説明

車両制御装置および車両制御方法

【課題】レーン移動動作を行う際に車両の姿勢を安定させることができなかった。
【解決手段】自車両の移動先の目標レーンを示す情報を含む推奨経路情報と、前記自車両が走行している自車走行レーンを示す情報を含む自車位置情報とを取得し、前記自車走行レーンが前記目標レーンと異なる場合に、前記自車両がレーン移動動作を行う予定であることを予測するレーン移動予測手段と、前記自車両がレーン移動動作を行う予定であると予測された場合に、前記自車両の姿勢を安定させるための安定制御を開始させるための開始条件を満たすか否かを判定する開始条件判定手段と、前記開始条件を満たすとき、前記安定制御を開始させる安定制御手段と、を備え、前記開始条件判定手段は、前記自車両がレーン区画線を跨いだ場合に前記開始条件を満たすと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の車両の姿勢を安定させるための車両制御装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行予定地点の道路形状、地形、気象条件などに応じて、自車両を制御する技術が知られている。特許文献1には、走行予定進路上にあるカーブが所定以上の急カーブである場合、当該カーブ進入の前に、サスペンションの減衰力や、車速、操舵角度を変更することによりカーブ走行時の車両の姿勢を安定させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−221043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術においては、レーン移動動作を行う際に車両の姿勢を安定させることはできなかった。
レーン移動動作を行うとき、車体がローリングするなどして車両の走行安定性が低下することがある。特許文献1に開示された技術において道路形状については考慮されているが、レーン移動動作を行う状況について特に考慮されていない。また、運転者がレーン移動動作を行う地点はカーブ地点に限られない。したがって、従来の技術ではレーン移動動作を行う際に車体の安定性を保つことができない。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、レーン移動動作を行う際に車両の姿勢を安定させるための車両制御技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明においては、自車両の移動先の目標レーンを示す情報を含む推奨経路情報と、自車走行レーンを示す情報を含む自車位置情報とを取得し、自車走行レーンが目標レーンと異なるとき、自車両がレーン移動動作を行う予定であることを予測し、所定の開始条件を満たすとき安定制御を開始させる。開始条件は、自車両がレーン区画線を跨ぐことである。すなわち、推奨経路情報に含まれる推奨レーン情報と自車走行レーン情報とに基づいて、レーン移動動作を予測し、安定制御を行うことができる。自車両においてレーン移動動作を行う予定であることを事前に予測し安定制御がなされるので、レーン移動動作に伴う車体のふらつきを軽減することができる。
【0006】
レーン移動予測手段において、推奨経路情報を取得する形態に特に制限はなく種々の構成を採用可能である。例えば、自車両に搭載されているナビゲート処理部によって探索された推奨経路情報を取得する構成を採用可能である。また例えば、各種通信によって取得してもよい。推奨経路情報は、レーンを区別した形式で構成されており、推奨経路を走行するにあたり推奨されるレーンである目標レーンを示す情報を含んでいる。
【0007】
レーン移動予測手段において、自車位置情報を取得する形態は、自車走行レーンの特定を含め、自車両の現在位置を特定することができればよく各種センサやカメラ、各種通信などによって取得される種々の情報に基づいて取得可能である。例えば、車両の位置をセンサやカメラによって特定する構成や、GPSからの信号や地図上での自車両の軌跡、車車間通信、路車間通信等によって自車両の現在位置を取得する構成を採用可能である。
【0008】
安定制御手段が行う安定制御は、レーン移動動作に伴う車体のふらつきを軽減し、車両の姿勢を安定させるための制御を指し、制御対象としては例えば、スタビライザ、サスペンション、ブレーキ、アクセル、ステアリング、スポイラ等である。もちろん、他の機構を制御対象としてもよい。
【0009】
また、推奨経路情報には、推奨経路上の案内地点を示す情報を含んでいてもよい。案内地点とは、自車両が進行方向を変更する地点を指す。当該案内地点を走行するためには、複数レーンが存在する場合には当該案内地点を通過前に、複数あるレーンのうちの目標レーンに移動しておく必要がある。具体的には例えば、右左折する交差点や、高速道路における合流地点・退出地点・分岐地点などを指す。目標レーンとは例えば、交差点で右折する場合であれば右折レーンを指す。
【0010】
安定制御手段においては、自車両から案内地点までの距離が短いほど安定制御の程度を強くしてもよい。距離が短いほど急なステアリング操作が必要となるためふらつきの度合いが大きくなることが予想される。この構成によると、距離に応じて制御の強さを変更することによって、適切に車両の姿勢を安定させることができる。なお、安定制御の程度を強くするとは、例えば制御対象機構に実施させる制御の量を大きくすることを意味する。
【0011】
また、安定制御手段において、自車走行レーンから目標レーンまでのレーン移動回数が多いほど安定制御の程度を強くしてもよい。レーン移動回数が多いほど、ステアリング操作が多くなりふらつきも大きくなることが予想される。この構成によると、レーン移動回数に応じて制御の強さを変更することによって、適切に車両の姿勢を安定させることができる。
【0012】
安定制御手段においては、この他にも例えば、自車走行レーンと目標レーンとの間に存在するレーンの幅員が広いほど安定制御の程度を強くするようにしてもよい。また例えば、車速が速いほど安定制御の程度を強くするようにしてもよい。
【0013】
安定制御手段においては、自車両がレーン区画線を跨ぎ、かつ、方向指示器の作動を検知したとき安定制御を開始させてもよい。レーン移動動作によるふらつきが発生する前に安定制御を実施することが望ましいが、運転者がまだレーン移動動作を実施しようとしていない段階からレーン移動動作によるふらつき対策用の安定制御を行うと、レーン移動動作前の乗り心地を悪化させてしまうおそれがある。方向指示器の作動を検知してから安定制御を行うことで、レーン移動動作前の乗り心地を悪化させることなく、レーン移動動作のための安定制御を行うことができる。
【0014】
また、安定制御手段においては、自車両の周囲の画像を取得し、画像に含まれる固定物の像の位置変化に基づいて安定制御を開始させてもよい。固定物の像の位置変化に基づいて自車両がレーン移動動作を行う予定であることを予測し安定制御を行うことで、前述のようにレーン移動動作前の乗り心地を悪化させることなく、レーン移動動作のための安定制御を行うことができる。自車両の周囲の画像に含まれる固定物の像としては例えば、路面に設けられている路面標示、道路標識などを想定しうる。
【0015】
さらに、本発明のように自車両の移動先の目標レーンと、自車走行レーンとが異なるとき自車両がレーン移動動作を行う予定であることを予測し、自車両の姿勢を安定させるための安定制御を行う手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のような車両制御装置、プログラム、方法は、単独の車両制御装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような車両制御装置を備えたナビゲーション装置や方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、車両制御装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】車両制御装置を含むナビゲーション装置のブロック図である。
【図2】レーン移動動作と安定制御を説明するための模式図である。
【図3】車両制御処理のフローチャートである。
【図4】レーン移動動作と安定制御を説明するための模式図である。
【図5】レーン移動動作と安定制御を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ナビゲーション装置の構成:
(2)車両制御処理:
(3)他の実施形態:
【0018】
(1)ナビゲーション装置の構成:
図1は、本発明にかかる車両制御装置を含むナビゲーション装置10の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20と記憶媒体30とを備えており、記憶媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムの一つとしてナビゲーションプログラム21を実施可能であり、当該ナビゲーションプログラム21はその機能の一つとして自車両がレーン移動動作を行う際に、車両の姿勢を安定させるための安定制御を行う機能を備えている。
【0019】
自車両(ナビゲーション装置10が搭載された車両)には、ナビゲーションプログラム21による機能を実現するためにGPS受信部40とカメラ部41と方向指示器制御部42と車速センサ43とスタビライザ制御部44とサスペンション制御部45とが備えられており、これらの各部と制御部20との信号の授受は図示しないインタフェースによって実現されている。
【0020】
GPS受信部40は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して自車両の現在位置を算出するための情報を出力する。制御部20は、この信号を取得して自車両の現在位置を取得する。自車両の現在位置は、後述する車両制御処理において、案内地点までの距離に基づいて安定制御の強さを設定するために利用される。
【0021】
カメラ部41は、自車両の周囲の画像を撮影し、画像信号を出力する。制御部20は図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、自車両の周囲の画像を取得する。カメラ部41は、自車両の前方を撮影するフロントカメラ、後方を撮影するリアカメラからなる。フロントカメラのみを用いる構成でもよいし、リアカメラのみを用いる構成でもよい。自車両の周囲の画像には、自車両の前方または後方の路面の画像が含まれている。
【0022】
方向指示器制御部42は、車内に取り付けられたレバーが右又は左に対応する方向に操作されると、車外に取り付けられた当該操作方向に対応するランプを点滅表示させる。また、方向指示器制御部42は、ランプが点滅中であるとき、方向指示器が作動中である旨の信号を出力する。制御部20は図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、後述する安定制御の開始条件や終了条件を判定する。車速センサ43は、自車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、自車両の速度を取得する。
【0023】
スタビライザ制御部44は、制御部20と図示しないインタフェースを介して接続され、制御部20の指示に応じてスタビライザのロール剛性を変更する機能を有する。例えばサスペンションアームの取り付け部に設けられている油圧シリンダのオイル流量を制御する。サスペンション制御部45は、制御部20と図示しないインタフェースを介して接続され、制御部20の指示に応じてサスペンションの硬さを変更する機能を有する。例えば、エアスプリングのばね定数やショックアブソーバの減衰力を変更する。
【0024】
制御部20は、ナビゲーションプログラム21を実行することにより、上述のようにして取得した各種情報に基づいて、自車両がレーン移動動作を行う予定であることを予測し、レーン移動動作が予測されたとき、車両の姿勢を安定させるための安定制御を行う。
【0025】
本実施形態においては、ナビゲーションプログラム21が前記安定制御を行うことにより、ナビゲーション装置10を本発明にかかる車両制御装置として機能させる。ナビゲーションプログラム21は、レーン移動予測部21aと安定制御部21dとを備えている。
また、記憶媒体30には、ナビゲーションプログラム21による案内を実施するため地図情報30aが記憶されている。地図情報30aは、道路上に設定されたノードを示すノードデータやノード同士の連結を示すリンクデータ、目標物を示すデータ等を含み、自車両の現在位置の特定や自車走行レーンの特定、目的地への案内等に利用される。
【0026】
レーン移動予測部21aは、推奨経路情報と自車位置情報とを取得し、それらの情報に基づいて自車両がレーン移動動作を行う予定であるかどうかを予測する。推奨経路情報取得部21bは、ナビゲーションプログラム21の図示しないナビゲート処理部によって探索された推奨経路情報を取得する。推奨経路情報は、レーンを区別した形式で構成されており、推奨経路を走行するにあたり推奨されるレーンである目標レーンを示す情報を含んでいる。なお、推奨経路情報取得部21bは各種通信によって推奨経路情報を取得してもよい。
【0027】
推奨経路情報には、推奨経路上の案内地点を示す情報も含まれている。案内地点とは、自車両が進行方向を変更する地点を指す。当該案内地点を走行するためには、複数レーンが存在する場合には当該案内地点を通過前に、複数あるレーンのうちの目標レーンに移動しておく必要がある。案内地点とは、具体的には例えば、右左折する交差点や、高速道路における合流地点・退出地点・分岐地点などであり、案内地点を示す情報とはそれら地点の緯度経度を示す値や、地図情報30aにおいて規定されている座標値などである。目標レーンとは例えば、交差点で右折する場合であれば右折レーンを指す。
【0028】
自車位置情報取得部21cは、自車走行レーンの特定を含め、自車両の現在位置を特定する。具体的には、GPS受信部40から取得した信号と地図情報30aとに基づいて、自車両の現在位置を特定する。より具体的には、緯度経度を示す値や、地図情報30aにおいて規定されている座標値として自車両の現在位置を特定する。さらに自車位置情報取得部21cは、カメラ部41から取得した画像信号を解析し、自車両が走行している自車走行レーンを特定する。
【0029】
自車走行レーンの特定方法は、具体的には例えば次の通りである。地図情報30aには、各リンクごとにリンクデータとして当該リンクに含まれるレーン数と、各レーンを区画するために路面に標示されているレーン区画線の線種パターンを示す情報とが含まれている。例えば図2に示すようにある道路に3つのレーンが区画され、それらレーンを区画するレーン区画線が左から実線、破線、破線、実線であるとすると、その道路に対応するリンクのリンクデータには、レーン数「3」と、線種パターンを示す情報として「実線、破線、破線、実線」が記憶されている。また線種パターンに対応する画像も記憶されている。自車位置情報取得部21cは、カメラ部41から取得した画像に含まれるレーン区画線を線種パターン画像とパターンマッチングし、自車走行レーンを特定する。自車両を基準としてすぐ左側のレーン区画線が実線で右側のレーン区画線が破線であると、最左のレーンが自車走行レーンであると特定する。左側のレーン区画線も右側のレーン区画線も共に破線であるときは中央のレーンが、左側のレーン区画線が破線で右側のレーン区画線が実線であるときは最右のレーンが自車走行レーンであると特定する。なお、リンクデータにはレーンの幅員を示す情報が含まれていても良い。
【0030】
また、レーン移動予測部21aは、安定制御の実施の開始条件を判定し、開始条件を満たすとき、後述する安定制御部21dに安定制御を実施させる。具体的にはレーン移動予測部21aは、方向指示器制御部42が出力した方向指示器の作動を示す情報を取得し、方向指示器が作動していることを開始条件としてもよい。また、カメラ部41から取得した自車両の周囲の画像を解析して、画像に含まれる固定物の像の位置変化に基づいて開始条件を判定してもよい。具体的には例えば自車両のレーン区画線への接近状況を判定し、自車両がレーン区画線を跨ぎ始めたことを開始条件としてもよい。自車両の周囲の画像に含まれる固定物の像としては例えば、その他の路面標示、道路標識なども想定しうる。
【0031】
また、レーン移動予測部21aは、安定制御の終了条件を判定し、終了条件を満たすとき、安定制御部21dに安定制御を終了させる。具体的には例えば、レーン区画線を跨ぎ終わって目標レーンに進入したこと、あるいは案内地点を通過したことを終了条件としてもよい。また、ステアリングの操舵角が直線走行時の角度に戻ったことや、方向指示器の作動が終了したことを終了条件としてもよい。
【0032】
安定制御部21dは、レーン移動予測部21aが自車両がレーン移動動作を行うと予測したとき、スタビライザ制御部44やサスペンション制御部45に指示して安定制御を実施させる。強弱設定部21eは、推奨経路情報や自車位置情報等に基づいてスタビライザ制御部44やサスペンション制御部45が実施する安定制御の程度を設定する。強弱設定部21eは、車速センサ43から取得した車速信号に基づいて安定制御の程度を設定してもよい。
以上、車両制御装置の構成を説明した。
【0033】
(2)車両制御処理:
次に、以上の構成においてナビゲーション装置10が実施する案内処理を説明する。自車両が走行中に、ナビゲーション装置10によってナビゲーションプログラム21が実行されているとき、図3に示す車両制御処理が一定期間毎に繰り返し実施される。
【0034】
はじめに、推奨経路情報取得部21bは、推奨経路情報を取得する(ステップS100)。具体的には例えば、図示しないナビゲート処理部によって探索された推奨経路情報を取得する。推奨経路情報には案内地点を示す情報が含まれている。次に、レーン移動予測部21aは、案内地点が接近しているかどうか判定する(ステップS105)。具体的には、自車位置情報取得部21cが取得した自車両の現在位置を示す情報を用いて、レーン移動予測部21aが自車両が案内地点の手前の予め決められた所定距離以内に接近したかどうか判定する。
【0035】
図2、図4および図5は、自車両Mが行うレーン移動動作と安定制御を説明するための図である。本実施形態においては、3つのレーンが存在する道路の先に推奨経路情報において右折が推奨されている交差点(案内地点P)が存在する場合を例にして説明する。推奨経路Rは当該交差点で右折する経路を示している。レーンLは、当該交差点で右折するために推奨される目標レーンである。図2は、自車両Mが最左レーンLを走行中であり、自車両Mの前方にある案内地点Pに接近中である状態を示している。ステップS105において自車両から案内地点までの距離(以降、距離Dという)が所定距離以内になったと判定されると、推奨経路情報取得部21bは、目標レーンを特定する(ステップS110)。具体的には、推奨経路情報を参照して、案内地点Pを走行するための目標レーンを示す情報を取得する。
【0036】
次に、自車位置情報取得部21cは、自車走行レーンを特定する(ステップS115)。具体的には、自車位置情報取得部21cは、カメラ部41から取得した画像に含まれるレーン区画線を線種パターン画像とパターンマッチングし、自車走行レーンを特定する。例えば図2の場合、自車両を基準としてすぐ左側のレーン区画線が実線で右側のレーン区画線が破線であるので、最左レーンLが自車走行レーンであると特定することができる。
【0037】
次に、レーン移動予測部21aは、目標レーンと自車走行レーンが異なるか判定する(ステップS120)。目標レーンと自車走行レーンが異なるとき、安定制御部21dは、自車両Mから案内地点Pまでの距離を取得する(ステップS125)。すなわちレーン移動予測部21aから距離Dを取得する。このときレーン移動回数を取得してもよい。例えば図2のように自車両Mが最左レーンLを走行している場合、3レーンあるうちの最右レーンである目標レーンLまでのレーン移動回数は2回である。
【0038】
次に、強弱設定部21eは、案内地点Pまでの距離に応じて安定制御の強さを設定する(ステップS130)。具体的には、自車両Mから案内地点Pまでの距離が短いほど安定制御の程度を強くする。距離が短いほど急なステアリング操作が必要となり、ふらつきの度合いが大きくなることが予想されるためである。また、レーン移動回数に応じて強さを設定してもよい。レーン移動回数が多いほどステアリング操作が多くなりふらつきも大きくなることが予想されるためである。安定制御に関しては例えば、スタビライザのロール剛性を硬くすることによって車体の傾きを軽減することができる。また例えば、レーン移動方向に応じて各車輪のショックアブソーバの減衰力を調整してもよい。その結果、適切に車両の姿勢を安定させることができる。なお、安定制御の程度を強くするとは、例えば制御対象機構に実施させる制御の量を大きくすることを意味する。
【0039】
なお、強弱設定部21eは、車速が速いほど上述のように安定制御の程度を強くしてもよい。また、自車走行レーンと目標レーンとの間に存在するレーン(図2、図4、図5の場合L)の幅員に応じて安定制御の程度を可変に設定してもよい。
【0040】
次に、レーン移動予測部21aは、車両情報を取得する(ステップS135)。具体的には例えば、方向指示器制御部42が出力する方向指示器の作動情報を取得する。次に、レーン移動予測部21aは、レーン区画線の情報を取得する(ステップS140)。具体的には例えば、カメラ部41が撮影した画像を取得し、自車両Mのレーン区画線への接近状況を解析する。
【0041】
次に、レーン移動予測部21aは、安定制御の開始条件を満たしたかどうか判定する(ステップS145)。具体的には、ステップS135、140で取得した情報に基づいて、目標レーンL側の方向指示器が作動中であり、自車両Mが目標レーンL側のレーン区画線を跨ぎ始めたかどうか判定する。なお、方向指示器が作動中であることと、レーン区画線を跨ぎ始めたことのどちらか一方を開始条件としてもよい。図4はこの開始条件を満たした状態を示している。安定制御部21dがスタビライザ制御部44およびサスペンション制御部45に、ステップS130で設定した程度で安定制御を開始させる。
【0042】
レーン移動動作によるふらつきが発生する前に安定制御を実施することが望ましいが、運転者がまだレーン移動動作を実施しようとしていない段階からレーン移動動作によるふらつき対策用の安定制御を行うと、レーン移動動作前の乗り心地を悪化させてしまうおそれがある。方向指示器の作動を検知してから安定制御を行うことで、レーン移動動作前の乗り心地を悪化させることなく、レーン移動動作のための安定制御を行うことができる。また、路面に標示されているレーン区画線のような固定物の像の位置変化に基づいて自車両がレーン移動動作を行う予定であることを予測し安定制御を行うことで、前述のようにレーン移動動作前の乗り心地を悪化させることなく、レーン移動動作のための安定制御を行うことができる。
【0043】
次に、レーン移動予測部21aは、安定制御の終了条件を満たしたかどうか判定する(ステップS155)。終了条件は、安定制御実施中であることと、自車両Mが目標レーンLに到達したこと等である。目標レーンLに到達したかどうかは例えば、自車両Mがレーン移動回数分レーン区画線を跨ぎ終わったこと(図5参照)、方向指示器の作動が終了したこと、ステアリングの操舵角が直進走行時の角度に戻ったことなどに基づいて判定することができる。自車両Mがレーン区画線を跨ぎ終わったことは、フロントカメラやリアカメラが撮影する画像に基づいて判定可能である。
【0044】
終了条件を満たしたとき、安定制御を終了させる(ステップS160)。具体的には、レーン移動予測部21aは終了条件を満たしたとき安定制御部21dに通知し、安定制御部21dはスタビライザ制御部44およびサスペンション制御部45に指示してステップS150にて開始した安定制御を終了させる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態においては、推奨経路情報に含まれる推奨レーン情報と自車走行レーン情報とに基づいて、レーン移動動作を予測し、安定制御を行うので、レーン移動動作に伴う車体のふらつきを軽減することができる。その結果、レーン移動に際して快適な乗り心地を提供することができる。
【0046】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、自車両の走行中に、当該自車両がレーン移動動作を行う予定であることを当該レーン移動動作の実施前に予測し、自車両の姿勢を安定させるための安定制御を行うことによって車体のふらつきを軽減することができる限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。安定制御の制御対象としては次のようなものも想定しうる。例えば、アクセルやブレーキシステムを制御して、車速が急激に変化しないように調整することによって車体のふらつきを軽減するようにしてもよい。また、ステアリング操作量に対する操舵角を調整してもよい。また例えば、スポイラの角度を変更してもよい。もちろん、さらに他の機構を制御対象としてもよい。
【0047】
さらに、上記実施形態では自車走行レーンを特定する構成としてカメラ部41を用いて画像解析する構成を説明したが、例えばGPS受信部40が取得する信号の誤差が自車走行レーンを特定するのに十分に小さいものであれば、必ずしも画像解析を行う必要はない。また例えば、車車間通信、路車間通信等によって自車両の現在位置や自車走行レーンを特定する構成であってもよい。
【0048】
さらに、上記実施形態では案内地点として交差点を例にあげて説明したが、この他にも例えば高速道路の合流地点や退出地点、分岐地点を通過する前のレーン移動の場合にも本発明を適用することができる。この場合、安定制御の終了条件として、これらの案内地点を通過したことが加味されてもよい。
【0049】
さらに、上記実施形態では案内地点までの距離、レーン移動回数、車速に応じて安定制御の強弱を変更することを説明したが、例えば道路がカーブしている場所においてレーン移動動作を行う際にレーン移動の方向に応じて安定制御の強弱を変更してもよい。具体的には例えば、右側にカーブしている道路において左レーンから右レーンにレーン移動する場合は、右レーンから左レーンに移動する場合よりも安定制御の程度を強くしてもよい。
また例えば、路面の画像を解析することによって、轍などの凹凸が路面にあることを検出した場合、路面が平坦な場合よりも安定制御の程度を強くしてもよい。また、道路の前後左右の勾配に応じて安定制御の程度を調整してもよい。
【0050】
また、安定制御を開始するのは、ナビゲート処理部によって前方にある交差点や合流地点が音声案内されるタイミングであってもよい。例えば、「まもなく右折です」などの音声と同期させてもよい。ナビゲート処理部によって案内地点が音声案内されるタイミングは例えば、案内地点から所定距離手前を自車両が通過する時点、あるいは、案内地点を通過が予測される時点の所定秒前などである。
【0051】
また、上記実施形態では、推奨経路情報を取得し目標レーンや案内地点を基準としてレーン移動動作の予測を行う構成を説明したが、推奨経路の経路案内中でない場合であっても、例えば、方向指示器の作動を検知したときや、自車両がレーン区画線を跨ぎ始めたときに上述の安定制御を開始してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10:ナビゲーション装置、20:制御部、21:ナビゲーションプログラム、21a:レーン移動予測部、21b:推奨経路情報取得部、21c:自車位置情報取得部、21d:安定制御部、21e:強弱設定部、30:記憶媒体、30a:地図情報、40:GPS受信部、41:カメラ部、42:方向指示器制御部、43:車速センサ、44:スタビライザ制御部、45:サスペンション制御部、D:距離、L:最左レーン、L:目標レーン、M:自車両、P:案内地点、R:推奨経路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の移動先の目標レーンを示す情報を含む推奨経路情報と、前記自車両が走行している自車走行レーンを示す情報を含む自車位置情報とを取得し、前記自車走行レーンが前記目標レーンと異なる場合に、前記自車両がレーン移動動作を行う予定であることを予測するレーン移動予測手段と、
前記自車両がレーン移動動作を行う予定であると予測された場合に、前記自車両の姿勢を安定させるための安定制御を開始させるための開始条件を満たすか否かを判定する開始条件判定手段と、
前記開始条件を満たすとき、前記安定制御を開始させる安定制御手段と、
を備え、
前記開始条件判定手段は、前記自車両がレーン区画線を跨いだ場合に前記開始条件を満たすと判定する、
車両制御装置。
【請求項2】
前記推奨経路情報は、推奨経路上の案内地点を示す情報を含み、
前記目標レーンは、前記案内地点を走行するためのレーンであり、
前記安定制御手段は、前記自車両から前記案内地点までの距離が短いほど前記安定制御の程度を強くする、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記安定制御手段は、前記自車走行レーンから前記目標レーンまでのレーン移動回数が多いほど前記安定制御の程度を強くする、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の車両制御装置。
【請求項4】
自車両の移動先の目標レーンを示す情報を含む推奨経路情報と、前記自車両が走行している自車走行レーンを示す情報を含む自車位置情報とを取得し、前記自車走行レーンが前記目標レーンと異なる場合に、前記自車両がレーン移動動作を行う予定であることを予測するレーン移動予測工程と、
前記自車両がレーン移動動作を行う予定であると予測された場合に、前記自車両の姿勢を安定させるための安定制御を開始させるための開始条件を満たすか否かを判定する開始条件判定工程と、
前記開始条件を満たすとき、前記安定制御を開始させる安定制御工程と、
を含み、
前記開始条件判定工程において、前記自車両がレーン区画線を跨いだ場合に前記開始条件を満たすと判定する、
車両制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−150126(P2012−150126A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−88245(P2012−88245)
【出願日】平成24年4月9日(2012.4.9)
【分割の表示】特願2007−65673(P2007−65673)の分割
【原出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】