説明

車両下部構造

【課題】側面衝突及び前面衝突のいずれに対しても強固であってロッカーの薄型化を実現可能な車両下部構造を提供する。
【解決手段】車両下部構造101を構成するロッカー103は、車両前後方向CLに延びる。ロッカー103には、フロアクロスメンバ104が、車幅方向CWに接合している。フロアクロスメンバ104は、ロッカー103の上面にスポット溶接される第1フランジ部122を有して、ロッカー103の上面に位置するフロアクロスメンバ104の端部の断面形状が非平坦形状に上方に突起した形状をなしている。フロアクロスメンバ104には、ロッカー103における車幅方向内側の側面にスポット溶接される第2フランジ部123が形成されている。第1フランジ部122と第2フランジ部123とは、稜線126を介して連続している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッカーとフロアクロスメンバとを接合させてなる自動車の車両下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の車両下部構造に関して、軽量化、剛性の向上のみならず、対衝撃性能を向上させることが要請されている。特に、自動車の車両下部構造での剛性の向上には、車幅方向に延びるフロアクロスメンバと、車両左右両側部に設けられ車両前後方向に延びるロッカーとがどのように接合しているかが大きく関与している。
【0003】
ロッカーとフロアクロスメンバとの接合について、特許文献1には、「フロアクロスメンバ11は、…フロアパネル1の上面側に配設されて、…、フロアクロスメンバ11の左右両端部が1対のサイドシル2に結合されている。」との記載がある(同文献の段落0035、並びに、図1及び図7参照)。また、特許文献2には、「ガセット18は、内端部18bがクロスメンバー31の右端部31bにガセット締結手段126で回動自在に連結されている。」との記載があり(同文献の段落0075)、このガセット18について、「センタピラー27に衝撃荷重Fが作用した場合、右サイドシル13を矢印Aの如く時計回り方向に回転させようとする荷重が作用」して、「右サイドシル13に作用した荷重がガセット18の外端部18aに伝わ」り、「ガセット18が…矢印Bの如く僅かに回動することで、ガセット18の立上ビード部115が当接部85に当接」して「ガセット18の回動が阻止される」ことが述べられている(同文献の段落0077〜0079並びに、図6〜図11参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−269052号公報
【特許文献2】特開2010−036810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図14は、仮想例でのロッカー901及びフロアクロスメンバ902の正面断面図である。図14では、ロッカー901が車両の前後方向L(紙面の前後方向)に延び、フロアクロスメンバ902が車幅方向W(紙面の左右方向)に延び、ロッカー901における車幅方向W内側の側面に筒状のフロアクロスメンバ902の端部が接合し、フロアクロスメンバ902の天井面とロッカー901の内定面とのそれぞれに筒状のバルク部材903の両端部が接合されている。ロッカー901とフロアクロスメンバ902とは、ロッカー901の上面及び車幅方向W内側でのスポット溶接905により接合される。
【0006】
自動車の車両下部構造では、側面衝突時に、ロッカー901の下方且つ車幅方向W内側の辺901Aを中心とする回転G1が生じる。また、このとき、ロッカー901の車幅方向W外側の側面が上方に動いて図14の二点鎖線で示す形状になろうとする断面崩壊G2(マッチ箱変形)も生じる。このため、側面衝突時にBピラー(センターピラー)からの荷重を効率良くフロアクロスメンバ902に伝えて乗員を保護すべく、ロッカー901の回転及びロッカー901の断面の崩壊(マッチ箱変形)を如何に抑えるかが重要となる。
【0007】
ロッカー901の回転の抑制は、一例として、フロアクロスメンバ902やバルク部材903を用いて回転G1に対する反モーメント(図14中の符号F0、F1)を生じさせることで実現される。また、ロッカー901の断面の崩壊の抑制は、一例として、ロッカー901の上面や下面を下方に押す力(図14中の符号F2、F3)を生じさせることで実現される。
【0008】
ここで、自動車の車両下部構造を設計するにあたり、ロッカー901の厚みを低下させて乗降性を向上させ、且つ、床パネル904をフラットにして車内での乗員の移動性を向上させることが望ましい。この場合、床パネル904は、図14中に一点鎖線904Aで示す形状をなさないので、フロアクロスメンバ902による反モーメントF0がロッカー901に作用しない。また、ロッカー901の厚みが低下するので、バルク部材903を配置することができなくなり、反モーメントF1や力F2がロッカー901に作用しない。さらには、ロッカー901の厚みが低下すると、特許文献2でいうところの当接部85(同文献の図6〜図9及び図11)を確保することができず、ガセット18をフロアクロスメンバ902に取り付けられないので、力F3を作用させることができない。
【0009】
また、オフセット前面衝突の際、別の問題が生じる。図14、並びに、仮想例でのロッカー901及びフロアクロスメンバ902の平面図(図15)及び側面図(図16)に基づいて説明する。オフセット前面衝突によるロッカー変形は側面から始まる。即ち、まず、フロアクロスメンバの端部(ロッカー上面着地部)が変形し、次に、フロアクロスメンバの端部(ロッカー側面着地部)に車幅方向Wの力が多くかかり、ついには、ロッカー側面の変形に至る。詳細に述べると、オフセット前面衝突の際、ロッカー901はタイヤからの荷重入力を受け、キック部906はサイドメンバからの荷重入力を受け(これらの荷重入力を、まとめて、図15及び図16において符号F4で示す)、他方、車幅方向Wの略中央に位置するトンネル部907は、慣性により前方へ動こうとする。これにより、ロッカー901は、フロアクロスメンバ902との接合箇所の後方部分908を中心とし平面視で矢印Pの方向に回転しようとする。また、フロアクロスメンバ902に取り付けられた座席910も慣性により前方へ動こうとし、これに更にキック部906からの入力も加わることで、ロッカー901は、側面視で矢印Qの方向に回転しようとする。これにより、接合箇所の前方部分909が捻れる。ここで、図14を参照すると、フロアクロスメンバ902のうちロッカー901の上面に位置する部分は、筒状ではなく平板状をなしており、矢印P、Qの方向の回転によりフロアクロスメンバ902がロッカー901の側面に着地する部分でロッカー901が変形してしまう。これにより、ロッカー901上部での結合が失われ、ロッカー901に対して車幅方向Wに力が集中してしまう。そして、フロアクロスメンバ902のうちロッカー901の上面に位置する部分が変形すると、これをきっかけとして、ロッカー901における車幅方向W内側の側面が変形し、ロッカー901が折れてしまう。
【0010】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、側面衝突及び前面衝突のいずれに対しても強固であってロッカーの薄型化を実現可能な車両下部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の車両下部構造は、車両前後方向に延びるロッカーと、平面視にて前記ロッカーに対して交差する方向に延び前記ロッカーに接合されるフロアクロスメンバと、を備え、前記フロアクロスメンバは、前記ロッカーの上面にスポット溶接される第1フランジ部を有して、前記ロッカーの上面に位置するフロアクロスメンバの端部の断面形状が非平坦形状に上方に突起した形状をなし、前記フロアクロスメンバは、前記ロッカーにおける車幅方向内側の側面にスポット溶接される第2フランジ部を形成し、前記第1フランジ部と前記第2フランジ部とは、第1稜線を介して連続する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1フランジ部と第2フランジ部とが稜線を介して連続しており、これらがロッカーの上面と側面とにスポット溶接されるので、ロッカーとフロアクロスメンバとの接合が、側面衝突によるロッカーの断面の崩壊(マッチ箱変形)に対しても、前面衝突によるロッカーの回転に対しても強固なものとなる。また、本発明は、ロッカーの筒状部分の構造を変えるのではなく、フロアクロスメンバを非平坦形状に上方に突起した形状とするので、ロッカーの薄型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第一の実施の形態における、車両下部構造の斜視図である。
【図2】第一の実施の形態における、車両下部構造の正面図である。
【図3】第一の実施の形態における、フロアパネルに組み付けられる前のフロアクロスメンバの斜視図である。
【図4】第一の実施の形態における、フロアパネル及びフロアクロスメンバに組み付けられる前のロッカーインナの斜視図である。
【図5】第一の実施の形態における、フロアクロスメンバの端部材の斜視図である。
【図6】第一の実施の形態における、ロッカーに接合されたフロアクロスメンバの端部材の正面図である。
【図7】第一の実施の形態における、図6のA−A線断面図である。
【図8】第一の実施の形態における、第1変形例での図6のA−A線断面図である。
【図9】第一の実施の形態における、第2変形例での図6のA−A線断面図である。
【図10】第一の実施の形態における、第3変形例での図6のA−A線断面図である。
【図11】第一の実施の形態における、前面衝突時に車両下部構造に加わる車幅方向の荷重の流れを示すための模式図である。
【図12】第一の実施の形態における、前面衝突時に車両下部構造に加わる上下方向の荷重の流れを示すための模式図である。
【図13】第二の実施の形態における、ロッカーに接合されたフロアクロスメンバの端部材の正面図である。
【図14】仮想例でのロッカー及びフロアクロスメンバの正面断面図である。
【図15】仮想例でのロッカー及びフロアクロスメンバの平面図である。
【図16】仮想例でのロッカー及びフロアクロスメンバの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、複数の実施の形態を説明する。各形態において、先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の符号を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。また、特に組合せに支障が生じなければ、各実施の形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0015】
実施の一形態を、図1ないし図12に基づいて説明する。説明の便宜上、本実施の形態を第一の実施の形態と呼ぶ。図1は、車両下部構造101の斜視図である。図2は、車両下部構造101の正面図であり、図1のV矢視図に相当する。車両下部構造101は、車両構造201の床面をなすフロアパネル102に沿って設けられ、ロッカー103とフロアクロスメンバ104とを含む。
【0016】
フロアパネル102は、車両前方側CF(図1における左下側)から車両後方側CR(図1における右上側)にかけて、水平方向に広がっている。このフロアパネル102は、鋼板により構成される。
【0017】
ロッカー103は、フロアパネル102における車幅方向CWの側部に位置し、車両前後方向CL(車両前方側CFと車両後方側CRとを結ぶ方向)に延びている。なお、車幅方向CWとは、車両外側CO(図1における左上側)と車両内側CI(図1における右下側)とを結ぶ方向である。
【0018】
ロッカー103は、ロッカーインナ106とロッカーアウタ107とにより構成される。ロッカーインナ106及びロッカーアウタ107は、いずれも、車両前後方向CLに延びる長尺の部材である。ロッカーインナ106は、上片部106bと、下片部106cと、これらを連結する連結部106dとを有し、断面形状が車両外側COに開くハット形状をなしている。ロッカーインナ106は、インナ側フランジ部106aを有する。インナ側フランジ部106aは、ロッカーインナ106の上片部106bでの車両外側COの端部から上方に延びている。インナ側フランジ部106aは、ロッカーインナ106の下片部106cでの車両外側COの端部から下方にも延びている。他方、ロッカーアウタ107は、車両構造201の側部をなすサイドメンバ202の一部である。ロッカーアウタ107の断面形状は、車両内側CIに開くハット形状をなす。ロッカーアウタ107は、アウタ側フランジ部107aを有する。アウタ側フランジ部107aは、ロッカーアウタ107の車両内側CIの上方側の端部から上方に延びている。アウタ側フランジ部107aは、ロッカーアウタ107の車両内側CIの下方側の端部から下方にも延びている。インナ側フランジ部106aとアウタ側フランジ部107aとは、スポット溶接Sにより接合される。このようにして接合されたロッカーインナ106とロッカーアウタ107とは、ロッカー103を構成する。これにより、ロッカー103は、車両前後方向CLに延びる閉断面を形成し、筒状をなす。
【0019】
ロッカーインナ106の内面には、パッチ部材111が取付けられる。パッチ部材111は、ロッカー103内に位置する。パッチ部材111は、上片部111bと下片部111cと連結部111dとを有する。パッチ部材111の上片部111bは、ロッカーインナ106の上片部106bに接触してスポット溶接Sにより接合される。パッチ部材111の下片部111cは、ロッカーインナ106の下片部106cに接触してスポット溶接Sにより接合される。パッチ部材111の連結部111dは、ロッカーインナ106の連結部106dに接触してスポット溶接Sにより接合される。パッチ部材111がロッカーインナ106に接合されることで、ロッカー103の剛性が高まり、車両に対する前面衝突時の荷重がフロアクロスメンバ104に伝わりやすくなる。
【0020】
フロアクロスメンバ104は、車幅方向CWに延びる長尺部材104Bと、この長尺部材104Bの両端部に位置する端部材104Aとからなる。フロアパネル102の上面に取付けられる。フロアクロスメンバ104のうち長尺部材104Bは、鋼板を曲げ加工して形成されるものであり、天板部108と、垂下部109と、フランジ部110とを有し、断面形状がハット形状をなす。天板部108は、フロアパネル102の上面に対面する。垂下部109は、天板部108での車両前方側CFの縁及び車両後方側CR側の縁のいずれからも下方に延びている。フランジ部110は、垂下部109の下縁から、天板部108から遠ざかるように延びている。フランジ部110は、フロアパネル102の上面に接触してスポット溶接Sにより接合される。フロアクロスメンバ104のうち端部材104Aは、長尺部材104Bの端部にスポット溶接Sにより固定される。端部材104Aは、ロッカー103の外周で車両内側CIに向く領域に接合される。端部材104A、及び、この端部材104Aのロッカー103への接合については、図5ないし図12に基づいて後述する。
【0021】
図3は、フロアパネル102に組み付けられる前のフロアクロスメンバ104の斜視図である。図3では、サイドメンバ202及びパッチ部材111は省略されている。車両下部構造101を構成するために、まず、フロアクロスメンバ104がフロアパネル102の上面に取り付けられる。このとき、端部材104Aは、フロアパネル102の車両外側COの縁部102Aの近傍に位置付けられる。なお、この縁部102Aは、フロアパネル102の車両外側COの縁領域を上方に折り曲げることによって形成され、縁部102Aの上辺が連結部106dの略半分の高さにまで達している。また、フランジ部110がフロアパネル102の上面にスポット溶接Sによって取り付けられる。
【0022】
図4は、フロアパネル102及びフロアクロスメンバ104に組み付けられる前のロッカーインナ106の斜視図である。図4では、サイドメンバ202及びパッチ部材111は省略されている。続いて、ロッカーインナ106を、端部材104Aとフロアパネル102の車両外側COの縁部102Aとに、スポット溶接Sによって取り付ける。続いて、パッチ部材111を、ロッカーインナ106の内部に、スポット溶接Sによって取り付ける。その後、ロッカーインナ106のインナ側フランジ部106aとロッカーアウタ107(図1、図2参照)のアウタ側フランジ部107a(図1、図2参照)とを、スポット溶接Sによって取り付ける。これにより、ロッカー103(図1、図2参照)が構成される。
【0023】
図5は、フロアクロスメンバ104の端部材104Aの斜視図である。図6は、ロッカー103に接合されたフロアクロスメンバ104の端部材104Aの正面図である。フロアクロスメンバ104の端部材104Aは、鋼板をプレス絞り加工して形成されるもので、天板部121と、第1フランジ部122と、第2フランジ部123と、第3フランジ部124と、連結部125とを有し、断面形状がハット形をなす。
【0024】
天板部121は、ロッカーインナ106の上片部106bよりも上方に位置する。第1フランジ部122は、ロッカーインナ106の上片部106bの上面に接し、この上面にスポット溶接Sにより接合される。第2フランジ部123とロッカーインナ106の連結部106dとの間には、フロアパネル102の縁部102Aが挟まれている。第2フランジ部123は、ロッカーインナ106の連結部106dの外側面にスポット溶接Sにより接合される。
【0025】
本実施の形態では、ロッカーインナ106の連結部106dとフロアパネル102の縁部102Aと第2フランジ部123とがスポット溶接Sにより接合される。ここで、フロアパネル102の縁部102Aよりも上方の箇所で、ロッカーインナ106の連結部106dと第2フランジ部123との二枚のみを追加的にスポット溶接S1により接合されるようにしてもよい。この追加的なスポット溶接S1は、単数でも複数でも良い。
【0026】
第3フランジ部124は、フロアパネル102の上面に接する。連結部125は、天板部121での車両前方側CFの縁及び車両後方側CR側の縁のいずれからも下方に延び、天板部121と第1フランジ部122、第2フランジ部123、第3フランジ部124とを繋いでいる部分である。連結部125と天板部121とによって、フロアクロスメンバ104の端部材104Aの断面形状は、非平坦形状に上方に突起した形状となる。
【0027】
端部材104Aが長尺部材104Bに固定されたとき、天板部121は長尺部材104Bの天板部108と連続し、連結部125は長尺部材104Bの垂下部109と連続し、第3フランジ部124は長尺部材104Bのフランジ部110と連続する。また、端部材104Aにおいて、第1フランジ部122と第2フランジ部123とは、稜線126(第1稜線)を介して連続しており、分断されていない。また、端部材104Aにおいて、第2フランジ部123と第3フランジ部124とは、谷線127を介して連続しており、分断されていない。
【0028】
図7は、図6のA−A線断面図である。本実施の形態では、フロアクロスメンバ104の端部材104Aでの天板部121は平坦ではなく、上方に突出し折線128を有した断面山型形状をなす。この折線128、及び、天板部121と連結部125との境界線129は、いずれもフロアクロスメンバ104の長さ方向に延びており、特許請求の範囲でいうところの「第2稜線」に相当する。
【0029】
図8は、第1変形例での図6のA−A線断面図である。第1変形例として、フロアクロスメンバ104の端部材104Aの断面形状に図8に示すような矩形形状を採用して、フロアクロスメンバの断面形状を非平坦形状に上方に突起した形状としてもよい。即ち、天板部121を平坦にして折線128(図7参照)を形成しないようにする。第1変形例では、境界線129が、特許請求の範囲でいうところの「第2稜線」に相当する。
【0030】
図9は、第2変形例での図6のA−A線断面図である。第2変形例として、フロアクロスメンバ104の端部材104Aの断面形状に図9に示すような三角形状を採用して、フロアクロスメンバの断面形状を非平坦形状に上方に突起した形状としてもよい。即ち、端部材104Aに天板部121を設けず、一対の連結部125の上辺同士を一致させた尾根線130を形成する。第2変形例では、尾根線130が、特許請求の範囲でいうところの「第2稜線」に相当する。
【0031】
図10は、第3変形例での図6のA−A線断面図である。第3変形例として、フロアクロスメンバ104の端部材104Aの断面形状に図10に示すような上方に突出する円弧形状を採用して、フロアクロスメンバの断面形状を非平坦形状に上方に突起した形状としてもよい。即ち、連結部125を設けずに、天板部121を断面半円形状にして、この半円形状の両端部のそれぞれから第1フランジ部122が延びるようにしてもよい。
【0032】
本実施の形態の車両下部構造101は、ロッカー103の筒状部分の構造を変えるのではなく、上記のようにフロアクロスメンバ104を非平坦形状に上方に突起した形状としたものなので、ロッカーの薄型化を実現できる。また、本実施の形態の車両下部構造101は、ロッカー103とフロアクロスメンバ104との接合が上記のように構成されることで、側面衝突によるロッカー103の断面の崩壊(マッチ箱変形)に対しても、前面衝突によるロッカー103の回転に対しても強固なものとなる。この点について、以下に説明する。
【0033】
図2を参照する。車両下部構造101に対する側面衝突が生じると、ロッカー103には、フロアパネル102の上方側に巻き込もうとする回転G1と、ロッカーアウタ107が上方に動こうとする断面崩壊G2(マッチ箱変形)とが生じる。回転G1は、フロアクロスメンバ104の端部材104Aの第1フランジ部122及び第2フランジ部123によって生じる反モーメントによって抑制される。断面崩壊G2は、第1フランジ部122によるロッカーインナ106に対する下方への荷重A1に加え、稜線126を介しての第1フランジ部122と第2フランジ部123との拘束により抑制される。
【0034】
図11は、前面衝突時に車両下部構造101に加わる車幅方向CWの荷重の流れを示すための模式図である。車両下部構造101に対する前面衝突(特に、オフセット前面衝突)が生じたときにロッカー103とフロアクロスメンバ104との接合箇所にかかる車幅方向CWの荷重G3は、フロアクロスメンバ104(長尺部材104B、端部材104A)からスポット溶接Sを経由してロッカーインナ106に逃げる。このとき、フロアクロスメンバ104の端部材104Aのうちロッカーインナ106の上方に位置する部分(天板部121、連結部125)が、非平坦形状に上方に突起した形状をなしていて、変形しにくい。また、第1フランジ部122と第2フランジ部123とが稜線126を介して連続していて、荷重G3を第2フランジ部123のみならず第1フランジ部122にも分散させることができ、その結果として従来よりも多く荷重G3を上片部106bでのスポット溶接S箇所に逃がすことができるので、荷重G3によって連結部106dが変形しロッカー103が座屈してしまうことを防止できる。なお、連結部106dでのスポット溶接Sに前述のスポット溶接S1を追加して施した場合、荷重G3をロッカー103に一層効率良く逃すことができる。
【0035】
図12は、前面衝突時に車両下部構造101に加わる上下方向の荷重の流れを示すための模式図である。車両下部構造101に対する前面衝突(特に、オフセット前面衝突)が生じたときにロッカー103とフロアクロスメンバ104との接合箇所にかかる上下方向の荷重G4も、フロアクロスメンバ104(長尺部材104B、端部材104A)からスポット溶接Sを経由してロッカーインナ106に逃げる。このとき、第1フランジ部122と第2フランジ部123とが稜線126を介して連続していて、荷重G4を第1フランジ部122のみならず第2フランジ部123にも分散させることができ、その結果として従来よりも多く荷重G4を連結部106dでのスポット溶接S箇所に逃がすことができるので、荷重G4による上片部106bの変形を防止できる。なお、連結部106dでのスポット溶接Sに前述のスポット溶接S1を追加して施した場合、荷重G4をロッカー103に一層効率良く逃すことができる。
【0036】
実施の別の一形態を、図13に基づいて説明する。説明の便宜上、本実施の形態を第二の実施の形態と呼ぶ。図13は、ロッカー103に接合されたフロアクロスメンバ104の端部材104Aの正面図である。本実施の形態では、フロアクロスメンバ104の端部材104Aにおいて、天板部121が車両外側COに向かうにつれて第1フランジ部122に近づくよう傾斜する。そして、端部材104Aにおける車両外側COの端部には、第4フランジ部131が設けられる。第4フランジ部131は、第1フランジ部122と連続しており、第1フランジ部122とともにロッカーインナ106の上片部106bにスポット溶接Sによって接合される。本実施の形態においても、第一の実施の形態と同様に、フロアパネル102の縁部102Aよりも上方の箇所で、ロッカーインナ106の連結部106dと第2フランジ部123との二枚のみを追加的にスポット溶接S1により、単数又は複数箇所接合するようにしてもよい。
【0037】
本実施の形態においても、車両下部構造101は、ロッカー103の筒状部分の構造を変えるのではなく、上記のようにフロアクロスメンバ104を非平坦形状に上方に突起した形状としたものなので、ロッカーの薄型化を実現できる。また、本実施の形態の車両下部構造101は、ロッカー103とフロアクロスメンバ104との接合が上記のように構成されることで、側面衝突によるロッカー103の断面の崩壊(マッチ箱変形)に対しても、前面衝突によるロッカー103の回転に対しても強固なものとなる。さらに、本実施の形態では、ロッカーインナ106の上片部106bに対するスポット溶接Sでの接合が多くなるので、車両下部構造101の構造は一層強固なものとなる。
【符号の説明】
【0038】
101 車両下部構造
103 ロッカー
104 フロアクロスメンバ
106b 上片部(ロッカーの上面)
106d 連結部(ロッカーにおける車幅方向内側の側面)
122 第1フランジ部
123 第2フランジ部
126 稜線(第1稜線)
128 折線(第2稜線)
129 境界線(第2稜線)
S,S1 スポット溶接
CL 車両前後方向
CI 車両内側
CW 車幅方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びるロッカーと、平面視にて前記ロッカーに対して交差する方向に延び前記ロッカーに接合されるフロアクロスメンバと、
を備え、
前記フロアクロスメンバは、前記ロッカーの上面にスポット溶接される第1フランジ部を有して、前記ロッカーの上面に位置するフロアクロスメンバの端部の断面形状が非平坦形状に上方に突起した形状をなし、
前記フロアクロスメンバは、前記ロッカーにおける車幅方向内側の側面にスポット溶接される第2フランジ部を形成し、
前記第1フランジ部と前記第2フランジ部とは、第1稜線を介して連続する、
車両下部構造。
【請求項2】
前記フロアクロスメンバには、前記フロアクロスメンバの長さ方向に延びる第2稜線が形成されている、
請求項1記載の車両下部構造。
【請求項3】
前記フロアクロスメンバの断面形状は、上方に突出する円弧形状を含む、
請求項1又は2記載の車両下部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−86772(P2013−86772A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232161(P2011−232161)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000157083)トヨタ自動車東日本株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】