説明

車両内装材用表皮材

【課題】意匠性に優れ、耐摩擦性などに優れた品質を保持する車両内装材用表皮材を提供する。
【解決手段】少なくとも、最外層側からハーフトリコット層/印刷層/不織布層からなる構成体で形成されている車両内装材用表皮材であって、各層に着色を施すことにより優れた意匠性をかもし出すことができると共に、耐摩擦性も保持できる。ハーフトリコット層と印刷層との間に接着剤層を設けることにより、より意匠性や耐摩擦性に優れた品質を保持することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布及びハーフトリコットを使用する車両内装材用表皮材に関するものであって、例えば、天井材、ピラー材、ドアトリム材、リアパッケージ材などとして好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用内装材は、不織布や塩化ビニルなどの樹脂シートからなる表皮材を、ポリウレタン発泡体などのクッション材と組合せることにより、構成されている。
【0003】
意匠性の外観を得るために、表皮材としての不織布表面に印刷加工を行うことが行われている(特許文献1)。しかし、より意匠性を出すため印刷柄に変化をもたせかつ、不織布面と印刷面のコントラストを強調するため印刷面の印刷顔料濃度をアップさせるなどすると、意匠性に優れるものの、印刷面の耐摩擦性が低下して実際の車両内装材として使用ができない。
【0004】
表皮材である不織布の表面にハーフトリコットを貼り合せることにより、意匠性のある外観とする工夫もされている(特許文献2)。不織布表面の外観とハーフトリコット層との組合せから、優れた意匠外観が得られるものの、より変化にとんだ意匠外観とするには不十分であった。
【先行技術文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭61−012854
【特許文献2】特開2009−090548
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、より高級感のある意匠外観に優れかつ、耐摩擦性など車両用内装材として優れた品質を保持する車両内装材用表皮材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、課題を解決するために鋭意研究した結果、優れた発明となることを見出した。
【0008】
請求項1の発明は、少なくとも、最外層側からハーフトリコット層/印刷層/不織布層からなる構成体で形成することにより、多様性に満ちた意匠外観を有する車両内装材用表皮材を得るものであり、請求項2の発明は、ハーフトリコット層と印刷層との間に接着剤層を設けることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
不織布層の外層側に印刷層を設け、印刷層の外層側を接着剤層により、最外層となるハーフトリコット層と接着する構成体とすることにより、印刷濃度の高い印刷層と不織布層との色合いにより高級感のある外観意匠をもたせ、さらにハーフトリコット層が最外層に位置することにより、不織布層、印刷層、ハーフトリコット層、それぞれのもつ色合い、外観がかもし出す高級感にあふれた意匠性を得ることができる。さらに、印刷層の外層側に接着層を介して最外層のハーフトリコット層を配置すると、不織布層の表面に高濃度のインクで印刷を行っても印刷外観に耐摩擦性などの異常が見られることもない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の車両内装材用表皮材は、少なくとも最外層側からハーフトリコット層/印刷層/不織布層からなる構成体で形成されている。
【0011】
不織布層に使用する不織布用短繊維としては、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレートなど不織布として加工のできる繊維であれば特に限定はされないが、ポリエチレンテレフタレートが繊維強度やコストの点で好ましい。また、1.7−6.6dtexの繊維が好ましく、繊維長としては38−64mmが好ましい。目付量としては、100−300g/mが好ましい。短繊維の交絡方法としては、ニードルパンチ法やスパンボンド法など公知の方法を使用することができるが、素材としての厚みを保持する点でニードルパンチ法が好ましい。
【0012】
不織布層の外層には印刷層を形成する。印刷層としては不織布層の全面であっても一部分への印刷であってもよい。
【0013】
不織布層の表面に印刷加工を施しただけの車両内装材用表皮材では、色材の樹脂に対する比率が高くなると目視による意匠性には優れるものの、耐摩擦性の低下(色材の不織布層表面との接着性の不足などによる印刷層の印刷ズレや色落ち)が見られ、色材の樹脂に対する比率を少なくしたり、不織布層と類似した色材を使用するなどして耐摩擦性の低下を防いできた。
【0014】
本発明においては、高級感にあふれる意匠外観を得るため印刷の印刷濃度を適宜選択することができ、色材の濃度にはこだわらず、印刷が可能な限り、色材と樹脂との比率にはこだわらない。
【0015】
印刷方法としては、グラビア印刷やスクリーン印刷などの公知の印刷方法を使用することができる。
【0016】
印刷層の外層には接着層を形成することができる。使用する接着剤としてはアクリル樹脂やウレタン樹脂やゴム系樹脂など任意の樹脂を使用することができる。付着量についても車両内装材用表皮材としての成型性に問題のない範囲内で適宜選択でき、任意の着色を施してもよい。
【0017】
印刷層の外層には、ハーフトリコット層が配置される。使用する繊維としてはナイロンやポリエステルなど任意の素材を利用することができるが、耐摩擦性や耐光性などによりポリエステル繊維を使用するのが好ましい。編み方としては、比較的ラフな網目により不織布層及び印刷層の色を眺めることができることからハーフトリコットが好ましい。任意の色に着色したものを使用しても構わない。
【0018】
このように、不織布層、印刷層、接着層、ハーフトリコット層の各層を適宜着色することにより、車両内装材用表皮材として優れた意匠性を任意に創作することが可能となった。
【実施例】
【0019】
以下に、本発明の実施の形態をより明確にするために、実施例及び比較例の一部を記載して説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【実施例1】
【0020】
繊維径3.3dtexで繊維長が51mmであるポリエチレンテレフタレートからなるグレー色の原着短繊維を使用して、ニードルパンチ法により目付190g/mの不織布を作成した。この不織布の外層に、固形分比率でアクリル系樹脂100重量部に対し、青色顔料0.5重量部のインクをスクリーン印刷により、全面印刷に換算して乾燥時12g/mで市松模様の印刷を行った。この外層に乾燥重量15g/mの透明のウレタン系接着剤を塗布し、20dtexの黒色ポリエステルハーフトリコットを貼り合せて車両内装材用表皮材を得た。
【実施例2】
【0021】
スクリーン印刷に使用するインクの固形分比率をアクリル系樹脂100重量部に対し、青色顔料1.5重量部とした以外は実施例1と同一の条件で車両内装材用表皮材を得た。
【実施例3】
【0022】
スクリーン印刷に使用するインクの固形分比率をアクリル系樹脂100重量部に対し、青色顔料5.0重量部とした以外は実施例1と同一の条件で車両内装材用表皮材を得た。
【実施例4】
【0023】
繊維径3.3dtexで繊維長が51mmであるポリエチレンテレフタレートからなるグレー色の原着短繊維と繊維径4.4dtexで繊維長が51mm白色の熱融着繊維とを重量比率で90/10の割合で混合し、ニードルパンチ法により目付190g/mの不織布を作成した。この不織布の外層に、固形分比率でアクリル系樹脂100重量部に対し、青色顔料5.0重量部のインクをスクリーン印刷により、全面印刷に換算して乾燥時12g/mで市松模様の印刷を行った。この外層に20dtexの黒色ポリエステルハーフトリコットを熱圧着により貼り合せ車両内装材用表皮材を得た。
【0024】
(比較例1)
繊維径3.3dtexで繊維長が51mmであるポリエチレンテレフタレートからなるグレー色の原着短繊維を使用して、ニードルパンチ法により目付190g/mの不織布を作成した。この不織布の外層に、固形分比率でアクリル系樹脂100重量部に対し、青色顔料0.5重量部のインクをスクリーン印刷により、全面印刷に換算して乾燥時12g/mで市松模様の印刷を行ない車両内装材用表皮材を得た。
【0025】
(比較例2)
スクリーン印刷に使用するインクの固形分比率をアクリル系樹脂100重量部に対し、青色顔料1.5重量部とした以外は比較例1と同一の条件で車両内装材用表皮材を得た。
【0026】
(比較例3)
スクリーン印刷に使用するインクの固形分比率をアクリル系樹脂100重量部に対し、青色顔料5.0重量部とした以外は比較例1と同一の条件で車両内装材用表皮材得た。
【0027】
(外観評価)
作成した車両内装材用表皮材の最外層側からの意匠外観を目視にて判定し、外観に深みがあり意匠性に特に優れると判断されるものを◎、意匠性に優れるものを○、平面的な外観で深みもないが印刷柄などにより意匠性がありと判断できるものを△、完全に平面的な外観で意匠性があるとは感じにくいものを×とした。△以上であれば意匠外観にはあると判断される。
【0028】
(耐摩耗性評価)
JIS−L0849の摩擦試験機II形(学振式)で金巾3号を摩擦子として用い、最外層側からの荷重200gで100往復擦ったときの車両内装材用表皮材(被摩擦試験片)の外観及び摩擦子を目視にて判定し、乾布による試験とした。さらに金巾3号にJIS−L0848の人工汗液を滴下して摩擦子として用い、最外層側からの荷重200gで100往復擦ったときの車両内装材用表皮材(被摩擦試験片)の外観及び摩擦子を目視にて判定し、汗布による試験とした。試験片及び摩擦子の外観にまったく異常のみられないものを○、試験片の表面に印刷ズレが見られるものの目視で気になるレベルではないものや摩擦子に若干印刷インクの色が着色するものを△、試験片の表面に明らかに印刷ズレが見られ目視で異常があると判断できるものや摩擦子に明らかに印刷インクの色が着色するものを×とした。△以上であれば実際の使用にあたってまったく問題ないと判断される。
【0029】
【表1】

【0030】
表1.より、実施例の外観、特に実施例3は印刷層のインク濃度が高く、ハーフトリコットを接着した外観に深みがありすぐれたものである。一方、比較例、なかでも比較例1は印刷層のインク濃度が低いため、ハーフトリコットもない不織布層と印刷層だけのため外観に深みが感じられない。
【0031】
耐摩擦性では乾布に対してはすべての実施例が優れたものであったが、汗布に対しては、接着剤層を設けない実施例4では若干の低下が見られた。比較例においては、乾布に対して印刷層のインク濃度の高い比較例3に印刷ズレが見られ、汗布では印刷層のインク濃度が高いと印刷ズレや摩擦子へのインク着色が見られた。
【0032】
外観はハーフトリコットを組み合わせることにより意匠性に深みが得られ、不織布層、印刷層、接着層、ハーフトリコット層それぞれへの着色などにより優れた効果を得ていることがわかる。とりわけ、印刷層の印刷インク濃度の高い実施例3では、各層の色合いを変化させることにより優れた意匠性をかもし出している。一方、比較例でも実用可能な意匠外観ではあるものの、比較例1では印刷層のインク濃度が低いため若干平面的な印象を与えるのがいがめない。
【0033】
乾布による耐摩擦性では、実施例はすべて問題ないものであった。一方、比較例の中でもとりわけ比較例3では、印刷濃度が高いため目視で判断すると印刷柄のズレが確認された。汗布による耐摩擦性では、実施例のなかでも若干の差が見られ、熱融着繊維を使用した実施例4では、印刷濃度が実施例3と同一にもかかわらず接着剤層がないため試験後の摩擦子の表面に若干の印刷インクによる着色が見られた。一方、比較例については、印刷インクの濃度が多くなるにつれて印刷ズレや摩擦子の着色が認められる。
このように、本発明の実施例は優れた品質を保持していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明による不織布層/印刷層/ハーフトリコット層を有する車両内装材用表皮材、そのなかでもとりわけ不織布層/印刷層/接着層/ハーフトリコット層を有する車両内装材用表皮材は、各層に着色を施すことにより、深みのある意匠性をかもし出すことができ、優れた車両内装材用表皮材となる。車両の天井材をはじめ、室内用の内装材としても広く利用でき、産業上きわめて利用可能性に優れるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、最外層側からハーフトリコット層/印刷層/不織布層からなる構成体で形成されていることを特徴とする車両内装材用表皮材。
【請求項2】
ハーフトリコット層と印刷層との間に接着剤層を設けることを特徴とする請求項1の車両内装材用表皮材。

【公開番号】特開2013−107611(P2013−107611A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−267325(P2011−267325)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000109037)ダイニック株式会社 (55)
【Fターム(参考)】