部に設けられ、車体前方向又は車体後方向に凸となる底面視略「V」字状の連繋部と、を含んで構成されたブレースと、
前記連繋部によって、車両の下部両側に設けられた取付部と締結されるボデー部と、
を有することを特徴とする車両下部構造。
【請求項2】
前記ボデー部がロッカであり、前記取付部がトレーリングアームブラケットであることを特徴とする請求項1に記載の車両下部構造。
【請求項3】
前記延在部は、車幅方向に沿った直線部と、前記直線部の両端部で車体前方向又は車体後方向に向かって曲折された曲折部と、を備え、
前記連繋部は、前記曲折部を含んで前記延在部に固定されていることを特徴とする請求項2に記載の車両下部構造。
【請求項4】
前記連繋部は、少なくとも車体前方向又は車体後方向に凸とされている頂部で前記トレーリングアームブラケットに締結されており、前記頂部における前記トレーリングアームブラケットとの締結点と、前記ロッカとの締結点とを結ぶ仮想直線が、前記曲折部の車体外方側への仮想延長線と交差する構成とされていることを特徴とする請求項3に記載の車両下部構造。
【請求項5】
前記連繋部は、前記頂部以外に少なくとも2つの締結点で前記トレーリングアームブラケットに締結されており、前記2つの締結点を結ぶ仮想直線が、車幅方向に沿った直線とされていることを特徴とする請求項4に記載の車両下部構造。
【請求項6】
前記連繋部は、前記延在部を車体上方側から覆うように、車体下方側が開放された開断面形状とされているガセットであることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の車両下部構造。
【請求項7】
前記ガセットの前記延在部を覆う壁面は、前記延在部の外形状に沿った形状とされていることを特徴とする請求項6に記載の車両下部構造。
【請求項8】
前記ブレースは、燃料タンクの車体下方側に配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の車両下部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−224242(P2012−224242A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94246(P2011−94246)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】