説明

車両制御システム及び認証方法

【課題】 車両に複数のECUが備えられる車両制御システムおいて、その車両制御システムと携帯機の間で行われる認証方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、第一の電子制御装置は、予め記憶する電波送信体識別情報と、電波送信体が送信した電波送信体識別情報に基づき認証を行い、認証成功情報を生成する共に第二の電子制御装置に送信し、第二の電子制御装置は、第二の電子制御装置において予め記憶する電波送信体識別情報と、電波送信体が送信したその電波送信体識別情報に基づき認証を試み、認証された場合、又は、第一の電子制御装置が送信した認証成功情報を受信した場合、電波送信体の認証が完了したと判断する認証方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御システム及び車両制御システムにおける認証方法に関し、特に、車両に備えられた複数の電子制御装置と無線信号により情報を送信する携帯機を備える車両制御システム及びその車両制御システムにおける認証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、車両は、燃料噴射量などのエンジンに関する制御、変速機などの車両駆動に関する制御、ABS(Antilock Brake System)などの制動に関する制御、ドア、パワーウィンドウ、エアバッグなどの車体に関する制御など、数多くの電子制御装置(以下、「ECU」ともいう)により制御されている。このようなECUは、車両の各部を適切に制御するために、これらECU間の連係動作や情報の共有が必要不可欠となっており、ネットワークを介して相互に接続されて車載ネットワークシステムを構成している。
【0003】
ところが、ECUが車両の随所に配置されるようになり、バッテリとECU間を結ぶ電力線及び各ECU間を結ぶ通信線(CAN、LINなど)などのワイヤハーネスの数が増加し、配線取り回しスペースが増大し、車両に配線するのが難しくなってきている。また、ワイヤハーネスの重量の増加も無視できない問題となってきている。そのため、車両内のECU間での情報のやりとりを通信線を配線せずに行う構成が従来から知られている。
【0004】
例えば、特許文献1では、車両に各種ネットワーク用の多数の通信線を配線することなく、車両に搭載された各種電気的装置間で情報を送受信することを目的として、車両に搭載された各ECUに、電源線を介して各種情報を送受信可能な送受信部を設け、これら各送受信部は、各ECUが他のECUとの間で送受信すべき情報の種別毎に、異なる伝送周波数を用いて、多重通信できるように、1又は複数の送受信回路から構成した車両用通信システムが開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、ケーブル等の敷設を伴わず、複数の電子制御装置間での無線方式による確実なデータ通信を可能とすることを目的として、無線方式による直接的な通信が可能となるエリア毎に、3台のECUを搭載し、各エリア間で相互の無線通信が可能になるように、車両の中心線上に3台の中継装置を並べて配置し、これら中継装置は、設定された送信レベルで情報を中継する車両制御システムが開示されている。
【0006】
また、従来から、使用者が携帯する携帯機(FOB)と車両に搭載されたECUとの双方向通信により、ドアの施錠・解錠などの状態を制御するキーレスエントリシステムやパッシブエントリシステム、また、エンジンの始動を許可したりする車載機器遠隔操作システムが知られている。
【0007】
例えば、特許文献3では、車室内送信機から送信されるリクエスト信号の到達範囲である検知エリアが車両ごとにばらついたり、車両が置かれた電波環境に応じて変化しても、常に望ましい検知エリアを確保することを目的として、望ましい車室内検知エリアの外縁位置に設置され、車室内LF送信機から送信される信号を受信する基準LF受信機を備え、基準LF受信機における受信結果に基づいて、車室内LF送信機の信号送信出力レベルを調整する車載機器遠隔操作システムが開示されている。
【0008】
上記の従来技術では、携帯機は特定のECUと通信を行うので、携帯機と特定のECUとの間で認証を行い、特定のECUは、携帯機の認証が成功した時のみその携帯機からの命令を実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−101557号公報
【特許文献2】特開2003−152737号公報
【特許文献3】特開2006−45908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的とするところは、車両に複数のECUが備えられる車両制御システムにおいて、その車両制御システムと携帯機の間で行われる認証方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、車両に備えられた複数の電子制御装置と、無線信号により、その車両に備えられた機器を操作するための操作情報と固有の電波送信体識別情報を送信する電波送信体と、他の電子制御装置及びその電波送信体と無線信号の送受信を行う、第一電子制御装置と第二電子制御装置と、を備える車両制御システムであって、その第一電子制御装置は、その電波送信体のその電波送信体識別情報及び/又はその他の電子制御装置の識別情報を記憶する第一記憶部と、無線信号の送受信を行う第一送受信部と、その第一記憶部が記憶した識別情報に基づき、その第一送受信部が受信した無線信号の認証を行い、その電波送信体の認証が成功した場合に認証成功情報の生成を行う認証情報生成部と、その認証情報生成部が生成したその認証成功情報とその第一送受信部で受信したその操作情報とを、その第一送受信部からその第二電子制御装置に無線で送信する情報送信部と、を備え、その第二電子制御装置は、その電波送信体のその電波送信体識別情報及び/又はその他の電子制御装置の識別情報を記憶する第二記憶部と、無線信号の送受信を行う第二送受信部と、その第二記憶部が記憶した識別情報に基づき、その第二送受信部が受信した無線信号が、電波送信体からの信号であるかその第一電子制御装置からの信号であるかの認証を行う認証部と、その認証部がその電波送信体からの信号と認証した場合に、その第二送受信部で受信した無線信号からその操作情報を取得する第一情報取得部と、その認証部がその第一電子制御装置からの信号と認証した場合に、その第二送受信部で受信した無線信号にその認証成功情報が含まれているかどうかを確認し、その認証成功情報が含まれていた場合には、その第二送受信部で受信した無線信号からその操作情報を取得する第二情報取得部と、その第一情報取得部又はその第二情報取得部が取得したその操作情報に基づき、その車両の機器を制御する制御部と、を備えた車両制御システムが提供される。
これによれば、電波送信体から送信される識別情報を、車両に設けられた複数の電子制御装置で受信し、認証を行うことにより、認証の精度を高めた車両制御システムを提供できる。
【0012】
さらに、その第一電子制御装置が複数設けられ、その制御部は、その第二情報取得部が所定時間内に少なくとも2以上のその第一電子制御装置からその認証成功情報を取得した場合、その操作情報に基づきその車両の機器を制御することを特徴としてもよい。
これによれば、誤認証を防止し、さらに認証の精度を高めた車両制御システムを提供できる。
【0013】
別の観点によれば、上記の車両制御システムに使用される第一電子制御装置が提供される。
これによれば、電波送信体から送信される識別情報を、車両に設けられた複数の電子制御装置で受信し、認証を行うことにより、認証の精度を高めた車両制御システムにおいて、電波送信体から送信される認証情報を生成し、中継する電子制御装置を提供できる。
【0014】
別の観点によれば、上記の車両制御システムに使用される第二電子制御装置が提供される。
これによれば、電波送信体から送信される識別情報を、車両に設けられた複数の電子制御装置で受信し、認証を行うことにより、認証の精度を高めた車両制御システムにおいて、電波送信体から送信される識別情報に基づき認証し、車両の機器を制御する電子制御装置を提供できる。
【0015】
別の観点によれば、上記課題を解決するために、互いに無線通信を行う複数の電子制御装置を備える車両において、その車両の機器を操作するための操作情報と固有の電波送信体識別情報を無線信号により送信する電波送信体の認証方法であって、その車両にはその複数の電子制御装置における第一の電子制御装置と、その操作情報に基づきその車両の機器を制御する第二の電子制御装置が備えられており、その第一の電子制御装置は、その第一の電子制御装置において予め記憶するその電波送信体識別情報と、その電波送信体が送信したその電波送信体識別情報とに基づき認証を行い、認証成功情報を生成すると共にその第二の電子制御装置に送信し、その第二の電子制御装置は、その第二の電子制御装置において予め記憶するその電波送信体識別情報と、その電波送信体が送信したその電波送信体識別情報とに基づき認証を試み、その電波送信体からの信号であると認証された場合、又は、その第一の電子制御装置が送信したその認証成功情報を受信した場合、その電波送信体の認証が完了したと判断する、認証方法が提供される。
これによれば、電波送信体から送信される識別情報を、車両に設けられた複数の電子制御装置で受信し、認証を行うことにより、認証の精度を高めた認証方法を提供できる。
【0016】
さらに、その第二の電子制御装置は、その第一の電子制御装置が送信したその認証成功情報を所定時間内に少なくとも2以上受信した場合、その電波送信体の認証が完了したと判断することを特徴としてもよい。
これによれば、誤認証を防止し、さらに認証の精度を高めた認証方法を提供できる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、車両に設けられた複数の電子制御装置で受信し、電子制御装置同士が無線で操作情報の受け渡しを行い、車両の機器を制御する車両制御システムにおいて、電波送信体から送信される識別情報を、複数の電子制御装置で受信し、認証を行うことにより、認証の精度を高めた車両制御システム及び認証方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る第一実施例を示すブロック図。
【図2】本発明に係る第一実施例を車両に搭載した場合を示す図。
【図3】本発明に係る第一実施例におけるフローチャート図(その一)。
【図4】本発明に係る第一実施例におけるフローチャート図(その二)。
【図5】本発明に係る第一実施例の変形例におけるフローチャート図。
【図6】従来技術に係る車両制御システムを車両に搭載した場合を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図面を参照しながら、本発明に係る各実施例について説明する。
<第一実施例>
図1は、本発明に係る第一実施例における車両制御システム1のブロック図を示す。車両制御システム1は、車両Cに備えられた電子制御装置2と、無線信号により情報を送信する電波送信体である携帯機3(別名をFOBともいう)を有する。ここで、携帯機3は、車両の使用者により保持される物であるが、これに限定されず、例えば、他の車両に搭載された通信機や、建物等の施設に備え付けられた通信機であってもよい。即ち、本明細書における電波送信体は、車載の電子制御装置と無線通信を行うことにより車両の制御を行う通信機一般を含む。
【0020】
電子制御装置2は車両Cに複数備えられ、その一部又は全部は、自分自身である電子制御装置2以外の他の電子制御装置2及び携帯機3と無線通信を行うための通信機能を有する。通信機能を有する電子制御装置2は、携帯機3を認証し、制御対象である車両Cに搭載された機器Eに対して制御を行う第二電子制御装置20(図中携帯機用ECU)と、機器Eに対して直接制御を行わないが、携帯機3を認証し、認証情報を生成すると共に、携帯機3が送信した制御情報等を含む無線信号を電子制御装置20に中継する第一電子制御装置10を含む。
【0021】
電波送信体である携帯機3が送信する情報とは、機器Eを制御するための操作情報と携帯機3を特定するための固有の識別情報である。例えば、機器Eを制御するための操作情報とは、機器Eが車両のドアである場合は施錠/解錠の制御情報であり、機器Eがエンジンである場合はエンジンスタート/ストップの制御情報である。また、電波送信体が他の車両に搭載された通信機である場合、電波送信体が送信する情報とは、例えば、車両同士が交換するデータやそのデータを処理するための制御情報である。また、電波送信体が建物等の施設に備え付けられた通信機である場合、電波送信体が送信する情報とは、例えば、車両の電子制御装置で使用されるデータやプログラムである。
【0022】
また、携帯機3を特定するための固有の識別情報とは、携帯機3を認証するための唯一無二の識別子を有する情報である。また、電子制御装置2を特定するための固有の識別情報とは、電子制御装置2を認証するための唯一無二の識別子を有する情報である。本実施例では、携帯機3及びすべての電子制御装置2(第一電子制御装置及び第二電子制御装置)は、それぞれ固有の識別情報を有している。
【0023】
第一電子制御装置10は、携帯機3の識別情報とその第一電子制御装置10自身以外の他の電子制御装置2の識別情報を記憶する第一記憶部12と、無線信号の送受信を行う第一送受信部11と、第一記憶部12が記憶した識別情報に基づき、第一送受信部11が受信した無線信号の認証を行う。そして、第一電子制御装置10は、携帯機3の認証が成功した場合に認証成功情報の生成を行う認証情報生成部13と、認証情報生成部13が生成した認証成功情報と第一送受信部11で受信した無線信号に含まれる操作情報とを、第一送受信部11から第二電子制御装置20に無線で送信する情報送信部14をそれぞれ有する。本実施例では、車両Cに3つの第一電子制御装置10が備えられているが、もちろんこれに限定されず、一台の車両Cに何台の第一電子制御装置10があってもよい。
【0024】
第一送受信部11は、典型的にはアンテナであり、携帯機3と無線信号の送受信及び通信機能を有する他の電子制御装置2との無線信号の送受信を行う。第一送受信部11は、電波送信体である携帯機3との送受信にのみ使用されるものでなくてもよく、他の電波送信体である通信機との通信を行うものであってもよい。第一送受信部11は、一つの第一電子制御装置10に一つ設けられているが、送受信の感度をさらに向上させるために、複数設けられてもよい。また、使用される帯域は、一般的には、携帯機3から第一送受信部11へはRF帯、第一送受信部11から携帯機3及び他の電子制御装置2へはLF帯であるが、これに限定されない。
【0025】
第一記憶部12は、典型的にはメモリから構成され、車両Cに対応する携帯機3の識別情報と、車両Cに搭載された、その第一記憶部12自身が含まれる第一電子制御装置10以外の他の電子制御装置2の識別情報を記憶する。もちろん、認証が不要な場合にはその一部を記憶するだけでよい。例えば、その第一電子制御装置10が他の電子制御装置2から無線信号を受信することがない場合は、携帯機3の識別情報のみを記憶する。電子制御装置2の識別情報とは、電子制御装置2を特定するための固有の識別情報であり、電子制御装置2を認証するための唯一無二の識別子を有する情報である。第一記憶部12に記憶される情報は、通常、車両Cの出荷時又はメンテナンス時に記憶される。
【0026】
認証情報生成部13は、第一記憶部12が記憶した携帯機3の識別情報に基づき、第一送受信部11が受信した携帯機3からの無線信号の認証を行う。そして、認証情報生成部13は、記憶した携帯機3の識別情報と受信した携帯機3からの識別情報が適合した場合、即ち、携帯機3の認証が成功した場合には、携帯機3の認証が適正に行われ、携帯機3が車両Cを制御する権限を有するものである旨を示す認証成功情報の生成を行う。
【0027】
また、第一記憶部12が記憶した自分以外の他の電子制御装置2の識別情報に基づき、第一送受信部11が受信した他の電子制御装置2からの無線信号の認証を行い、記憶した他の電子制御装置2の識別情報と受信した他の電子制御装置2からの識別情報が適合した場合、即ち、他の電子制御装置2の認証が成功した場合には、他の電子制御装置2の認証が適正に行われ、その電子制御装置2が車両Cを制御する権限を有するものである旨を示す認証成功情報の生成を行う。
【0028】
情報送信部14は、認証情報生成部13が生成した認証成功情報と第一送受信部11で受信した操作情報と自身の識別情報とを、第一送受信部11から第二電子制御装置20に対して無線で送信する。
【0029】
第二電子制御装置20は、第二記憶部25と、第二送受信部21と、認証部26と、第一情報取得部22と、第二情報取得部23と、制御部24と、を備える。第二記憶部25は、携帯機3の識別情報及びその第二電子制御装置20自身以外の他の電子制御装置2の識別情報を記憶する。第二送受信部21は、携帯機3及び第一電子制御装置10等の他の電子制御装置2と無線信号の送受信を行う。認証部26は、第二記憶部25が記憶した識別情報に基づき、第二送受信部21が受信した無線信号の認証を行う。第一情報取得部22は、認証部26が携帯機3からの信号と認証した場合に、第二送受信部21で受信した無線信号から操作情報を取得する。第二情報取得部23は、認証部26が第一電子制御装置10からの信号と認証した場合に、第二送受信部21で受信した無線信号に認証情報生成部13が生成した認証成功情報が含まれているかどうかを確認し、その認証成功情報が含まれていた場合には、携帯機3の認証が完了していると判断し、携帯機3から受信した無線信号に含まれる操作情報を取得する。制御部24は、第一情報取得部22又は第二情報取得部23が取得した携帯機3からの操作情報に基づき、車両Cの機器Eを制御する。
【0030】
第二電子制御装置20は、本実施例では、車両Cに一つ備えられているが、一つの機器Eに対して複数備えられていてもよく、また、別の機器E’(図示せず)に対して一つ又は複数備えられていてもよい。
【0031】
第一送受信部21は、典型的にはアンテナであり、携帯機3と無線信号の送受信及び第一電子制御装置10等他の電子制御装置2との無線信号の送受信を行う。第一送受信部21は、電波送信体である携帯機3との送受信にのみ使用されるものでなくてもよく、他の電波送信体である通信機との通信を行うものであってもよい。第一送受信部21は、一つの第二電子制御装置20に一つ設けられているが、送受信の感度をさらに向上させるために、複数設けられてもよい。また、使用される帯域は、一般的には、携帯機3から第一送受信部21へはRF帯、第一送受信部21から携帯機3及び他の電子制御装置2へはLF帯であるが、これに限定されない。
【0032】
第二記憶部25は、典型的にはメモリから構成され、車両Cに対応する携帯機3の識別情報と、車両Cに搭載された、その第二記憶部25自身が含まれる第二電子制御装置20以外の他の電子制御装置2の識別情報(第一電子制御装置10の識別情報を含む)を、いずれか一方又は両方を記憶する。第二記憶部25に記憶される情報は、通常、車両Cの出荷時又はメンテナンス時に記憶される。
【0033】
認証部26は、第二記憶部25が記憶した携帯機3及び/又は他の電子制御装置2の識別情報に基づき、第二送受信部21が受信した無線信号の認証を行う。次に認証部26は、記憶した携帯機3及び/又は他の電子制御装置2の識別情報と、受信した携帯機3及び/又は他の電子制御装置2からの識別情報が適合した場合、即ち、携帯機3及び/又は他の電子制御装置2の認証が成功した場合には、携帯機3及び/又は他の電子制御装置2の認証が適正に行われ、携帯機3及び/又は他の電子制御装置2が車両Cを制御する権限を有するものであると判断する。また、認証部26は、認証部26が第一電子制御装置10を認証した場合であって第二情報取得部23が第一電子制御装置10から認証成功情報を取得した場合に、携帯機3を認証することとしてもよい。他の電子制御装置2の識別情報を、車両に設けられた複数の電子制御装置相互間で受信し、認証を行うことにより、認証の精度を高めた車両制御システムを提供できる。
【0034】
第一情報取得部22は、認証部26が携帯機3からの信号であると認証した場合に、第二送受信部21で受信した無線信号から、携帯機3からの操作情報を取得する。また、第一電子制御装置10の情報送信部14がその第一電子制御装置10の識別情報を第一送信部11から送信し、認証部26が第一電子制御装置10からの信号であると認証した場合には、第二情報取得部23は、第二送受信部21で受信した無線信号に認証情報生成部13が生成した認証成功情報が含まれているかどうかを確認する。そして、その認証成功情報が含まれていた場合には、第二情報取得部23は、携帯機3の認証が完了していると判断し、携帯機3が生成し受信した無線信号に含まれる操作情報を取得する。
【0035】
制御部24は、第一情報取得部22又は第二情報取得部23が取得した、しかしいずれであっても最初は携帯機3が生成し、送信した制御情報に基づき、車両Cの機器Eを制御する。即ち、本実施例に係る車両制御システム1は、第二電子制御装置20の制御部24が携帯機3からの操作情報に基づき機器Eを制御するために、第二電子制御装置20の認証部26又は第一電子制御装置10の認証情報生成部13にて携帯機3を認証する。
【0036】
この結果、車両制御システム1においては、携帯機3から送信される識別情報を、車両Cに設けられた複数の電子制御装置2で受信し、受信した電子制御装置2において携帯機3の認証を行うことにより、認証の精度を高めることができる。そうすると、車両制御システム1は、第二電子制御装置20の制御部24が、携帯機3から直接受信し第一情報取得部22が取得した情報、又は第一電子制御装置10の情報送信部14を経由して第二情報取得部23が取得した情報に基づいて、車両Cの機器Eを制御できる。
【0037】
なお、機器Eを制御する第二電子制御装置20とその他の第一電子制御装置10の両方が携帯機3からの無線信号を受信する場合がある。即ち、第二電子制御装置20の認証部26が認証を行うと共に、第一電子制御装置10の認証情報生成部13が認証情報を生成した場合は、第一情報取得部22と第二情報取得部23の両方が携帯機3からの操作情報を取得し得る場合である。この場合、第二電子制御装置20は、第一情報取得部22が取得した操作情報を優先し、第一送受信部21が携帯機3から直接受信した情報に基づき、制御してもよい。携帯機3から直接受信する無線信号の方が、速く第二電子制御装置20に到達するし、信号の品質も経由するのに比し信頼性が高い。但し、これに限定されるものではなく、多数の第一電子制御装置10が中継した無線信号の中から、例えば多数決により、どの無線信号に基づき制御するのかを決めてもよい。
【0038】
図2は、本発明に係る第一実施例を実際に車両に搭載した場合を示す図である。図2では、バッテリと共に、電子制御装置20(第二電子制御装置、図中携帯用ECU)が一つ、第一電子制御装置10が4つ備えられている。それぞれの電子制御装置は、バッテリと電源線により接続され、電力の提供を受けている。
【0039】
ここで、従来技術と対比するため、図6を参照する。図6は、従来技術に係る車両制御システムを車両に搭載した場合を示す図である。図2と同様、バッテリと共に、電子制御装置20に相当する機器を制御する電子制御装置(図中キーレスECU)が一つ、他の電子制御装置が4つ備えられている。それぞれの電子制御装置は、バッテリと電源線により接続され、電力の提供を受けている。さらに、それぞれのECUの間で通信を行うCAN(Controller Area Network)のためのワイヤハーネス、並びにローカル通信を行うLIN(Local Interconnect Network)のためのワイヤハーネスが配置されている。
【0040】
このように、従来技術では、多くのワイヤハーネスが必要とされる一方、本発明に係る本実施例では、第二電子制御装置20と第一電子制御装置10の間で無線通信が行われるので、従来技術では必要であったワイヤハーネスをほとんど必要としない。これにより、車両C内の配線取り回しに余裕ができ、車両の設計・製造において自由度を増大せることができ、さらに、車体重量の低減が図られる。
【0041】
また、図6では、FOB(携帯機)は、キーレスECUとのみ通信を行うことができ、かつ、認証手段はキーレスECUにのみ備えられているので、他のECUとは通信し認証を行い、情報を受け渡すことはできない。従って、FOBの位置が、車両内でのキーレスECUの場所から無線信号が届きにくい位置である場合、FOBとキーレスECUの間の通信精度(受信精度及び認証精度)は低いものとなる。また、車両内の別の場所にアンテナを設置してFOBとの通信精度を向上させるなどしなくてはならない。
【0042】
一方、図2における本実施例では、FOBは、第二電子制御装置20だけでなく、車両Cの各所に配置された第一電子制御装置10にも認証手段が備えられ、各々と無線通信を行い、必要な情報を第二電子制御装置20に届けることができるので、FOBの位置により無線信号が届きにくくなることが、従来技術に比し少ない。さらに、車両内に別途アンテナを設けるなどしなくても良い。従って、車両制御システム1においては、携帯機3から送信される情報の受信精度や認証精度を高めることができ、確実に認証を行い、情報を第二電子制御装置20に届けることが可能となる。
【0043】
図3は、本実施例における第二電子制御装置20のフローチャートを示す。なお、ステップをSと略して記載する。第二電子制御装置20(図中携帯機用ECU)は、S30にて、無線信号を受信する。第二電子制御装置20は、S31にて、受信した無線信号がFOB(携帯機)からの無線信号であり、予め第二記憶部に記憶されたFOBの識別情報を基に、無線信号に含まれるFOBの識別情報をチェックする。FOBの認証が成功した場合には、第二電子制御装置20は、S32にて、無線信号に含まれるFOBが送信した操作情報に基づいて、車両の機器を制御する。
【0044】
FOBの認証が成功しなかった場合には、第二電子制御装置20は、S33にて、他のECU(第一電子制御装置10)から無線信号を受信したか否かをチェックする。他のECUからの無線信号を受信していない場合は、ノイズなど自身の制御に関係のない信号を受信したことになるので、終了する。
【0045】
他のECUから無線信号を受信した場合、第二電子制御装置20は、S34にて、受信した無線信号の中に他のECUが生成した認証成功情報が含まれるか否かをチェックする。認証成功情報が含まれていない場合、受信した無線信号から取得した情報に基づいた処理を実行した後、終了する。認証成功情報が含まれていた場合、第二電子制御装置20は、S32にて、FOBが送信し他のECUを経由した、無線信号に含まれる操作情報に基づいて、車両の機器を制御する。
【0046】
図4は、本実施例における第一電子制御装置10のフローチャートを示す。第一電子制御装置10は、S40にて、無線信号を受信する。第一電子制御装置10は、S41にて、受信した無線信号に含まれる識別情報と、予め第一記憶部に記憶されたFOBの識別情報とを基に、受信した無線信号がFOBからの無線信号かどうかをチェック(認証)する。FOBの認証が成功した場合には、第一電子制御装置10は、S42にて、認証成功情報を生成し、その認証成功情報とFOBからの無線信号に含まれていた操作情報と自身の識別情報とを第二電子制御装置20(図中携帯機用ECU)に送信する。
【0047】
認証が成功しなかった場合、第一電子制御装置10は、S43にて、他のECUから無線信号を受信したか否かをチェックする。他のECUからの無線信号を受信していない場合は、ノイズなど自身の制御に関係のない信号を受信したことになるので、終了する。他のECUから無線信号を受信し、認証も成功した場合、第一電子制御装置10は、S44にて、取得情報に基づいた処理を実行する。
【0048】
これらのステップは、互いに無線通信を行う複数の電子制御装置を備える車両Cにおいて、車両Cの機器Eを操作するための操作情報と固有の識別情報を無線信号により送信する携帯機3の認証方法であって、車両Cには複数の電子制御装置における第一の電子制御装置10と、操作情報に基づき車両Cの機器Eを制御する第二の電子制御装置20が備えられており、第一の電子制御装置10は、第一の電子制御装置10において予め記憶する識別情報と、携帯機3が送信した識別情報に基づき認証を行い、認証成功情報を生成する共に第二の電子制御装置20に送信し、第二の電子制御装置20は、第二の電子制御装置20において予め記憶する識別情報と、携帯機3が送信した識別情報に基づき、認証が成功した場合、又は、第一の電子制御装置10が送信した認証成功情報を受信した場合、携帯機3の認証が完了したと判断する認証方法である。
【0049】
<第一実施例の変形例>
図5は、本実施例の変形例における第二電子制御装置20のフローチャートを示す。第二電子制御装置20は、S50にて、無線信号を受信する。第二電子制御装置20は、S51にて、受信した無線信号がFOB(携帯機)からの無線信号であり、予め第二記憶部に記憶されたFOBの識別情報を基に、無線信号に含まれるFOBの識別情報をチェックする。認証が成功した場合には、第二電子制御装置20は、S52にて、無線信号に含まれるFOBが送信した操作情報に基づいて、車両の機器を制御する。
【0050】
認証が成功しなかった場合には、第二電子制御装置20は、S53にて、他のECU(第一電子制御装置10)から無線信号を受信したか否かをチェックする。無線信号を受信していない場合は、いずれからも無線信号を受信していないので、終了する。
【0051】
他のECUから無線信号を受信した場合、第二電子制御装置20は、S54にて、受信した無線信号の中に他のECUが生成した認証成功情報が含まれるか否かをチェックする。認証成功情報が含まれていない場合、受信した無線信号から取得した情報に基づいた処理を実行した後、終了する。
【0052】
認証成功情報が含まれていた場合、第二電子制御装置20は、S55にて、タイマーをセットし、スタートさせる。そして、第二電子制御装置20は、S56にて、2つ以上の他のECUから、無線信号を受信し、受信した無線信号の中に他のECUが生成した認証成功情報が含まれるか否かをチェックする。2つ以上の他のECUからの認証成功情報を受信していない場合は、第二電子制御装置20は、S57にて、セットしたタイマーが所定時間経過したか否かをチェックする。所定時間経過していなければ、S56に戻り、経過していれば終了する。
【0053】
2つ以上の他のECUからの認証成功情報を受信した場合には、第二電子制御装置20は、S52にて、FOBが送信し他のECUを経由した、無線信号に含まれる操作情報に基づいて、車両の機器を制御する。即ち、制御部24は、第二情報取得部23が所定時間内に少なくとも2以上の第一電子制御装置10から認証成功情報を取得した場合に、携帯機3からの操作情報に基づき車両Cの機器Eを制御する。また、第二の電子制御装置20は、第一の電子制御装置10が送信した認証成功情報を所定時間内に少なくとも2以上受信した場合に、携帯機3を認証してもよい。これにより、誤認証を防止し、さらに認証の精度を高めた認証方法を提供できる。
【0054】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 車両制御システム
2 電子制御装置
3 電波送信体
C 車両
E 機器
10 第一電子制御装置
11 第一送受信部
12 第一記憶部
13 認証情報生成部
14 情報送信部
20 第二電子制御装置
21 第二送受信部
22 第一情報取得部
23 第二情報取得部
24 制御部
25 第二記憶部
26 認証部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に備えられた複数の電子制御装置と、
無線信号により、前記車両に備えられた機器を操作するための操作情報と固有の電波送信体識別情報を送信する電波送信体と、
他の電子制御装置及び前記電波送信体と無線信号の送受信を行う、第一電子制御装置と第二電子制御装置と、を備える車両制御システムであって、
前記第一電子制御装置は、
前記電波送信体の前記電波送信体識別情報及び/又は前記他の電子制御装置の識別情報を記憶する第一記憶部と、
無線信号の送受信を行う第一送受信部と、
前記第一記憶部が記憶した識別情報に基づき、前記第一送受信部が受信した無線信号の認証を行い、前記電波送信体の認証が成功した場合に認証成功情報の生成を行う認証情報生成部と、
前記認証情報生成部が生成した前記認証成功情報と前記第一送受信部で受信した前記操作情報とを、前記第一送受信部から前記第二電子制御装置に無線で送信する情報送信部と、
を備え、
前記第二電子制御装置は、
前記電波送信体の前記電波送信体識別情報及び/又は前記他の電子制御装置の識別情報を記憶する第二記憶部と、
無線信号の送受信を行う第二送受信部と、
前記第二記憶部が記憶した識別情報に基づき、前記第二送受信部が受信した無線信号が、電波送信体からの信号であるか前記第一電子制御装置からの信号であるかの認証を行う認証部と、
前記認証部が前記電波送信体からの信号と認証した場合に、前記第二送受信部で受信した無線信号から前記操作情報を取得する第一情報取得部と、
前記認証部が前記第一電子制御装置からの信号と認証した場合に、前記第二送受信部で受信した無線信号に前記認証成功情報が含まれているかどうかを確認し、前記認証成功情報が含まれていた場合には、前記第二送受信部で受信した無線信号から前記操作情報を取得する第二情報取得部と、
前記第一情報取得部又は前記第二情報取得部が取得した前記操作情報に基づき、前記車両の機器を制御する制御部と、
を備えた
車両制御システム。
【請求項2】
前記第一電子制御装置が複数設けられ、
前記制御部は、前記第二情報取得部が所定時間内に少なくとも2以上の前記第一電子制御装置から前記認証成功情報を取得した場合、前記操作情報に基づき前記車両の機器を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両制御システムに使用される第一電子制御装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の車両制御システムに使用される第二電子制御装置。
【請求項5】
互いに無線通信を行う複数の電子制御装置を備える車両において、
前記車両の機器を操作するための操作情報と固有の電波送信体識別情報を無線信号により送信する電波送信体の認証方法であって、
前記車両には前記複数の電子制御装置における第一の電子制御装置と、前記操作情報に基づき前記車両の機器を制御する第二の電子制御装置が備えられており、
前記第一の電子制御装置は、前記第一の電子制御装置において予め記憶する前記電波送信体識別情報と、前記電波送信体が送信した前記電波送信体識別情報とに基づき認証を行い、認証成功情報を生成すると共に前記第二の電子制御装置に送信し、
前記第二の電子制御装置は、前記第二の電子制御装置において予め記憶する前記電波送信体識別情報と、前記電波送信体が送信した前記電波送信体識別情報とに基づき認証を試み、前記電波送信体からの信号であると認証された場合、又は、前記第一の電子制御装置が送信した前記認証成功情報を受信した場合、前記電波送信体の認証が完了したと判断する、
認証方法。
【請求項6】
前記第二の電子制御装置は、前記第一の電子制御装置が送信した前記認証成功情報を所定時間内に少なくとも2以上受信した場合、前記電波送信体の認証が完了したと判断することを特徴とする請求項5に記載の認証方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−18319(P2013−18319A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151294(P2011−151294)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)
【Fターム(参考)】