説明

車両制御装置

【課題】車両制御装置において、作動流体の無駄な供給を抑制して燃費の向上を可能とする。
【解決手段】車両に搭載されたエンジン11にトルクコンバータ及び動力伝達クラッチ13を介して変速機14を連結し、この変速機14に減速・差動機構を介して駆動輪を連結し、エンジン停止許可条件が成立したかどうかを判定するエンジン停止判断部66と、エンジン停止許可条件が成立したときにエンジン11を自動停止可能なエンジン制御部(自動停止手段)67と、エンジン制御部67によりエンジン11が自動停止したときに車速に応じて変速機14の制御油圧を調整する変速機制御部69を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の動力伝達装置として、ベルト式の無段変速機(CVT)が各種提案されている。この無段変速機は、駆動側に設けられるプライマリプーリと、出力側に設けられるセカンダリプーリと、プライマリプーリとセカンダリプーリとの間に掛け回される駆動ベルトとを有して構成されている。そして、各プーリに対する駆動ベルトの巻き付け径の比率(プーリ比)を油圧により変化させることで、出力回転数を無段階に調整することができる。
【0003】
このような無段変速機としては、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。この特許文献1に記載された無段変速機の制御装置は、プライマリプーリの回転数が所定値以下であり、車速が所定値以下であり、且つ、車両の減速度が所定値よりも大きいときに、セカンダリ圧を高い圧力に設定し、駆動ベルトがプライマリプーリに対して滑りを発生させる変速速度を高く設定し、急減速が行われて極低車速状態となり、プライマリプーリの回転数が急低下しても、駆動ベルトのグロススリップの発生を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−310276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の無段変速機の制御装置では、車両の急減速により極低車速状態となり、プライマリプーリの回転数が急低下したときには、セカンダリ圧を通常よりも上昇させることで、駆動ベルトがプライマリプーリに対して滑りを発生させる変速速度を高くし、駆動ベルトのグロススリップの発生を防止している。ところが、プライマリプーリの回転数が急低下したときにセカンダリ圧を急激に上昇させると、潤滑系としてのオイルポンプやアキュムレータなどに大きな負荷が作用し、オイル供給に対する損失が必要以上に大きくなり、燃費が悪化してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、作動流体の無駄な供給を抑制して燃費の向上を可能とする車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両制御装置は、車両に搭載される駆動源と、制御油圧に応じて前記駆動源の回転数を変速して駆動力を車輪に伝達するベルト式無段変速機と、前記車両の運転状態に応じて前記駆動源を自動停止可能な自動停止手段と、前記自動停止手段により前記駆動源が自動停止したときに車速に応じて前記ベルト式無段変速機の制御油圧を調整する制御油圧調整手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記車両制御装置にて、前記制御油圧調整手段は、車速が低いほど制御油圧が低油圧となるように調整することが好ましい。
【0009】
上記車両制御装置にて、前記制御油圧調整手段は、前記駆動源が自動停止したとき、車速が予め設定された所定の低車速よりも低かったら、車速に応じて前記ベルト式無段変速機の制御油圧を調整することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る車両制御装置は、駆動源が自動停止したときに車速に応じてベルト式無段変速機の制御油圧を調整するので、作動流体の無駄な供給を抑制して燃費の向上を可能とするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施形態1に係る車両制御装置を表す概略構成図である。
【図2】図2は、実施形態1の車両制御装置を表す制御ブロック図である。
【図3】図3は、実施形態1の車両制御装置によるエンジン停止制御の処理の流れを表すフローチャートである。
【図4】図4は、車速に対する変速機の必要油圧を表すグラフである。
【図5】図5は、本発明の実施形態2に係る車両制御装置によるエンジン停止制御の処理の流れを表すフローチャートである。
【図6】図6は、車速に対する変速機の必要油圧を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る車両制御装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0013】
〔実施形態1〕
図1は、本発明の実施形態1に係る車両制御装置を表す概略構成図、図2は、実施形態1の車両制御装置を表す制御ブロック図、図3は、実施形態1の車両制御装置によるエンジン停止制御の処理の流れを表すフローチャート、図4は、車速に対する変速機の必要油圧を表すグラフである。
【0014】
実施形態1の車両制御装置において、図1に示すように、車両10は、エンジン11と、トルクコンバータ12と、動力伝達クラッチ13と、変速機14と、減速・差動機構15と、駆動輪16とを搭載している。ここで、エンジン11が本発明の駆動源として機能する。
【0015】
エンジン11は、車両10の動力源であり、燃料の燃焼エネルギをクランクシャフト(出力軸)21の回転運動に変換して出力することができる。トルクコンバータ12は、オイル(作動流体)を介して動力を伝達する流体伝達装置であり、ポンプインペラ31とタービンランナ32を有している。ポンプインペラ31は、エンジン11のクランクシャフト21と接続されており、タービンランナ32は、動力伝達クラッチ13と連結軸33により連結されている。従って、エンジン11からポンプインペラ31に入力される回転は、作動流体を介してタービンランナ32に伝達され、連結軸33を介して動力伝達クラッチ13に入力される。
【0016】
動力伝達クラッチ13は、摩擦係合式のクラッチ装置であり、開放することでエンジン11と変速機14との動力伝達を遮断することができる。この動力伝達クラッチ13は、入力側係合部材41と出力側係合部材42を有している。入力側係合部材41は、連結軸33によりタービンランナ32と連結されており、出力側係合部材42は、変速機14と連結されている。また、この動力伝達クラッチ13は、油圧または電磁力などにより作動するアクチュエータにより入力側係合部材41と出力側係合部材42とが接近離反可能となっている。従って、動力伝達クラッチ13は、このアクチュエータが作用させるクラッチ圧(クラッチ係合圧)に応じて、完全係合状態、半係合状態、開放状態との間で切替わることができる。なお、アクチュエータは、半係合状態における動力伝達クラッチ13の係合度合い、即ち、スリップ量やスリップ率を制御可能となっている。
【0017】
変速機14は、ベルト式無段変速機であって、エンジン11と駆動輪16、具体的には、動力伝達クラッチ13と減速・差動機構15とを接続するものである。変速機14は、プライマリプーリ51とセカンダリプーリ52とベルト53と図示しない油圧制御装置を有している。プライマリプーリ51は、プライマリ固定シーブ51aとプライマリ可動シーブ51bとプライマリシャフト51cを有する。セカンダリプーリ52は、セカンダリ固定シーブ52aとセカンダリ可動シーブ52bとセカンダリシャフト52cを有している。そして、プライマリ固定シーブ51aとプライマリ可動シーブ51bとの間に形成された略V字形状のプライマリ溝と、セカンダリ固定シーブ52aとセカンダリ可動シーブ52bとの間に形成された略V字形状のセカンダリ溝との間に、無端のベルト53が掛け回されている。変速機14は、このベルト53を介して、プライマリプーリ51からセカンダリプーリ52に動力が伝達される。
【0018】
油圧制御装置は、プライマリプーリ51及びセカンダリプーリ52に供給する油圧(制御油圧)を制御することで、変速機14の変速比を制御可能となっている。ここで、変速比は、入力軸であるプライマリシャフト51cの回転速度を、出力軸であるセカンダリシャフト52cの回転速度で除算した値である。つまり、変速比は、プライマリシャフト51cとセカンダリシャフト52cとの回転速度比に相当する。従って、油圧制御装置は、供給油圧を調節し、プライマリ溝の溝幅とセカンダリ溝の溝幅を変化させることで、変速比を無段階に変化させることができる。
【0019】
減速・差動機構15は、変速機14におけるセカンダリシャフト52cと駆動輪16とを連結するものであり、ギヤの組合せによる減速機構及び差動機構を有している。従って、変速機14から入力される回転は、減速・差動機構15により減速され、且つ、左右の駆動輪16に分配される。
【0020】
車両10は、図2に示すように、電子制御ユニット(ECU)61を搭載しており、このECU61は、エンジン11、動力伝達クラッチ13、変速機14を制御することができる。ECU61は、ドライバによるエンジン11の操作状態やこのエンジン11の運転状態に基づいて、インジェクタによる燃料噴射量、燃料噴射タイミング、点火プラグによる点火時期などを制御することができる。
【0021】
また、ECU61は、車両10を制御することで、減速エコラン制御やフリーラン制御(以下、エコラン制御)を実行することができる。このエコラン制御は、動力伝達クラッチ13を開放してエンジン11と変速機14との動力伝達を遮断し、その後、エンジン11を停止させた状態で車両10を惰性走行させるものである。このエコラン制御は、エンジン11における燃料消費が停止することで、燃費の向上を図ることができる。
【0022】
即ち、ECU61は、車両10の走行中に、エンジン自動停止条件(例えば、ドライバによるアクセルペダルが所定時間踏込まれていないなど)が成立すると、動力伝達クラッチ13を開放してエンジン11を自動停止する。また、ECU61は、エンジン11が自動停止した車両10の走行中に、エンジン自動始動条件(例えば、ドライバによるアクセルペダルの踏込みなど)が成立すると、動力伝達クラッチ13を接続してエンジン11を自動始動する。ECU61がエンジン11を自動停止するときには、エンジン11への燃料供給と点火を停止する。
【0023】
具体的に説明すると、ECU61は、ブレーキセンサ62、アクセル操作量センサ63、車速センサ64、勾配センサ65が接続されている。ブレーキセンサ62は、ブレーキペダルに対する操作量やブレーキ操作の有無を検出することができる。ブレーキペダルに対する操作量は、例えば、ブレーキペダルのペダルストロークやブレーキペダルに入力される踏力などである。また、ブレーキ操作の有無は、例えば、スイッチによって検出される。アクセル操作量センサ63は、アクセルペダルに対する操作量、例えば、アクセル開度を検出することができる。車速センサ64は、車両10の走行速度を検出することができ、また、各車輪の回転速度に基づいて車速を検出する。
【0024】
勾配センサ65は、車両10が走行している路面の勾配を検出することができる。この勾配センサ65は、例えば、車両10の前後方向の傾きに基づいて、車両10が走行する道路の表面の勾配を検出または推定する。ECU61は、各センサ62,63,64,65の検出結果を示す信号が入力される。
【0025】
また、ECU61は、エンジン停止判断部66を有している。このエンジン停止判断部66は、ブレーキセンサ62、アクセル操作量センサ63、車速センサ64、勾配センサ65のそれぞれの検出結果に基づいてエンジン11を停止するか否かを判断する。即ち、エンジン停止判断部66は、例えば、ブレーキペダルが踏み込まれている条件、アクセル開度が0である条件、車速が所定車速以下で走行している条件、路面の勾配が所定範囲内である条件を含むエンジン停止許可条件を有し、この全ての条件が成立すると、エンジン11を停止してエコラン制御を実行すると判断する。
【0026】
ECU61は、エンジン11を制御するエンジン制御部67、動力伝達クラッチ13を制御するクラッチ制御部68、変速機14を制御する変速機制御部69を有している。ここで、エンジン制御部67は、本発明の自動停止手段として機能し、変速機制御部69は、本発明の制御油圧調整手段として機能する。
【0027】
エンジン制御部67は、エンジン停止判断部66がエンジン11を停止しないと判断した場合、目標トルクに基づいてエンジン制御量を決定し、決定したエンジン制御量に基づいてエンジン11を制御する。このエンジン制御量は、例えば、燃料の噴射制御に係る制御量や点火制御に係る制御量である。また、クラッチ制御部68は、エンジン停止判断部66がエンジン11を停止しないと判断した場合、目標クラッチ油圧に基づいて動力伝達クラッチ13を制御する。また、変速機制御部69は、目標回転数に基づいて変速機制御量を決定し、決定した変速機制御量に基づいて変速機14を制御する。変速機制御量は、例えば、変速比や変速比の変化速度(変速速度)を実現するための制御量であって、変速機14の油圧制御装置に出力する。
【0028】
また、エンジン制御部67は、エンジン停止判断部66がエンジン11を停止すると判断した場合、目標トルクに拘わらずエンジン制御量を0とし、燃料噴射及び点火を停止するようにエンジン11を制御する。クラッチ制御部68は、エンジン停止判断部66がエンジン11を停止すると判断した場合、エンジン11を停止する前に目標クラッチ油圧に拘わらずクラッチ圧を0として動力伝達クラッチ13を開放する。
【0029】
ところで、車両10の走行中にエンジン停止許可条件が成立したら、動力伝達クラッチ13を開放してからエンジン11を停止するが、このとき、このエンジン11で駆動するオイルポンプ(図示略)が停止することから、変速機14にて、油圧制御装置がプライマリプーリ51やセカンダリプーリ52に供給する油圧を確保することが困難となる。
【0030】
そこで、実施形態1では、エンジン停止判断部66がエンジン11を停止すると判断したとき、クラッチ制御部68が動力伝達クラッチ13を開放し、エンジン制御部67がエンジン11を自動停止した後、ECU61における変速機制御部69は、車速に応じて変速機14の制御油圧、つまり、油圧制御装置がプライマリプーリ51やセカンダリプーリ52に供給する油圧(制御油圧)を調整する。
【0031】
このとき、変速機制御部69は、車速が低いほど制御油圧が低油圧となるように調整する。また、変速機制御部69は、エンジン11が自動停止したとき、車速が予め設定された所定の低車速よりも低かったら、車速に応じて変速機14の制御油圧を調整する。
【0032】
以下、実施形態1の車両制御装置によるエンジン停止制御について、図3のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0033】
実施形態1の車両制御装置において、図3に示すように、エンジン停止判断部66は、走行する車両10にて、エンジン停止許可条件が成立したかどうかを判定しており、エンジン停止許可条件が成立したら、クラッチ制御部68は、動力伝達クラッチ13を開放(クラッチ圧を0と)し、エンジン制御部67は、エンジン11を停止する。
【0034】
ステップS11にて、ECU61は、車両10の走行中にエンジン11が自動停止されたかどうかを判定する。ここで、車両10の走行中にエンジン11が自動停止されていないと判定されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。一方、車両10の走行中にエンジン11が自動停止されたと判定されたら、ステップS12にて、車速が予め設定された所定の低車速V1(例えば、10km/h)よりも低いかどうかを判定する。ここで、車速がこの所定の低車速V1以上であると判定されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。
【0035】
一方、車速が所定の低車速V1よりも低いと判定されたら、ステップS13にて、変速機制御部69は、車速に対する変速機14の必要油圧を算出する。この場合、図4に示す車速に対する変速機14の必要油圧を表すグラフから変速機14の必要油圧を求めればよい。この図4に示す車速に対する変速機14の必要油圧を表すグラフは、予め実験により求めたものであり、車速が低車速V1より低い低車速領域では、車速の増加に対して変速機14の必要油圧が比例して増加する傾向を示し、低車速V1以上の領域では、車速の増加に対して変速機14の必要油圧が一定となる傾向を示している。つまり、所定の低車速V1は、車速の増加に対して変速機14の必要油圧が比例して増加する領域の最高車速となっている。なお、車速の増加に対して変速機14の必要油圧は、各種の運転状態に応じて相違することから、各運転状態に応じて複数のグラフを用意しておくことが望ましい。
【0036】
ここで、車速に対する変速機14の必要油圧が算出されたら、ステップS14にて、変速機制御部69は、変速機14にこの必要油圧、つまり、変速機制御量を出力する。そして、変速機14では、油圧制御装置がプライマリプーリ51やセカンダリプーリ52に必要油圧(変速機制御量)に応じた制御油圧を供給することで、変速比を設定する。なお、変速機制御部69が車速に対して変速機14の制御油圧を設定する制御は、エンジン11が始動されたら解除される。
【0037】
このように実施形態1の車両制御装置にあっては、車両10に搭載されたエンジン11にトルクコンバータ12及び動力伝達クラッチ13を介して変速機14を連結し、この変速機14に減速・差動機構15を介して駆動輪16を連結し、エンジン停止許可条件が成立したかどうかを判定するエンジン停止判断部66と、エンジン停止許可条件が成立したときにエンジン11を自動停止可能なエンジン制御部(自動停止手段)67と、エンジン制御部67によりエンジン11が自動停止したときに車速に応じて変速機14の制御油圧を調整する変速機制御部69を設けている。
【0038】
従って、変速機14では、車速に応じて必要となる制御油圧がリニアに変化することから、エンジン11が自動停止したときに、車速に応じて変速機14の制御油圧を調整することで、変速機14は、車速に応じて適正な制御油圧だけを確保することとなり、オイルポンプやアキュムレータなどの潤滑系によるオイル(作動流体)の無駄な供給を抑制することができ、その結果、燃費を向上することができる。
【0039】
また、実施形態1の車両制御装置では、変速機制御部69は、車速が低いほど制御油圧が低油圧となるように調整している。従って、変速機制御部69は、変速機14に対して車速に応じて最低限の制御油圧を供給することができ、燃費を向上することができる。
【0040】
また、実施形態1の車両制御装置では、変速機制御部69は、エンジン11が自動停止したとき、車速が予め設定された所定の低車速V1よりも低かったら、車速に応じて変速機14の制御油圧を調整している。従って、車速に応じて必要となる制御油圧がリニアに変化する低車速領域だけで、車速に応じて変速機14の制御油圧を調整しており、適正に変速機14の制御油圧を設定することができる。
【0041】
〔実施形態2〕
図5は、本発明の実施形態2に係る車両制御装置によるエンジン停止制御の処理の流れを表すフローチャート、図6は、車速に対する変速機の必要油圧を表すグラフである。なお、本実施形態の車両制御装置の基本的な構成は、上述した実施形態1とほぼ同様の構成であり、図1及び図2を用いて説明すると共に、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0042】
実施形態2の車両制御装置において、図1及び図2に示すように、車両10は、エンジン11と、トルクコンバータ12と、動力伝達クラッチ13と、変速機14と、減速・差動機構15と、駆動輪16とを搭載している。また、車両10は、電子制御ユニット(ECU)61を搭載しており、このECU61は、エンジン11、動力伝達クラッチ13、変速機14を制御することができる。
【0043】
即ち、ECU61は、ブレーキセンサ62、アクセル操作量センサ63、車速センサ64、勾配センサ65が接続されている。また、ECU61は、エンジン停止判断部66を有している。このエンジン停止判断部66は、ブレーキセンサ62、アクセル操作量センサ63、車速センサ64、勾配センサ65の検出結果に基づいてエンジン11を停止するか否かを判断する。即ち、エンジン停止判断部66は、エンジン停止許可条件が成立すると、エンジン11を停止してエコラン制御を実行すると判断する。
【0044】
また、ECU61は、エンジン制御部67とクラッチ制御部68と変速機制御部69を有している。エンジン制御部67は、エンジン停止判断部66がエンジン11を停止すると判断した場合、目標トルクに拘わらずエンジン制御量を0とし、燃料噴射及び点火を停止するようにエンジン11を制御する。クラッチ制御部68は、エンジン停止判断部66がエンジン11を停止すると判断した場合、エンジン11を停止する前に目標クラッチ油圧に拘わらずクラッチ圧を0として動力伝達クラッチ13を開放する。
【0045】
そして、実施形態2では、エンジン停止判断部66がエンジン11を停止すると判断したとき、クラッチ制御部68が動力伝達クラッチ13を開放し、エンジン制御部67がエンジン11を自動停止した後、ECU61における変速機制御部69は、車速に応じて変速機14の制御油圧、つまり、油圧制御装置がプライマリプーリ51やセカンダリプーリ52に供給する油圧(制御油圧)を調整する。
【0046】
ここで、変速機制御部69は、車速だけでなく、車両10が走行する路面の状況、つまり、路面摩擦係数μに応じて変速機14の制御油圧を調整する。
【0047】
以下、実施形態2の車両制御装置によるエンジン停止制御について、図5のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0048】
実施形態2の車両制御装置において、図5に示すように、ステップS21にて、ECU61は、車両10が走行する路面状況を判断する。この場合、例えば、車両重量、各駆動輪の制動力または駆動力に基づいて路面摩擦係数μを算出すればよい。
【0049】
エンジン停止判断部66は、走行する車両10にて、エンジン停止許可条件が成立したかどうかを判定しており、エンジン停止許可条件が成立したら、クラッチ制御部68は、動力伝達クラッチ13を開放(クラッチ圧を0と)し、エンジン制御部67は、エンジン11を停止する。
【0050】
そして、ステップS22にて、ECU61は、車両10の走行中にエンジン11が自動停止されたかどうかを判定する。ここで、車両10の走行中にエンジン11が自動停止されていないと判定されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。一方、車両10の走行中にエンジン11が自動停止されたと判定されたら、ステップS23にて、車速が予め設定された所定の低車速V1(例えば、10km/h)よりも低いかどうかを判定する。ここで、車速がこの所定の低車速V1以上であると判定されたら、何もしないでこのルーチンを抜ける。なお、所定の低車速V1は、路面の状況(路面摩擦係数μ)に応じて調整してもよい。
【0051】
一方、車速が所定の低車速V1よりも低いと判定されたら、ステップS24にて、変速機制御部69は、車速に対する変速機14の必要油圧を算出する。この場合、図6に示す車速に対する変速機14の必要油圧を表すグラフから変速機14の必要油圧を求めればよい。この図6に示す車速に対する変速機14の必要油圧を表すグラフは、予め実験により求めたものであり、車速が低車速V1より低い低車速領域では、車速の増加に対して変速機14の必要油圧が比例して増加する傾向を示し、低車速V1以上の領域では、車速の増加に対して変速機14の必要油圧が一定となる傾向を示している。つまり、所定の低車速V1は、車速の増加に対して変速機14の必要油圧が比例して増加する領域の最高車速となっている。
【0052】
また、車速の増加に対して変速機14の必要油圧は、路面摩擦係数μに応じて相違することから、本実施形態では、DRY路面(乾いた路面)、低μ路面(濡れた路面)に応じた2つの曲線を設定している。即ち、路面摩擦係数μが小さいほど、変速機14の必要油圧が大きくなっており、この場合、路面摩擦係数μに応じて低車速V1も相違することとなる。なお、この図6に示す3つの曲線も、予め実験により求めたものである。
【0053】
ここで、車速に対する変速機14の必要油圧が算出されたら、ステップS25にて、変速機制御部69は、変速機14にこの必要油圧、つまり、変速機制御量を出力する。そして、変速機14では、油圧制御装置がプライマリプーリ51やセカンダリプーリ52に必要油圧(変速機制御量)に応じた制御油圧を供給することで、変速比を設定する。なお、変速機制御部69が車速に対して変速機14の制御油圧を設定する制御は、エンジン11が始動されたら解除される。
【0054】
このように実施形態2の車両制御装置にあっては、エンジン停止判断部66がエンジン11を停止すると判断したとき、クラッチ制御部68が動力伝達クラッチ13を開放し、エンジン制御部67がエンジン11を自動停止した後、変速機制御部69は、車速及び路面摩擦係数μに応じて変速機14の制御油圧、つまり、油圧制御装置がプライマリプーリ51やセカンダリプーリ52に供給する油圧(制御油圧)を調整する。
【0055】
従って、変速機14では、車速に応じて必要となる制御油圧がリニアに変化すると共に、路面摩擦係数に応じて必要となる制御油圧が増減することから、エンジン11が自動停止したときに、車速と路面摩擦係数に応じて変速機14の制御油圧を調整することで、変速機14は、車速に応じて適正な制御油圧だけを確保することとなり、オイルポンプやアキュムレータなどの潤滑系によるオイル(作動流体)の無駄な供給を抑制することができ、その結果、燃費を向上することができる。
【符号の説明】
【0056】
11 エンジン(駆動源)
12 トルクコンバータ
13 動力伝達クラッチ
14 変速機
15 減速・差動機構
16 駆動輪
61 電子制御ユニット、ECU
62 ブレーキセンサ
63 アクセル操作量センサ
64 車速センサ
65 勾配センサ
66 エンジン停止判断部
67 エンジン制御部(自動停止手段)
68 クラッチ制御部
69 変速機制御部(制御油圧調整手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される駆動源と、
制御油圧に応じて前記駆動源の回転数を変速して駆動力を車輪に伝達するベルト式無段変速機と、
前記車両の運転状態に応じて前記駆動源を自動停止可能な自動停止手段と、
前記自動停止手段により前記駆動源が自動停止したときに車速に応じて前記ベルト式無段変速機の制御油圧を調整する制御油圧調整手段と、
を備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記制御油圧調整手段は、車速が低いほど制御油圧が低油圧となるように調整することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記制御油圧調整手段は、前記駆動源が自動停止したとき、車速が予め設定された所定の低車速よりも低かったら、車速に応じて前記ベルト式無段変速機の制御油圧を調整することを特徴とする請求項1または2に記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−225465(P2012−225465A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95403(P2011−95403)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】