車両制御装置
【課題】アイドリングストップ機能の実行中の急減速操作時に、無段変速機構のベルト滑り発生を抑制することができる車両制御装置を提供する。
【解決手段】車両制御装置は、動力伝達装置5に含まれるベルト式無段変速機構11のベルト挟圧力を発生させるために供給される油圧を増圧する増圧手段としてECU5のアキュムレータ制御部72、蓄圧制御弁45、アキュムレータ44を備え、アイドリングストップ機能の実行中に急減速操作が行われたときに、これら増圧手段により、ベルト式無段変速機構11に供給される油圧を増圧する。
【解決手段】車両制御装置は、動力伝達装置5に含まれるベルト式無段変速機構11のベルト挟圧力を発生させるために供給される油圧を増圧する増圧手段としてECU5のアキュムレータ制御部72、蓄圧制御弁45、アキュムレータ44を備え、アイドリングストップ機能の実行中に急減速操作が行われたときに、これら増圧手段により、ベルト式無段変速機構11に供給される油圧を増圧する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料消費量の低減を目的として、車両運転中に動力源(エンジン)を停止させる技術、所謂アイドリングストップ機能を備える車両が増えている。このような車両において、例えば特許文献1には、アイドリングストップ機能の実行中に運転者の急減速操作があった場合には、エンジンを始動して通常運転になるよう制御し、エンジンブレーキを利用して制動効果を高める技術が開示されている。
【0003】
また、エンジンから駆動輪への動力を伝達するための動力伝達装置の各構成要素を、エンジン動力により作動する機械式のメカポンプを供給源とする油圧によって制御する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−268120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、動力伝達装置の一要素としてベルト式の無段変速機構を含む構成の車両において、特許文献1などに記載される急減速時のエンジン制御を適用する場合を考える。このような車両において急減速操作が行われると、駆動輪側から車軸の回転数が急低下するため、動力伝達装置の内部の各回転数も急低下する。ベルト式の無段変速機構のプライマリプーリやセカンダリプーリは、イナーシャが大きく変速比も大きいため、この回転数の急低下に伴い急激なトルク変動が生じ、プライマリプーリとセカンダリプーリとを連結するベルトに滑りが発生する虞がある。
【0006】
このベルト滑りを抑制するためには、プライマリプーリまたはセカンダリプーリへ供給する油圧を増大させて、ベルト挟圧力を大きくする必要がある。この油圧はエンジン動力により作動するメカポンプを供給源とするが、メカポンプは、急減速操作を検知してからエンジンを始動するまではある程度の時間がかかるため、この間はベルト式の無段変速機構に充分な油圧を供給できない虞がある。このように、アイドリングストップ機能の実行中の急減速操作時には、ベルト式無段変速機構のベルト滑り発生を抑制できないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、車両の動力伝達装置の一要素としてベルト式の無段変速機構を含む構成の車両において、アイドリングストップ機能の実行中の急減速操作時に、無段変速機構のベルト滑り発生を抑制することができる車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両制御装置は、エンジンと、前記エンジンから駆動輪へ動力を伝達する動力伝達装置と、前記動力伝達装置に含まれるベルト式無段変速機構と、を備え、車両走行中に前記エンジンを停止させるアイドリングストップ機能を実行可能な車両制御装置において、前記ベルト式無段変速機構のベルト挟圧力を発生させるために供給される油圧を増圧する増圧手段を備え、前記アイドリングストップ機能の実行中に急減速操作が行われたときに、前記増圧手段により、前記ベルト式無段変速機構に供給される油圧を増圧することを特徴とする。
【0009】
また、上記の車両制御装置において、前記急減速操作が行われたか否かの判断は、ブレーキペダルのストローク量に基づき行うことが好ましい。
【0010】
また、上記の車両制御装置において、前記急減速操作が行われたか否かの判断は、前記ブレーキペダルが異なる所定のストローク量を通過するときに個別に切替可能に設けられた少なくとも2つのスイッチの状態に基づき行うことが好ましい。
【0011】
また、上記の車両制御装置は、前記ブレーキペダルのストローク量に応じて車両の各車輪に制動力を作用させるための液圧を調整するマスタシリンダにおける前記液圧の圧力を計測する計測手段と、前記スイッチが切り替えられたタイミングにおける前記計測手段により計測された前記マスタシリンダの前記液圧の圧力が、各スイッチごとに定められた所定範囲内にあるか否かで、前記スイッチに異常が発生しているか否かを判定する異常判定手段と、を備え、前記異常判定手段により前記スイッチの異常が判定された場合には、前記アイドリングストップ機能の実行を中止することが好ましい。
【0012】
また、上記の車両制御装置において、前記異常判定手段は、前記スイッチの切替タイミングの差分に応じて前記所定範囲を補正することが好ましい。
【0013】
また、上記の車両制御装置において、前記急減速操作が行われたか否かの判断は、ブレーキペダルのストローク量に応じて車両の各車輪に制動力を作用させるための液圧を調整するマスタシリンダにおける前記液圧の圧力に基づき行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車両制御装置は、アイドリングストップ機能の実行中に急減速操作が行われたときには、増圧手段により、ベルト式無段変速機構へ供給する油圧を増圧するため、ベルト挟圧力の要求量が増大する急減速時にベルト式無段変速機構のベルト挟圧力を増大させることが可能となり、ベルト滑りの発生を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る車両制御装置を搭載する車両の構成を示す概略図である。
【図2】図2は、図1に示す油圧制御装置の概略構成を示す図である。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態に係る車両制御装置の機能ブロック図である。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態の車両制御装置により実施される急制動判定に基づく油圧制御処理を示すフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の第1実施形態における急制動判定時のベルト挟圧力制御の一例を示すタイミングチャートである。
【図6】図6は、本発明の第2実施形態に係る車両制御装置の機能ブロック図である。
【図7】図7は、本発明の第2実施形態の車両制御装置により実施される急制動判定に基づく油圧制御処理を示すフローチャートである。
【図8】図8は、本発明の第2実施形態における急制動判定時のベルト挟圧力制御の一例を示すタイミングチャートである。
【図9】図9は、本発明の第3実施形態に係る車両制御装置の機能ブロック図である。
【図10】図10は、ブレーキストロークとブレーキマスタ圧との対応を示すタイミングチャートである。
【図11】図11は、図9中のフェール判定部におけるブレーキスイッチのフェール判定に用いるマップの一例を示す図である。
【図12】図12は、本発明の第3実施形態の車両制御装置により実施されるブレーキスイッチのフェール判定処理を示すフローチャートである。
【図13】図13は、本発明の第4実施形態に係る車両制御装置の機能ブロック図である。
【図14】図14は、図13中のフェール判定部におけるブレーキスイッチのフェール判定に用いるマップの一例を示す図である。
【図15】図15は、図14中の正常範囲補正量を設定するためのマップの一例を示す図である。
【図16】図16は、本発明の第4実施形態の車両制御装置により実施されるブレーキスイッチのフェール判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る車両制御装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0017】
[第1実施形態]
図1〜5を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る車両制御装置を搭載する車両2の構成を示す概略図であり、図2は、図1に示す油圧制御装置1の概略構成を示す図であり、図3は、図3は、本発明の第1実施形態に係る車両制御装置の機能ブロック図であり、図4は、本発明の第1実施形態の車両制御装置により実施される急制動判定に基づく油圧制御処理を示すフローチャートであり、図5は、本発明の第1実施形態における急制動判定時のベルト挟圧力制御の一例を示すタイミングチャートである。
【0018】
まず、図1を参照して、本実施形態に係る車両制御装置を搭載する車両2の構成について説明する。図1に示すように、この車両2は、走行時における動力源としてのエンジン3と、駆動輪4と、動力伝達装置5と、油圧制御装置1と、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)7とを備える。
【0019】
エンジン3は、車両2を走行させる走行用駆動源(原動機)であり、燃料を消費して車両2の駆動輪4に作用させる動力を発生させる。エンジン3は、燃料の燃焼に伴って機関出力軸であるクランクシャフト8に機械的な動力(エンジントルク)を発生させ、この機械的動力をクランクシャフト8から駆動輪4に向けて出力可能である。
【0020】
動力伝達装置5は、エンジン3から駆動輪4へ動力を伝達するものである。動力伝達装置5は、エンジン3から駆動輪4への動力の伝達経路中に設けられ、液状媒体としてのオイルの圧力(油圧)によって作動する。
【0021】
より詳細には、動力伝達装置5は、トルクコンバータ9、前後進切替機構10、無段変速機構11、減速機構12、デファレンシャルギヤ13等を含んで構成される。動力伝達装置5は、エンジン3のクランクシャフト8と無段変速機構11のインプットシャフト14とがトルクコンバータ9、前後進切替機構10等を介して接続され、無段変速機構11のアウトプットシャフト15が減速機構12、デファレンシャルギヤ13、駆動軸16等を介して駆動輪4に接続される。
【0022】
トルクコンバータ9は、エンジン3と前後進切替機構10との間に配置され、エンジン3から伝達された動力のトルクを増幅させて(又は維持して)、前後進切替機構10に伝達することができる。トルクコンバータ9は、回転自在に対向配置されたポンプインペラ9a及びタービンランナ9bを備え、フロントカバー9cを介してポンプインペラ9aをクランクシャフト8と一体回転可能に結合し、タービンランナ9bを前後進切替機構10に連結して構成されている。そして、これらポンプインペラ9a及びタービンランナ9bの回転に伴って、ポンプインペラ9aとタービンランナ9bとの間に介在された作動油などの粘性流体が循環流動することにより、その入出力間の差動を許容しつつトルクを増幅して伝達することが可能である。
【0023】
また、トルクコンバータ9は、タービンランナ9bとフロントカバー9cとの間に設けられ、タービンランナ9bと一体回転可能に連結されたロックアップクラッチ9dをさらに備える。このロックアップクラッチ9dは、後述の油圧制御装置1から供給されるオイルの圧力によって作動し、フロントカバー9cとの係合状態(ロックアップON)と解放状態(ロックアップOFF)とに切り替えられる。ロックアップクラッチ9dがフロントカバー9cと係合している状態では、フロントカバー9c(すなわちポンプインペラ9a)とタービンランナ9bが係合され、ポンプインペラ9aとタービンランナ9bとの相対回転が規制され、入出力間の差動が禁止されるので、トルクコンバータ9は、エンジン3から伝達されたトルクをそのまま前後進切替機構10に伝達する。
【0024】
前後進切替機構10は、エンジン3からの動力(回転出力)を変速可能であると共に、その回転方向を切替可能である。前後進切替機構10は、遊星歯車機構17、摩擦係合要素としての前後進切替クラッチ(フォワードクラッチ)C1及び前後進切替ブレーキ(リバースブレーキ)B1等を含んで構成される。遊星歯車機構17は、相互に差動回転可能な複数の回転要素としてサンギヤ、リングギヤ、キャリア等を含んで構成される差動機構であり、前後進切替クラッチC1及び前後進切替ブレーキB1は、遊星歯車機構17の作動状態を切り替えるための係合要素であり、例えば多板クラッチなどの摩擦式の係合機構等によって構成することができ、ここでは油圧式の湿式多板クラッチを用いる。
【0025】
前後進切替機構10は、後述の油圧制御装置1から供給されるオイルの圧力によって前後進切替クラッチC1、前後進切替ブレーキB1が作動し作動状態が切り替えられる。前後進切替機構10は、前後進切替クラッチC1が係合状態(ON状態)、前後進切替ブレーキB1が解放状態(OFF状態)である場合に、エンジン3からの動力を正転回転(車両2が前進する際にインプットシャフト14が回転する方向)でインプットシャフト14に伝達する。前後進切替機構10は、前後進切替クラッチC1が解放状態、前後進切替ブレーキB1が係合状態である場合に、エンジン3からの動力を逆転回転(車両2が後進する際にインプットシャフト14が回転する方向)でインプットシャフト14に伝達する。前後進切替機構10は、ニュートラル時には、前後進切替クラッチC1、前後進切替ブレーキB1共に解放状態とされる。本実施形態では、このような前後進切替クラッチC1及び前後進切替ブレーキB1の係合/解除の制御を行う制御系をまとめて「C1制御系」18と呼ぶ。
【0026】
無段変速機構11は、エンジン3から駆動輪4への動力の伝達経路における前後進切替機構10と駆動輪4との間に設けられ、エンジン3の動力を変速して出力可能な変速装置である。無段変速機構11は、後述の油圧制御装置1から供給されるオイルの圧力によって作動する。
【0027】
無段変速機構11は、インプットシャフト14に伝達(入力)されるエンジン3からの回転動力(回転出力)を所定の変速比で変速して変速機出力軸であるアウトプットシャフト15に伝達し、このアウトプットシャフト15から駆動輪4に向けて変速された動力を出力する。無段変速機構11は、より詳細には、インプットシャフト(プライマリシャフト)14に連結されたプライマリプーリ20、アウトプットシャフト(セカンダリシャフト)15に連結されたセカンダリプーリ21、プライマリプーリ20とセカンダリプーリ21との間に掛け渡されたベルト22などを含んで構成されるベルト式の無段自動変速機(Continuously Variable Transmission:CVT)である。
【0028】
プライマリプーリ20は、プライマリシャフト14の軸方向に移動可能な可動シーブ20a(プライマリシーブ)と、固定シーブ20bとを同軸に対向配置することにより形成され、同様に、セカンダリプーリ21は、セカンダリシャフト15の軸方向に移動可能な可動シーブ21a(セカンダリシーブ)と、固定シーブ21bとを同軸に対向配置することにより形成される。ベルト22は、これら可動シーブ20a,21aと固定シーブ20b,21bとの間に形成されたV字溝に掛け渡されている。
【0029】
そして、無段変速機構11では、後述の油圧制御装置1からプライマリプーリ20のプライマリシーブ油圧室23、セカンダリプーリ21のセカンダリシーブ油圧室24に供給されるオイルの圧力(プライマリ圧、セカンダリ圧)に応じて、可動シーブ20a,21aが固定シーブ20b,21bとの間にベルト22を挟み込む力(ベルト挟圧力)を、プライマリプーリ20及びセカンダリプーリ21の個々で制御することができる。これにより、プライマリプーリ20及びセカンダリプーリ21のそれぞれにおいて、V字幅を変更してベルト22の回転半径を調節することができ、プライマリプーリ20の入力回転速度に相当する入力回転数(プライマリ回転数)とセカンダリプーリ21の出力回転速度に相当する出力軸回転数(セカンダリ回転数)との比である変速比を無段階に変更することが可能となっている。また、プライマリプーリ20及びセカンダリプーリ21のベルト挟圧力が調整されることで、これに応じたトルク容量で動力を伝達することが可能となっている。
【0030】
減速機構12は、無段変速機構11からの動力の回転速度を減速してデファレンシャルギヤ13に伝達する。デファレンシャルギヤ13は、減速機構12からの動力を、各駆動軸16を介して各駆動輪4に伝達する。デファレンシャルギヤ13は、車両2が旋回する際に生じる旋回の中心側、つまり内側の駆動輪4と、外側の駆動輪4との回転速度の差を吸収する。
【0031】
上記のように構成される動力伝達装置5は、エンジン3が発生させた動力をトルクコンバータ9、前後進切替機構10、無段変速機構11、減速機構12、デファレンシャルギヤ13等を介して駆動輪4に伝達することができる。この結果、車両2は、駆動輪4の路面との接地面に駆動力[N]が生じ、これにより走行することができる。
【0032】
油圧制御装置1は、流体としてのオイルの油圧によってトルクコンバータ9のロックアップクラッチ9d、前後進切替機構10の前後進切替クラッチC1及び前後進切替ブレーキB1、無段変速機構11のプライマリシーブ20a及びセカンダリシーブ21a等を含む動力伝達装置5を作動させるものである。油圧制御装置1は、例えば、ECU7により制御される種々の油圧制御回路を含んで構成される。油圧制御装置1は、複数の油路、オイルリザーバ、オイルポンプ、複数の電磁弁などを含んで構成され、後述するECU7からの信号に応じて、動力伝達装置5の各部に供給されるオイルの流量あるいは油圧を制御する。また、この油圧制御装置1は、動力伝達装置5の所定の箇所の潤滑を行う潤滑油供給装置としても機能する。
【0033】
ECU7は、車両2の各部の駆動を制御するものである。ECU7は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路である。ECU7の機能は、ROMに保持されるアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することによって、CPUの制御のもとで車両2内の各種装置を動作させるとともに、RAMやROMにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。本実施形態では、ECU7は、上述の油圧制御装置1を制御することによって、トルクコンバータ9、前後進切替機構10、無段変速機構11など動力伝達装置5の各部の制御を行う。なお、ECU7は、上記の機能に限定されず、車両2の各種制御に用いるその他の各種機能も備えている。
【0034】
また、上記のECU7とは、エンジン3を制御するエンジンECU、動力伝達装置5(油圧制御装置1)を制御するT/M ECU、アイドリングストップ(S&S(スタート&ストップ))制御を実行するためのS&S ECUなどの複数のECUを備える構成であってもよい。
【0035】
なお、ECU7には、図1には図示しない車両2内の各種センサが接続され、各種センサからの検出信号が入力されており、これらの検出信号に基づいて、車両2の各部の駆動を制御することができる。図1では、本実施形態に係るセンサとして、ブレーキペダルのストローク量(踏み込み量)を計測するブレーキストロークセンサ61と、車速を計測する車速センサ62が例示されている。
【0036】
次に、図2を参照して油圧制御装置1の構成について説明する。
【0037】
図2に示すように、油圧制御装置1は、動力伝達装置5の各部にオイルを供給するオイル供給源として、エンジン3(以下「Eng.」とも表記する)の駆動により駆動される機械式のメカポンプ31と、電気で作動するモータ32の駆動により駆動される電動ポンプ33との二つの油圧ポンプを備えている。メカポンプ31及び電動ポンプ33は、油圧制御装置1内のドレン34に貯留されたオイルをストレーナ35で濾過した後に吸入圧縮して吐出し、油圧経路36を介して動力伝達装置5にオイルを供給することができる。
【0038】
なお、本実施形態の車両2には、燃費向上などのため、車両2の停車中または走行中にエンジン3を停止させる機能、所謂アイドリングストップ機能が備えられおり、特に減速走行時など、車両2の走行中に所定の条件を満たす場合に、エンジン3を停止させた状態で走行するアイドリングストップ走行(以下「減速エコラン」ともいう)を実施可能に構成されている。そして、電動ポンプ33は、このようなアイドリングストップ機能の実行時、すなわちエンジン3の停止時におけるメカポンプ31の代替として、その作動油(オイル)の供給を実行する。
【0039】
電動ポンプ33は、その吐出口に接続される出口流路37を介して、油圧経路36に連通されている。また、この出口流路37上には、油圧経路36から電動ポンプ33へのオイルの逆流を防止するチェック弁38が設けられている。
【0040】
油圧経路36には、プライマリレギュレータバルブ39が設けられている。プライマリレギュレータバルブ39は、メカポンプ31及び電動ポンプ33で発生された油圧を調圧するものである。プライマリレギュレータバルブ39には、SLSリニアソレノイド40により制御圧が供給される。SLSリニアソレノイド40は、ECU7から送信されたデューティ信号(デューティ値)によって決まる電流値に応じて制御圧を発生させる電磁バルブである。
【0041】
プライマリレギュレータバルブ39は、このSLSリニアソレノイド40による制御圧に応じて、油圧経路36内の油圧を調整する。プライマリレギュレータバルブ39によって調圧された油圧経路36内の油圧がライン圧PLとして用いられる。
【0042】
プライマリレギュレータバルブ39は、例えば、弁本体内で弁体(スプール)がその軸方向に摺動して流路の開閉もしくは切替を行うスプール弁を適用することができ、入力ポートに油圧経路36が接続され、パイロット圧を入力するパイロットポートにSLSリニアソレノイド40が接続され、出力ポートからライン圧PLの調圧により発生する余剰流を排出するよう構成することができる。
【0043】
メカポンプ31及び電動ポンプ33は、油圧経路36を介して、前後進切替機構10のC1制御系18(前後進切替クラッチC1及び前後進切替ブレーキB1)と、無段変速機構11(プライマリシーブ20aのプライマリシーブ油圧室23及びセカンダリシーブ21aのセカンダリシーブ油圧室24)に対して、プライマリレギュレータバルブ39によってライン圧PLに調圧された油圧を供給可能に接続されている。
【0044】
油圧経路36とC1制御系18との間には、図2には図示しないが、C1制御系18に供給する油圧を調節することができる油圧制御回路が設けられており、この油圧制御回路は、ECU7によって制御されている。
【0045】
無段変速機構11(プライマリシーブ20a及びセカンダリシーブ21a)へ接続される油圧経路36は、プライマリシーブ20aのプライマリシーブ油圧室23へ油圧を供給する第1油路36aと、セカンダリシーブ21aのセカンダリシーブ油圧室24へ油圧を供給する第2油路36bとに分岐される。
【0046】
このうち第2油路36b上には、LPM(Line Pressure Modulator)No.1バルブ(調圧弁)41が設けられている。LPM No.1バルブ41は、ライン圧PLを元圧として調圧された油圧を出力する。LPM No.1バルブ41には、SLSリニアソレノイド42により制御圧が供給される。このSLSリニアソレノイド42も、プライマリレギュレータバルブ39のSLSリニアソレノイド40と同様に、ECU7から送信されたデューティ信号(デューティ値)によって決まる電流値に応じて制御圧を発生させる電磁バルブである。
【0047】
LPM No.1バルブ41は、例えばスプール弁であり、ECU7によりデューティ制御されるSLSリニアソレノイド42の出力油圧をパイロット圧として、バルブ内に導入されるライン圧PLを元圧として減圧された油圧を出力する。LPM No.1バルブ41から出力された油圧は、セカンダリ圧Pdとして用いられ、セカンダリシーブ油圧室24に供給される。セカンダリシーブ油圧室24に供給されたセカンダリ圧Pdに応じてセカンダリシーブ21aの推力が変化し、無段変速機構11のベルト挟圧力が増減させられる。
【0048】
なお、第2油路36b上のLPM No.1バルブ41とセカンダリシーブ油圧室24との間には、セカンダリ圧Pdを検出する圧力センサ43が設けられており、検出したセカンダリ圧Pdの情報をECU7に送信するよう構成されている。
【0049】
そして、特に本実施形態では、この油圧経路36の第2油路36b上に、より詳細には、第2油路36bのLPM No.1バルブ41とセカンダリシーブ油圧室24との間に、アキュムレータ44が接続されている。
【0050】
アキュムレータ44は、メカポンプ31の駆動時に、メカポンプ31から供給された油圧を内部に蓄えて保持(蓄圧)しておき、必要に応じてこの保持された油圧をセカンダリシーブ21aに供給できるよう構成されている。アキュムレータ44は、既知の構成により実現できるが、例えばガス式のアキュムレータの場合には、内部にピストンが配置され、このピストンにより密閉された内部空間にガスが充填されている。蓄圧時には、ピストンが押し込まれてオイルが内部に蓄えられる。このとき、ガスは圧縮され、この圧縮されたガスの圧力と蓄えられたオイルの圧力とは釣り合っている。また、吐出時には、ガスの膨張力を利用してピストンを押し出すことで、蓄圧されたオイルを内部から吐出して、セカンダリシーブ21aに供給する。
【0051】
アキュムレータ44は、ピストンの摺動に応じて内部のガスの容積を最小値Va_minから最大値Va_maxの間で変化させることができ、ガス容積が最小値Va_minのとき、ガスの圧力は最大値Pa_maxとなり、ガス容積が最大値Va_maxのとき、ガスの圧力は最小値Pa_minとなるよう構成されている。ここで、ガス圧の最小値Pa_minは、アイドリングストップ走行時に無段変速機構11のベルト22の滑り発生が回避できる最低限のベルト挟圧力を確保するために要求されるセカンダリ圧Pdに相当する。また、ガス圧の最大値Pa_maxは、アキュムレータ44からの蓄圧の吐出時に、セカンダリ圧Pdを少なくともPa_minに維持できるような圧力として予め設定されている。なお、アキュムレータ44のサイズは、例えば総容積を100(cc)、吐出量(Va_max−Va_min)を20(cc)とすることができる。
【0052】
アキュムレータ44の蓄圧及び吐出は、このアキュムレータ44と第2油路36bとの間に設けられる蓄圧制御弁45により制御される。蓄圧制御弁45が閉じることでアキュムレータ44の内部にオイルが蓄圧され、蓄圧制御弁45が開くことで蓄圧されていたオイルが吐出される。蓄圧制御弁45の開閉動作は、ECU7によって制御されている。蓄圧制御弁45は、例えばスプール弁であり、ECU7によりパイロット圧を調整することで開閉を切り替えられる。
【0053】
なお、アキュムレータ44と蓄圧制御弁45との間には、アキュムレータ44に蓄圧されるオイルの圧力(アキュムレータ圧)Paccを検出する圧力センサ46が設けられ、検出したアキュムレータ圧Paccの情報をECU7に送信するよう構成されている。
【0054】
第2油路36b上には、さらに、LPM No.1バルブ41より上流側に、チェック弁(昇圧用チェック弁)57が設けられ、アキュムレータ44から吐出されたオイルの上流側(メカポンプ31、電動ポンプ33、C1制御系18の側)への逆流やプライマリシーブ20aへ接続する第1油路36aへの流入を防止して、アキュムレータ44によるセカンダリ圧Pdの昇圧を効率よく行うことができるよう構成されている。
【0055】
第1油路36a上には、第1変速制御弁47及び第2変速制御弁48が設けられている。第1変速制御弁47は、ECU7によりデューティ制御される第1デューティソレノイド(DS1)49の駆動に応じて、プライマリシーブ油圧室23へのオイル供給を調整する。また、第2変速制御弁48は、ECU7によりデューティ制御される第2デューティソレノイド(DS2)50の駆動に応じて、プライマリシーブ油圧室23からのオイル排出を調整する。
【0056】
つまり、第1デューティソレノイド49が作動すると、第1変速制御弁47からオイルがプライマリシーブ油圧室23に導入され、プライマリシーブ20aがプライマリプーリ20の溝幅を狭める方向に移動して、この結果、ベルト22の掛径が増加してアップシフトする。第2デューティソレノイド50が作動すると、第2変速制御弁48によりプライマリシーブ油圧室23からオイルが排出され、プライマリシーブ20aがプライマリプーリ20の溝幅を広げる方向に移動して、この結果ベルト22の掛径が減少してダウンシフトする。このように、第1デューティソレノイド49及び第2デューティソレノイド50を作動させることで、無段変速機構11の変速比を制御することができる。
【0057】
プライマリレギュレータバルブ39の出力ポートには、セカンダリレギュレータバルブ51が接続されている。このセカンダリレギュレータバルブ51も、プライマリレギュレータバルブ39と同様にスプール弁であり、ECU7によりデューティ制御されるSLSリニアソレノイド52の制御圧に応じて、プライマリレギュレータバルブ39から排出される余剰流の油圧を調圧するものである。
【0058】
プライマリレギュレータバルブ39の出力ポートには、さらにトルクコンバータ9のロックアップクラッチ9dの係合/解放を制御するL/U制御系53が接続されており、プライマリレギュレータバルブ39から余剰流が発生したときには、セカンダリレギュレータバルブ51によって余剰流が調圧され、この調圧された余剰流がL/U制御系53(または無段変速機構11より低圧で制御可能な低圧制御系)に供給されるよう構成されている。
【0059】
また、セカンダリレギュレータバルブ51は、出力ポートから余剰流の調圧により発生するさらなる余剰流を、動力伝達装置5内の所定の箇所の各部潤滑などに供給できるよう構成されている。図2には図示しないが、L/U制御系53や各部潤滑などに供給された余剰流は、最終的にドレン34に戻されるよう油路が形成されている。
【0060】
なお、プライマリレギュレータバルブ39のSLSリニアソレノイド40、セカンダリレギュレータバルブ51のSLSリニアソレノイド52、及びLPM No.1バルブ41のSLSリニアソレノイド42は、単一のリニアソレノイドであって、ライン圧PLとセカンダリ圧Pd(ベルト挟圧力)とを連動して制御する構成であってもよい。または、それぞれが別個のリニアソレノイドであって、ECU7により個別に制御可能であり、ライン圧PLとセカンダリ圧Pd(ベルト挟圧力)とを独立して制御する構成であってもよい。
【0061】
また、SLSリニアソレノイド40、SLSリニアソレノイド42、SLSリニアソレノイド52は、プライマリレギュレータバルブ39、LPM No.1バルブ41、セカンダリレギュレータバルブ51へ入力されるパイロット圧を、油圧経路36のライン圧PLを利用して生成するよう構成することができる。
【0062】
次に、図3を参照して、本実施形態に係る車両制御装置の構成について説明する。本実施形態の車両制御装置は、アイドリングストップ走行中に急減速操作が行われたか否かを判定し、急減速操作が行われたと判断した際には、無段変速機構11のベルト挟圧力を増大させ、ベルト滑りの発生を抑制するよう制御するものである。
【0063】
図3に示すように、本実施形態に係る車両制御装置は、図1,2に示した車両2の構成要素のうち、ブレーキストロークセンサ61、車速センサ62、ECU7、油圧制御装置1の蓄圧制御弁45及びアキュムレータ44、エンジン3を含んで構成される。ECU7は、急制動判定及びベルト挟圧力制御に係る機能として、急制動判断部71、アキュムレータ制御部72、エンジン制御部73を備えて構成されている。車両制御装置は、図3に示す要素以外にも、動力伝達装置5のベルト式無段変速機構11を含んで構成される。
【0064】
急制動判断部71は、ブレーキストロークセンサ61及び車速センサ62からの入力情報に基づき、急制動(急減速)操作が行われたか否かを判断する。急制動操作が行われたことを判断した場合には、その旨の信号をアキュムレータ制御部72及びエンジン制御部73に送信する。急制動判断部71による急制動操作の判定基準は、ブレーキストロークセンサ61により計測されるブレーキペダルのストローク量と、車速センサ62により計測される車速に基づく以下の全ての条件を満たすことである。
【0065】
(1)アイドリングストップ走行中(エンジン停止中)
(2)車速が急制動判定閾値より高い
(3)ストローク量がブレーキストローク判定閾値より高い
(4)ストローク量の変化量が、ブレーキストローク変化量判定閾値より高い
【0066】
アキュムレータ制御部72は、アキュムレータ44の蓄圧、吐出処理を制御する。本実施形態では、アキュムレータ制御部72は、急制動判断部71からの急制動状態である旨の信号を受信するのに応じて、アキュムレータ44の吐出処理を実施すべく、蓄圧制御弁45を開放する制御信号を蓄圧制御弁45に送信する。蓄圧制御弁45が開放されると、アキュムレータ44に蓄圧されているオイルが油圧経路36の第2油路36bに吐出されてセカンダリ圧Pdが増圧し、ベルト挟圧力が増大する。
【0067】
エンジン制御部73は、エンジン3の動作を制御する。本実施形態では、エンジン制御部73は、急制動判断部71からの急制動状態である旨の信号を受信するのに応じて、アイドリングストップ走行を中止すべく、エンジン3を始動させる制御信号をエンジン3に送信する。
【0068】
なお、本実施形態では、ECU7のアキュムレータ制御部72と、アキュムレータ44及び蓄圧制御弁45とが、無段変速機構11のベルト挟圧力を発生させるためのセカンダリシーブ21aに供給される油圧(セカンダリ圧Pd)を増圧するための増圧手段として機能する。
【0069】
次に、図4,5を参照して、本実施形態に係る車両制御装置の動作について説明する。
【0070】
まず、図4を参照して、本実施形態の車両制御装置により実施される急制動判定に基づく油圧制御処理について説明する。図4に示す処理は、例えばアイドリングストップ走行中に所定時間ごとに実施される。
【0071】
まず、急制動判断部71により、エンジン3が停止中か否かが確認される(S101)。アイドリングストップ走行中であり、エンジン3が停止中の場合にはステップS102に移行する。エンジン3が停止中でない場合には、これまでと同様の通常制御(ここでは通常走行)を継続する(S107)。
【0072】
次に、急制動判断部71により、車速センサ62の計測信号に基づき、車速が所定の急制動判定閾値以上か否かが確認される(S102)。ここで、急制動判定閾値は、アイドリングストップ走行中でも電動ポンプ33のみで充分にベルト挟圧力を確保することが可能な極低車速(例えば3km/h以下)では、急制動判定が不要であるので、このような極低車速時に急制動判定自体を実施させないためのパラメータである。急制動判定閾値は、例えば3〜11km/h程度に設定することができる。車速が急制動判定閾値以上である場合には、ステップS103に移行する。車速が急制動判定閾値より小さい場合には、ベルト挟圧力の増加は不要として、これまでと同様の通常制御(ここではアイドリングストップ走行)を継続する(S107)。
【0073】
続いて、急制動判断部71により、ブレーキストロークセンサ61の計測信号に基づき、ブレーキストロークの変化量が所定のブレーキストローク変化量判定閾値以上であるか否かが確認される(S103)。ブレーキストローク変化量判定閾値は、ブレーキストロークの変化量が小さいときには、ブレーキペダルの踏み込みが比較的緩やかであり急制動が起こりにくいので、このような状況において急制動判定を実施させないためのパラメータである。ブレーキストロークの変化量がブレーキストローク変化量判定閾値以上である場合には、ブレーキペダルが急激に踏み込まれているものとして、ステップS104に移行する。ブレーキストロークの変化量がブレーキストローク変化量判定閾値より小さい場合には、急制動ではないものと判断して、これまでと同様の通常制御(ここではアイドリングストップ走行)を継続する(S107)。
【0074】
続いて、急制動判断部71により、ブレーキストロークセンサ61の計測信号に基づき、ブレーキストローク量が所定のブレーキストローク判定閾値以上であるか否かが確認される(S104)。ブレーキストローク判定閾値は、ブレーキストローク量が小さいときには、ブレーキペダルの踏み込み量が少なくブレーキ力が弱いため、急制動が起こりにくいので、このような状況において急制動判定を実施させないためのパラメータである。ブレーキストローク量がブレーキストローク判定閾値以上である場合には、ブレーキペダルが大きく踏み込まれているものとして、ステップS105に移行する。ブレーキストローク量がブレーキストローク判定閾値より小さい場合には、急制動ではないものと判断して、これまでと同様の通常制御(ここではアイドリングストップ走行)を継続する(S107)。
【0075】
ステップS101〜S104の判断条件を全て満たした場合、すなわち、エンジン停止中であり、車速が急制動判定閾値以上であり、ブレーキストロークの変化量がブレーキストローク変化量判定閾値以上であり、かつ、ブレーキストローク量がブレーキストローク判定閾値以上である場合には、急制動判断部71により、急制動操作が行われ、車両2が急制動状態となるものと判定され、その旨の信号がアキュムレータ制御部72及びエンジン制御部73に送信される。急制動判断部71による車両が急制動状態となる旨の信号とは、例えば、通常時は0であり、急制動判定時に1となるフラグ状の信号とすることができる(図5参照)。
【0076】
そして、アキュムレータ制御部72により、蓄圧制御弁45が開放され、アキュムレータ44に蓄圧されていたオイルが油圧経路36の第2油路36bに吐出される(S105)。これにより、無段変速機構11のセカンダリプーリ21のセカンダリシーブ油圧室24へ供給される油圧(セカンダリ圧Pd)が増圧し、ベルト挟圧力が増大する。さらに、エンジン制御部73により、エンジン3が始動され(S106)、アイドリングストップ走行が中止される。
【0077】
次に、図5を参照して、本実施形態の車両制御装置による急制動判定時のベルト挟圧力制御について説明する。図5のタイミングチャートには、エンジン回転数、車速、ブレーキストローク、ブレーキストローク変化量、ブレーキ圧、急制動判定値、ベルト挟圧の時間遷移がそれぞれ示されている。
【0078】
図5のタイミングチャートの初期段階では、エンジン回転数は0であり、すなわちエンジン3が停止されており、さらに、車速が急制動判定閾値より大きいので、図4のフローチャートのステップS101、S102の条件は満たすが、ブレーキストローク及びその変化量が閾値より小さく、急制動操作とは判定されていないため、急制動判定値は0である。このとき、ベルト挟圧(セカンダリ圧)には電動ポンプ33(EOP)からの吐出された油圧が供給されている。
【0079】
時刻Aにおいて、ブレーキストローク量が増大してブレーキストローク判定閾値を超えると共に、ブレーキストローク変化量もブレーキストローク変化量判定閾値を超え、図4のフローチャートのステップS103,104の条件が満たされる。このとき、急制動判断部71は、急制動操作が行われ、車両2が急制動状態となるものと判断して、急制動判定値を0から1に変更する。この急制動判定値の切替に応じて、アキュムレータ制御部72がアキュムレータ吐出指示を蓄圧制御弁45に対して行うと共に、エンジン制御部73がエンジン始動指示をエンジン3に対して行う。
【0080】
アキュムレータ吐出指示に応じて、蓄圧制御弁45が開放されてアキュムレータ44から蓄圧されたオイルが油圧経路36の第2油路36bに吐出されると、期間Bにおいて、アキュムレータ44から吐出されたオイルの圧力(アキュムレータ圧、アキューム圧)によって、ベルト挟圧(セカンダリ圧)が増圧される。なお、アキューム圧は、無段変速機構11のベルト22の滑り発生が回避できる最低限のベルト挟圧力を確保できるよう予め設定されている。このため、図5に示すように、ベルト挟圧は、アキューム圧による増圧によって、ベルト滑りを回避するのに必要な圧力(図5の「必要圧」)を上回るレベルに維持される。
【0081】
また、このベルト挟圧の増圧とほぼ同じタイミングで、上述のブレーキストローク量の増大に応じたブレーキ圧の増加が起こり、ブレーキが作動して車速が減少する。この車速の減少に応じて、車輪側からトルク変動が入力されるため、ベルト滑りを防止するための必要圧も周期的に増大する。
【0082】
区間Cにおいて、エンジン始動指示に応じてエンジン3が駆動しはじめ、エンジン回転数が増大すると、エンジン3駆動により駆動されるメカポンプ31(MOP)MOPも作動しはじめる。そして、メカポンプ31から吐出される油圧(図5の「MOP圧」)によって、ベルト挟圧はさらに増圧される。
【0083】
なお、従来の急制動判定処理には例えば車速の変動に基づく手法などがとられていたが、図5に示す例で、車速に基づいた急制動判定をおこなった場合には、車速が急激に変動する時刻Dの近傍において急制動判定が行われると考えられる(図5に「急制動判定(従来)」として示す)。このタイミングでは、既にブレーキが作動して、これに伴うトルク変動も発生している。また、アキュムレータ44などの増圧手段も用いないため、急制動判定後のベルト挟圧の増圧のタイミングも遅くなる。このため、ベルト挟圧はベルト滑りを回避するための必要圧を下回ることになり(図5に「ベルト挟圧(従来)」として示す)、ベルト滑りが発生する可能性が高い。
【0084】
次に、本実施形態の車両制御装置の効果について説明する。
【0085】
本実施形態の車両制御装置は、ベルト式無段変速機構11のベルト挟圧力を発生させるために供給される油圧(セカンダリ圧Pd)を増圧する増圧手段として、ECU7のアキュムレータ制御部72、蓄圧制御弁45、アキュムレータ44を備える。そして、アイドリングストップ機能の実行中に急減速(急制動)操作が行われたときに、増圧手段により、ベルト式無段変速機構11に供給される油圧(セカンダリ圧Pd)を増圧する。
【0086】
このような構成により、アイドリングストップ機能の実行中に急減速操作が行われたときには、ベルト式無段変速機構11へ供給する油圧が増圧されるため、ベルト挟圧力の要求量が増大する急減速時にベルト式無段変速機構11のベルト挟圧力を増大させることが可能となり、ベルト滑りの発生を抑制できる。
【0087】
また、本実施形態の車両制御装置では、急減速(急制動)操作が行われたか否かの判断については、急制動判断部71が、ブレーキペダルのストローク量に基づき行う。
【0088】
この構成により、ブレーキペダルの踏み込み(ストローク量)に連動する急減速操作を精度良く検知することができる。また、急減速操作と実際の急減速状態の発生との間にはタイムラグがあるが、本実施形態では、ブレーキペダルのストローク量に基づき急減速操作の有無を判定するので、実際に急減速が起こった後に変動する車速や加速度などのパラメータを判断基準とする場合と比べて、急減速の発生を早いタイミングで検出することができる。このため、実際に急減速が発生し、ベルト式無段変速機構11に大きなベルト挟圧力が要求された時点では、既にセカンダリ圧を増圧させてベルト挟圧力を増大しておけるので、ベルト滑りの発生を好適に抑制できる。
【0089】
なお、上記実施形態では、ブレーキストロークセンサ61を用いて計測したブレーキペダルのストローク量に基づいて急減速を判定していたが、運転者のブレーキ(急減速、急制動)操作と連動して変化し、ブレーキ操作に応じて実際に急減速が始まるより早いタイミングで応答するパラメータであれば、ストローク量以外の他のパラメータを用いてもよい。例えば、ブレーキペダルのストローク量に応じて車両2の各車輪に制動力を作用させるための液圧を調整するマスタシリンダにおける液圧の圧力(ブレーキマスタ圧)に基づいて、急制動判断部71が急減速の有無を判断するよう構成することも可能である。
【0090】
また、上記実施形態では、無段変速機構11への供給油圧(セカンダリ圧)を増圧する増圧手段としてアキュムレータ44を例示したが、セカンダリ圧を一時的に増圧できれば他の装置を用いてもよい。例えば、電動ポンプ33を図2に示すアキュムレータ44と同様に油圧経路36の第2油路36bに接続し、急減速判定時に電動ポンプ33を作動させてセカンダリ圧を増圧させる構成とすることも可能である。
【0091】
[第2実施形態]
次に、図6〜8を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係る車両制御装置の機能ブロック図であり、図7は、本発明の第2実施形態の車両制御装置により実施される急制動判定に基づく油圧制御処理を示すフローチャートであり、図8は、本発明の第2実施形態における急制動判定時のベルト挟圧力制御の一例を示すタイミングチャートである。
【0092】
図6に示すように、本実施形態の車両制御装置は、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64を用いてブレーキペダルのストローク量の変動を検出している点で、ブレーキストロークセンサ61を用いた第1実施形態とは異なるものである。また、急制動判断部81の急制動操作の判定条件も、第1実施形態の急制動判断部71のものとは異なる。
【0093】
第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64は、ブレーキペダルが異なる所定のストローク量を通過するときに個別に切替可能に設けられたスイッチである。言い換えると、第1ブレーキスイッチ63は、ブレーキペダルが踏み込まれていない状況ではOFF状態となり、ブレーキペダルが運転者により踏み込まれ、所定のストローク量を超えたときにON状態となるように、ブレーキペダルに接続されている。また、第2ブレーキスイッチ64は、第1ブレーキスイッチ63と同様の構成をとるが、ON状態に切り替わるブレーキペダルのストローク量が、第1ブレーキスイッチ63より大きく設定されている。つまり、ブレーキペダルを踏み込んでゆくと、まず第1ブレーキスイッチ63がON状態に切り替わり、さらにブレーキペダルを踏み込むと、第2ブレーキスイッチ64がON状態に切り替わる。
【0094】
なお、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64は、運転者が急減速操作を行ったときに、必ず両方がON状態となるように、それぞれがON状態に切り替わるブレーキペダルのストローク量が設定されている。
【0095】
急制動判断部81は、第1ブレーキスイッチ63、第2ブレーキスイッチ64、及び車速センサ62からの入力情報に基づき、急制動(急減速)操作が行われたか否かを判断する。急制動判断部81による急制動操作の判定基準は、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64の状態と、車速センサ62により計測される車速に基づく以下の全ての条件を満たすことである。
【0096】
(1)アイドリングストップ走行中(エンジン停止中)
(2)車速が急制動判定閾値より高い
(3)第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64が共にON状態
(4)第1ブレーキスイッチ63と第2ブレーキスイッチ64とがそれぞれON状態となったタイミングの間隔(以下、「ブレーキスイッチON間隔」という)が、ブレーキスイッチON間隔判定閾値以下
【0097】
次に、図7を参照して、第2実施形態の車両制御装置により実施される急制動判定に基づく油圧制御処理について説明する。図7のフローチャートのステップS201,S202,S205〜S207の各処理ステップは、図4に示した第1実施形態のステップS101,S102,S105〜S107と同一の処理なので説明を省略する。
【0098】
ステップS201,S202の条件(上記の条件(1)、(2))を満たす場合には、急制動判断部81により、第2ブレーキスイッチ64の計測信号に基づき、第2ブレーキスイッチ64がON状態であるか否かが確認される(S203)。第2ブレーキスイッチ64がON状態である場合には、ブレーキペダルが所定以上踏み込まれているものとして、ステップS204に移行する。第2ブレーキスイッチ64がOFF状態である場合には、ブレーキストローク量が小さく、急制動ではないものと判断して、これまでと同様の通常制御(ここではアイドリングストップ走行)を継続する(S207)。
【0099】
続いて、急制動判断部81により、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64の計測信号に基づき、ブレーキスイッチON間隔がブレーキスイッチON間隔判定閾値以下であるか否かが確認される(S204)。ブレーキスイッチON間隔判定閾値とは、ブレーキスイッチON間隔が大きいときには、ブレーキペダルの踏み込みが比較的緩やかであり急制動が起こりにくいので、このような状況を急制動判定から除外するためのパラメータである。ブレーキスイッチON間隔がブレーキスイッチON間隔判定閾値以下である場合には、ブレーキペダルが急激に踏み込まれているものとして、ステップS205に移行する。ブレーキスイッチON間隔がブレーキスイッチON間隔判定閾値より大きい場合には、急制動ではないものと判断して、これまでと同様の通常制御(ここではアイドリングストップ走行)を継続する(S207)。
【0100】
本実施形態の車両制御装置による急制動判定時のベルト挟圧力制御について、図8を参照して、図5に示す第1実施形態のタイミングチャートとの相違点のみを説明する。
【0101】
時刻Aにおいて、第1ブレーキスイッチ63は、既に所定のストローク量(図8では「SW1ON」として示す)を通過してON状態となっており、さらに、ブレーキストローク量が増大して、第2ブレーキスイッチ64の所定のストローク量(図8では「SW2ON」として示す)を通過してON状態となる。
【0102】
このとき、急制動判断部81により、第1ブレーキスイッチ63がON状態となったタイミングと、第2ブレーキスイッチ64がON状態となったタイミング(時刻A)との間隔(ブレーキスイッチON間隔)が算出される。図8に示す例では、時刻Aにおいて、このブレーキスイッチON間隔がブレーキスイッチON間隔判定閾値以下であるので、このとき図7のフローチャートのステップS203,S204の条件が満たされて、急制動判断部81は、急制動操作が行われ、車両2が急制動状態となるものと判断して、急制動判定値を0から1に変更する。この急制動判定値の切替に応じて、アキュムレータ制御部72がアキュムレータ吐出指示を行うと共に、エンジン制御部73がエンジン始動指示を行う。
【0103】
このように、第2実施形態の車両制御装置では、ECU7の急制動判断部81は、ブレーキペダルが異なる所定のストローク量を通過するときに個別に切替可能に設けられた第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64の状態に基づき、急減速操作が行われたか否かを判断する。
【0104】
この構成により、ブレーキペダルが踏み込まれたときに、ブレーキペダルのストローク量が増大し、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64は異なるタイミングでON状態に切り替えられる。この切り替えタイミングの差をみれば、ブレーキペダルがどの程度の速さで踏み込まれているかを検出することが可能となり、急減速操作を精度良く検出することができる。また、ストロークセンサなどの高価なセンサを新たに追加することなく、安価な2個のスイッチのみを用いて急減速操作の判断が行えるので、低コスト化が図れる。
【0105】
なお、上記実施形態では、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64の2個のブレーキスイッチを用いたが、2個以上のブレーキスイッチを用いてもよい。
【0106】
[第3実施形態]
次に、図9〜12を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。図9は、本発明の第3実施形態に係る車両制御装置の機能ブロック図であり、図10は、ブレーキストロークとブレーキマスタ圧との対応を示すタイミングチャートであり、図11は、図9中のフェール判定部におけるブレーキスイッチのフェール判定に用いるマップの一例を示す図であり、図12は、本発明の第3実施形態の車両制御装置により実施されるブレーキスイッチのフェール判定処理を示すフローチャートである。
【0107】
図9に示すように、本実施形態の車両制御装置は、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64に異常(フェール)が発生しているか否かを判定するためのフェール判定部74(異常判定手段)をECU7に備える点で、上記第2実施形態とは異なるものである。
【0108】
フェール判定部74は、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64からの入力のほかに、さらにマスタ圧センサ65(計測手段)からの入力情報を利用して、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64のフェール判定をおこなう。ここで、マスタ圧センサ65は、ブレーキペダルのストローク量に応じて車両の各車輪に制動力を作用させるための液圧を調整するマスタシリンダにおける液圧の圧力(ブレーキマスタ圧)を計測するセンサである。
【0109】
ブレーキマスタ圧は、ブレーキストロークと同様にブレーキペダルへの踏力に応答するので、図10に示すように、ブレーキストロークと略同一のタイミングで遷移する特性がある。すなわち、ブレーキストロークとブレーキマスタ圧とは、図11の点線cで示すように一対一対応の関係であるといえる。
【0110】
一方、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64は所定のストローク量においてON状態に切り替わるよう設定されている。つまり、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64が正常な場合には、それぞれがON状態に切り替わるときのブレーキマスタ圧は、図10に示すように略一定の値となるものである。
【0111】
そこで、本実施形態では、フェール判定部74は、図11に示す判定マップを用いて、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64のフェール判定を行う。図11のマップでは、横軸がブレーキストローク量(踏力)を示し、縦軸がブレーキマスタ圧を示し、ブレーキストロークとブレーキマスタ圧との一対一対応が点線cで示されている。そして、第1ブレーキスイッチ63がON状態に切り替わるブレーキストローク量がSW1ONとして表され、このブレーキストロークSW1ONと対応するブレーキマスタ圧から上下に幅を持たせて、第1ブレーキスイッチ63の正常範囲(図11では「SW1正常範囲」)が設定されている。同様に、第2ブレーキスイッチ64がON状態に切り替わるブレーキストローク量がSW2ONとして表され、このブレーキストロークSW2ONと対応するブレーキマスタ圧から上下に幅を持たせて、第2ブレーキスイッチ64の正常範囲(図11では「SW2正常範囲」)が設定されている。
【0112】
フェール判定部74は、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64がON状態となったときのブレーキマスタ圧を取得すると、図11に示すマップ上のSW1正常範囲およびSW2正常範囲の中にプロットされるか否かによって、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64が正常か異常かを判定する。例えば、図11に点aで示すように、第1ブレーキスイッチ63がON状態に切り替わったときのブレーキマスタ圧PaがSW1正常範囲内であれば、第1ブレーキスイッチ63は正常と判定される。一方、図11に点bで示すように、第1ブレーキスイッチ63がON状態に切り替わったときのブレーキマスタ圧PbがSW1正常範囲から外れている場合には、第1ブレーキスイッチ63はフェール(異常)と判定される。
【0113】
また、本実施形態の車両制御装置では、アイドリングストップ走行(以下「減速エコラン」ともいう)中において、フェール判定部74により第1ブレーキスイッチ63または第2ブレーキスイッチ64のフェールが判定された場合には、減速エコランを直ちに禁止するよう構成されている。具体的には、フェール判定部74がフェールを判定すると、減速エコランを禁止する旨の情報がエンジン制御部73に送信される。エンジン制御部73は、減速エコラン中である場合にはエンジン3を始動させ、以降の減速エコランの実行を禁止する。
【0114】
なお、エンジン制御部73は、減速エコランを禁止している場合でも、車両停止中にアイドリングストップ機能を実行する処理(停止エコラン)を実施可能とすることができる。また、フェール判定部74は、第1ブレーキスイッチ63または第2ブレーキスイッチ64のフェールを判定したときに、急制動判断部81にその旨の情報を送信し、急制動判断部81による急制動判断処理を中止させるよう構成することができる。
【0115】
次に、図12を参照して、第3実施形態の車両制御装置により実施されるブレーキスイッチのフェール判定処理について説明する。図12のフローチャートの処理は、例えば車両走行中に所定タイミングで実施される。
【0116】
まず、フェール判定部74により、第1ブレーキスイッチ63の計測信号に基づき、第1ブレーキスイッチ63がON状態であるか否かが確認される(S301)。第1ブレーキスイッチ63がON状態である場合にはステップS302に移行する。第1ブレーキスイッチ63がOFF状態である場合には、これまでと同様の通常制御(ここでは通常走行またはアイドリングストップ走行)を継続する(S307)。
【0117】
ステップS301において、第1ブレーキスイッチ63がON状態であることが確認されると、続いてフェール判定部74により、マスタ圧センサ65の計測信号に基づきブレーキマスタ圧が取得され、このブレーキマスタ圧が、図11の判定マップ中の第1ブレーキスイッチ63の正常範囲(SW1正常範囲)にあるか否かが確認される(S302)。ブレーキマスタ圧がSW1正常範囲にある場合には、第1ブレーキスイッチ63は正常と判定され、ステップS303に移行する。ブレーキマスタ圧がSW1正常範囲にない場合には、第1ブレーキスイッチ63はフェールと判定され、エンジン制御部73に減速エコランを禁止する旨の情報が送信されて、減速エコランの実施が禁止され(S305)、ダイアグ(異常警告灯、自己診断結果表示)が点灯状態とされる(S306)。
【0118】
ステップS302においてブレーキマスタ圧がSW1正常範囲にあることが確認されると、続いてフェール判定部74により、第2ブレーキスイッチ64の計測信号に基づき、第2ブレーキスイッチ64がON状態であるか否かが確認される(S303)。第2ブレーキスイッチ64がON状態である場合にはステップS304に移行する。第2ブレーキスイッチ64がOFF状態である場合には、これまでと同様の通常制御(ここでは通常走行またはアイドリングストップ走行)を継続する(S307)。
【0119】
ステップS303において、第2ブレーキスイッチ64がON状態であることが確認されると、続いてフェール判定部74により、マスタ圧センサ65の計測信号に基づきブレーキマスタ圧が取得され、このブレーキマスタ圧が、図11の判定マップ中の第2ブレーキスイッチ64の正常範囲(SW2正常範囲)にあるか否かが確認される(S304)。ブレーキマスタ圧がSW2正常範囲にある場合には、第2ブレーキスイッチ64は正常と判定され、この結果、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64が共に正常であるものと判断でき、そのまま処理を終了する。ブレーキマスタ圧がSW2正常範囲にない場合には、第2ブレーキスイッチ64はフェールと判定され、エンジン制御部73に減速エコランを禁止する旨の情報が送信されて、減速エコランの実施が禁止され(S305)、ダイアグ(異常警告灯、自己診断結果表示)が点灯状態とされる(S306)。
【0120】
このように、第3実施形態の車両制御装置では、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64が切り替えられたタイミングにおけるマスタ圧センサ65により計測されたブレーキマスタ圧が、各スイッチごとに定められた所定範囲(SW1正常範囲及びSW2正常範囲)内にあるか否かで、ECU7のフェール判定部74が第1ブレーキスイッチ63または第2ブレーキスイッチ64に異常が発生しているか否かを判定する。そして、フェール判定部74により、第1ブレーキスイッチ63または第2ブレーキスイッチ64の異常が判定された場合には、アイドリングストップ機能の実行を中止する。
【0121】
このような構成により、第1ブレーキスイッチ63または第2ブレーキスイッチ64の故障により急減速の判定が精度良く行えない場合には、アイドリングストップ機能を中止することで、車両走行中にエンジンが停止されるのを防止できる。これにより、エンジン3駆動により駆動されるメカポンプ31が常時作動するので、ベルト式無段変速機構11へ供給する油圧の低下を抑制することができ、ベルト挟圧力が必要量以下をなるのを抑制して、ベルト滑りの発生を抑制することができる。
【0122】
[第4実施形態]
次に、図13〜16を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。図13は、本発明の第4実施形態に係る車両制御装置の機能ブロック図であり、図14は、図13中のフェール判定部84におけるブレーキスイッチのフェール判定に用いるマップの一例を示す図であり、図15は、図14中の正常範囲補正量を設定するためのマップの一例を示す図であり、図16は、本発明の第4実施形態の車両制御装置により実施されるブレーキスイッチのフェール判定処理を示すフローチャートである。
【0123】
図13に示すように、本実施形態の車両制御装置は、ECU7のフェール判定部84(異常判定手段)が、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64の切替タイミングの差分(ブレーキスイッチON間隔)に応じて、SW1正常範囲及びSW2正常範囲を補正する点で、上記第3実施形態のフェール判定部74とは異なるものである。
【0124】
フェール判定部84は、図14に示すように、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64の個々に設定された固定の正常範囲(第3実施形態のSW1正常範囲及びSW2正常範囲に相当)の低圧側に、さらにブレーキスイッチON間隔に応じて可変な正常範囲補正量を追加した範囲を、第1ブレーキスイッチ63の正常範囲(SW1正常範囲)及び第2ブレーキスイッチ64の正常範囲(SW2正常範囲)として設定し、フェール判定に用いる。
【0125】
正常範囲補正量は、図15に示すように、ブレーキスイッチON間隔(第1ブレーキスイッチ63がON状態に切り替わったタイミングと、第2ブレーキスイッチ64がON状態に切り替わったタイミングとの間隔)に応じて可変である。より詳細には、正常範囲補正量は、ブレーキスイッチON間隔が小さいほど、すなわちブレーキストロークの変化量が大きいほど(ブレーキペダルが素早く踏み込まれるほど)、大きい値を設定されており、ブレーキスイッチON間隔が大きいほど、すなわちブレーキストロークの変化量が小さいほど(ブレーキペダルが緩やかに踏み込まれるほど)、小さい値を設定されている。また、ブレーキスイッチON間隔と正常範囲補正量とは比例関係とすることができる。このようなブレーキスイッチON間隔に対する正常範囲補正量の設定は、ブレーキペダルのストローク量の変化が早いほど、ブレーキマスタ圧の応答が遅れるという特性を考慮したものである。
【0126】
次に、図16を参照して、第4実施形態の車両制御装置により実施されるブレーキスイッチのフェール判定処理について説明する。図16のフローチャートの処理は、例えば車両走行中に所定タイミングで実施される。
【0127】
まず、フェール判定部84により、第1ブレーキスイッチ63の計測信号に基づき、第1ブレーキスイッチ63がON状態であるか否かが確認される(S401)。第1ブレーキスイッチ63がON状態である場合には、マスタ圧センサ65の計測信号に基づきこのときのブレーキマスタ圧が取得され、ステップS402に移行する。第1ブレーキスイッチ63がOFF状態である場合には、これまでと同様の通常制御(ここでは通常走行またはアイドリングストップ走行)を継続する(S408)。
【0128】
ステップS401において、第1ブレーキスイッチ63がON状態であることが確認されると、続いてフェール判定部84により、第2ブレーキスイッチ64の計測信号に基づき、第2ブレーキスイッチ64がON状態であるか否かが確認される(S402)。第2ブレーキスイッチ64がON状態である場合には、マスタ圧センサ65の計測信号に基づきこのときのブレーキマスタ圧が取得され、ステップS403に移行する。第2ブレーキスイッチ64がOFF状態である場合には、これまでと同様の通常制御(ここでは通常走行またはアイドリングストップ走行)を継続する(S408)。
【0129】
ステップS402において、第2ブレーキスイッチ64がON状態であることが確認されると、続いてフェール判定部84により、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64の計測信号に基づき、第1ブレーキスイッチ63がON状態に切り替わったタイミングと、第2ブレーキスイッチ64がON状態に切り替わったタイミングとの差分を取って、ブレーキスイッチON間隔が算出される(S403)。次いで、図15に例示するマップを用いて、ステップS403で算出されたブレーキスイッチON間隔に基づき、正常範囲補正量が算出される(S404)。
【0130】
そして、ステップS404で算出された正常範囲補正量を追加して、図14に例示するマップのSW1正常範囲及びSW2正常範囲が設定され、このマップを用いて、ステップS401で取得された第1ブレーキスイッチ63がON状態となったときのブレーキマスタ圧がSW1正常範囲にあるか否かが確認され、さらに、ステップS402で取得された第2ブレーキスイッチ64がON状態となったときのブレーキマスタ圧がSW2正常範囲にあるか否かが確認される(S405)。第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64のブレーキマスタ圧が、それぞれSW1正常範囲及びSW2正常範囲にある場合には、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64が共に正常であるものと判定され、そのまま処理を終了する。
【0131】
一方、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64のブレーキマスタ圧の少なくとも一方が、それぞれSW1正常範囲及びSW2正常範囲にない場合には、第1ブレーキスイッチ63または第2ブレーキスイッチ64がフェールと判定される。この場合、エンジン制御部73に減速エコランを禁止する旨の情報が送信されて、減速エコランの実施が禁止され(S406)、ダイアグ(異常警告灯、自己診断結果表示)が点灯状態とされる(S407)。
【0132】
このように、第4実施形態の車両制御装置では、フェール判定部84が、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64の切替タイミングの差分(ブレーキスイッチON間隔)に応じて、フェール判定に用いるための各スイッチごとに定められた所定範囲(SW1正常範囲及びSW2正常範囲)を補正する。
【0133】
この構成により、ブレーキスイッチON間隔の変化、より詳細にはブレーキペダルのストロークの変化量の増大に応じて、各スイッチの正常と判定するブレーキマスタ圧の範囲(SW1正常範囲及びSW2正常範囲)を低圧側に増やすことができる。ブレーキマスタ圧は、ブレーキペダルのストロークの変化量の増大に伴い応答遅れが増大するという特性があるが、この特性を考慮してSW1正常範囲及びSW2正常範囲を低圧側に増やすため、ブレーキペダルのストロークの変化量(ブレーキ踏み込み速度)の大小によらず、第1ブレーキスイッチ63または第2ブレーキスイッチ64のフェール判定を精度良く行うことができる。
【0134】
以上、本発明について好適な実施形態を示して説明したが、本発明はこれらの実施形態により限定されるものではない。本発明は、以上で説明した実施形態を複数組み合わせることで構成してもよいし、実施形態の各構成要素を、当業者が置換することが可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものに変更することが可能である。
【0135】
例えば、アキュムレータ44は、無段変速機構11のベルト挟圧力を制御するシーブに対して、内部に蓄圧されたオイルを供給可能に油圧経路36に接続されていればよい。上記実施形態では、セカンダリシーブ21aがベルト挟圧力を制御する構成を例示しているため、アキュムレータ44は、セカンダリシーブ21aへオイルを供給する第2油路36bに接続されているが、プライマリシーブ20aがベルト挟圧力を制御する構成の場合には、プライマリシーブ20aへオイルを供給する第1油路36aにアキュムレータ44を接続することができる。
【符号の説明】
【0136】
2 車両
3 エンジン
4 駆動輪
5 動力伝達装置
11 ベルト式無段変速機構
44 アキュムレータ(増圧手段)
45 蓄圧制御弁(増圧手段)
63 第1ブレーキスイッチ(スイッチ)
64 第2ブレーキスイッチ(スイッチ)
65 マスタ圧センサ(計測手段)
71,81 急制動判断部
72 アキュムレータ制御部(増圧手段)
74,84 フェール判定部(異常判定手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料消費量の低減を目的として、車両運転中に動力源(エンジン)を停止させる技術、所謂アイドリングストップ機能を備える車両が増えている。このような車両において、例えば特許文献1には、アイドリングストップ機能の実行中に運転者の急減速操作があった場合には、エンジンを始動して通常運転になるよう制御し、エンジンブレーキを利用して制動効果を高める技術が開示されている。
【0003】
また、エンジンから駆動輪への動力を伝達するための動力伝達装置の各構成要素を、エンジン動力により作動する機械式のメカポンプを供給源とする油圧によって制御する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−268120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、動力伝達装置の一要素としてベルト式の無段変速機構を含む構成の車両において、特許文献1などに記載される急減速時のエンジン制御を適用する場合を考える。このような車両において急減速操作が行われると、駆動輪側から車軸の回転数が急低下するため、動力伝達装置の内部の各回転数も急低下する。ベルト式の無段変速機構のプライマリプーリやセカンダリプーリは、イナーシャが大きく変速比も大きいため、この回転数の急低下に伴い急激なトルク変動が生じ、プライマリプーリとセカンダリプーリとを連結するベルトに滑りが発生する虞がある。
【0006】
このベルト滑りを抑制するためには、プライマリプーリまたはセカンダリプーリへ供給する油圧を増大させて、ベルト挟圧力を大きくする必要がある。この油圧はエンジン動力により作動するメカポンプを供給源とするが、メカポンプは、急減速操作を検知してからエンジンを始動するまではある程度の時間がかかるため、この間はベルト式の無段変速機構に充分な油圧を供給できない虞がある。このように、アイドリングストップ機能の実行中の急減速操作時には、ベルト式無段変速機構のベルト滑り発生を抑制できないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、車両の動力伝達装置の一要素としてベルト式の無段変速機構を含む構成の車両において、アイドリングストップ機能の実行中の急減速操作時に、無段変速機構のベルト滑り発生を抑制することができる車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両制御装置は、エンジンと、前記エンジンから駆動輪へ動力を伝達する動力伝達装置と、前記動力伝達装置に含まれるベルト式無段変速機構と、を備え、車両走行中に前記エンジンを停止させるアイドリングストップ機能を実行可能な車両制御装置において、前記ベルト式無段変速機構のベルト挟圧力を発生させるために供給される油圧を増圧する増圧手段を備え、前記アイドリングストップ機能の実行中に急減速操作が行われたときに、前記増圧手段により、前記ベルト式無段変速機構に供給される油圧を増圧することを特徴とする。
【0009】
また、上記の車両制御装置において、前記急減速操作が行われたか否かの判断は、ブレーキペダルのストローク量に基づき行うことが好ましい。
【0010】
また、上記の車両制御装置において、前記急減速操作が行われたか否かの判断は、前記ブレーキペダルが異なる所定のストローク量を通過するときに個別に切替可能に設けられた少なくとも2つのスイッチの状態に基づき行うことが好ましい。
【0011】
また、上記の車両制御装置は、前記ブレーキペダルのストローク量に応じて車両の各車輪に制動力を作用させるための液圧を調整するマスタシリンダにおける前記液圧の圧力を計測する計測手段と、前記スイッチが切り替えられたタイミングにおける前記計測手段により計測された前記マスタシリンダの前記液圧の圧力が、各スイッチごとに定められた所定範囲内にあるか否かで、前記スイッチに異常が発生しているか否かを判定する異常判定手段と、を備え、前記異常判定手段により前記スイッチの異常が判定された場合には、前記アイドリングストップ機能の実行を中止することが好ましい。
【0012】
また、上記の車両制御装置において、前記異常判定手段は、前記スイッチの切替タイミングの差分に応じて前記所定範囲を補正することが好ましい。
【0013】
また、上記の車両制御装置において、前記急減速操作が行われたか否かの判断は、ブレーキペダルのストローク量に応じて車両の各車輪に制動力を作用させるための液圧を調整するマスタシリンダにおける前記液圧の圧力に基づき行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車両制御装置は、アイドリングストップ機能の実行中に急減速操作が行われたときには、増圧手段により、ベルト式無段変速機構へ供給する油圧を増圧するため、ベルト挟圧力の要求量が増大する急減速時にベルト式無段変速機構のベルト挟圧力を増大させることが可能となり、ベルト滑りの発生を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る車両制御装置を搭載する車両の構成を示す概略図である。
【図2】図2は、図1に示す油圧制御装置の概略構成を示す図である。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態に係る車両制御装置の機能ブロック図である。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態の車両制御装置により実施される急制動判定に基づく油圧制御処理を示すフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の第1実施形態における急制動判定時のベルト挟圧力制御の一例を示すタイミングチャートである。
【図6】図6は、本発明の第2実施形態に係る車両制御装置の機能ブロック図である。
【図7】図7は、本発明の第2実施形態の車両制御装置により実施される急制動判定に基づく油圧制御処理を示すフローチャートである。
【図8】図8は、本発明の第2実施形態における急制動判定時のベルト挟圧力制御の一例を示すタイミングチャートである。
【図9】図9は、本発明の第3実施形態に係る車両制御装置の機能ブロック図である。
【図10】図10は、ブレーキストロークとブレーキマスタ圧との対応を示すタイミングチャートである。
【図11】図11は、図9中のフェール判定部におけるブレーキスイッチのフェール判定に用いるマップの一例を示す図である。
【図12】図12は、本発明の第3実施形態の車両制御装置により実施されるブレーキスイッチのフェール判定処理を示すフローチャートである。
【図13】図13は、本発明の第4実施形態に係る車両制御装置の機能ブロック図である。
【図14】図14は、図13中のフェール判定部におけるブレーキスイッチのフェール判定に用いるマップの一例を示す図である。
【図15】図15は、図14中の正常範囲補正量を設定するためのマップの一例を示す図である。
【図16】図16は、本発明の第4実施形態の車両制御装置により実施されるブレーキスイッチのフェール判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る車両制御装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0017】
[第1実施形態]
図1〜5を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る車両制御装置を搭載する車両2の構成を示す概略図であり、図2は、図1に示す油圧制御装置1の概略構成を示す図であり、図3は、図3は、本発明の第1実施形態に係る車両制御装置の機能ブロック図であり、図4は、本発明の第1実施形態の車両制御装置により実施される急制動判定に基づく油圧制御処理を示すフローチャートであり、図5は、本発明の第1実施形態における急制動判定時のベルト挟圧力制御の一例を示すタイミングチャートである。
【0018】
まず、図1を参照して、本実施形態に係る車両制御装置を搭載する車両2の構成について説明する。図1に示すように、この車両2は、走行時における動力源としてのエンジン3と、駆動輪4と、動力伝達装置5と、油圧制御装置1と、ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)7とを備える。
【0019】
エンジン3は、車両2を走行させる走行用駆動源(原動機)であり、燃料を消費して車両2の駆動輪4に作用させる動力を発生させる。エンジン3は、燃料の燃焼に伴って機関出力軸であるクランクシャフト8に機械的な動力(エンジントルク)を発生させ、この機械的動力をクランクシャフト8から駆動輪4に向けて出力可能である。
【0020】
動力伝達装置5は、エンジン3から駆動輪4へ動力を伝達するものである。動力伝達装置5は、エンジン3から駆動輪4への動力の伝達経路中に設けられ、液状媒体としてのオイルの圧力(油圧)によって作動する。
【0021】
より詳細には、動力伝達装置5は、トルクコンバータ9、前後進切替機構10、無段変速機構11、減速機構12、デファレンシャルギヤ13等を含んで構成される。動力伝達装置5は、エンジン3のクランクシャフト8と無段変速機構11のインプットシャフト14とがトルクコンバータ9、前後進切替機構10等を介して接続され、無段変速機構11のアウトプットシャフト15が減速機構12、デファレンシャルギヤ13、駆動軸16等を介して駆動輪4に接続される。
【0022】
トルクコンバータ9は、エンジン3と前後進切替機構10との間に配置され、エンジン3から伝達された動力のトルクを増幅させて(又は維持して)、前後進切替機構10に伝達することができる。トルクコンバータ9は、回転自在に対向配置されたポンプインペラ9a及びタービンランナ9bを備え、フロントカバー9cを介してポンプインペラ9aをクランクシャフト8と一体回転可能に結合し、タービンランナ9bを前後進切替機構10に連結して構成されている。そして、これらポンプインペラ9a及びタービンランナ9bの回転に伴って、ポンプインペラ9aとタービンランナ9bとの間に介在された作動油などの粘性流体が循環流動することにより、その入出力間の差動を許容しつつトルクを増幅して伝達することが可能である。
【0023】
また、トルクコンバータ9は、タービンランナ9bとフロントカバー9cとの間に設けられ、タービンランナ9bと一体回転可能に連結されたロックアップクラッチ9dをさらに備える。このロックアップクラッチ9dは、後述の油圧制御装置1から供給されるオイルの圧力によって作動し、フロントカバー9cとの係合状態(ロックアップON)と解放状態(ロックアップOFF)とに切り替えられる。ロックアップクラッチ9dがフロントカバー9cと係合している状態では、フロントカバー9c(すなわちポンプインペラ9a)とタービンランナ9bが係合され、ポンプインペラ9aとタービンランナ9bとの相対回転が規制され、入出力間の差動が禁止されるので、トルクコンバータ9は、エンジン3から伝達されたトルクをそのまま前後進切替機構10に伝達する。
【0024】
前後進切替機構10は、エンジン3からの動力(回転出力)を変速可能であると共に、その回転方向を切替可能である。前後進切替機構10は、遊星歯車機構17、摩擦係合要素としての前後進切替クラッチ(フォワードクラッチ)C1及び前後進切替ブレーキ(リバースブレーキ)B1等を含んで構成される。遊星歯車機構17は、相互に差動回転可能な複数の回転要素としてサンギヤ、リングギヤ、キャリア等を含んで構成される差動機構であり、前後進切替クラッチC1及び前後進切替ブレーキB1は、遊星歯車機構17の作動状態を切り替えるための係合要素であり、例えば多板クラッチなどの摩擦式の係合機構等によって構成することができ、ここでは油圧式の湿式多板クラッチを用いる。
【0025】
前後進切替機構10は、後述の油圧制御装置1から供給されるオイルの圧力によって前後進切替クラッチC1、前後進切替ブレーキB1が作動し作動状態が切り替えられる。前後進切替機構10は、前後進切替クラッチC1が係合状態(ON状態)、前後進切替ブレーキB1が解放状態(OFF状態)である場合に、エンジン3からの動力を正転回転(車両2が前進する際にインプットシャフト14が回転する方向)でインプットシャフト14に伝達する。前後進切替機構10は、前後進切替クラッチC1が解放状態、前後進切替ブレーキB1が係合状態である場合に、エンジン3からの動力を逆転回転(車両2が後進する際にインプットシャフト14が回転する方向)でインプットシャフト14に伝達する。前後進切替機構10は、ニュートラル時には、前後進切替クラッチC1、前後進切替ブレーキB1共に解放状態とされる。本実施形態では、このような前後進切替クラッチC1及び前後進切替ブレーキB1の係合/解除の制御を行う制御系をまとめて「C1制御系」18と呼ぶ。
【0026】
無段変速機構11は、エンジン3から駆動輪4への動力の伝達経路における前後進切替機構10と駆動輪4との間に設けられ、エンジン3の動力を変速して出力可能な変速装置である。無段変速機構11は、後述の油圧制御装置1から供給されるオイルの圧力によって作動する。
【0027】
無段変速機構11は、インプットシャフト14に伝達(入力)されるエンジン3からの回転動力(回転出力)を所定の変速比で変速して変速機出力軸であるアウトプットシャフト15に伝達し、このアウトプットシャフト15から駆動輪4に向けて変速された動力を出力する。無段変速機構11は、より詳細には、インプットシャフト(プライマリシャフト)14に連結されたプライマリプーリ20、アウトプットシャフト(セカンダリシャフト)15に連結されたセカンダリプーリ21、プライマリプーリ20とセカンダリプーリ21との間に掛け渡されたベルト22などを含んで構成されるベルト式の無段自動変速機(Continuously Variable Transmission:CVT)である。
【0028】
プライマリプーリ20は、プライマリシャフト14の軸方向に移動可能な可動シーブ20a(プライマリシーブ)と、固定シーブ20bとを同軸に対向配置することにより形成され、同様に、セカンダリプーリ21は、セカンダリシャフト15の軸方向に移動可能な可動シーブ21a(セカンダリシーブ)と、固定シーブ21bとを同軸に対向配置することにより形成される。ベルト22は、これら可動シーブ20a,21aと固定シーブ20b,21bとの間に形成されたV字溝に掛け渡されている。
【0029】
そして、無段変速機構11では、後述の油圧制御装置1からプライマリプーリ20のプライマリシーブ油圧室23、セカンダリプーリ21のセカンダリシーブ油圧室24に供給されるオイルの圧力(プライマリ圧、セカンダリ圧)に応じて、可動シーブ20a,21aが固定シーブ20b,21bとの間にベルト22を挟み込む力(ベルト挟圧力)を、プライマリプーリ20及びセカンダリプーリ21の個々で制御することができる。これにより、プライマリプーリ20及びセカンダリプーリ21のそれぞれにおいて、V字幅を変更してベルト22の回転半径を調節することができ、プライマリプーリ20の入力回転速度に相当する入力回転数(プライマリ回転数)とセカンダリプーリ21の出力回転速度に相当する出力軸回転数(セカンダリ回転数)との比である変速比を無段階に変更することが可能となっている。また、プライマリプーリ20及びセカンダリプーリ21のベルト挟圧力が調整されることで、これに応じたトルク容量で動力を伝達することが可能となっている。
【0030】
減速機構12は、無段変速機構11からの動力の回転速度を減速してデファレンシャルギヤ13に伝達する。デファレンシャルギヤ13は、減速機構12からの動力を、各駆動軸16を介して各駆動輪4に伝達する。デファレンシャルギヤ13は、車両2が旋回する際に生じる旋回の中心側、つまり内側の駆動輪4と、外側の駆動輪4との回転速度の差を吸収する。
【0031】
上記のように構成される動力伝達装置5は、エンジン3が発生させた動力をトルクコンバータ9、前後進切替機構10、無段変速機構11、減速機構12、デファレンシャルギヤ13等を介して駆動輪4に伝達することができる。この結果、車両2は、駆動輪4の路面との接地面に駆動力[N]が生じ、これにより走行することができる。
【0032】
油圧制御装置1は、流体としてのオイルの油圧によってトルクコンバータ9のロックアップクラッチ9d、前後進切替機構10の前後進切替クラッチC1及び前後進切替ブレーキB1、無段変速機構11のプライマリシーブ20a及びセカンダリシーブ21a等を含む動力伝達装置5を作動させるものである。油圧制御装置1は、例えば、ECU7により制御される種々の油圧制御回路を含んで構成される。油圧制御装置1は、複数の油路、オイルリザーバ、オイルポンプ、複数の電磁弁などを含んで構成され、後述するECU7からの信号に応じて、動力伝達装置5の各部に供給されるオイルの流量あるいは油圧を制御する。また、この油圧制御装置1は、動力伝達装置5の所定の箇所の潤滑を行う潤滑油供給装置としても機能する。
【0033】
ECU7は、車両2の各部の駆動を制御するものである。ECU7は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路である。ECU7の機能は、ROMに保持されるアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することによって、CPUの制御のもとで車両2内の各種装置を動作させるとともに、RAMやROMにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。本実施形態では、ECU7は、上述の油圧制御装置1を制御することによって、トルクコンバータ9、前後進切替機構10、無段変速機構11など動力伝達装置5の各部の制御を行う。なお、ECU7は、上記の機能に限定されず、車両2の各種制御に用いるその他の各種機能も備えている。
【0034】
また、上記のECU7とは、エンジン3を制御するエンジンECU、動力伝達装置5(油圧制御装置1)を制御するT/M ECU、アイドリングストップ(S&S(スタート&ストップ))制御を実行するためのS&S ECUなどの複数のECUを備える構成であってもよい。
【0035】
なお、ECU7には、図1には図示しない車両2内の各種センサが接続され、各種センサからの検出信号が入力されており、これらの検出信号に基づいて、車両2の各部の駆動を制御することができる。図1では、本実施形態に係るセンサとして、ブレーキペダルのストローク量(踏み込み量)を計測するブレーキストロークセンサ61と、車速を計測する車速センサ62が例示されている。
【0036】
次に、図2を参照して油圧制御装置1の構成について説明する。
【0037】
図2に示すように、油圧制御装置1は、動力伝達装置5の各部にオイルを供給するオイル供給源として、エンジン3(以下「Eng.」とも表記する)の駆動により駆動される機械式のメカポンプ31と、電気で作動するモータ32の駆動により駆動される電動ポンプ33との二つの油圧ポンプを備えている。メカポンプ31及び電動ポンプ33は、油圧制御装置1内のドレン34に貯留されたオイルをストレーナ35で濾過した後に吸入圧縮して吐出し、油圧経路36を介して動力伝達装置5にオイルを供給することができる。
【0038】
なお、本実施形態の車両2には、燃費向上などのため、車両2の停車中または走行中にエンジン3を停止させる機能、所謂アイドリングストップ機能が備えられおり、特に減速走行時など、車両2の走行中に所定の条件を満たす場合に、エンジン3を停止させた状態で走行するアイドリングストップ走行(以下「減速エコラン」ともいう)を実施可能に構成されている。そして、電動ポンプ33は、このようなアイドリングストップ機能の実行時、すなわちエンジン3の停止時におけるメカポンプ31の代替として、その作動油(オイル)の供給を実行する。
【0039】
電動ポンプ33は、その吐出口に接続される出口流路37を介して、油圧経路36に連通されている。また、この出口流路37上には、油圧経路36から電動ポンプ33へのオイルの逆流を防止するチェック弁38が設けられている。
【0040】
油圧経路36には、プライマリレギュレータバルブ39が設けられている。プライマリレギュレータバルブ39は、メカポンプ31及び電動ポンプ33で発生された油圧を調圧するものである。プライマリレギュレータバルブ39には、SLSリニアソレノイド40により制御圧が供給される。SLSリニアソレノイド40は、ECU7から送信されたデューティ信号(デューティ値)によって決まる電流値に応じて制御圧を発生させる電磁バルブである。
【0041】
プライマリレギュレータバルブ39は、このSLSリニアソレノイド40による制御圧に応じて、油圧経路36内の油圧を調整する。プライマリレギュレータバルブ39によって調圧された油圧経路36内の油圧がライン圧PLとして用いられる。
【0042】
プライマリレギュレータバルブ39は、例えば、弁本体内で弁体(スプール)がその軸方向に摺動して流路の開閉もしくは切替を行うスプール弁を適用することができ、入力ポートに油圧経路36が接続され、パイロット圧を入力するパイロットポートにSLSリニアソレノイド40が接続され、出力ポートからライン圧PLの調圧により発生する余剰流を排出するよう構成することができる。
【0043】
メカポンプ31及び電動ポンプ33は、油圧経路36を介して、前後進切替機構10のC1制御系18(前後進切替クラッチC1及び前後進切替ブレーキB1)と、無段変速機構11(プライマリシーブ20aのプライマリシーブ油圧室23及びセカンダリシーブ21aのセカンダリシーブ油圧室24)に対して、プライマリレギュレータバルブ39によってライン圧PLに調圧された油圧を供給可能に接続されている。
【0044】
油圧経路36とC1制御系18との間には、図2には図示しないが、C1制御系18に供給する油圧を調節することができる油圧制御回路が設けられており、この油圧制御回路は、ECU7によって制御されている。
【0045】
無段変速機構11(プライマリシーブ20a及びセカンダリシーブ21a)へ接続される油圧経路36は、プライマリシーブ20aのプライマリシーブ油圧室23へ油圧を供給する第1油路36aと、セカンダリシーブ21aのセカンダリシーブ油圧室24へ油圧を供給する第2油路36bとに分岐される。
【0046】
このうち第2油路36b上には、LPM(Line Pressure Modulator)No.1バルブ(調圧弁)41が設けられている。LPM No.1バルブ41は、ライン圧PLを元圧として調圧された油圧を出力する。LPM No.1バルブ41には、SLSリニアソレノイド42により制御圧が供給される。このSLSリニアソレノイド42も、プライマリレギュレータバルブ39のSLSリニアソレノイド40と同様に、ECU7から送信されたデューティ信号(デューティ値)によって決まる電流値に応じて制御圧を発生させる電磁バルブである。
【0047】
LPM No.1バルブ41は、例えばスプール弁であり、ECU7によりデューティ制御されるSLSリニアソレノイド42の出力油圧をパイロット圧として、バルブ内に導入されるライン圧PLを元圧として減圧された油圧を出力する。LPM No.1バルブ41から出力された油圧は、セカンダリ圧Pdとして用いられ、セカンダリシーブ油圧室24に供給される。セカンダリシーブ油圧室24に供給されたセカンダリ圧Pdに応じてセカンダリシーブ21aの推力が変化し、無段変速機構11のベルト挟圧力が増減させられる。
【0048】
なお、第2油路36b上のLPM No.1バルブ41とセカンダリシーブ油圧室24との間には、セカンダリ圧Pdを検出する圧力センサ43が設けられており、検出したセカンダリ圧Pdの情報をECU7に送信するよう構成されている。
【0049】
そして、特に本実施形態では、この油圧経路36の第2油路36b上に、より詳細には、第2油路36bのLPM No.1バルブ41とセカンダリシーブ油圧室24との間に、アキュムレータ44が接続されている。
【0050】
アキュムレータ44は、メカポンプ31の駆動時に、メカポンプ31から供給された油圧を内部に蓄えて保持(蓄圧)しておき、必要に応じてこの保持された油圧をセカンダリシーブ21aに供給できるよう構成されている。アキュムレータ44は、既知の構成により実現できるが、例えばガス式のアキュムレータの場合には、内部にピストンが配置され、このピストンにより密閉された内部空間にガスが充填されている。蓄圧時には、ピストンが押し込まれてオイルが内部に蓄えられる。このとき、ガスは圧縮され、この圧縮されたガスの圧力と蓄えられたオイルの圧力とは釣り合っている。また、吐出時には、ガスの膨張力を利用してピストンを押し出すことで、蓄圧されたオイルを内部から吐出して、セカンダリシーブ21aに供給する。
【0051】
アキュムレータ44は、ピストンの摺動に応じて内部のガスの容積を最小値Va_minから最大値Va_maxの間で変化させることができ、ガス容積が最小値Va_minのとき、ガスの圧力は最大値Pa_maxとなり、ガス容積が最大値Va_maxのとき、ガスの圧力は最小値Pa_minとなるよう構成されている。ここで、ガス圧の最小値Pa_minは、アイドリングストップ走行時に無段変速機構11のベルト22の滑り発生が回避できる最低限のベルト挟圧力を確保するために要求されるセカンダリ圧Pdに相当する。また、ガス圧の最大値Pa_maxは、アキュムレータ44からの蓄圧の吐出時に、セカンダリ圧Pdを少なくともPa_minに維持できるような圧力として予め設定されている。なお、アキュムレータ44のサイズは、例えば総容積を100(cc)、吐出量(Va_max−Va_min)を20(cc)とすることができる。
【0052】
アキュムレータ44の蓄圧及び吐出は、このアキュムレータ44と第2油路36bとの間に設けられる蓄圧制御弁45により制御される。蓄圧制御弁45が閉じることでアキュムレータ44の内部にオイルが蓄圧され、蓄圧制御弁45が開くことで蓄圧されていたオイルが吐出される。蓄圧制御弁45の開閉動作は、ECU7によって制御されている。蓄圧制御弁45は、例えばスプール弁であり、ECU7によりパイロット圧を調整することで開閉を切り替えられる。
【0053】
なお、アキュムレータ44と蓄圧制御弁45との間には、アキュムレータ44に蓄圧されるオイルの圧力(アキュムレータ圧)Paccを検出する圧力センサ46が設けられ、検出したアキュムレータ圧Paccの情報をECU7に送信するよう構成されている。
【0054】
第2油路36b上には、さらに、LPM No.1バルブ41より上流側に、チェック弁(昇圧用チェック弁)57が設けられ、アキュムレータ44から吐出されたオイルの上流側(メカポンプ31、電動ポンプ33、C1制御系18の側)への逆流やプライマリシーブ20aへ接続する第1油路36aへの流入を防止して、アキュムレータ44によるセカンダリ圧Pdの昇圧を効率よく行うことができるよう構成されている。
【0055】
第1油路36a上には、第1変速制御弁47及び第2変速制御弁48が設けられている。第1変速制御弁47は、ECU7によりデューティ制御される第1デューティソレノイド(DS1)49の駆動に応じて、プライマリシーブ油圧室23へのオイル供給を調整する。また、第2変速制御弁48は、ECU7によりデューティ制御される第2デューティソレノイド(DS2)50の駆動に応じて、プライマリシーブ油圧室23からのオイル排出を調整する。
【0056】
つまり、第1デューティソレノイド49が作動すると、第1変速制御弁47からオイルがプライマリシーブ油圧室23に導入され、プライマリシーブ20aがプライマリプーリ20の溝幅を狭める方向に移動して、この結果、ベルト22の掛径が増加してアップシフトする。第2デューティソレノイド50が作動すると、第2変速制御弁48によりプライマリシーブ油圧室23からオイルが排出され、プライマリシーブ20aがプライマリプーリ20の溝幅を広げる方向に移動して、この結果ベルト22の掛径が減少してダウンシフトする。このように、第1デューティソレノイド49及び第2デューティソレノイド50を作動させることで、無段変速機構11の変速比を制御することができる。
【0057】
プライマリレギュレータバルブ39の出力ポートには、セカンダリレギュレータバルブ51が接続されている。このセカンダリレギュレータバルブ51も、プライマリレギュレータバルブ39と同様にスプール弁であり、ECU7によりデューティ制御されるSLSリニアソレノイド52の制御圧に応じて、プライマリレギュレータバルブ39から排出される余剰流の油圧を調圧するものである。
【0058】
プライマリレギュレータバルブ39の出力ポートには、さらにトルクコンバータ9のロックアップクラッチ9dの係合/解放を制御するL/U制御系53が接続されており、プライマリレギュレータバルブ39から余剰流が発生したときには、セカンダリレギュレータバルブ51によって余剰流が調圧され、この調圧された余剰流がL/U制御系53(または無段変速機構11より低圧で制御可能な低圧制御系)に供給されるよう構成されている。
【0059】
また、セカンダリレギュレータバルブ51は、出力ポートから余剰流の調圧により発生するさらなる余剰流を、動力伝達装置5内の所定の箇所の各部潤滑などに供給できるよう構成されている。図2には図示しないが、L/U制御系53や各部潤滑などに供給された余剰流は、最終的にドレン34に戻されるよう油路が形成されている。
【0060】
なお、プライマリレギュレータバルブ39のSLSリニアソレノイド40、セカンダリレギュレータバルブ51のSLSリニアソレノイド52、及びLPM No.1バルブ41のSLSリニアソレノイド42は、単一のリニアソレノイドであって、ライン圧PLとセカンダリ圧Pd(ベルト挟圧力)とを連動して制御する構成であってもよい。または、それぞれが別個のリニアソレノイドであって、ECU7により個別に制御可能であり、ライン圧PLとセカンダリ圧Pd(ベルト挟圧力)とを独立して制御する構成であってもよい。
【0061】
また、SLSリニアソレノイド40、SLSリニアソレノイド42、SLSリニアソレノイド52は、プライマリレギュレータバルブ39、LPM No.1バルブ41、セカンダリレギュレータバルブ51へ入力されるパイロット圧を、油圧経路36のライン圧PLを利用して生成するよう構成することができる。
【0062】
次に、図3を参照して、本実施形態に係る車両制御装置の構成について説明する。本実施形態の車両制御装置は、アイドリングストップ走行中に急減速操作が行われたか否かを判定し、急減速操作が行われたと判断した際には、無段変速機構11のベルト挟圧力を増大させ、ベルト滑りの発生を抑制するよう制御するものである。
【0063】
図3に示すように、本実施形態に係る車両制御装置は、図1,2に示した車両2の構成要素のうち、ブレーキストロークセンサ61、車速センサ62、ECU7、油圧制御装置1の蓄圧制御弁45及びアキュムレータ44、エンジン3を含んで構成される。ECU7は、急制動判定及びベルト挟圧力制御に係る機能として、急制動判断部71、アキュムレータ制御部72、エンジン制御部73を備えて構成されている。車両制御装置は、図3に示す要素以外にも、動力伝達装置5のベルト式無段変速機構11を含んで構成される。
【0064】
急制動判断部71は、ブレーキストロークセンサ61及び車速センサ62からの入力情報に基づき、急制動(急減速)操作が行われたか否かを判断する。急制動操作が行われたことを判断した場合には、その旨の信号をアキュムレータ制御部72及びエンジン制御部73に送信する。急制動判断部71による急制動操作の判定基準は、ブレーキストロークセンサ61により計測されるブレーキペダルのストローク量と、車速センサ62により計測される車速に基づく以下の全ての条件を満たすことである。
【0065】
(1)アイドリングストップ走行中(エンジン停止中)
(2)車速が急制動判定閾値より高い
(3)ストローク量がブレーキストローク判定閾値より高い
(4)ストローク量の変化量が、ブレーキストローク変化量判定閾値より高い
【0066】
アキュムレータ制御部72は、アキュムレータ44の蓄圧、吐出処理を制御する。本実施形態では、アキュムレータ制御部72は、急制動判断部71からの急制動状態である旨の信号を受信するのに応じて、アキュムレータ44の吐出処理を実施すべく、蓄圧制御弁45を開放する制御信号を蓄圧制御弁45に送信する。蓄圧制御弁45が開放されると、アキュムレータ44に蓄圧されているオイルが油圧経路36の第2油路36bに吐出されてセカンダリ圧Pdが増圧し、ベルト挟圧力が増大する。
【0067】
エンジン制御部73は、エンジン3の動作を制御する。本実施形態では、エンジン制御部73は、急制動判断部71からの急制動状態である旨の信号を受信するのに応じて、アイドリングストップ走行を中止すべく、エンジン3を始動させる制御信号をエンジン3に送信する。
【0068】
なお、本実施形態では、ECU7のアキュムレータ制御部72と、アキュムレータ44及び蓄圧制御弁45とが、無段変速機構11のベルト挟圧力を発生させるためのセカンダリシーブ21aに供給される油圧(セカンダリ圧Pd)を増圧するための増圧手段として機能する。
【0069】
次に、図4,5を参照して、本実施形態に係る車両制御装置の動作について説明する。
【0070】
まず、図4を参照して、本実施形態の車両制御装置により実施される急制動判定に基づく油圧制御処理について説明する。図4に示す処理は、例えばアイドリングストップ走行中に所定時間ごとに実施される。
【0071】
まず、急制動判断部71により、エンジン3が停止中か否かが確認される(S101)。アイドリングストップ走行中であり、エンジン3が停止中の場合にはステップS102に移行する。エンジン3が停止中でない場合には、これまでと同様の通常制御(ここでは通常走行)を継続する(S107)。
【0072】
次に、急制動判断部71により、車速センサ62の計測信号に基づき、車速が所定の急制動判定閾値以上か否かが確認される(S102)。ここで、急制動判定閾値は、アイドリングストップ走行中でも電動ポンプ33のみで充分にベルト挟圧力を確保することが可能な極低車速(例えば3km/h以下)では、急制動判定が不要であるので、このような極低車速時に急制動判定自体を実施させないためのパラメータである。急制動判定閾値は、例えば3〜11km/h程度に設定することができる。車速が急制動判定閾値以上である場合には、ステップS103に移行する。車速が急制動判定閾値より小さい場合には、ベルト挟圧力の増加は不要として、これまでと同様の通常制御(ここではアイドリングストップ走行)を継続する(S107)。
【0073】
続いて、急制動判断部71により、ブレーキストロークセンサ61の計測信号に基づき、ブレーキストロークの変化量が所定のブレーキストローク変化量判定閾値以上であるか否かが確認される(S103)。ブレーキストローク変化量判定閾値は、ブレーキストロークの変化量が小さいときには、ブレーキペダルの踏み込みが比較的緩やかであり急制動が起こりにくいので、このような状況において急制動判定を実施させないためのパラメータである。ブレーキストロークの変化量がブレーキストローク変化量判定閾値以上である場合には、ブレーキペダルが急激に踏み込まれているものとして、ステップS104に移行する。ブレーキストロークの変化量がブレーキストローク変化量判定閾値より小さい場合には、急制動ではないものと判断して、これまでと同様の通常制御(ここではアイドリングストップ走行)を継続する(S107)。
【0074】
続いて、急制動判断部71により、ブレーキストロークセンサ61の計測信号に基づき、ブレーキストローク量が所定のブレーキストローク判定閾値以上であるか否かが確認される(S104)。ブレーキストローク判定閾値は、ブレーキストローク量が小さいときには、ブレーキペダルの踏み込み量が少なくブレーキ力が弱いため、急制動が起こりにくいので、このような状況において急制動判定を実施させないためのパラメータである。ブレーキストローク量がブレーキストローク判定閾値以上である場合には、ブレーキペダルが大きく踏み込まれているものとして、ステップS105に移行する。ブレーキストローク量がブレーキストローク判定閾値より小さい場合には、急制動ではないものと判断して、これまでと同様の通常制御(ここではアイドリングストップ走行)を継続する(S107)。
【0075】
ステップS101〜S104の判断条件を全て満たした場合、すなわち、エンジン停止中であり、車速が急制動判定閾値以上であり、ブレーキストロークの変化量がブレーキストローク変化量判定閾値以上であり、かつ、ブレーキストローク量がブレーキストローク判定閾値以上である場合には、急制動判断部71により、急制動操作が行われ、車両2が急制動状態となるものと判定され、その旨の信号がアキュムレータ制御部72及びエンジン制御部73に送信される。急制動判断部71による車両が急制動状態となる旨の信号とは、例えば、通常時は0であり、急制動判定時に1となるフラグ状の信号とすることができる(図5参照)。
【0076】
そして、アキュムレータ制御部72により、蓄圧制御弁45が開放され、アキュムレータ44に蓄圧されていたオイルが油圧経路36の第2油路36bに吐出される(S105)。これにより、無段変速機構11のセカンダリプーリ21のセカンダリシーブ油圧室24へ供給される油圧(セカンダリ圧Pd)が増圧し、ベルト挟圧力が増大する。さらに、エンジン制御部73により、エンジン3が始動され(S106)、アイドリングストップ走行が中止される。
【0077】
次に、図5を参照して、本実施形態の車両制御装置による急制動判定時のベルト挟圧力制御について説明する。図5のタイミングチャートには、エンジン回転数、車速、ブレーキストローク、ブレーキストローク変化量、ブレーキ圧、急制動判定値、ベルト挟圧の時間遷移がそれぞれ示されている。
【0078】
図5のタイミングチャートの初期段階では、エンジン回転数は0であり、すなわちエンジン3が停止されており、さらに、車速が急制動判定閾値より大きいので、図4のフローチャートのステップS101、S102の条件は満たすが、ブレーキストローク及びその変化量が閾値より小さく、急制動操作とは判定されていないため、急制動判定値は0である。このとき、ベルト挟圧(セカンダリ圧)には電動ポンプ33(EOP)からの吐出された油圧が供給されている。
【0079】
時刻Aにおいて、ブレーキストローク量が増大してブレーキストローク判定閾値を超えると共に、ブレーキストローク変化量もブレーキストローク変化量判定閾値を超え、図4のフローチャートのステップS103,104の条件が満たされる。このとき、急制動判断部71は、急制動操作が行われ、車両2が急制動状態となるものと判断して、急制動判定値を0から1に変更する。この急制動判定値の切替に応じて、アキュムレータ制御部72がアキュムレータ吐出指示を蓄圧制御弁45に対して行うと共に、エンジン制御部73がエンジン始動指示をエンジン3に対して行う。
【0080】
アキュムレータ吐出指示に応じて、蓄圧制御弁45が開放されてアキュムレータ44から蓄圧されたオイルが油圧経路36の第2油路36bに吐出されると、期間Bにおいて、アキュムレータ44から吐出されたオイルの圧力(アキュムレータ圧、アキューム圧)によって、ベルト挟圧(セカンダリ圧)が増圧される。なお、アキューム圧は、無段変速機構11のベルト22の滑り発生が回避できる最低限のベルト挟圧力を確保できるよう予め設定されている。このため、図5に示すように、ベルト挟圧は、アキューム圧による増圧によって、ベルト滑りを回避するのに必要な圧力(図5の「必要圧」)を上回るレベルに維持される。
【0081】
また、このベルト挟圧の増圧とほぼ同じタイミングで、上述のブレーキストローク量の増大に応じたブレーキ圧の増加が起こり、ブレーキが作動して車速が減少する。この車速の減少に応じて、車輪側からトルク変動が入力されるため、ベルト滑りを防止するための必要圧も周期的に増大する。
【0082】
区間Cにおいて、エンジン始動指示に応じてエンジン3が駆動しはじめ、エンジン回転数が増大すると、エンジン3駆動により駆動されるメカポンプ31(MOP)MOPも作動しはじめる。そして、メカポンプ31から吐出される油圧(図5の「MOP圧」)によって、ベルト挟圧はさらに増圧される。
【0083】
なお、従来の急制動判定処理には例えば車速の変動に基づく手法などがとられていたが、図5に示す例で、車速に基づいた急制動判定をおこなった場合には、車速が急激に変動する時刻Dの近傍において急制動判定が行われると考えられる(図5に「急制動判定(従来)」として示す)。このタイミングでは、既にブレーキが作動して、これに伴うトルク変動も発生している。また、アキュムレータ44などの増圧手段も用いないため、急制動判定後のベルト挟圧の増圧のタイミングも遅くなる。このため、ベルト挟圧はベルト滑りを回避するための必要圧を下回ることになり(図5に「ベルト挟圧(従来)」として示す)、ベルト滑りが発生する可能性が高い。
【0084】
次に、本実施形態の車両制御装置の効果について説明する。
【0085】
本実施形態の車両制御装置は、ベルト式無段変速機構11のベルト挟圧力を発生させるために供給される油圧(セカンダリ圧Pd)を増圧する増圧手段として、ECU7のアキュムレータ制御部72、蓄圧制御弁45、アキュムレータ44を備える。そして、アイドリングストップ機能の実行中に急減速(急制動)操作が行われたときに、増圧手段により、ベルト式無段変速機構11に供給される油圧(セカンダリ圧Pd)を増圧する。
【0086】
このような構成により、アイドリングストップ機能の実行中に急減速操作が行われたときには、ベルト式無段変速機構11へ供給する油圧が増圧されるため、ベルト挟圧力の要求量が増大する急減速時にベルト式無段変速機構11のベルト挟圧力を増大させることが可能となり、ベルト滑りの発生を抑制できる。
【0087】
また、本実施形態の車両制御装置では、急減速(急制動)操作が行われたか否かの判断については、急制動判断部71が、ブレーキペダルのストローク量に基づき行う。
【0088】
この構成により、ブレーキペダルの踏み込み(ストローク量)に連動する急減速操作を精度良く検知することができる。また、急減速操作と実際の急減速状態の発生との間にはタイムラグがあるが、本実施形態では、ブレーキペダルのストローク量に基づき急減速操作の有無を判定するので、実際に急減速が起こった後に変動する車速や加速度などのパラメータを判断基準とする場合と比べて、急減速の発生を早いタイミングで検出することができる。このため、実際に急減速が発生し、ベルト式無段変速機構11に大きなベルト挟圧力が要求された時点では、既にセカンダリ圧を増圧させてベルト挟圧力を増大しておけるので、ベルト滑りの発生を好適に抑制できる。
【0089】
なお、上記実施形態では、ブレーキストロークセンサ61を用いて計測したブレーキペダルのストローク量に基づいて急減速を判定していたが、運転者のブレーキ(急減速、急制動)操作と連動して変化し、ブレーキ操作に応じて実際に急減速が始まるより早いタイミングで応答するパラメータであれば、ストローク量以外の他のパラメータを用いてもよい。例えば、ブレーキペダルのストローク量に応じて車両2の各車輪に制動力を作用させるための液圧を調整するマスタシリンダにおける液圧の圧力(ブレーキマスタ圧)に基づいて、急制動判断部71が急減速の有無を判断するよう構成することも可能である。
【0090】
また、上記実施形態では、無段変速機構11への供給油圧(セカンダリ圧)を増圧する増圧手段としてアキュムレータ44を例示したが、セカンダリ圧を一時的に増圧できれば他の装置を用いてもよい。例えば、電動ポンプ33を図2に示すアキュムレータ44と同様に油圧経路36の第2油路36bに接続し、急減速判定時に電動ポンプ33を作動させてセカンダリ圧を増圧させる構成とすることも可能である。
【0091】
[第2実施形態]
次に、図6〜8を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。図6は、本発明の第2実施形態に係る車両制御装置の機能ブロック図であり、図7は、本発明の第2実施形態の車両制御装置により実施される急制動判定に基づく油圧制御処理を示すフローチャートであり、図8は、本発明の第2実施形態における急制動判定時のベルト挟圧力制御の一例を示すタイミングチャートである。
【0092】
図6に示すように、本実施形態の車両制御装置は、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64を用いてブレーキペダルのストローク量の変動を検出している点で、ブレーキストロークセンサ61を用いた第1実施形態とは異なるものである。また、急制動判断部81の急制動操作の判定条件も、第1実施形態の急制動判断部71のものとは異なる。
【0093】
第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64は、ブレーキペダルが異なる所定のストローク量を通過するときに個別に切替可能に設けられたスイッチである。言い換えると、第1ブレーキスイッチ63は、ブレーキペダルが踏み込まれていない状況ではOFF状態となり、ブレーキペダルが運転者により踏み込まれ、所定のストローク量を超えたときにON状態となるように、ブレーキペダルに接続されている。また、第2ブレーキスイッチ64は、第1ブレーキスイッチ63と同様の構成をとるが、ON状態に切り替わるブレーキペダルのストローク量が、第1ブレーキスイッチ63より大きく設定されている。つまり、ブレーキペダルを踏み込んでゆくと、まず第1ブレーキスイッチ63がON状態に切り替わり、さらにブレーキペダルを踏み込むと、第2ブレーキスイッチ64がON状態に切り替わる。
【0094】
なお、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64は、運転者が急減速操作を行ったときに、必ず両方がON状態となるように、それぞれがON状態に切り替わるブレーキペダルのストローク量が設定されている。
【0095】
急制動判断部81は、第1ブレーキスイッチ63、第2ブレーキスイッチ64、及び車速センサ62からの入力情報に基づき、急制動(急減速)操作が行われたか否かを判断する。急制動判断部81による急制動操作の判定基準は、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64の状態と、車速センサ62により計測される車速に基づく以下の全ての条件を満たすことである。
【0096】
(1)アイドリングストップ走行中(エンジン停止中)
(2)車速が急制動判定閾値より高い
(3)第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64が共にON状態
(4)第1ブレーキスイッチ63と第2ブレーキスイッチ64とがそれぞれON状態となったタイミングの間隔(以下、「ブレーキスイッチON間隔」という)が、ブレーキスイッチON間隔判定閾値以下
【0097】
次に、図7を参照して、第2実施形態の車両制御装置により実施される急制動判定に基づく油圧制御処理について説明する。図7のフローチャートのステップS201,S202,S205〜S207の各処理ステップは、図4に示した第1実施形態のステップS101,S102,S105〜S107と同一の処理なので説明を省略する。
【0098】
ステップS201,S202の条件(上記の条件(1)、(2))を満たす場合には、急制動判断部81により、第2ブレーキスイッチ64の計測信号に基づき、第2ブレーキスイッチ64がON状態であるか否かが確認される(S203)。第2ブレーキスイッチ64がON状態である場合には、ブレーキペダルが所定以上踏み込まれているものとして、ステップS204に移行する。第2ブレーキスイッチ64がOFF状態である場合には、ブレーキストローク量が小さく、急制動ではないものと判断して、これまでと同様の通常制御(ここではアイドリングストップ走行)を継続する(S207)。
【0099】
続いて、急制動判断部81により、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64の計測信号に基づき、ブレーキスイッチON間隔がブレーキスイッチON間隔判定閾値以下であるか否かが確認される(S204)。ブレーキスイッチON間隔判定閾値とは、ブレーキスイッチON間隔が大きいときには、ブレーキペダルの踏み込みが比較的緩やかであり急制動が起こりにくいので、このような状況を急制動判定から除外するためのパラメータである。ブレーキスイッチON間隔がブレーキスイッチON間隔判定閾値以下である場合には、ブレーキペダルが急激に踏み込まれているものとして、ステップS205に移行する。ブレーキスイッチON間隔がブレーキスイッチON間隔判定閾値より大きい場合には、急制動ではないものと判断して、これまでと同様の通常制御(ここではアイドリングストップ走行)を継続する(S207)。
【0100】
本実施形態の車両制御装置による急制動判定時のベルト挟圧力制御について、図8を参照して、図5に示す第1実施形態のタイミングチャートとの相違点のみを説明する。
【0101】
時刻Aにおいて、第1ブレーキスイッチ63は、既に所定のストローク量(図8では「SW1ON」として示す)を通過してON状態となっており、さらに、ブレーキストローク量が増大して、第2ブレーキスイッチ64の所定のストローク量(図8では「SW2ON」として示す)を通過してON状態となる。
【0102】
このとき、急制動判断部81により、第1ブレーキスイッチ63がON状態となったタイミングと、第2ブレーキスイッチ64がON状態となったタイミング(時刻A)との間隔(ブレーキスイッチON間隔)が算出される。図8に示す例では、時刻Aにおいて、このブレーキスイッチON間隔がブレーキスイッチON間隔判定閾値以下であるので、このとき図7のフローチャートのステップS203,S204の条件が満たされて、急制動判断部81は、急制動操作が行われ、車両2が急制動状態となるものと判断して、急制動判定値を0から1に変更する。この急制動判定値の切替に応じて、アキュムレータ制御部72がアキュムレータ吐出指示を行うと共に、エンジン制御部73がエンジン始動指示を行う。
【0103】
このように、第2実施形態の車両制御装置では、ECU7の急制動判断部81は、ブレーキペダルが異なる所定のストローク量を通過するときに個別に切替可能に設けられた第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64の状態に基づき、急減速操作が行われたか否かを判断する。
【0104】
この構成により、ブレーキペダルが踏み込まれたときに、ブレーキペダルのストローク量が増大し、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64は異なるタイミングでON状態に切り替えられる。この切り替えタイミングの差をみれば、ブレーキペダルがどの程度の速さで踏み込まれているかを検出することが可能となり、急減速操作を精度良く検出することができる。また、ストロークセンサなどの高価なセンサを新たに追加することなく、安価な2個のスイッチのみを用いて急減速操作の判断が行えるので、低コスト化が図れる。
【0105】
なお、上記実施形態では、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64の2個のブレーキスイッチを用いたが、2個以上のブレーキスイッチを用いてもよい。
【0106】
[第3実施形態]
次に、図9〜12を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。図9は、本発明の第3実施形態に係る車両制御装置の機能ブロック図であり、図10は、ブレーキストロークとブレーキマスタ圧との対応を示すタイミングチャートであり、図11は、図9中のフェール判定部におけるブレーキスイッチのフェール判定に用いるマップの一例を示す図であり、図12は、本発明の第3実施形態の車両制御装置により実施されるブレーキスイッチのフェール判定処理を示すフローチャートである。
【0107】
図9に示すように、本実施形態の車両制御装置は、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64に異常(フェール)が発生しているか否かを判定するためのフェール判定部74(異常判定手段)をECU7に備える点で、上記第2実施形態とは異なるものである。
【0108】
フェール判定部74は、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64からの入力のほかに、さらにマスタ圧センサ65(計測手段)からの入力情報を利用して、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64のフェール判定をおこなう。ここで、マスタ圧センサ65は、ブレーキペダルのストローク量に応じて車両の各車輪に制動力を作用させるための液圧を調整するマスタシリンダにおける液圧の圧力(ブレーキマスタ圧)を計測するセンサである。
【0109】
ブレーキマスタ圧は、ブレーキストロークと同様にブレーキペダルへの踏力に応答するので、図10に示すように、ブレーキストロークと略同一のタイミングで遷移する特性がある。すなわち、ブレーキストロークとブレーキマスタ圧とは、図11の点線cで示すように一対一対応の関係であるといえる。
【0110】
一方、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64は所定のストローク量においてON状態に切り替わるよう設定されている。つまり、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64が正常な場合には、それぞれがON状態に切り替わるときのブレーキマスタ圧は、図10に示すように略一定の値となるものである。
【0111】
そこで、本実施形態では、フェール判定部74は、図11に示す判定マップを用いて、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64のフェール判定を行う。図11のマップでは、横軸がブレーキストローク量(踏力)を示し、縦軸がブレーキマスタ圧を示し、ブレーキストロークとブレーキマスタ圧との一対一対応が点線cで示されている。そして、第1ブレーキスイッチ63がON状態に切り替わるブレーキストローク量がSW1ONとして表され、このブレーキストロークSW1ONと対応するブレーキマスタ圧から上下に幅を持たせて、第1ブレーキスイッチ63の正常範囲(図11では「SW1正常範囲」)が設定されている。同様に、第2ブレーキスイッチ64がON状態に切り替わるブレーキストローク量がSW2ONとして表され、このブレーキストロークSW2ONと対応するブレーキマスタ圧から上下に幅を持たせて、第2ブレーキスイッチ64の正常範囲(図11では「SW2正常範囲」)が設定されている。
【0112】
フェール判定部74は、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64がON状態となったときのブレーキマスタ圧を取得すると、図11に示すマップ上のSW1正常範囲およびSW2正常範囲の中にプロットされるか否かによって、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64が正常か異常かを判定する。例えば、図11に点aで示すように、第1ブレーキスイッチ63がON状態に切り替わったときのブレーキマスタ圧PaがSW1正常範囲内であれば、第1ブレーキスイッチ63は正常と判定される。一方、図11に点bで示すように、第1ブレーキスイッチ63がON状態に切り替わったときのブレーキマスタ圧PbがSW1正常範囲から外れている場合には、第1ブレーキスイッチ63はフェール(異常)と判定される。
【0113】
また、本実施形態の車両制御装置では、アイドリングストップ走行(以下「減速エコラン」ともいう)中において、フェール判定部74により第1ブレーキスイッチ63または第2ブレーキスイッチ64のフェールが判定された場合には、減速エコランを直ちに禁止するよう構成されている。具体的には、フェール判定部74がフェールを判定すると、減速エコランを禁止する旨の情報がエンジン制御部73に送信される。エンジン制御部73は、減速エコラン中である場合にはエンジン3を始動させ、以降の減速エコランの実行を禁止する。
【0114】
なお、エンジン制御部73は、減速エコランを禁止している場合でも、車両停止中にアイドリングストップ機能を実行する処理(停止エコラン)を実施可能とすることができる。また、フェール判定部74は、第1ブレーキスイッチ63または第2ブレーキスイッチ64のフェールを判定したときに、急制動判断部81にその旨の情報を送信し、急制動判断部81による急制動判断処理を中止させるよう構成することができる。
【0115】
次に、図12を参照して、第3実施形態の車両制御装置により実施されるブレーキスイッチのフェール判定処理について説明する。図12のフローチャートの処理は、例えば車両走行中に所定タイミングで実施される。
【0116】
まず、フェール判定部74により、第1ブレーキスイッチ63の計測信号に基づき、第1ブレーキスイッチ63がON状態であるか否かが確認される(S301)。第1ブレーキスイッチ63がON状態である場合にはステップS302に移行する。第1ブレーキスイッチ63がOFF状態である場合には、これまでと同様の通常制御(ここでは通常走行またはアイドリングストップ走行)を継続する(S307)。
【0117】
ステップS301において、第1ブレーキスイッチ63がON状態であることが確認されると、続いてフェール判定部74により、マスタ圧センサ65の計測信号に基づきブレーキマスタ圧が取得され、このブレーキマスタ圧が、図11の判定マップ中の第1ブレーキスイッチ63の正常範囲(SW1正常範囲)にあるか否かが確認される(S302)。ブレーキマスタ圧がSW1正常範囲にある場合には、第1ブレーキスイッチ63は正常と判定され、ステップS303に移行する。ブレーキマスタ圧がSW1正常範囲にない場合には、第1ブレーキスイッチ63はフェールと判定され、エンジン制御部73に減速エコランを禁止する旨の情報が送信されて、減速エコランの実施が禁止され(S305)、ダイアグ(異常警告灯、自己診断結果表示)が点灯状態とされる(S306)。
【0118】
ステップS302においてブレーキマスタ圧がSW1正常範囲にあることが確認されると、続いてフェール判定部74により、第2ブレーキスイッチ64の計測信号に基づき、第2ブレーキスイッチ64がON状態であるか否かが確認される(S303)。第2ブレーキスイッチ64がON状態である場合にはステップS304に移行する。第2ブレーキスイッチ64がOFF状態である場合には、これまでと同様の通常制御(ここでは通常走行またはアイドリングストップ走行)を継続する(S307)。
【0119】
ステップS303において、第2ブレーキスイッチ64がON状態であることが確認されると、続いてフェール判定部74により、マスタ圧センサ65の計測信号に基づきブレーキマスタ圧が取得され、このブレーキマスタ圧が、図11の判定マップ中の第2ブレーキスイッチ64の正常範囲(SW2正常範囲)にあるか否かが確認される(S304)。ブレーキマスタ圧がSW2正常範囲にある場合には、第2ブレーキスイッチ64は正常と判定され、この結果、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64が共に正常であるものと判断でき、そのまま処理を終了する。ブレーキマスタ圧がSW2正常範囲にない場合には、第2ブレーキスイッチ64はフェールと判定され、エンジン制御部73に減速エコランを禁止する旨の情報が送信されて、減速エコランの実施が禁止され(S305)、ダイアグ(異常警告灯、自己診断結果表示)が点灯状態とされる(S306)。
【0120】
このように、第3実施形態の車両制御装置では、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64が切り替えられたタイミングにおけるマスタ圧センサ65により計測されたブレーキマスタ圧が、各スイッチごとに定められた所定範囲(SW1正常範囲及びSW2正常範囲)内にあるか否かで、ECU7のフェール判定部74が第1ブレーキスイッチ63または第2ブレーキスイッチ64に異常が発生しているか否かを判定する。そして、フェール判定部74により、第1ブレーキスイッチ63または第2ブレーキスイッチ64の異常が判定された場合には、アイドリングストップ機能の実行を中止する。
【0121】
このような構成により、第1ブレーキスイッチ63または第2ブレーキスイッチ64の故障により急減速の判定が精度良く行えない場合には、アイドリングストップ機能を中止することで、車両走行中にエンジンが停止されるのを防止できる。これにより、エンジン3駆動により駆動されるメカポンプ31が常時作動するので、ベルト式無段変速機構11へ供給する油圧の低下を抑制することができ、ベルト挟圧力が必要量以下をなるのを抑制して、ベルト滑りの発生を抑制することができる。
【0122】
[第4実施形態]
次に、図13〜16を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。図13は、本発明の第4実施形態に係る車両制御装置の機能ブロック図であり、図14は、図13中のフェール判定部84におけるブレーキスイッチのフェール判定に用いるマップの一例を示す図であり、図15は、図14中の正常範囲補正量を設定するためのマップの一例を示す図であり、図16は、本発明の第4実施形態の車両制御装置により実施されるブレーキスイッチのフェール判定処理を示すフローチャートである。
【0123】
図13に示すように、本実施形態の車両制御装置は、ECU7のフェール判定部84(異常判定手段)が、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64の切替タイミングの差分(ブレーキスイッチON間隔)に応じて、SW1正常範囲及びSW2正常範囲を補正する点で、上記第3実施形態のフェール判定部74とは異なるものである。
【0124】
フェール判定部84は、図14に示すように、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64の個々に設定された固定の正常範囲(第3実施形態のSW1正常範囲及びSW2正常範囲に相当)の低圧側に、さらにブレーキスイッチON間隔に応じて可変な正常範囲補正量を追加した範囲を、第1ブレーキスイッチ63の正常範囲(SW1正常範囲)及び第2ブレーキスイッチ64の正常範囲(SW2正常範囲)として設定し、フェール判定に用いる。
【0125】
正常範囲補正量は、図15に示すように、ブレーキスイッチON間隔(第1ブレーキスイッチ63がON状態に切り替わったタイミングと、第2ブレーキスイッチ64がON状態に切り替わったタイミングとの間隔)に応じて可変である。より詳細には、正常範囲補正量は、ブレーキスイッチON間隔が小さいほど、すなわちブレーキストロークの変化量が大きいほど(ブレーキペダルが素早く踏み込まれるほど)、大きい値を設定されており、ブレーキスイッチON間隔が大きいほど、すなわちブレーキストロークの変化量が小さいほど(ブレーキペダルが緩やかに踏み込まれるほど)、小さい値を設定されている。また、ブレーキスイッチON間隔と正常範囲補正量とは比例関係とすることができる。このようなブレーキスイッチON間隔に対する正常範囲補正量の設定は、ブレーキペダルのストローク量の変化が早いほど、ブレーキマスタ圧の応答が遅れるという特性を考慮したものである。
【0126】
次に、図16を参照して、第4実施形態の車両制御装置により実施されるブレーキスイッチのフェール判定処理について説明する。図16のフローチャートの処理は、例えば車両走行中に所定タイミングで実施される。
【0127】
まず、フェール判定部84により、第1ブレーキスイッチ63の計測信号に基づき、第1ブレーキスイッチ63がON状態であるか否かが確認される(S401)。第1ブレーキスイッチ63がON状態である場合には、マスタ圧センサ65の計測信号に基づきこのときのブレーキマスタ圧が取得され、ステップS402に移行する。第1ブレーキスイッチ63がOFF状態である場合には、これまでと同様の通常制御(ここでは通常走行またはアイドリングストップ走行)を継続する(S408)。
【0128】
ステップS401において、第1ブレーキスイッチ63がON状態であることが確認されると、続いてフェール判定部84により、第2ブレーキスイッチ64の計測信号に基づき、第2ブレーキスイッチ64がON状態であるか否かが確認される(S402)。第2ブレーキスイッチ64がON状態である場合には、マスタ圧センサ65の計測信号に基づきこのときのブレーキマスタ圧が取得され、ステップS403に移行する。第2ブレーキスイッチ64がOFF状態である場合には、これまでと同様の通常制御(ここでは通常走行またはアイドリングストップ走行)を継続する(S408)。
【0129】
ステップS402において、第2ブレーキスイッチ64がON状態であることが確認されると、続いてフェール判定部84により、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64の計測信号に基づき、第1ブレーキスイッチ63がON状態に切り替わったタイミングと、第2ブレーキスイッチ64がON状態に切り替わったタイミングとの差分を取って、ブレーキスイッチON間隔が算出される(S403)。次いで、図15に例示するマップを用いて、ステップS403で算出されたブレーキスイッチON間隔に基づき、正常範囲補正量が算出される(S404)。
【0130】
そして、ステップS404で算出された正常範囲補正量を追加して、図14に例示するマップのSW1正常範囲及びSW2正常範囲が設定され、このマップを用いて、ステップS401で取得された第1ブレーキスイッチ63がON状態となったときのブレーキマスタ圧がSW1正常範囲にあるか否かが確認され、さらに、ステップS402で取得された第2ブレーキスイッチ64がON状態となったときのブレーキマスタ圧がSW2正常範囲にあるか否かが確認される(S405)。第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64のブレーキマスタ圧が、それぞれSW1正常範囲及びSW2正常範囲にある場合には、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64が共に正常であるものと判定され、そのまま処理を終了する。
【0131】
一方、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64のブレーキマスタ圧の少なくとも一方が、それぞれSW1正常範囲及びSW2正常範囲にない場合には、第1ブレーキスイッチ63または第2ブレーキスイッチ64がフェールと判定される。この場合、エンジン制御部73に減速エコランを禁止する旨の情報が送信されて、減速エコランの実施が禁止され(S406)、ダイアグ(異常警告灯、自己診断結果表示)が点灯状態とされる(S407)。
【0132】
このように、第4実施形態の車両制御装置では、フェール判定部84が、第1ブレーキスイッチ63及び第2ブレーキスイッチ64の切替タイミングの差分(ブレーキスイッチON間隔)に応じて、フェール判定に用いるための各スイッチごとに定められた所定範囲(SW1正常範囲及びSW2正常範囲)を補正する。
【0133】
この構成により、ブレーキスイッチON間隔の変化、より詳細にはブレーキペダルのストロークの変化量の増大に応じて、各スイッチの正常と判定するブレーキマスタ圧の範囲(SW1正常範囲及びSW2正常範囲)を低圧側に増やすことができる。ブレーキマスタ圧は、ブレーキペダルのストロークの変化量の増大に伴い応答遅れが増大するという特性があるが、この特性を考慮してSW1正常範囲及びSW2正常範囲を低圧側に増やすため、ブレーキペダルのストロークの変化量(ブレーキ踏み込み速度)の大小によらず、第1ブレーキスイッチ63または第2ブレーキスイッチ64のフェール判定を精度良く行うことができる。
【0134】
以上、本発明について好適な実施形態を示して説明したが、本発明はこれらの実施形態により限定されるものではない。本発明は、以上で説明した実施形態を複数組み合わせることで構成してもよいし、実施形態の各構成要素を、当業者が置換することが可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものに変更することが可能である。
【0135】
例えば、アキュムレータ44は、無段変速機構11のベルト挟圧力を制御するシーブに対して、内部に蓄圧されたオイルを供給可能に油圧経路36に接続されていればよい。上記実施形態では、セカンダリシーブ21aがベルト挟圧力を制御する構成を例示しているため、アキュムレータ44は、セカンダリシーブ21aへオイルを供給する第2油路36bに接続されているが、プライマリシーブ20aがベルト挟圧力を制御する構成の場合には、プライマリシーブ20aへオイルを供給する第1油路36aにアキュムレータ44を接続することができる。
【符号の説明】
【0136】
2 車両
3 エンジン
4 駆動輪
5 動力伝達装置
11 ベルト式無段変速機構
44 アキュムレータ(増圧手段)
45 蓄圧制御弁(増圧手段)
63 第1ブレーキスイッチ(スイッチ)
64 第2ブレーキスイッチ(スイッチ)
65 マスタ圧センサ(計測手段)
71,81 急制動判断部
72 アキュムレータ制御部(増圧手段)
74,84 フェール判定部(異常判定手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンから駆動輪へ動力を伝達する動力伝達装置と、
前記動力伝達装置に含まれるベルト式無段変速機構と、を備え、
車両走行中に前記エンジンを停止させるアイドリングストップ機能を実行可能な車両制御装置において、
前記ベルト式無段変速機構のベルト挟圧力を発生させるために供給される油圧を増圧する増圧手段を備え、
前記アイドリングストップ機能の実行中に急減速操作が行われたときに、前記増圧手段により、前記ベルト式無段変速機構に供給される油圧を増圧することを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記急減速操作が行われたか否かの判断は、ブレーキペダルのストローク量に基づき行うことを特徴とする、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記急減速操作が行われたか否かの判断は、前記ブレーキペダルが異なる所定のストローク量を通過するときに個別に切替可能に設けられた少なくとも2つのスイッチの状態に基づき行うことを特徴とする、請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記ブレーキペダルのストローク量に応じて車両の各車輪に制動力を作用させるための液圧を調整するマスタシリンダにおける前記液圧の圧力を計測する計測手段と、
前記スイッチが切り替えられたタイミングにおける前記計測手段により計測された前記マスタシリンダの前記液圧の圧力が、各スイッチごとに定められた所定範囲内にあるか否かで、前記スイッチに異常が発生しているか否かを判定する異常判定手段と、
を備え、
前記異常判定手段により前記スイッチの異常が判定された場合には、前記アイドリングストップ機能の実行を中止することを特徴とする、請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記異常判定手段は、前記スイッチの切替タイミングの差分に応じて前記所定範囲を補正することを特徴とする、請求項4に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記急減速操作が行われたか否かの判断は、ブレーキペダルのストローク量に応じて車両の各車輪に制動力を作用させるための液圧を調整するマスタシリンダにおける前記液圧の圧力に基づき行うことを特徴とする、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンから駆動輪へ動力を伝達する動力伝達装置と、
前記動力伝達装置に含まれるベルト式無段変速機構と、を備え、
車両走行中に前記エンジンを停止させるアイドリングストップ機能を実行可能な車両制御装置において、
前記ベルト式無段変速機構のベルト挟圧力を発生させるために供給される油圧を増圧する増圧手段を備え、
前記アイドリングストップ機能の実行中に急減速操作が行われたときに、前記増圧手段により、前記ベルト式無段変速機構に供給される油圧を増圧することを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記急減速操作が行われたか否かの判断は、ブレーキペダルのストローク量に基づき行うことを特徴とする、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記急減速操作が行われたか否かの判断は、前記ブレーキペダルが異なる所定のストローク量を通過するときに個別に切替可能に設けられた少なくとも2つのスイッチの状態に基づき行うことを特徴とする、請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記ブレーキペダルのストローク量に応じて車両の各車輪に制動力を作用させるための液圧を調整するマスタシリンダにおける前記液圧の圧力を計測する計測手段と、
前記スイッチが切り替えられたタイミングにおける前記計測手段により計測された前記マスタシリンダの前記液圧の圧力が、各スイッチごとに定められた所定範囲内にあるか否かで、前記スイッチに異常が発生しているか否かを判定する異常判定手段と、
を備え、
前記異常判定手段により前記スイッチの異常が判定された場合には、前記アイドリングストップ機能の実行を中止することを特徴とする、請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記異常判定手段は、前記スイッチの切替タイミングの差分に応じて前記所定範囲を補正することを特徴とする、請求項4に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記急減速操作が行われたか否かの判断は、ブレーキペダルのストローク量に応じて車両の各車輪に制動力を作用させるための液圧を調整するマスタシリンダにおける前記液圧の圧力に基づき行うことを特徴とする、請求項1に記載の車両制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−50200(P2013−50200A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189874(P2011−189874)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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