車両制御装置およびそれを用いた車両制御システム
【課題】制御対象に対する機能ドメイン制御手段による挙動制御を車両環境に応じて適宜調整し、機能ドメイン制御手段の構成の変更に適応する作業量を低減する車両制御装置およびそれを用いた車両制御システムを提供する。
【解決手段】車両制御装置は、車両が置かれた車両環境に基づいて車両モードを設定し、車両モード毎に、分配する資源と、資源を分配する機能ドメイン制御手段とを決定する(S300)。車両環境は、走行速度、運転者により設定される運転モードである省エネモードおよびスポーツモード等の車両自体に基づいた車両の走行状態と、車両の周囲の天候、走行道路の種別、走行地域、駐車中、車両移送中、盗難等の車両の周辺状況とを表す。車両制御装置は、S300で設定した車両モードを判定し(S302)、車両モードに応じて適切な量の資源を機能ドメイン制御手段に分配する(S304、S306、S308)。
【解決手段】車両制御装置は、車両が置かれた車両環境に基づいて車両モードを設定し、車両モード毎に、分配する資源と、資源を分配する機能ドメイン制御手段とを決定する(S300)。車両環境は、走行速度、運転者により設定される運転モードである省エネモードおよびスポーツモード等の車両自体に基づいた車両の走行状態と、車両の周囲の天候、走行道路の種別、走行地域、駐車中、車両移送中、盗難等の車両の周辺状況とを表す。車両制御装置は、S300で設定した車両モードを判定し(S302)、車両モードに応じて適切な量の資源を機能ドメイン制御手段に分配する(S304、S306、S308)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された制御対象に対する機能ドメイン制御手段による挙動制御を調整する車両制御装置およびそれを用いた車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両の制動系、操舵系、駆動系等の制御対象を、センサ等から検出した車両状態に基づいて制御対象毎に設けた制御装置によって制御する車両が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1では、制御対象の複数の制御状況毎に優先順位を設定しておき、制御対象の消費エネルギーが設定値に達すると、優先順位にしたがって制御対象に供給するエネルギーを調整する。
【0003】
また、車両が現に迎えている状況に基づいて車体装備の統合制御を行う車体装備制御装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2007−118945号公報
【特許文献2】特開2006−264472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、優先順位にしたがって制御対象に供給するエネルギーの調整制御を実施するだけであるから、一旦優先順位が設定されると、常に同じ手順でエネルギーの調整制御が実施されるという問題がある。
【0005】
また、特許文献2においては、車体装備制御ユニットの制御処理部が、制御対象である車体装備の制御を車両状況に対応して実行するので、車体装備の変更または追加により、または車両毎に車体装備の構成が変化すると、車体装備の制御を車両状況に対応して実行する制御処理部の構成を車体装備の構成の変化に合わせて変更する必要があるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、制御対象に対する機能ドメイン制御手段による挙動制御を車両環境に応じて適宜調整し、機能ドメイン制御手段の構成の変更に適応する作業量を低減する車両制御装置およびそれを用いた車両制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1から27に記載の発明によると、モード設定手段が車両環境に基づいて車両モードを設定し、制御対象に対する機能ドメイン制御手段による挙動制御を制御調整手段が車両モードに基づいて調整する。
【0008】
これにより、制御調整手段は、変化する車両環境に応じて設定された車両モードに基づいて、制御対象に対する機能ドメイン制御手段による挙動制御を適宜調整できる。
また、機能ドメイン制御手段とは独立してモード設定手段および制御調整手段が設けられているので、機能ドメイン制御手段の構成が変化しても、例えば構成情報を取得することにより、車両制御装置は僅かな作業で機能ドメイン制御手段の構成の変化に適応できる。
【0009】
請求項2に記載の発明によると、車両モードを設定する車両環境は、車両の走行状態および車両の周辺状況の少なくともいずれか一方である。
車両の走行状態とは、例えば車両の走行速度、運転者により設定される省エネモードおよびスポーツモード等の運転モードを表し、車両の周辺状況とは、車両の周囲の天候、走行道路の種別、走行地域、駐車中、車両移送中、盗難等を表す。このような種々の車両環境に応じて、制御調整手段は、機能ドメイン制御手段による挙動制御を車両モードに基づいて調整できる。
【0010】
ところで、車両制御システムにおいては、同じ制御対象の挙動を複数の機能ドメイン制御手段が連携して制御することがある。この場合、制御対象に対する複数の機能ドメイン制御手段による挙動制御を連携制御手段により連携して実施することが考えられる。連携制御手段による連携制御は、制御対象に対する機能ドメイン制御手段による挙動制御に依存した制御である。
【0011】
このように複数の機能ドメイン制御手段による挙動制御の連携を連携制御手段が制御する場合にも、請求項3に記載の発明によると、制御調整手段は、機能ドメイン制御手段による挙動制御および連携制御手段による連携制御を車両モードに基づいて調整する。
【0012】
これにより、連携制御手段が設置されるシステム構成においても、請求項1に記載した効果を奏することができる。
請求項4に記載の発明によると、制御調整手段の資源管理手段は、車両モードと、連携制御手段が車両モードに基づいて機能ドメイン制御手段への資源の分配を指令する資源分配指令とに基づいて、機能ドメイン制御手段および連携制御手段が使用する資源を管理する。
【0013】
資源管理手段ではなく、連携制御手段が車両モードに基づいて機能ドメイン制御手段への資源の分配を指令するので、機能ドメイン制御手段および連携制御手段が使用する資源を管理する資源管理手段の処理負荷が低減する。
【0014】
請求項5に記載の発明によると、制御調整手段の資源管理手段が、機能ドメイン制御手段が使用する資源を車両モードに基づいて管理する。
これにより、変化する車両モードに基づいて、機能ドメイン制御手段による資源の消費量を適宜調整することができる。その結果、資源の消費量を極力低減することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明によると、資源管理手段は、長さの異なる時間範囲でそれぞれ予測した資源の残量に基づいて資源を管理する。
これにより、例えば、数ms、数秒、数分等の長さの異なる時間範囲毎に予測した資源残量に基づき、時間範囲毎に適切に資源を分配できる。
【0016】
請求項7に記載の発明によると、モード設定手段は、車両環境の履歴に基づいて車両モードを設定する。
これにより、車両環境の履歴に応じて、例えば資源消費量を抑制することで、資源を適切に管理できる。
【0017】
請求項8に記載の発明によると、モード設定手段は、車両環境の履歴が異常であれば退避走行を指示する異常モードに車両モードを設定する。
継続した車両環境の履歴に基づいて異常状態を判定するので、一時的な車両環境では異常と判定されない場合にも、適切に異常状態を判定できる。
【0018】
ここで、車両環境の履歴に基づいて異常モードを設定する場合、車両環境の履歴を誤判定して異常モードを設定することが考えられる。しかしながら、例えば、正常な運転者が運転しているにも関わらず運転者を誤認識して異常モードとするような場合、実際には車両走行に重大な影響を与えないので、通常走行はできないものの、極力通常に近い状態で車両を走行させることが望ましい。
【0019】
そこで請求項9に記載の発明によると、異常モードは初期設定された退避走行を指示する。
これにより、車両環境の履歴を誤判定して異常モードを設定する場合を考慮し、初期設定において極力通常に近い状態で車両を走行させる退避走行に設定しておけば、初期設定された退避走行により通常に近い状態で車両を走行させることができる。
【0020】
請求項10に記載の発明によると、モード設定手段は、車両環境の履歴の異常状態に応じて、異なる退避走行を指示する複数の異常モードを設定する。これにより、車両環境の履歴の異常状態に応じて、適切な退避走行を実施できる。
【0021】
請求項11に記載の発明によると、複数の異常モードの一つは車両の走行停止を指示する車両盗難モードである。
これにより、車両が盗難された場合には、車両走行を禁止し、盗難場所に車両を留めておくことができる。
【0022】
請求項12に記載の発明によると、車両盗難モードは車両所有者への盗難報知を指示する。
これにより、例えば携帯電話等による音声報知等により車両が盗難されたことを直ちに車両所有者に知らせることができる。その結果、車両所有者は盗難処理を迅速に実施できる。
【0023】
請求項13に記載の発明によると、複数の異常モードの一つは制御対象の挙動の抑制を指示する保守モードである。
これにより、保守が必要な異常が発生した場合に、保守の対象となる制御対象の挙動を抑制するように機能ドメイン制御手段による挙動制御を調整し、制御対象の劣化を極力防止できる。
【0024】
請求項14に記載の発明によると、保守モードは車両所有者への保守報知を指示する。これにより、保守の必要が生じたときに直ちに車両所有者に知らせることができる。その結果、車両所有者は車両を修理工場に持ち込む等の処理を迅速に実施できる。
【0025】
請求項15に記載の発明によると、モード設定手段は、運転者毎の車両環境の履歴に基づいて運転者毎に車両モードを設定する。これにより、例えば運転者毎の運転特性に応じて、資源消費量を低減する適切な車両モードを設定できる。
【0026】
例えば、信号が赤から青に変わった後の停止から発進時の加速度、もしくは一般の発進時の加速度、定速度走行中の車間距離、前方車両が停止時の減速加速度、通常停車時の減速加速度等、これら車両走行に影響を与える運転者のパラメータの履歴情報収集と分類分けとにより、モード設定手段は車両モードの切替え、または修正等を実施して車両モードを設定する。
【0027】
請求項16に記載の発明によると、モード設定手段は、少なくとも一つの車両環境において運転者毎に履歴の使用確率を解析し、この解析結果に基づいて運転者毎に車両モードを設定する。
【0028】
例えば走行速度等の走行状態の使用確率を運転者毎に解析した結果に基づいて車両モードを設定することにより、走行状態の変化を予測して車両モードを設定できる。これにより、走行状態の変化予測に合わせ、例えば初期設定の車両モードから派生させて、運転者毎に資源消費量を低減する適切な車両モードを設定できる。
【0029】
請求項17に記載の発明によると、モード設定手段は、少なくとも一つの車両環境における運転者毎の履歴を地図情報から取得する。
車両環境と相関の高い地図情報から車両環境の履歴を取得することにより、車両環境の履歴の解析結果に基づき、より適切な車両モードを運転者毎に設定できる。
【0030】
請求項18に記載の発明によると、資源管理手段は、車両モードに応じた運転を運転者に指示する。
これにより、機能ドメイン制御手段による挙動制御を調整することによる資源管理に加え、運転者の運転によっても車両モードに応じて適切に資源を管理できる。その結果、運転者の運転によっても資源の消費量を低減することができる。
【0031】
請求項19に記載の発明によると、資源管理手段は少なくとも車両上のエネルギーを管理する。これにより、車両上で保持しているエネルギー、車両上で発生するエネルギーの消費を適切に管理できる。
【0032】
請求項20に記載の発明によると、資源管理手段は車両上のエネルギーの少なくとも一つとして電気エネルギーを管理する。これにより、車両上で主に保管される電気エネルギーの消費を車両モードに基づいて適切に管理できる。
【0033】
請求項21に記載の発明によると、資源管理手段は少なくとも2種類以上の入出力時間応答特性に応じて電気エネルギーを管理する。
例えば、キャパシタは電力保存量は少ないが入出力時間応答特性は早く、バッテリは電力保存量は多いが入出力時間応答特性は遅い。資源管理手段は、このような電気エネルギーの入出力時間応答特性の違いに応じて、適切に電気エネルギーを管理する。例えば、電気エネルギーを速やかに分配する必要のある車両モードでは、入出力時間応答特性の早いキャパシタから電気エネルギーを分配する。一方、分配を急ぐ必要のない車両モードでは、入出力時間応答特性の遅いバッテリから電気エネルギーを分配すればよい。
【0034】
請求項22に記載の発明によると、資源管理手段は車両上のエネルギーの少なくとも一つとして熱エネルギーを管理する。これにより、従来車両上で有効に使用されてこなかった熱エネルギーを、例えば熱タービンによる発電、あるいは暖房等に効果的に使用できる。
【0035】
請求項23に記載の発明によると、資源管理手段は車両上のエネルギーの少なくとも一つとして車両に搭載された内燃機関の燃料を管理する。これにより、車両モードに基づいて燃料消費量を管理し、燃費を極力向上することができる。
【0036】
請求項24に記載の発明によると、資源管理手段は、車両モードに基づいて、あるいは車両モードと、エネルギーの残量および機能ドメイン制御手段からの資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、機能ドメイン制御手段に動作速度の切り替えを指示する。
【0037】
例えば、車両モードに基づいて、あるいは車両モードと、エネルギーの残量および機能ドメイン制御手段からの資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、機能ドメイン制御手段による挙動制御の周期、あるいは動作クロック等の挙動制御の速度の切り替えを指示することにより、機能ドメイン制御手段のエネルギー消費を適切に管理および抑制できる。
【0038】
請求項25に記載の発明によると、資源管理手段は、車両モードに基づいて、あるいは車両モードと、資源の残量および機能ドメイン制御手段からの資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、機能ドメイン制御手段に分配する資源を管理する。
【0039】
例えば、車両モードに基づいて、あるいは車両モードと、資源の残量および機能ドメイン制御手段からの資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、資源を分配する機能ドメイン制御に優先順位を設定したり、資源の分配量を設定することにより、機能ドメイン制御手段に適切に資源を分配できる。
【0040】
請求項26に記載の発明によると、資源管理手段は、車両モードに基づいて、あるいは車両モードと、資源の残量および機能ドメイン制御手段からの資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、資源の消費量の切り替えを機能ドメイン制御手段に指示する。
【0041】
例えば、車両モードに基づいて、あるいは車両モードと、資源の残量および機能ドメイン制御手段からの資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、資源の消費量を大、中、小から選択して機能ドメイン制御手段に指示することにより、機能ドメイン制御手段のエネルギー消費を適切に管理できる。
【0042】
尚、本発明に備わる複数の手段の各機能は、構成自体で機能が特定されるハードウェア資源、プログラムにより機能が特定されるハードウェア資源、またはそれらの組み合わせにより実現される。また、これら複数の手段の各機能は、各々が物理的に互いに独立したハードウェア資源で実現されるものに限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
本発明の一実施形態による車両制御装置を用いた車両制御システムを図1に示す。
(車両制御システム10)
車両制御システム10は、電源制御装置(Battery ECU)20、ステアリング制御装置(Steering ECU)30、ブレーキ制御装置(Brake ECU)40、車体制御装置(Body ECU)50、ナビゲーション制御装置(Navigation ECU)60、イントラボックス(Intra Box)200等から構成されている。電源制御装置20、ステアリング制御装置30、ブレーキ制御装置40、車体制御装置50、ナビゲーション制御装置60は、特許請求の範囲に記載した機能ドメイン制御手段に相当し、イントラボックス200は、特許請求の範囲に記載した車両制御装置に相当する。
【0044】
電源制御装置20、ステアリング制御装置30、ブレーキ制御装置40、車体制御装置50、ナビゲーション制御装置60は、それぞれ、電源、ステアリング、ブレーキ、車体、経路案内用の音声画像装置等の車両に搭載された制御対象の挙動を、機能ドメインとしての電源制御、ステアリング制御、ブレーキ制御、車体制御、音声画像制御毎に制御する。
【0045】
図2に示すように、車両制御システム12としては、例えば同じ制御対象であるタイヤ70に対するステアリング制御装置30およびブレーキ制御装置40の挙動制御の連携を制御する連携制御手段80を設置してもよい。連携制御手段80は、タイヤ70に対するステアリング制御装置30およびブレーキ制御装置40の挙動制御に依存した連携を制御する。
【0046】
連携制御手段80および各機能ドメイン制御手段は、車内LANを介してイントラボックス200と通信を行う。
電源制御装置20は、ステアリング制御装置30、ブレーキ制御装置40およびイントラボックス200、図2の構成ではさらに連携制御手段80に供給する電力を制御する。車体制御装置50およびナビゲーション制御装置60への電力供給は、別の電源制御装置が制御する。
【0047】
ステアリング制御装置30は、ステアリング操舵角度を検出する角度検出センサの検出信号に基づき、各タイヤ70の操舵角度を制御する。
ブレーキ制御装置40は、ブレーキペダルの踏込量を検出するセンサの検出信号に基づき、各タイヤ70の制動量を制御する。
【0048】
車体制御装置50は、車両のドア、空調等を制御する。ナビゲーション制御装置60は、例えば、GPS等の衛星測位システムおよび地図データに基づいて自車位置を検出し、車両の目的地までの経路を探索して最適な経路をディスプレイ等の画像装置に表示するとともに音声で案内する。
【0049】
(イントラボックス200)
イントラボックス200は、前述した電源制御装置20、ステアリング制御装置30、ブレーキ制御装置40、車体制御装置50、ナビゲーション制御装置60等の機能ドメイン制御手段、さらに図2の構成では連携制御手段80とは独立して設けられている。そしてイントラボックス200は、個々の機能ドメイン制御手段による挙動制御に共通し、図2の構成では機能ドメイン制御手段による挙動制御と連携制御手段80による連携制御とに共通し、機能ドメイン制御手段による挙動制御および連携制御手段80による連携制御から独立した共通処理を実施する。機能ドメイン制御手段による挙動制御および連携制御手段80による連携制御に共通する共通処理とは、機能ドメイン制御手段が1個であるか複数であるかに関わらず、機能ドメイン制御手段による挙動制御および連携制御手段80による連携制御に共通する処理を表している。
【0050】
イントラボックス200は、前述した共通処理を実施する手段であるモード設定手段210および制御調整手段220等から構成されており、制御調整手段220は資源管理手段230を有している。モード設定手段210および制御調整手段220は、機能ドメイン制御手段、さらに図2の構成では連携制御手段80とは独立して設けられている。
【0051】
モード設定手段210および制御調整手段220は、図示しないCPU、ROM、RAM、およびフラッシュメモリ等の書換可能な不揮発性メモリ等により構成されている。イントラボックス200を以下の各手段として機能させる制御プログラムは、イントラボックス200のROM、フラッシュメモリ等の記憶手段に記憶されている。
【0052】
(モード設定手段210)
(1)車両環境
モード設定手段210は、車両の置かれた車両環境に基づいて車両モードを設定する。車両環境とは、車両の走行状態および周辺状況のうち少なくともいずれか一方を表している。車両の走行状態とは、走行速度、運転者により設定される運転モードである省エネモードおよびスポーツモード等の車両自体に基づいた環境を表す。車両の周辺状況とは、車両の周囲の天候、走行道路の種別、走行地域、駐車中、車両移送中、盗難等の車両が置かれた車両以外の環境を表す。
【0053】
(2)履歴
モード設定手段210は、車両が現在置かれている車両環境だけではなく、過去から現在までの車両環境の履歴に基づいて車両モードを設定してもよい。これにより、モード設定手段210は、一時的な車両環境ではなく、継続した車両環境の履歴に基づいて適切な車両モードを設定できる。
【0054】
モード設定手段210は、予め初期設定されている既存の車両モードから適切な車両モードを選択することに加え、車両環境の履歴情報に基づいて、既存の車両モードを変更したり、新規の車両モードを追加することにより車両モードを設定してもよい。
【0055】
(3)運転者毎の履歴
モード設定手段210は、運転者毎の車両環境の履歴に基づいて車両モードを設定してもよい。これにより、モード設定手段210は、車両毎、あるいは同じ車両であっても運転者毎に蓄積された車両環境の履歴に基づいて、運転者の運転特性に応じた適切な車両モードを設定できる。車両を運転する運転者の識別は、運転者の指紋、走行パターン等によって行われる。
【0056】
例えば、信号が赤から青に変わった後の停止から発進時の加速度、もしくは一般の発進時の加速度、定速度走行中の車間距離、前方車両が停止時の減速加速度、通常停車時の減速加速度等、これら車両走行に影響を与える運転者のパラメータの履歴情報収集と分類分けとにより、モード設定手段210は車両モードの切替え、または修正等を実施して車両モードを設定する。
【0057】
運転者毎の車両環境の履歴に基づいて車両モードを設定する場合、モード設定手段210は、少なくとも一つの車両環境、例えば走行速度の運転者毎の履歴に基づいて走行速度の使用確率を解析し、この解析結果に基づいて車両モードを順次変更して設定してもよい。
【0058】
モード設定手段210は、運転者毎に解析した結果に基づいて車両モードを設定することにより、車両環境の変化を予測して車両モードを設定できる。これにより、車両環境の変化予測に合わせ、初期設定の車両モードから派生させて、例えば運転者毎に資源消費量を低減する適切な車両モードを設定できる。
【0059】
また、モード設定手段210は、少なくとも一つの車両環境、例えば走行地域、走行道路種別を運転者毎にナビゲーション制御装置60の地図情報から取得し、この取得結果から車両モードを順次変更して設定してもよい。
【0060】
(4)異常モード
正常時に取り得る走行速度等の履歴の範囲および履歴のパターンと、異常時の履歴の範囲およびパターンとは異なっている。モード設定手段210は、車両環境の履歴が異常の場合、退避走行を指示する異常モードに車両モードを設定する。このように、車両環境の履歴に基づいて異常モードを設定することにより、モード設定手段210は、一時的な車両環境では異常と判定されない場合にも、適切に異常状態を判定できる。
【0061】
モード設定手段210は、車両環境の履歴に基づいて異なる退避走行を指示する複数の異常モードを設定することが望ましい。例えば、モード設定手段210は、車両環境の履歴に応じて、最高速度を制限した退避走行を指示する異常モード、あるいは車両の停止を指示する異常モード、あるいは保守点検を指示する異常モードを設定してもよい。
【0062】
車両の停止を指示する異常モードは、例えば、運転者の運転履歴に登録されていない運転者が車両を運転する盗難時に設定される。盗難時に設定される異常モードは、車両停止に加え、車両の盗難を車両の所有者に携帯電話等で報知する指示をすることが望ましい。
【0063】
保守点検を指示する異常モードは、例えば、保守点検までに保守対象の制御対象の劣化、消耗を防止するために、燃料噴射量を低減する等の制御対象の挙動を抑制するように機能ドメイン制御手段に指示する。保守点検を指示する異常モードも、盗難時と同様に、保守点検の必要が生じたことを車両の所有者に報知する指示をすることが望ましい。
【0064】
ところで、モード設定手段210が車両環境の履歴を誤判定し、誤判定した車両環境の履歴に基づいて異常モードを設定すると、車両環境の履歴を正しく判定したときに設定される車両モードに比べ不適切な退避走行を実施する車両モードが設定されることがある。このような場合、通常走行はできないものの、極力通常走行に近い状態で退避走行を実施することが考えられる。例えば、運転者を誤判定した場合、車両停止ではなく、通常走行に近い退避走行を指示する異常モードを設定することが望ましい。
【0065】
このようにモード設定手段210は、車両環境の履歴の誤判定を考慮し、車両環境の履歴を異常と判定した場合、車両環境の履歴の異常種類とは関係なく初期設定された退避走行を指示する異常モードを車両モードとして設定してもよい。初期設定された異常モードの退避走行は、例えば、通常状態に近い車両走行を可能とするモードとする。
【0066】
(制御調整手段220)
制御調整手段220は、モード設定手段210が設定した車両モードに基づいて、機能ドメイン制御手段による挙動制御の停止または稼働、さらに図2の構成では連携制御手段80による連携制御の停止または稼働を調整する。挙動制御および連携制御の停止または稼働は、全体であっても一部であってもよい。
【0067】
これにより、制御調整手段220は、制御対象に対する機能ドメイン制御手段による挙動制御、あるいは連携制御手段80による連携制御を、変化する車両環境に応じて適宜調整できる。
【0068】
また、機能ドメイン制御手段および連携制御手段80とは独立して制御調整手段220が設けられているので、機能ドメイン制御手段の構成が変化しても、例えば機能ドメイン制御手段の構成の変化情報を車内LANを介して取得することにより、僅かな作業で機能ドメイン制御手段の構成の変化に適応できる。
【0069】
(資源管理手段230)
(1)資源管理
制御調整手段220に設けられた資源管理手段230は、図1に示す車両制御システム10における機能ドメイン制御手段、あるいは図2に示す車両制御システム12における機能ドメイン制御手段および連携制御手段80が使用する資源を車両モードに基づいて管理する。
【0070】
資源管理手段230は、変化する車両モードに基づいて、機能ドメイン制御手段および連携制御手段80による挙動制御を調整して資源の消費量を適宜調整し、機能ドメイン制御手段および連携制御手段80が消費する資源の残量を適切に管理することができる。その結果、資源の低減を極力抑えることができる。
【0071】
また、資源管理手段230は、車両モードに基づいて、あるいは車両モードと、資源の残量および機能ドメイン制御手段からの資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、資源を分配する機能ドメイン制御に優先順位を設定したり、分配量を設定することにより、機能ドメイン制御手段に適切に資源を分配することが望ましい。
【0072】
資源管理手段230は、連携制御手段80を設置した車両制御システム12においては、車両モードと、連携制御手段80が車両モードに基づいて機能ドメイン制御手段への資源の分配を指令する資源分配指令とに基づいて、機能ドメイン制御手段および連携制御手段80が使用する資源を管理することが望ましい。
【0073】
機能ドメイン制御手段の資源使用量および資源の使用優先順位等を資源管理手段230ではなく連携制御手段80が車両モードに基づいて連携制御し、資源要求指令として資源管理手段230に通知することにより、資源を管理する資源管理手段230の処理負荷が低減する。
【0074】
(2)時間軸上の資源管理
ここで、機能ドメイン制御手段および連携制御手段80による資源の消費量と、その結果残る資源の残量とは、時間軸上で一定ではなく、数m秒、数秒、数分等の時間範囲で異なる。そこで、資源管理手段230は、異なる時間範囲毎に資源の消費量および残量を予測し、予測結果に基づいて機能ドメイン制御手段および連携制御手段80に資源を分配する。これにより、時間範囲毎に予測した資源残量に基づき、時間範囲毎に適切に資源を分配できる。
【0075】
(3)エネルギー管理
資源管理手段230は、車両上の資源として、例えば、エネルギーである電気、熱、燃料等の資源、およびその他の資源の消費量、残量、分配量、分配するときの優先順位を管理する。
【0076】
(3−1)電気エネルギー
例えば、車両の移送時を表す車両モードである移送モードでは、車体制御装置50、ナビゲーション制御装置60等の車両の駆動系以外への電力供給をすべて停止することにより、電力消費を極力低減できる。
【0077】
また、高速走行中を表す高速走行モードにおいては、例えば、車両のトランクの開閉制御およびドアの開閉制御は不要である。したがって、高速走行モードにおいてトランクの開閉制御およびドアの開閉制御を停止することにより、車体制御装置50のトランクの開閉制御ECUおよびドアの開閉制御ECUの消費電力を高速走行以外の車両モードよりも低減できる。
【0078】
また、車両モードに応じて各種制御をスリープ状態とウェイクアップ状態とに切り替えれば、スリープ状態においてはウェイクアップさせるための制御以外の消費電力を削減できる。
【0079】
このように資源管理手段230は、車両モード毎に稼働の必要な制御と不必要な制御とを分類し、不必要な制御には電力を供給しないことにより、車両上で主に保管される電気エネルギーの消費を車両モードに基づいて適切に管理できる。
【0080】
また、各種制御を実施するECUがスリープ状態において定期的にウェイクアップ状態に移行するかを自身で判定する場合には、スリープ状態のECUの動作速度を低速にしてもよい。これにより、電気エネルギーの消費抑制を車両モードに基づいて適切に管理できる。
【0081】
(3−2)熱エネルギー
資源管理手段230は、電気エネルギーに加え、車両上の熱エネルギーを管理することが望ましい。これにより、資源管理手段230は、従来車両上で有効に使用されてこなかった熱エネルギーを、例えば熱タービンによる発電、あるいは暖房等に効果的に使用できる。
【0082】
(3−3)燃料エネルギー
資源管理手段230は、電気エネルギーおよび熱エネルギーに加え、車両上のエネルギーとして燃料の消費量を管理することが望ましい。資源管理手段230は、燃料消費量を極力低減するように管理することにより、燃費を向上することができる。
【0083】
尚、資源管理手段230は、電気エネルギーと熱エネルギーと燃料エネルギーの三つのエネルギーのうち一つまたは二つのエネルギーだけを管理してもよい。
(4)履歴による資源管理
資源管理手段230は、モード設定手段210が車両環境の履歴に基づいて設定した車両モードに基づいて資源を管理する。資源管理手段230は、車両環境の履歴に応じて、例えば資源消費量を抑制することで、資源を適切に管理できる。
【0084】
(5)運転指示
資源管理手段230は、モード設定手段210が設定した車両モードに基づいて、資源消費量を低減する運転を、音声またはディスプレイ等により指示してもよい。
【0085】
(6)動作速度の切り替え
資源管理手段230は、動作クロック、挙動制御時間の長さ、挙動制御の時間間隔等の動作速度を切り替え可能な機能ドメイン制御手段に対し、車両モードに基づいて、あるいは車両モードと、資源の残量および機能ドメイン制御手段からの資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、機能ドメイン制御手段の動作速度の切り替えを指示してもよい。
【0086】
(7)資源消費量の切り替え
資源管理手段230は、資源消費量を切り替え可能な機能ドメイン制御手段に対し、車両モードに基づいて、あるいは車両モードと、資源の残量および機能ドメイン制御手段からの資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、機能ドメイン制御手段の消費量の切り替えを指示してもよい。
【0087】
資源管理手段230は、車両モードに基づいて、あるいは車両モードと、資源の残量および機能ドメイン制御手段からの資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、資源消費量を大、中、小から選択して機能ドメイン制御手段に指示することにより、機能ドメイン制御手段のエネルギー消費を適切に管理できる。
【0088】
例えば、車両のエアコンの挙動を制御する機能ドメイン制御手段としてのエアコン制御手段に対し、資源管理手段230は、エアコン制御手段よりも優先順位の高い他の機能ドメイン制御手段による電力消費量が多くエアコン制御手段に使用要求値のすべての電力を供給すると電力の残量が所定値以下になる場合には、エアコン制御手段の電力消費量を使用要求値よりも一時的に低減するように指示する。その後、資源管理手段230は、電力の残量に余裕度に応じて制限していた電力使用量を補填することにより、エアコン能力を維持することも可能である。
【0089】
(8)電力の入出力時間応答特性
資源管理手段230は、車両モードに基づき、電力を供給する緊急度および容量に応じて、電力を供給する電源としてキャパシタまたはバッテリのいずれかを選択する。速やかに電力を供給する場合には、電力の入出力時間応答特性の早いキャパシタから電力を供給し、急ぐ必要はないが多くの電力を供給する場合には、電力の入出力時間応答特性がキャパシタよりも遅いバッテリから電力を供給する。
【0090】
電力の入出力時間応答特性以外にも、発電機および回生ブレーキによる電力生成の時間自由度および生成効率、機能ドメイン制御手段毎の電力消費特性等を考慮し、資源管理手段230は、電力の生成と消費との収支が車両モードに基づいて適切となるように電力を管理することが望ましい。
【0091】
(制御調整ルーチン)
次に、イントラボックス200が機能ドメイン制御手段による挙動制御を車両モードに基づいて調整する制御調整ルーチンのうち、資源管理ルーチン、異常判定ルーチン、車両モード設定ルーチンについて、図3から図11に基づいて説明する。図3から図11に示すルーチンは常時実行される。各ルーチンにおいて「S」はステップを表し、実質的に同じ処理を行うステップには同じステップ番号を付している。
【0092】
(資源管理ルーチン1)
図3のS300においてイントラボックス200は、車両が置かれた車両環境に基づいて車両モードを設定する。イントラボックス200は、車両モード毎に、分配する資源と、資源を分配する機能ドメイン制御手段または連携制御手段80を決定する。
【0093】
イントラボックス200は、S300で設定した車両モードを判定し(S302)、車両モードに応じて分岐したS304、S306、S308において、機能ドメイン制御手段または連携制御手段80に車両モードに基づいて適切な量の資源を分配し、本ルーチンを終了する。
【0094】
(資源管理ルーチン2)
図4のS310においてイントラボックス200は、車両環境の履歴を収集し、その履歴を解析することにより、車両モードの切り替え、個々の車両モードにおける資源の分配量、資源を分配する優先順位等を解析結果に基づいて修正する。
【0095】
S312においてイントラボックス200は、S310の修正結果に基づいて車両モードを設定し、車両モード毎に、分配する資源と、資源を分配する機能ドメイン制御手段または連携制御手段80を決定する。S312に続く処理は資源管理ルーチン1と同一である。
【0096】
(資源管理ルーチン3)
図5に示す資源管理ルーチン3では、図4の資源管理ルーチン2のS304、S306、S308において、車両モードに基づいて適切な量の資源を機能ドメイン制御手段に分配した後、S314においてイントラボックス200は、車両モードに応じて資源消費量を低減する運転を運転者に指示し、本ルーチンを終了する。
【0097】
(資源管理ルーチン4)
図6に示す資源管理ルーチン4では、図4の資源管理ルーチン2のS310とS302との間で、資源の残量を把握する(S320)。
【0098】
そして、S322においてイントラボックスは、S310における車両モードの修正結果と、S320で把握した資源残量とに基づいて車両モードを設定し、車両モード毎に、分配する資源と、資源を分配する機能ドメイン制御手段または連携制御手段80を決定する。S322に続く処理は資源管理ルーチン2と同一である。
【0099】
(資源管理ルーチン5)
図7に示す資源管理ルーチン5では、S302で車両モードを判定した後、イントラボックス200は、資源使用量を切り替え可能な機能ドメイン制御手段に対し、設定した車両モードに応じて資源の使用量の切り替えを指示する。イントラボックス200は、S330では要求値のすべての資源を分配し、S332においては要求値のすべてではないが正常な制御に必要な許容できる程度の資源を分配し、S334においては正常な制御には不足するが制御不能ではない程度の資源を分配する。
【0100】
(資源管理ルーチン6)
図8に示す資源管理ルーチン6では、イントラボックス200は、図6の資源管理ルーチン2のS302に代えて、S340において、車両モードと、資源を供給するときの時間応答特性とに基づいて、機能ドメイン制御手段の使用要求値および消費特性に応じた最適な供給元から資源を供給させる。
【0101】
(異常判定ルーチン1)
図9異常判定ルーチン1のS350においてイントラボックス200は、車両環境の履歴情報を収集し、収集した履歴情報が正常時の範囲またはパターンであるか異常時の範囲またはパターンであるかを分析する。イントラボックス200は、履歴情報が正常であれば、通常動作を指示する車両モードを設定し、履歴情報が異常であれば異常の種類に応じた退避走行を実施する複数の異常モードに車両モードを設定する。
【0102】
そして、イントラボックス200は、S350で設定した車両モードを判定し(S352)、S354、S356、S358において、車両モードに基づいて機能ドメイン制御手段による挙動制御を調整する。
【0103】
イントラボックス200は、S354において履歴情報が正常時の場合の通常モードにしたがって通常動作を指示し、S356、S358において履歴情報の異常種類に応じて設定された異なる異常モードにしたがい、異なる退避走行を指示する。
【0104】
(異常判定ルーチン2)
図10の異常判定ルーチン2では、イントラボックス200は、履歴情報の異常種類に応じ、退避走行を実施する複数の異常モードを盗難モード(S360)、保守モード(S364)、車両異常モード(S368)に分類し、それぞれの異常モード毎に適切な退避走行を実施する。
【0105】
イントラボックス200は、盗難モードの場合、制御対象に対する機能ドメイン制御手段による挙動制御を禁止する。これにより、イントラボックス200は、盗難モードにおいて車両走行を禁止する(S362)。
【0106】
イントラボックス200は、保守モードの場合、保守が必要と判断された制御対象の挙動を抑制する挙動制御を機能ドメイン制御手段に指示し、制御対象の劣化、消耗を極力抑制する(S366)。
【0107】
イントラボックス200は、盗難モードおよび保守モード以外の車両異常モードの場合、燃料噴射量等を制限することにより車両走行を制限した退避走行を指示する(S370)。
【0108】
S372においてイントラボックス200は、履歴情報に基づき、車両が正常モードかまたは異常モードであるかを表示する。
イントラボックス200は、S372において、盗難モードの場合には車両所有者に携帯電話等を介して盗難の発生を報知し、保守モードの場合には警告灯の点灯または音声メッセージにより車両所有者に保守の必要が発生したことを報知することが望ましい。また、盗難モードおよび保守モード以外の車両異常モードの場合には、イントラボックス200は、警告灯の点灯または音声メッセージにより車両所有者に車両走行を制限していることを報知することが望ましい。
【0109】
(車両モード設定ルーチン)
図11の車両モード設定ルーチンのS380においてイントラボックス200は、車両環境の履歴情報を運転者毎に収集して分析する。
【0110】
S382においてイントラボックス200は、マルコフ過程のような確率論に基づいて特定の車両環境の発生確率を推定し、初期値として設定されている車両モードに付加する条件および車両モードを変更する条件を算出する。
【0111】
そして、S384においてイントラボックス200は、S382において算出された車両モードの付加条件および変更条件に基づいて運転者毎に適切な車両モードを設定する。これにより、車両環境の運転者毎の履歴の使用確率に基づいて運転者毎に資源消費量を極力低減する車両モードを設定できる。
【0112】
以上説明したように、本実施形態のイントラボックス200では、モード設定手段210が車両環境に基づいて車両モードを設定し、設定された車両モードに基づいて制御調整手段220が機能ドメイン制御手段による挙動制御を調整し、機能ドメイン制御手段が共有して使用する資源を資源管理手段230が管理する。これにより、イントラボックス200は、変化する車両環境に応じて適宜適切な車両モードを設定し、設定された車両モードに基づいて機能ドメイン制御手段による挙動制御を適切に調整し、共有資源を適切に管理できる。
【0113】
また、機能ドメイン制御手段および連携制御手段80とは独立して資源管理手段230を有する制御調整手段220およびモード設定手段210がイントラボックス200に設けられているので、機能ドメイン制御手段の構成に変化があっても、イントラボックス200は、僅かな適応作業で、機能ドメイン制御手段による挙動制御を調整し、共有資源を管理できる。
【0114】
[他の実施形態]
上記実施形態では、機能ドメイン制御手段を複数設置した車両制御システムについて説明した。これに対し、機能ドメイン制御手段が一つだけの車両制御システムであってもよい。このシステム構成においても、機能ドメイン制御手段が複数の場合と同じイントラボックスを使用し、制御対象に対する機能ドメイン制御手段による挙動制御を車両モードに基づいて調整できる。
【0115】
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本実施形態による車両制御システムを示すブロック図。
【図2】連携制御手段を使用した車両制御システムを示すブロック図。
【図3】資源管理ルーチン1を示すフローチャート。
【図4】資源管理ルーチン2を示すフローチャート。
【図5】資源管理ルーチン3を示すフローチャート。
【図6】資源管理ルーチン4を示すフローチャート。
【図7】資源管理ルーチン5を示すフローチャート。
【図8】資源管理ルーチン6を示すフローチャート。
【図9】異常判定ルーチン1を示すフローチャート。
【図10】異常判定ルーチン2を示すフローチャート。
【図11】車両モード設定ルーチンを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0117】
10、12:車両制御システム、20:電源制御装置(機能ドメイン制御手段)、30:ステアリング制御装置(機能ドメイン制御手段)、40:ブレーキ制御装置(機能ドメイン制御手段)、50:車体制御装置(機能ドメイン制御手段)、60:ナビゲーション制御装置(機能ドメイン制御手段)、80:連携制御手段、200:イントラボックス(車両制御装置、モード設定手段、制御調整手段、資源管理手段)、210:モード設定手段、220:制御調整手段、230:資源管理手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された制御対象に対する機能ドメイン制御手段による挙動制御を調整する車両制御装置およびそれを用いた車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両の制動系、操舵系、駆動系等の制御対象を、センサ等から検出した車両状態に基づいて制御対象毎に設けた制御装置によって制御する車両が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1では、制御対象の複数の制御状況毎に優先順位を設定しておき、制御対象の消費エネルギーが設定値に達すると、優先順位にしたがって制御対象に供給するエネルギーを調整する。
【0003】
また、車両が現に迎えている状況に基づいて車体装備の統合制御を行う車体装備制御装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2007−118945号公報
【特許文献2】特開2006−264472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、優先順位にしたがって制御対象に供給するエネルギーの調整制御を実施するだけであるから、一旦優先順位が設定されると、常に同じ手順でエネルギーの調整制御が実施されるという問題がある。
【0005】
また、特許文献2においては、車体装備制御ユニットの制御処理部が、制御対象である車体装備の制御を車両状況に対応して実行するので、車体装備の変更または追加により、または車両毎に車体装備の構成が変化すると、車体装備の制御を車両状況に対応して実行する制御処理部の構成を車体装備の構成の変化に合わせて変更する必要があるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、制御対象に対する機能ドメイン制御手段による挙動制御を車両環境に応じて適宜調整し、機能ドメイン制御手段の構成の変更に適応する作業量を低減する車両制御装置およびそれを用いた車両制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1から27に記載の発明によると、モード設定手段が車両環境に基づいて車両モードを設定し、制御対象に対する機能ドメイン制御手段による挙動制御を制御調整手段が車両モードに基づいて調整する。
【0008】
これにより、制御調整手段は、変化する車両環境に応じて設定された車両モードに基づいて、制御対象に対する機能ドメイン制御手段による挙動制御を適宜調整できる。
また、機能ドメイン制御手段とは独立してモード設定手段および制御調整手段が設けられているので、機能ドメイン制御手段の構成が変化しても、例えば構成情報を取得することにより、車両制御装置は僅かな作業で機能ドメイン制御手段の構成の変化に適応できる。
【0009】
請求項2に記載の発明によると、車両モードを設定する車両環境は、車両の走行状態および車両の周辺状況の少なくともいずれか一方である。
車両の走行状態とは、例えば車両の走行速度、運転者により設定される省エネモードおよびスポーツモード等の運転モードを表し、車両の周辺状況とは、車両の周囲の天候、走行道路の種別、走行地域、駐車中、車両移送中、盗難等を表す。このような種々の車両環境に応じて、制御調整手段は、機能ドメイン制御手段による挙動制御を車両モードに基づいて調整できる。
【0010】
ところで、車両制御システムにおいては、同じ制御対象の挙動を複数の機能ドメイン制御手段が連携して制御することがある。この場合、制御対象に対する複数の機能ドメイン制御手段による挙動制御を連携制御手段により連携して実施することが考えられる。連携制御手段による連携制御は、制御対象に対する機能ドメイン制御手段による挙動制御に依存した制御である。
【0011】
このように複数の機能ドメイン制御手段による挙動制御の連携を連携制御手段が制御する場合にも、請求項3に記載の発明によると、制御調整手段は、機能ドメイン制御手段による挙動制御および連携制御手段による連携制御を車両モードに基づいて調整する。
【0012】
これにより、連携制御手段が設置されるシステム構成においても、請求項1に記載した効果を奏することができる。
請求項4に記載の発明によると、制御調整手段の資源管理手段は、車両モードと、連携制御手段が車両モードに基づいて機能ドメイン制御手段への資源の分配を指令する資源分配指令とに基づいて、機能ドメイン制御手段および連携制御手段が使用する資源を管理する。
【0013】
資源管理手段ではなく、連携制御手段が車両モードに基づいて機能ドメイン制御手段への資源の分配を指令するので、機能ドメイン制御手段および連携制御手段が使用する資源を管理する資源管理手段の処理負荷が低減する。
【0014】
請求項5に記載の発明によると、制御調整手段の資源管理手段が、機能ドメイン制御手段が使用する資源を車両モードに基づいて管理する。
これにより、変化する車両モードに基づいて、機能ドメイン制御手段による資源の消費量を適宜調整することができる。その結果、資源の消費量を極力低減することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明によると、資源管理手段は、長さの異なる時間範囲でそれぞれ予測した資源の残量に基づいて資源を管理する。
これにより、例えば、数ms、数秒、数分等の長さの異なる時間範囲毎に予測した資源残量に基づき、時間範囲毎に適切に資源を分配できる。
【0016】
請求項7に記載の発明によると、モード設定手段は、車両環境の履歴に基づいて車両モードを設定する。
これにより、車両環境の履歴に応じて、例えば資源消費量を抑制することで、資源を適切に管理できる。
【0017】
請求項8に記載の発明によると、モード設定手段は、車両環境の履歴が異常であれば退避走行を指示する異常モードに車両モードを設定する。
継続した車両環境の履歴に基づいて異常状態を判定するので、一時的な車両環境では異常と判定されない場合にも、適切に異常状態を判定できる。
【0018】
ここで、車両環境の履歴に基づいて異常モードを設定する場合、車両環境の履歴を誤判定して異常モードを設定することが考えられる。しかしながら、例えば、正常な運転者が運転しているにも関わらず運転者を誤認識して異常モードとするような場合、実際には車両走行に重大な影響を与えないので、通常走行はできないものの、極力通常に近い状態で車両を走行させることが望ましい。
【0019】
そこで請求項9に記載の発明によると、異常モードは初期設定された退避走行を指示する。
これにより、車両環境の履歴を誤判定して異常モードを設定する場合を考慮し、初期設定において極力通常に近い状態で車両を走行させる退避走行に設定しておけば、初期設定された退避走行により通常に近い状態で車両を走行させることができる。
【0020】
請求項10に記載の発明によると、モード設定手段は、車両環境の履歴の異常状態に応じて、異なる退避走行を指示する複数の異常モードを設定する。これにより、車両環境の履歴の異常状態に応じて、適切な退避走行を実施できる。
【0021】
請求項11に記載の発明によると、複数の異常モードの一つは車両の走行停止を指示する車両盗難モードである。
これにより、車両が盗難された場合には、車両走行を禁止し、盗難場所に車両を留めておくことができる。
【0022】
請求項12に記載の発明によると、車両盗難モードは車両所有者への盗難報知を指示する。
これにより、例えば携帯電話等による音声報知等により車両が盗難されたことを直ちに車両所有者に知らせることができる。その結果、車両所有者は盗難処理を迅速に実施できる。
【0023】
請求項13に記載の発明によると、複数の異常モードの一つは制御対象の挙動の抑制を指示する保守モードである。
これにより、保守が必要な異常が発生した場合に、保守の対象となる制御対象の挙動を抑制するように機能ドメイン制御手段による挙動制御を調整し、制御対象の劣化を極力防止できる。
【0024】
請求項14に記載の発明によると、保守モードは車両所有者への保守報知を指示する。これにより、保守の必要が生じたときに直ちに車両所有者に知らせることができる。その結果、車両所有者は車両を修理工場に持ち込む等の処理を迅速に実施できる。
【0025】
請求項15に記載の発明によると、モード設定手段は、運転者毎の車両環境の履歴に基づいて運転者毎に車両モードを設定する。これにより、例えば運転者毎の運転特性に応じて、資源消費量を低減する適切な車両モードを設定できる。
【0026】
例えば、信号が赤から青に変わった後の停止から発進時の加速度、もしくは一般の発進時の加速度、定速度走行中の車間距離、前方車両が停止時の減速加速度、通常停車時の減速加速度等、これら車両走行に影響を与える運転者のパラメータの履歴情報収集と分類分けとにより、モード設定手段は車両モードの切替え、または修正等を実施して車両モードを設定する。
【0027】
請求項16に記載の発明によると、モード設定手段は、少なくとも一つの車両環境において運転者毎に履歴の使用確率を解析し、この解析結果に基づいて運転者毎に車両モードを設定する。
【0028】
例えば走行速度等の走行状態の使用確率を運転者毎に解析した結果に基づいて車両モードを設定することにより、走行状態の変化を予測して車両モードを設定できる。これにより、走行状態の変化予測に合わせ、例えば初期設定の車両モードから派生させて、運転者毎に資源消費量を低減する適切な車両モードを設定できる。
【0029】
請求項17に記載の発明によると、モード設定手段は、少なくとも一つの車両環境における運転者毎の履歴を地図情報から取得する。
車両環境と相関の高い地図情報から車両環境の履歴を取得することにより、車両環境の履歴の解析結果に基づき、より適切な車両モードを運転者毎に設定できる。
【0030】
請求項18に記載の発明によると、資源管理手段は、車両モードに応じた運転を運転者に指示する。
これにより、機能ドメイン制御手段による挙動制御を調整することによる資源管理に加え、運転者の運転によっても車両モードに応じて適切に資源を管理できる。その結果、運転者の運転によっても資源の消費量を低減することができる。
【0031】
請求項19に記載の発明によると、資源管理手段は少なくとも車両上のエネルギーを管理する。これにより、車両上で保持しているエネルギー、車両上で発生するエネルギーの消費を適切に管理できる。
【0032】
請求項20に記載の発明によると、資源管理手段は車両上のエネルギーの少なくとも一つとして電気エネルギーを管理する。これにより、車両上で主に保管される電気エネルギーの消費を車両モードに基づいて適切に管理できる。
【0033】
請求項21に記載の発明によると、資源管理手段は少なくとも2種類以上の入出力時間応答特性に応じて電気エネルギーを管理する。
例えば、キャパシタは電力保存量は少ないが入出力時間応答特性は早く、バッテリは電力保存量は多いが入出力時間応答特性は遅い。資源管理手段は、このような電気エネルギーの入出力時間応答特性の違いに応じて、適切に電気エネルギーを管理する。例えば、電気エネルギーを速やかに分配する必要のある車両モードでは、入出力時間応答特性の早いキャパシタから電気エネルギーを分配する。一方、分配を急ぐ必要のない車両モードでは、入出力時間応答特性の遅いバッテリから電気エネルギーを分配すればよい。
【0034】
請求項22に記載の発明によると、資源管理手段は車両上のエネルギーの少なくとも一つとして熱エネルギーを管理する。これにより、従来車両上で有効に使用されてこなかった熱エネルギーを、例えば熱タービンによる発電、あるいは暖房等に効果的に使用できる。
【0035】
請求項23に記載の発明によると、資源管理手段は車両上のエネルギーの少なくとも一つとして車両に搭載された内燃機関の燃料を管理する。これにより、車両モードに基づいて燃料消費量を管理し、燃費を極力向上することができる。
【0036】
請求項24に記載の発明によると、資源管理手段は、車両モードに基づいて、あるいは車両モードと、エネルギーの残量および機能ドメイン制御手段からの資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、機能ドメイン制御手段に動作速度の切り替えを指示する。
【0037】
例えば、車両モードに基づいて、あるいは車両モードと、エネルギーの残量および機能ドメイン制御手段からの資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、機能ドメイン制御手段による挙動制御の周期、あるいは動作クロック等の挙動制御の速度の切り替えを指示することにより、機能ドメイン制御手段のエネルギー消費を適切に管理および抑制できる。
【0038】
請求項25に記載の発明によると、資源管理手段は、車両モードに基づいて、あるいは車両モードと、資源の残量および機能ドメイン制御手段からの資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、機能ドメイン制御手段に分配する資源を管理する。
【0039】
例えば、車両モードに基づいて、あるいは車両モードと、資源の残量および機能ドメイン制御手段からの資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、資源を分配する機能ドメイン制御に優先順位を設定したり、資源の分配量を設定することにより、機能ドメイン制御手段に適切に資源を分配できる。
【0040】
請求項26に記載の発明によると、資源管理手段は、車両モードに基づいて、あるいは車両モードと、資源の残量および機能ドメイン制御手段からの資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、資源の消費量の切り替えを機能ドメイン制御手段に指示する。
【0041】
例えば、車両モードに基づいて、あるいは車両モードと、資源の残量および機能ドメイン制御手段からの資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、資源の消費量を大、中、小から選択して機能ドメイン制御手段に指示することにより、機能ドメイン制御手段のエネルギー消費を適切に管理できる。
【0042】
尚、本発明に備わる複数の手段の各機能は、構成自体で機能が特定されるハードウェア資源、プログラムにより機能が特定されるハードウェア資源、またはそれらの組み合わせにより実現される。また、これら複数の手段の各機能は、各々が物理的に互いに独立したハードウェア資源で実現されるものに限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
本発明の一実施形態による車両制御装置を用いた車両制御システムを図1に示す。
(車両制御システム10)
車両制御システム10は、電源制御装置(Battery ECU)20、ステアリング制御装置(Steering ECU)30、ブレーキ制御装置(Brake ECU)40、車体制御装置(Body ECU)50、ナビゲーション制御装置(Navigation ECU)60、イントラボックス(Intra Box)200等から構成されている。電源制御装置20、ステアリング制御装置30、ブレーキ制御装置40、車体制御装置50、ナビゲーション制御装置60は、特許請求の範囲に記載した機能ドメイン制御手段に相当し、イントラボックス200は、特許請求の範囲に記載した車両制御装置に相当する。
【0044】
電源制御装置20、ステアリング制御装置30、ブレーキ制御装置40、車体制御装置50、ナビゲーション制御装置60は、それぞれ、電源、ステアリング、ブレーキ、車体、経路案内用の音声画像装置等の車両に搭載された制御対象の挙動を、機能ドメインとしての電源制御、ステアリング制御、ブレーキ制御、車体制御、音声画像制御毎に制御する。
【0045】
図2に示すように、車両制御システム12としては、例えば同じ制御対象であるタイヤ70に対するステアリング制御装置30およびブレーキ制御装置40の挙動制御の連携を制御する連携制御手段80を設置してもよい。連携制御手段80は、タイヤ70に対するステアリング制御装置30およびブレーキ制御装置40の挙動制御に依存した連携を制御する。
【0046】
連携制御手段80および各機能ドメイン制御手段は、車内LANを介してイントラボックス200と通信を行う。
電源制御装置20は、ステアリング制御装置30、ブレーキ制御装置40およびイントラボックス200、図2の構成ではさらに連携制御手段80に供給する電力を制御する。車体制御装置50およびナビゲーション制御装置60への電力供給は、別の電源制御装置が制御する。
【0047】
ステアリング制御装置30は、ステアリング操舵角度を検出する角度検出センサの検出信号に基づき、各タイヤ70の操舵角度を制御する。
ブレーキ制御装置40は、ブレーキペダルの踏込量を検出するセンサの検出信号に基づき、各タイヤ70の制動量を制御する。
【0048】
車体制御装置50は、車両のドア、空調等を制御する。ナビゲーション制御装置60は、例えば、GPS等の衛星測位システムおよび地図データに基づいて自車位置を検出し、車両の目的地までの経路を探索して最適な経路をディスプレイ等の画像装置に表示するとともに音声で案内する。
【0049】
(イントラボックス200)
イントラボックス200は、前述した電源制御装置20、ステアリング制御装置30、ブレーキ制御装置40、車体制御装置50、ナビゲーション制御装置60等の機能ドメイン制御手段、さらに図2の構成では連携制御手段80とは独立して設けられている。そしてイントラボックス200は、個々の機能ドメイン制御手段による挙動制御に共通し、図2の構成では機能ドメイン制御手段による挙動制御と連携制御手段80による連携制御とに共通し、機能ドメイン制御手段による挙動制御および連携制御手段80による連携制御から独立した共通処理を実施する。機能ドメイン制御手段による挙動制御および連携制御手段80による連携制御に共通する共通処理とは、機能ドメイン制御手段が1個であるか複数であるかに関わらず、機能ドメイン制御手段による挙動制御および連携制御手段80による連携制御に共通する処理を表している。
【0050】
イントラボックス200は、前述した共通処理を実施する手段であるモード設定手段210および制御調整手段220等から構成されており、制御調整手段220は資源管理手段230を有している。モード設定手段210および制御調整手段220は、機能ドメイン制御手段、さらに図2の構成では連携制御手段80とは独立して設けられている。
【0051】
モード設定手段210および制御調整手段220は、図示しないCPU、ROM、RAM、およびフラッシュメモリ等の書換可能な不揮発性メモリ等により構成されている。イントラボックス200を以下の各手段として機能させる制御プログラムは、イントラボックス200のROM、フラッシュメモリ等の記憶手段に記憶されている。
【0052】
(モード設定手段210)
(1)車両環境
モード設定手段210は、車両の置かれた車両環境に基づいて車両モードを設定する。車両環境とは、車両の走行状態および周辺状況のうち少なくともいずれか一方を表している。車両の走行状態とは、走行速度、運転者により設定される運転モードである省エネモードおよびスポーツモード等の車両自体に基づいた環境を表す。車両の周辺状況とは、車両の周囲の天候、走行道路の種別、走行地域、駐車中、車両移送中、盗難等の車両が置かれた車両以外の環境を表す。
【0053】
(2)履歴
モード設定手段210は、車両が現在置かれている車両環境だけではなく、過去から現在までの車両環境の履歴に基づいて車両モードを設定してもよい。これにより、モード設定手段210は、一時的な車両環境ではなく、継続した車両環境の履歴に基づいて適切な車両モードを設定できる。
【0054】
モード設定手段210は、予め初期設定されている既存の車両モードから適切な車両モードを選択することに加え、車両環境の履歴情報に基づいて、既存の車両モードを変更したり、新規の車両モードを追加することにより車両モードを設定してもよい。
【0055】
(3)運転者毎の履歴
モード設定手段210は、運転者毎の車両環境の履歴に基づいて車両モードを設定してもよい。これにより、モード設定手段210は、車両毎、あるいは同じ車両であっても運転者毎に蓄積された車両環境の履歴に基づいて、運転者の運転特性に応じた適切な車両モードを設定できる。車両を運転する運転者の識別は、運転者の指紋、走行パターン等によって行われる。
【0056】
例えば、信号が赤から青に変わった後の停止から発進時の加速度、もしくは一般の発進時の加速度、定速度走行中の車間距離、前方車両が停止時の減速加速度、通常停車時の減速加速度等、これら車両走行に影響を与える運転者のパラメータの履歴情報収集と分類分けとにより、モード設定手段210は車両モードの切替え、または修正等を実施して車両モードを設定する。
【0057】
運転者毎の車両環境の履歴に基づいて車両モードを設定する場合、モード設定手段210は、少なくとも一つの車両環境、例えば走行速度の運転者毎の履歴に基づいて走行速度の使用確率を解析し、この解析結果に基づいて車両モードを順次変更して設定してもよい。
【0058】
モード設定手段210は、運転者毎に解析した結果に基づいて車両モードを設定することにより、車両環境の変化を予測して車両モードを設定できる。これにより、車両環境の変化予測に合わせ、初期設定の車両モードから派生させて、例えば運転者毎に資源消費量を低減する適切な車両モードを設定できる。
【0059】
また、モード設定手段210は、少なくとも一つの車両環境、例えば走行地域、走行道路種別を運転者毎にナビゲーション制御装置60の地図情報から取得し、この取得結果から車両モードを順次変更して設定してもよい。
【0060】
(4)異常モード
正常時に取り得る走行速度等の履歴の範囲および履歴のパターンと、異常時の履歴の範囲およびパターンとは異なっている。モード設定手段210は、車両環境の履歴が異常の場合、退避走行を指示する異常モードに車両モードを設定する。このように、車両環境の履歴に基づいて異常モードを設定することにより、モード設定手段210は、一時的な車両環境では異常と判定されない場合にも、適切に異常状態を判定できる。
【0061】
モード設定手段210は、車両環境の履歴に基づいて異なる退避走行を指示する複数の異常モードを設定することが望ましい。例えば、モード設定手段210は、車両環境の履歴に応じて、最高速度を制限した退避走行を指示する異常モード、あるいは車両の停止を指示する異常モード、あるいは保守点検を指示する異常モードを設定してもよい。
【0062】
車両の停止を指示する異常モードは、例えば、運転者の運転履歴に登録されていない運転者が車両を運転する盗難時に設定される。盗難時に設定される異常モードは、車両停止に加え、車両の盗難を車両の所有者に携帯電話等で報知する指示をすることが望ましい。
【0063】
保守点検を指示する異常モードは、例えば、保守点検までに保守対象の制御対象の劣化、消耗を防止するために、燃料噴射量を低減する等の制御対象の挙動を抑制するように機能ドメイン制御手段に指示する。保守点検を指示する異常モードも、盗難時と同様に、保守点検の必要が生じたことを車両の所有者に報知する指示をすることが望ましい。
【0064】
ところで、モード設定手段210が車両環境の履歴を誤判定し、誤判定した車両環境の履歴に基づいて異常モードを設定すると、車両環境の履歴を正しく判定したときに設定される車両モードに比べ不適切な退避走行を実施する車両モードが設定されることがある。このような場合、通常走行はできないものの、極力通常走行に近い状態で退避走行を実施することが考えられる。例えば、運転者を誤判定した場合、車両停止ではなく、通常走行に近い退避走行を指示する異常モードを設定することが望ましい。
【0065】
このようにモード設定手段210は、車両環境の履歴の誤判定を考慮し、車両環境の履歴を異常と判定した場合、車両環境の履歴の異常種類とは関係なく初期設定された退避走行を指示する異常モードを車両モードとして設定してもよい。初期設定された異常モードの退避走行は、例えば、通常状態に近い車両走行を可能とするモードとする。
【0066】
(制御調整手段220)
制御調整手段220は、モード設定手段210が設定した車両モードに基づいて、機能ドメイン制御手段による挙動制御の停止または稼働、さらに図2の構成では連携制御手段80による連携制御の停止または稼働を調整する。挙動制御および連携制御の停止または稼働は、全体であっても一部であってもよい。
【0067】
これにより、制御調整手段220は、制御対象に対する機能ドメイン制御手段による挙動制御、あるいは連携制御手段80による連携制御を、変化する車両環境に応じて適宜調整できる。
【0068】
また、機能ドメイン制御手段および連携制御手段80とは独立して制御調整手段220が設けられているので、機能ドメイン制御手段の構成が変化しても、例えば機能ドメイン制御手段の構成の変化情報を車内LANを介して取得することにより、僅かな作業で機能ドメイン制御手段の構成の変化に適応できる。
【0069】
(資源管理手段230)
(1)資源管理
制御調整手段220に設けられた資源管理手段230は、図1に示す車両制御システム10における機能ドメイン制御手段、あるいは図2に示す車両制御システム12における機能ドメイン制御手段および連携制御手段80が使用する資源を車両モードに基づいて管理する。
【0070】
資源管理手段230は、変化する車両モードに基づいて、機能ドメイン制御手段および連携制御手段80による挙動制御を調整して資源の消費量を適宜調整し、機能ドメイン制御手段および連携制御手段80が消費する資源の残量を適切に管理することができる。その結果、資源の低減を極力抑えることができる。
【0071】
また、資源管理手段230は、車両モードに基づいて、あるいは車両モードと、資源の残量および機能ドメイン制御手段からの資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、資源を分配する機能ドメイン制御に優先順位を設定したり、分配量を設定することにより、機能ドメイン制御手段に適切に資源を分配することが望ましい。
【0072】
資源管理手段230は、連携制御手段80を設置した車両制御システム12においては、車両モードと、連携制御手段80が車両モードに基づいて機能ドメイン制御手段への資源の分配を指令する資源分配指令とに基づいて、機能ドメイン制御手段および連携制御手段80が使用する資源を管理することが望ましい。
【0073】
機能ドメイン制御手段の資源使用量および資源の使用優先順位等を資源管理手段230ではなく連携制御手段80が車両モードに基づいて連携制御し、資源要求指令として資源管理手段230に通知することにより、資源を管理する資源管理手段230の処理負荷が低減する。
【0074】
(2)時間軸上の資源管理
ここで、機能ドメイン制御手段および連携制御手段80による資源の消費量と、その結果残る資源の残量とは、時間軸上で一定ではなく、数m秒、数秒、数分等の時間範囲で異なる。そこで、資源管理手段230は、異なる時間範囲毎に資源の消費量および残量を予測し、予測結果に基づいて機能ドメイン制御手段および連携制御手段80に資源を分配する。これにより、時間範囲毎に予測した資源残量に基づき、時間範囲毎に適切に資源を分配できる。
【0075】
(3)エネルギー管理
資源管理手段230は、車両上の資源として、例えば、エネルギーである電気、熱、燃料等の資源、およびその他の資源の消費量、残量、分配量、分配するときの優先順位を管理する。
【0076】
(3−1)電気エネルギー
例えば、車両の移送時を表す車両モードである移送モードでは、車体制御装置50、ナビゲーション制御装置60等の車両の駆動系以外への電力供給をすべて停止することにより、電力消費を極力低減できる。
【0077】
また、高速走行中を表す高速走行モードにおいては、例えば、車両のトランクの開閉制御およびドアの開閉制御は不要である。したがって、高速走行モードにおいてトランクの開閉制御およびドアの開閉制御を停止することにより、車体制御装置50のトランクの開閉制御ECUおよびドアの開閉制御ECUの消費電力を高速走行以外の車両モードよりも低減できる。
【0078】
また、車両モードに応じて各種制御をスリープ状態とウェイクアップ状態とに切り替えれば、スリープ状態においてはウェイクアップさせるための制御以外の消費電力を削減できる。
【0079】
このように資源管理手段230は、車両モード毎に稼働の必要な制御と不必要な制御とを分類し、不必要な制御には電力を供給しないことにより、車両上で主に保管される電気エネルギーの消費を車両モードに基づいて適切に管理できる。
【0080】
また、各種制御を実施するECUがスリープ状態において定期的にウェイクアップ状態に移行するかを自身で判定する場合には、スリープ状態のECUの動作速度を低速にしてもよい。これにより、電気エネルギーの消費抑制を車両モードに基づいて適切に管理できる。
【0081】
(3−2)熱エネルギー
資源管理手段230は、電気エネルギーに加え、車両上の熱エネルギーを管理することが望ましい。これにより、資源管理手段230は、従来車両上で有効に使用されてこなかった熱エネルギーを、例えば熱タービンによる発電、あるいは暖房等に効果的に使用できる。
【0082】
(3−3)燃料エネルギー
資源管理手段230は、電気エネルギーおよび熱エネルギーに加え、車両上のエネルギーとして燃料の消費量を管理することが望ましい。資源管理手段230は、燃料消費量を極力低減するように管理することにより、燃費を向上することができる。
【0083】
尚、資源管理手段230は、電気エネルギーと熱エネルギーと燃料エネルギーの三つのエネルギーのうち一つまたは二つのエネルギーだけを管理してもよい。
(4)履歴による資源管理
資源管理手段230は、モード設定手段210が車両環境の履歴に基づいて設定した車両モードに基づいて資源を管理する。資源管理手段230は、車両環境の履歴に応じて、例えば資源消費量を抑制することで、資源を適切に管理できる。
【0084】
(5)運転指示
資源管理手段230は、モード設定手段210が設定した車両モードに基づいて、資源消費量を低減する運転を、音声またはディスプレイ等により指示してもよい。
【0085】
(6)動作速度の切り替え
資源管理手段230は、動作クロック、挙動制御時間の長さ、挙動制御の時間間隔等の動作速度を切り替え可能な機能ドメイン制御手段に対し、車両モードに基づいて、あるいは車両モードと、資源の残量および機能ドメイン制御手段からの資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、機能ドメイン制御手段の動作速度の切り替えを指示してもよい。
【0086】
(7)資源消費量の切り替え
資源管理手段230は、資源消費量を切り替え可能な機能ドメイン制御手段に対し、車両モードに基づいて、あるいは車両モードと、資源の残量および機能ドメイン制御手段からの資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、機能ドメイン制御手段の消費量の切り替えを指示してもよい。
【0087】
資源管理手段230は、車両モードに基づいて、あるいは車両モードと、資源の残量および機能ドメイン制御手段からの資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、資源消費量を大、中、小から選択して機能ドメイン制御手段に指示することにより、機能ドメイン制御手段のエネルギー消費を適切に管理できる。
【0088】
例えば、車両のエアコンの挙動を制御する機能ドメイン制御手段としてのエアコン制御手段に対し、資源管理手段230は、エアコン制御手段よりも優先順位の高い他の機能ドメイン制御手段による電力消費量が多くエアコン制御手段に使用要求値のすべての電力を供給すると電力の残量が所定値以下になる場合には、エアコン制御手段の電力消費量を使用要求値よりも一時的に低減するように指示する。その後、資源管理手段230は、電力の残量に余裕度に応じて制限していた電力使用量を補填することにより、エアコン能力を維持することも可能である。
【0089】
(8)電力の入出力時間応答特性
資源管理手段230は、車両モードに基づき、電力を供給する緊急度および容量に応じて、電力を供給する電源としてキャパシタまたはバッテリのいずれかを選択する。速やかに電力を供給する場合には、電力の入出力時間応答特性の早いキャパシタから電力を供給し、急ぐ必要はないが多くの電力を供給する場合には、電力の入出力時間応答特性がキャパシタよりも遅いバッテリから電力を供給する。
【0090】
電力の入出力時間応答特性以外にも、発電機および回生ブレーキによる電力生成の時間自由度および生成効率、機能ドメイン制御手段毎の電力消費特性等を考慮し、資源管理手段230は、電力の生成と消費との収支が車両モードに基づいて適切となるように電力を管理することが望ましい。
【0091】
(制御調整ルーチン)
次に、イントラボックス200が機能ドメイン制御手段による挙動制御を車両モードに基づいて調整する制御調整ルーチンのうち、資源管理ルーチン、異常判定ルーチン、車両モード設定ルーチンについて、図3から図11に基づいて説明する。図3から図11に示すルーチンは常時実行される。各ルーチンにおいて「S」はステップを表し、実質的に同じ処理を行うステップには同じステップ番号を付している。
【0092】
(資源管理ルーチン1)
図3のS300においてイントラボックス200は、車両が置かれた車両環境に基づいて車両モードを設定する。イントラボックス200は、車両モード毎に、分配する資源と、資源を分配する機能ドメイン制御手段または連携制御手段80を決定する。
【0093】
イントラボックス200は、S300で設定した車両モードを判定し(S302)、車両モードに応じて分岐したS304、S306、S308において、機能ドメイン制御手段または連携制御手段80に車両モードに基づいて適切な量の資源を分配し、本ルーチンを終了する。
【0094】
(資源管理ルーチン2)
図4のS310においてイントラボックス200は、車両環境の履歴を収集し、その履歴を解析することにより、車両モードの切り替え、個々の車両モードにおける資源の分配量、資源を分配する優先順位等を解析結果に基づいて修正する。
【0095】
S312においてイントラボックス200は、S310の修正結果に基づいて車両モードを設定し、車両モード毎に、分配する資源と、資源を分配する機能ドメイン制御手段または連携制御手段80を決定する。S312に続く処理は資源管理ルーチン1と同一である。
【0096】
(資源管理ルーチン3)
図5に示す資源管理ルーチン3では、図4の資源管理ルーチン2のS304、S306、S308において、車両モードに基づいて適切な量の資源を機能ドメイン制御手段に分配した後、S314においてイントラボックス200は、車両モードに応じて資源消費量を低減する運転を運転者に指示し、本ルーチンを終了する。
【0097】
(資源管理ルーチン4)
図6に示す資源管理ルーチン4では、図4の資源管理ルーチン2のS310とS302との間で、資源の残量を把握する(S320)。
【0098】
そして、S322においてイントラボックスは、S310における車両モードの修正結果と、S320で把握した資源残量とに基づいて車両モードを設定し、車両モード毎に、分配する資源と、資源を分配する機能ドメイン制御手段または連携制御手段80を決定する。S322に続く処理は資源管理ルーチン2と同一である。
【0099】
(資源管理ルーチン5)
図7に示す資源管理ルーチン5では、S302で車両モードを判定した後、イントラボックス200は、資源使用量を切り替え可能な機能ドメイン制御手段に対し、設定した車両モードに応じて資源の使用量の切り替えを指示する。イントラボックス200は、S330では要求値のすべての資源を分配し、S332においては要求値のすべてではないが正常な制御に必要な許容できる程度の資源を分配し、S334においては正常な制御には不足するが制御不能ではない程度の資源を分配する。
【0100】
(資源管理ルーチン6)
図8に示す資源管理ルーチン6では、イントラボックス200は、図6の資源管理ルーチン2のS302に代えて、S340において、車両モードと、資源を供給するときの時間応答特性とに基づいて、機能ドメイン制御手段の使用要求値および消費特性に応じた最適な供給元から資源を供給させる。
【0101】
(異常判定ルーチン1)
図9異常判定ルーチン1のS350においてイントラボックス200は、車両環境の履歴情報を収集し、収集した履歴情報が正常時の範囲またはパターンであるか異常時の範囲またはパターンであるかを分析する。イントラボックス200は、履歴情報が正常であれば、通常動作を指示する車両モードを設定し、履歴情報が異常であれば異常の種類に応じた退避走行を実施する複数の異常モードに車両モードを設定する。
【0102】
そして、イントラボックス200は、S350で設定した車両モードを判定し(S352)、S354、S356、S358において、車両モードに基づいて機能ドメイン制御手段による挙動制御を調整する。
【0103】
イントラボックス200は、S354において履歴情報が正常時の場合の通常モードにしたがって通常動作を指示し、S356、S358において履歴情報の異常種類に応じて設定された異なる異常モードにしたがい、異なる退避走行を指示する。
【0104】
(異常判定ルーチン2)
図10の異常判定ルーチン2では、イントラボックス200は、履歴情報の異常種類に応じ、退避走行を実施する複数の異常モードを盗難モード(S360)、保守モード(S364)、車両異常モード(S368)に分類し、それぞれの異常モード毎に適切な退避走行を実施する。
【0105】
イントラボックス200は、盗難モードの場合、制御対象に対する機能ドメイン制御手段による挙動制御を禁止する。これにより、イントラボックス200は、盗難モードにおいて車両走行を禁止する(S362)。
【0106】
イントラボックス200は、保守モードの場合、保守が必要と判断された制御対象の挙動を抑制する挙動制御を機能ドメイン制御手段に指示し、制御対象の劣化、消耗を極力抑制する(S366)。
【0107】
イントラボックス200は、盗難モードおよび保守モード以外の車両異常モードの場合、燃料噴射量等を制限することにより車両走行を制限した退避走行を指示する(S370)。
【0108】
S372においてイントラボックス200は、履歴情報に基づき、車両が正常モードかまたは異常モードであるかを表示する。
イントラボックス200は、S372において、盗難モードの場合には車両所有者に携帯電話等を介して盗難の発生を報知し、保守モードの場合には警告灯の点灯または音声メッセージにより車両所有者に保守の必要が発生したことを報知することが望ましい。また、盗難モードおよび保守モード以外の車両異常モードの場合には、イントラボックス200は、警告灯の点灯または音声メッセージにより車両所有者に車両走行を制限していることを報知することが望ましい。
【0109】
(車両モード設定ルーチン)
図11の車両モード設定ルーチンのS380においてイントラボックス200は、車両環境の履歴情報を運転者毎に収集して分析する。
【0110】
S382においてイントラボックス200は、マルコフ過程のような確率論に基づいて特定の車両環境の発生確率を推定し、初期値として設定されている車両モードに付加する条件および車両モードを変更する条件を算出する。
【0111】
そして、S384においてイントラボックス200は、S382において算出された車両モードの付加条件および変更条件に基づいて運転者毎に適切な車両モードを設定する。これにより、車両環境の運転者毎の履歴の使用確率に基づいて運転者毎に資源消費量を極力低減する車両モードを設定できる。
【0112】
以上説明したように、本実施形態のイントラボックス200では、モード設定手段210が車両環境に基づいて車両モードを設定し、設定された車両モードに基づいて制御調整手段220が機能ドメイン制御手段による挙動制御を調整し、機能ドメイン制御手段が共有して使用する資源を資源管理手段230が管理する。これにより、イントラボックス200は、変化する車両環境に応じて適宜適切な車両モードを設定し、設定された車両モードに基づいて機能ドメイン制御手段による挙動制御を適切に調整し、共有資源を適切に管理できる。
【0113】
また、機能ドメイン制御手段および連携制御手段80とは独立して資源管理手段230を有する制御調整手段220およびモード設定手段210がイントラボックス200に設けられているので、機能ドメイン制御手段の構成に変化があっても、イントラボックス200は、僅かな適応作業で、機能ドメイン制御手段による挙動制御を調整し、共有資源を管理できる。
【0114】
[他の実施形態]
上記実施形態では、機能ドメイン制御手段を複数設置した車両制御システムについて説明した。これに対し、機能ドメイン制御手段が一つだけの車両制御システムであってもよい。このシステム構成においても、機能ドメイン制御手段が複数の場合と同じイントラボックスを使用し、制御対象に対する機能ドメイン制御手段による挙動制御を車両モードに基づいて調整できる。
【0115】
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本実施形態による車両制御システムを示すブロック図。
【図2】連携制御手段を使用した車両制御システムを示すブロック図。
【図3】資源管理ルーチン1を示すフローチャート。
【図4】資源管理ルーチン2を示すフローチャート。
【図5】資源管理ルーチン3を示すフローチャート。
【図6】資源管理ルーチン4を示すフローチャート。
【図7】資源管理ルーチン5を示すフローチャート。
【図8】資源管理ルーチン6を示すフローチャート。
【図9】異常判定ルーチン1を示すフローチャート。
【図10】異常判定ルーチン2を示すフローチャート。
【図11】車両モード設定ルーチンを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0117】
10、12:車両制御システム、20:電源制御装置(機能ドメイン制御手段)、30:ステアリング制御装置(機能ドメイン制御手段)、40:ブレーキ制御装置(機能ドメイン制御手段)、50:車体制御装置(機能ドメイン制御手段)、60:ナビゲーション制御装置(機能ドメイン制御手段)、80:連携制御手段、200:イントラボックス(車両制御装置、モード設定手段、制御調整手段、資源管理手段)、210:モード設定手段、220:制御調整手段、230:資源管理手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された制御対象の挙動を機能ドメイン毎に制御する機能ドメイン制御手段とは独立して設けられ、前記車両の置かれた車両環境に基づいて車両モードを設定するモード設定手段と、
前記機能ドメイン制御手段とは独立して設けられ、前記機能ドメイン制御手段による前記挙動制御を前記車両モードに基づいて調整する制御調整手段と、
を備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記車両環境は、前記車両の走行状態および前記車両の周辺状況の少なくともいずれか一方であることを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記モード設定手段および前記制御調整手段は、複数の前記機能ドメイン制御手段の前記挙動制御に依存した連携を制御する連携制御手段とは独立して設けられ、
前記制御調整手段は、前記連携制御手段による連携制御を前記車両モードに基づいて調整することを特徴とする請求項1または2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記制御調整手段は、前記車両モードと、前記連携制御手段が前記車両モードに基づいて前記機能ドメイン制御手段への資源の分配を指令する資源分配指令とに基づいて、前記機能ドメイン制御手段および前記連携制御手段が使用する資源を管理する資源管理手段を有することを特徴とする請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記制御調整手段は、前記機能ドメイン制御手段が使用する資源を前記車両モードに基づいて管理する資源管理手段を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記資源管理手段は、長さの異なる時間範囲でそれぞれ予測した前記資源の残量に基づいて前記資源を管理することを特徴とする請求項4または5に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記モード設定手段は、前記車両環境の履歴に基づいて前記車両モードを設定することを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記モード設定手段は、前記車両環境の前記履歴が異常であれば、退避走行を指示する異常モードに前記車両モードを設定することを特徴とする請求項7に記載の車両制御装置。
【請求項9】
前記異常モードは初期設定された退避走行を指示することを特徴とする請求項8に記載の車両制御装置。
【請求項10】
前記モード設定手段は、前記車両環境の前記履歴の異常状態に応じて、異なる退避走行を指示する複数の前記異常モードを設定することを特徴とする請求項8に記載の車両制御装置。
【請求項11】
複数の前記異常モードの一つは車両の走行停止を指示する車両盗難モードであることを特徴とする請求項10に記載の車両制御装置。
【請求項12】
前記車両盗難モードは車両所有者への盗難報知を指示することを特徴とする請求項11に記載の車両制御装置。
【請求項13】
複数の前記異常モードの一つは、前記制御対象の挙動の抑制を指示する保守モードであることを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項14】
前記保守モードは車両所有者への保守報知を指示することを特徴とする請求項13に記載の車両制御装置。
【請求項15】
前記モード設定手段は、運転者毎の前記車両環境の前記履歴に基づいて運転者毎に前記車両モードを設定することを特徴とする請求項7から14のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項16】
前記モード設定手段は、少なくとも一つの前記車両環境において運転者毎に前記履歴の使用確率を解析し、この解析結果に基づいて運転者毎に前記車両モードを設定することを特徴とする請求項15に記載の車両制御装置。
【請求項17】
前記モード設定手段は、少なくとも一つの前記車両環境における運転者毎の前記履歴を地図情報から取得することを特徴とする請求項16に記載の車両制御装置。
【請求項18】
前記資源管理手段は、前記車両モードに応じた運転を運転者に指示することを特徴とする請求項4から17のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項19】
前記資源管理手段は少なくとも車両上のエネルギーを管理することを特徴とする請求項4から18のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項20】
前記エネルギーの少なくとも一つは電気エネルギーであることを特徴とする請求項19に記載の車両制御装置。
【請求項21】
前記電気エネルギーは少なくとも2種類以上の入出力時間応答特性を有し、
前記資源管理手段は前記入出力時間応答特性に応じて前記電気エネルギーを管理することを特徴とする請求項20に記載の車両制御装置。
【請求項22】
前記エネルギーの少なくとも一つは熱エネルギーであることを特徴とする請求項19から21のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項23】
前記エネルギーの少なくとも一つは車両に搭載された内燃機関の燃料であることを特徴とする請求項19から22のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項24】
前記資源管理手段は、動作速度を切り替え可能な前記機能ドメイン制御手段に対し、前記車両モードに基づいて、あるいは前記車両モードと、前記エネルギーの残量および前記機能ドメイン制御手段からの前記資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、前記動作速度の切り替えを指示することを特徴とする請求項20から22のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項25】
前記資源管理手段は、前記車両モードに基づいて、あるいは前記車両モードと、前記資源の残量および前記機能ドメイン制御手段からの前記資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、前記機能ドメイン制御手段に分配する前記資源を管理することを特徴とする請求項4から24のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項26】
前記資源管理手段は、前記資源の消費量を切り替え可能な前記機能ドメイン制御手段に対し、前記車両モードに基づいて、あるいは前記車両モードと、前記資源の残量および前記機能ドメイン制御手段からの前記資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて前記資源の消費量の切り替えを指示することを特徴とする請求項25に記載の車両制御装置。
【請求項27】
車両に搭載された制御対象の挙動を機能ドメイン毎に制御する機能ドメイン制御手段と、
請求項1から26のいずれか一項に記載の車両制御装置と、
を備えることを特徴とする車両制御システム。
【請求項1】
車両に搭載された制御対象の挙動を機能ドメイン毎に制御する機能ドメイン制御手段とは独立して設けられ、前記車両の置かれた車両環境に基づいて車両モードを設定するモード設定手段と、
前記機能ドメイン制御手段とは独立して設けられ、前記機能ドメイン制御手段による前記挙動制御を前記車両モードに基づいて調整する制御調整手段と、
を備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記車両環境は、前記車両の走行状態および前記車両の周辺状況の少なくともいずれか一方であることを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記モード設定手段および前記制御調整手段は、複数の前記機能ドメイン制御手段の前記挙動制御に依存した連携を制御する連携制御手段とは独立して設けられ、
前記制御調整手段は、前記連携制御手段による連携制御を前記車両モードに基づいて調整することを特徴とする請求項1または2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記制御調整手段は、前記車両モードと、前記連携制御手段が前記車両モードに基づいて前記機能ドメイン制御手段への資源の分配を指令する資源分配指令とに基づいて、前記機能ドメイン制御手段および前記連携制御手段が使用する資源を管理する資源管理手段を有することを特徴とする請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記制御調整手段は、前記機能ドメイン制御手段が使用する資源を前記車両モードに基づいて管理する資源管理手段を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記資源管理手段は、長さの異なる時間範囲でそれぞれ予測した前記資源の残量に基づいて前記資源を管理することを特徴とする請求項4または5に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記モード設定手段は、前記車両環境の履歴に基づいて前記車両モードを設定することを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記モード設定手段は、前記車両環境の前記履歴が異常であれば、退避走行を指示する異常モードに前記車両モードを設定することを特徴とする請求項7に記載の車両制御装置。
【請求項9】
前記異常モードは初期設定された退避走行を指示することを特徴とする請求項8に記載の車両制御装置。
【請求項10】
前記モード設定手段は、前記車両環境の前記履歴の異常状態に応じて、異なる退避走行を指示する複数の前記異常モードを設定することを特徴とする請求項8に記載の車両制御装置。
【請求項11】
複数の前記異常モードの一つは車両の走行停止を指示する車両盗難モードであることを特徴とする請求項10に記載の車両制御装置。
【請求項12】
前記車両盗難モードは車両所有者への盗難報知を指示することを特徴とする請求項11に記載の車両制御装置。
【請求項13】
複数の前記異常モードの一つは、前記制御対象の挙動の抑制を指示する保守モードであることを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項14】
前記保守モードは車両所有者への保守報知を指示することを特徴とする請求項13に記載の車両制御装置。
【請求項15】
前記モード設定手段は、運転者毎の前記車両環境の前記履歴に基づいて運転者毎に前記車両モードを設定することを特徴とする請求項7から14のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項16】
前記モード設定手段は、少なくとも一つの前記車両環境において運転者毎に前記履歴の使用確率を解析し、この解析結果に基づいて運転者毎に前記車両モードを設定することを特徴とする請求項15に記載の車両制御装置。
【請求項17】
前記モード設定手段は、少なくとも一つの前記車両環境における運転者毎の前記履歴を地図情報から取得することを特徴とする請求項16に記載の車両制御装置。
【請求項18】
前記資源管理手段は、前記車両モードに応じた運転を運転者に指示することを特徴とする請求項4から17のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項19】
前記資源管理手段は少なくとも車両上のエネルギーを管理することを特徴とする請求項4から18のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項20】
前記エネルギーの少なくとも一つは電気エネルギーであることを特徴とする請求項19に記載の車両制御装置。
【請求項21】
前記電気エネルギーは少なくとも2種類以上の入出力時間応答特性を有し、
前記資源管理手段は前記入出力時間応答特性に応じて前記電気エネルギーを管理することを特徴とする請求項20に記載の車両制御装置。
【請求項22】
前記エネルギーの少なくとも一つは熱エネルギーであることを特徴とする請求項19から21のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項23】
前記エネルギーの少なくとも一つは車両に搭載された内燃機関の燃料であることを特徴とする請求項19から22のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項24】
前記資源管理手段は、動作速度を切り替え可能な前記機能ドメイン制御手段に対し、前記車両モードに基づいて、あるいは前記車両モードと、前記エネルギーの残量および前記機能ドメイン制御手段からの前記資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、前記動作速度の切り替えを指示することを特徴とする請求項20から22のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項25】
前記資源管理手段は、前記車両モードに基づいて、あるいは前記車両モードと、前記資源の残量および前記機能ドメイン制御手段からの前記資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて、前記機能ドメイン制御手段に分配する前記資源を管理することを特徴とする請求項4から24のいずれか一項に記載の車両制御装置。
【請求項26】
前記資源管理手段は、前記資源の消費量を切り替え可能な前記機能ドメイン制御手段に対し、前記車両モードに基づいて、あるいは前記車両モードと、前記資源の残量および前記機能ドメイン制御手段からの前記資源の使用要求値の少なくとも一方とに基づいて前記資源の消費量の切り替えを指示することを特徴とする請求項25に記載の車両制御装置。
【請求項27】
車両に搭載された制御対象の挙動を機能ドメイン毎に制御する機能ドメイン制御手段と、
請求項1から26のいずれか一項に記載の車両制御装置と、
を備えることを特徴とする車両制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−149243(P2009−149243A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330540(P2007−330540)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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