説明

車両内装用エンボス捺染布帛の製法

【課題】エンボス凹部のKQS耐光試験法判定変色4級以上であり且つ退色3級以上の車両内装用エンボス捺染布帛を得る。
【解決手段】KQS耐光試験法において判定が変色4級以上であり且つ退色3級以上となった捺染布帛に印捺したKQS耐光昇華性染料を転写シート用紙に付与して調製したKQS転写シートを、厚みtが0.3〜4.0mm、嵩密度が0.5g/cm3 以下の被加工布帛に重ね合わせ、加熱温度を180〜220℃とし、凸部線圧力を2kg/mm以上として加熱エンボスロールに通し、被加工布帛に加熱エンボスロール周面の凹凸を付形すると共に、その凹凸付形する被加工布帛のエンボス凹部11にKQS耐光昇華性染料を転写し、同時に、そのエンボス凹部11の嵩密度をエンボス凸部12の嵩密度の1.5倍以上にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙に絵柄を描出した転写シートを被加工布帛に重ねて加熱エンボスロールに通し、転写シートの絵柄を被加工布帛に転写すると共に、その絵柄の転写箇所にエンボス凹部を形成する車両内装用エンボス捺染布帛の製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
転写シートの絵柄を被加工布帛に転写すると共にその絵柄の転写箇所にエンボス凹部を形成することは公知である(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−001826
【特許文献2】特開平07−150485
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
転写シートには、その転写面に顔料をバインダー樹脂と共に用いたものと、その転写面に昇華性染料を用いたものがある。
転写面に顔料を用いた転写シートを重ねて加熱エンボスロールに通した被加工布帛では、そのエンボス凹部に顔料と共にバインダー樹脂も転写され、バインダー樹脂の転写被膜に覆われてエンボス凹部が光輝を放ち、転写されたバインダー樹脂によって被加工布帛の風合いが粗硬になり、又、その転写被膜が剥離するので、落ち着き感があり、耐久性に優れ、風合いの柔らかい布帛は得難い。
【0005】
昇華性染料を用いた転写シートを重ねて加熱エンボスロールに通した被加工布帛では、そのエンボス凹部に転写されるのは昇華性染料だけであり、布帛が粗硬にならず、エンボス凹部が光輝を放つこともなく、肌触りのよいエンボス捺染布帛が得られる。
【0006】
しかし、昇華性染料を用いた転写シートの多くは、アパレル関連布帛用として市販されているものであり、又、アパレル関連捺染布帛の耐洗濯性能や耐摩擦性能については比較的厳しく評価されるものの耐光堅牢度については特に厳しい評価基準が設けられていない場合が多いこともあって、直射日光に曝される苛酷な条件下で使用される車両内装用エンボス捺染布帛に使用し得る昇華性染料を用いた転写シートは市販されていない。
【0007】
そこで本発明は、鉛直に支持したキセノンランプを中心にして60秒間に1回転する円筒形回転枠のキセノンランプからの回転半径が290mmとなる垂直面に設定した内装布帛の試験片に、その回転中心に設定した照度150W/m2 、波長300〜400nmのキセノンランプを73±3℃にて3.8時間、次いで38±3℃にて1時間、それぞれ交互に38回繰り返し照射した後、JIS−L−0804に規定される変退色用グレースケールによって内装布帛の試験片のキセノンランプの照射箇所の変退色の度合いを判定するキセノンランプ照射耐光堅牢度試験法(以下、KQS耐光試験法と言う。)において変色が4級以上であり退色が3級以上と判定される程度に耐光堅牢度に優れた昇華性染料(以下、KQS耐光昇華性染料と言う。)を用いた転写シート(以下、KQS転写シートと言う。)を得、そのKQS転写シートを使用して耐光堅牢度に優れたKQS耐光昇華性染料の転写された車両内装用エンボス捺染布帛を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、KQS耐光試験法において変色が4級以上であり且つ退色が3級以上と判定される程度に耐光堅牢度に優れたKQS耐光昇華性染料を用いたKQS転写シートを得るために、先ず、昇華性染料を使用して染色され、KQS耐光試験法において変色が4級以上であり退色が3級以上と判定された車両内装布帛によって、KQS耐光試験法において変色が4級以上であり且つ退色が3級以上と判定される程度に耐光堅牢度に優れたKQS耐光昇華性染料を選び出すこと、および、その選定されたKQS耐光昇華性染料を使用してKQS転写シートを調製すること、並びに、そのKQS転写シートを使用して車両内装布帛を加熱エンボスロールに通し、KQS転写シートの絵柄と共に加熱エンボスロールの凸部が凹部として転写されたKQS耐光試験法判定変色4級以上であり且つ退色3級以上の車両内装用エンボス捺染布帛を得ることを要旨とする。
【0009】
具体的に説明すると、本発明に係る車両内装用エンボス捺染布帛の製法の第1の特徴は、第1に、昇華性染料を印捺した捺染布帛であってKQS耐光試験法において判定が変色4級以上であり且つ退色3級以上となった捺染布帛に印捺したKQS耐光昇華性染料を転写シート用紙に付与してKQS転写シートを調製すること、第2に、そのKQS転写シートのKQS耐光昇華性染料を付与したKQS耐光昇華性染料付与面を、厚みtが0.3〜4.0mm、嵩密度が0.5g/cm3 以下の被加工布帛に重ね合わせ、加熱温度を180〜220℃とし、凸部線圧力を2kg/mm以上として加熱エンボスロールに通し、被加工布帛に加熱エンボスロール周面の凹凸を付形すると共に、その凹凸付形する被加工布帛のエンボス凹部11にKQS耐光昇華性染料を転写すること、第3に、その凹凸付形と同時に、そのエンボス凹部11の嵩密度をエンボス凸部12の嵩密度の1.5倍以上にすることにある。
【0010】
本発明に係る車両内装用エンボス捺染布帛の製法の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、加熱エンボスロールに通してKQS耐光昇華性染料を転写した被加工布帛を、160〜180℃にて30秒間以上加熱する点にある。
【0011】
本発明に係る車両内装用エンボス捺染布帛の製法の第3の特徴は、上記第1と第2の何れかの特徴に加えて、加熱エンボスロールの転写速度を毎分5m以下とし、KQS転写シート用紙の坪量を20〜150g/m2 とし、被加工布帛のエンボス凹部11にのみKQS耐光昇華性染料を転写する点にある。
【0012】
本発明に係る車両内装用エンボス捺染布帛の製法の第4の特徴は、上記第1と第2と第3の何れかの特徴に加えて、エンボス凹部11の面積の被加工布帛の全表面積に占める面積比率を、エンボス凸部12の面積の被加工布帛の全表面積に占める面積比率よりも少なくし、エンボス凹部11の輪郭13に内接する内接円14の半径rを10mm以下にする点にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、昇華性染料を使用して染色され、KQS耐光試験法において変色4級以上であり且つ退色3級以上と判定される車両内装布帛を基にし、KQS耐光試験法において変色4級以上であり且つ退色3級以上と判定される程度に耐光堅牢度に優れたKQS耐光昇華性染料を選定し、その選定されたKQS耐光昇華性染料を使用してKQS転写シートを調製しているので、KQS耐光試験法において、エンボス凹部11における変退色用グレースケールによる耐光堅牢度の変色判定が4級以上であり且つ退色判定が3級以上となる耐光性に優れた車両内装用エンボス捺染布帛を得ることが出来る。
【0014】
そして、その加熱エンボスロールに通して昇華性染料を転写した車両内装用エンボス捺染布帛を、160〜180℃にて30秒間以上加熱するときは、一旦転写された昇華性染料が布帛繊維内部に拡散するので、その車両内装用エンボス捺染布帛の耐光性が一層高まる。
【0015】
又、本発明の車両内装用エンボス捺染布帛では、嵩密度がエンボス凸部12の嵩密度の1.5倍以上で繊維密度が緻密で摩耗し難いエンボス凹部11にのみ昇華性染料が転写されており、特に、そのエンボス凹部11の布帛全体の表面面積に占める面積比率をエンボス凸部12の布帛全体の表面面積に占める面積比率よりも少なくすると共に、そのエンボス凹部11の輪郭13に内接する内接円14の半径rが10mm以下になる程度にエンボス凹部11のサイズを細かくすると、被加工布帛のエンボス凹部11に該当する部分に加熱エンボスロールの凸部からの押圧力が集中作用し易くなるだけではなく、車両内装用エンボス捺染布帛に付形されて隆起したエンボス凸部12に妨げられて昇華性染料の転写されているエンボス凹部11が擦られ難く、そのエンボス凹部11に沿った転写絵柄の耐久性が高まる。
【0016】
本発明に適用される被加工布帛の厚みが0.3〜4.0mmであり、そのエンボス凹部11となる被加工布帛の嵩密度が0.5g/cm3 以下で、被加工布帛が嵩高に脹らんでいる。
このため、加熱エンボスロールに通すときは、その加熱エンボスロールの凸部の先端が被加工布帛の表面を押圧して復元し得ない深いエンボス凹部11が形成される一方、被加工布帛の表面の加熱エンボスロールの凹部に向き合う部分には、その加熱エンボスロールの凹部から強い押圧が作用せず、被加工布帛に付形されるエンボス凹部11とエンボス凸部12との凹凸の形際が鮮明且つ鋭利になる。
それと共に、加熱エンボスロールの凹部に向き合う被加工布帛の表面は、加熱エンボスロールの凹部に触れるとしても強くは押圧されず、瞬時加熱エンボスロールの凹部に軽く触れる程度なので、加熱エンボスロールの凹部に向き合って形成される被加工布帛のエンボス凸部12にはKQS転写シートからKQS耐光昇華性染料が転写されることがなく、従って、その被加工布帛のエンボス凸部12の表面がKQS転写シートに触れてKQS耐光昇華性染料に汚染されることがなく、KQS耐光昇華性染料に染色された着色エンボス凹部11とKQS耐光昇華性染料に未染色の未着色エンボス凸部12とのコントラストの鮮明な車両内装用エンボス捺染布帛が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る車両内装用エンボス捺染布帛の拡大斜視図である。
【図2】転写シートの表面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
車両内装用エンボス捺染布帛の嵩密度をエンボス凸部12の嵩密度の1.5倍以上にするためにも、被加工布帛の嵩密度を0.5g/cm3 以下にすること、即ち、被加工布帛を嵩高にし、エンボス凹部11において嵩を縮め易くすることが望ましく、そのためには、エンボスロールに通して絵柄を描出する被加工布帛の表面に起毛処理を施しておくとよい。
凹凸付形時にエンボス凹部11において嵩を縮め易くするためには、厚く嵩密度が低く容易に圧縮し得る被加工布帛を使用すればよいのであるが、被加工布帛が余りに厚ければ周面の凹凸差の大きい加熱エンボスロールが必要となり、そのような周面の凹凸差の大きい加熱エンボスロールでは製作コストが高くつき、周面の凹凸を傷めないように注意を払って取り扱わなければならず、その管理コストも高くつく。
そして、エンボス凹部11とエンボス凸部12との凹凸差の大きい車両内装用エンボス捺染布帛では、そのエンボス凸部12が押し潰され易く、耐久性の点でも問題になる。
これらの点を考慮して、被加工布帛の厚みtを0.3〜4.0mmに、好ましくは0.6〜3.0mmにする。
【0019】
凹凸絵柄の輪郭を鮮明にするためには、被加工布帛の少なくとも表面の一部に単繊維繊度が3dtex以下で熱セットし易い熱可塑性合成繊維、好ましくはポリエステル系繊維を適用する。
又、本発明では、凹凸絵柄の輪郭を鮮明にするために、加熱エンボスロールによる加熱温度を180〜220℃とし、凸部線圧力を2kg/mm以上としているが、その凸部線圧力を2kg/mm以上にするためには、転写速度を毎分5m以下にし、又、エンボス凹部11の面積の被加工布帛の全表面積に占める面積比率をエンボス凸部12の面積の被加工布帛の全表面積に占める面積比率よりも少なくし、エンボス凹部11の輪郭13に内接する内接円14の半径rを10mm以下にして、加熱エンボスロールからの線圧力をエンボス凹部11に集中作用させる。
加熱エンボスロールの転写速度は、毎分5.0m以下に、好ましくは毎分1.0m〜3.0mにする。
【0020】
KQS転写シートに適用するKQS耐光昇華性染料を選定する際には、耐光堅牢度が優れている既存の車両内装布帛に使用されている昇華性染料を吟味するとよい。
【0021】
KQS耐光昇華性染料を選定するためには、3枚筬のトリコット経編機のバック筬編糸に84dtex/36f、ミドル筬編糸とフロント筬編糸に110dtex/156fのレギュラーポリエステル100%のマルチフィラメント糸を適用して編成したウェール密度が28ウェール/25.4mm、コース密度が60コース/25.4mm、目付け205g/m2 トリコット経編布帛を基準布帛とし、その基準布帛を予め選定された耐光堅牢度の良好な昇華性染料によって染色し、その基準布帛の耐光堅牢度をKQS耐光試験法によって調べ、そのKQS耐光試験法において変色が4級以上であり退色が3級以上と判定された基準布帛に適用した染料をもってKQS耐光昇華性染料に選定する。
昇華性染料による基準布帛の染色は、液流染色機によって行い、液流染色機に通して染色した基準布帛を132℃にて30分間リラックス処理し、150℃にて3分間乾燥処理し、その後、起毛処理を施してKQS耐光昇華性染料の選定に供する。
【0022】
KQS転写シートが薄過ぎると凹凸付形時に破れ易く、厚過ぎると加熱エンボスロール周面の凹凸が被加工布帛に転写され難くなる。この点を考慮して、KQS転写シートには、坪量が20〜150g/m2 の用紙、好ましくは坪量が20〜60g/m2 の薄葉紙を使用する。
KQS転写シートを調製するために、転写シート用紙にKQS耐光昇華性染料を付与する装置には、オンデマンド式インクジェット捺染印刷装置かグラビア捺染印刷装置を使用するとよい。
【実施例】
【0023】
[KQS耐光昇華性染料選定]
KQS耐光昇華性染料選定用染料として、日本化薬株式会社製分散染料のKayalon−Polyester−Yellow−KWN(黄染料)、Kayalon−Polyester−Red−KWN(赤染料)、Kayalon−Polyester−Blue−KWN(青染料)を用意し、それらの染料による染液を次の通り調製した。
(染色条件1:Yellow)
染料:Kayalon−Polyester−Yellow−KWN…1.3%owf
分散均染剤:日華化学株式会社製ニッカサンソルトRM−EXE………0.4cc/L
PH調整剤:ミテジマ化学株式会社製ウルトラMT−FH………………0.4cc/L
浴比:8.3
(染色条件2:Red)
染料:Kayalon−Polyester−Red−KWN…………1.3%owf
分散均染剤:日華化学株式会社製ニッカサンソルトRM−EXE………0.4cc/L
PH調整剤:ミテジマ化学株式会社製ウルトラMT−FH………………0.4cc/L
浴比:8.3
(染色条件3:Blue)
染料:Kayalon−Polyester−Blue−KWN………1.3%owf
分散均染剤:日華化学株式会社製ニッカサンソルトRM−EXE………0.4cc/L
PH調整剤:ミテジマ化学株式会社製ウルトラMT−FH………………0.4cc/L
浴比:8.3
【0024】
[基準布帛染色]
前記の染色条件1と2と3に従って調製した染液により、株式会社日阪製作所製CUT−MF−2L型液流染色機により、3枚筬のトリコット経編機のバック筬編糸に84dtex/36f、ミドル筬編糸とフロント筬編糸に110dtex/156fのレギュラーポリエステル100%のマルチフィラメント糸を適用して編成したウェール密度が28ウェール/25.4mm、コース密度が60コース/25.4mm、目付け205g/m2 の基準生機を染色し、乾燥後起毛処理してウェール密度が40ウェール/25.4mm、コース密度が61コース/25.4mm、目付け309g/m2 、嵩密度0.31g/cm3 、厚み1.0mmの基準染色起毛布帛に仕上げた。
【0025】
[KQS耐光試験]
前記の染色条件1で染色し起毛処理された基準染色起毛布帛1、染色条件2で染色し起毛処理された基準染色起毛布帛2、染色条件3で染色し起毛処理された基準染色起毛布帛3の各基準染色起毛布帛は、KQS耐光試験法において、それぞれ変色が4級以上であり退色が3級以上と判定された。
【0026】
前記のウェール密度が28ウェール/25.4mm、コース密度が60コース/25.4mm、目付け205g/m2 の基準生機を、次の染色条件4に従って調製した染液により、株式会社日阪製作所製CUT−MF−2L型液流染色機によってグレー無地一色に染色し、乾燥後起毛処理してウェール密度が40ウェール/25.4mm、コース密度が61コース/25.4mm、目付け309g/m2 、嵩密度0.31g/cm3 、厚み1.0mmの試験エンボス捺染用の無地染色起毛布帛に仕上げた。
【0027】
(染色条件4:グレー色)
染料:Kayalon−Polyester−Yellow−KWN…1.3%owf
染料:Kayalon−Polyester−Red−KWN…………0.6%owf
染料:Kayalon−Polyester−Blue−KWN………2.0%owf
分散均染剤:日華化学株式会社製ニッカサンソルトRM−EXE………0.4cc/L
PH調整剤:ミテジマ化学株式会社製ウルトラMT−FH………………0.4cc/L
浴比:8.3
【0028】
[KQS転写シート用インク]
前記の染色条件1と染色条件2と染色条件3に使用した日本化薬株式会社製染料Kayalon−Polyester−Yellow−KWN(黄染料)、Kayalon−Polyester−Red−KWN(赤染料)、Kayalon−Polyester−Blue−KWN(青染料)を使用し、次の処方1、処方2、処方3に従って調製したそれぞれのインクを攪拌1時間後、東洋濾紙株式会社製濾紙(品名:ADVANTEC−No.5A)にて減圧濾過し、真空脱気処理を施した。

(処方1:Yellowインク)
Kayalon−Polyester−Yellow−KWN……10重量%
精製水………………………………………………………………………65重量%
ポリオキシエチレンモノメチルエーテル………………………………25重量%

(処方2:Redインク)
Kayalon−Polyester−Red−KWN……………10重量%
精製水………………………………………………………………………65重量%
ポリオキシエチレンモノメチルエーテル………………………………25重量%

(処方3:Blueインク)
Kayalon−Polyester−Blue−KWN…………10重量%
精製水………………………………………………………………………65重量%
ポリオキシエチレンモノメチルエーテル………………………………25重量%
【0029】
[KQS転写シートの調製]
坪量45g/m2 の株式会社パデック製汎用転写用紙(品名:IJサプリメーションアンダーペーパー)に、上記処方1〜3のYellowインクとRedインクとBlueインクを、ノズル径50μm、駆動電圧55V、周波数3kHz、解像度255dpi、印捺量各色合計10g/m2 のオンデマンド式インクジェット捺染装置によって印捺し、24時間放置して自然乾燥させ、図2に示すKQS転写シートを調製した。
【0030】
[実施例1〜8]
先に仕上げたウェール密度が40ウェール/25.4mm、コース密度が61コース/25.4mm、目付け309g/m2 、嵩密度0.31g/cm3 、厚み1.0mmの試験エンボス捺染用の無地染色起毛布帛の起毛パイル面に、図2に示すKQS転写シートのインク印捺面を重ね合わせ、[表1]に示す加熱エンボスロール凸部線圧力と加熱エンボスロール加熱温度と加熱エンボスロール転写速度をもって、加熱エンボスロール周面の凹凸を無地染色起毛布帛の起毛パイル面に付形すると共に、その凹凸付形する起毛パイル面のエンボス凹部11にKQS転写シートのKQS耐光昇華性染料を転写し、[表1]に示す通りエンボス凹部11の嵩密度がエンボス凸部12の嵩密度の1.5倍以上であり、エンボス凹部11のKQS耐光試験法判定変色4級以上退色3級以上の実施例1〜8の車両内装用エンボス捺染布帛を試作した。
【0031】
【表1】

【0032】
[実施例9〜12]
実施例2で得た車両内装用エンボス捺染布帛を175℃にて180秒間加熱して[表2]に示す実施例9の車両内装用エンボス捺染布帛を試作し、実施例6で得た車両内装用エンボス捺染布帛を175℃にて180秒間加熱して[表2]に示す実施例10の車両内装用エンボス捺染布帛を試作し、実施例8で得た車両内装用エンボス捺染布帛を175℃にて180秒間加熱して[表2]に示す実施例11の車両内装用エンボス捺染布帛を試作し、実施例5で得た車両内装用エンボス捺染布帛を175℃にて180秒間加熱して[表2]に示す実施例12の車両内装用エンボス捺染布帛を試作した。
【0033】
【表2】

【0034】
比較例1〜3は、加熱エンボスロールの線圧力と加熱温度と転写速度と本発明の効果との関連性を示し、実施例3における加熱エンボスロールの線圧力を2kg/mm以下にした比較例1と、実施例3における加熱エンボスロールの加熱温度を180℃以下にした比較例2と、実施例3の加熱エンボスロールの転写速度を毎分5m以上にした比較例3では、[表3]に示す通り好結果は得られない。
【0035】
【表3】

【0036】
[比較例4〜6]
[表3]に示す比較例4〜6は、先に仕上げたウェール密度が40ウェール/25.4mm、コース密度が61コース/25.4mm、目付け309g/m2 、嵩密度0.31g/cm3 、厚み1.0mmの試験エンボス捺染用の無地染色起毛布帛の起毛パイル面に、市販のアパレル関連布帛用転写シートのインク印捺面を重ね合わせ、本発明の規定する加熱温度と凸部線圧力と転写速度をもって加熱エンボスロールに通し、その起毛パイル面に加熱エンボスロール周面の凹凸と共に転写シートの彩色を転写したが、市販のアパレル関連布帛用転写シートによっては[表4]に示す通り好結果は得られなかった。
【0037】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の車両内装用エンボス捺染布帛は、日当たりのよい屋内で使用される家具の表装材や壁装材として利用することが出来る。
【符号の説明】
【0039】
11:エンボス凹部
12:エンボス凸部
13:輪郭
14:内接円
r :内接円の半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 昇華性染料を印捺した捺染布帛であってKQS耐光試験法において判定が変色4級以上であり且つ退色3級以上となった捺染布帛に印捺したKQS耐光昇華性染料を転写シート用紙に付与してKQS転写シートを調製すること、
(b) そのKQS転写シートのKQS耐光昇華性染料を付与したKQS耐光昇華性染料付与面を、厚み(t)が0.3〜4.0mm、嵩密度が0.5g/cm3 以下の被加工布帛に重ね合わせ、加熱温度を180〜220℃とし、凸部線圧力を2kg/mm以上として加熱エンボスロールに通し、
被加工布帛に加熱エンボスロール周面の凹凸を付形すると共に、その凹凸付形する被加工布帛のエンボス凹部(11)にKQS耐光昇華性染料を転写すること、
(c) その凹凸付形と同時に、そのエンボス凹部(11)の嵩密度をエンボス凸部(12)の嵩密度の1.5倍以上にすることを特徴とするエンボス凹部のKQS耐光試験法判定変色4級以上であり且つ退色3級以上の車両内装用エンボス捺染布帛の製法。
【請求項2】
(d) KQS耐光昇華性染料を転写した被加工布帛を、160〜180℃にて30秒間以上加熱する請求項1に記載のエンボス凹部のKQS耐光試験法判定変色4級以上であり且つ退色3級以上の車両内装用エンボス捺染布帛の製法。
【請求項3】
(e) 加熱エンボスロールの転写速度を毎分5m以下とし、
(f) KQS転写シート用紙の坪量を20〜150g/m2 とし、
(g) 被加工布帛のエンボス凹部(11)にのみKQS耐光昇華性染料を転写する請求項1と2の何れかに記載のエンボス凹部のKQS耐光試験法判定変色4級以上であり且つ退色3級以上の車両内装用エンボス捺染布帛の製法。
【請求項4】
(h) エンボス凹部(11)の面積の被加工布帛の全表面積に占める面積比率を、エンボス凸部(12)の面積の被加工布帛の全表面積に占める面積比率よりも少なくし、
(i) エンボス凹部(11)の輪郭(13)に内接する内接円(14)の半径(r)を10mm以下にする請求項1と2と3の何れかに記載のエンボス凹部のKQS耐光試験法判定変色4級以上であり且つ退色3級以上の車両内装用エンボス捺染布帛の製法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−241516(P2011−241516A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116790(P2010−116790)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(510045438)TBカワシマ株式会社 (16)
【Fターム(参考)】