説明

車両位置送信システム、車両、車両位置送信プログラム

【課題】通信コストの節約を図りながら、適当な頻度で車両の位置を外部に対して通報することができるシステム等を提供する。
【解決手段】本発明の車両状態管理システム10によれば、車両1のIGNスイッチ101がONからOFFに切り替えられた後、車両状態管理システム10が作動状態から待機状態に遷移する。そして、車両状態管理システム10の休眠状態への遷移要件が満たされている場合、無線通信機器14により位置信号が車両管理センター2に送信され、その後、車両状態通報システム10が休眠状態に遷移する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されている無線通信機器を用いてこの車両の位置を外部に通報するシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の盗難防止等の観点から、エンジン停止等により推察される駐車や、外部からのリクエスト等に応じて車両の位置を外部に対して通報する技術が提案されている(特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2006−145442号公報
【特許文献2】特開2004−054600号公報
【特許文献3】特開2001−236597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、エンジンが停止されるたびに車両の位置が外部に対して通報されると、エンジンの停止回数に応じた分だけ通報に要する通信コストが累計される。
【0004】
そこで、本発明は、通信コストの節約を図りながら、適当な頻度で車両の位置を外部に対して通報することができるシステム等を提供することを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明の車両位置送信システムは、車両に搭載されている車両位置送信システムであって、無線通信機器と、前記車両の位置を測定する位置測定部と、前記車両のイグニションスイッチまたはアクセサリスイッチがONからOFFに切り替えられたことを要件として前記車両位置送信システムを前記無線通信機器が外部機器と通信可能な待機状態に制御し、前記無線通信機器が外部機器と通信不可能な前記車両位置送信システムの休眠状態への遷移要件が満たされていることを要件として、前記無線通信機器に前記位置信号を前記外部機器に送信させた後、前記車両位置送信システムを前記待機状態から前記休眠状態に遷移させる状態制御部とを備えていることを特徴とする。
【0006】
第1発明の車両位置送信システムによれば、車両のイグニションスイッチまたはアクセサリスイッチがONからOFFに切り替えられた後、車両位置送信システムが待機状態に制御される。そして、車両位置送信システムの休眠状態への遷移要件が満たされていることを要件として、無線通信機器により位置信号が外部機器に送信され、その後、車両状態通報システムが待機状態から休眠状態に遷移する。すなわち、車両状態通報システムが待機状態にあって休眠状態に遷移する前の最後の機会を活かして無線通信機器により外部機器に位置信号が送信される。これにより、イグニションスイッチまたはアクセサリスイッチがONからOFFに切り替えられたことのみを要件として位置信号が外部機器に送信される場合と比較して位置信号の送信頻度が低く抑制される。したがって、通信コストの節約を図りながら適当な頻度で車両の位置を外部に対して通報することができる。
【0007】
なお、本発明の構成要素が情報を「認識する」とは、当該構成要素が情報を外部から受信すること、データベースから情報を検索すること、メモリ等の記憶装置から情報を読み取ること、センサ等の出力信号に基づき情報を測定、算定、推定、判定すること、測定等された情報をメモリに格納すること等、当該情報をさらなる情報処理のために準備または用意するために必要なあらゆる情報処理を実行することを意味する。
【0008】
第2発明の車両位置送信システムは、第1発明の車両位置送信システムにおいて、前記状態制御部が前記車両位置送信システムに電力を供給する電源の電力供給能力を認識し、前記電源の電力供給能力に基づいて前記車両位置送信システムの前記休眠状態への遷移要件を設定することを特徴とする。
【0009】
第2発明の車両位置送信システムによれば、車両位置送信システムの電源の電力供給能力に基づき、車両位置送信システムが休眠状態に遷移するタイミングが調節される。これにより、通信コストの節約を図りながら、電源の電力供給能力の有効活用および車両位置送信システムによる消費電力の節約の観点から適当な頻度で車両の位置を外部に対して通報することができる。
【0010】
第3発明の車両は、第1発明の車両位置送信システムを備えていることを特徴とする。
【0011】
第3発明の車両によれば、車両に搭載されている無線通信機器を用いて、通信コストの節約を図りながら適当な頻度でこの車両の位置を外部に対して通報することができる。
【0012】
第4発明の車両位置送信プログラムは、車両に搭載されている無線通信機器付きのコンピュータを第1発明の車両位置送信システムとして機能させることを特徴とする。
【0013】
第4発明の車両位置送信プログラムによれば、通信コストの節約を図りながら適当な頻度で車両の位置を外部に対して通報するシステムとして車載のコンピュータを機能させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の車両位置送信システム等の実施形態について図面を用いて説明する。図1に示されている車両(四輪自動車)1は、IGN(イグニション)スイッチ101と、電源102と、車両位置送信システム10と、電源102の電力供給能力を測定する電源状態監視部12とを備えている。IGNスイッチ101のONおよびOFFの切り替えは、後述するように車両位置送信システム10の状態切り替えの起因とされる。なお、IGNスイッチ101に代えてACC(アクセサリ)スイッチのONおよびOFFの切り替えが、車両位置送信システム10の状態切り替えの起因とされてもよい。電源102は適宜コンバータまたは電圧調節ユニットを介して車両位置送信システム10等の車載機器に電力を供給する。電源102として、バッテリ、キャパシタもしくは二次電池またはこれらの組み合わせが車両1に搭載される。車両位置送信システム10はコンピュータまたは電子制御ユニット(CPU,ROM,RAM,I/O等により構成されている。)により構成されている。車両位置送信システム10を構成するコンピュータのメモリには、コンピュータを当該システムとして機能させるための車両位置送信プログラムが格納されている。車両位置送信プログラムはメモリに予め格納されていてもよいが、CD−ROM等の記録媒体を介してコンピュータにインストールされてもよく、サーバから配信または放送されて無線通信機器14により受信された上でメモリに格納されてもよい。
【0015】
車両位置送信システム10は位置測定部11と、状態制御部13と、無線通信機器14とを備えている。位置測定部11は車両1の位置を測定する。無線通信機器14は位置測定部11により測定された車両1の位置を表わす位置信号を車両管理センター2に送信する。無線通信機器14は車両位置送信システム10を構成する電子制御ユニットとは別個に車両1に搭載されていてもよい。車両1の室内空間に設置されているクレードルに差し込まれる携帯電話機等の携帯型通信機器が無線通信機器14として車両1に搭載されていてもよい。状態制御部13は電源状態監視部12から測定結果を表わす信号を受信することにより電源102の電力供給能力を認識した上で、後述するように車両位置送信システム10を「作動状態」「待機状態」および「休眠状態」のうちいずれか1つの状態に制御する。「作動状態」は無線通信機器14および車両1に搭載されている他の機器群(ドアロック装置、ウィンドウ開閉装置、エアコン装置等が含まれている。)の動作を制御可能な状態である。「待機状態」は当該他の機器群の動作を制御不可能である一方、無線通信機器14が外部機器と通信可能な状態である。「休眠状態」は当該他の機器群の動作を制御不可能であり、かつ、無線通信機器14が外部機器と通信不可能な状態である。図3に示されているように車両位置送信システム10の休眠状態、待機状態および作動状態のそれぞれにおける電源102から車両位置送信システム10への供給電力(または車両位置送信システムの消費電力)P0、P1およびP2の大小関係は次の関係式(1)により表現される。なお、電源102の出力電力、電源102から車両位置送信システム10への供給電力または車両位置送信システム10の消費電力の高低によって車両位置送信システム10の休眠状態、待機状態および作動状態が区分されてもよい。
【0016】
0<P1<P2 ‥(1)
【0017】
前記構成の車両位置送信システム10の機能について説明する。車両1のIGNスイッチ101がOFFからONに切り替えられると(図2/S002‥YES)、状態制御部13により無線通信機器14が休眠状態から作動状態に遷移させられる(図2/S004)。これにより、図3に示されているように電源102から車両位置送信システム10への供給電力Pが第2電力P2に制御される。また、位置測定部11により車両1の位置が測定される(図2/S006)。具体的には、GPS受信機により受信されたGPS信号、加速度センサおよびジャイロセンサ等の出力信号、または、これらの組み合わせに基づいて車両1の位置((緯度、経度)または(緯度、経度、高度))が逐次測定される。
【0018】
その後、IGNスイッチ101がONからOFFに切り替えられると(図2/S008‥YES)、状態制御部13により車両位置送信システム10が作動状態から待機状態に遷移させられる(図2/S012)。これにより、図3に示されているように時刻t0から電源102から車両位置送信システム10への供給電力Pが第1電力P1(<P2)に制御される。また、電源状態監視部12により電源102の電力供給能力が測定または評価され、状態制御部13が電源状態監視部12からこの測定結果を表わす信号を受信することにより電源102の電力供給能力を認識する(図2/S014)。具体的には、電源102のSOC(蓄電状態)が電力供給能力として測定される。なお、車両1に燃料電池が搭載されており、燃料電池の動作により電源102が充電されうる場合、水素ガス等の燃料残量が勘案されることにより電力供給能力が総合評価されてもよい。この場合、燃料を燃料電池に供給するポンプによる予測消費電力がさらに勘案されて電力供給能力が総合評価されてもよい。さらに、状態制御部13により電源102の電力供給能力が低いほど段階的または連続的に短くなるように指定期間Tが設定される(図2/S016)。
【0019】
その後、車両位置送信システム10が待機状態にあるとき、車載機器の動作リクエストの有無、すなわち、無線通信機器14により車両管理センター2またはその他の外部機器から要求信号が受信されたか否かが判定される(図2/S018)。リクエストがあったと判定された場合(図2/S018‥YES)、図3に示されているように時刻t1において状態制御部13により車両位置送信システム10が待機状態から一時的に作動状態に遷移させられた後で時刻t2において待機状態に復帰させられる(図2/S020)。車両位置送信システム10が一時的に作動状態に遷移している間、ドアのロックもしくはアンロック、ウィンドウの開閉、または、エアコンの動作開始もしくは停止等、リクエストに応じて対象機器の動作が制御される。なお、リクエストに応じて車両位置送信システム10が待機状態に維持されたまま無線通信機器14により位置信号が車両管理センター2に送信されてもよい。その上で、IGNスイッチ101がONからOFFに切り替えられたまま指定期間Tが経過したという、車両位置送信システム10の休眠状態への遷移要件の充足性が判定される(図2/S022)。ここで、車両位置送信システム10が作動状態から待機状態に遷移したまま指定期間Tが経過したことが車両位置送信システム10の遷移要件として採用されてもよい。
【0020】
一方、リクエストがないと判定された場合(図2/S018‥NO)、車両位置送信システム10が待機状態に維持されたままで指定期間Tが経過したか否かが判定される(図2/S022)。指定期間Tが経過したと判定された場合(図2/S022‥YES)、無線通信機器14によりその時点での車両1の位置を表わす位置信号が車両管理センター2に送信される(図2/S023)。また、状態制御部13により車両位置送信システム10が待機状態から休眠状態に切り替えられる(図2/S026)。なお、指定期間Tが経過したことに加えてまたは代えて、電源状態監視部12により測定された電力供給能力の変化量が閾値に達したことが車両位置送信システム10の休眠状態への遷移要件とされてもよい。これにより、図3に示されているように時刻t0+Tから電源102から車両位置送信システム10への供給電力Pが基準電力P0(実質的に0)に制御される。一方、指定期間Tが経過していないと判定された場合(図2/S022‥NO)、IGNスイッチ101がOFFからONに切り替えられたか否かが判定される(図2/S024)。IGNスイッチ101がOFFからONに切り替えられたと判定された場合(図2/S024‥YES)、状態制御部13により車両位置送信システム10が待機状態から作動状態に遷移させられ(図2/S028)、前記のように車両1の位置測定以降の処理が実行される(図2/S006参照)。IGNスイッチ101がOFFのままであると判定された場合(図2/S024‥NO)、前記のように要求信号の受信有無判定以降の処理が繰り返される(図2/S016等参照)。
【0021】
前記機能を発揮する車両位置送信システム10によれば、車両1のIGNスイッチ101がONからOFFに切り替えられた後、車両位置送信システム10が作動状態から待機状態に遷移させられる(図2/S008‥YES,S012、図3/時刻t0参照)。そして、IGNスイッチがONからOFFに切り替えられたまま指定期間Tが経過したこと、すなわち、車両位置送信システム10の休眠状態への遷移要件が満たされたことを要件として、無線通信機器14により位置信号が車両管理センター2に送信され、その後、車両状態通報システム10が休眠状態に遷移させられる(図2/S022‥YES,S023、図3/時刻t0+T参照)。すなわち、車両状態通報システム10が待機状態にあって休眠状態に遷移する前の最後の機会を活かして無線通信機器14により車両管理センター2に位置信号が送信される。これにより、IGNスイッチ101がONからOFFに切り替えられたことのみを要件として位置信号が車両管理センター2等の外部機器に送信される場合と比較して位置信号の送信頻度が低く抑制される。さらに、電源状態監視部12により測定され、状態制御部13により認識された電源102の電力供給能力が低いほど段階的または連続的に指定期間Tが短く設定され、車両位置送信システム10が休眠状態に遷移するタイミングが早められる(図2/S014,S016、図3/時刻t0+T参照)。これにより、通信コストの節約を図りながら、電源102の電力供給能力の有効活用および車両位置送信システム10による消費電力の節約の観点から適当な頻度で車両1の位置を外部に対して通報することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】車両および車両位置送信システムの構成説明図
【図2】車両位置送信システムの機能を表わすフローチャート
【図3】車両位置送信システムの状態遷移および消費電力に関する説明図
【符号の説明】
【0023】
1‥車両、2‥車両管理センター(外部機器)、10‥車両位置送信システム、11‥位置測定部、12‥電源状態監視部、13‥状態制御部、14‥無線通信機器、101‥イグニションスイッチ、102‥電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されている車両位置送信システムであって、
無線通信機器と、
前記車両の位置を測定する位置測定部と、
前記車両のイグニションスイッチまたはアクセサリスイッチがONからOFFに切り替えられたことを要件として前記車両位置送信システムを前記無線通信機器が外部機器と通信可能な待機状態に制御し、前記無線通信機器が外部機器と通信不可能な前記車両位置送信システムの休眠状態への遷移要件が満たされていることを要件として、前記無線通信機器に前記位置信号を前記外部機器に送信させた後、前記車両位置送信システムを前記待機状態から前記休眠状態に遷移させる状態制御部とを備えていることを特徴とする車両位置送信システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両位置送信システムにおいて、
前記状態制御部が前記車両位置送信システムに電力を供給する電源の電力供給能力を認識し、前記電源の電力供給能力に基づいて前記車両位置送信システムの前記休眠状態への遷移要件を設定することを特徴とする車両位置送信システム。
【請求項3】
請求項1記載の車両位置送信システムを備えていることを特徴とする車両。
【請求項4】
車両に搭載されている無線通信機器付きのコンピュータを請求項1記載の車両位置送信システムとして機能させることを特徴とする車両位置送信プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−245103(P2009−245103A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90041(P2008−90041)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】