説明

車両制御装置

【課題】 後続車両の追突を防止しつつ、緊急停止を速やかに行うことができる車両制御装置を提供する。
【解決手段】 車両制御装置のECUは、まず後続車両監視センサの検出値に基づいて、後続車両に関する走行特性の学習処理を行う。続いて、地震の発生により自車両を緊急停止させる必要があるために後続車両に追突される可能性があるかどうかを判断する(手順S12)。地震発生により後続車両に追突される可能性があると判断されたときは、緊急停止することを後続車両の運転者に知覚させて減速を促すための警告車間時間を算出する(手順S13)。そして、その警告車間時間を目標とした減速制御を行う(手順S14)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行中に地震等の緊急事態が発生した際に車両を緊急減速させるように制御する車両制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震等により車両を緊急停止させる必要がある場合に車両を制御する車両制御装置としては、例えば特許文献1に記載されているような地震情報配信システムを利用し、地震速報を受信したときに車両を緊急減速させるように制御することが考えられる。
【特許文献1】特開2007−47936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
地震速報の受信時に車両を緊急停止させる際には、後続車両の追突を回避するように自車両の減速を行う必要がある。しかし、後続車両の走行特性(ドライバ特性)を何ら考慮することなく自車両と後続車両との車間を一律に設定すると、自車両の制動距離が不必要に長くなり、自車両の緊急停止を無駄に長引かせてしまう場合がある。
【0004】
本発明の目的は、後続車両の追突を防止しつつ、緊急停止を速やかに行うことができる車両制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、自車両を緊急減速させるように制御する車両制御装置であって、自車両の後方に存在する後続車両の走行に関する特性情報を取得する特性情報取得手段と、後続車両の走行に関する特性情報に基づいて、後続車両に対して減速を促すための警告車間時間を設定する車間時間設定手段と、警告車間時間を目標として自車両の減速制御を行う減速制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0006】
このような車両制御装置において、例えば地震発生により自車両を緊急停止させる必要が生じた場合には、後続車両の走行に関する特性情報を取得し、その特性情報に基づいて、後続車両に対して減速を促すための警告車間時間を設定し、この警告車間時間を目標として自車両の減速制御を行う。この場合には、自車両と後続車両との車間が通常時よりも短くなるため、後続車両の運転者の注意喚起が促され、後続車両も減速するようになる。これにより、自車両への後続車両の追突を防止しつつ、自車両を速やかに緊急停止させることができる。
【0007】
好ましくは、減速制御手段は、警告車間時間において後続車両が減速したかどうかを判断し、後続車両が減速したと判断されたときは、警告車間時間を目標とした自車両の減速制御を継続して行い、後続車両が減速していないと判断されたときは、警告車間時間よりも長い車間時間を目標として自車両の減速制御を行う。
【0008】
警告車間時間を目標とした自車両の減速制御が行われても、万が一後続車両が減速しないときは、減速している自車両に後続車両が追突する可能性がある。この場合には、警告車間時間よりも長い車間時間を目標として自車両の減速制御を行うことにより、自車両への後続車両の追突を確実に防止することができる。
【0009】
また、好ましくは、車間時間設定手段は、自車両に対する後続車両の衝突余裕時間の最短許容値よりも短い時間を警告車間時間に設定する。この場合には、後続車両の運転者に対して注意喚起を促すのに適切な警告車間時間を確実に設定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、後続車両の追突を防止しつつ、緊急停止を速やかに行うことができる。これにより、例えば地震等の緊急事態が発生しても適切に対処することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係わる車両制御装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明に係わる車両制御装置の一実施形態を示す概略構成図である。同図において、本実施形態の車両制御装置1は、例えば高速道路の走行中に地震発生により自車両を緊急停止させる必要性が生じた場合に、自車両の後方を走行する後続車両との車間に留意しながら、自車両を適切に緊急減速させるように制御する装置である。
【0013】
車両制御装置1は、CPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするECU(Electronic Control Unit)2を備えている。
【0014】
ECU2には、地震速報情報を受信する通信機3と、後続車両の状態を監視する後続車両監視センサ4と、自車両の走行速度を検出する車速センサ5とが接続されている。通信機3は、例えば緊急地震速報システムで使用される車載用通信機である。後続車両監視センサ4としては、例えばミリ波レーダや赤外線レーダ等のレーダやカメラが用いられる。また、後続車両監視センサ4としては、レーダ等に加えて、車車間通信機能を有するインフラセンサ等を用いても良い。
【0015】
また、ECU2には、ブレーキを駆動させるブレーキ駆動部6と、ブレーキランプや後続車両に対して警報音を発するブザー等の警報部7とが接続されている。
【0016】
ECU2は、通信機3により受信した地震速報情報と後続車両監視センサ4及び車速センサ5の検出値とを入力し、緊急減速制御に関する所定の処理を行い、ブレーキ駆動部6及び警報部7を制御する。
【0017】
図2は、ECU2により実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。同図において、まず後続車両監視センサ4の検出値に基づいて、後続車両に関する走行特性(ドライバ特性)の学習処理を行う(手順S11)。この学習処理は、自車両の通常走行中に常時実行される。
【0018】
具体的には、後続車両に関する走行特性のパラメータとしては、希望車間時間と最短許容TTC(Time to Collision)とがある。希望車間時間は、個々の運転者が好む車間時間(車間距離/自車速度)であり、道路自体(高速道と一般道)、天候(晴れと雨)及び時間帯(昼と夜)等の運転条件によっても変わってくる。また、最短許容TTCは、先行車両に対する衝突余裕時間の最短許容値のことであり、やはり個々の運転者や運転条件によって異なる。最短許容TTCは、例えば希望車間時間の平均値に係数を掛けて求めても良いし、希望車間時間に対して統計処理(標準偏差等)を施して求めても良い。
【0019】
本処理では、後続車両監視センサ4により後続車両を監視し続け、後続車両監視センサ4の検出値に基づいて後続車両の走行特性(希望車間時間及び最短許容TTC)を学習し、その学習データをメモリに記憶しておく。
【0020】
続いて、通信機3の受信情報に基づいて、地震の発生により自車両を緊急停止させる必要があるために後続車両に追突される可能性があるかどうかを判断する(手順S12)。後続車両が通信機3を搭載していない場合には、後続車両は地震速報情報を入手できないため減速動作を行うことができず、後続車両が自車両に追突する可能性が高くなる。従って、通信機3より地震速報情報を受信したか否かによって、追突の可能性を判断する。
【0021】
地震発生により後続車両に追突される可能性があると判断されたときは、緊急停止することを後続車両の運転者に知覚させて減速を促すための警告車間時間を算出する(手順S13)。具体的には、例えば上記の手順S11で得られた最短許容TTCに所定の係数(例えば0.9)を掛けた値を警告車間時間とする。つまり、最短許容TTCよりも短い時間を警告車間時間に設定する。このとき、運転者に混乱を与えずに注意喚起を促すことができるような係数を用いる必要がある。
【0022】
そして、警告車間時間に応じた制御信号をブレーキ駆動部6に送出することにより、警告車間時間を目標とした減速制御を行う(手順S14)。このとき、自車両と後続車両との相対速度が0km/hとなるように減速制御を行う。また、後続車両の運転者に注意喚起をより促すために、ブレーキ駆動部6の制御と並行して、警報部7を制御して例えばブレーキランプを低滅させる。
【0023】
その後、車速センサ5の検出値に基づいて、自車両が停止していないかどうかを判断し(手順S15)、自車両が停止したときは、本制御処理を終了する。自車両が停止していないときは、後続車両監視センサ4等の検出値に基づいて、後続車両が減速していないかどうかを判断する(手順S16)。
【0024】
後続車両が減速しているときは、上記の手順S14の減速制御を継続して行う。ここで、TTCは時間規定であるため、自車両の速度が下がれば自車両と後続車両との車間距離が短くなる。
【0025】
一方、後続車両が減速していないときは、後続車両が追突する可能性が高くなるため、警告車間時間よりも長い安定車間時間を算出する(手順S17)。具体的には、上記の希望車間時間と最短許容TTCとの間の車間時間(例えば両者の平均車間時間)を安定車間時間とする。
【0026】
そして、安定車間時間に応じた制御信号をブレーキ駆動部6に送出することにより、安定車間時間を目標とした車間制御を行う(手順S18)。そして、自車両と後続車両との車間時間が安定車間時間に達した後、上記の手順S13以降の処理を再度実行する。
【0027】
以上において、後続車両監視センサ4とECU2の上記手順S11とは、自車両の後方に存在する後続車両の走行に関する特性情報を取得する特性情報取得手段を構成する。ECU2の上記手順S13は、後続車両の走行に関する特性情報に基づいて、後続車両に対して減速を促すための警告車間時間を設定する車間時間設定手段を構成する。ECU2の上記手順S14〜S18と車速センサ5及びブレーキ駆動部6とは、警告車間時間を目標として自車両の減速制御を行う減速制御手段を構成する。
【0028】
以上のように本実施形態にあっては、地震速報情報が受信されると、自車両と後続車両との間の車間時間が警告車間時間となるように自車両の減速制御を行うので、後続車両の運転者に注意喚起を短い時間で促すことができる。この場合には、後続車両は追突を避けるために速やかに緊急減速を行うようになるため、結果的に自車両の緊急停止を速やかに実施することができる。
【0029】
このとき、後続車両の運転者が脇見運転等により自車両の減速に万が一気づかない場合には、後続車両は減速されないこととなる。この場合には、自車両と後続車両との間の車間時間が一旦安定車間時間となるように車間制御を行うので、後続車両が自車両に追突することが回避される。
【0030】
以上により、後続車両が地震速報情報を入手できない場合であっても、自車両と後続車両との追突の防止と、自車両の迅速な緊急停止の実現とを両立させることが可能となる。
【0031】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態は、地震が発生した際に自車両を緊急停止させるように制御するものであるが、本発明は、特に地震発生時に限られず、突発的に自車両を緊急減速させる必要のある状況であれば、適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係わる車両制御装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】図1に示したECUにより実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
1…車両制御装置、2…ECU(特性情報取得手段、車間時間設定手段、減速制御手段)、4…後続車両監視センサ(特性情報取得手段)、5…車速センサ(減速制御手段)、6…ブレーキ駆動部(減速制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両を緊急減速させるように制御する車両制御装置であって、
前記自車両の後方に存在する後続車両の走行に関する特性情報を取得する特性情報取得手段と、
前記後続車両の走行に関する特性情報に基づいて、前記後続車両に対して減速を促すための警告車間時間を設定する車間時間設定手段と、
前記警告車間時間を目標として前記自車両の減速制御を行う減速制御手段とを備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記減速制御手段は、前記警告車間時間において前記後続車両が減速したかどうかを判断し、前記後続車両が減速したと判断されたときは、前記警告車間時間を目標とした前記自車両の減速制御を継続して行い、前記後続車両が減速していないと判断されたときは、前記警告車間時間よりも長い車間時間を目標として前記自車両の減速制御を行うことを特徴とする請求項1記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記車間時間設定手段は、前記自車両に対する前記後続車両の衝突余裕時間の最短許容値よりも短い時間を前記警告車間時間に設定することを特徴とする請求項1または2記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−46040(P2009−46040A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214780(P2007−214780)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】