説明

車両内装材用部材およびそれを用いた車両用内装材

【課題】本発明の目的は、優れた成形形態と形態保持性を併せ持つ車両内装材用部材およびその車両内装材用部材を用いた車両用内装材を提供することにある。
【解決手段】融点が80〜160℃の熱可塑性樹脂からなる厚み20〜60μmのフィルムと、融点が220℃以上の熱可塑性ポリエステルよりなり、複屈折率が0.04〜0.07の長繊維で構成された、見掛嵩密度が0.10〜0.25g/cm、22℃雰囲気中の縦伸度が35〜70%、22℃雰囲気中の縦伸張荷重曲線での屈曲点荷重が目付当り1.0〜2.2(N/50mm)/(g/m)であり、120℃雰囲気での縦伸張荷重曲線での屈曲点荷重が目付当り0.05〜0.80(N/50mm)/(g/m)であり、180℃乾熱収縮率が5%未満の交絡処理をしていない不織布とを接合してなる、120℃雰囲気での伸度が50〜150%である車両内装材用部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形性に優れた車両内装材用部材および、それを用いた車両用内装材に関する。更に詳しくは、優れた成形性と形態保持性を併せ持つ車両内装材用部材およびその車両内装材用部材を用いた車両用内装材を提供することにある。
【背景技術】
【0002】
汎用長繊維不織布であるポリエステル長繊維不織布を裏面材に使用する車両用内装材は公知である。そして、ポリエステル長繊維不織布を用いると、高速紡糸による配向結晶化繊維を積層接合するため、伸度が低く、剛直で、結晶化促進のためと思われる、成形時の浮きや破れなどの問題が生じていることも公知である。
【0003】
ポリエステル長繊維不織布の成形性を向上させるため、配向結晶化させない未延伸ポリエチレンテレフタレート繊維不織布を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、繊維伸度が高くなるので、1度目の成形加工性は向上するが強度がやや劣る積層体になる。又、積層体を更に熱成形する場合、配向度の低い繊維が結晶化を促進されるため、脆くなり、破れや割れを生じる問題がある。
【0004】
同様の未延伸ポリエステル繊維不織布を用いた内装用積層部材が提案されている(例えば、特許文献2参照)。使用される不織布は極端に高密度のものであり、成形加工での深絞り変形性が劣り、かつ、不織布の加工コストが高くなる問題がある。
【0005】
裏面材として用いる不織布に樹脂含浸させて剛性を付与して補強効果を良好にする方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。補強層の剛直性が高くなると積層熱接着成形による深絞りに問題がある。
【0006】
裏面材として天然繊維を含有する柔軟な水流交絡短繊維不織布を用いて、燃焼性の改良と表皮への影響を抑え、目付け低減化を図る提案がされている(例えば、特許文献4参照)。接合はフレームラミネート法で行うので、深絞り成形には問題がある場合がある。
【0007】
裏面材用ポリエステルスパンボンド不織布の接着剤としてポリブチレンテレフタレートをラミネートし、ポリブチレンテレフタレートラミ面の芯材側をコロナ処理してオレフィン系バインダーとオレフィン系芯材との接着性を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献5参照)。この方法では、ポリブチレンテレフタレート成分を介在させて不織布との接着性は相溶性から向上し、オレフィン系との接着はコロナ処理によるアンカー効果を付与する方法で、工程が煩雑となり、且つ、コストアップになるなどの問題がある。
【0008】
成形形態と形態保持性を改良する方法は提案されているが、優れた成形形態と形態保持
性を併せ持つ車両内装材用部材を得る課題は未だ解決されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平5−17857号公報
【特許文献2】特開2001−322193号公報
【特許文献3】特許第3149674号公報
【特許文献4】特開2001−341220号公報
【特許文献5】特開2005−75214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、優れた成形形態と形態保持性を併せ持つ車両内装材用部材およびその車両内装材用部材を用いた車両用内装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
(1)融点が80〜160℃の熱可塑性樹脂からなる厚み20〜60μmのフィルムと、融点が220℃以上の熱可塑性ポリエステルよりなり、複屈折率が0.04〜0.07の長繊維で構成された、見掛嵩密度が0.10〜0.25g/cm、22℃雰囲気中の縦伸度が35〜70%、22℃雰囲気中の縦伸張荷重曲線での屈曲点荷重が目付当り1.0〜2.2(N/50mm)/(g/m)であり、120℃雰囲気での縦伸張荷重曲線での屈曲点荷重が目付当り0.05〜0.80(N/50mm)/(g/m)であり、180℃乾熱収縮率が5%未満の交絡処理をしていない不織布とを接合してなる、120℃雰囲気での伸度が50〜150%である車両内装材用部材。
(2)不織布が、繊度が0.5〜5dtexの長繊維で構成され、エンボス加工による圧着面積率が10〜25%であり、目付が20〜60g/mの不織布である(1)記載の車両内装材用部材。
(3)不織布を構成する繊維成分が、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートであり、微量添加成分が、熱可塑性ポリスチレン系共重合体(スチレン・メタクリル酸メチル・無水マレイン酸共重合体又は、スチレン・マレイン酸共重合体)である(1)または(2)記載の車両内装材用部材。
(4)表皮材、芯材、裏面材からなる車両用内装材において、裏面材が(1)〜(3)のいずれかに記載された車両内装材用部材からなり、フィルム面が芯材側に積層成形された車両用内装材。
【発明の効果】
【0012】
本発明の車両内装材用部材を車両用内装材の裏面材として用いることにより、120℃での加熱下では変形が容易で、深絞り成形においても追随性が良好なため、表皮材に影響を与えることがなく、又、破れや浮きのない仕上がり性の良好な車両用内装材が得られる。
更には、本発明の仕上がり性が良好な成形品は、裏面材が常温では高い剛性を示すので、形態保持性が良好で、圧着加工により耐磨耗性にも優れるので、優れた耐久性を示し、裏面は繊維形態を維持するので、接触による異音の発生も抑制され、目付が20〜50g/mであり、軽量な車両用内装材とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】22℃雰囲気中の不織布のSS曲線における屈曲点荷重の求め方を示した図である。初期立上り部分の接線:abと降伏後の接線:cdの交点での荷重を屈曲点荷重とする。
【図2】22℃雰囲気中の不織布のSS曲線を示した図である。図中の(1)は実施例1、(2)は実施例2、(3)は比較例1に用いた不織布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳述する。
本発明の車両内装材用部材は、融点が80〜160℃の熱可塑性樹脂からなる厚み20〜60μmのフィルムと、融点が220℃以上の熱可塑性ポリエステルよりなり、複屈折率が0.04〜0.07の長繊維で構成された、見掛嵩密度が0.10〜0.25g/cm3、22℃雰囲気中の縦伸度が35〜70%、22℃雰囲気中の縦伸張荷重曲線での屈曲点荷重が目付当り1.0〜2.2(N/50mm)/(g/m)であり、120℃雰囲気での縦伸張荷重曲線での屈曲点荷重が目付当り0.05〜0.80(N/50mm)/(g/m)であり、180℃乾熱収縮率が5%未満の交絡処理をしていない不織布を接合してなる、120℃雰囲気での伸度が50〜150%である車両内装材用部材である。
【0015】
本発明における、裏面材に積層接合するフィルムは、融点が80〜160℃の熱可塑性樹脂からなる厚み20〜60μmのフィルムである。
フィルム素材の融点が80℃未満では、耐熱性が劣り好ましくない。フィルム素材の融点が160℃を超えると、熱成型時に充分な溶融接合をし難くなり、剥離を生じる場合があり好ましくない。充分溶融する高温で熱圧着すると、表面材や芯材の変質などを生じる場合があり、好ましくない。より好ましいフィルム素材の融点は95〜140℃であり、さらに好ましくは100〜135℃である。
【0016】
本発明のフィルム素材の厚みが20μm未満では、接合成分となるフィルム素材が少なくなるとアンカー効果が不足して接合力が不充分になる場合があり好ましくない。フィルム素材の厚みが60μmを超えると、融点の高い素材では、接合時間が長くなる場合があり好ましくない。より好ましいフィルム素材の厚みは30〜50μmである。
【0017】
本発明におけるフィルムの素材としては、上記要件を満たせば、公知の熱可塑性樹脂が使用できる。例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、各種ポリエチレン樹脂(低密度、中密度、高密度、線状低密度、分岐状低密度)またはこれらの酸変性樹脂類;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体、エチレン−ブチルメタアクリレート共重合体、エチレン−(メタ)アタリレート共重合体、エチレン−マレイン酸共重合体、エチレン−イタコン酸共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸三元共重合体、エチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体、またはこれらの酸変性樹脂類;エチレンとアクリル酸あるいはメタクリル酸との共重合体をイオン架橋したアイオノマー類;アタクティックポリプロピレンまたはこれらの酸変性樹脂類;共重合体ポリアミド類;テレフタル酸とエチレングリコールと1,4−ブタンジオールの共重合体あるいはその他の成分を含む共重合体ポリエステル類等を例示することができる。これらの樹脂を単独で使用しても混合物として使用してもよい。またこれらに炭酸カルシウム、タルクなどの充填材や粘着付与剤等の各種添加剤を混合してもよい。
【0018】
本発明の車両内装材用部材を構成する不織布は、熱可塑性ポリエステルよりなり、複屈折率が0.04〜0.07の長繊維で構成された、見掛嵩密度が0.10〜0.25g/cm、22℃雰囲気中の縦伸度が35〜70%、22℃雰囲気中の縦伸張荷重曲線での屈曲点荷重が目付当り1.0〜2.2(N/50mm)/(g/m)であり、120℃雰囲気での縦伸張荷重曲線での屈曲点荷重が目付当り0.05〜0.80(N/50mm)/(g/m)であり、180℃乾熱収縮率が5%未満の交絡処理をしていない不織布である。
【0019】
本発明の車両内装材用部材を構成する不織布素材は、融点が220℃以上の熱可塑性ポリエステルからなることが必要である。融点が220℃未満では、不織布の耐熱性が劣り、車両用内装材の耐久性が低下するので好ましくない。本発明では、融点が220℃以上の公知のポリエステル樹脂を用いることができる。本発明での好ましいポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート(PCHT)などが例示できる。本発明でのポリエステル成分は、共重合ポリエステルでは、オリゴマーがホモポリエステルに比べて多くなるので、ホモポリエステルを95モル%以上含有させることで、耐熱性、耐久性が保持できるので好ましく、さらに好ましくは汎用性の高いポリエチレンテレフタレート99モル%以上である。本発明では、特性を低下させない範囲で、必要に応じて、抗酸化剤、耐光剤、着色剤、抗菌剤、難燃剤などの改質剤を添加できる。
【0020】
本発明の車両内装材用部材に用いる不織布を構成する繊維は、複屈折率が0.04〜0.07の長繊維である。複屈折率が0.04未満では、熱変形し易くなるが、熱成型による過熱で結晶化により脆くなるため、耐久性が劣るので好ましくない。0.07を超えると、熱成型時の追随性が劣り、破れや浮きを発生するので好ましくない。より好ましい複屈折率は0.045〜0.06である。
【0021】
本発明の車両内装材用部材に用いる不織布を構成する繊維は、連続した長繊維である.短繊維では、不織布強力が低く、かっ剛直性が低くなるので、低目付の不織布を用いようとすると形態保持性や耐久性が劣る車両内装材となるので好ましくない。本発明では、発明要件を満たす長繊維不織布であれば特には限定されないが、好ましくは、安価なコストで、配向結晶化による剛直性向上効果が発現できる高速紡糸で得られるスパンボンド不織布が推奨される。
【0022】
本発明の車両内装材用部材を構成する不織布は、見掛嵩密度が0.10〜0.25g/cm、22℃雰囲気中の縦伸度が35〜70%、22℃雰囲気中の縦伸張荷重曲線での屈曲点荷重が目付当り1.0〜2.2(N/50mm)/(g/m)であり、120℃雰囲気での縦伸張荷重曲線での屈曲点荷重が目付当り0.05〜0.80(N/50mm)/(g/m)であり、180℃乾熱収縮率が5%未満の交絡処理をしていない不織布である。
【0023】
本発明では、用いる不織布の見掛嵩密度は0.10〜0.25g/cmである。0.10g/cm未満では、裏面の補強効果が低減するので好ましくない。0.25g/cmを越えると熱成型時の追随性が低減してシャープな仕上がりになり難くなる場合があ
り好ましくない。より好ましい見掛嵩密度は0.15〜0.25g/cmである。
【0024】
本発明での用いる不織布の22℃雰囲気中の縦伸度は35〜70%である。35%未満では、熱成型時の形状追随性が低下して、深絞り成型では、形状がシャープに出ない場合があり好ましくない。70%を越えると、耐磨耗性が悪くなる場合があり好ましくない。より好ましい22℃雰囲気中での縦伸度は、40〜70%である。なお、本発明に用いる不織布は、不織布状やラミネート加工後の巻出しや巻取りが縦方向の伸張荷重を受けるので、取扱性の観点から、力学特性は特に縦方向の伸度に限定している。したがって、本発明では横方向の伸度は特には限定されないが、好ましくは縦方向と同じ伸度、即ち、35〜70%の伸度とするのが望ましい。通常、縦方向及び横方向の力学特性は、繊維配列の影響を受けるが、ランダム配列では、縦横の力学特性に差は出ない。本発明では、横方向の力学特性の許容範囲は縦方向の0.7〜1.2倍が推奨される。
【0025】
本発明で用いる不織布の22℃雰囲気中の縦伸張荷重曲線での屈曲点荷重が目付当り1.0〜2.2(N/50mm)/(g/m)である。22℃雰囲気中の縦伸張荷重曲線での屈曲点荷重が目付当り1.0(N/50mm)/(g/m)未満では、常温温度域での変形荷重に対する剛直性が劣り、車両内装材の耐久性が低減する場合があるので好ましくない。2.2(N/50mm)/(g/m)を超えると、本発明での車両内装用部材に加工する際、剛直性が高くなり加工し難くなる場合があり好ましくない。より好ましい22℃雰囲気中の縦伸張荷重曲線での屈曲点荷重は目付当り1.2〜2.0(N/50mm)/(g/m)である。なお、本発明に用いる不織布は、不織布の巻返しや巻取りが縦方向の伸張荷重を受けるので、取扱性の観点から、力学特性は特に縦方向の伸張荷重曲線での屈曲点荷重に限定している。したがって本発明では横方向の伸張荷重曲線での屈曲点荷重は特には限定されないが、好ましくは縦方向と同じ伸張荷重曲線での屈曲点荷重、即ち、屈曲点荷重が目付当り1.0〜2.2(N/50mm)/(g/m)であるのが望ましい。以下に述べる120℃雰囲気での伸度及び屈曲荷重も同じである。通常、縦方
向及び横方向の力学特性は、繊維配列の影響を受けるが、ランダム配列では、縦横の力学
特性に差は出ない。本発明では、横方向の力学特性の許容範囲は縦方向の0.7〜1.2倍が推奨される。
【0026】
本発明で用いる不織布の120℃雰囲気での縦伸張荷重曲線での屈曲点荷重が目付当り0.05〜0.80(N/50mm)/(g/m)である。120℃雰囲気での縦伸張荷重曲線での屈曲点荷重が目付当り0.05(N/50mm)/(g/m)未満では、成型加工時の変形が大きくなり過ぎ、成型斑を生じる場合があ(N/50mm)/(g/m)り好ましくない。120℃雰囲気での縦伸張荷重曲線での屈曲点荷重が目付当り0.80を超えると、深絞り熱成型時に形状追随性が悪くなる場合があり好ましくない。より好ましい120℃雰囲気中の縦伸張荷重曲線での屈曲点荷重は、0.10〜0.75(N/50mm)/(g/m)、さらに好ましくは0.15〜0.70(N/50mm)/(g/m)である。本発明では、横方向の特性が特には限定されないが、本発明では、横方向の力学特性の許容範囲は縦方向の0.7〜1.2倍が推奨される。
【0027】
本発明で用いる不織布の180℃乾熱収縮率は5%未満である。180℃乾熱収縮率が5%以上では、積層成型接合する際、収縮による剥離や変形を生じる場合があり好ましくない。より好ましい不織布の180℃乾熱収縮率は3%未満である。
【0028】
本発明で用いる不織布は、交絡処理をしていない不織布である。本発明でいう交絡処理とは、ニードルパンチ交絡処理、水流交絡処理などの不織布を貫通させる交絡処理をいう。交絡処理を行うと、長繊維を用いても繊維が切断され、不織布強力や剛直性が低下する上に、ダストの原因を生じるので好ましくない。本発明では、繊維を損傷させないため、交絡処理しない不織布に限定される。本発明でいう交絡処理しない不織布とは、エンボス加工、カレンダー加工などの圧着加工で不織布を固定された不織布を言う。本発明では、交絡処理されていない不織布であれば特には限定されないが、圧着面積が全面に及ぶとフィルム化してしまうので、繊維形態を保て、車両用内装材が車体フレームと接触したときの異音を低減する効果が得られなくなり、成形加工性が低下するので問題がでる場合がある。フィルム化させない圧着方法として、エンボス加工が望ましい。エンボス加工における好ましい圧着面積率は、異音抑制性能と表面平滑性を満足できる30%未満であり、特に好ましくは、10〜20%である。本発明のエンボス加工文様は、特には制限されないが、好ましくは、横楕円ドットや織目柄などが挙げられる。
【0029】
本発明では、上述の要件をすべて同時に満足するフィルムと不織布を用いて、積層接合してなる。120℃雰囲気での伸度が50〜150%である車両内装材用部材である。フィルムと不織布が積層接合した車両内装用部材の120℃雰囲気での伸度が50%未満では、車両用内装材として熱成型する際、形状追随性が劣るため、深絞り成型する場合には、破れや浮きを生じる場合があり好ましくない。フィルムと不織布が積層接合した車両内装用部材の120℃雰囲気での伸度が150%を超えると、車両用内装材として熱成型する際、形状追随性が良すぎて、部分的に伸張変形を起こしやすくなり、成型斑を発生する場合があり好ましくない。本発明での好ましいフィルムと不織布が積層接合した車両内装用部材の120℃雰囲気での伸度は70〜130%、より好ましくは、80〜120%である。なお、本発明での車両内装材用部材の伸度は、縦横の平均値で示すが、縦横の伸度比は0.8〜1.2以内とする。
【0030】
本発明で用いる不織布を構成する繊維の繊度は、特には限定されないが、耐摩耗性と異
音抑制効果が期待できる0.5〜5dtexを用いるのが望ましい。
【0031】
本発明で用いる不織布の目付は、軽量な車両用内装材に適合させるには60g/m
満が望ましいが、形態保持性と耐久性を保持する必要からは、20g/m以上を用いるのが好ましい。
【0032】
本発明の車両用内装材は、表皮材、芯材、裏面材から構成されており、上述の車両内装材用部材を裏面材に用いてなるものであり、該裏面材は、フィルム面が芯材側に積層接合成形されたことを特徴とする車両用内装材である。
裏面材の反フィルム側に設置するのは、車体フレームに接する部分となり、繊維形態を維持しているため、接触擦れによる異音を低減する機能を付与させるために必要である。フィルム側をフレーム側に設置すると、フィルムでは接触擦れによる異音が低減されないので好ましくない。
本発明における車両用内装材に用いる表皮材及び芯材は公知のものを使用できる。表皮材としては、不織布、織布、ニット、及びそれらの起毛品などの公知の通気性を有する繊維構造体、または前記表皮材に裏面に発泡体を裏打したものなどを用いることができる。通気性を有することで、吸音効果が付与できるので望ましい実施形態となる。
芯材としては、ウレタンやオレフィンの発泡体、繊維を圧縮成型した繊維集合体、発泡体に無機繊維やセルロース繊維、合成繊維、などの各種繊維補強材を含有して剛性を高めた構造体などが使用できる。なお、芯材が吸音性能を有するものを用いると、車体から伝わる振動や騒音を低減できるので、より好ましい実施形態である。
【0033】
以下に本発明の製法についての一例を開示するが本発明はこれに限定されるものではない。
本発明に用いる不織布の特性要件は、通常の高速紡糸によるスパンボンド不織布の製造方法では得られない。
【0034】
本発明に用いる不織布特性を満たすスパンボンド不織布を得るには、ポリエステルに、ポリエステルと非相溶性を有する、ガラス転移点温度が110〜160℃の非晶性熱可塑性樹脂を0.05〜3.0重量%添加ブレンドして、高速紡糸する必要がある。
本発明のポリエステルと非相溶で、ガラス転移点温度が110〜160℃の熱可塑性樹脂とは、ポリエステルと相溶性を有しないで、ポリエステル中で島成分として独立に存在する特性を有し、海成分であるポリエステルのガラス転移点温度より少なくとも40℃は高いガラス転移点温度とすることで、島成分が紡糸張力を受けてポリエステルの配向結晶化を抑制する効果を発揮する機能を保持する熱可塑性樹脂であり、たとえば、ポリスチレン系樹脂、ポリアタリレート系樹脂、メチルペンテン系樹脂及びそれらの共重合体樹脂などがあげられる。本発明における好ましい島成分としては、スチレン−アクリレート系共重合樹脂が好ましく、ポリエステルにポリエチレンテレフタレート(PET)を用いる場合、ガラス転移点温度が118℃のスチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体樹脂(市販品では、例えば、Rohm GmbH&Co.KGのPLEXIGLAS hw55)が少量の添加量で配向結晶化抑制効果が大きいので特に好ましい。ポリエステルにポリエチレンナフタレート(PEN)を用いる場合は、島成分はスチレン・無水マレイン酸共重合体(ガラス転移点温度155℃:市販品では、例えば、SARTOMER Company Inc.のSMA1000など)を用いるのが好ましい。スチレン系のB成分は、熱分解するとスチレンラジカルを発生し、分岐を生じると糸切れなどの問題を起こすので、できるだけ熱分解を抑制できる紡糸温度で紡糸できる組合せにして、分岐を起こさないようにするのが好ましい。
【0035】
本発明では、ポリエステルに対し、島成分の添加量は0.05〜2.0重量%添加するのが好ましい。添加量が0.05重量%未満では、配向結晶化抑制効果が少なくなり効果が出ない場合がある。添加量が3.0重量%を超えて添加すると、屈曲点荷重が低くなり剛性が低下して裏材の補強効果が劣り、紡速が2500m/分を越えると、糸切れが激しくなり、低紡速では複屈折率が本発明要件を満たさなくなる場合がある。本発明の実施形態からの好ましい添加量は、生産性の観点から紡速3500m/分以上で糸切れしない島成分の添加量として、0.1〜2.0重量%であり、より好ましくは0.5〜1.5重量%である。
【0036】
本発明での最も好ましい、ポリエチレンテレフタレートを用いる製造法について以下に述べる。
主成分として固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート99.5重量%と島成分としてスチレン・メタクリル酸メチル・無水マレイン酸共重合体0.5重量%(例えば、PLEXIGLAS hw55)を乾燥機でブレンド乾燥し、次いで、通常の溶融紡糸機にて、紡糸ノズルは管長(L)と管径(D)の比(L/D)が1〜5のオリフィスを持つノズルを用いて、紡糸温度285℃にて紡糸する。紡糸ノズルのL/Dが、1未満では、バラス効果が大きくなりやすく高速紡糸では糸切れが発生しやすくなる。L/Dが5を越えると剪断力でA成分とB成分が分離しやすくなるので、配向結晶化抑制効果が繊維断面内で均質になりにくい問題がある。本発明では、繊維断面内で均質にA成分中にB成分が分散できるL/Dは、2〜4が好ましく、より好ましくは3である。吐出量は所望の繊度を得るために、設定牽引速度に応じて設定する。例えば、2dtexの繊維を得たい場合、牽引による紡糸速度を4500m/分に設定する時は、単孔吐出量を0.9g/分にて吐出する。
紡糸された吐出糸条はノズル直下〜10cm下で冷却風により冷却されつつ、下方に設置された牽引ジェットにて牽引細化されて固化する。A成分が固化する前にB成分が固化して、A成分は、配向結晶化し難くなり、得られる長繊維の伸度を高く保つことができる。
【0037】
本発明では、繊維の複屈折率が0.04〜0.07になる範囲で、糸切れしない不織布を製造する必要から、牽引による紡糸速度(Vw:m/分)が3500m/分〜5000m/分の範囲において、紡糸速度(Vw:m/分)とB成分添加量(G:重量%)との関係が下記式(式1)の関係を満足する紡糸速度で紡糸することで、繊維の複屈折率が0.04〜0.07の、糸切れのない本発明部材に用いる成形性に優れた長繊維不織布を得ることができる。
Vw≦4000−2200×lnG ・・・・・ (式1)
例えば、島成分の添加量0.5重量%では、Vw≦5500m/分となり、5500m/分以下の紡糸速度で糸切れしないで紡糸できる。
牽引紡糸された長繊維は、下方に設置された吸引ネットコンベア上に振落されて所望の目付(本発明では20〜60g/mが推奨される)で積層ウエッブ化される。本発明での好ましい繊維配列は、縦横方向の力学特性差をなくすことが推奨されるので、ランダム配列とするのが望ましい。少なくとも、繊維配列による縦横方向の力学特性差は比率で0.7〜1.2までとするため、吐出繊維本数や引き取り速度などにより繊維配列を調整する必要がある。連続して、ウエッブはバラケないように100〜130℃にて予備圧着されてハンドリング性を確保される。次いで、巻き取られ、又は、連続して、エンボス加工される。本発明では、且つ、圧着面積率10〜20%が好ましいので、用いるエンボスローラーのエンボス文様は、圧着面積となる凸部面積が11〜22%に設定した文様を用いるのが好ましい。本発明でのエンボス加工温度は、素材と目付、加工速度、線圧により好ましい温度は異なるが、見掛嵩密度を0.10〜0.25g/cmになるよう、120〜230℃で行うのが好ましい。例えば、ポリエステルにポリエチレンテレフタレート、島成分にスチレン・メタクリル酸メチル・無水マレイン酸共重合体1部の組成で、目付が30g/m、見掛嵩密度0.18g/cmの不織布を得るには、横楕円凸型エンボスを線圧30kgfで行う場合、130〜150℃が好ましく、より好ましくは140℃である。
このような条件では、横楕円ドットで圧着面積16%の最も好ましい本発明の車両内装材用部材に用いる成形性に優れた長繊維不織布が得られる。
【0038】
得られた長繊維不織布は、次いで、不織布片面にフィルムをラミネート加工される。
ラミネート方法は印刷加工による方法、Tダイフィルム押出ラミネート方法、フィルム貼り合せによる方法などの公知の方法で実施できる。たとえば、印刷加工機でのラミネート方法としては、印刷加工がグラビア印刷、フレキソ印刷、オフセットのいずれかの印刷機を用いて表面全面に施されていることが好ましい。印刷加工に使用されるインキは、ポリエステル系樹脂やポリウレタン系樹脂をバインダーとするものがポリエステル不織布との接着性の点で好ましい。印刷加工の厚みは全面に20μm以上が好ましく、より好ましくは30μm以上60μm以下である。Tダイフィルム押出し機を用いた、フィルムの押出ラミネート加工をしてもよい。また、別途フィルムを積層して貼り付けるラミネート方法も使用できる。各種ラミネート方法で最も安価な方法は、Tダイフィルム押出ラミネートであり本発明に用いる好ましい実施形態例である。用いるフィルム素材は前述のものを用いることができるが、車両用内装材を一体成型する加工温度と条件により適切な融点のものを選択するのが好ましい。たとえば、120〜160℃での加工温度には、融点が110℃から130℃の粘度の温度依存性が少ないオレフィン系樹脂が好ましく、融点が110℃のメルトインデックス(MI)10〜50のポリエチレン(PE)などが好ましい素材として例示できる。たとえば、Tダイ押出機にて、MI30の低密度ポリエチレンを200〜230℃にて溶融して、連続して不織布上にフィルムを押出積層後圧着して、厚み40μmのポリエチレンフィルムをラミネートされ、ロール巻取りして、本発明のフィルム積層接合した車両内装用部材が得られる。
【0039】
かくして、得られた車両内装用部材は、120℃以上では、深絞り成型においても型追随性に優れ、裏材の破れや収縮による浮きを発生せず、表面材に影響を及ぼすことも無くシャープな形状し仕上がる。成型後冷却されると高い剛性を有して、形態保持性と耐摩耗性に優れ、異音抑制効果も優れた車両用の天井材、インシュレーダー、ドアトリムなど車両用内装材となる部材として提供できる。
【0040】
次いで、車両内装材用部材は、型枠に前述の表面材−芯材−にラミネートフィルム側を積層して、ラミネートフィルムが芯材と裏材の接合接着剤として機能させて、圧縮熱成型され車両用内装材が得られる。成型方法は特には限定されないが、予熱した後、コールドプレスするのが、表皮を傷めないので好ましい実施形態である。予熱又は熱圧縮成型温度は、表面材と芯材の耐熱温度内で発泡を同時に行う場合は、必要に応じて、表面材と芯材間には接合剤を別途積層接合して表面材の剥離を防止した一体成型された本発明の車両用内装材を得ることができる。
【0041】
かくして得られたシャープな形状に仕上がった本発明の車両用内装材は、表面材への悪影響もなく、芯材との一体化された裏材は、剛直性と耐磨耗性に優れ、フレームから伝わる異音も低減され、形態保持性の優れた車両用の天井材、インシュレーダー、ドアトリムなどの車両用内装材を提供できる。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
なお、本発明における実施例で記載する評価は以下の方法による。
【0043】
1.熱可塑性樹脂成分のガラス転移点温度及び融点
各熱可塑性樹脂のサンプル5mgを採取し、示差走査型熱量計(TA instruments社製Q100)にて、窒素雰囲気下で20℃から10℃/分にて290℃まで昇温させたときの発熱ピーク位置の温度をガラス転移点温度、吸熱ピーク位置の温度を融点として評価した。
【0044】
2.不織布の目付:Ms
JIS L1906 2000に準じて測定した単位面積あたりの質量(Ms): g/m
【0045】
3.不織布の圧着面積率
不織布1mの表面を20箇所サンプリングし、SEMにて500倍の写真をとり、1000倍に拡大した写真を印刷して、圧着部を切り抜き、切り抜いた圧着部の面積(Sp)を求め、単位面積あたりの圧着部数から、全体の面積(S0)に対してのSpの比率を求める。(n=20)
P=Sp×n/S0
【0046】
4.不織布及び車両内装材用部材の伸度
幅50mm、測定長さ200mmのサンプルを、JIS L1906に準拠して測定した引張り強さと伸び率の破断までの曲線(SS曲線)を測定して、グラフより、破断時の伸び率の平均値を伸度として求める。なお、測定温度は22℃雰囲気と120℃の条件では、東洋ボールドウイン社製の引張り試験用恒温槽TKC−R3型にて120℃雰囲気として測定した。
【0047】
5.不織布の目付あたりの屈曲点荷重(Ws)
4.で測定したSS曲線の初期立ち上がり部分の接線と降伏点を越えた部分の接線の交点の位置の荷重(Wi)を読み取り、平均値(Wa)を求め、目付(Ms)で徐した値を、目付あたりの屈曲点荷重(Ws)とする。
Wa=(1/n)Σ(Wi) (N/50mm)
Ws=Wa/Ms (N/50mm)/(g/m
【0048】
6.車両内装材用部材の耐磨耗性
フィルム積層接合した車両内装用部材を切り出し、大栄科学精器の学振式染色物摩擦堅牢度試験機にて、摩擦面が不織布のエンボス面(反ラミネート面)となるように設置して、摩擦の同布に金巾3号を用い、摩擦回数100回にて、JIS L0847の方法に準拠して磨耗試験を行った。表面の磨耗程度を目視判断で以下の評価を行った。
表面の磨耗がない:◎、毛羽立ち、損傷が微小:○、毛羽立ち、損傷が少〜中ある:△、毛羽立ち、損傷が大:×
【0049】
7.車両内装材用部材のみの成形性
真空圧空成形機にて、金型に充分な離型剤を塗布後、円筒雄型圧縮面側が反ラミネート側になるように車両内装材用部材を設置して、温度180℃で、吸引せずに車両内装材用部材を加熱して、上部開口直径4cm、底部直径4cm、深さ5cmの円筒型成形体を得た。得られた成形体について、不織布の浮き、破れ、金型追随性を目視観察で以下の評価をした。
金型追随性に優れ、浮き、破れが認められない:◎、金型追随性許容範囲、浮き破れなし:○、成型斑あり金型追随性が劣る:△、浮き、破れが認められる:×
【0050】
8.車両内装材用部材のみの成形品の形態保持性
7.で作成した成形品に荷重1kgを載せて、変形状態を目視観察して、以下の評価をした。
型崩れしない:◎、少し変形するが除重すると戻る:O、かなり変形し、除重しても元に戻らない:△、つぶれて、除重してもそのまま:×
【0051】
9.天井材の成型性評価
60℃に予熱した金型に、トリコット布帛を表面材として取り付け、次いで、予め表面材側に低密度ポリエチレン(LDPE)を40μmの厚みでラミネートした厚み10mmの発泡体を120℃で予熱したものを芯材としてラミネート側を表面材側として積層し、次いで、予め180℃で予熱した車両内装材用部材を裏面材としてラミネート側を芯材側にして積層し、直ちに金型を閉じて、0.5kg/cm×1分で圧縮成型して天井材を作成した。得られた天井材を目視観察して、以下の評価をした。
裏面材の成型性:金型追随性に優れ、浮き、破れが認められない:◎、金型追随性許容範囲、浮き破れなし:○、金型追随性が劣る:△、浮き、破れが認められる:×
【0052】
10.天井材の異音低減性評価
作成した天井材をフレームに取り付け、フレームにストローク5cmで10Hzの振動を与え、天井材下部で評価者がキシミ音を聞き分け、接続部のキシミ音を下記基準で官能評価した。
◎:キシミ音なし、○:キシミ音ほとんどなし、△:キシミ音少しあり、×:キシミ音あり
【0053】
<実施例1>
固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート(PET)99重量%と島成分としてRohm GmbH&Co.KGのPLEXIGAS hw55(hw55)を1.0重量%を混合乾燥し、ノズルオリフィスはL/D3.0のノズルを用い、紡糸温度285℃、単孔吐出量1.12g/分にて溶融紡糸し、紡糸速度4500m/分にて引取り、ネットコンベア上に振落してウエッブを得た。連続して、ネット上で100℃の予備圧着ローラーにて押さえ処理を行い単糸繊度2.5dtexの長繊維からなるウエッブを得た。次いで、圧着面積率18%の横楕円エンボスローラーにて、最適加熱温度として210℃にて、線圧50kN/mにてエンボス加工して、目付50g/mの不織布を得た。得られた不織布の評価結果を表1に示す。なお、不織布の縦横比は、伸度:1.1、目付あたりの屈曲点荷重:22℃では0.85、120℃では0.91であった。
次いで、得られた不織布に、押出ラミネート法にて、メルトインデクッス30、融点110℃の低密度ポリエチレンを厚み40μmにてラミネート加工して、車両内装材用部材を得た。得られた車両内装材用部材および、車両内装材用部材を用いて成形した天井材の評価結果を表1に示す。なお、車両内装用部材の縦横伸度差は0.96であった。
本発明の要件を満たす実施例1の車両内装材用部材は、耐磨耗性、成形性、形態保持性とも優れた裏材機能を保持し、その車両内装材用部材を用いて得られた天井材も成形性の良好な仕上がりの天井材が得られた。
【0054】
<実施例2>
PET99.5重量%、Rohm GmbH&Co.KGのPLEXIGLAS hw55(hw)を0.5重量%し、エンボス加工温度を220℃とした以外、実施例1と同様にして得られた不織布、車両内装材用部材、及び、車両内装材用部材を用いた天井材の評価結果を表1に示す。なお、不織布の縦横比は、伸度:1.15、目付あたりの屈曲点荷重:22℃では0.88、120℃では0.94であった。また、車両内装用部材の縦横伸度差は0.98であった。
本発明の要件を満たす実施例2の車両内装材用部材は、耐磨耗性、成形性、形態保持性とも優れた裏材機能を保持し、その車両内装材用部材を用いて得られた天井材も成形性の良好な仕上がりの天井材が得られた。
【0055】
<比較例1>
PET100重量%とし、紡糸温度285℃、エンボス加工温度を230℃とした以外、実施例1と同様にして得られたウエッブ及び不織布、車両内装材用部材、及び、車両内装材用部材を用いた天井材の評価結果を表1に示す。
比較例1は、繊維の複屈折率と車両内装材用部材の120℃雰囲気中の伸度が本発明の要件を満たさない車両内装材用部材のため、耐摩耗性は優れるが、成形性、形態保持性が劣り、それを使用した天井材も浮き破れを生じて裏材の成型性が劣る天井材となった。
【0056】
<比較例2>
B成分として分子量250000のスチレン(PS)を1重量%添加し、リン系難燃剤として、アデカスタブPFRを5重量%添加して、常法により混練ペレタイズした樹脂を用い、エンボス加工温度を130℃とした以外、比較例1と同様にして得た不織布、車両内装材用部材、及び、車両内装材用部材を用いた天井材の評価結果を表1に示す。
比較例2は、紡糸で糸切れがある(スチレンの熱分解による分岐の生成と類推される)、収縮率も高い不織布を用いた車両内装材用部材で、耐磨耗は許容できるが、収縮緻や成形時の伸び斑を生じ、形態保持性も劣り、それを用いた天井材も成形斑を生じており、裏材の成形性が劣る天井材であった。
【0057】
<比較例3>
単孔吐出量0.6g/分にて溶融紡糸し、紡糸速度2400m/分にて引取り、目付30g/mとし、エンボス加工する前にテンターにて、定長で120℃にて1分間熱処理した以外、比較例1と同様にして得られた不織布は、高伸度で高収縮なものとなり、その不織布を用いた車両内装材用部材は、成形斑を生じ、未延伸繊維にため脆くなり耐摩耗性、形態保持性も劣る車両内装部材であった。それを用いた天井材も裏材の成形性が劣る天井材となった。
【0058】
<比較例4>
実施例2と同様にして作成したウエッブを、ペネ60でニードルパンチ加工して得た不織布、車両内装材用部材、及び、車両内装材用部材を用いた天井材の評価結果を表1に示す。
比較例4は、交絡処理をしているため、22℃雰囲気中の屈曲点荷重が低くなるため、嵩高な不織布用いたため、車両内装材用部材は、成形性、形態保形性に問題があるものであり、それを用いた天井材も裏材の成形性が劣る天井材となった。
【0059】
<比較例5>
不織布のフィルムラミネートを三井デュポンポリケミカル社製のエバフレックスEV40WX(融点40℃)を用いて、厚み60μmにてラミネートした以外、実施例2と同様にして得た車両内装材用部材、及び、車両内装材用部材を用いた天井材の評価結果を表1に示す。
比較例5は、ラミネート素材の融点が低いため、予熱処理でラミネート成分が脱落して成形接合が不充分になるため、車両内装材用部材を用いた天井材は、裏材の接合が悪く浮きが顕著な、裏材の接合不良な天井材となった。
【0060】
<比較例6>
ラミネートフィルムの厚みを15μmとした以外、実施例2と同等にして得た車両内装材用部材、及び、車両内装材用部材を用いた天井材の評価結果を表1に示す。
比較例6は、ラミネートフィルムの厚みが薄すぎるため、接合剤量が少なくなり成形接合がやや不充分になるため、車両内装材用部材を用いた天井材は、裏材の接合が劣るため浮きが発生した、裏材の接合不良な天井材となった。
【0061】
<比較例7>
エンボス加工に代えて、カレンダー加工により線圧150kg/cmにて、見掛嵩密度を0.35g/cmに圧縮した以外、実施例2と同様にして得た不織布、車両内装材用部材、及び車両内装材用部材を用いた天井材の評価結果を表2に示す。
見掛嵩密度を高くし過ぎた不織布を用いた車両内装材用部材は、深絞り部の型沿い性がやや悪くなり、成形性はやや劣る車両内装材用部材となり、その車両内装材用部材を用いた天井材も、裏面材の仕上がり形態がやや劣る天井材になった。
【0062】
<比較例8>
実施例2で得た不織布にMI5のポリプロピレン(PP)を210℃にて、厚み40μmとなるようにラミネート加工して得た車両内装材用部材及び、その車両内装材用部材を用いた天井材の評価結果を表2に示す。
融点が160℃を越えるラミネート素材を用いたため、車両内装材用部材は、不織布にラミネートされたフィルムとの接合がやや不充分となり、深絞り部の型沿い性がやや悪くなり、成形性はやや劣る車両内装材用部材となり、その車両内装材用部材を用いた天井材は、裏面材と芯材の接合が不充分な天井材になった。
【0063】
<実施例3>
単孔吐出量0.88g/分にて常法により溶融紡糸し、紡糸速度3500m/分にて引取り、最適温度140℃、線圧30kgfにてエンボス加工した以外、実施例1と同様にして得た不織布、車両内装材用部材、及び、その車両内装材用部材を用いた天井材の評価結果を表2に示す。なお、不織布の縦横比は、伸度:1.07、目付あたりの屈曲点荷重:22℃では0.94、120℃では0.98であった。また、車両内装用部材の縦横伸度差は0.98であった。
本発明の要件を満たす実施例3の車両内装材用部材は、耐磨耗性、成形性、形態保持性とも優れた裏材機能を保持し、その車両内装材用部材を用いて得られた天井材も成形性の良好な仕上がりの天井材が得られた。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明により、常温での屈曲点荷重を高くして優れた形態保持性をもたせた不織布を利用し、120℃雰囲気中での伸度を高くして優れた成形性をもたせて接合時に表皮材への悪影響を与えない本発明の車両内装材用部材を用いると、優れた品位の成形仕上り、裏面材としての補強効果と耐摩耗性及び耐久性の優れた車両用内装材を提供することができる。
本発明の成形性と耐磨耗性に優れた車両内装材用部材は、車両用の天井材、インシュレーダー、ドアトリムなどの車両用内装材に特に適しており、これら用途に展開されることで生産性と品質の向上をもたらし、産業界に大きく寄与することが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が80〜160℃の熱可塑性樹脂からなる厚み20〜60μmのフィルムと、融点が220℃以上の熱可塑性ポリエステルよりなり、複屈折率が0.04〜0.07の長繊維で構成された、見掛嵩密度が0.10〜0.25g/cm、22℃雰囲気中の縦伸度が35〜70%、22℃雰囲気中の縦伸張荷重曲線での屈曲点荷重が目付当り1.0〜2.2(N/50mm)/(g/m)であり、120℃雰囲気での縦伸張荷重曲線での屈曲点荷重が目付当り0.05〜0.80(N/50mm)/(g/m)であり、180℃乾熱収縮率が5%未満の交絡処理をしていない不織布とを接合してなる、120℃雰囲気での伸度が50〜150%である車両内装材用部材。
【請求項2】
不織布が、繊度が0.5〜5dtexの長繊維で構成され、エンボス加工による圧着面積率が10〜25%であり、目付が20〜60g/mの不織布である請求項1記載の車両内装材用部材。
【請求項3】
不織布を構成する繊維成分が、ポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートであり、微量添加成分が、熱可塑性ポリスチレン系共重合体(スチレン・メタクリル酸メチル・無水マレイン酸共重合体又は、スチレン・マレイン酸共重合体)である請求項1または2記載の車両内装材用部材。
【請求項4】
表皮材、芯材、裏面材からなる車両用内装材において、裏面材が請求項1〜3のいずれかに記載された車両内装材用部材からなり、フィルム面が芯材側に積層成形された車両用内装材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−792(P2011−792A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145427(P2009−145427)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】