説明

車両保護用フィルム積層体

【課題】車両を傷付けることなく、短時間の内にきわめて容易に、かつ、きれいに車両に保護フィルムを貼着することを可能とする車両保護用フィルム積層体を提供する。
【解決手段】
車両保護用フィルム積層体1は、車両の所定部位の形状に合わせてカットされた同一形状の車両保護用フィルム2を複数枚積層することによって形成されている。各車両保護用フィルム2,2・・は、裏面に粘着剤を塗布した車両被覆部3の片端に、同様に裏面に粘着剤を塗布した変形防止部4と、粘着剤を塗布していない剥離用非粘着部5とを帯状に一体的に延設したものである。そして、車両被覆部3と変形防止部4との間には、ミシン目6が設けられており、車両被覆部3から変形防止部4および剥離用非粘着部5を切除し易くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を保護するために車両に被覆されるフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
出荷された自動車等の車両が購入者の手に渡るまでに、砂塵、鉄粉等によって車両に傷や汚れが生じたり、塗装が変色したりする事態を防止するために、車両の表面に保護用のフィルムが貼着されることがある。そのような車両保護用フィルムを車両に貼着する方法としては、粘着剤層を積層したロール状の保護フィルムを所定の大きさに拡げて、ローラー等を用いて車両に貼着した後に、当該保護フィルムの不要な部位(たとえば、フロントガラス、リアガラス、ヘッドライト等のガラスの設置部分や、フロントグリル、スポイラー、ウォッシャーノズル等の樹脂部品の設置部分)をカッターナイフ等で切除する方法が知られている。また、カッターナイフによる不要部分の切除の際に車両が傷付く事態を防止するため、特許文献1の如く、不要な部位に穴をあけた穴あき粘着フィルムを車両に貼着し、その穴あき粘着フィルムの上に、保護フィルムを貼着し、しかる後に、穴あき粘着フィルムの穴の上に位置した保護フィルムを切除する方法が考案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−237935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の保護フィルムの貼着方法は、いずれも、ロール状に巻き取られた保護フィルムを車両に貼着させた後に、不要な部分を切除するものであるため、貼着作業に非常に手間がかかる。また、ロール状に巻き取られた保護フィルムを車両に貼着させる際に、皺が入るため、きれいに貼着することができない、という不具合が生じる。
【0005】
本発明の目的は、上記した従来の車両保護用フィルムの貼着方法における問題点を解消し、車両を傷付けることなく、短時間の内にきわめて容易に、かつ、きれいに車両に保護フィルムを貼着することを可能とする車両保護用フィルム積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる本発明のうち、請求項1に記載された発明の構成は、車両を保護するための同一形状の車両保護用フィルムを複数枚積層してなる車両保護用フィルム積層体であって、積層された各車両保護用フィルムが、片面に粘着剤層を設けた車両被覆部と、粘着剤層を設けていない剥離用非粘着部とを有しているとともに、それらの剥離用非粘着部と車両被覆部との間に、粘着剤層を設けた変形防止部が設けられており、かつ、前記車両被覆部と前記変形防止部とが隣接する位置に切断用のミシン目が設けられていることにある。
【0007】
請求項2に記載された発明の構成は、請求項1に記載された発明において、前記車両被覆部のうちの前記ミシン目と隣接した角部がR形状になっていることにある。
【0008】
本発明の車両保護用フィルムを構成する基材の材質は、特に限定されず、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の合成樹脂からなるフィルムや、紙、布、不織布等のフィルム以外の基材を適宜選択して利用することができる。また、粘着剤層を構成する物質も、特に限定されず、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム系樹脂、合成ゴム系樹脂、および、それらの変性樹脂等を適宜選択して利用することができる。
【0009】
一方、車両保護用フィルムの膜厚は、特に限定されないが、20μm以上120μm未満であると、一枚ずつ剥離し易くなるとともに、車両へ貼着し易くなるので好ましい。また、車両保護用フィルム積層体として積層する車両保護用フィルムの枚数も、特に限定されないが、10枚以上200枚未満であると、軽量で車両への貼着作業が行い易くなる上、適度な柔軟性により最上部の車両保護用フィルムを剥がし易くなるので好ましい。
【0010】
また、粘着剤層を設けない剥離用非粘着部は、巾が5〜50mmであると、車両保護用フィルムを1枚ずつ剥がす際の剥離作業が行い易くなるので好ましい。さらに、車両被覆部と剥離用非粘着剤層との間に設ける変形防止部は、巾が50〜300mmであると、車両保護用フィルムを1枚ずつ剥がす際に、引き剥がす際の力によって車両被覆部を変形させてしまう事態を効果的に防止することができるので好ましい。
【0011】
さらに、積層された各車両保護用フィルムは、ミシン目と隣接した角部がR形状(曲率半径が1.0mm以上の丸い形状)になっていると、車両被覆部を車両に貼着させた後に、当該車両被覆部がミシン目の部分から剥がれてしまう事態を効果的に防止することができるので好ましい。加えて、車両被覆部と変形防止部との間に設けるミシン目の間隔は、フィルムとの厚みによって相対的に決定する必要があるが、20〜100μmのポリオレフィン系フィルムを車両保護用フィルムの基材として用いる場合には、ミシン目を構成する隣接したスリット刃の長さ(スリットの長さとスリット同士のピッチとを加えたもの)が1.0〜5.0mmであると、車両に貼着した後に変形防止部および剥離用非粘着部を切除し易くなるので好ましい。また、ミシン目のスリットの長さを0.5〜2.0mmにすると、車両への貼着後に変形防止部および剥離用非粘着部を切除し易くなるとともに、変形防止部および剥離用非粘着部が不必要に切断される事態を効果的に防止することができるので好ましい。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載された車両保護用フィルム積層体によれば、剥離用非粘着部を把持して積層された各車両保護用フィルムを1枚ずつ引き剥がし、車両被覆部を車両の所定部位に貼着させた後に、ミシン目を利用して剥離用非粘着部および変形防止部を切除するだけで、車両保護用フィルムを、非常に短時間の内にきわめて容易に、かつ、きれいに車両の所定部位に貼着することができる。また、請求項2に記載された車両保護用フィルム積層体によれば、車両に貼着された車両保護用フィルムが不必要に剥がれてしまう事態を効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、車両保護用フィルム積層体を示したものであり、車両保護用フィルム積層体1は、車両の所定部位の形状(ナンバープレート周辺の形状)に合わせてカットされた同一形状の車両保護用フィルム2を複数枚(50枚)積層してなるものである。各車両保護用フィルム2,2・・は、裏面に粘着剤を塗布した車両被覆部3の片端に、同様に裏面に粘着剤を塗布した変形防止部4と、粘着剤を塗布していない剥離用非粘着部5とを帯状に一体的に延設したものである。また、車両被覆部3と変形防止部4との間には、ミシン目6が設けられており、車両被覆部3から変形防止部4および剥離用非粘着部5を切除し易くなっている。なお、ミシン目6は、約5mmのスリットの間に、約2mmの間隙を設けたものである。そして、各車両保護用フィルム2,2・・同士は、剥離用非粘着部5以外の裏面に塗布された粘着剤によって、互いに貼り合わされた状態になっている。
【0014】
一方、図2は、車両保護用フィルム2の断面を示したものであり、各車両保護用フィルム2は、ポリオレフィン系のベースフィルム7の片面に、非シリコン系の離型処理剤層8を塗布により積層するとともに、ベースフィルム7の他面に、合成ゴム系の粘着剤層9を塗布により積層したものである。また、ベースフィルム7は、無機粒子の添加によって白色になっており、非常に高い割合で太陽光線を遮断できるようになっている。かかる保護フィルム2は、離型処理剤層8上に別の保護フィルム2の粘着剤層9を接合させた状態で積層されることによって、車両保護用フィルム積層体1を構成している。
【0015】
上記した保護フィルム積層体1は、所定枚数(50枚)の車両保護用フィルム2,2・・を積層させた状態で、所定の形状(ナンバープレート周辺の形状)に型抜きすることによって形成される。かかる車両保護用フィルム積層体1は、最上部に位置した車両保護用フィルム2の剥離用非粘着部5を把持して引っ張ることにより、きわめて容易に1枚ずつ剥がすことができる。そして、剥がした車両保護用フィルム2を車両の所定部分(バンバーのライト周辺)に貼り付けた後に、へら等の治具をミシン目6に押し当てて、変形防止部4および剥離用非粘着部5を切除することによって、車両の所望する部位に非常に容易に貼着することができる。なお、剥離用非粘着部5と車両被覆部3との間には変形防止部4が設けられているため、車両保護用フィルム2を引き剥がす際に車両被覆部3が変形してしまう事態が起こらない。また、貼着された車両保護用フィルム2は、車両被覆部3のミシン目6と隣接した角部がR形状になっているので、車両に貼着された車両保護用フィルム2が車両の走行時に剥がれてしまう事態を効果的に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の保護フィルム積層体は、上記の如く優れた効果を奏するので、車両に保護フィルムを被覆させる際に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】車両保護用フィルム積層体を示す斜視図である。
【図2】車両保護用フィルムの断面を示す説明図である。
【符号の説明】
【0018】
1・・車両保護用フィルム積層体、2・・車両保護用フィルム、3・・車両被覆部、4・・変形防止部、5・・剥離用非粘着部、6・・ミシン目、7・・ベースフィルム、8・・離型処理剤層、9・・粘着剤層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を保護するための同一形状の車両保護用フィルムを複数枚積層してなる車両保護用フィルム積層体であって、
積層された各車両保護用フィルムが、片面に粘着剤層を設けた車両被覆部と、粘着剤層を設けていない剥離用非粘着部とを有しているとともに、
それらの剥離用非粘着部と車両被覆部との間に、粘着剤層を設けた変形防止部が設けられており、かつ、
前記車両被覆部と前記変形防止部とが隣接する位置に切断用のミシン目が設けられていることを特徴とする車両保護用フィルム積層体。
【請求項2】
前記車両被覆部のうちの前記ミシン目と隣接した角部がR形状になっていることを特徴とする請求項1に記載の車両保護用フィルム積層体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−50622(P2007−50622A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−237897(P2005−237897)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(000150774)株式会社槌屋 (56)
【Fターム(参考)】