車両位置推定装置、および車両位置推定プログラム
【課題】車両の位置を推定する車両位置推定装置において、より精度よく車両の位置を推定できるようにする。
【解決手段】車載装置においては、支援処理にて、ある時刻(特定時刻)における対象車両(自車両および他車両)の位置、速度、および進行方向を含む車両情報を取得し、併せて対象車両の速度を変化させる要因を取得する(S110)。そして、車両情報に対象車両の速度を変化させる要因を加味して特定時刻よりも未来の対象時刻における対象車両の位置を推定する(S250)。このような車載装置によれば、対象車両の速度を変化させる要因を加味して対象車両の位置を推定するので、単に対象車両が一定速度で移動すると推定する場合と比較して対象車両の位置の推定精度を向上させることができる。
【解決手段】車載装置においては、支援処理にて、ある時刻(特定時刻)における対象車両(自車両および他車両)の位置、速度、および進行方向を含む車両情報を取得し、併せて対象車両の速度を変化させる要因を取得する(S110)。そして、車両情報に対象車両の速度を変化させる要因を加味して特定時刻よりも未来の対象時刻における対象車両の位置を推定する(S250)。このような車載装置によれば、対象車両の速度を変化させる要因を加味して対象車両の位置を推定するので、単に対象車両が一定速度で移動すると推定する場合と比較して対象車両の位置の推定精度を向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の位置を推定する車両位置推定装置、および車両位置推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ある車両が一定速度で走行すると仮定してこの車両の位置を推定する車両位置推定装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−066261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記車両位置推定装置では、位置を推定しようとする車両が加速中や減速中であれば、位置を推定する際の誤差が大きくなるという問題点があった。
そこで、このような問題点を鑑み、車両の位置を推定する車両位置推定装置および車両位置推定プログラムにおいて、より精度よく車両の位置を推定できるようにすることを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために成された車両位置推定装置において、車両情報取得手段は、基準時刻における対象車両の位置、速度、および進行方向を含む車両情報を取得し、要因取得手段は、対象車両の速度を変化させる要因を取得する。そして、位置推定手段は、車両情報に対象車両の速度を変化させる要因を加味して基準時刻よりも未来における対象車両の位置を推定する(請求項1)。
【0006】
このような車両位置推定装置によれば、対象車両の速度を変化させる要因を加味して対象時刻における対象車両の位置を推定するので、単に対象車両が一定速度で移動すると推定する場合と比較して対象車両の位置の推定精度を向上させることができる。
【0007】
ところで、上記車両位置推定装置において、車両情報取得手段は、車車間通信を利用して、対象車両として他車両についての車両情報を取得する他車両情報取得手段を備え、要因取得手段は、車車間通信を利用して、他車両についての速度を変化させる要因を取得する他車両要因取得手段を備え、位置推定手段は、他車両の位置を推定する他車両位置推定手段を備えていてもよい(請求項2)。
【0008】
このような車両位置推定装置によれば、車車間通信を利用して他車両の車両情報を利用し、他車両の位置を推定することができる。
また、上記車両位置推定装置が車両に搭載されている場合には、車両情報取得手段は、対象車両として自車両についての車両情報を取得する自車両情報取得手段を備え、要因取得手段は、自車両についての速度を変化させる要因を取得する自車両要因取得手段を備え、位置推定手段は、自車両の位置を推定する自車両位置推定手段を備えていてもよい(請求項3)。
【0009】
このような車両位置推定装置によれば、自車両の位置を推定することができる。なお、本発明は、請求項2のみの従属項としているが、以下の請求項の記載を考慮しなければ、請求項1にも従属させることができる。
【0010】
さらに、上記車両位置推定装置においては、自車両および他車両の推定位置に基づいて自車両および他車両の挙動を推定し、これらの挙動に基づいて自車両と他車両とが衝突する確率(以下、「衝突確率」という。)を演算する衝突演算手段、を備えていてもよい(請求項4)。
【0011】
このような車両位置推定装置によれば、自車両および他車両の推定位置の検出精度を向上できているので、衝突確率の演算精度も向上させることができる。
また、上記車両位置推定装置において、衝突演算手段は、基準時刻よりも未来の複数の対象時刻において、自車両および他車両が存在すると推定される位置を、存在確率毎に区分された複数の領域の集合としての予測領域としてそれぞれ演算し、各対象時刻における各予測領域の重なり程度に応じて衝突確率を判断するようにしてもよい(請求項5)。
【0012】
このような車両位置推定装置によれば、各予測領域の重なりの大小によって容易に衝突確率を判断することができる。
さらに、上記車両位置推定装置においては、衝突確率に応じて報知を行う報知手段、を備えていてもよい(請求項6)。
【0013】
このような車両位置推定装置によれば、衝突確率の演算結果に応じた報知を行うことができるので、運転者に危険を知らせることができる。
また、上記車両位置推定装置において、要因取得手段は、要因として、対象車両が走行する道路における制限速度の情報を取得し、位置推定手段は、対象車両が制限速度以上となる速度に加速する確率が低いものとして対象車両の位置を推定するようにしてもよい(請求項7)。
【0014】
このような車両位置推定装置によれば、対象車両が制限速度を超えて加速する可能性が低い傾向があることを考慮して対象車両の位置を推定するので、対象車両の位置の検出精度を向上させることができる。
【0015】
さらに、上記車両位置推定装置において、要因取得手段は、要因として、対象車両の加速または減速に関する性能に関する情報を取得し、位置推定手段は、対象車両の性能に関する情報に基づいて、対象車両の速度を推定し、対象車両の位置を推定するようにしてもよい(請求項8)。
【0016】
このような道路端検出装置によれば、対象車両の加減速性能に応じて対象車両の加減速範囲(つまり速度範囲)を予測することができるので、対象車両の位置の検出精度を向上させることができる。
【0017】
次に、上記目的を達成するために成された車両位置推定プログラムにおいては、コンピュータを、請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の車両位置推定装置を構成する各手段として機能させるためのプログラムであることを特徴としている(請求項9)。
【0018】
このような車両位置推定プログラムによれば、少なくとも請求項1に記載の車両位置推定装置と同様の効果を享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態の車両制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態の処理の概要を示す説明図である。
【図3】支援処理を示すフローチャートである。
【図4】車両位置予測処理を示すフローチャートである。
【図5】パターン[1]の速度分布を示すグラフである。
【図6】パターン[2]の速度分布を示すグラフである。
【図7】パターン[3]の速度分布を示すグラフである。
【図8】パターン[4]の速度分布を示すグラフである(制限速度到達前)。
【図9】パターン[4]の速度分布を示すグラフである(制限速度到達後)。
【図10】パターン[5]の速度分布を示すグラフ(a)、およびパターン[6]の加速度分布を示すグラフ(b)である。
【図11】自車両および他車両の衝突確率を求める際の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明にかかる実施の形態を図面と共に説明する。
[本実施形態の構成]
図1は本発明が適用された車両制御システム1の概略構成を示すブロック図である。車両制御システム1は、道路を走行する複数の車両にそれぞれ搭載される車載装置10(車両位置推定装置)を備えて構成されている。
【0021】
各車両の車載装置10は、他の車両の車載装置10との間で車車間通信を実施可能に構成されている。なお、各車両の車載装置10は全て同様の構成とされているため、図1においては、ある1つの車載装置10についてのみを詳細に図示している。
【0022】
車載装置10は、図1に示すように、車載通信機11、位置特定部12、演算処理部13、警報部14、車両制御部15、レーダ16等を備えている。
車載通信機11は、無線通信装置として構成されており、演算処理部13の指令に応じて他の車載装置10に自車両の車両情報を送信するとともに、他の車載装置10から車両情報を受信する、車車間通信を行う。ここで、車載通信機11は、車両情報として、自車両の位置、速度、加速度、車長、車幅、自車両の加減速性能(最大加速度、最大限速度)等の情報を周期的(例えば100ms毎)に互いにやりとりする。なお、自車両の加減速性能については、車両の運転者の特性に応じた値としてもよい。
【0023】
位置特定部12は、図示しない車速センサ、GPS受信機、光ビーコン、加速度センサ、ジャイロスコープ等による検出信号に基づいて自車両の現在地や進行方向を特定し、その特定したデータを演算処理部13に入力する。
【0024】
警報部14は、例えば、表示装置やスピーカ等から構成されており、演算処理部13からの指令に応じて運転者に警報を行うための画像を表示させたり、音声(警報音を含む)を発生させたりする。
【0025】
レーダ16は、電波やレーザ光等の電磁波を自車両の進行方向(前方)に照射し、その反射波を検出することによって、他車両との車間距離を検出する周知のレーダとして構成されている。レーダ16は、一定時間(例えば100ms)毎に他車両との車間距離を検出し、その検出結果を演算処理部13に送る。
【0026】
演算処理部13および車両制御部15は、CPU、ROM、RAM等を備えた周知のマイクロコンピュータとして構成されている。特に演算処理部13は、位置特定部12やレーダ16等による検出結果を利用しつつ、自身のROM等に格納されたプログラム(車両位置推定プログラム)に基づいて、後述する支援処理等の各種処理を実施する。
【0027】
また、車両制御部15は、自身のROM等に記憶されたプログラムに従って、制動を行う等の運転支援を行う。
[本実施形態の処理]
このような本実施形態の車両制御システムにおいて実施される処理の概要について、図2を用いて説明する。本実施形態の車載装置10では、図2(a)、図2(b)に示すように、自車両近傍を走行する他車両および自車両について、現在および未来の走行位置を予測領域としてそれぞれ推定し、同じ時刻においてこれらの予測領域が重なるか否かに応じて自車両が他車両と衝突する可能性があるか否かを判定し、必要に応じて警報を行う処理を実施する。
【0028】
図2(a)に示す例では、各予測領域が交差点に接近したとしても、各予測領域が重なることはないため(図2(a)の右図参照)、警報を実施しない。一方、図2(b)に示す例では、各予測領域が交差点に接近したときに、各予測領域が重なるので(図2(b)の右図参照)、警報を実施することになる。
【0029】
詳細な処理ついては図3以下の図面を用いて説明する。図3は車載装置10の演算処理部13が実行する支援処理を示すフローチャート、図4は支援処理のうちの車両位置予測処理を示すフローチャートである。
【0030】
支援処理は、車両の電源が投入されると開始され、その後繰り返し実施される処理であり、まず、車両情報の受信を試み(S110:車両情報取得手段、要因取得手段、他車両情報取得手段、他車両要因取得手段、自車両情報取得手段、自車両要因取得手段)、車両情報を受信していれば、車両情報を更新する(S120)。ここで、車両情報を更新する処理とは、車両情報毎に車両を特定するための車両番号と、情報を受信した時刻と、を付したリストを生成して、このリストにおいて車両情報を管理する処理を示す。なお、車両情報には、車両を識別するための情報(車両ID)が付されており、同じ車両に対応する車両情報は、速度や加速度の変化を検出するために所定時間分蓄積され、所定時間を超える分については上書きされる。
【0031】
また、この処理にて付される車両番号は、各車両に対して1から順に付される。なお、自車両から送信される車両情報についても他車両から受信した車両情報と同様に取得されたものとみなし、車両番号を付して管理される。そして、自車両には車両番号1が付される。
【0032】
続いて、前回衝突確率を演算してからの時間を計測し(S130)、計測した時間が衝突確率を演算する周期を表す処理基準時間を経過したか否かを判定する(S140)。処理基準時間を経過していなければ(S140:NO)、S110の処理に戻る。
【0033】
また、処理基準時間を経過していれば(S140:YES)、自車両が交差点に接近しているか否かを判定する(S150)。ここで、交差点の位置は、図示しないナビゲーション装置や道路近傍に配置された路側装置から取得することができるものとする。また、「接近」とは、運転者が警報を受けて衝突回避操作を行えば自車両と他車両との衝突を回避することができる程度(例えば、150m程度以下)の距離を表す。
【0034】
交差点に接近していなければ(S150:NO)、直ちに支援処理を終了する。また、交差点に接近していれば(S150:YES)、自車両がこの交差点に到達するまでの時間(範囲)を算出する(S210)。この処理では、例えば、自車両の現在地と交差点の位置とに基づいて交差点までの距離を算出し、この距離を自車両の車速で除算することにより行う。
【0035】
またこの際、自車両の車速は最も遅く交差点に接近する場合の速度(例えば、現在の速度の半分の速度等)を採用する。以後の処理では、現在から自車両がこの交差点に到達するまでの時間までの時間範囲において、自車両と他車両とが衝突するか否かを判定することになる。
【0036】
続いて、車両番号iを1に設定し(S220)、設定した車両番号が対応する車両情報(以下、「設定中の車両番号」という。)について、削除基準時間(例えば1秒間程度)が経過したか否かを判定する(S230)。ここで、削除基準時間とは、車両の有無を判断するための時間である。つまり、長時間(削除基準時間以上)に渡って車両情報が受信できない車両は、交差点手前で旋回したり走行を取りやめたりした可能性が高く、交差点に進入しないと考えられるため、管理対象から除外する。
【0037】
即ち、削除基準時間が経過していれば(S230:YES)、車両情報を管理するリストから設定中の車両番号が対応する車両情報を削除し(S240)、後述するS290の処理に移行する。また、削除基準時間が経過していなければ(S230:NO)、この車両の位置を予測する車両位置予測処理を実施する(S250:位置推定手段、他車両位置推定手段、自車両位置推定手段)。
【0038】
車両位置予測処理では、まず、設定中の車両番号が対応する車両の走行速度が一定であるか否かを判定する(S430)。この車両の走行速度が一定であれば(S430:YES)、この車両の走行速度とこの車両が走行する道路の制限速度とを比較する(S440)。なお、道路の制限速度はナビゲーション装置等から取得すればよい。
【0039】
この車両の走行速度が制限速度以下であれば(S440:YES)、パターン[1]の速度分布を利用するよう設定し(S450)、後述するS610の処理に移行する。なお、速度分布(パターン[1]〜[6]の速度分布(加速度分布))については後述する。
【0040】
次に、この車両の走行速度が制限速度よりも大きな値であれば(S440:NO)、パターン[2]の速度分布を利用するよう設定し(S460)、後述するS610の処理に移行する。また、S430の処理にて設定中の車両番号が対応する車両の走行速度が一定でなければ(S430:NO)、この車両の加速度が一定であるか否かを判定する(S510)。加速度が一定であれば(S510:YES)、この車両の走行速度と制限速度とを比較する(S520)。
【0041】
この車両の速度が制限速度以下であれば(S520:YES)、この車両の加速度と基準となる加速度とを比較する(S530)。この車両の加速度が基準となる加速度未満であれば(S530:YES)、パターン[3]の速度分布を利用するよう設定し(S540)、後述するS610の処理に移行する。
【0042】
また、この車両の加速度が基準となる加速度以上であれば(S530:NO)、パターン[4]の速度分布を利用するよう設定し(S560)、後述するS610の処理に移行する。また、S520の処理にて、この車両の速度が制限速度を超えていれば(S520:NO)、パターン[5]の速度分布を利用するよう設定し(S570)、後述するS610の処理に移行する。
【0043】
次に、S510の処理にて加速度が一定でなければ(S510:NO)、この車両の加速度の変化量と基準となる変化量とを比較する(S550)。加速度の変化量が基準となる変化量以上であれば(S550:NO)、パターン[4]の速度分布を利用するよう設定し(S560)、後述するS610の処理に移行する。
【0044】
また、加速度の変化量が基準となる変化量未満であれば(S550:YES)、この車両が加速を開始してからの経過時間と基準となる経過時間とを比較する(S580)。この車両が加速を開始してからの経過時間が基準となる経過時間未満であれば(S580:YES)、パターン[6]の加速度分布を利用するよう設定し(S590)、後述するS610の処理に移行する。
【0045】
また、この車両が加速を開始してからの経過時間が基準となる経過時間以上であれば(S580:NO)、パターン[4]の速度分布を利用するよう設定し(S560)、後述するS610の処理に移行する。
【0046】
上記のように利用する速度分布のパターンが設定されると、この速度分布のパターンを利用して、設定中の車両における挙動予測を行う(S610)。この処理では、まず、この車両の速度、加速度、加速度の変化率、ヨーレート等を用いて、速度分布を求める際の中心値となる位置を推定し、その後、設定したパターンの速度分布を利用して車両が存在する可能性がある領域(予測領域)を設定する。
【0047】
車両の中心値となる位置を推定する処理では、まず、各種値を下記のように定義する。
(X,Y) :最後に受信した位置(経度、緯度、rad)
(X',Y') :推定した位置(経度、緯度、rad)
v :最後に受信した速度(m/s)
α :最後に受信した加速度(m/s2)、負の場合は減速
Δt :経過時間(s)
Δx,Δy :経過時間中の移動量(m)
ΔX,ΔY :経過時間中の移動量(経度、緯度、rad)
θ :進行方向(rad)、東向きを0とし反時計回り
ω :ヨーレート(rad/s)
r :回転半径(m)
R :地球の半径(m)、走行地点での近似値
上記定義を利用して、車両の速度が一定の場合(パターン[1][2]の場合)においてこの車両の位置を推定する際には、中心値となる位置は、下記式のように表現できる。
Δx = vΔt cosθ
Δy = vΔt sinθ
ΔX = Δx/(R cos Y) = vΔt cosθ/(R cos Y)
ΔY = Δy/R = vΔt sinθ/R
X' = X + ΔX = X + vΔt cosθ/(R cos Y)
Y ' = Y + ΔY = Y + vΔt sinθ/R
そして、予測領域を求める処理を行う。この処理において、上記演算で得られる中心値から速度が変化する確率を統計学に基づいて算出する。特に本実施形態においては、正規分布を考え方を利用する。
【0048】
正規分布N(μ、σ2)は、次式から得られる。なお、μは平均値(中心値)、σ2は分散、σは標準偏差である。
【0049】
【数1】
式(1)は、正規分布であるが、x=μを境界として非対称となる場合には、下記のように定義できる。
【0050】
【数2】
x=μのとき、
【0051】
【数3】
であるから、ガウス積分の公式を用いてこの関数を積分すると、
【0052】
【数4】
となる。
【0053】
ここで、式(7)(8)より、
【0054】
【数5】
が得られる。上記式(9)(10)を上記式(2)(3)に代入すると、下記式(11)(12)が得られる。
【0055】
【数6】
次に、車両の速度が一定の場合(パターン[1][2]の場合)において、速度変化、つまり、加速度が0からαに変化したと仮定したときの位置のずれを考慮すると、移動量は下記式(13)(14)で表すことができる。
【0056】
【数7】
ここで、上記式(11)(12)より、加速度αが採る値は、次式で表される確率分布であると仮定できる。
【0057】
【数8】
なお、σ1およびσ2は、走行環境等で決定される標準偏差である。上記式(15)(16)を用いると、パターン[1]の速度分布が設定されている場合には、σ1=σ2となり、図5に示すような速度分布が得られる。なお、図5に示す例では、横軸に時間、縦軸に車速を取っており、時間が経過すればするほど、速度のばらつきが大きくなることを示している。また、図5以下の図面において太い実線は、速度の中心値を示し、破線はおおよそ99%の確率で速度が収まる範囲(約3σに相当)を示し、細い実線はおおよそ70%の確率で速度が収まる範囲(約σに相当)を示している。
【0058】
このような速度分布を利用して、現在時刻から交差点到達時間までの範囲内において、所定時間毎(例えば0.2秒毎)に、設定中の車両が存在すると推定される位置を、存在確率毎に区分された複数の領域の集合としての予測領域(図2、図11参照)としてそれぞれ演算する。つまり、この演算によって車両の挙動が演算される。
【0059】
なお、パターン[2]の速度分布が設定されている場合には、車両の速度が既に制限速度に達しているため、車両がこれ以上加速する確率は低くなると予測し、式(15)(16)において、加速側の標準偏差を小さく設定する。すると、図6に示すように、加速側の確率が低くなった速度分布が得られる。
【0060】
また、パターン[3]の速度分布が設定されている場合には、車両の加速度が一定であるので、中心値となる位置は、下記式のように表現できる。
Δx = (vΔt +αΔt2/2) cosθ
Δy = (vΔt +αΔt2/2) sinθ
ΔX = Δx/(R cos Y) = (vΔt +αΔt2/2) cosθ/(R cos Y)
ΔY = Δy/R = (vΔt +αΔt2/2) sinθ/R
X' = X + ΔX = X + (vΔt +αΔt2/2) cosθ/(R cos Y)
Y ' = Y + ΔY = Y + (vΔt +αΔt2/2) sinθ/R
そして、予測領域を求める処理では、速度変化、つまり、加速度がα0からαに変化したと仮定したときの位置のずれを考慮すると、速度分布は下記式(17)(18)で表すことができる。
【0061】
【数9】
この際の速度分布は、図7に示すように正規分布となると仮定できる。また、パターン[4]の速度分布が設定されている場合には、既に加速度が大きく、さらに加速度が増加する確率は低いと考えられるため、加速側の標準偏差を小さく設定する。すると、図8に示すような非対称となる速度分布が得られる。そして、中心値が制限速度に達すると、その後は一定速度で走行するものと仮定する。つまり、制限速度に到達後は、図9に示すように、パターン[2]と同様の速度分布となる。
【0062】
また、パターン[5]の速度分布が設定されている場合には、車両の速度が制限速度を超えており、さらに加速度が増加する確率は低いと考えられるため、加速側の標準偏差を小さく設定する。そして、制限速度との差が大きくなるにつれて、加速度の変化を負の方向に設定する。つまり、中心値を負の方向に補正する。すると、図10(a)に示すような非対称となる速度分布が得られる。
【0063】
さらに、パターン[6]の加速度の分布が設定されている場合には、加速度が一定でないため、中心値となる位置は、下記式のように表現できる。
Δx = (vΔt +α0Δt2/2+βΔt3/4) cosθ
Δy = (vΔt +α0Δt2/2+βΔt3/4) sinθ
ΔX = Δx/(R cos Y) = (vΔt +α0Δt2/2+βΔt3/4) cosθ/(R cos Y)
ΔY = Δy/R = (vΔt +α0Δt2/2+βΔt3/4) sinθ/R
X' = X + ΔX = X + (vΔt +α0Δt2/2+βΔt3/4) cosθ/(R cos Y)
Y ' = Y + ΔY = Y + (vΔt +α0Δt2/2+βΔt3/4) sinθ/R
ここで、上記式においては加速度の変化量をβとしている。この場合、加速度αは次式で表される。
α=α0+βΔt/2
なお、α0は最後に受信した加速度を表す。また、係数の1/2はΔt後の値ではなくΔtの間の平均的な値とするための値である。
【0064】
そして、予測領域を求める処理では、加速度変化、つまり、加速度の変化量がβ0からβに変化したと仮定したときの位置のずれを考慮すると、加速度分布は下記式(19)(20)で表すことができる。
【0065】
【数10】
この式を考慮すると、時間と加速度との関係は、図10(b)で表現できる。ただし、加速度が長時間に渡って増え続けることは考えにくく、また、車両毎に加速度限界があることを考慮すると、加速度の中心値は次第に小さくなるものとして補正している。また、加速度の変化は予想しにくいことを考慮して、標準偏差を他のパターンと比較して大きめの値に設定している。
【0066】
なお、上記については自車両が加速する場合について述べたが、自車両が減速する場合においても同様に演算することができる。
このような車両位置予測処理を終了すると、車両位置予測処理で得られた予測領域(予測円)同士の重なりを算出する(S260:衝突演算手段)。ここで、予測領域の重なりとは、自車両における予測領域と、設定中の車両番号が対応する他車両における予測領域との重なりを意味し、設定中の車両番号が自車両に対応する番号(ここでは1)である場合には、この処理は省略される。
【0067】
続いて、予測領域の重なりがあるか否かを判定する(S270)。予測領域の重なりがあれば(S270:YES)、警報部14に対して警報を実施させる警報処理を行う(S280:報知手段)。ここで、警報処理においては、自車両と他車両との衝突確率に応じて警報種別を変更するようにしてもよい。この際、衝突確率は、予測領域の重なりの大きさや、重なり部分における各車両の存在確率等を考慮して求めるようにすればよい。
【0068】
ここで、各車両の存在確率は、図2,図11に示すように、予測領域の中心に近づくにつれて高い値となり、予測領域の重なりが大きくなればなるほど衝突確率が増すと考えられる。
【0069】
続いて、車両番号iをインクリメントし(S290)、車両情報を管理するリストにおける最大の車両番号nと設定中の車両番号iとを比較する(S300)。そして、設定中の車両番号iが最大の車両番号n以下であれば(S300:YES)、S230以下の処理を繰り返す。また、設定中の車両番号iが最大の車両番号nよりも大きければ、支援処理を終了する。
[本実施形態による効果]
以上のように詳述した車載装置10において演算処理部13は、支援処理にて、ある時刻(特定時刻)における対象車両(自車両および他車両)の位置、速度、および進行方向を含む車両情報を取得し、併せて対象車両の速度を変化させる要因を取得する。なお、他車両についての車両情報を取得する際には車車間通信を利用する。そして、車両情報に対象車両の速度を変化させる要因を加味して特定時刻よりも未来の複数の対象時刻における対象車両の位置を推定する。
【0070】
このような車載装置10によれば、対象車両の速度を変化させる要因を加味して対象車両の位置を推定するので、単に対象車両が一定速度で移動すると推定する場合と比較して対象車両の位置の推定精度を向上させることができる。また、自車両の位置を推定するとともに、車車間通信を利用して他車両の車両情報を利用し、他車両の位置を推定することができる。
【0071】
さらに、上記車載装置10において演算処理部13は、自車両および他車両の推定位置に基づいて自車両および他車両の挙動を推定し、これらの挙動に基づいて自車両と他車両とが衝突する確率(衝突確率)を演算する。
【0072】
このような車載装置10によれば、自車両および他車両の推定位置の検出精度を向上できるので、衝突確率の演算精度も向上させることができる。
また、上記車載装置10において演算処理部13は、特定時刻よりも未来の複数の対象時刻において自車両および他車両が存在すると推定される位置を、存在確率毎に区分された複数の領域の集合としての予測領域としてそれぞれ演算し、同時刻における各予測領域の重なり程度に応じて衝突確率を判断する。
【0073】
このような車載装置10によれば、各予測領域の重なりの大小によって容易に衝突確率を判断することができる。
さらに、上記車載装置10において演算処理部13は、衝突確率に応じて報知を行う。
【0074】
このような車載装置10によれば、衝突確率の演算結果に応じた報知を行うことができるので、運転者に危険を知らせることができる。
また、上記車載装置10において演算処理部13は、速度を変化させる要因として、対象車両が走行する道路における制限速度の情報を取得し、対象車両が制限速度以上となる速度に加速する確率が低いものとして対象車両の位置を推定する。
【0075】
このような車載装置10によれば、対象車両が制限速度を超えて加速する可能性が低い傾向があることを考慮して対象車両の位置を推定するので、対象車両の位置の検出精度を向上させることができる。
【0076】
さらに、上記車載装置10において演算処理部13は、速度を変化させる要因として、対象車両の加速または減速に関する性能に関する情報を取得し、対象車両の性能に関する情報に基づいて、対象車両の速度を推定し、対象車両の位置を推定する。
【0077】
このような道路端検出装置によれば、対象車両の加減速性能に応じて対象車両の加減速範囲(つまり速度範囲)を予測することができるので、対象車両の位置の検出精度を向上させることができる。
【0078】
[その他の実施形態]
本発明の実施の形態は、上記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0079】
例えば、上記実施形態において、車両の位置のばらつきを演算する際に、正規分布の考え方を用いたが、他の手法を利用して演算してもよい。また、上記実施形態においては、自車両と他車両との衝突確率のみを演算したが、他車両同士の衝突確率を演算してもよい。この場合、衝突確率等の衝突の危険性に関する情報を、該当する他車両に通知してもよい。
【0080】
さらに、上記実施形態においては、衝突確率に応じて警報を行うよう構成したが、衝突確率が所定の閾値よりも高い場合には、車両制御部15を用いて自車両を制動する介入を行ってもよい。
【0081】
また、上記実施形態においては、車両が旋回運動する際の位置ずれについては考慮していないが、この旋回運動を考慮してもよい。
この場合、例えば、
ωrΔt = (v +αΔt/2) Δt
r = (v +αΔt/2)/ω
d = 2r sin(ωΔt/2) = (2v +αΔt)/ω sin(ωΔt/2)
Δx = (2v +αΔt)/ω sin(ωΔt/2) cos(θ+ωΔt/2)
Δy = (2v +αΔt)/ω sin(ωΔt/2) sin (θ+ωΔt/2)
ΔX = (2v +αΔt)/ω sin(ωΔt/2) cos(θ+ωΔt/2) /(R cos Y)
ΔY = (2v +αΔt)/ω sin(ωΔt/2) sin (θ+ωΔt/2) /R
X' = X + (2v +αΔt)/ω sin(ωΔt/2) cos(θ+ωΔt/2) /(R cos Y)
Y ' = Y + (2v +αΔt)/ω sin(ωΔt/2) sin (θ+ωΔt/2) /R
という関係式を利用して、中心値や速度分布等を演算すればよい。
【0082】
上記のように構成しても、上記実施形態と同様の効果を享受できる。
【符号の説明】
【0083】
1…車両制御システム、10…車載装置、11…車載通信機、12…位置特定部、13…演算処理部、14…警報部、15…車両制御部、16…レーダ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の位置を推定する車両位置推定装置、および車両位置推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ある車両が一定速度で走行すると仮定してこの車両の位置を推定する車両位置推定装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−066261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記車両位置推定装置では、位置を推定しようとする車両が加速中や減速中であれば、位置を推定する際の誤差が大きくなるという問題点があった。
そこで、このような問題点を鑑み、車両の位置を推定する車両位置推定装置および車両位置推定プログラムにおいて、より精度よく車両の位置を推定できるようにすることを本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために成された車両位置推定装置において、車両情報取得手段は、基準時刻における対象車両の位置、速度、および進行方向を含む車両情報を取得し、要因取得手段は、対象車両の速度を変化させる要因を取得する。そして、位置推定手段は、車両情報に対象車両の速度を変化させる要因を加味して基準時刻よりも未来における対象車両の位置を推定する(請求項1)。
【0006】
このような車両位置推定装置によれば、対象車両の速度を変化させる要因を加味して対象時刻における対象車両の位置を推定するので、単に対象車両が一定速度で移動すると推定する場合と比較して対象車両の位置の推定精度を向上させることができる。
【0007】
ところで、上記車両位置推定装置において、車両情報取得手段は、車車間通信を利用して、対象車両として他車両についての車両情報を取得する他車両情報取得手段を備え、要因取得手段は、車車間通信を利用して、他車両についての速度を変化させる要因を取得する他車両要因取得手段を備え、位置推定手段は、他車両の位置を推定する他車両位置推定手段を備えていてもよい(請求項2)。
【0008】
このような車両位置推定装置によれば、車車間通信を利用して他車両の車両情報を利用し、他車両の位置を推定することができる。
また、上記車両位置推定装置が車両に搭載されている場合には、車両情報取得手段は、対象車両として自車両についての車両情報を取得する自車両情報取得手段を備え、要因取得手段は、自車両についての速度を変化させる要因を取得する自車両要因取得手段を備え、位置推定手段は、自車両の位置を推定する自車両位置推定手段を備えていてもよい(請求項3)。
【0009】
このような車両位置推定装置によれば、自車両の位置を推定することができる。なお、本発明は、請求項2のみの従属項としているが、以下の請求項の記載を考慮しなければ、請求項1にも従属させることができる。
【0010】
さらに、上記車両位置推定装置においては、自車両および他車両の推定位置に基づいて自車両および他車両の挙動を推定し、これらの挙動に基づいて自車両と他車両とが衝突する確率(以下、「衝突確率」という。)を演算する衝突演算手段、を備えていてもよい(請求項4)。
【0011】
このような車両位置推定装置によれば、自車両および他車両の推定位置の検出精度を向上できているので、衝突確率の演算精度も向上させることができる。
また、上記車両位置推定装置において、衝突演算手段は、基準時刻よりも未来の複数の対象時刻において、自車両および他車両が存在すると推定される位置を、存在確率毎に区分された複数の領域の集合としての予測領域としてそれぞれ演算し、各対象時刻における各予測領域の重なり程度に応じて衝突確率を判断するようにしてもよい(請求項5)。
【0012】
このような車両位置推定装置によれば、各予測領域の重なりの大小によって容易に衝突確率を判断することができる。
さらに、上記車両位置推定装置においては、衝突確率に応じて報知を行う報知手段、を備えていてもよい(請求項6)。
【0013】
このような車両位置推定装置によれば、衝突確率の演算結果に応じた報知を行うことができるので、運転者に危険を知らせることができる。
また、上記車両位置推定装置において、要因取得手段は、要因として、対象車両が走行する道路における制限速度の情報を取得し、位置推定手段は、対象車両が制限速度以上となる速度に加速する確率が低いものとして対象車両の位置を推定するようにしてもよい(請求項7)。
【0014】
このような車両位置推定装置によれば、対象車両が制限速度を超えて加速する可能性が低い傾向があることを考慮して対象車両の位置を推定するので、対象車両の位置の検出精度を向上させることができる。
【0015】
さらに、上記車両位置推定装置において、要因取得手段は、要因として、対象車両の加速または減速に関する性能に関する情報を取得し、位置推定手段は、対象車両の性能に関する情報に基づいて、対象車両の速度を推定し、対象車両の位置を推定するようにしてもよい(請求項8)。
【0016】
このような道路端検出装置によれば、対象車両の加減速性能に応じて対象車両の加減速範囲(つまり速度範囲)を予測することができるので、対象車両の位置の検出精度を向上させることができる。
【0017】
次に、上記目的を達成するために成された車両位置推定プログラムにおいては、コンピュータを、請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の車両位置推定装置を構成する各手段として機能させるためのプログラムであることを特徴としている(請求項9)。
【0018】
このような車両位置推定プログラムによれば、少なくとも請求項1に記載の車両位置推定装置と同様の効果を享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態の車両制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態の処理の概要を示す説明図である。
【図3】支援処理を示すフローチャートである。
【図4】車両位置予測処理を示すフローチャートである。
【図5】パターン[1]の速度分布を示すグラフである。
【図6】パターン[2]の速度分布を示すグラフである。
【図7】パターン[3]の速度分布を示すグラフである。
【図8】パターン[4]の速度分布を示すグラフである(制限速度到達前)。
【図9】パターン[4]の速度分布を示すグラフである(制限速度到達後)。
【図10】パターン[5]の速度分布を示すグラフ(a)、およびパターン[6]の加速度分布を示すグラフ(b)である。
【図11】自車両および他車両の衝突確率を求める際の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明にかかる実施の形態を図面と共に説明する。
[本実施形態の構成]
図1は本発明が適用された車両制御システム1の概略構成を示すブロック図である。車両制御システム1は、道路を走行する複数の車両にそれぞれ搭載される車載装置10(車両位置推定装置)を備えて構成されている。
【0021】
各車両の車載装置10は、他の車両の車載装置10との間で車車間通信を実施可能に構成されている。なお、各車両の車載装置10は全て同様の構成とされているため、図1においては、ある1つの車載装置10についてのみを詳細に図示している。
【0022】
車載装置10は、図1に示すように、車載通信機11、位置特定部12、演算処理部13、警報部14、車両制御部15、レーダ16等を備えている。
車載通信機11は、無線通信装置として構成されており、演算処理部13の指令に応じて他の車載装置10に自車両の車両情報を送信するとともに、他の車載装置10から車両情報を受信する、車車間通信を行う。ここで、車載通信機11は、車両情報として、自車両の位置、速度、加速度、車長、車幅、自車両の加減速性能(最大加速度、最大限速度)等の情報を周期的(例えば100ms毎)に互いにやりとりする。なお、自車両の加減速性能については、車両の運転者の特性に応じた値としてもよい。
【0023】
位置特定部12は、図示しない車速センサ、GPS受信機、光ビーコン、加速度センサ、ジャイロスコープ等による検出信号に基づいて自車両の現在地や進行方向を特定し、その特定したデータを演算処理部13に入力する。
【0024】
警報部14は、例えば、表示装置やスピーカ等から構成されており、演算処理部13からの指令に応じて運転者に警報を行うための画像を表示させたり、音声(警報音を含む)を発生させたりする。
【0025】
レーダ16は、電波やレーザ光等の電磁波を自車両の進行方向(前方)に照射し、その反射波を検出することによって、他車両との車間距離を検出する周知のレーダとして構成されている。レーダ16は、一定時間(例えば100ms)毎に他車両との車間距離を検出し、その検出結果を演算処理部13に送る。
【0026】
演算処理部13および車両制御部15は、CPU、ROM、RAM等を備えた周知のマイクロコンピュータとして構成されている。特に演算処理部13は、位置特定部12やレーダ16等による検出結果を利用しつつ、自身のROM等に格納されたプログラム(車両位置推定プログラム)に基づいて、後述する支援処理等の各種処理を実施する。
【0027】
また、車両制御部15は、自身のROM等に記憶されたプログラムに従って、制動を行う等の運転支援を行う。
[本実施形態の処理]
このような本実施形態の車両制御システムにおいて実施される処理の概要について、図2を用いて説明する。本実施形態の車載装置10では、図2(a)、図2(b)に示すように、自車両近傍を走行する他車両および自車両について、現在および未来の走行位置を予測領域としてそれぞれ推定し、同じ時刻においてこれらの予測領域が重なるか否かに応じて自車両が他車両と衝突する可能性があるか否かを判定し、必要に応じて警報を行う処理を実施する。
【0028】
図2(a)に示す例では、各予測領域が交差点に接近したとしても、各予測領域が重なることはないため(図2(a)の右図参照)、警報を実施しない。一方、図2(b)に示す例では、各予測領域が交差点に接近したときに、各予測領域が重なるので(図2(b)の右図参照)、警報を実施することになる。
【0029】
詳細な処理ついては図3以下の図面を用いて説明する。図3は車載装置10の演算処理部13が実行する支援処理を示すフローチャート、図4は支援処理のうちの車両位置予測処理を示すフローチャートである。
【0030】
支援処理は、車両の電源が投入されると開始され、その後繰り返し実施される処理であり、まず、車両情報の受信を試み(S110:車両情報取得手段、要因取得手段、他車両情報取得手段、他車両要因取得手段、自車両情報取得手段、自車両要因取得手段)、車両情報を受信していれば、車両情報を更新する(S120)。ここで、車両情報を更新する処理とは、車両情報毎に車両を特定するための車両番号と、情報を受信した時刻と、を付したリストを生成して、このリストにおいて車両情報を管理する処理を示す。なお、車両情報には、車両を識別するための情報(車両ID)が付されており、同じ車両に対応する車両情報は、速度や加速度の変化を検出するために所定時間分蓄積され、所定時間を超える分については上書きされる。
【0031】
また、この処理にて付される車両番号は、各車両に対して1から順に付される。なお、自車両から送信される車両情報についても他車両から受信した車両情報と同様に取得されたものとみなし、車両番号を付して管理される。そして、自車両には車両番号1が付される。
【0032】
続いて、前回衝突確率を演算してからの時間を計測し(S130)、計測した時間が衝突確率を演算する周期を表す処理基準時間を経過したか否かを判定する(S140)。処理基準時間を経過していなければ(S140:NO)、S110の処理に戻る。
【0033】
また、処理基準時間を経過していれば(S140:YES)、自車両が交差点に接近しているか否かを判定する(S150)。ここで、交差点の位置は、図示しないナビゲーション装置や道路近傍に配置された路側装置から取得することができるものとする。また、「接近」とは、運転者が警報を受けて衝突回避操作を行えば自車両と他車両との衝突を回避することができる程度(例えば、150m程度以下)の距離を表す。
【0034】
交差点に接近していなければ(S150:NO)、直ちに支援処理を終了する。また、交差点に接近していれば(S150:YES)、自車両がこの交差点に到達するまでの時間(範囲)を算出する(S210)。この処理では、例えば、自車両の現在地と交差点の位置とに基づいて交差点までの距離を算出し、この距離を自車両の車速で除算することにより行う。
【0035】
またこの際、自車両の車速は最も遅く交差点に接近する場合の速度(例えば、現在の速度の半分の速度等)を採用する。以後の処理では、現在から自車両がこの交差点に到達するまでの時間までの時間範囲において、自車両と他車両とが衝突するか否かを判定することになる。
【0036】
続いて、車両番号iを1に設定し(S220)、設定した車両番号が対応する車両情報(以下、「設定中の車両番号」という。)について、削除基準時間(例えば1秒間程度)が経過したか否かを判定する(S230)。ここで、削除基準時間とは、車両の有無を判断するための時間である。つまり、長時間(削除基準時間以上)に渡って車両情報が受信できない車両は、交差点手前で旋回したり走行を取りやめたりした可能性が高く、交差点に進入しないと考えられるため、管理対象から除外する。
【0037】
即ち、削除基準時間が経過していれば(S230:YES)、車両情報を管理するリストから設定中の車両番号が対応する車両情報を削除し(S240)、後述するS290の処理に移行する。また、削除基準時間が経過していなければ(S230:NO)、この車両の位置を予測する車両位置予測処理を実施する(S250:位置推定手段、他車両位置推定手段、自車両位置推定手段)。
【0038】
車両位置予測処理では、まず、設定中の車両番号が対応する車両の走行速度が一定であるか否かを判定する(S430)。この車両の走行速度が一定であれば(S430:YES)、この車両の走行速度とこの車両が走行する道路の制限速度とを比較する(S440)。なお、道路の制限速度はナビゲーション装置等から取得すればよい。
【0039】
この車両の走行速度が制限速度以下であれば(S440:YES)、パターン[1]の速度分布を利用するよう設定し(S450)、後述するS610の処理に移行する。なお、速度分布(パターン[1]〜[6]の速度分布(加速度分布))については後述する。
【0040】
次に、この車両の走行速度が制限速度よりも大きな値であれば(S440:NO)、パターン[2]の速度分布を利用するよう設定し(S460)、後述するS610の処理に移行する。また、S430の処理にて設定中の車両番号が対応する車両の走行速度が一定でなければ(S430:NO)、この車両の加速度が一定であるか否かを判定する(S510)。加速度が一定であれば(S510:YES)、この車両の走行速度と制限速度とを比較する(S520)。
【0041】
この車両の速度が制限速度以下であれば(S520:YES)、この車両の加速度と基準となる加速度とを比較する(S530)。この車両の加速度が基準となる加速度未満であれば(S530:YES)、パターン[3]の速度分布を利用するよう設定し(S540)、後述するS610の処理に移行する。
【0042】
また、この車両の加速度が基準となる加速度以上であれば(S530:NO)、パターン[4]の速度分布を利用するよう設定し(S560)、後述するS610の処理に移行する。また、S520の処理にて、この車両の速度が制限速度を超えていれば(S520:NO)、パターン[5]の速度分布を利用するよう設定し(S570)、後述するS610の処理に移行する。
【0043】
次に、S510の処理にて加速度が一定でなければ(S510:NO)、この車両の加速度の変化量と基準となる変化量とを比較する(S550)。加速度の変化量が基準となる変化量以上であれば(S550:NO)、パターン[4]の速度分布を利用するよう設定し(S560)、後述するS610の処理に移行する。
【0044】
また、加速度の変化量が基準となる変化量未満であれば(S550:YES)、この車両が加速を開始してからの経過時間と基準となる経過時間とを比較する(S580)。この車両が加速を開始してからの経過時間が基準となる経過時間未満であれば(S580:YES)、パターン[6]の加速度分布を利用するよう設定し(S590)、後述するS610の処理に移行する。
【0045】
また、この車両が加速を開始してからの経過時間が基準となる経過時間以上であれば(S580:NO)、パターン[4]の速度分布を利用するよう設定し(S560)、後述するS610の処理に移行する。
【0046】
上記のように利用する速度分布のパターンが設定されると、この速度分布のパターンを利用して、設定中の車両における挙動予測を行う(S610)。この処理では、まず、この車両の速度、加速度、加速度の変化率、ヨーレート等を用いて、速度分布を求める際の中心値となる位置を推定し、その後、設定したパターンの速度分布を利用して車両が存在する可能性がある領域(予測領域)を設定する。
【0047】
車両の中心値となる位置を推定する処理では、まず、各種値を下記のように定義する。
(X,Y) :最後に受信した位置(経度、緯度、rad)
(X',Y') :推定した位置(経度、緯度、rad)
v :最後に受信した速度(m/s)
α :最後に受信した加速度(m/s2)、負の場合は減速
Δt :経過時間(s)
Δx,Δy :経過時間中の移動量(m)
ΔX,ΔY :経過時間中の移動量(経度、緯度、rad)
θ :進行方向(rad)、東向きを0とし反時計回り
ω :ヨーレート(rad/s)
r :回転半径(m)
R :地球の半径(m)、走行地点での近似値
上記定義を利用して、車両の速度が一定の場合(パターン[1][2]の場合)においてこの車両の位置を推定する際には、中心値となる位置は、下記式のように表現できる。
Δx = vΔt cosθ
Δy = vΔt sinθ
ΔX = Δx/(R cos Y) = vΔt cosθ/(R cos Y)
ΔY = Δy/R = vΔt sinθ/R
X' = X + ΔX = X + vΔt cosθ/(R cos Y)
Y ' = Y + ΔY = Y + vΔt sinθ/R
そして、予測領域を求める処理を行う。この処理において、上記演算で得られる中心値から速度が変化する確率を統計学に基づいて算出する。特に本実施形態においては、正規分布を考え方を利用する。
【0048】
正規分布N(μ、σ2)は、次式から得られる。なお、μは平均値(中心値)、σ2は分散、σは標準偏差である。
【0049】
【数1】
式(1)は、正規分布であるが、x=μを境界として非対称となる場合には、下記のように定義できる。
【0050】
【数2】
x=μのとき、
【0051】
【数3】
であるから、ガウス積分の公式を用いてこの関数を積分すると、
【0052】
【数4】
となる。
【0053】
ここで、式(7)(8)より、
【0054】
【数5】
が得られる。上記式(9)(10)を上記式(2)(3)に代入すると、下記式(11)(12)が得られる。
【0055】
【数6】
次に、車両の速度が一定の場合(パターン[1][2]の場合)において、速度変化、つまり、加速度が0からαに変化したと仮定したときの位置のずれを考慮すると、移動量は下記式(13)(14)で表すことができる。
【0056】
【数7】
ここで、上記式(11)(12)より、加速度αが採る値は、次式で表される確率分布であると仮定できる。
【0057】
【数8】
なお、σ1およびσ2は、走行環境等で決定される標準偏差である。上記式(15)(16)を用いると、パターン[1]の速度分布が設定されている場合には、σ1=σ2となり、図5に示すような速度分布が得られる。なお、図5に示す例では、横軸に時間、縦軸に車速を取っており、時間が経過すればするほど、速度のばらつきが大きくなることを示している。また、図5以下の図面において太い実線は、速度の中心値を示し、破線はおおよそ99%の確率で速度が収まる範囲(約3σに相当)を示し、細い実線はおおよそ70%の確率で速度が収まる範囲(約σに相当)を示している。
【0058】
このような速度分布を利用して、現在時刻から交差点到達時間までの範囲内において、所定時間毎(例えば0.2秒毎)に、設定中の車両が存在すると推定される位置を、存在確率毎に区分された複数の領域の集合としての予測領域(図2、図11参照)としてそれぞれ演算する。つまり、この演算によって車両の挙動が演算される。
【0059】
なお、パターン[2]の速度分布が設定されている場合には、車両の速度が既に制限速度に達しているため、車両がこれ以上加速する確率は低くなると予測し、式(15)(16)において、加速側の標準偏差を小さく設定する。すると、図6に示すように、加速側の確率が低くなった速度分布が得られる。
【0060】
また、パターン[3]の速度分布が設定されている場合には、車両の加速度が一定であるので、中心値となる位置は、下記式のように表現できる。
Δx = (vΔt +αΔt2/2) cosθ
Δy = (vΔt +αΔt2/2) sinθ
ΔX = Δx/(R cos Y) = (vΔt +αΔt2/2) cosθ/(R cos Y)
ΔY = Δy/R = (vΔt +αΔt2/2) sinθ/R
X' = X + ΔX = X + (vΔt +αΔt2/2) cosθ/(R cos Y)
Y ' = Y + ΔY = Y + (vΔt +αΔt2/2) sinθ/R
そして、予測領域を求める処理では、速度変化、つまり、加速度がα0からαに変化したと仮定したときの位置のずれを考慮すると、速度分布は下記式(17)(18)で表すことができる。
【0061】
【数9】
この際の速度分布は、図7に示すように正規分布となると仮定できる。また、パターン[4]の速度分布が設定されている場合には、既に加速度が大きく、さらに加速度が増加する確率は低いと考えられるため、加速側の標準偏差を小さく設定する。すると、図8に示すような非対称となる速度分布が得られる。そして、中心値が制限速度に達すると、その後は一定速度で走行するものと仮定する。つまり、制限速度に到達後は、図9に示すように、パターン[2]と同様の速度分布となる。
【0062】
また、パターン[5]の速度分布が設定されている場合には、車両の速度が制限速度を超えており、さらに加速度が増加する確率は低いと考えられるため、加速側の標準偏差を小さく設定する。そして、制限速度との差が大きくなるにつれて、加速度の変化を負の方向に設定する。つまり、中心値を負の方向に補正する。すると、図10(a)に示すような非対称となる速度分布が得られる。
【0063】
さらに、パターン[6]の加速度の分布が設定されている場合には、加速度が一定でないため、中心値となる位置は、下記式のように表現できる。
Δx = (vΔt +α0Δt2/2+βΔt3/4) cosθ
Δy = (vΔt +α0Δt2/2+βΔt3/4) sinθ
ΔX = Δx/(R cos Y) = (vΔt +α0Δt2/2+βΔt3/4) cosθ/(R cos Y)
ΔY = Δy/R = (vΔt +α0Δt2/2+βΔt3/4) sinθ/R
X' = X + ΔX = X + (vΔt +α0Δt2/2+βΔt3/4) cosθ/(R cos Y)
Y ' = Y + ΔY = Y + (vΔt +α0Δt2/2+βΔt3/4) sinθ/R
ここで、上記式においては加速度の変化量をβとしている。この場合、加速度αは次式で表される。
α=α0+βΔt/2
なお、α0は最後に受信した加速度を表す。また、係数の1/2はΔt後の値ではなくΔtの間の平均的な値とするための値である。
【0064】
そして、予測領域を求める処理では、加速度変化、つまり、加速度の変化量がβ0からβに変化したと仮定したときの位置のずれを考慮すると、加速度分布は下記式(19)(20)で表すことができる。
【0065】
【数10】
この式を考慮すると、時間と加速度との関係は、図10(b)で表現できる。ただし、加速度が長時間に渡って増え続けることは考えにくく、また、車両毎に加速度限界があることを考慮すると、加速度の中心値は次第に小さくなるものとして補正している。また、加速度の変化は予想しにくいことを考慮して、標準偏差を他のパターンと比較して大きめの値に設定している。
【0066】
なお、上記については自車両が加速する場合について述べたが、自車両が減速する場合においても同様に演算することができる。
このような車両位置予測処理を終了すると、車両位置予測処理で得られた予測領域(予測円)同士の重なりを算出する(S260:衝突演算手段)。ここで、予測領域の重なりとは、自車両における予測領域と、設定中の車両番号が対応する他車両における予測領域との重なりを意味し、設定中の車両番号が自車両に対応する番号(ここでは1)である場合には、この処理は省略される。
【0067】
続いて、予測領域の重なりがあるか否かを判定する(S270)。予測領域の重なりがあれば(S270:YES)、警報部14に対して警報を実施させる警報処理を行う(S280:報知手段)。ここで、警報処理においては、自車両と他車両との衝突確率に応じて警報種別を変更するようにしてもよい。この際、衝突確率は、予測領域の重なりの大きさや、重なり部分における各車両の存在確率等を考慮して求めるようにすればよい。
【0068】
ここで、各車両の存在確率は、図2,図11に示すように、予測領域の中心に近づくにつれて高い値となり、予測領域の重なりが大きくなればなるほど衝突確率が増すと考えられる。
【0069】
続いて、車両番号iをインクリメントし(S290)、車両情報を管理するリストにおける最大の車両番号nと設定中の車両番号iとを比較する(S300)。そして、設定中の車両番号iが最大の車両番号n以下であれば(S300:YES)、S230以下の処理を繰り返す。また、設定中の車両番号iが最大の車両番号nよりも大きければ、支援処理を終了する。
[本実施形態による効果]
以上のように詳述した車載装置10において演算処理部13は、支援処理にて、ある時刻(特定時刻)における対象車両(自車両および他車両)の位置、速度、および進行方向を含む車両情報を取得し、併せて対象車両の速度を変化させる要因を取得する。なお、他車両についての車両情報を取得する際には車車間通信を利用する。そして、車両情報に対象車両の速度を変化させる要因を加味して特定時刻よりも未来の複数の対象時刻における対象車両の位置を推定する。
【0070】
このような車載装置10によれば、対象車両の速度を変化させる要因を加味して対象車両の位置を推定するので、単に対象車両が一定速度で移動すると推定する場合と比較して対象車両の位置の推定精度を向上させることができる。また、自車両の位置を推定するとともに、車車間通信を利用して他車両の車両情報を利用し、他車両の位置を推定することができる。
【0071】
さらに、上記車載装置10において演算処理部13は、自車両および他車両の推定位置に基づいて自車両および他車両の挙動を推定し、これらの挙動に基づいて自車両と他車両とが衝突する確率(衝突確率)を演算する。
【0072】
このような車載装置10によれば、自車両および他車両の推定位置の検出精度を向上できるので、衝突確率の演算精度も向上させることができる。
また、上記車載装置10において演算処理部13は、特定時刻よりも未来の複数の対象時刻において自車両および他車両が存在すると推定される位置を、存在確率毎に区分された複数の領域の集合としての予測領域としてそれぞれ演算し、同時刻における各予測領域の重なり程度に応じて衝突確率を判断する。
【0073】
このような車載装置10によれば、各予測領域の重なりの大小によって容易に衝突確率を判断することができる。
さらに、上記車載装置10において演算処理部13は、衝突確率に応じて報知を行う。
【0074】
このような車載装置10によれば、衝突確率の演算結果に応じた報知を行うことができるので、運転者に危険を知らせることができる。
また、上記車載装置10において演算処理部13は、速度を変化させる要因として、対象車両が走行する道路における制限速度の情報を取得し、対象車両が制限速度以上となる速度に加速する確率が低いものとして対象車両の位置を推定する。
【0075】
このような車載装置10によれば、対象車両が制限速度を超えて加速する可能性が低い傾向があることを考慮して対象車両の位置を推定するので、対象車両の位置の検出精度を向上させることができる。
【0076】
さらに、上記車載装置10において演算処理部13は、速度を変化させる要因として、対象車両の加速または減速に関する性能に関する情報を取得し、対象車両の性能に関する情報に基づいて、対象車両の速度を推定し、対象車両の位置を推定する。
【0077】
このような道路端検出装置によれば、対象車両の加減速性能に応じて対象車両の加減速範囲(つまり速度範囲)を予測することができるので、対象車両の位置の検出精度を向上させることができる。
【0078】
[その他の実施形態]
本発明の実施の形態は、上記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0079】
例えば、上記実施形態において、車両の位置のばらつきを演算する際に、正規分布の考え方を用いたが、他の手法を利用して演算してもよい。また、上記実施形態においては、自車両と他車両との衝突確率のみを演算したが、他車両同士の衝突確率を演算してもよい。この場合、衝突確率等の衝突の危険性に関する情報を、該当する他車両に通知してもよい。
【0080】
さらに、上記実施形態においては、衝突確率に応じて警報を行うよう構成したが、衝突確率が所定の閾値よりも高い場合には、車両制御部15を用いて自車両を制動する介入を行ってもよい。
【0081】
また、上記実施形態においては、車両が旋回運動する際の位置ずれについては考慮していないが、この旋回運動を考慮してもよい。
この場合、例えば、
ωrΔt = (v +αΔt/2) Δt
r = (v +αΔt/2)/ω
d = 2r sin(ωΔt/2) = (2v +αΔt)/ω sin(ωΔt/2)
Δx = (2v +αΔt)/ω sin(ωΔt/2) cos(θ+ωΔt/2)
Δy = (2v +αΔt)/ω sin(ωΔt/2) sin (θ+ωΔt/2)
ΔX = (2v +αΔt)/ω sin(ωΔt/2) cos(θ+ωΔt/2) /(R cos Y)
ΔY = (2v +αΔt)/ω sin(ωΔt/2) sin (θ+ωΔt/2) /R
X' = X + (2v +αΔt)/ω sin(ωΔt/2) cos(θ+ωΔt/2) /(R cos Y)
Y ' = Y + (2v +αΔt)/ω sin(ωΔt/2) sin (θ+ωΔt/2) /R
という関係式を利用して、中心値や速度分布等を演算すればよい。
【0082】
上記のように構成しても、上記実施形態と同様の効果を享受できる。
【符号の説明】
【0083】
1…車両制御システム、10…車載装置、11…車載通信機、12…位置特定部、13…演算処理部、14…警報部、15…車両制御部、16…レーダ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象となる車両(以下、「対象車両」という。)の位置を推定する車両位置推定装置であって、
ある時刻(以下、「基準時刻」という。)における前記対象車両の位置、速度、および進行方向を含む車両情報を取得する車両情報取得手段と、
前記対象車両の速度を変化させる要因を取得する要因取得手段と、
前記車両情報に前記要因を加味して前記基準時刻よりも未来の対象時刻における前記対象車両の位置を推定する位置推定手段と、
を備えたことを特徴とする車両位置推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両位置推定装置において、
前記車両情報取得手段は、車車間通信を利用して、前記対象車両として他車両についての車両情報を取得する他車両情報取得手段を備え、
前記要因取得手段は、車車間通信を利用して、前記他車両についての前記要因を取得する他車両要因取得手段を備え、
前記位置推定手段は、前記他車両の位置を推定する他車両位置推定手段を備えたこと
を特徴とする車両位置推定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両位置推定装置において、
当該車両位置推定装置は車両に搭載されており、
前記車両情報取得手段は、前記対象車両として自車両についての車両情報を取得する自車両情報取得手段を備え、
前記要因取得手段は、前記自車両についての前記要因を取得する自車両要因取得手段を備え、
前記位置推定手段は、前記自車両の位置を推定する自車両位置推定手段を備えたこと
を特徴とする車両位置推定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両位置推定装置において、
前記自車両および前記他車両の推定位置に基づいて前記自車両および前記他車両の挙動を推定し、これらの挙動に基づいて前記自車両と前記他車両とが衝突する確率(以下、「衝突確率」という。)を演算する衝突演算手段、を備えたこと
を特徴とする車両位置推定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両位置推定装置において、
前記衝突演算手段は、前記基準時刻よりも未来の複数の対象時刻において、自車両および他車両が存在すると推定される位置を、存在確率毎に区分された複数の領域の集合として特定される予測領域としてそれぞれ演算し、前記各対象時刻における各予測領域の重なり具合に応じて前記衝突確率を判断すること
を特徴とする車両位置推定装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の車両位置推定装置において、
前記衝突確率に応じて報知を行う報知手段、を備えたこと
を特徴とする車両位置推定装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の車両位置推定装置において、
前記要因取得手段は、前記要因として、前記対象車両が走行する道路における制限速度の情報を取得し、
前記位置推定手段は、前記対象車両が前記制限速度以上となる速度に加速する確率が低いものとして前記対象車両の位置を推定すること
を特徴とする車両位置推定装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れかに記載の車両位置推定装置において、
前記要因取得手段は、前記要因として、前記対象車両の加速または減速に関する性能に関する情報を取得し、
前記位置推定手段は、前記対象車両の性能に関する情報に基づいて、前記対象車両の速度を推定し、前記対象車両の位置を推定すること
を特徴とする車両位置推定装置。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の車両位置推定装置を構成する各手段として機能させるための車両位置推定プログラム。
【請求項1】
検出対象となる車両(以下、「対象車両」という。)の位置を推定する車両位置推定装置であって、
ある時刻(以下、「基準時刻」という。)における前記対象車両の位置、速度、および進行方向を含む車両情報を取得する車両情報取得手段と、
前記対象車両の速度を変化させる要因を取得する要因取得手段と、
前記車両情報に前記要因を加味して前記基準時刻よりも未来の対象時刻における前記対象車両の位置を推定する位置推定手段と、
を備えたことを特徴とする車両位置推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両位置推定装置において、
前記車両情報取得手段は、車車間通信を利用して、前記対象車両として他車両についての車両情報を取得する他車両情報取得手段を備え、
前記要因取得手段は、車車間通信を利用して、前記他車両についての前記要因を取得する他車両要因取得手段を備え、
前記位置推定手段は、前記他車両の位置を推定する他車両位置推定手段を備えたこと
を特徴とする車両位置推定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両位置推定装置において、
当該車両位置推定装置は車両に搭載されており、
前記車両情報取得手段は、前記対象車両として自車両についての車両情報を取得する自車両情報取得手段を備え、
前記要因取得手段は、前記自車両についての前記要因を取得する自車両要因取得手段を備え、
前記位置推定手段は、前記自車両の位置を推定する自車両位置推定手段を備えたこと
を特徴とする車両位置推定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両位置推定装置において、
前記自車両および前記他車両の推定位置に基づいて前記自車両および前記他車両の挙動を推定し、これらの挙動に基づいて前記自車両と前記他車両とが衝突する確率(以下、「衝突確率」という。)を演算する衝突演算手段、を備えたこと
を特徴とする車両位置推定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両位置推定装置において、
前記衝突演算手段は、前記基準時刻よりも未来の複数の対象時刻において、自車両および他車両が存在すると推定される位置を、存在確率毎に区分された複数の領域の集合として特定される予測領域としてそれぞれ演算し、前記各対象時刻における各予測領域の重なり具合に応じて前記衝突確率を判断すること
を特徴とする車両位置推定装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の車両位置推定装置において、
前記衝突確率に応じて報知を行う報知手段、を備えたこと
を特徴とする車両位置推定装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の車両位置推定装置において、
前記要因取得手段は、前記要因として、前記対象車両が走行する道路における制限速度の情報を取得し、
前記位置推定手段は、前記対象車両が前記制限速度以上となる速度に加速する確率が低いものとして前記対象車両の位置を推定すること
を特徴とする車両位置推定装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れかに記載の車両位置推定装置において、
前記要因取得手段は、前記要因として、前記対象車両の加速または減速に関する性能に関する情報を取得し、
前記位置推定手段は、前記対象車両の性能に関する情報に基づいて、前記対象車両の速度を推定し、前記対象車両の位置を推定すること
を特徴とする車両位置推定装置。
【請求項9】
コンピュータを、請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の車両位置推定装置を構成する各手段として機能させるための車両位置推定プログラム。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図11】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図11】
【公開番号】特開2012−22527(P2012−22527A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159961(P2010−159961)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]