説明

車両下部構造

【課題】車両の空力性能の向上に寄与する車両下部構造を得る。
【解決手段】車両下部構造10は、車両前後方向に長手とされると共に閉断面構造とされサブフレーム12を構成するサイドレール14と、走行風をホイールハウス26内に流出させる導風構造30とを備えている。導風構造30は、サイドレール14に形成された前側の流入口32から流入しサイドレール14をダクトとして後向きに流れる走行風Fを、流出口34から、ホイールハウス26内における前輪20の車両後側に向けて流出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サブフレームを有する車両下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
サスペンションフレーム前端に形成した入口から流入した走行風を、サスペンションフレーム後端に形成した出口から流出させることで、キャブオーバタイプのエンジンの冷却に供する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−25983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両においては、空力性能の向上について改善の余地がある。
【0005】
本発明は、車両の空力性能の向上に寄与する車両下部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係る車両下部構造は、車両前後方向に長手とされると共に閉断面構造とされ、サブフレームを構成するサイドレールと、前記サイドレールに形成された車両前側の開口部から流入した走行風を、該サイドレールに形成された車両後側の開口部からホイールハウス内における車輪の車両後側に向けて流出させる導風構造と、を備えている。
【0007】
請求項1記載の車両下部構造では、サブフレームを構成するサイドレールの前側の開口部から該サイドレール内に流入された走行風は、閉断面構造のサイドレール内をダクトとして流れ、後側の開口部から流出される。この走行風は、ホイールハウス内における車輪に対する車両後側に流出されるので、例えば車輪の回転に伴って生じる乱流(引きずり流れ)が抑制される。
【0008】
このように、請求項1記載の車両下部構造では、車両の空力性能の向上に寄与する。
【0009】
請求項2記載の発明に係る車両下部構造は、請求項1記載の車両下部構造において、前記導風構造は、前記車両後側の開口部が前記サイドレールにおける車幅方向外向きの側壁に形成されており、前記サイドレールの閉断面内を車両後向きに流れてきた走行風を前記後側の開口部に向けて案内するガイド部を有する。
【0010】
請求項2記載の車両下部構造では、サイドレール内をダクトとして車両後方に向けて流れる走行風は、ガイド部にて流れ方向が車幅方向外向きに変換される。すなわち、走行風は、後側の開口部から流出方向に案内され、ホイールハウス内における車輪の後方に効率的に流出される。
【0011】
請求項3記載の発明に係る車両下部構造は、請求項2記載の車両下部構造において、前記ガイド部は、前記サイドレールに一体に形成されている。
【0012】
請求項3記載の車両下部構造では、サイドレールの壁部の一部を閉断面内に突出させてガイド部が形成されている。このため、車両の前面衝突の際に、サイドレール後部のガイド部の形成部位がサブフレームの変形起点となりやすく、衝突エネルギの吸収効果が得られる。
【0013】
請求項4記載の発明に係る車両下部構造は、請求項1〜請求項3の何れか1項記載の車両下部構造において、前記サイドレールは、車両前端側が車両前後方向の中間部よりも車両上側に位置するように、車両前端側と前記中間部との間に形成された傾斜部を有しており、前記前側の開口部は、前記サイドレールの傾斜部における底壁に形成されている。
【0014】
請求項4記載の車両下部構造では、サイドレールにおける車両前方及び下方を向く底壁に前側の開口部が形成されているため、走行風が効率的にサイドレール内に流入される。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明に係る車両下部構造は、車両の空力性能の向上に寄与するという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)は、本発明の実施形態に係る車両下部構造が適用された自動車を示す側面図、(B)は図1(A)の1B−1Bに沿った本発明の実施形態に係る車両下部構造の要部を示す平断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両下部構造を構成するサブフレームを示す下方から見上げた斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両下部構造を構成するガイド部材を示す下方から見上げた斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車両下部構造を構成するガイド部材の変形例を示す下方から見上げた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る車両下部構造10について、図1〜図3に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、及び矢印OUTは、それぞれ車両下部構造10が適用された自動車Vの前方向、上方向、及び車幅(左右)方向の外側を示しており、以下単に上下前後及び車幅方向を示す場合は上記各矢印方向に対応している。
【0018】
図1(A)には、車両下部構造10が適用された自動車Vが側面図にて示されており、図1(B)には、図1(A)の1B−1B線に沿った断面図が模式的に示されている。これらの図に示される如く、車両下部構造10は、自動車Vの前下部に適用されている。なお、車両下部構造10は基本的に車幅方向中央を通る前後方向中心線に対し左右対称に構成されるので、以下の説明では、主に車幅方向の一方側の構造を説明することとする。
【0019】
(全体構成)
図1(B)に示される如く、車両下部構造10は、サブフレーム(サスペンションメンバともいう)12を備えている。図2に示される如く、サブフレーム12は、車両前後方向に長手とされた左右一対のサイドレール14と、左右のサイドレール14の前後の端部間を架け渡すフロントクロス16及びリヤクロス18とを主要部として構成されている。これにより、サブフレーム12は平面視で略矩形枠状を成す所謂井形フレームとされている。
【0020】
サイドレール14の後端には、ダッシュパネルの下端近傍で車体骨格であるフロントサイドメンバのキック部(何れも図示省略)に、剛的又は弾性的に結合される結合部14Jが設けられている。また、サイドレール14の前端部14F又は前後方向の中央部14Cは、その上方に位置するフロントサイドメンバ前部に対し、図示しないブラケット等を介して剛的又は弾性的に結合されるようになっている。
【0021】
図示は省略するが、上記のように車体骨格に結合されたサブフレーム12は、例えばエンジン及び電気モータの少なくとも一方を含んで構成されたパワーユニットを支持している。また、サブフレーム12は、左右のサイドレール14において、車体に対する前輪20懸架用のフロントサスペンションを構成するロアアームを、上下に遥動可能に支持している。
【0022】
このサブフレーム12を構成するサイドレール14は、その前端部14Fが中央部14Cよりも上方に位置しており、これら前端部14Fと中央部14Cとの間は傾斜部14Kとされている。すなわち、サイドレール14は、前端部14Fの後端と中央部14Cとの前端とが傾斜部14Kを介して連続された構成とされている。
【0023】
このサイドレール14は、中空の閉断面構造とされている。より具体的には、図2に示される如く、サイドレール14は、下向きに開口する断面略「コ」字状のアッパパネル22と、上向きに開口する断面略「コ」字状のロアパネル24とを有する。これらアッパパネル22及びロアパネル24が互いの側壁22S、24Sの開口端側を車幅方向に重ね合わせて接合されることで、略矩形の閉断面構造(最中構造)のサイドレール14が形成されている。この状態では、左右の側壁22S、24Sが車幅方向に対向すると共に、天壁22Tと底壁24Bとが上下に対向している。
【0024】
また、図1(B)に示される如く、車輪としての前輪20は、平面視で車幅方向外向きに開口する略「コ」字状に形成されたホイールハウス26内に、転舵可能に配置されている。ホイールハウス26は、車体パネルであるフェンダエプロン25に形成されており、その内周に設けられた樹脂製部品であるフェンダライナ28により飛び石等に対し保護されている。フェンダライナ28は、前輪20を上方(及び前後)から覆う部材として捉えることもできる。なお、図1(B)においてサブフレーム12のフロントクロス16の前方に配置された部材は、フロントバンパを構成するバンパカバー29である。
【0025】
(導風構造)
そして、図1(B)に示される如く、車両下部構造10では、サブフレーム12のサイドレール14をダクトとして利用して、ホイールハウス26内における前輪20の後方の空間26Rに走行風を導く導風構造30を備えている。以下、具体的に説明する。
【0026】
導風構造30は、図2に示される如く、サイドレール14内に走行風を導く前側の開口部としての流入口32を有する。流入口32は、ロアパネル24の底壁24Bにおけるサイドレール14の傾斜部14Kを構成する部分に形成されている。すなわち、流入口32は、ロアパネル24の底壁24Bにおける前方及び下方を共に向く傾斜面において開口している。
【0027】
また、導風構造30は、サイドレール14内から走行風を流出させる後側の開口部としての流出口34を有する。流出口34は、流入口32よりも後方で車幅方向外側を向いて形成されている。より具体的には、サイドレール14におけるアッパパネル22及びロアパネル24の車幅方向外側の各側壁22S、24Sに跨って、流出口34が形成されている。すなわち、流出口34は、下向きに開口する略「コ」字状縁部を有する側壁22S側の切欠部と、上向きに開口する略「コ」字状縁部を有する側壁24S側の切欠部とを組み合わせて形成されている。なお、流入口32、流出口34を構成する上下の切欠部は、それぞれアッパパネル22、ロアパネル24をプレス加工で形成する工程で形成される。
【0028】
さらに、導風構造30は、流入口32から流入されてサイドレール14内を主として後方に向けて流れる走行風を、流出口34側に案内するガイド部材36を備えている。ガイド部材36は、図1(B)に示される如く、平面視で車幅方向内端が外端よりも前側に位置すると共に前外向きに凹となるように湾曲形成されたガイド部36Gと、サイドレール14に固定されるフランジ部36Fとを有する。この実施形態におけるガイド部材36は、図3に示される如く、フランジ部36Fにおいて天壁22Tに固定されており、この状態でガイド部36Gの下端が底壁24Bに至る構成とされている(図示省略)。
【0029】
またさらに、ガイド部36Gの後端位置は、流出口34の後縁の位置に略一致されている。以上説明したガイド部材36のガイド部36Gは、サイドレール14内を後方に流れてきた走行風の流れ方向を、車幅方向外向きの流れ方向(成分を含むよう)に変換するようになっている。
【0030】
そして、流出口34は、フェンダエプロン25に形成された窓部25Wを通じてホイールハウス26内における前輪20の後方の空間26Rに連通している。より具体的には、窓部25Wは、前輪20と、フェンダライナ28における前輪20を後方から覆う後部28Rとの間の空間26Rに臨むように形成されている。
【0031】
以上により、導風構造30は、流入口32からサイドレール14内に流入した走行風を、流出口34及び窓部25Wを通じて、ホイールハウス26内における前輪20とフェンダライナ28の後部28Rとの間の空間26Rに流出する(吹き出す)構成とされている。
【0032】
次に、実施形態の作用を説明する。
【0033】
上記構成の車両下部構造10が適用された自動車Vが走行すると、サブフレーム12を構成するサイドレール14の流入口32から該サイドレール14に走行風Fが流入する。この走行風Fは、サイドレール14内をダクトとして後方に向けて流れ、ガイド部36Gに案内されつつ流出口34から車幅方向外向きに流出される。流出口34から車幅方向外向きに流出された走行風Fは、窓部25Wを通じてホイールハウス26内における前輪20とフェンダライナ28の後部28Rとの間の空間26Rに流出される。
【0034】
ホイールハウス26内では、自動車Vの走行に伴って回転する前輪20に引きずられるように該前輪20の後方で下方からホイールハウス26内に流れ込む空気流により、乱流が生じやすい。
【0035】
ここで、車両下部構造10では、ホイールハウス26内における前輪20の後方に走行風Fが流出されるので、ホイールハウス26内での乱流の原因となる前輪20の回転に伴う引きずり流れが生成することが抑制される。換言すれば、前輪20の回転に伴う引きずり流れが下方からホイールハウス26内に流れ込むことが、車幅方向内側からホイールハウス26内に流れ込む走行風Fにて抑制される。
【0036】
これにより、ホイールハウス26内での乱流の生成が抑制されるので、車両下部構造10を備えない比較例と比較して、車両下部構造10が適用された自動車Vの空力性能が向上する。
【0037】
特に、車両下部構造10では、流出口34に向けて走行風Fを案内するガイド部材36を備えるため、サイドレール14に流入された走行風Fを効率的にホイールハウス26に向けて流出させることができる。すなわち、渦の発生を抑制しつつ、走行風Fを安定的にホイールハウス26に向けて流出させることができる。
【0038】
また、流入口32が底壁24Bにおける傾斜部14Kを構成する部分に配置されているため、換言すれば、流入口32が前向きに開口しているため、走行風Fが効率的にサイドレール14内に導入される。特に、バンパカバー29から前後方向に離間して位置する傾斜部14Kに流入口32が配置されているので、前端部14Fに流入口を設けた構成と比較して、走行風がバンパカバー29に遮られることなくスムースに流入しやすい。しかも、前端部14Fに流入口を設けた構成と比較して、走行風の流路の上下方向の高位差が小さいので、サイドレール14に流入した走行風がスムースに流れる。これらにより、車両下部構造10では、サブフレーム12のサイドレール14をダクトして利用しつつ、走行風Fを効率的にホイールハウス26内に流出させることができる。
【0039】
また、自動車Vの前面衝突の際にサブフレーム12には、フロントサイドメンバ等の車体骨格を介して後向きに衝突荷重が作用する。ここで、流出口34が形成されたサブフレーム12には、上記の衝突荷重によって流出口34を起点とした変形が生じる。すなわち、流出口34は、サブフレーム12における弱化部又は変形促進部として機能し、衝撃エネルギの吸収促進に寄与する。このサブフレーム12の変形による衝突エネルギの吸収によって、流出口34が形成されていない比較例と比較して、自動車Vの被保護部(車室等)に作用する加速度(荷重)が低減される。すなわち、車両下部構造10は、前面衝突の際の乗員保護にも寄与する。
【0040】
次に、サイドレール14内を後方に向かって流れる走行風Fを流出口34に向けてガイドするガイド部の変形例を説明する。
【0041】
図4には、ガイド部材36に代えて設けられた変形例に係るガイド部40の上部40Uが示されている。この図に示される如く、ガイド部40の上部40Uは、アッパパネル22の天壁22T及び左右の側壁22Sを内方(サイドレール14の閉断面の内側)に凹ませることで、アッパパネル22に一体に形成されている。図示は省略するが、ガイド部40の下部は、上部40Uと上下対称を成すように、ロアパネル24に一体に形成されている。そして、アッパパネル22とロアパネル24とを接合することで、上部と下部とが上下に突き合わされてガイド部40が形成される。
【0042】
このガイド部40を備えた構成では、流出口34及びガイド部40が共にサブフレーム12の弱化部又は変形促進部として機能する。このため、前面衝突によりサブフレーム12に変形を生じさせる荷重の設定が容易である。例えば、ガイド部材36を備えた構成と比較して、より低荷重でサブフレーム12の変形を生じさせることができる。また例えば、ガイド部材36を備えた構成と比較して、サブフレーム12を変形させる荷重を維持しつつ、流出口34の寸法形状をホイールハウス26への走行風Fの流出に適した寸法形状としたりすることができる。
【0043】
なお、上記した実施形態では、車両下部構造10がガイド部材36又はガイド部40を備えた例を示したが、本発明はこれに限定されない。この構成においても、サイドレール14の後部は閉じていることから、流出口34から流出する空気流の少なくとも一部は車幅方向外向きに流れることとなる。
【0044】
また、上記した実施形態において、流出口34と窓部25Wとの間をダクト部材等にて繋ぐ構成としても良い。
【0045】
さらに、上記した実施形態では、流入口32がサイドレール14の傾斜部14Kに配置されることで前側を向く例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、サイドレール14の前端に流入口32を形成しても良く、下向きに開口する流入口32に対し走行風Fを導入する空力部材を備えた構成としても良い。
【0046】
またさらに、上記した実施形態では、車両下部構造10が自動車Vの前部に適用された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、リヤ側のサブフレーム、後輪を備えて自動車Vの後部に適用されても良い。
【0047】
このように、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において、各種変形して実施可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 車両下部構造
12 サブフレーム
14 サイドレール
14K 傾斜部
14F 前端部(前端側)
14C 中央部
20 前輪(車輪)
22S 側壁
24S 側壁
24B 底壁
26 ホイールハウス
30 導風構造
32 流入口(車両前側の開口部)
34 流出口(車両後側の開口部)
36G ガイド部
40 ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に長手とされると共に閉断面構造とされ、サブフレームを構成するサイドレールと、
前記サイドレールに形成された車両前側の開口部から流入した走行風を、該サイドレールに形成された車両後側の開口部からホイールハウス内における車輪の車両後側に向けて流出させる導風構造と、
を備えた車両下部構造。
【請求項2】
前記導風構造は、前記車両後側の開口部が前記サイドレールにおける車幅方向外向きの側壁に形成されており、前記サイドレールの閉断面内を車両後向きに流れてきた走行風を前記後側の開口部に向けて案内するガイド部を有する請求項1記載の車両下部構造。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記サイドレールに一体に形成されている請求項2記載の車両下部構造。
【請求項4】
前記サイドレールは、車両前端側が車両前後方向の中間部よりも車両上側に位置するように、車両前端側と前記中間部との間に形成された傾斜部を有しており、
前記前側の開口部は、前記サイドレールの傾斜部における底壁に形成されている請求項1〜請求項3の何れか1項記載の車両下部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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