説明

車両前部の下部構造

【課題】 ラジエターの下面とラジエターロアサポートメンバーとの間にシール材を設けることなくラジエターに加わる空気量を増加させることができる車両前部の下部構造を提供する。
【解決手段】 バンパーフェイシャー41とラジエターロアサポートメンバー30の間に、冷却空気通路Saの下部を覆う導風板50が設けられ、ラジエター22の下部25下方には、このラジエター22の下部25に沿って空気導入開口60が設けられ、この空気導入開口60の後縁61には、この空気導入開口60より下方へ突出した空気偏向壁70が空気導入開口60に沿って設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエターに加わる空気量を増加することができる車両前部の下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術としては、下記の特許文献1に記載の技術が開示されている。
この公報では、バンパカバーの後方に、上部にラジエターが支持されたラジエターロアサポートメンバーが配置され、このバンパカバーの下端部とラジエターロアサポートメンバーとの間が、後傾斜面を有し上方に突出する上方突起部とラジエターロアサポートメンバーよりも下方に突出する下方突起部とを有するエプロン部材により下側から覆われた車両前部の下部構造が開示されている。
この車両前部の下部構造では、車両走行時に、バンパカバーの空気取入口から導入された空気のうちエプロン部材に沿って比較的下方を流れる空気の流れが上方突起部の後傾斜面により上方へ偏向され、ラジエターの熱交換部に当たるようになるとともに、エプロン部材の下面に沿った空気の流れが下方突起部により下方へ偏向され、ラジエターロアサポートメンバーの下面から剥離して、下方突起部の後方に負圧部が生じ、ラジエター後方の空気の排出が促進され、ラジエターの熱交換部へ加わる空気量が増えて、ラジエターの冷却性能が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−94265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術にあっても、ラジエターをラジエターロアサポートメンバーに支持するに際し、振動減衰用のマウントゴムを介するとともに、上下振動を許容するように支持しなければならず、ラジエターの下面とラジエターロアサポートメンバーとの間に間隙が生じ、この間隙を通ってラジエターに向う空気が逃げ、ラジエターの熱交換部へ加わる空気量が減る虞がある。
このため、ラジエターの下面とラジエターロアサポートメンバーとの間にウレタン等の樹脂シール材を詰めて空気が抜けないようにしなければならない。
【0005】
本発明は、上記問題に着目して成されたもので、その目的とするところは、ラジエターの下面とラジエターロアサポートメンバーとの間にシール材を設けることなくラジエターに加わる空気量を増加させることができる車両前部の下部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明では、バンパーフェイシャーとラジエターロアサポートメンバーの間に、冷却空気通路の下部を覆う導風板が設けられ、熱交換器の下部下方には、この熱交換器の下部に沿って空気導入開口が設けられ、この空気導入開口の後縁には、この空気導入開口より下方へ突出した空気偏向壁が空気導入開口に沿って設けられている。
【発明の効果】
【0007】
よって、本発明にあっては、走行中、導風板の下面に沿って流れる空気が、空気偏向壁により上方に偏向され、空気導入開口から冷却空気通路側に位置する熱交換器の下部に当たる流れとなる。
この空気導入開口から熱交換器の下部に当たる空気の流れにより、冷却空気通路の比較的下方を流れ、熱交換器の下面とラジエターロアサポートメンバーとの間に向う流れが抑制され、車両前面の空気取入れ口から入った冷却空気通路内を流れる空気が、熱交換器を通過せずに熱交換器の下面とラジエターロアサポートメンバーとの間から逃げることを防ぐことができる。
したがって、熱交換器の下面とラジエターロアサポートメンバーとの間にシール材を設けることなく熱交換器に加わる空気量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の車両前部の下部構造を示す車両前部の要部を下側から見上げた斜視図である。
【図2】実施例1の車両前部の下部構造を示す要部の側断面図である。
【図3】実施例2の車両前部の下部構造を示す要部の側断面図である。
【図4】実施例3の車両前部の下部構造を示す要部の側断面図である。
【図5】実施例4の車両前部の下部構造を示す要部の側断面図である。
【図6】実施例5の車両前部の下部構造を示す要部の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の車両前部の下部構造を実施するための形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
実施例1の車両前部の下部構造の構成について説明する。
図1は、実施例1の車両前部の下部構造の要部を示す下側から車両前部を見上げた斜視図であり、図2は、実施例1の車両前部の下部構造を示す要部の概略側断面図である。
なお、図1中の矢印Fは、この車両の前方向を示し、矢印Wは、この車両の左右方向であり、車幅方向を示している。
【0011】
この実施例1の車両前部の下部構造は、図1に示されるように、車両1の前面に、車体100に取り付けられたフロントフェンダー101と、フード102と、フード102前端部の下側に配設され、第1の空気取入れ口11に設けられたラジエターグリル103と、ラジエターグリル103の左右に配設されたヘッドランプ104、104と、ヘッドランプ104、104の左右に配設されたコンビネーションランプ105、105と、ラジエターグリル103の下側に配設され、フロントバンパー40を構成するバンパーフェイシャー41とを備えている。
【0012】
バンパーフェイシャー41には、その上部に第2の空気取入れ口12となる上部空気取入れ開口部41aがラジエターグリル風の格子状に形成され、その下部に第3の空気取入れ口13となる下部空気取入れ開口部41bがバンパーフェイシャー41に穴あけするようにしてそれぞれ一体に形成されている。
前記第1の空気取入れ口11と第2の空気取入れ口12と第3の空気取入れ口13により、後述の熱交換器20を冷やすための冷却空気を取入れる空気取入れ口10が構成されている。
このバンパーフェイシャー41の上部空気取入れ開口部41aの左右には、スモールランプ106、106が設けられている。
【0013】
また、図2に示すように、ラジエターグリル103およびバンパーフェイシャー41の後方であり、前記空気取入れ口10の後方には、熱交換器20としてのコンデンサー21とラジエター22が配設されている。
車両前部の下部には、その左右両端を図外のサイドメンバーに固着されたラジエターロアサポートメンバー30が車幅方向Wに配設されている。
また、ラジエターロアサポートメンバー30は、前壁33と下壁34とでL字形断面をしたロアパネル31と、ラジエターロアサポートメンバー30の上面30aを形成する上壁35と後壁36とで略逆L字形断面をしたアッパーパネル32とを溶接してボックス閉断面形状に成されている。
【0014】
このラジエターロアサポートメンバー30は、その上方に前記コンデンサー21とラジエター22を支持するもので、コンデンサー21とラジエター22は、振動減衰用のマウントゴムを有する図外のマウントブラケットを介して、上下振動許容可能に支持されている。
このマウントブラケットにより、コンデンサー21とラジエター22のそれぞれの上端23、24の左右2箇所が図外のラジエターアッパサポートメンバーに取り付けられ、下端26、27の左右2箇所がラジエターロアサポートメンバー30に取り付けられている。
【0015】
前記のように成したマウントブラケットを介してコンデンサー21とラジエター22がラジエターロアサポートメンバー30に取り付けられているので、コンデンサー21の下端26およびラジエター22の下端27と、ラジエターロアサポートメンバー30の上面30aとの間には、マウントブラケットの高さ分の間隙28が存在している。
また、コンデンサー21とラジエター22は、コンデンサー21とラジエター22共に下端26、27より上端23、24が前方に位置する前傾状態に取り付けられ、高さを低く抑えられたレイアウトに配置されている。
【0016】
前記ラジエターグリル103、バンパーフェイシャー41とコンデンサー21、ラジエター22との間であり、第1、第2、第3の空気取入れ口11、12、13とコンデンサー21、ラジエター22との間には、冷却空気通路Saが形成されている。
ラジエターグリル103が設けられた第1の空気取入れ口11、バンパーフェイシャー41に設けられた第2、第3の空気取入れ口12、13から入った冷却空気は、冷却空気通路Saを通ってコンデンサー21とラジエター22の熱交換部21a、22aを通過してラジエター22後方Rのエンジン側Eへと向う。
【0017】
なお、図1に示す符号107は、サスペンション、108は、フロントタイヤであり、図2に示す符号22bは、ラジエター22のアッパータンク、22cは、ラジエター22のロアタンクである。
【0018】
一方、バンパーフェイシャー41は、合成樹脂で成形されており、バンパーフェイシャー41の裏面45側となるバンパーフェイシャー41の後には、図2に示すように上部バンパーレインフォース46と下部バンパーレインフォース47が設けられている。
また、車両前部の下部に延設されるバンパーフェイシャー41の下面42は、図1、図2に示すように、第2、第3の空気取入れ口12、13が開けられたバンパーフェイシャー41の前面43から後方Rへ向って一体に屈曲され、熱交換器20であるコンデンサー21とラジエター22の下端26、27の下方へ延在されている。
【0019】
さらに、バンパーフェイシャー41下面42の後端44となる後述の取り付けフランジ72が、ラジエターロアサポートメンバー30の下壁34まで延在されており、この下壁34に取り付けられている。
これにより、バンパーフェイシャー41とラジエターロアサポートメンバー30の間には、バンパーフェイシャー41の下面42が延在して設けられ、このバンパーフェイシャー41の下面42が冷却空気通路Saの下部を覆う導風板50を構成している。
【0020】
このバンパーフェイシャー41の下面42には、熱交換器20であるコンデンサー21とラジエター22の下部25の下方に位置して空気導入開口60が開けられている。
空気導入開口60は、コンデンサー21とラジエター22の下部25に沿って車幅方向Wに細長く開けられ、その後縁61が開放された平面視略U字形状の開口62、62として形成され、この開口62、62が車幅方向Wに2つ並んで形成されている。
この2つ並んだ開口62、62の間となる中央面63と左側の開口62の左側面64および右側の開口62の右側面65が後述の空気偏向壁70と連続一体に?がっており、これにより、バンパーフェイシャー41の下面42と空気偏向壁70とが一体に結合されている。
【0021】
空気導入開口60の後縁61には、この空気導入開口60に沿って車幅方向Wに延設されるとともに、空気導入開口60を構成する2つの開口62、62に亘って1つの細長い略平板状の空気偏向壁70が形成されている。
この空気偏向壁70は、前述のようにバンパーフェイシャー41の下面42と一体に形成され、かつ、空気導入開口60より下方へ垂直に突出されて設けられている。
【0022】
詳しくは、この空気偏向壁70が空気導入開口60後縁61の下端縁66から下方へ突出されており、空気偏向壁70の上端縁71上に空気導入開口60の下端縁66が位置している。
また、空気偏向壁70は、コンデンサー21、ラジエター22の下部25の前後方向寸法およびコンデンサー21、ラジエター22の下部25と空気導入開口60との間の寸法によって異なるが、空気導入開口60より下方へ20mm〜30mm突出して形成されている。
【0023】
空気導入開口60より下方へ突出された空気偏向壁70は、ラジエターロアサポートメンバー30の前壁33に沿って垂下され、ラジエターロアサポートメンバー30の前壁33を覆っている。
この前壁33を覆って垂下している空気偏向壁70の中間には、ラジエターロアサポートメンバー30の下壁34に沿って後方Rへ突出された取り付けフランジ72が一体に形成され、空気偏向壁70は、側断面略ト字状を成している。
そして、この取り付けフランジ72がラジエターロアサポートメンバー30の下壁34にビス73で取り付けられ、固定されている。
この取り付けフランジ72がバンパーフェイシャー41下面42の後端44となっているので、バンパーフェイシャー41下面42の後端44は、空気偏向壁70を介してラジエターロアサポートメンバー30に固定されているものとなる。
【0024】
次に、作用を説明する。
実施例1の車両前部の下部構造では、バンパーフェイシャー41の下面42を熱交換器20であるコンデンサー21とラジエター22の下端26、27の下方へ延在させるとともに、バンパーフェイシャー41の下面42の後端44となる空気偏向壁70の取り付けフランジ72をラジエターロアサポートメンバー30の下壁34に取り付けることによって、このバンパーフェイシャー41の下面42がバンパーフェイシャー41とラジエターロアサポートメンバー30の間に冷却空気通路Saを形成し、その下部を覆う導風板50として設けられている。
また、コンデンサー21とラジエター22の下部25下方に、このコンデンサー21とラジエター22の下部25に沿って空気導入開口60が設けられ、この空気導入開口60の後縁61に、この空気導入開口60より下方へ突出した空気偏向壁70が空気導入開口60に沿って設けられている。
【0025】
このため、走行中、冷却空気通路Saの下部を覆う導風板50を構成しているバンパーフェイシャー41の下面42に沿って前方から流れてくる空気が、バンパーフェイシャー41の下面42と一体に設けられ空気導入開口60より下方へ垂直に突出されている空気偏向壁70に当って上方と下方に偏向される。
空気偏向壁70に当って偏向された上方へ向う空気の流れがコンデンサー21とラジエター22の下部25下方に開けられた空気導入開口60から冷却空気通路Sa側に流入し、コンデンサー21とラジエター22の下部25に当たる流れとなる。
【0026】
この空気導入開口60からコンデンサー21とラジエター22の下部25に当たる空気の流れによりコンデンサー21とラジエター22の下部25に向って風圧がかかる。
コンデンサー21とラジエター22の下部25に風圧がかかることにより、車両前面の空気取入れ口10から入った空気の内、冷却空気通路Saの比較的下方を流れる空気が熱交換器20であるコンデンサー21とラジエター22の下端26、27とラジエターロアサポートメンバー30の上面30aとの間隙28に向っても、その空気の流れが抑制され、コンデンサー21とラジエター22の熱交換部21a、22a側へ押し上げられる。
【0027】
これにより、車両前面の空気取入れ口10から入った冷却空気通路Sa内を流れる空気が、コンデンサー21とラジエター22を通過せずにコンデンサー21とラジエター22の下端26、27とラジエターロアサポートメンバー30の上面30aとの間隙28からラジエター22の後方Rへ逃げることを防ぐことができる。
したがって、コンデンサー21とラジエター22の下端26、27とラジエターロアサポートメンバー30の上面30aとの間隙28にシール材を設けることなくコンデンサー21とラジエター22に加わる空気量を増加させることができる。
【0028】
また、バンパーフェイシャー41の下面42がコンデンサー21とラジエター22の下端26、27の下方へ延在され、バンパーフェイシャー41の下面42の後端44がラジエターロアサポートメンバー30の下壁34に取り付けられているとともに、コンデンサー21とラジエター22の下部25下方に、このコンデンサー21とラジエター22の下部25に沿って空気導入開口60が設けられ、この空気導入開口60に沿って空気導入開口60の後縁61に、この空気導入開口60より下方へ突出した空気偏向壁70が設けられている。
【0029】
そして、バンパーフェイシャー41の下面42に沿って前方から流れてくる空気は、空気偏向壁70によって下方にも偏向され、空気導入開口60から冷却空気通路Sa側に流入されない空気の流れも生じる。
この空気偏向壁70によって下方に偏向された空気の流れは、前方から流れてくる空気流より剥離された分流となって空気偏向壁70より後側の空間に低圧の渦を発生し、これにより、車両に対する圧力が下がる負圧領域を形成するので、揚力値を低減させ車両の空力性能を向上させることができる。
【0030】
また、バンパーフェイシャー41とラジエターロアサポートメンバー30の間に設けられ、冷却空気通路Saの下部を覆う導風板50が、バンパーフェイシャー41の下面42をコンデンサー21、ラジエター22の下方に延在させることによって形成されている。
したがって、導風板50専用の部材を新たに設定する必要がないため、導風板50は、部材を増やすことなく容易に設けることができる。
【0031】
また、バンパーフェイシャー41の下面42をコンデンサー21、ラジエター22の下方に延在させ、このバンパーフェイシャー41の下面42によって冷却空気通路Saの下部が覆われるとともに、バンパーフェイシャー41の下面42と一体に形成した空気偏向壁70をラジエターロアサポートメンバー30の前壁33に沿って垂下させ、この空気偏向壁70によりラジエターロアサポートメンバー30の前壁33が覆われている。
このため、バンパーフェイシャー41の下面42と空気偏向壁70によりラジエターロアサポートメンバー30およびコンデンサー21、ラジエター22の下端26、27が、走行中に前方から跳ねられてくる砂、泥等の飛散物から保護される。
【0032】
また、空気偏向壁70は、その中間に後方Rへ突出された取り付けフランジ72が一体に形成され、この取り付けフランジ72がバンパーフェイシャー41下面42の後端44となっており、ラジエターロアサポートメンバー30の下壁34にビス73で取り付けられている。
このため、バンパーフェイシャー41の下面42後端44が空気偏向壁70を介してラジエターロアサポートメンバー30に固定され、バンパーフェイシャー41の下面42を後方Rへ長く延在させてもその後端44がラジエターロアサポートメンバー30によって確実に支持される。
【0033】
また、バンパーフェイシャー41の下面42と一体に形成された空気偏向壁70は、バンパーフェイシャー41の下面42に開口された空気導入開口60後縁61の下端縁66から突出されており、空気偏向壁70の上端縁71上に空気導入開口60の下端縁66が位置し、空気導入開口61は、その後縁61が開放された平面視略U字形状を成している。
加えて、空気偏向壁70の中間には、後方Rへ突出された取り付けフランジ72が一体に形成されており、空気偏向壁70は、側断面略ト字状に形成されている。
【0034】
このため、バンパーフェイシャー41と空気導入開口60、空気偏向壁70、空気偏向壁70の取り付けフランジ72を一体に型成形する際には、バンパーフェイシャー41を成形する一方の型(バンパーフェイシャー41の裏面45側を成形する型)を図2に示された車両組み付け状態で見て後方Rに型開き可能とすることができる。
このため、バンパーフェイシャー41と空気導入開口60、空気偏向壁70、取り付けフランジ72を一体に型成形するために、バンパーフェイシャー41を成形する際の型開き方向と直交する方向にスライドするスライド型を用いる必要がなく、コストを抑えて成形することができる。
【0035】
次に、効果を説明する。
実施例1の車両前部の下部構造にあっては、以下に列挙する効果を奏する。
(1)バンパーフェイシャー41の下面42を熱交換器20であるコンデンサー21とラジエター22の下端26、27の下方へ延在させ、バンパーフェイシャー41の下面42の後端44となる空気偏向壁70の取り付けフランジ72をラジエターロアサポートメンバー30の下壁34に取り付け、このバンパーフェイシャー41の下面42がバンパーフェイシャー41とラジエターロアサポートメンバー30の間に冷却空気通路Saを形成し、その下部を覆う導風板50として設けられているとともに、コンデンサー21とラジエター22の下部25下方に、このコンデンサー21とラジエター22の下部25に沿って空気導入開口60が設けられ、この空気導入開口60の後縁61に、この空気導入開口60より下方へ突出した空気偏向壁70が空気導入開口60に沿って設けられている。
【0036】
このため、走行中、導風板50を構成しているバンパーフェイシャー41の下面42に沿って前方から流れてくる空気が、空気偏向壁70によって上方へ偏向されて空気導入開口60から冷却空気通路Sa側に流入し、コンデンサー21とラジエター22の下部25に当たる流れとなり、コンデンサー21とラジエター22の下部25に向って風圧がかかる。
これにより、冷却空気通路Sa内を流れる空気が、コンデンサー21とラジエター22の下端26、27とラジエターロアサポートメンバー30の上面30aとの間隙28からラジエター22の後方Rへ逃げることを防ぐため、この間隙28にシール材を設けることなくコンデンサー21とラジエター22に加わる空気量を増加させることができる。
【0037】
(2)また、バンパーフェイシャー41の下面42に沿って前方から流れてくる空気は、空気導入開口60より下方へ突出した空気偏向壁70によって下方にも偏向され、この空気偏向壁70によって下方に偏向された空気の流れは、前方から流れてくる空気流より剥離された分流となって空気偏向壁70により、その後側の空間に低圧の渦を発生させる。
これにより、空気偏向壁70より後側の空間に、車両に対する圧力が下がる負圧領域を形成するので、揚力値を低減させ車両の空力性能を向上させることができる。
【0038】
(3)また、冷却空気通路Saの下部を覆う導風板50が、バンパーフェイシャー41の下面42をコンデンサー21、ラジエター22の下方に延在させることによって形成されている。
これにより、部材を増やすことなく導風板50を容易に設けることができる。
【0039】
(4)また、バンパーフェイシャー41の下面42をコンデンサー21、ラジエター22の下方に延在させ、バンパーフェイシャー41の下面42と一体に形成した空気偏向壁70をラジエターロアサポートメンバー30の前壁33に沿って垂下させた。
これにより、バンパーフェイシャー41の下面42と空気偏向壁70とでコンデンサー21、ラジエター22の下方およびラジエターロアサポートメンバー30の前壁33が覆われている。
このため、バンパーフェイシャー41の下面42と空気偏向壁70によりラジエターロアサポートメンバー30およびコンデンサー21、ラジエター22の下端26、27が、走行中の砂、泥等の飛散物から保護される。
【0040】
(5)また、空気偏向壁70には、取り付けフランジ72が一体に形成され、この取り付けフランジ72がバンパーフェイシャー41下面42の後端44となっており、ラジエターロアサポートメンバー30の下壁34にビス73で取り付けられている。
このため、バンパーフェイシャー41の下面42を後方Rへ長く延在させてもその後端44がラジエターロアサポートメンバー30によって確実に支持される。
【0041】
(6)また、バンパーフェイシャー41の下面42と一体に形成された空気偏向壁70は、バンパーフェイシャー41の下面42に開口された空気導入開口60後縁61の下端縁66から突出されており、空気偏向壁70の上端縁71上に空気導入開口60の下端縁66が位置し、空気導入開口61は、その後縁61が開放された平面視略U字形状を成している。
加えて、空気偏向壁70の中間には、後方Rへ突出された取り付けフランジ72が一体に形成されており、空気偏向壁70は、側断面略ト字状に形成されている。
【0042】
このため、バンパーフェイシャー41と空気導入開口60、空気偏向壁70、空気偏向壁70の取り付けフランジ72を一体に型成形する際には、バンパーフェイシャー41を成形する一方の型(バンパーフェイシャー41の裏面45側を成形する型)を車両組み付け状態で見て後方Rに型開き可能とすることができる。
このため、バンパーフェイシャー41を成形する際の型費を抑えてバンパーフェイシャー41と空気導入開口60、空気偏向壁70、取り付けフランジ72を一体に型成形することができる。
【0043】
次に、他の実施例について説明する。
この他の実施例の説明にあたっては、前述の実施例1と同様の構成部分については、同一の符号を付けてその説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【実施例2】
【0044】
実施例2の車両前部の下部構造の構成について説明する。
図3は、実施例2の車両前部の下部構造を示す要部の側断面図である。
図3に示すように、バンパーフェイシャー41の下面42aとラジエターロアサポートメンバー30との間には、前端80aがバンパーフェイシャー41の下面42aにビス73aで取り付けられ、後端80bがラジエターロアサポートメンバー30の下壁34にビス73bで取り付けられたエプロン部材80が設けられている。
このエプロン部材80は、導風板50を構成し、熱交換器20であるコンデンサー21とラジエター22の下端26、27の下方へ延在され、冷却空気通路Saの下部を覆っている。
エプロン部材80のコンデンサー21とラジエター22の下部25の下方に位置して空気導入開口60aが車幅方向Wに開けられ、空気導入開口60aの後縁61aの直後方にエプロン部材80と別に成形された空気偏向壁70aが設けられている。
【0045】
この空気偏向壁70aは、空気導入開口60aに沿って車幅方向Wに延設され、空気導入開口60aの後縁61aより下方へ垂直に突出されて設けられている。
また、エプロン部材80に開けられた空気導入開口60aの後方には、エプロン部材取付部80cがラジエターロアサポートメンバー30の下壁34に沿って延在され、この下壁34にビス73bで取り付けられている。
また、空気偏向壁70aには、補強のための下端リブ80dと取り付けフランジ80eが後方に突出して設けられ、この取り付けフランジ80eが前記エプロン部材80に形成されたエプロン部材取付部80cの下に接着されているとともに、空気偏向壁70aの上端縁71aが空気導入開口60aの後縁61aに開けられた空気偏向壁嵌入用孔80fに嵌め込まれて固定されている。
エプロン部材80の冷却空気通路Sa側には、エプロン部材80の前端80aから空気導入開口60aの後縁61aにかけて、空気導入開口60aを跨いでエプロン部材取付部80c側とを結合するとともに、エプロン部材80を補強する縦リブ80Gが形成されている。
【0046】
次に、作用を説明する。
実施例2の車両前部の下部構造では、導風板50を構成し、熱交換器20であるコンデンサー21とラジエター22の下端26、27の下方へ延在され、冷却空気通路Saの下部を覆っているエプロン部材80には、コンデンサー21とラジエター22の下部25の下方に位置して空気導入開口60aが車幅方向Wに開けられ、空気導入開口60aの後縁61aの直後方にエプロン部材80と別に成形された空気偏向壁70aが、空気導入開口60aに沿って車幅方向Wに延設され、空気導入開口60aの後縁61aより下方へ垂直に突出されて設けられている。
【0047】
このため、走行中、冷却空気通路Saの下部を覆う導風板50を構成しているエプロン部材80に沿って前方から流れてくる空気が、空気偏向壁70aによって上方へ偏向され空気導入開口60aから冷却空気通路Sa側に流入し、コンデンサー21とラジエター22の下部25に当たる流れとなり、この下部25に向って風圧がかかる。
これにより、実施例1と同様に、車両前面の空気取入れ口10から入った冷却空気通路Sa内を流れる空気が、コンデンサー21とラジエター22の下端26、27とラジエターロアサポートメンバー30の上面30aとの間隙28からラジエター22の後方Rへ逃げることを防ぐことができ、コンデンサー21とラジエター22の下端26、27とラジエターロアサポートメンバー30の上面30aとの間隙28にシール材を設けることなくコンデンサー21とラジエター22に加わる空気量を増加させることができる。
【0048】
また、冷却空気通路Saの下部を覆う導風板50が、バンパーフェイシャー41と別部材のエプロン部材80により構成されている。
このため、冷却空気通路Saが長くても容易に設けられるとともに、リブや板厚を自由に設定でき、導風板50を構成するエプロン部材80の補強を容易にすることができる。
【0049】
また、空気偏向壁70aは、エプロン部材80と別に成形され、下端リブ80dと取り付けフランジ80eが後方に突出して設けられ、この取り付けフランジ80eがエプロン部材80に形成されたエプロン部材取付部80bの下に接着されているとともに、空気偏向壁70aの上端縁71aが空気導入開口60aの後縁61aに開けられた空気偏向壁嵌入用孔80fに嵌め込まれて固定されている。
このため、空気偏向壁70aが大きくても、リブ等の補強構造を設けた複雑な形状を成していても成形を容易にできる。
【0050】
次に、効果を説明する。
実施例2の車両前部の下部構造では、以下に列挙する効果を奏する。
(1)導風板50を構成し、冷却空気通路Saの下部を覆っているエプロン部材80には、コンデンサー21とラジエター22の下部25の下方に位置して空気導入開口60aが車幅方向Wに開けられ、空気導入開口60aの後縁61aの直後方にエプロン部材80と別に成形された空気偏向壁70aが、空気導入開口60aに沿って車幅方向Wに延設され、空気導入開口60aの後縁61aより下方へ垂直に突出して設けられている。
このため、実施例1と同様に、冷却空気通路Sa内を流れる空気が、コンデンサー21とラジエター22の下端26、27とラジエターロアサポートメンバー30の上面30aとの間隙28からラジエター22の後方Rへ逃げることを防ぐため、この間隙28にシール材を設けることなくコンデンサー21とラジエター22に加わる空気量を増加させることができる。
【0051】
(2)また、冷却空気通路Saの下部を覆う導風板50が、バンパーフェイシャー41と別部材のエプロン部材80により構成されている。
このため、冷却空気通路Saが長くても導風板50を容易に設けられるとともに、リブや板厚を自由に設定でき、導風板50を構成するエプロン部材80の補強を容易にすることができる。
(3)また、空気偏向壁70aは、エプロン部材80と別に成形され、空気偏向壁70aの取り付けフランジ80eがエプロン部材80に形成されたエプロン部材取付部80cの下に接着されているとともに、空気偏向壁70aの上端縁71aが空気導入開口60aの空気偏向壁嵌入用孔80fに嵌め込まれて固定されている。
このため、空気偏向壁70aが大きくても、リブ等の補強構造を設けた複雑な形状を成していても成形を容易にできる。
【実施例3】
【0052】
実施例3の車両前部の下部構造の構成について説明する。
図4は、実施例3の車両前部の下部構造を示す要部の側断面図である。
図4に示すように、ラジエター22後方Rのエンジン側Eの下方に配置されたエンジンアンダーカバー85が、ラジエターロアサポートメンバー30を越えて車両の前方向Fへ延在され、そのエンジンアンダーカバー85の前延部86がバンパーフェイシャー41の下面42bとラジエターロアサポートメンバー30との間に配設されている。
エンジンアンダーカバー85の前延部86の前端86aがバンパーフェイシャー41の下面42bにビス73cで取り付けられ、エンジンアンダーカバー85の中間部87がラジエターロアサポートメンバー30の下壁34にビス73dで取り付けられている。
【0053】
このエンジンアンダーカバー85の前延部86は、導風板50を構成し、熱交換器20であるコンデンサー21とラジエター22の下端26、27の下方へ延在され、冷却空気通路Saの下部を覆っている。
エンジンアンダーカバー85の前延部86には、コンデンサー21とラジエター22の下部25の下方に位置して空気導入開口60bが車幅方向Wに開けられ、空気導入開口60bの後縁61bの直後方にエンジンアンダーカバー85の前延部86と一体に成形された空気偏向壁70bが設けられている。
【0054】
この空気偏向壁70bは、空気導入開口60bに沿って車幅方向Wに延設され、空気導入開口60bの後縁61bより下方へ垂直に突出され、その下端86fで上方へ折り返され、後上端縁86bがラジエターロアサポートメンバー30の下壁34と接しエンジンアンダーカバー85の本体88に一体に?がっており、側断面V字形に成形されている。
また、エンジンアンダーカバー85の前延部86には、その冷却空気通路Sa側に、空気導入開口60bを跨いでエンジンアンダーカバー85の前延部86と空気偏向壁70bとを結合するとともに、エンジンアンダーカバー85の前延部86を補強するための縦リブ86cが形成されている。
また、空気偏向壁70bの内側であるV字形断面内に上下方向の補強のリブ86dが形成されている。
【0055】
次に、作用を説明する。
実施例3の車両前部の下部構造では、導風板50を構成し、熱交換器20であるコンデンサー21とラジエター22の下端26、27の下方へ延在され、冷却空気通路Saの下部を覆っているエンジンアンダーカバー85の前延部86には、コンデンサー21とラジエター22の下部25の下方に位置して空気導入開口60bが車幅方向Wに開けられ、空気導入開口60bの後縁61bの直後方にエンジンアンダーカバー85の前延部86と一体に成形された空気偏向壁70bが、空気導入開口60bに沿って車幅方向Wに延設され、空気導入開口60bの後縁61bより下方へ垂直に突出されて設けられている。
【0056】
このため、走行中、冷却空気通路Saの下部を覆う導風板50を構成しているエンジンアンダーカバー85の前延部86に沿って前方から流れてくる空気が、空気偏向壁70bによって上方へ偏向され空気導入開口60bから冷却空気通路Sa側に流入し、コンデンサー21とラジエター22の下部25に当たる流れとなり、この下部25に向って風圧がかかる。
これにより、実施例1と同様に、車両前面の空気取入れ口10から入った冷却空気通路Sa内を流れる空気が、コンデンサー21とラジエター22の下端26、27とラジエターロアサポートメンバー30の上面30aとの間隙28からラジエター22の後方Rへ逃げることを防ぐことができ、コンデンサー21とラジエター22の下端26、27とラジエターロアサポートメンバー30の上面30aとの間隙28にシール材を設けることなくコンデンサー21とラジエター22に加わる空気量を増加させることができる。
【0057】
また、冷却空気通路Saの下部を覆う導風板50が、バンパーフェイシャー41と別部材であるエンジンアンダーカバー85の前延部86により構成されている。
このため、エンジンアンダーカバー85を車両の前方向Fへ延在することで設定することができとともに、エンジンアンダーカバー85が目に触れることが少ない車両の下部に設けられる部品であり、材質、形状、表面仕上げ、成形性等の制約が少なく、比較的安価で容易に設定することができる。
【0058】
また、空気偏向壁70bは、エンジンアンダーカバー85の前延部86と一体で空気導入開口60bの後縁61bより下方へ突出され、その下端86fで折り返され、後上端縁86bがラジエターロアサポートメンバー30の下壁34と接しエンジンアンダーカバー85の本体88に一体に?がった側断面V字形に成形されている。
このため、空気偏向壁70bは、エンジンアンダーカバー85と一体に成形できて部品を増やすことなく設定でき、しかも剛性の高いものにできる。
【0059】
次に、効果を説明する。
実施例3の車両前部の下部構造では、以下に列挙する効果を奏する。
(1)導風板50を構成し、冷却空気通路Saの下部を覆っているエンジンアンダーカバー85の前延部86には、コンデンサー21とラジエター22の下部25の下方に位置して空気導入開口60bが車幅方向Wに開けられ、空気導入開口60bの後縁61bの直後方にエンジンアンダーカバー85の前延部86と一体に成形された空気偏向壁70bが、空気導入開口60bに沿って車幅方向Wに延設され、空気導入開口60bの後縁61bより下方へ垂直に突出されて設けられている。
このため、実施例1と同様に、冷却空気通路Sa内を流れる空気が、コンデンサー21とラジエター22の下端26、27とラジエターロアサポートメンバー30の上面30aとの間隙28からラジエター22の後方Rへ逃げることを防ぐため、この間隙28にシール材を設けることなくコンデンサー21とラジエター22に加わる空気量を増加させることができる。
【0060】
(2)また、冷却空気通路Saの下部を覆う導風板50が、バンパーフェイシャー41と別部材であって、エンジンアンダーカバー85の前延部86により構成されている。
このため、エンジンアンダーカバー85を車両の前方向Fへ延在することで設定することができ、材質、形状、表面仕上げ、成形性等の制約が少なく、比較的安価で容易に設定することができる。
(3)また、空気偏向壁70bは、エンジンアンダーカバー85の前延部86と一体に成形され側断面V字形に成形されている。
このため、空気偏向壁70bは、部品を増やすことなく、しかも剛性の高いものにできる。
【実施例4】
【0061】
実施例4の車両前部の下部構造の構成について説明する。
図5は、実施例4の車両前部の下部構造を示す要部の側断面図である。
図5に示すように、バンパーフェイシャー41の下面42cが、熱交換器20であるコンデンサー21とラジエター22の下端26、27の直下手前まで延在され、冷却空気通路Saの下部を覆う導風板50を構成している。
導風板50を構成するバンパーフェイシャー41下面42cの後端44cとラジエターロアサポートメンバー30との間に車幅方向Wに開けられた空間90が設けられている。
この空間90は、コンデンサー21とラジエター22の下部25の下方に位置しており、空気導入開口60cを構成している。
また、この空間90のラジエターロアサポートメンバー30側には、ラジエターロアサポートメンバー30に接して空気偏向壁70cが、この空間90に沿って車幅方向Wに延設され、この空間90より下方へ垂直に突出して設けられている。
【0062】
このように空気偏向壁70cと導風板50を構成しているバンパーフェイシャー41下面42cの後端44cとの間に開けられた間隙としての空間90によって空気導入開口60cが形成されている。
また、空気偏向壁70cは、単体であり、ラジエターロアサポートメンバー30の上壁35(上面30a)の前縁から下方へ垂直に突出し、その中間には、ラジエターロアサポートメンバー30の下壁34に沿って後方Rに向って突出した取り付けフランジ91aが一体に形成されており、側面視略ト字形状に成形されている。
この取り付けフランジ91aがラジエターロアサポートメンバー30の下壁34にビス73eで取り付けられている。
バンパーフェイシャー41の下面42cには、その冷却空気通路Sa側に、バンパーフェイシャー41の前面43下部から下面42cの後端44cにかけて補強のための縦リブ91bが形成されている。
【0063】
また、他の実施例では図示を省略した振動減衰用のマウントゴム93を有するマウントブラケット94を図示した。
このマウントブラケット94は、コンデンサー21とラジエター22の下端26、27の左右にそれぞれ設けられラジエターロアサポートメンバー30の上壁35(上面30a)に取り付けられている。
これにより、コンデンサー21とラジエター22は、ラジエターロアサポートメンバー30から浮いた状態で支持され、左右のマウントブラケット94間は、ラジエターロアサポートメンバー30の上壁35(上面30a)との間に間隙28が生じている。
【0064】
次に、作用を説明する。
実施例4の車両前部の下部構造では、導風板50を構成し、熱交換器20であるコンデンサー21とラジエター22の下端26、27の下方へ延在され、冷却空気通路Saの下部を覆っているバンパーフェイシャー41下面42cの後端44cとラジエターロアサポートメンバー30との間には、空気導入開口60cとなる車幅方向Wに開けられた空間90が設けられ、この空間90のラジエターロアサポートメンバー30側に、この空間90より下方へ垂直に突出して空気偏向壁70cが設けられている。
このように、空気偏向壁70cと導風板50を構成しているバンパーフェイシャー41下面42cの後端44cとの間に空気導入開口60cが形成されている。
このため、走行中、冷却空気通路Saの下部を覆う導風板50を構成しているバンパーフェイシャー41の下面42cに沿って前方から流れてくる空気が、空気偏向壁70cにより上方へ偏向され空気導入開口60cから冷却空気通路Sa側に流入し、コンデンサー21とラジエター22の下部25に当たる流れとなり、この下部25に向って風圧がかかる。
【0065】
これにより、実施例1と同様に、車両前面の空気取入れ口10から入った冷却空気通路Sa内を流れる空気が、コンデンサー21とラジエター22の下端26、27とラジエターロアサポートメンバー30の上面30aとの間隙28からラジエター22の後方Rへ逃げることを防ぐことができ、コンデンサー21とラジエター22の下端26、27とラジエターロアサポートメンバー30の上面30aとの間隙28にシール材を設けることなくコンデンサー21とラジエター22に加わる空気量を増加させることができる。
【0066】
バンパーフェイシャー41下面42cの後端44cとラジエターロアサポートメンバー30との間に車幅方向Wに開けられた空間90によって空気導入開口60cが形成されている。
このため、導風板50を構成するバンパーフェイシャー41の下面42cに開口を開けなくて良いため、バンパーフェイシャー41の下面42cをコンデンサー21とラジエター22の下端26、27の下方へ向って延在させるだけで良く、簡単な構造の導風板50とすることができる。
また、空気偏向壁70cが単体であり、取り付けフランジ91aが一体に形成された側面視略ト字形状に形成されている。
このため、空気偏向壁70cは、小型であり、成形の際の制約が少なく、比較的安価で容易に設定することができる。
【0067】
次に、効果を説明する。
実施例4の車両前部の下部構造では、以下に列挙する効果を奏する。
(1)導風板50を構成し、冷却空気通路Saの下部を覆っているバンパーフェイシャー41下面42cの後端44cとラジエターロアサポートメンバー30との間に車幅方向Wに開けられた空間90が設けられ、この空間90が空気導入開口60cとなり、この空間90のラジエターロアサポートメンバー30側に、この空間90より下方へ垂直に突出して空気偏向壁70cが設けられている。
このため、実施例1と同様に、冷却空気通路Sa内を流れる空気が、コンデンサー21とラジエター22の下端26、27とラジエターロアサポートメンバー30の上面30aとの間隙28からラジエター22の後方Rへ逃げることを防ぐため、この間隙28にシール材を設けることなくコンデンサー21とラジエター22に加わる空気量を増加させることができる。
【0068】
(2)また、バンパーフェイシャー41下面42cの後端44cとラジエターロアサポートメンバー30との間に車幅方向Wに開けられた空間90によって空気導入開口60cが形成されている。
このため、導風板50を構成するバンパーフェイシャー41下面42cに開口を開けなくて良いため、簡単な構造の導風板50とすることができる。
(3)また、単体の空気偏向壁70cは、取り付けフランジ91aが一体に形成された側面視略ト字形状に形成されている。
このため、空気偏向壁70cは、小型で、成形容易で安価に設定することができる。
【実施例5】
【0069】
実施例5の車両前部の下部構造の構成について説明する。
図6は、実施例5の車両前部の下部構造を示す要部の側断面図である。
図6に示すように、バンパーフェイシャー41の下面42dの後端44dが、熱交換器20であるコンデンサー21とラジエター22の下端26、27の直下まで延在され、バンパーフェイシャー41の下面42dが冷却空気通路Saの下部を覆う導風板50を構成しているとともに、バンパーフェイシャー41の下面42dの後端44dがラジエターロアサポートメンバー30の上壁35(上面30a)にビス73fで取り付けられている。
【0070】
導風板50を構成するバンパーフェイシャー41の下面42dの後部92には、コンデンサー21とラジエター22の下部25の下方に位置して空気導入開口60dが車幅方向Wに開けられ、空気導入開口60dの直下方にラジエターロアサポートメンバー30の上壁35(上面30a)が位置し、その上壁35の前端から下方に一体に延びた前壁33aが垂直に延在して、この前壁33aにより空気偏向壁70dが設けられている。
このように、空気偏向壁70dは、バンパーフェイシャー41の下面42dの後部92より下方へ突出し、バンパーフェイシャー41の下面42dの後部92に開口された空気導入開口60dに沿って車幅方向Wに延設されたラジエターロアサポートメンバー30の前壁33aによって形成されている。
【0071】
次に、作用を説明する。
実施例5の車両前部の下部構造では、導風板50を構成し、熱交換器20であるコンデンサー21とラジエター22の下端26、27の直下まで延在され、冷却空気通路Saの下部を覆っているバンパーフェイシャー41の下面42dの後部92には、コンデンサー21とラジエター22の下部25の下方に位置して空気導入開口60dが車幅方向Wに開けられ、空気偏向壁70dは、バンパーフェイシャー41の下面42dの後部92より下方へ突出し、空気導入開口60dに沿って車幅方向Wに延設されたラジエターロアサポートメンバー30の前壁33aによって形成されている。
【0072】
このため、走行中、冷却空気通路Saの下部を覆う導風板50を構成しているバンパーフェイシャー41の下面42dに沿って前方から流れてくる空気が、空気偏向壁70dを形成しているラジエターロアサポートメンバー30の前壁33aにより上方へ偏向され空気導入開口60dから冷却空気通路Sa側に流入し、コンデンサー21とラジエター22の下部25に当たる流れとなり、この下部25に向って風圧がかかる。
【0073】
これにより、実施例1と同様に、車両前面の空気取入れ口10から入った冷却空気通路Sa内を流れる空気が、コンデンサー21とラジエター22の下端26、27とラジエターロアサポートメンバー30の上面30aとの間隙28からラジエター22の後方Rへ逃げることを防ぐことができ、コンデンサー21とラジエター22の下端26、27とラジエターロアサポートメンバー30の上面30aとの間隙28にシール材を設けることなくコンデンサー21とラジエター22に加わる空気量を増加させることができる。
【0074】
また、空気偏向壁70dは、バンパーフェイシャー41の下面42dの後部92より下方へ突出し、バンパーフェイシャー41の下面42dの後部92に開口された空気導入開口60dに沿って車幅方向Wに延設されたラジエターロアサポートメンバー30の前壁33aによって形成されている。
このため、空気偏向壁70dとしての部品を設ける必要がなくなり、部品点数を増やすことなく、構造簡単にして安価に空気偏向壁70dを設けることができる。
【0075】
次に、効果を説明する。
実施例5の車両前部の下部構造では、以下に列挙する効果を奏する。
(1)導風板50を構成し、冷却空気通路Saの下部を覆っているバンパーフェイシャー41の下面42dの後部92には、コンデンサー21とラジエター22の下部25の下方に位置して空気導入開口60dが車幅方向Wに開けられ、この空気導入開口60dの直下方に空気導入開口60dに沿って車幅方向Wに延設される空気偏向壁70dは、バンパーフェイシャー41の下面42dの後部92より下方へ突出し、空気導入開口60dに沿って車幅方向Wに延設されたラジエターロアサポートメンバー30の前壁33aによって形成されている。
このため、実施例1と同様に、冷却空気通路Sa内を流れる空気が、コンデンサー21とラジエター22の下端26、27とラジエターロアサポートメンバー30の上面30aとの間隙28からラジエター22の後方Rへ逃げることを防ぐため、この間隙28にシール材を設けることなくコンデンサー21とラジエター22に加わる空気量を増加させることができる。
【0076】
(2)また、空気偏向壁70dは、バンパーフェイシャー41の下面42dの後部92より下方へ突出し、空気導入開口60dに沿って車幅方向Wに延設されたラジエターロアサポートメンバー30の前壁33aによって形成されている。
このため、部品点数を増やすことなく、構造簡単にして安価に空気偏向壁70dを設けることができる。
【0077】
以上、本発明の車両前部の下部構造を実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については、実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0078】
例えば、各実施例の空気偏向壁は、空気導入開口より下方へ垂直に突出して設けられているが、前方または後方に傾斜した突起でも良く、前方または後方に湾曲した曲線の突起でも良いもので、コンデンサー21とラジエター22の下部25下方に開けられた空気導入開口より下方へ突出していれば良いものである。
また、空気偏向壁をラジエターロアサポートメンバー30に取り付けたが、サイドメンバーからブラケットを出して、そのブラケットにより取り付けても良い。
【符号の説明】
【0079】
R 後方
E エンジン側
F 車両の前方向
W 車両の左右方向(車幅方向)
1 車両
100 車体
103 ラジエターグリル
10 空気取入れ口
11 第1の空気取入れ口
12 第2の空気取入れ口
13 第3の空気取入れ口
20 熱交換器
21 コンデンサー
22 ラジエター
25 下部
26、27 下端
28 間隙
30 ラジエターロアサポートメンバー
30a 上面
33、33a 前壁
34 下壁
35 上壁
41 バンパーフェイシャー
42、42a、42b、42c、42d 下面
43 前面
44、44c、44d 後端
50 導風板
60、60a、60b、60c、60d 空気導入開口
61、61a、61b 後縁
62 開口
70、70a、70b、70c、70d 空気偏向壁
80 エプロン部材
85 エンジンアンダーカバー
90 空間
Sa 冷却空気通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前面にバンパーフェイシャーと冷却空気の取入れを行なう空気取入れ口が設けられ、この空気取入れ口の後方に熱交換器と、この熱交換器を上方に支持するラジエターロアサポートメンバーが車幅方向に設けられ、前記空気取入れ口と前記熱交換器との間に冷却空気通路が形成され、前記バンパーフェイシャーと前記ラジエターロアサポートメンバーの間には、前記冷却空気通路の下部を覆う導風板が設けられ、前記熱交換器の下部下方には、この熱交換器の下部に沿って空気導入開口が設けられ、この空気導入開口の後縁には、この空気導入開口より下方へ突出した空気偏向壁が空気導入開口に沿って設けられていることを特徴とする車両前部の下部構造。
【請求項2】
前記導風板が前記バンパーフェイシャーの下面を前記熱交換器の下方に延在させることによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両前部の下部構造。
【請求項3】
前記導風板が前記バンパーフェイシャーの下面に取り付けられたエプロン部材を前記熱交換器の下方に延在させることによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両前部の下部構造。
【請求項4】
前記導風板がエンジンアンダーカバーを前記バンパーフェイシャーの下面に延在させることによって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両前部の下部構造。
【請求項5】
前記空気導入開口が前記導風板に開けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両前部の下部構造。
【請求項6】
前記空気導入開口が前記導風板の後端と前記空気偏向壁との間に開けられた間隙によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両前部の下部構造。
【請求項7】
前記空気偏向壁が前記導風板と一体に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の車両前部の下部構造。
【請求項8】
前記空気偏向壁が前記導風板に取り付けられていることを特徴とする請求項5記載の車両前部の下部構造。
【請求項9】
前記空気偏向壁が前記ラジエターロアサポートメンバーに取り付けられていることを特徴とする請求項5または6に記載の車両前部の下部構造。
【請求項10】
前記空気偏向壁が前記導風板より下方へ突出した前記ラジエターロアサポートメンバーの前壁によって形成されていることを特徴とする請求項5または6に記載の車両前部の下部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−214998(P2010−214998A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60884(P2009−60884)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】