説明

車両内通信システム

【課題】 配線を簡略化できると共にノイズに対して強く、さらにデータの高速伝送が可能な車両内通信システムを提供する。
【解決手段】 信号を伝送するための専用の同軸ケーブル6を1本使用してこれを車両内に布設し、この同軸ケーブル6に対して結合器7使用して各装置5-1、5-2、5-3、…との接続を行う。信号の伝送にはスペクトラム拡散方式を用いる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、バス等の車両に搭載される装置間の通信に用いられる車両内通信システムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、バス等の車両に搭載された装置間の通信には、RS−232C、RS−422等の専用回線または各装置に共通接続される電源線が用いられている。
【0003】図4はRS−232C、RS−422等の専用回線2を用いた場合の装置間の接続を示す斜視図である。装置1-1、1-2、1-3、…間には、RS−232C、RS−422等の専用回線2が配線されている。また、各装置1-1、1-2、1-3、…には専用回線2と別系統で電源線3が共通接続されている。
【0004】図5は電源線3を用いた場合の装置間の接続を示す斜視図である。電源線3を信号線としても用いる場合は、信号の伝送方式としてFM変調、AM変調またはスペクトラム拡散変復調方式が用いられる。FM変調およびAM変調方式による伝送は、例えば実公昭63−43525号に示されており、スペクトラム拡散変復調方式による伝送は例えば特開平7−50619号に示されている。
【0005】なお、バス等の車両に搭載される装置1-1、1-2、1-3、…としては、例えば運賃表示装置、整理券発行装置およびこれらを操作する操作盤などがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した従来の車両内通信システムにあっては、次のような問題点があった。
【0007】RS−232C、RS−422等の専用回線2を用いる方式では、車両内に設置される装置1の数が増えると配線が複雑になるので、施工時やメンテナンス時の作業効率が悪化してしまう。また、この種の専用回線2ではノイズに対するシールドが十分でないために装置の誤動作の原因にもなっている。さらに、RS−232C、RS−422は信号を伝送するプロトコルが規格により規定されていることから、一般的にノイズに強いと言われているスペクトラム拡散方式の適用が不可能であり、この点からもノイズ対策が十分に行えなかった。
【0008】電源線3を信号線として共通に用いる方式では、電源線3によって装置間の信号を伝送するので配線が簡略化される利点があるものの、ノイズの影響を受けやすいという欠点がある。特にFM変調やAM変調方式はノイズの影響を受けやすい。また、FM変調やAM変調方式よりもノイズに対して強いと言われているスペクトラム拡散変復調方式にあっても、同様の方式の信号や広帯域のノイズに対して影響を受けたり、影響を与えたりする。
【0009】また、電源線3はデータを高速で伝送する媒体としては好ましくない。
【0010】本発明は上記事情に鑑み、配線を簡略化できると共にノイズに対して強く、さらにデータの高速伝送が可能な車両内通信システムを提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明に係る車両内通信システムは、バス等の車両に搭載された装置間の通信をスペクトラム拡散方式により行う車両内通信システムであって、装置間の信号の伝送のみに用いられ、前記車両内に布設される1本の同軸ケーブルと、複数の装置の夫々に対して設けられ、装置と前記同軸ケーブルとを電気的に接続する結合器とを備えるものである。
【0012】この構成によれば、装置間の通信には専用の同軸ケーブルが1本のみ用いられ、この同軸ケーブルと各装置との接続が結合器によって行われる。
【0013】したがって、通信用の配線が1本の同軸ケーブルで済むことから、配線が簡略化する。また、同軸ケーブルを用いることによって信号の高速伝送化およびスペクトラム拡散方式による伝送が可能になり、さらに外来ノイズの影響や外部に対する影響を低減することができる。また、各装置と同軸ケーブルとの接続を結合器で行うことから、各装置の設置場所に制約を受けることが無く、任意の場所に設置することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】図1は本発明に係る車両内通信システムの実施の形態の構成を示すブロック図である。
【0015】この実施の形態の車両内通信システムは、次のようにしたものである。
【0016】(イ)信号線を電源線3と別系統として物理的に分離する。
【0017】(ロ)信号線として同軸ケーブル6を使用し、車両内に1本布設する。
【0018】(ハ)同軸ケーブル6と各装置5-1、5-2、5-3、…との接続を結合器7を介して行う。
【0019】信号線として1本の同軸ケーブル6を用い、この同軸ケーブル6に対して各装置5-1、5-2、5-3、…を結合器7を介して接続することで配線が簡略化される。また、同軸ケーブル6を用いることによって信号の高速伝送およびスペクトラム拡散方式による伝送が可能になり、また外来ノイズの影響や外部に与える影響を低減できる。また、各装置5-1、5-2、5-3、…と同軸ケーブル6との接続を結合器7を用いて行うことにより、各装置5-1、5-2、5-3、…を任意の場所に設置することができる。
【0020】ここで、図2は同軸ケーブル6と結合器7との接続を示す断面図である。この図に示すように、結合器7によって装置5に接続された短尺の同軸ケーブル8が同軸ケーブル6に対して直角方向に支持される。この場合、同軸ケーブル8の心線8aの先端が同軸ケーブル6の心線6aに接触しており、また同軸ケーブル8のシールド8bの先端が同軸ケーブル6のシールド6bに接触している。なお、結合器7によって同軸ケーブル8と同軸ケーブル6とを接続する以前に、同軸ケーブル6の接続箇所に心線6aに至るまでの穴を開けておくと共に、同軸ケーブル8の先端部分の被覆を除去しておくことは言うまでもない。
【0021】装置5-1、5-2、5-3の夫々は、例えば図3のブロック図に示すような構成になっている。この場合、装置5-1は運転席に設けられた操作盤、装置5-2は運賃表示装置、装置5-3は整理券発行装置である。この図において、装置5-1は、各種スイッチや表示ランプなどからなる操作部10と、この操作部10と制御部12とを接続するインタフェース11と、制御部12と、送受信部13とを備えている。制御部12はインタフェース11を介して操作部10からのスイッチ信号を取り込み、それに対応する制御コードを含むベースバンド信号を生成して送受信部13に供給する。送受信部13は制御部12からのベースバンド信号をスペクトル拡散変調して同軸ケーブル6上に送出する。また、送受信部13は同軸ケーブル6上に送出された信号を取り込んでスペクトラム拡散復調し、これにより得られた信号を出力する。
【0022】装置5-2は、運賃表示部15と、この運賃表示部15と制御部17とを接続するインタフェース16と、制御部17と、送受信部18とを備えている。送受信部18はスペクトラム拡散変復調により信号の変復調を行う。制御部17は送受信部18から出力される信号を取り込み、その信号に含まれる制御コードが運賃表示を行うものであると判断すると、その制御コードに従って表示制御を行う。表示制御を行った後はその旨を知らせる信号を送受信部18から信号線6上に送出する。
【0023】装置5-3は、整理券発行部20と、この整理券発行部20と制御部22とを接続するインタフェース21と、制御部22と、受信部23とを備えている。受信部23はスペクトラム拡散復調により信号の復調を行う。制御部22は受信部23から出力される信号を取り込み、その信号に含まれる制御コードが整理券を発行するものであると判断すると、その制御コードに従って発券制御を行う。
【0024】このような構成において、装置5-1にて運賃表示する操作が行われると、運賃表示するための制御コードを含むベースバンド信号がスペクトラム拡散変調されて同軸ケーブル6上に送出される。同軸ケーブル6上に送出された信号は装置5-2にのみ取り込まれ、制御コードに応じた運賃表示が行われる。一方、装置5-1にて整理券を発行する操作が行われると、整理券を発行するための制御コードを含むベースバンド信号がスペクトラム拡散変調されて同軸ケーブル6上に送出される。同軸ケーブル6上に送出された信号は装置5-3にのみ取り込まれ、制御コードに応じた整理券の発行が行われる。
【0025】このように、この実施の形態の車両内通信システムは、信号線としての同軸ケーブル6と電源線3とを別系統として物理的に分離し、1本の同軸ケーブル6を車両内に布設してこの同軸ケーブル6に対して結合器7を使用して各装置5-1、5-2、5-3、…との接続を行うようにした。
【0026】したがって、配線が簡略化し、施工時やメンテナンス時の作業効率が向上する。また、同軸ケーブルを用いることによる信号の高速伝送化およびスペクトラム拡散方式による伝送が可能になり、さらに外来ノイズの影響や外部に対する影響を低減することができる。また、各装置5-1、5-2、5-3、…の設置場所に制約を受けることが無いことから、設置の自由度を高めることができる。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、次のような効果が得られる。
【0028】(イ)通信専用の信号線として同軸ケーブルを用いるので、ノイズが多く発生する電源線を通信線としても使用する場合と比べて外来ノイズの影響や外部に対する影響を格段に低減することができると共に、信号の高速伝送化およびスペクトラム拡散方式による伝送が可能になり、通信の信頼性を高く保つことができる。
(ロ)各装置を結合器を使用して同軸ケーブルに接続するので、配線を簡略化でき、施工時やメンテナンス時の作業効率が向上する。
【0029】(ハ)結合器により各装置を同軸ケーブルのどの箇所にでも接続することができるので、各装置の設置場所の自由度が高まる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車両内通信システムの実施の形態の外観を示す斜視図である。
【図2】実施の形態の車両内通信システムの信号線と結合器との接続を示す断面図である。
【図3】実施の形態の車両内通信システムの各装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】従来の車両内通信システムの外観を示す斜視図である。
【図5】従来の車両内通信システムの外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
5-1、5-2、5-3 装置
6 同軸ケーブル
7 結合器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 バス等の車両に搭載された装置間の通信をスペクトラム拡散方式により行う車両内通信システムであって、装置間の信号の伝送のみに用いられ、前記車両内に布設される1本の同軸ケーブルと、複数の装置の夫々に対して設けられ、装置と前記同軸ケーブルとを電気的に接続する結合器と、を備えたことを特徴とする車両内通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開平10−276170
【公開日】平成10年(1998)10月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−77719
【出願日】平成9年(1997)3月28日
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)