説明

車両制御装置及び車両制御方法

【課題】自動ブレーキの作動により停止した車両を、長時間に亘って停止させ続けることが可能な車両制御装置、車両制御方法を提供する。
【解決手段】車両に衝突が発生した際に、ブレーキ16を作動させて車両を自動停止させる。そして、車両が停止した場合には、シフトポジションアクチュエータ17の制御により、シフトポジションをパーキングに切り替える。従って、無理なく車両の停止状態を継続させることが可能となり、車両が再度動き出すことを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ブレーキが作動して車両が停止した際にこの停止状態を安定的に維持する車両制御装置、及び車両制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に衝突(一次衝突)が発生した場合に、自動的にブレーキを作動させて車両を速やかに停止させることにより、二次衝突を回避するブレーキ制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。ところが、特許文献1に開示された技術では、車両が停止した後に、運転者の意思により車両を移動させることができるように、自動ブレーキを作動させて車両が停止した後に、自動ブレーキによる制動を自動的に解除する構成となっている。このため、路面の傾斜等により車両が動き出してしまう可能性がある。
【0003】
そこで、この問題を解決するために、自動ブレーキを解除せずに制動を継続させると、制動装置が高い油圧を発生し続けることになり、衝突後の車両を長時間停止状態に維持することが難しい。また、電動でブレーキを作動させる手法を採用することも考えられるが、衝突の衝撃で電力の供給が停止した場合には、ブレーキを作動させ続けられない場合が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−235969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、特許文献1に開示された従来例では、車両に衝突が発生した場合には自動ブレーキを作動させることにより、速やかに車両を停止させて二次衝突の発生を回避することができるものの、その後長時間に亘って停止させることができず、路面が傾斜している場合等には車両が動き出す等の問題が発生していた。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、自動ブレーキの作動により停止した車両を、長時間に亘って停止させ続けることが可能な車両制御装置及び車両制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本願発明の車両制御装置は、車両に衝突が発生した際に、ブレーキを作動させて車両を自動停止させる自動ブレーキ制御手段と、前記自動ブレーキ制御手段によりブレーキが作動して車両が停止した後に、シフトポジションをパーキングに切り替えるシフトポジション切り替え手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本願発明の車両制御方法は、車両に衝突が発生した際に、自動的にブレーキを作動させて車両を停止させるステップと、前記車両が停止した後に、車両のシフトポジションをパーキングに切り替えるステップと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る車両制御装置、車両制御方法では、車両に衝突が発生した際に自動ブレーキを作動させて車両を停止させ、その後、自動ブレーキを解除すると共にシフトポジションをパーキングに切り替えるので、無理なく車両の停止状態を継続させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る車両制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】車両が交差点で衝突したときの様子を示す説明図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る車両制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1実施形態に係る車両制御装置の、各信号の変化を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る車両制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態に係る車両制御装置の、各信号の変化を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る車両制御装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、この車両用制御装置は、エアバッグ制御部12とESC制御部(Electronic Stability Control)13からなるコントローラ11と、車両に生じる加速度を検出する加速度センサ14と、エアバッグ制御部12の制御下で作動して車両衝突時における乗員を保護するエアバッグ15と、車両に衝突が発生した場合にESC制御部(自動ブレーキ制御手段)13の制御下で制動信号が出力されて車両を停止させるブレーキ16と、車両に搭載されるオートマチックトランスミッションのシフトポジションを切り替えるシフトポジションアクチュエータ(シフトポジション切り替え手段)17と、を備えている。
【0012】
エアバッグ制御部12は、加速度センサ14で検出される加速度が所定の閾値を超えた場合に、エアバッグ15に駆動信号を出力して該エアバッグを展開させて乗員を保護する。
【0013】
ESC制御部13は、加速度センサ14で検出される加速度が前述の閾値(エアバッグ15を作動させる際の閾値)に達した場合に、ブレーキ16に制動信号を出力して車両を停止させるように制御する。また、ブレーキ16の作動により車両が自動停止した場合には、その後、シフトポジションアクチュエータ17に操作信号を出力して、シフトポジションがパーキングとなるように制御する。
【0014】
次に、図3に示すフローチャートを参照して、第1実施形態に係る車両制御装置の動作について説明する。初めにステップS11において、ESC制御部13は、車両に一次衝突が発生したことを検知すると、ステップS12において、このときの加速度、及び車速Vを検知する。例えば、図2に示すように、自車両22が交差点を右折する際に、直進車両21と衝突した場合に(一次衝突が発生した場合に)、加速度センサ14で検出される加速度G、及び車両に搭載される速度計より車速Vを取得する。
【0015】
ステップS13において、ESC制御部13は、加速度Gが予め設定した加速度閾値G0以上であるか否かを判断し、G≧G0である場合には(ステップS13でYES)、ステップS14に処理を進め、G<G0である場合には(ステップS13でNO)、ブレーキ16を作動させずに本処理を終了する。
【0016】
ステップS14において、ESC制御部13は、ブレーキ16に制動信号を出力して車両を停止させる。即ち、ESC制御部13は、車両に衝突が発生した際に、ブレーキを作動させて車両を自動停止させる自動ブレーキ制御手段としての機能を備える。また、これと同時に、エアバッグ制御部12は駆動信号を出力してエアバッグ15を展開させる。
【0017】
次いで、ステップS15において、ESC制御部13は、車速Vがゼロであるか否かを判定する。そして、車速Vがゼロとなった場合(停止した場合)には(ステップS15でYES)、ステップS16において、ESC制御部13は、ブレーキ16の制動を解除する。
【0018】
その後、ステップS17において、ESC制御部13は、シフトポジションアクチュエータ17に制御信号を送信してシフトポジションがパーキングとなるように切り替える。その結果、車両はブレーキ16が解除された後においても停止状態を維持することとなる。即ち、シフトポジションアクチュエータ17は、自動ブレーキ制御手段によりブレーキが作動して車両が停止した後に、シフトポジションをパーキングに切り替えるシフトポジション切り替え手段としての機能を備える。
【0019】
次に、上述した第1実施形態の動作を図4に示すタイミングチャートを参照して説明する。図4(a)は車両に一次衝突が発生するタイミングを示し、(b)はエアバッグ15の作動を示し、(c)はブレーキ16の作動を示し、(d)はパーキングポジションの設定状態を示し、(e)は車速を示している。
【0020】
図4(a)に示す時刻t1において車両に一次衝突が発生すると、(b)に示す時刻t2にてエアバッグ15が作動し、その後、(c)に示すように自動的にブレーキ16が作動し時刻t3でフル制動となる。これに伴って(e)に示すように車速が徐々に低下し、時刻t4にて車速がゼロとなると、(d)に示すようにシフトポジションがパーキングに設定される。こうして、一次衝突が発生した場合には、ブレーキ16を自動的に作動させて車両を停止させ、その後、シフトポジションをパーキングに切り替えて、車両の停止状態を維持することができるのである。
【0021】
このようにして、本実施形態に係る車両制御装置では、一次衝突が発生して車両が自動的に停止した場合には、その後、シフトポジションをパーキングに設定するので、衝突後に車両の停止状態を維持することができる。従って、路面が傾斜している場合等においても車両が再度動き出すという問題を回避することができる。また、高い油圧を発生させ続けてブレーキを作動させる構成ではないので、車両が長時間の停車する場合であっても、確実に停車状態を維持することが可能となる。
【0022】
次に、本発明の第2実施形態に係る車両制御装置ついて説明する。装置構成は図1と同一であるので構成説明を省略する。以下、図5に示すフローチャートを参照して、第2実施形態に係る車両制御装置の動作について説明する。
【0023】
初めにステップS31において、ESC制御部13は、車両に一次衝突が発生したことを検知すると、ステップS32において、このときの加速度G、及び車速Vを検知する。
【0024】
ステップS33において、ESC制御部13は、加速度Gが予め設定した加速度閾値G0以上であるか否かを判断し、G≧G0である場合には(ステップS33でYES)、ステップS34に処理を進め、G<G0である場合には(ステップS33でNO)、ブレーキ16を作動させずに本処理を終了する。
【0025】
ステップS34において、ESC制御部13は、ブレーキ16に制動信号を出力する。また、これと同時に、エアバッグ制御部12は駆動信号を出力してエアバッグ15を展開させる。
【0026】
ステップS35において、ESC制御部13はタイマ13aを作動させる。更に、ステップS36において、タイマ13aによる計時時間が予め設定した所定時間T1に達したか否かを判定する。
【0027】
そして、所定時間T1が経過した場合には(ステップS36でYES)、ステップS37において、ESC制御部13は、車速Vがゼロであるか否かを判定する。そして、車速Vがゼロとなった場合(停止した場合)には(ステップS37でYES)、ステップS38において、ESC制御部13は、ブレーキ16の制動を解除する。
【0028】
その後、ステップS39において、ESC制御部13は、シフトポジションアクチュエータ17に制御信号を送信してシフトポジションがパーキングとなるように切り替える。その結果、車両はブレーキ16が解除された後においても停止状態を維持することとなる。
【0029】
次に、上述した第2実施形態の動作を図6に示すタイミングチャートを参照して説明する。図6(a)は車両に一次衝突が発生するタイミングを示し、(b)はエアバッグの作動を示し、(c)はブレーキ16の作動を示し、(d)はパーキングポジションの設定状態を示し、(e)は車速を示している。
【0030】
図6(a)に示す時刻t11において車両に一次衝突が発生すると、(b)に示す時刻t12にてエアバッグ15が作動し、その後、(c)に示すように自動的にブレーキ16が作動し時刻t13でフル制動となる。これに伴って(e)に示すように車速が徐々に低下し、時刻t14にて車速がゼロとなる。そして、ブレーキ16がフル制動となった時刻t13から所定時間T1が経過した時刻t15において、ブレーキ16が解除され、(d)に示すようにシフトポジションがパーキングに設定される。こうして、一次衝突が発生した場合には、ブレーキ16を自動的に作動させて車両を停止させ、その後、ブレーキ16の作動を所定時間T1だけ継続し、その後、シフトポジションをパーキングに切り替えることにより、車両の停止状態を維持することができるのである。
【0031】
このようにして、第2実施形態に係る車両制御装置では、一次衝突が発生して車両が自動的に停止した場合には、所定時間T1だけブレーキの作動を継続させ、その後シフトポジションをパーキングに設定する。従って、車両が停止した後において、運転者が何らかの運転操作をしたい場合には、即時に運転操作を行うことができる。また、所定時間T1が経過すると、シフトポジションがパーキングに設定されるので、一次衝突の発生後に車両の停止状態を維持することができる。
【0032】
以上、本発明の車両制御装置、及び車両制御方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0033】
例えば、上述した各実施形態では、ブレーキ16を自動的に作動させる条件として、エアバッグ15を作動させるトリガとなる加速度を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、任意に設定する加速度にてブレーキ16を自動的に作動させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、車両に一次衝突が発生した際に、車両を確実に停止させることに利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
11 コントローラ
12 エアバッグ制御部
13 ESC制御部
13a タイマ
14 加速度センサ
15 エアバッグ
16 ブレーキ
17 シフトポジションアクチュエータ
21 直進車両
22 自車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に衝突が発生した際に、ブレーキを作動させて車両を自動停止させる自動ブレーキ制御手段と、
前記自動ブレーキ制御手段によりブレーキが作動して車両が停止した後に、シフトポジションをパーキングに切り替えるシフトポジション切り替え手段と、
を備えたことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記自動ブレーキ制御手段によるブレーキの作動が開始した後の経過時間を計時するタイマを更に備え、
前記シフトポジション切り替え手段は、前記自動ブレーキ制御手段によりブレーキが作動してから所定時間が経過した後に、前記シフトポジションをパーキングに切り替えることを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
車両に衝突が発生した際に、自動的にブレーキを作動させて車両を停止させるステップと、
前記車両が停止した後に、車両のシフトポジションをパーキングに切り替えるステップと、
を備えたことを特徴とする車両制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−232618(P2012−232618A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100749(P2011−100749)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】