説明

車両制御システム

【課題】イグニッションスイッチが切られた状態の暗電流を低減することができる車両制御システムを提供する。
【解決手段】ボディECU10は、判定部14でイグニッションスイッチが切られたと判定した場合、エンジンECUのRAMに記憶されるデータの有無を判定部14で判定する。すなわち、ボディECU10にてバックアップすべき他のECUのデータの有無を判定する。ボディECU10は、バックアップすべきデータがあると判定した場合、バックアップすべきデータの転送要求をエンジンECUへ送信する。エンジンECUは、ボディECU10から転送要求を受信した場合、RAMに記憶されるデータをボディECU10へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信線を介して複数のECUが接続された車両制御システムに関し、特にイグニッションスイッチが切られた状態の暗電流を低減することができる車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両は、オルタネータ(車載発電機、交流発電機)及びバッテリなどを備えている。エンジンに連動してオルタネータで発電された電力は、バッテリの充電に利用されるとともに、バッテリからの電力は、車両に搭載された電装品や電装品を制御するECU(電子制御装置)などに供給される。
【0003】
ECUは、CPU、RAM、入出力インタフェースなどを備え、CANやLINなどの車載LANを通じて相互に情報の送受信を行っている。そして、車両には、これらの様々な電装品を制御するためのECUが多数搭載されるようになった。例えば、車両には、ドアロック制御、ワイパ制御、ライト制御などを行うボディECU、エンジンを最適な状態で作動させるべくエンジンを電子制御するエンジンECU、運転席での各種情報の表示を制御するインパネECU、エアコンの作動を制御するエアコンECUなどが備えられている。
【0004】
一方で、エンジンが切られた状態で、バッテリの消費電力を低減し、バッテリの消耗を抑制するための技術も開発されている。例えば、イグニッションスイッチが切られた場合に、乗員の操作情報や制御に必要な情報を各ECUに内蔵された不揮発性メモリ(EPROM)やカーナビに備えられたハードディスクドライブ(HDD)などに記憶させ、バックアップ電源で記憶内容を保持するマイクロコンピュータの個数を減らしてエンジンがオフのときの暗電流を抑えることができる車両システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−67834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のシステムにあっては、各ECUに不揮発性メモリであるEPROMや、カーナビを備えることが条件である。比較的高級グレードの車種にあっては、これらの条件を満たすものの、比較的低級グレードの車種では、EPROMやカーナビを装備しない車種も多数存在し、EPROMやカーナビを装備していない車両に対しては、エンジンがオフのときの電力消費を抑えることができない。
【0007】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、イグニッションスイッチが切られた状態の暗電流を低減することができる車両制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る車両制御システムは、イグニッションスイッチの入切にかかわらず電力が供給される第1ECUと、前記イグニッションスイッチの入切により電力が供給又は遮断される第2ECUとを備え、各ECUは通信線で接続された車両制御システムにおいて、前記第2ECUは、任意の情報を記憶するための揮発性メモリを備え、前記第1ECUは、任意の情報を記憶するためのメモリと、前記イグニッションスイッチの入切を判定する入切判定部と、該入切判定部でイグニッションスイッチが切られたと判定した場合、前記第2ECUの揮発性メモリに記憶される情報を前記メモリに書き込む書込部とを備えることを特徴とする。
【0009】
第2発明に係る車両制御システムは、第1発明において、前記第2ECUは、前記入切判定部でイグニッションスイッチが切られたと判定した場合、前記通信線を通じて前記揮発性メモリに記憶される情報を前記第1ECUへ送信する送信部を備え、前記第1ECUは、前記情報を受信する受信部を備え、前記書込部は、前記受信部で受信した情報を前記メモリに書き込むように構成してあることを特徴とする。
【0010】
第3発明に係る車両制御システムは、第2発明において、前記第1ECUは、前記入切判定部でイグニッションスイッチが切られたと判定した場合、前記第2ECUの揮発性メモリに記憶される情報の有無を判定する情報判定部と、該情報判定部で情報があると判定した場合、該情報の転送要求を前記第2ECUへ送信する送信部とを備え、前記第2ECUは、前記転送要求を受信する受信部を備え、前記第2ECUの前記送信部は、前記受信部で転送要求を受信した場合、前記揮発性メモリに記憶される情報を前記第1ECUへ送信するように構成してあることを特徴とする。
【0011】
第4発明に係る車両制御システムは、第1発明乃至第3発明のいずれか1つにおいて、前記第1ECUは、任意の情報を記憶するための揮発性メモリ及び不揮発性メモリを備え、前記書込部は、前記入切判定部でイグニッションスイッチが切られたと判定した場合、前記第2ECUの揮発性メモリに記憶される情報を前記揮発性メモリに一旦書込み、前記情報が前記揮発性メモリに書き込まれた場合、該情報をさらに前記不揮発性メモリに書き込むように構成してあることを特徴とする。
【0012】
第5発明に係る車両制御システムは、第1発明乃至第4発明のいずれか1つにおいて、前記第1ECUは、ボディ系ECUであることを特徴とする。
【0013】
第6発明に係る車両制御システムは、第1発明において、前記第2ECUは、前記イグニッションスイッチの入切を判定する入切判定部と、該判定部でイグニッションスイッチが切られたと判定した場合、前記通信線を通じて前記揮発性メモリに記憶される情報を前記第1ECUへ送信する送信部とを備え、前記第1ECUは、前記情報を受信する受信部を備え、前記書込部は、前記受信部で受信した情報を前記メモリに書き込むように構成してあることを特徴とする。
【0014】
第1発明にあっては、第1ECUは、任意の情報を記憶するためのメモリ(揮発性メモリでも不揮発性メモリでもよい)を備え、第2ECUは、任意の情報を記憶するための揮発性メモリを備える。ここで、任意の情報は、例えば、乗員の操作情報や制御に必要な情報である。第1ECUは、入切判定部でイグニッションスイッチが切られたと判定した場合、書込部で第2ECUの揮発性メモリに記憶される情報を、第1ECUのメモリに書き込む。イグニッションスイッチが切られた場合でも、第1ECUには給電されるので、メモリに書き込まれた情報が消失することはない。これにより、各ECUにEPROMが備えられていない場合や、ハードディスクなどを装備していない場合でも、バックアップのための電源が不要になり、イグニッションスイッチが切られた状態における暗電流を低減することができる。
【0015】
第2発明にあっては、第1ECUの入切判定部でイグニッションスイッチが切られたと判定した場合、第2ECUは、送信部により通信線を通じて揮発性メモリに記憶される情報を第1ECUへ送信する。そして、第1ECUでは、受信部で前記情報を受信し、受信した情報を書込部でメモリに書き込む。第2ECUで必要な情報を第1ECUのメモリに記憶することにより、第2ECUに不揮発性メモリを設ける必要がなく、また、第2ECUにバックアップ用の電源を設ける必要がないので、消費電力を抑えつつEPROMを備えないECUの情報を記憶することができる。
【0016】
第3発明にあっては、第1ECUは、入切判定部でイグニッションスイッチが切られたと判定した場合、第2ECUの揮発性メモリに記憶される情報の有無を情報判定部で判定する。第1ECUは、情報があると判定した場合、送信部でその情報の転送要求を第2ECUへ送信する。第2ECUは、受信部で転送要求を受信した場合、揮発性メモリに記憶される情報を送信部により第1ECUへ送信する。イグニッションスイッチが切られた場合に、バックアップすべき情報の有無を判定するようにしているので、例えば、各ECU間で定期的にバックアップ処理を行うような場合に比べて、各ECU間の通信処理に要する労力を低減しつつ確実に必要な情報をバックアップすることができる。
【0017】
第4発明にあっては、第1ECUは、任意の情報を記憶するための揮発性メモリ(例えば、RAM)及び不揮発性メモリ(例えば、EPROM)を備え、入切判定部でイグニッションスイッチが切られたと判定した場合、書込部は、第2ECUの揮発性メモリに記憶される情報を第1ECUの揮発性メモリに一旦書込み、情報が第1ECUの揮発性メモリに書き込まれた場合、その情報をさらに第1ECUの不揮発性メモリに書き込む。書き込むべき情報をEPROMに比べて書込み速度が速いRAMに一旦書き込んでおき、その後EPROMに書き込むことにより、イグニッションスイッチが切られた直後の煩雑な動作が存在する場合であっても、確実に情報をバックアップすることができる。
【0018】
第5発明にあっては、第1ECUは、ボディ系ECUである。これにより、情報をバックアップするための専用のECUを設ける必要がなく、コストアップを抑制することができる。
【0019】
第6発明にあっては、第2ECUの入切判定部でイグニッションスイッチが切られたと判定した場合、第2ECUは、送信部により通信線を通じて揮発性メモリに記憶される情報を第1ECUへ送信する。そして、第1ECUでは、受信部で前記情報を受信し、受信した情報を書込部でメモリに書き込む。第2ECUで必要な情報を第1ECUのメモリに記憶することにより、第2ECUに不揮発性メモリを設ける必要がなく、また、第2ECUにバックアップ用の電源を設ける必要がないので、消費電力を抑えつつEPROMを備えないECUの情報を記憶することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、各ECUにEPROMが備えられていない場合や、ハードディスクなどを装備していない場合でも、バックアップのための電源が不要になり、イグニッションスイッチが切られた状態における暗電流を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る車両制御システムの構成の一例を示す模式図である。
【図2】ボディECUの構成の一例を示すブロック図である。
【図3】エンジンECUの構成の一例を示すブロック図である。
【図4】ボディECUの処理手順を示すフローチャートである。
【図5】実施の形態2のボディECUの構成の一例を示すブロック図である。
【図6】実施の形態3の車両制御システムの構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態1
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る車両制御システムの構成の一例を示す模式図である。図1に示すように、車両制御システムは、第1ECUとしてのボディECU10、第2ECUとしてのエンジンECU20、エアコンECU30及びインパネECU40などを備えている。そして、各ECUは、通信線としてのCANバス3に接続されている。なお、通信線は、CANバスに限定されるものではなく、LINバスなど他の車載LANであってもよい。また、ECUの数や種類は、図1の例に限定されるものではなく、他の機能を有するECUを備える構成でもよい。
【0023】
イグニッションスイッチ(不図示)の入切にかかわらず+B電線1を介してボディECU10には電力が供給されている。また、イグニッションスイッチの入切によりIG電線2を介してエンジンECU20、エアコンECU30及びインパネECU40への電力が供給又は遮断される。すなわち、イグニッションスイッチが入りの場合には、ボディECU10、エンジンECU20、エアコンECU30及びインパネECU40のすべてのECUに電力が供給される。また、イグニッションスイッチが切りの場合には、ボディECU10のみに電力が供給される。なお、IG電線2をボディECU10に接続してもよい。
【0024】
図2はボディECU10の構成の一例を示すブロック図である。ボディECU10は、ECU全体を制御するCPU11、メモリとしてのRAM(Random Access Memory)12、他のECUとの間でCANバス3を介してデータ(情報)や転送要求等のコマンドの送信部及び受信部としてのインタフェース部13、イグニッションスイッチの入切を判定する入切判定部及び他のECU(第2ECU)の揮発性メモリに記憶される情報の有無を判定する情報判定部としての判定部14、他のECU(第2ECU)の揮発性メモリに記憶される情報をRAM12に書き込むための書込部15などを備えている。なお、判定部14の機能はCPU11に持たせることもできる。また、書込部15の機能をCPU11に持たせてもよい。
【0025】
判定部14でのイグニッションスイッチの入切の判定は、例えば、イグニッションスイッチの入切と連動する信号をCANバス3上に送信し、この信号により行うことができる。あるいは、IG電線2上の電圧を検出するようにして、イグニッションスイッチの入切の判定を行うこともできる。
【0026】
ボディECU10は、イグニッションスイッチの入切にかかわらず、+B電線1を介して常にバッテリ(不図示)から電力が供給されている。ボディECU10は、例えば、ドアロック制御、パワーウインドウ制御、ワイパ制御、ステアリング制御、サスペンション制御などの機能を果たす。例えば、ドアロック制御は、遠隔操作用のリモコンや運転席のスイッチにより全ドアのロックやアンロックを行うものであり、ボディECU10は、これらの制御を車両のエンジンが切られて駐車している状態でも行うことができるよう、バッテリからの電力が常に供給されている。
【0027】
RAM12には、任意の情報が記憶される。任意の情報は、例えば、乗員の操作情報やボディECU10が行う種々の制御に必要な情報である。ボディECU10には、イグニッションスイッチが切られた状態でも電力が供給され続けるので、RAM12に記憶された情報を保持することができる。
【0028】
図3はエンジンECU20の構成の一例を示すブロック図である。エンジンECU20は、ECU全体を制御するCPU21、揮発性メモリとしてのRAM(Random Access Memory)22、他のECUとの間でCANバス3を介してデータ(情報)やコマンドの送信部及び受信部としてのインタフェース部23などを備えている。なお、他のエアコンECU30、インパネECU40も同様の構成であるので説明は省略する。
【0029】
エンジンECU20は、イグニッションスイッチが入の状態で、IG電線2を介してバッテリ(不図示)から電力が供給されている。また、イグニッションスイッチが切の状態では、バッテリ(不図示)から電力供給が遮断されている。他のエアコンECU30、インパネECU40についても同様である。
【0030】
RAM22には、任意の情報が記憶される。任意の情報は、例えば、乗員の操作情報やエンジンECU20が行う種々の制御に必要な情報である。エンジンECU20は、イグニッションスイッチが切られた状態で電力供給が遮断されるので、RAM22に記憶される情報が消失しないように、ボディECU10へ転送し、RAM12に転送された情報を記憶する。また、イグニッションスイッチが切から入の状態になった場合には、ボディECU10のRAM12に記憶されたエンジンECU20用の情報は、エンジンECU20へ転送され、エンジンECU20は、転送された情報を用いて所定の制御を行う。なお、他のエアコンECU30、インパネECU40も同様である。
【0031】
次に、本発明に係る車両制御システムの動作について説明する。図4はボディECU10の処理手順を示すフローチャートである。CPU11は、判定部14に指示することにより、イグニッションスイッチの入切を判定し(S11)、イグニッションスイッチが入の状態である場合(S11で入)、ステップS11の処理を続ける。
【0032】
イグニッションスイッチが切の状態(入から切に切り替わった状態)である場合(S11で切)、CPU11は、判定部14に指示することにより、他のECUにバックアップデータがあるか否かを判定する(S12)。これは、例えば、ボディECU10から他のエンジンECU20、エアコンECU30及びインパネECU40に対してバックアップデータの有無を確認するためのコマンドを送信し、他のECUからの返答により判定することができる。
【0033】
他のECUにバックアップデータがある場合(S12でYES)、CPU11は、他のECUに対してデータの転送要求を送信し(S13)、他のECUが送信するデータを受信する(S14)。CPU11は、書込部15に指示することにより、受信したデータをRAM12に書き込む(S15)。
【0034】
CPU11は、すべてのデータを受信したか否かを判定する(S16)。なお、すべてのデータを受信したか否かは、他のECUが転送するデータの量を予め取得することにより行うことができる。すべてのデータを受信していない場合(S16でNO)、CPU11は、ステップS14以降の処理を続ける。なお、データを一旦すべて受信した後で、受信したデータをRAM12に書き込むようにしてもよい。
【0035】
すべてのデータを受信した場合(S16でYES)、CPU11は、データが一致しているか否かを判定する(S17)。データの一致の判定は、書き込んだデータが正しいデータであるか否かを判定するものであり、例えば、書き込んだデータを再度読み出して、書き込む前のデータと一致するか否かを判定してもよく、あるいは、ECC(Error Check and Correct)などの機能を用いてもよい。
【0036】
データが一致していない場合(S17でNO)、CPU11は、ステップS13以降の処理を行い、データが一致している場合(S17でYES)、データが正しくRAM12に書き込まれたとして、転送データを有する他のECUがあるか否かを判定する(S18)。他のECUがある場合(S18でYES)、CPU11は、ステップS13以降の処理を続け、他のECUがない場合(S18でNO)、処理を終了する。また、他のECUにバックアップデータがない場合(S12でNO)、CPU11は、処理を終了する。
【0037】
上述の処理において、他のECU(エンジンECU20、エアコンECU30及びインパネECU40)は、ボディECU10からのバックアップデータの有無の確認に対して、バックアップすべきデータがある場合には、その旨を返答する。また、ボディECU10からデータの転送要求を受信した場合には、他のECUは、転送すべきデータの量、データをボディECU10へ送信する。
【0038】
上述のとおり、ボディECU10は、判定部14でイグニッションスイッチが切られたと判定した場合、書込部15でエンジンECU20のRAM22に記憶される情報を、ボディECU10のRAM12に書き込む。イグニッションスイッチが切られた場合でも、ボディECU10には給電されるので、RAM12に書き込まれたデータ(情報)が消失することはない。これにより、各ECUに不揮発性メモリであるEPROMが備えられていない場合や、ハードディスクなどを装備していない場合でも、バックアップのための電源が不要になり、イグニッションスイッチが切られた状態における暗電流を低減することができる。
【0039】
また、ボディECU10の判定部14でイグニッションスイッチが切られたと判定した場合、エンジンECU20は、CANバス3を通じてRAM22に記憶されるデータをボディECU10へ送信(転送)する。そして、ボディECU10は、受信したデータを書込部15でRAM12に書き込む。エンジンECU20で必要なデータをボディECU10のRAM12に記憶することにより、エンジンECU20に不揮発性メモリを設ける必要がなく、また、エンジンECU20にバックアップ用の電源を設ける必要がないので、消費電力を抑えつつEPROMを備えないECUの情報を記憶することができる。
【0040】
また、ボディECU10は、判定部14でイグニッションスイッチが切られたと判定した場合、エンジンECU20のRAM22に記憶されるデータの有無を判定部14で判定する。すなわち、ボディECU10にてバックアップすべき他のECUのデータの有無を判定する。ボディECU10は、バックアップすべきデータがあると判定した場合、バックアップすべきデータの転送要求をエンジンECU20へ送信する。エンジンECU20は、ボディECU10から転送要求を受信した場合、RAM22に記憶されるデータをボディECU10へ送信する。電力が供給されている状態でのバックアップ処理を行わずに、イグニッションスイッチが切られた場合(すなわち、電力が遮断される場合)に、バックアップすべき情報の有無を判定するようにしているので、例えば、各ECU間で定期的にバックアップ処理を行うような場合に比べて、バックアップ処理に必要な各ECU間の通信処理に要する労力を低減しつつ確実に必要な情報をバックアップすることができる。
【0041】
また、ボディECU10をバックアップ用のECUとして構成しているので、データをバックアップするための専用のECUを設ける必要がなく、コストアップを抑制することができる。
【0042】
実施の形態2
図5は実施の形態2のボディECU10の構成の一例を示すブロック図である。実施の形態1との違いは、揮発性メモリであるRAM12に加えて、不揮発性メモリであるEPROM(Erasable Programmable ROM)16を備え、書込部15は、他のECUのデータ(バックアップデータ)をRAM12、EPROM16それぞれに書き込むことができる点である。他の構成は実施の形態1と同様であるので同一符号を付して説明は省略する。
【0043】
実施の形態2では、判定部14でイグニッションスイッチが切られたと判定した場合、書込部15は、エンジンECU20のRAM22に記憶されるデータをRAM12に一旦書込み、データがRAM12に書き込まれた場合、そのデータをさらにEPROM16に書き込む。書き込むべきデータをEPROM16に比べて書込み速度が速いRAM12に一旦書き込んでおき、その後不揮発性メモリであるEPROM16に書き込むことにより、イグニッションスイッチが切られた直後の煩雑な動作が存在する場合であっても、確実にデータをバックアップすることができる。なお、EPROM16に代えてEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリを用いることもできる。
【0044】
実施の形態3
図6は実施の形態3の車両制御システムの構成の一例を示す模式図である。実施の形態1との違いは、ボディECU10にバックアップ電源5を接続している点である。通常、+B電線1には常時バッテリからの電力が供給されている。しかし、車両の修理や定期点検などで整備工場へ搬送した場合、修理や点検作業時に+B電線1もバッテリから切り離され、ボディECU10への電力が遮断される場合もある。そのような場合を想定して、ボディECU10に対してのみ必要な電力を供給することができるバックアップ電源を備えることにより、ボディECU10のRAM12に記憶したデータが消失することを防止できる。また、従来のバックアップ用電源とは異なり、バックアップ電源5の使用頻度は、少ないのでバックアップ電源5の寿命を長くすることができる。
【0045】
なお、+B電線1への給電が遮断された際にバックアップ電源5を起動する仕組みは、簡単なスイッチ回路で実現することができるので、コストアップとなることもない。
【0046】
以上説明したように、本発明によれば、各ECUにEPROMが備えられていない場合や、ハードディスクなどを装備していない場合でも、バックアップのための電源が不要になり、イグニッションスイッチが切られた状態における暗電流を低減することができる。
【0047】
上述の実施の形態では、判定部14をボディECU10に備える構成であったが、これに限定されるものではなく、エンジンECU20などの他のECUに備える構成でもよい。この場合には、例えば、エンジンECU20の場合であれば、エンジンECU20は、判定部でイグニッションスイッチが切られたと判定した場合、CANバス3を通じてRAM22に記憶されるデータをボディECU10へ送信(転送)する。そして、ボディECU10は、受信したデータを書込部15でRAM12に書き込む。エンジンECU20で必要なデータをボディECU10のRAM12に記憶することにより、エンジンECU20に不揮発性メモリを設ける必要がなく、また、エンジンECU20にバックアップ用の電源を設ける必要がないので、消費電力を抑えつつEPROMを備えないECUの情報を記憶することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 +B電線
2 IG電線
3 CANバス
5 バックアップ電源
10 ボディECU(第1ECU)
11 CPU
12 RAM(メモリ)
13 インタフェース部(送信部、受信部)
14 判定部(入切判定部、情報判定部)
15 書込部
20 エンジンECU(第2ECU)
21 CPU
22 RAM(揮発性メモリ)
23 インタフェース部(送信部、受信部)
30 エアコンECU(第2ECU)
40 インパネECU(第2ECU)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イグニッションスイッチの入切にかかわらず電力が供給される第1ECUと、前記イグニッションスイッチの入切により電力が供給又は遮断される第2ECUとを備え、各ECUは通信線で接続された車両制御システムにおいて、
前記第2ECUは、
任意の情報を記憶するための揮発性メモリを備え、
前記第1ECUは、
任意の情報を記憶するためのメモリと、
前記イグニッションスイッチの入切を判定する入切判定部と、
該入切判定部でイグニッションスイッチが切られたと判定した場合、前記第2ECUの揮発性メモリに記憶される情報を前記メモリに書き込む書込部と
を備えることを特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
前記第2ECUは、
前記入切判定部でイグニッションスイッチが切られたと判定した場合、前記通信線を通じて前記揮発性メモリに記憶される情報を前記第1ECUへ送信する送信部を備え、
前記第1ECUは、
前記情報を受信する受信部を備え、
前記書込部は、
前記受信部で受信した情報を前記メモリに書き込むように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記第1ECUは、
前記入切判定部でイグニッションスイッチが切られたと判定した場合、前記第2ECUの揮発性メモリに記憶される情報の有無を判定する情報判定部と、
該情報判定部で情報があると判定した場合、該情報の転送要求を前記第2ECUへ送信する送信部と
を備え、
前記第2ECUは、
前記転送要求を受信する受信部を備え、
前記第2ECUの前記送信部は、
前記受信部で転送要求を受信した場合、前記揮発性メモリに記憶される情報を前記第1ECUへ送信するように構成してあることを特徴とする請求項2に記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記第1ECUは、
任意の情報を記憶するための揮発性メモリ及び不揮発性メモリを備え、
前記書込部は、
前記入切判定部でイグニッションスイッチが切られたと判定した場合、前記第2ECUの揮発性メモリに記憶される情報を前記揮発性メモリに一旦書込み、前記情報が前記揮発性メモリに書き込まれた場合、該情報をさらに前記不揮発性メモリに書き込むように構成してあることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項5】
前記第1ECUは、ボディ系ECUであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項6】
前記第2ECUは、
前記イグニッションスイッチの入切を判定する入切判定部と、
該判定部でイグニッションスイッチが切られたと判定した場合、前記通信線を通じて前記揮発性メモリに記憶される情報を前記第1ECUへ送信する送信部と
を備え、
前記第1ECUは、
前記情報を受信する受信部を備え、
前記書込部は、
前記受信部で受信した情報を前記メモリに書き込むように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の車両制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−228532(P2010−228532A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77074(P2009−77074)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)