説明

車両制御装置、車両制御方法及びコンピュータプログラム

【課題】道路に規定された規制内容を車両に遵守させる為の遵守支援を適切な状況で実施することを可能とした車両制御装置、車両制御方法及びコンピュータプログラムに関する。
【解決手段】車両が道路に規定された規制内容を遵守したか否か判定し、車両が規制内容を遵守していないと判定された場合に、遵守支援の内容や遵守支援の実施を取り止める為の遵守支援解除条件を設定するとともに履歴情報として交通違反履歴テーブル32に記憶し、交通違反履歴テーブル32に記憶された履歴情報に基づいて車両に対して遵守支援を実施するとともに(S14)、車両が遵守支援解除条件を満たした場合には履歴情報として記憶された遵守支援の内容と遵守支援解除条件を削除し、遵守支援の実施を取り止める(S23、S24)ように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に規定された規制内容に対する車両の遵守態様に基づいて車両制御を行う車両制御装置、車両制御方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ナビゲーション装置の地図データから得られる道路情報や、GPS等によって特定される現在位置等の車両の走行に係る各種情報を取得し、運転手に対する報知や、運転の補助、さらには運転への介入を行うことで車両事故を防止する車両制御装置について提案されている。このような車両制御装置の一つとして、道路に規定された規制内容を車両に遵守させる為の遵守支援を実施するものがあった。実施される遵守支援としては、例えば、車両の走行性能を低下させることや、運転者に警告を行うこと等がある。
【0003】
ここで、上記遵守支援は、どのような状況で実施するかが重要となる。即ち、車両が僅かでも道路に規定された規制内容を遵守しなかったと判定された場合に、必ず遵守支援を実施することとすると、運転者の車両運転を著しく妨げる結果となる。例えば、特開2007−287083号公報には、車両の走行する道路に規定された一時停止の規制内容を、車両が遵守したか否かを判定し、遵守しなかった場合にはカウント値を+1し、遵守した場合にはカウント値を−1するとともに、カウント値が所定の閾値以上の状態では、車両が一時停止線に接近した状態で警告を行う技術について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−287083号公報(第9頁〜第10頁、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1に記載の技術では、カウント値と閾値との大小関係のみに基づいて遵守支援を行うか否かを決定している。しかしながら、カウント値と閾値との関係のみに基づく判断では、遵守支援を適切な状況で実施することができなかった。例えば、閾値を比較的大きい数値、例えば“5”に設定すると、4回目まで連続して車両が道路に規定された規制内容を遵守しなかった場合でも、遵守支援が行われないこととなる。また、5回まで連続して車両が道路に規定された規制内容を遵守しなかった場合でも、その後に1回でも規制内容を遵守すれば、以降は遵守支援が行われないこととなり、運転者に対して規制内容を遵守させる為の適切な支援の解除条件か不明である。
【0006】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、道路に規定された規制内容を車両に遵守させる為の遵守支援を適切な状況で実施することができるので、遵守支援の実施によって運転者の車両運転を著しく妨げることがなく、また、規制内容を遵守する運転へと導くことを可能とした車両制御装置、車両制御方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る車両制御装置(1)は、車両の走行環境及び走行態様を取得する走行状態取得手段(13)と、前記車両の走行する道路に規定された規制内容を取得する規制内容取得手段(13)と、前記走行状態取得手段により取得された前記走行態様と前記規制内容取得手段により取得された前記規制内容とに基づいて、前記車両が前記道路に規定された規制内容を遵守したか否か判定する規制判定手段(13)と、前記規制判定手段によって前記車両が前記規制内容を遵守していないと判定された場合に、前記規制内容に基づいて前記車両に前記規制内容を遵守させる為に実施する遵守支援の内容を設定する支援内容設定手段(13)と、前記支援内容設定手段により前記遵守支援の内容が設定された場合に、前記遵守支援の実施を取り止める為の遵守支援解除条件を設定する条件設定手段(13)と、前記条件設定手段により前記遵守支援解除条件が設定された場合に、前記走行環境と前記遵守支援の内容と前記遵守支援解除条件とを対応づけて履歴情報として記憶する履歴情報記憶手段(13)と、前記走行状態取得手段により前記車両の新たな走行環境及び走行態様を取得した場合に、前記新たな走行環境が前記履歴情報に記憶されている前記走行環境と一致し、且つ、前記履歴情報に記憶されている該走行環境に対応する前記遵守支援解除条件を満たしていない場合、前記履歴情報に記憶されている該走行環境に対応する前記遵守支援の内容に基づいて遵守支援を実施する遵守支援実施手段(13)と、前記新たな走行環境が前記履歴情報に記憶されている前記走行環境と一致し、且つ、前記履歴情報に記憶されている該走行環境に対応する前記遵守支援解除条件を満たしている場合、前記履歴情報に記憶されている該走行環境と該走行環境に対応する前記遵守支援の内容及び前記遵守支援解除条件とを削除する遵守支援解除手段(13)と、を有することを特徴とする。
尚、「遵守支援」としては、例えば、スロットル性能の低下、上位変速段使用不可、速度リミッタ低下、エンジン回転数の制限、音声警告等がある。
【0008】
また、請求項2に係る車両制御装置(1)は、請求項1に記載の車両制御装置において、前記遵守支援実施手段(13)により前記遵守支援が既に実施されている状態で、前記走行状態取得手段(13)により前記車両の新たな走行態様を取得した場合に、前記取得した新たな走行態様が前記車両の走行する道路に規定された規制内容を遵守していないと判定された場合には、前記履歴情報に記憶されている前記遵守支援の内容を変更する遵守支援内容変更手段(13)を有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る車両制御装置(1)は、請求項1に記載の車両制御装置において、前記遵守支援実施手段(13)により前記遵守支援が既に実施されている状態で、前記走行状態取得手段(13)により前記車両の新たな走行態様を取得した場合に、前記取得した新たな走行態様が前記車両の走行する道路に規定された規制内容を遵守していないと判定された場合には、前記履歴情報に記憶されている前記遵守支援解除条件の内容を変更する遵守支援解除条件変更手段(13)を有することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る車両制御装置(1)は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の車両制御装置において、前記遵守支援解除条件は、前記走行環境に対応づけて記憶された前記遵守支援の内容に関連する規制内容を所定回数遵守する条件であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る車両制御方法は、車両の走行環境及び走行態様を取得する走行状態取得ステップと、前記車両の走行する道路に規定された規制内容を取得する規制内容取得ステップと、前記走行状態取得ステップにより取得された前記走行態様と前記規制内容取得ステップにより取得された前記規制内容とに基づいて、前記車両が前記道路に規定された規制内容を遵守したか否か判定する規制判定ステップと、前記規制判定ステップによって前記車両が前記規制内容を遵守していないと判定された場合に、前記規制内容に基づいて前記車両に前記規制内容を遵守させる為に実施する遵守支援の内容を設定する支援内容設定ステップと、前記支援内容設定ステップにより前記遵守支援の内容が設定された場合に、前記遵守支援の実施を取り止める為の遵守支援解除条件を設定する条件設定ステップと、前記条件設定ステップにより前記遵守支援解除条件が設定された場合に、前記走行環境と前記遵守支援の内容と前記遵守支援解除条件とを対応づけて履歴情報として記憶する履歴情報記憶ステップと、前記走行状態取得ステップにより前記車両の新たな走行環境及び走行態様を取得した場合に、前記新たな走行環境が前記履歴情報に記憶されている前記走行環境と一致し、且つ、前記履歴情報に記憶されている該走行環境に対応する前記遵守支援解除条件を満たしていない場合、前記履歴情報に記憶されている該走行環境に対応する前記遵守支援の内容に基づいて遵守支援を実施する遵守支援実施ステップと、前記新たな走行環境が前記履歴情報に記憶されている前記走行環境と一致し、且つ、前記履歴情報に記憶されている該走行環境に対応する前記遵守支援解除条件を満たしている場合、前記履歴情報に記憶されている該走行環境と該走行環境に対応する前記遵守支援の内容及び前記遵守支援解除条件とを削除する遵守支援解除ステップと、を有することを特徴とする。
【0012】
更に、請求項6に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに搭載され、車両の走行環境及び走行態様を取得する走行状態取得機能と、前記車両の走行する道路に規定された規制内容を取得する規制内容取得機能と、前記走行状態取得機能により取得された前記走行態様と前記規制内容取得機能により取得された前記規制内容とに基づいて、前記車両が前記道路に規定された規制内容を遵守したか否か判定する規制判定機能と、前記規制判定機能によって前記車両が前記規制内容を遵守していないと判定された場合に、前記規制内容に基づいて前記車両に前記規制内容を遵守させる為に実施する遵守支援の内容を設定する支援内容設定機能と、前記支援内容設定機能により前記遵守支援の内容が設定された場合に、前記遵守支援の実施を取り止める為の遵守支援解除条件を設定する条件設定機能と、前記条件設定機能により前記遵守支援解除条件が設定された場合に、前記走行環境と前記遵守支援の内容と前記遵守支援解除条件とを対応づけて履歴情報として記憶媒体(12)に記憶する履歴情報記憶機能と、前記走行状態取得機能により前記車両の新たな走行環境及び走行態様を取得した場合に、前記新たな走行環境が前記履歴情報に記憶されている前記走行環境と一致し、且つ、前記履歴情報に記憶されている該走行環境に対応する前記遵守支援解除条件を満たしていない場合、前記履歴情報に記憶されている該走行環境に対応する前記遵守支援の内容に基づいて遵守支援を実施する遵守支援実施機能と、前記新たな走行環境が前記履歴情報に記憶されている前記走行環境と一致し、且つ、前記履歴情報に記憶されている該走行環境に対応する前記遵守支援解除条件を満たしている場合、前記履歴情報に記憶されている該走行環境と該走行環境に対応する前記遵守支援の内容及び前記遵守支援解除条件とを削除する遵守支援解除機能と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
前記構成を有する請求項1に記載の車両制御装置によれば、履歴情報として記憶された遵守支援の内容と遵守支援解除条件に基づいて、車両に対する遵守支援の実施や実施の取り止めを行うので、道路に規定された規制内容を車両に遵守させる為の遵守支援を適切な状況で実施することができる。それにより、遵守支援の実施によって運転者の車両運転を著しく妨げることがなく、また、規制内容を遵守する運転へと導くことが可能となる。
【0014】
また、請求項2に記載の車両制御装置によれば、車両が繰り返し規制内容を遵守しなかった場合には、例えば、遵守支援の内容をより影響の高い内容に変更することができるので、運転者に規制内容を遵守することを、より高いレベルで意識させることが可能となり、規制内容を遵守する運転へと導くことが可能となる。
【0015】
また、請求項3に記載の車両制御装置によれば、車両が繰り返し規制内容を遵守しなかった場合には、例えば、遵守支援解除条件の内容をより厳しい内容に変更することができるので、運転者に規制内容を遵守することを、より長時間意識させることが可能となり、規制内容を遵守する運転へと導くことが可能となる。
【0016】
また、請求項4に記載の車両制御装置によれば、遵守支援解除条件が走行環境に対応づけて記憶された遵守支援の内容に関連する規制内容を所定回数遵守する条件であるので、遵守支援によって運転者を規制内容を遵守する運転へと導いた後は、遵守支援を適切に取り止めることが可能となる。従って、遵守支援の実施によって運転者の車両運転を著しく妨げることがない。
【0017】
また、請求項5に記載の車両制御方法によれば、履歴情報として記憶された遵守支援の内容と遵守支援解除条件に基づいて、車両に対する遵守支援の実施や実施の取り止めを行うので、道路に規定された規制内容を車両に遵守させる為の遵守支援を適切な状況で実施することができる。それにより、遵守支援の実施によって運転者の車両運転を著しく妨げることがなく、また、規制内容を遵守する運転へと導くことが可能となる。
【0018】
更に、請求項6に記載のコンピュータプログラムによれば、履歴情報として記憶された遵守支援の内容と遵守支援解除条件に基づいて、車両に対する遵守支援の実施や実施の取り止めを行わせるので、道路に規定された規制内容を車両に遵守させる為の遵守支援を適切な状況で実施させることができる。それにより、遵守支援の実施によって運転者の車両運転を著しく妨げることがなく、また、規制内容を遵守する運転へと導くことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る車両制御装置の構成図である。
【図2】交通違反履歴テーブルの一例を示した図である。
【図3】本実施形態に係る履歴情報記憶処理プログラムのフローチャートである。
【図4】規則内容を遵守しなかった際の交通違反履歴テーブルの更新例を示した図である。
【図5】本実施形態に係る遵守支援実施処理プログラムのフローチャートである。
【図6】規則内容を繰り返し遵守しなかった際の交通違反履歴テーブルの更新例を示した図である。
【図7】過去に遵守しなかった規則内容を遵守した際の交通違反履歴テーブルの更新例を示した図である。
【図8】遵守支援解除条件を満たした際の交通違反履歴テーブルの更新例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る車両制御装置について具体化した実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係る車両制御装置1の概略構成について図1を用いて説明する。図1は本実施形態に係る車両制御装置1の構成図である。
図1に示すように、本実施形態に係る車両制御装置1は、車両に対して設置されたナビゲーション装置3と、ナビゲーション装置3に接続された各種装置及びECUから構成される。
【0021】
先ず、本実施形態に係るナビゲーション装置3の概略構成について図1を用いて説明する。
図1に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置3は、車両の現在位置を検出する現在位置検出部11と、各種のデータが記録されたデータ記録部12と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU13と、ユーザからの操作を受け付ける操作部14と、ユーザに対して地図や目的地までの案内経路を表示する液晶ディスプレイ15と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ16と、プログラムを記憶した記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ17と、交通情報センタ等の情報センタとの間で通信を行う通信モジュール18と、CANインターフェース19とから構成されている。
【0022】
以下に、ナビゲーション装置3を構成する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部11は、GPS21、車速センサ22、ステアリングセンサ23、ジャイロセンサ24、高度計(図示せず)等からなり、現在の車両の位置、方位、車両の走行速度等を検出することが可能となっている。ここで、特に車速センサ22は、車両の移動距離や車速を検出する為のセンサであり、車両の車輪の回転に応じてパルスを発生させ、パルス信号をナビゲーションECU13に出力する。そして、ナビゲーションECU13は発生するパルスを計数することにより車輪の回転速度や移動距離を算出する。尚、上記4種類のセンサをナビゲーション装置3が全て備える必要はなく、これらの内の1又は複数種類のセンサのみをナビゲーション装置3が備える構成としても良い。
【0023】
また、データ記録部12は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB31や交通違反履歴テーブル32や所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。
【0024】
ここで、地図情報DB31は、経路案内、交通情報案内及び地図表示に必要な各種地図データが記録されている。
また、地図データは、具体的には、道路(リンク)形状に関するリンクデータ、ノード点に関するノードデータ、道路に規定された規制内容に関する規制データ、施設等の地点に関する情報であるPOIデータ、各交差点に関する交差点データ、経路を探索するための探索データ、地点を検索するための検索データ、地図、道路、交通情報等の画像を液晶ディスプレイ15に描画するための画像描画データ等から構成されている。ここで、規制データとして記憶される規制内容としては、例えば、道路に規定された制限速度、一時停止、信号機、Uターン禁止、追越し禁止、駐車禁止等がある。更に、規制データは規制内容が規定された道路や地点に関連付けて記憶される。
尚、地図情報DB31は、地図配信センタ等から配信される更新データや記憶媒体(例えば、DVDやメモリーカード)を介して提供される更新データに基づいて更新される。
【0025】
また、交通違反履歴テーブル32は、車両が道路に規定された規制内容を遵守していないと判定された場合において、“車両の走行環境”と“遵守支援の内容”と“遵守支援解除条件”とが対応づけて履歴情報として記憶されるテーブルである。ここで、“車両の走行環境”とは、例えば、車両の走行する道路の道路種別、道路形状、リンク番号、車両の位置座標、時間帯、前方車両の有無、一時停止、信号機等がある。また、“遵守支援の内容”とは、車両に対して規制内容を遵守させる為に実施する遵守支援の内容であり、例えば、スロットル性能の低下、上位変速段使用不可、速度リミッタ低下、エンジン回転数の制限、音声警告等がある。また、“遵守支援解除条件”とは、遵守支援の実施を取り止める為の条件であり、より詳細には、遵守支援の内容に関連する規制内容(速度制限、一時停止、信号等)を所定回数遵守する条件である。例えば、速度制限を5回遵守して走行する条件、一時停止を10回遵守する条件、信号機の灯火指示を20回遵守する条件等である。ここで、図2は交通違反履歴テーブル32の一例を示した図である。
【0026】
図2に示す例では、交通違反履歴テーブル32として4つの履歴情報が記憶されている。以下では、4つの履歴情報の内、最も上段に記憶されている履歴情報を例に挙げて説明する。
【0027】
最も上段に記憶されている履歴情報は、国道1号線を形成するリンクAを走行中の車両が、その道路に規定された規制内容である60km/hの速度制限を遵守せずに走行した場合に設定され、記憶される履歴情報である。
【0028】
先ず履歴情報では、“車両の走行環境”として国道1号線のリンクA(具体的にはリンク番号)が記憶される。
【0029】
また、“遵守支援の内容”としてスロットル特性低下が設定され、記憶される。尚、“遵守支援の内容”は車両が遵守しなかったと判定された規制内容(即ち、速度制限)に対応する内容が設定される。更に、“遵守支援の内容”にはレベル(例えばLv1〜Lv5)が設定される場合があり、レベルは遵守支援の程度(例えば、スロットル特性低下であれば、レベルが高いほどスロットルの開度上限を低くする)を特定する。そして、車両が最初に規制内容を遵守しなかった場合には最もレベルの低い(支援の影響が小さい)Lv1の遵守支援が設定される。また、後述のように車両が同じ走行環境で繰り返し規制内容を遵守しなかった場合には、徐々にレベルの高い(支援の影響が大きい)遵守支援に変更される。尚、車両の走行態様に基づいて遵守支援のレベルを設定することも可能である。例えば、速度制限(例えば60km/h)を大きく超えた速度で(例えば100km/h)走行した場合には高いレベルの遵守支援の内容を設定し、速度制限(例えば100km/h)を僅かに超えた速度(例えば80km/h)で走行した場合には低いレベルの遵守支援の内容を設定するようにしても良い。
【0030】
更に、“遵守支援解除条件”としては、リンクA区間の速度規制を遵守して5回走行することが設定され、記憶される。尚、“遵守支援解除条件”は車両が遵守しなかったと判定された規制内容(即ち、速度制限)に対応する内容が設定される。ここで、後述のように車両が同じ走行環境で繰り返し規制内容を遵守しなかった場合には、遵守支援解除条件が厳しい内容に変更される(例えば、遵守する必要のある回数が、多い回数(5回→10回)へと変更される)。また、車両の走行態様に基づいて遵守する回数を設定することも可能である。例えば、速度制限を大きく超えた速度で走行した場合には多い回数を設定し、速度制限を僅かに超えた速度で走行した場合には少ない回数の遵守支援の内容を設定するようにしても良い。更に、遵守する内容についても遵守する回数と同様に、車両が同じ走行環境で繰り返し規制内容を遵守しなかった場合には、徐々に厳しい内容に設定しても良い。更に、車両の走行態様に基づいて遵守する内容を設定することも可能である。
【0031】
また、“条件達成度”は、車両が現在、遵守支援解除条件をどの程度達成しているかを示す情報である。“条件達成度”が“遵守支援解除条件”と同一になった場合に、ナビゲーションECU13は、車両が遵守支援解除条件を達成したと判定し、現在実施されている遵守支援を取り止める。
【0032】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)13は、目的地が選択された場合に現在位置から目的地までの案内経路を設定する案内経路設定処理、車両が道路に規定された規制内容を遵守したか否か判定する規制判定処理、車両が規制内容を遵守していないと判定された場合に、遵守支援の内容や遵守支援の実施を取り止める為の遵守支援解除条件を設定するとともに履歴情報として記憶する履歴情報記憶処理、記憶された履歴情報に基づいて車両に対して遵守支援を実施する遵守支援実施処理、車両が遵守支援解除条件を満たした場合に履歴情報として記憶された遵守支援の内容と遵守支援解除条件を削除する遵守支援解除処理等のナビゲーション装置3の全体の制御を行う電子制御ユニットである。そして、演算装置及び制御装置としてのCPU41、並びにCPU41が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM42、制御用のプログラムのほか、後述の履歴情報記憶処理プログラム(図3参照)や遵守支援実施処理プログラム(図5参照)等が記録されたROM43、ROM43から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ44等の内部記憶装置を備えている。
【0033】
また、操作部14は、走行開始地点としての出発地及び走行終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)から構成される。そして、ナビゲーションECU13は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、液晶ディスプレイ15の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。
【0034】
また、液晶ディスプレイ15には、道路を含む地図画像、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、出発地から目的地までの案内経路、案内経路に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。また、交通違反履歴テーブル32に遵守支援の内容として警告が設定されている場合には、規制内容や車両の現在の走行態様に対する警告画面を出力することにも用いられる。また、遵守支援が開始された際や取り止めた際の案内にも用いられる。
【0035】
また、スピーカ16は、ナビゲーションECU13からの指示に基づいて案内経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。また、交通違反履歴テーブル32に遵守支援の内容として警告が設定されている場合には、規制内容や車両の現在の走行態様に対する警告音声を出力することにも用いられる。また、遵守支援が開始された際や取り止めた際の案内にも用いられる。
【0036】
また、DVDドライブ17は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて地図情報DB31の更新等が行われる。
【0037】
また、通信モジュール18は、交通情報センタ、例えば、VICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタやプローブセンタ等から送信された渋滞情報、規制情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報を受信する為の通信装置であり、例えば携帯電話機やDCMが該当する。
更に、本実施形態では通信モジュール18を介して、情報センタ等から道路上に設置された信号機の点灯態様に関する情報についても受信する。
【0038】
また、CAN(コントローラエリアネットワーク)インターフェース19は、車両内に設置された各種装置及びECU間で多重通信を行う車載ネットワーク規格であるCANに対して、データの入出力を行うインターフェースである。そして、ナビゲーションECU13は、CANを介して、車両を制御する各種装置やECUやセンサ等(例えば、エンジン制御ECU51、フロントカメラ52、電子制御スロットル53、変速機制御ECU54、ブレーキ制御ECU55など)と相互通信可能に接続される。更に、ナビゲーションECU13は、CANを介して各種装置やECUに対して指示データを送信し、後述のように遵守支援を実施する。また、ナビゲーションECU13は、CANを介して各種装置やECUから取得したデータに加えて、現在位置検出部11の検出結果や通信モジュール18で取得したデータに基づいて、後述のように車両の走行する走行環境、走行態様、道路に規定された規制内容等を取得する。
【0039】
続いて、前記構成を有する車両制御装置1においてナビゲーションECU13が実行する履歴情報記憶処理プログラムについて図3に基づき説明する。図3は本実施形態に係る履歴情報記憶処理プログラムのフローチャートである。ここで、履歴情報記憶処理プログラムは、車両のイグニションがONされた後に所定間隔(例えば、200ms毎、所定距離走行毎、ノード通過毎など)で繰り返し実行され、車両が道路に規制された規制内容を遵守しなかった場合に、交通違反履歴テーブル32に履歴情報を記憶するプログラムである。尚、以下の図3及び図5にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置3が備えているRAM42やROM43に記憶されており、CPU41により実行される。
【0040】
先ず、履歴情報記憶処理プログラムでは、ステップ(以下、Sと略記する)1においてCPU41は、車両の走行環境及び走行態様を取得する。ここで、前記S1で取得される車両の走行環境としては、車両の現在走行する道路の道路種別、道路形状、リンク番号、車両の現在位置座標、時間帯、前方車両の有無等がある。そして、車両の走行環境については、GPS21やジャイロセンサ24の検出結果と地図情報DB31に記憶された地図情報に基づいて特定される。一方、前記S1で取得される車両の走行態様としては、車両の車速、スロットル開度、ブレーキの踏み量、シフト位置、ステアリング角度等がある。そして、車両の走行態様については、車速センサ22やステアリングセンサ23の検出結果と、CANを介してエンジン制御ECU51、電子制御スロットル53、変速機制御ECU54、ブレーキ制御ECU55等から取得した情報に基づいて特定される。
【0041】
次に、S2においてCPU41は、車両の走行する道路に規定された規制内容を取得する。尚、特定の規制内容(例えば、信号機、一時停止等)については規制内容が規定されている位置座標の情報についても取得する。尚、車両の走行する道路以外にも、車両の周辺にある道路や、車両の進行方向前方にある道路に規定された規制内容を取得しても良い。前記S1で取得される規制内容は、例えば、道路に規定された制限速度、一時停止、信号機、Uターン禁止、追越し禁止、駐車禁止等があり、地図情報DB31から該当するデータを読み出すこと又は通信モジュール18で通信を行うことにより取得する。特に信号機については、点灯状態(青、黄、赤のいずれか)についてもフロントカメラ52や通信モジュール18を介して取得する。
【0042】
続いて、S3においてCPU41は、前記S1で取得された車両の走行態様と前記S2で取得された規制内容とに基づいて、車両が走行する道路に規定された規制内容を遵守したか否か判定する。例えば、車両が制限速度60km/hに規定されている道路を走行している状況において、車両の現在車速が80km/hである場合には、規制内容を遵守していないと判定する。また、車両が走行する道路のX地点に信号機が設置され、且つその信号機が黄又は赤で点灯している状況において、車両がX地点で停止しなかった場合には、規制内容を遵守していないと判定する。一方、車両が走行する道路のY地点に一時停止が規定されている状況において、車両がY地点で停止した場合には、規制内容を遵守したと判定する。
【0043】
そして、前記S3において、車両が走行する道路に規定された規制内容を遵守したと判定された場合(S3:YES)には、当該履歴情報記憶処理プログラムを終了する。一方、車両が走行する道路に規定された規制内容を遵守していないと判定された場合(S3:NO)には、S4へと移行する。
【0044】
S4においてCPU41は、先ず、前記S2で取得した規制内容に基づいて車両に規制内容を遵守させる為に実施する遵守支援の内容を設定する。次に、前記S1で取得した車両の走行態様に基づいて遵守支援の実施を取り止める為の遵守支援解除条件を設定する。尚、設定される遵守支援の内容や遵守支援解除条件は、規制内容毎に予め対応づけてRAM42等に記憶しておき、前記S4では、前記S3で車両が遵守していないと判定された規制内容に対応する遵守支援の内容や遵守支援解除条件をRAM42から読み出し、設定することが好ましい。例えば、規制内容の内、制限速度には、遵守支援の内容として“スロットル特性低下”が対応づけられ、遵守支援解除条件として“所定区間を速度制限を遵守して所定回数走行”を対応づける。また、信号には、遵守支援の内容として“上位変速段使用不可”が対応づけられ、遵守支援解除条件として“所定回数の信号遵守”を対応づける。また、遵守支援の内容にはレベル(例えばLv1〜Lv5)が設定される場合があり、車両が最初に規制内容を遵守しなかった場合には最もレベルの低い(支援の影響が小さい)Lv1の遵守支援が設定される。そして、後述のように車両が同じ走行環境で繰り返し規制内容を遵守しなかった場合には、徐々にレベルの高い(支援の影響が大きい)遵守支援に変更される。また、上述したように遵守支援の内容や遵守支援解除条件を、車両の走行態様に基づいて設定することも可能である。
【0045】
更に、前記S4でCPU41は、前記S1で取得した走行環境と、設定された遵守支援の内容と遵守支援解除条件とをそれぞれ対応づけて履歴情報として交通違反履歴テーブル32に記憶する(図2参照)。そして、ナビゲーションECU13は、後述のように交通違反履歴テーブル32に記憶された履歴情報に基づいて、車両に対して各種の遵守支援を実施する。尚、交通違反履歴テーブル32の詳細については既に説明したので、説明を省略する。
【0046】
ここで、履歴情報は前記S3で車両が走行する道路に規定された規制内容を遵守していないと判定される度に作成され、交通違反履歴テーブル32に累積的に記憶される(S4)。例えば、図4は車両が国道1号線を走行中において、リンクAに60km/hの速度制限が規定されているにもかかわらず、リンクAを80km/hで走行した場合の交通違反履歴テーブル32の更新例を示した図である。
【0047】
図4に示すように、車両がリンクA区間の速度制限の規制内容を遵守しなかった場合には、交通違反履歴テーブル32に、遵守しなかった規制内容や車両の走行環境及び走行態様に応じて新たな履歴情報が記憶される。その結果、車両はその後の走行において、遵守支援解除条件であるリンクA区間の速度制限を5回遵守する条件を満たすまで、スロットル特性が低下することとなる。
尚、後述のように、車両が遵守支援解除条件を満たした場合には、対応する履歴情報が交通違反履歴テーブル32から削除され、スロットル特性も復帰することとなる。
【0048】
次に、車両制御装置1においてナビゲーションECU13が実行する遵守支援実施処理プログラムについて図5に基づき説明する。図5は本実施形態に係る遵守支援実施処理プログラムのフローチャートである。ここで、遵守支援実施処理プログラムは、車両のイグニションがONされた後に所定間隔(例えば、200ms毎、所定距離走行毎、ノード通過毎など)で繰り返し実行され、交通違反履歴テーブル32に記憶された履歴情報に基づいて、車両に規制内容を遵守させる為の遵守支援の実施及び遵守支援の実施の取り止めを決定するプログラムである。
【0049】
先ず、遵守支援実施処理プログラムでは、S11においてCPU41は、交通違反履歴テーブル32(図2)に記憶されている履歴情報を読み出し、直前に実行された履歴情報記憶処理プログラム(図3)の前記S1で新たに取得した現在の車両の走行環境と、交通違反履歴テーブル32に履歴情報として記憶されている走行環境を比較する。そして、現在の車両の走行環境と交通違反履歴テーブル32に履歴情報として記憶されているいずれかの走行環境とが一致するか否かを判定する。
【0050】
そして、現在の車両の走行環境と交通違反履歴テーブル32に履歴情報として記憶されているいずれかの走行環境とが一致すると判定された場合(S11:YES)には、S12へと移行する。それに対して、現在の車両の走行環境が交通違反履歴テーブル32に履歴情報として記憶されているいずれかの走行環境とも一致しないと判定された場合(S11:NO)には、当該遵守支援実施処理プログラムを終了する。
【0051】
S12においてCPU41は、過去に車両が規制内容を遵守しなかった道路を走行中であること、或いは現在、車両が道路に規定された規制内容を遵守していないことを注意する文字や音声を液晶ディスプレイ15やスピーカ16を用いて出力する。具体的には、「過去に交通ルールを違反した場所なので注意して下さい。」や「交通ルールを遵守して下さい」等がある。尚、車両の走行環境や道路の規制内容に基づいて注意内容を変更しても良い。
【0052】
続いて、S13においてCPU41は、交通違反履歴テーブル32を参照し、前記S12で一致すると判定された走行環境に対応して記憶された遵守支援解除条件を満たしたか否かを判定する。ここで、図2を用いて既に説明したように、遵守支援解除条件は、遵守支援の実施を取り止める為の条件であり、より詳細には、遵守支援の内容に関連する規制内容(速度制限、一時停止、信号等)を所定回数遵守する条件である。そして、車両が現在、遵守支援解除条件をどの程度達成しているかについては、後述のS21により更新される条件達成度に記録される。即ち、前記S13においてCPU41は、交通違反履歴テーブル32を参照し、前記S11で一致すると判定された走行環境に対応して記憶される条件達成度が同じく対応して記憶される遵守支援解除条件と一致したか否かを判定することにより、遵守支援解除条件を満たしたか否かを判定する。
【0053】
そして、前記S13において車両が走行環境に対応して記憶された遵守支援解除条件を満たしたと判定された場合(S13:YES)、即ち、走行環境に対応して記憶される条件達成度が同じく対応して記憶される遵守支援解除条件と一致したと判定された場合には、S23へと移行する。一方、前記S13において車両が走行環境に対応して記憶された遵守支援解除条件を満たしていないと判定された場合(S13:NO)、即ち、走行環境に対応して記憶される条件達成度が同じく対応して記憶される遵守支援解除条件と一致していないと判定された場合には、S14へと移行する。
【0054】
S14においてCPU41は、交通違反履歴テーブル32を参照し、前記S11で一致すると判定された走行環境に対応して記憶された遵守支援の内容を実施する。例えば、遵守支援の内容としてスロットル特定低下が記憶されている場合には、電子制御スロットル53に指示データを送信し、スロットル開度の上限を低下させるように制御する。また、遵守支援の内容として上位変速段使用不可が記憶されている場合には、変速機制御ECU54に指示データを送信し、上位変速段にシフト変更できないように制御する。また、遵守支援の内容として上位変速段使用不可が記憶されている場合には、変速機制御ECU54に指示データを送信し、上位変速段にシフト変更できないように制御する。また、遵守支援の内容として警告が記憶されている場合には、液晶ディスプレイ15やスピーカ16を用いて警告を出力する。
更に、遵守支援の内容にレベルが設定されている場合には、設定されたレベルに基づいて遵守支援の制御を行う。例えば、スロットル特定低下では、レベルが高くなるほど、より低い値にスロットル開度の上限を設定する。また、警告では、レベルが高くなるほど、より長い時間により強調した内容で警告を行う。
尚、前記S14で実施された遵守支援は、その後に、実施されている遵守支援に対応する遵守支援解除条件を満たしたと判定されるまで継続して実施される。
【0055】
次に、S15においてCPU41は、前記S14で遵守支援を実施したことを液晶ディスプレイ15やスピーカ16を用いて案内する。尚、遵守支援を実施したことを直接案内しても良いが、実施された遵守支援に対応する表示部の表示を変更することにより案内することが望ましい。例えば、スロットル特定低下を実施する場合には、タコメータのレッドゾーンを低い回転数まで広げたり、高い回転数側の表示を消去する。また、上位変速段使用不可を実施する場合には、インストルメントパネルに表示されるシフトポジションの内、高い段位(4速や5速)のポジションの表示を消去する。
【0056】
その後、S16においてCPU41は、車両の現在位置に基づいて、前記S11で一致すると判定された走行環境に対応する区間を抜けたか否か判定する。そして、走行環境に対応する区間を抜けたと判定された場合(S16:YES)には、S17へと移行する。それに対して、走行環境に対応する区間を抜けていないと判定された場合(S16:NO)には、走行環境に対応する区間を抜けたと判定されるまで待機する。
【0057】
続いて、S17においてCPU41は、交通違反履歴テーブル32を参照し、前記S11で一致すると判定された走行環境に対応して履歴情報として記憶された規制内容、即ち、車両の現在走行する道路に規定された規制内容を取得する。
【0058】
次に、S18においてCPU41は、前記S11で一致すると判定された走行環境に対応する区間の走行態様と前記S17で取得された規制内容とに基づいて、車両が走行した区間に規定された規制内容を遵守したか否か判定する。
【0059】
そして、前記S18において、車両が走行した区間に規定された規制内容を遵守したと判定された場合(S18:YES)には、S21へと移行する。一方、車両が走行した区間に規定された規制内容を遵守していないと判定された場合(S18:NO)には、S19へと移行する。
【0060】
S19においてCPU41は、車両が同じ走行環境において繰り返し規制内容を遵守しなかったと判定し、(a)遵守支援の内容の高レベル化(b)遵守支援解除条件の厳格化のいずれか又は両方が行われる。ここで、(a)遵守支援の内容の高レベル化としては、例えば、車両の走行性能をより低下させることや、より強調した警告を行うこと等がある。また、(b)遵守支援解除条件の厳格化としては、例えば、遵守支援解除条件が車両に規制内容を遵守させる条件である場合には、遵守させる期間を長くすることや、遵守させる規制内容を厳しい内容に変更すること等がある。具体的には、遵守支援の内容を高レベル化する際には、交通違反履歴テーブル32の“遵守支援の内容”が更新され、レベルの高い(支援の影響が大きい)遵守支援(例えば、スロットル特性低下であれば、スロットルの開度上限を低くする。上位変速段使用不可であれば、使用できない段数の数を多くする。)に変更される。一方、遵守支援解除条件を厳格化する際には、交通違反履歴テーブル32の“遵守支援解除条件”が更新され、遵守する必要のある回数が、多い回数(例えば5回→10回)へと変更される。
尚、前記S19において(a)遵守支援の内容の高レベル化が行われた場合には、その時点より高レベル化された内容に基づく遵守支援が実施される。
【0061】
例えば、図6に示す例は車両が国道1号線を走行中において、既に過去に速度制限を遵守せずに走行したリンクA区間において、再度速度制限を超える80km/hで走行した場合の交通違反履歴テーブル32の更新例を示した図である。
図6に示すように、車両がリンクA区間の速度制限の規制内容を再度遵守しなかった場合には、交通違反履歴テーブル32に記録された履歴情報の内、対応する履歴情報の遵守支援の内容と遵守支援解除条件が更新される。その結果、車両のスロットル開度の上限が更に低下される。また、遵守支援解除条件が厳しくなり、A−B間の速度制限を10回遵守する条件を満たすまで、スロットル特性が低下することとなる。
【0062】
続いて、S20においてCPU41は、前記S19で(a)遵守支援の内容の高レベル化(b)遵守支援解除条件の厳格化のいずれか又は両方が行われたことを液晶ディスプレイ15やスピーカ16を用いて案内する。尚、上記(a)、(b)のいずれか又は両方が行われたことを直接案内しても良いが、特に(a)遵守支援の内容の高レベル化について案内する場合には、高レベル化された遵守支援に対応する表示部の表示を変更することにより案内することが望ましい。例えば、スロットル特性をより低下する場合には、タコメータのレッドゾーンをより低い回転数まで広げたり、高い回転数側の表示範囲を広げる。また、上位変速段使用不可を実施する場合には、インストルメントパネルに表示されるシフトポジションの内、新たに使用が出来なくなった段位のポジションの表示を消去する。その後、当該遵守支援実施処理プログラムを終了する。
尚、前記S18において、車両が交通違反履歴テーブル32に記憶された走行環境で最初に規制内容を遵守しないと判定された場合には、上記S19及びS20の処理は行わない。
【0063】
S21においてCPU41は、車両が過去に規制内容を遵守しなかった走行環境において今回は規制内容を遵守したと判定し、遵守支援解除条件の程度度合いを示す条件達成度を更新する。具体的には、交通違反履歴テーブル32の“条件達成度”が更新され、遵守した回数が増加する。
【0064】
例えば、図7に示す例は車両が過去に一時停止を遵守せずに走行した地点Cにおいて、今回の走行では一時停止を遵守した場合の交通違反履歴テーブル32の更新例を示した図である。
図7に示すように、車両が地点Cの一時停止の規制内容を遵守した場合には、交通違反履歴テーブル32に記録された履歴情報の内、対応する条件達成度が更新される。その結果、地点Cにおいて一時停止を遵守した回数の履歴が1回増加し、18回から19回へと更新される。
【0065】
続いて、S22においてCPU41は、前記S21で条件達成度が更新されたことを液晶ディスプレイ15やスピーカ16を用いて案内する。その後、当該遵守支援実施処理プログラムを終了する。
【0066】
一方、前記S13において車両が走行環境に対応して記憶された遵守支援解除条件を満たしたと判定された場合(S13:YES)に実行されるS23では、CPU41は条件を満たしたと判定された遵守支援解除条件に対応する遵守支援の実施を取り止める。
【0067】
続いて、S24では、条件を満たしたと判定された遵守支援解除条件に対応する履歴情報を交通違反履歴テーブル32から削除する。
【0068】
例えば、図8に示す例は車両が過去に一時停止を遵守せずに走行した地点Cにおいて、今回の走行では一時停止を遵守し、遵守支援解除条件を満たした場合の交通違反履歴テーブル32の更新例を示した図である。
図8に示すように、車両が地点Cの一時停止の規制内容を合計20回遵守することにより、遵守支援解除条件を満たした場合には、交通違反履歴テーブル32に記録された履歴情報の内、条件を満たした遵守支援解除条件に対応する履歴情報が削除される。
【0069】
次に、S25においてCPU41は、前記S23で遵守支援の実施を取り止めたことを液晶ディスプレイ15やスピーカ16を用いて案内する。尚、遵守支援の実施を取り止めたことを直接案内しても良いが、取り止めた遵守支援に対応する表示部の表示を変更することにより案内することが望ましい。例えば、スロットル特定低下を復帰した場合には、変更されていたタコメータのレッドゾーンを本来の回転数まで戻したり、消去されていた高い回転数側の表示を復帰させる。また、上位変速段使用を復帰した場合には、インストルメントパネルに表示されるシフトポジションの内、消去されていた高い段位(4速や5速)のポジションの表示を復帰する。
【0070】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係る車両制御装置1、車両制御装置1による車両制御方法、及び車両制御装置1で実行されるコンピュータプログラムでは、車両が道路に規定された規制内容を遵守したか否か判定し(S3)、車両が規制内容を遵守していないと判定された場合に、遵守支援の内容や遵守支援の実施を取り止める為の遵守支援解除条件を設定するとともに履歴情報として交通違反履歴テーブル32に記憶し(S4)、交通違反履歴テーブル32に記憶された履歴情報に基づいて車両に対して遵守支援を実施するとともに(S14)、車両が遵守支援解除条件を満たした場合には履歴情報として記憶された遵守支援の内容と遵守支援解除条件を削除し、遵守支援の実施を取り止める(S23、S24)ので、道路に規定された規制内容を車両に遵守させる為の遵守支援を適切な状況で実施することができる。それにより、遵守支援の実施によって運転者の車両運転を著しく妨げることがなく、また、規制内容を遵守する運転へと導くことが可能となる。
また、遵守支援解除条件が走行環境に対応づけて記憶された遵守支援の内容に関連する規制内容を所定回数遵守する条件であるので、遵守支援によって運転者を規制内容を遵守する運転へと導いた後は、遵守支援を適切に取り止めることが可能となる。従って、遵守支援の実施によって運転者の車両運転を著しく妨げることがない。
また、車両が繰り返し規制内容を遵守しなかった場合には、遵守支援の内容をより影響の高い内容に変更する(S19)ので、運転者に規制内容を遵守することを、より高いレベルで意識させることが可能となり、規制内容を遵守する運転へと導くことが可能となる。
また、車両が繰り返し規制内容を遵守しなかった場合には、遵守支援解除条件の内容をより厳しい内容に変更する(S19)ので、運転者に規制内容を遵守することを、より長時間意識させることが可能となり、規制内容を遵守する運転へと導くことが可能となる。
【0071】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では遵守支援の実施を取り止める条件である遵守支援解除条件として、遵守支援の内容に関連する規制内容を所定回数遵守することを条件としているが、他の条件としても良い。例えば、所定距離(例えば20km)や所定時間(例えば72時間)以上の間、規制内容を遵守して走行することを遵守支援解除条件としても良い。その際には、前記S19の処理において所定距離や所定時間を長くするように構成する。また、緊急時(災害時など)には一時的に遵守支援の実施を取り止めるように構成しても良い。
【0072】
また、本実施形態では交通違反履歴テーブル32に記憶する走行環境としては、図2に示すように具体的な道路名や座標を記憶しているが、道路の道路種別や道路形状のみを記憶する構成としても良い。また、時間帯、前方車両の有無などを記憶しても良い。尚、前方車両の有無に関する情報については、フロントカメラ52や車車間通信等を用いて取得する。
【0073】
また、交通違反履歴テーブル32には、規制内容を遵守しなかった際の車両の走行態様(例えば、速度制限を20km/h越えて走行など)についても関連付けて記憶するように構成しても良い。
【0074】
また、本実施形態では、図5に示す車両制御処理プログラムはナビゲーション装置3の備えるナビゲーションECU13が実行することとしているが、エンジン制御ECU、変速機制御ECU、ブレーキ制御ECU、ブレーキ制御ECU等が実行するようにしても良い。また、複数のECUによって処理を分担して行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0075】
1 車両制御装置
3 ナビゲーション装置
13 ナビゲーションECU
41 CPU
42 RAM
43 ROM
32 交通違反履歴テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行環境及び走行態様を取得する走行状態取得手段と、
前記車両の走行する道路に規定された規制内容を取得する規制内容取得手段と、
前記走行状態取得手段により取得された前記走行態様と前記規制内容取得手段により取得された前記規制内容とに基づいて、前記車両が前記道路に規定された規制内容を遵守したか否か判定する規制判定手段と、
前記規制判定手段によって前記車両が前記規制内容を遵守していないと判定された場合に、前記規制内容に基づいて前記車両に前記規制内容を遵守させる為に実施する遵守支援の内容を設定する支援内容設定手段と、
前記支援内容設定手段により前記遵守支援の内容が設定された場合に、前記遵守支援の実施を取り止める為の遵守支援解除条件を設定する条件設定手段と、
前記条件設定手段により前記遵守支援解除条件が設定された場合に、前記走行環境と前記遵守支援の内容と前記遵守支援解除条件とを対応づけて履歴情報として記憶する履歴情報記憶手段と、
前記走行状態取得手段により前記車両の新たな走行環境及び走行態様を取得した場合に、前記新たな走行環境が前記履歴情報に記憶されている前記走行環境と一致し、且つ、前記履歴情報に記憶されている該走行環境に対応する前記遵守支援解除条件を満たしていない場合、前記履歴情報に記憶されている該走行環境に対応する前記遵守支援の内容に基づいて遵守支援を実施する遵守支援実施手段と、
前記新たな走行環境が前記履歴情報に記憶されている前記走行環境と一致し、且つ、前記履歴情報に記憶されている該走行環境に対応する前記遵守支援解除条件を満たしている場合、前記履歴情報に記憶されている該走行環境と該走行環境に対応する前記遵守支援の内容及び前記遵守支援解除条件とを削除する遵守支援解除手段と、を有することを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記遵守支援実施手段により前記遵守支援が既に実施されている状態で、前記走行状態取得手段により前記車両の新たな走行態様を取得した場合に、前記取得した新たな走行態様が前記車両の走行する道路に規定された規制内容を遵守していないと判定された場合には、前記履歴情報に記憶されている前記遵守支援の内容を変更する遵守支援内容変更手段を有することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記遵守支援実施手段により前記遵守支援が既に実施されている状態で、前記走行状態取得手段により前記車両の新たな走行態様を取得した場合に、前記取得した新たな走行態様が前記車両の走行する道路に規定された規制内容を遵守していないと判定された場合には、前記履歴情報に記憶されている前記遵守支援解除条件の内容を変更する遵守支援解除条件変更手段を有することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記遵守支援解除条件は、前記走行環境に対応づけて記憶された前記遵守支援の内容に関連する規制内容を所定回数遵守する条件であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の車両制御装置。
【請求項5】
車両の走行環境及び走行態様を取得する走行状態取得ステップと、
前記車両の走行する道路に規定された規制内容を取得する規制内容取得ステップと、
前記走行状態取得ステップにより取得された前記走行態様と前記規制内容取得ステップにより取得された前記規制内容とに基づいて、前記車両が前記道路に規定された規制内容を遵守したか否か判定する規制判定ステップと、
前記規制判定ステップによって前記車両が前記規制内容を遵守していないと判定された場合に、前記規制内容に基づいて前記車両に前記規制内容を遵守させる為に実施する遵守支援の内容を設定する支援内容設定ステップと、
前記支援内容設定ステップにより前記遵守支援の内容が設定された場合に、前記遵守支援の実施を取り止める為の遵守支援解除条件を設定する条件設定ステップと、
前記条件設定ステップにより前記遵守支援解除条件が設定された場合に、前記走行環境と前記遵守支援の内容と前記遵守支援解除条件とを対応づけて履歴情報として記憶する履歴情報記憶ステップと、
前記走行状態取得ステップにより前記車両の新たな走行環境及び走行態様を取得した場合に、前記新たな走行環境が前記履歴情報に記憶されている前記走行環境と一致し、且つ、前記履歴情報に記憶されている該走行環境に対応する前記遵守支援解除条件を満たしていない場合、前記履歴情報に記憶されている該走行環境に対応する前記遵守支援の内容に基づいて遵守支援を実施する遵守支援実施ステップと、
前記新たな走行環境が前記履歴情報に記憶されている前記走行環境と一致し、且つ、前記履歴情報に記憶されている該走行環境に対応する前記遵守支援解除条件を満たしている場合、前記履歴情報に記憶されている該走行環境と該走行環境に対応する前記遵守支援の内容及び前記遵守支援解除条件とを削除する遵守支援解除ステップと、を有することを特徴とする車両制御方法。
【請求項6】
コンピュータに搭載され、
車両の走行環境及び走行態様を取得する走行状態取得機能と、
前記車両の走行する道路に規定された規制内容を取得する規制内容取得機能と、
前記走行状態取得機能により取得された前記走行態様と前記規制内容取得機能により取得された前記規制内容とに基づいて、前記車両が前記道路に規定された規制内容を遵守したか否か判定する規制判定機能と、
前記規制判定機能によって前記車両が前記規制内容を遵守していないと判定された場合に、前記規制内容に基づいて前記車両に前記規制内容を遵守させる為に実施する遵守支援の内容を設定する支援内容設定機能と、
前記支援内容設定機能により前記遵守支援の内容が設定された場合に、前記遵守支援の実施を取り止める為の遵守支援解除条件を設定する条件設定機能と、
前記条件設定機能により前記遵守支援解除条件が設定された場合に、前記走行環境と前記遵守支援の内容と前記遵守支援解除条件とを対応づけて履歴情報として記憶媒体に記憶する履歴情報記憶機能と、
前記走行状態取得機能により前記車両の新たな走行環境及び走行態様を取得した場合に、前記新たな走行環境が前記履歴情報に記憶されている前記走行環境と一致し、且つ、前記履歴情報に記憶されている該走行環境に対応する前記遵守支援解除条件を満たしていない場合、前記履歴情報に記憶されている該走行環境に対応する前記遵守支援の内容に基づいて遵守支援を実施する遵守支援実施機能と、
前記新たな走行環境が前記履歴情報に記憶されている前記走行環境と一致し、且つ、前記履歴情報に記憶されている該走行環境に対応する前記遵守支援解除条件を満たしている場合、前記履歴情報に記憶されている該走行環境と該走行環境に対応する前記遵守支援の内容及び前記遵守支援解除条件とを削除する遵守支援解除機能と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−159206(P2011−159206A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22172(P2010−22172)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】