説明

車両前部構造

【課題】 ラジエータグリルを組み付ける際の被取付部分の位置ずれを小さく抑えることができ、ラジエータグリルとバンパとの外観上の一体感が得られ、且つ、コストの低減が可能な構造の提供。
【解決手段】 バンパ支持部材2は、車両のボディ1の前面に固定される。バンパ3は、バンパ支持部材2に固定される。ラジエータグリル4は、バンパ3の上方に配置される。バンパ3は、開口6と、開口6の上方を区画する上部3aと、上部3aに形成された取付穴13とを有する。ラジエータグリル4は、ボディ1に固定される上部4aと、開口6の上部を覆う下部4bと、バンパ3の取付穴13を挿通してバンパ支持部材2に固定される係合ピン10と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のボディの前面に、バンパとラジエータグリルとが配置された構造が知られている。ラジエータグリルは、バンパの上方に配置される。
【0003】
【特許文献1】特開平10−315887号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バンパ及びラジエータグリルをボディの前面に固定するために、バンパ支持部材及びグリル用のブラケットを使用した構造がある。係る構造において、バンパ及びラジエータグリルを組み付ける場合、まずバンパ支持部材をボディに固定し、バンパの上部をバンパ支持部材に固定する。次に、ブラケットをバンパ支持部材に固定し、ラジエータグリルの上部をボディに固定すると共に、下部をブラケットに固定する。
【0005】
しかし、上記構造では、ラジエータグリルは、その上部がボディに直接固定されるのに対し、下部はブラケット及びバンパ支持部材という複数の部材を介してボディに固定される。このため、上部と下部との間で被取付部分の位置ずれが増大し易く、ラジエータグリルの組み付け作業性の低下や、取付位置のバラツキの一因となる。
【0006】
また、ラジエータグリルを取り付けるための専用のブラケットを設けているため、コストが増大してしまう。
【0007】
また、ラジエータグリルの取付位置のバラツキにより、ラジエータグリルとバンパとの間に間隙等が生じると、両者の外観上の一体感が損なわれてしまう。係る不都合は、ラジエータグリルとバンパとを一体成形することにより解消可能であるが、この場合、成形型が大型となり、コストの増大を招く。
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、ラジエータグリルを組み付ける際の被取付部分の位置ずれを小さく抑えることができ、ラジエータグリルとバンパとの外観上の一体感が得られ、且つ、コストの低減が可能な車両前部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る車両前部構造は、車両のボディの前面に固定されるバンパ支持部材と、バンパ支持部材に固定されるバンパと、バンパの上方に配置されるラジエータグリルと、を備える。バンパは、開口と、開口の上方を区画する上部と、上部に形成された取付穴とを有する。ラジエータグリルは、ボディに固定される上部と、開口の一部を覆う下部と、取付穴を挿通してバンパ支持部材に固定される連結部と、を有する。
【0010】
バンパ及びラジエータグリルを組み付ける場合、まずバンパ支持部材をボディに固定し、バンパをバンパ支持部材に固定する。次に、ラジエータグリルの上部をボディに固定すると共に、連結部をバンパの取付穴に挿通してバンパ支持部材に固定する。係る状態で、ラジエータグリルの下部は、バンパの開口の一部を覆う。
【0011】
上記構成では、ラジエータグリルは、その上部がボディに固定され、下部はバンパ支持部材を介してボディに固定される。すなわち、ラジエータグリルの下部とボディとの間に介在する部材がバンパ支持部材のみである。このため、上部と下部との間での被取付部分の位置ずれを小さく抑えることができ、ラジエータグリルの組み付け作業性の向上や、取付位置のバラツキの低減を図ることができる。
【0012】
また、ラジエータグリルを取り付けるための専用のブラケット等の部材を必要としないため、コストの低減を図ることができる。
【0013】
また、ラジエータグリルの下部がバンパの開口の一部を覆っているので、ラジエータグリルと開口とが一体に形成されているように見せることができる。すなわち、ラジエータグリルとバンパとを一体成形することによるコストの増大を招くことなく、ラジエータグリルとバンパとを別体としつつ、ラジエータグリルとバンパとの外観上の一体感を与えることができる。
【0014】
さらに、ラジエータグリルの下端とバンパの開口の下端との間の距離を比較的大きく設定することにより、ラジエータグリルとバンパとの間で取付誤差が生じた場合であっても、ラジエータグリルの下端とバンパの開口の下端との間の距離のバラツキが目立たず、取付誤差による外観上の見栄えの低下を抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ラジエータグリルを組み付ける際の被取付部分の位置ずれを小さく抑えることができ、ラジエータグリルとバンパとの外観上の一体感が得られ、且つ、コストの低減が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明の一実施形態を示す車体前部構造の分解斜視図、図2は図1の車体前部構造の要部断面図、図3は図1の車体前部構造の要部分解斜視図である。なお、図中矢印Frは、車両前方を示している。
【0017】
図1に示すように、車両前部のボディ1の前面には、バンパ支持部材2とバンパ3とラジエータグリル4とが取り付けられる。ラジエータグリル4は、バンパ3の上方に配置され、バンパ3及びラジエータグリル4には、ボディ1に固定されたラジエータ5への通気領域となる開口6,7がそれぞれ形成されている。
【0018】
バンパ支持部材2は、上板2aと前板2bとを備えた略L状断面を有し、車幅方向へ延びている。バンパ支持部材2は、車幅方向の複数位置で、ボディ1に締結固定される。また、上板2aにはバンパ3を固定するための複数の係合ピン8とそれぞれ係合する複数の係合孔9が車幅方向に離間して形成され、前板2bには、ラジエータグリル4の連結部としての複数の係合ピン10と係合する複数の係合孔11が車幅方向に離間して形成されている。
【0019】
バンパ3の開口6は、横方向に延びる隔壁12a及び縦方向に延びる複数の隔壁12bによって分割されている。開口6の上方を区画する薄肉状の上部3aには、車幅方向に離間する複数の取付穴13が形成されている。開口6と取付穴13とは、車両前方から視た場合、一体的に連続して見えるが、両者の間は隔壁14によって分けられている。なお、開口6と取付穴13とを、一体に連続して形成してもよい。また、バンパ3の上壁部3bには、バンパ3を固定するための複数の係合ピン8がそれぞれ挿通される複数のピン挿通孔15が車幅方向に離間して形成されている。
【0020】
バンパ3は、上壁部3bをバンパ支持部材2の上板2a上に載置し、係合ピン8を対応するピン層通孔15に挿通してそれぞれ係合孔9に係合することにより、その上部3aがバンパ支持部材2に固定される。
【0021】
また、バンパ3の下部3cは、複数のブラケット16,17,18,19を介してボディ1に固定される。ボディ1の車幅方向両側には、ブラケット16,19を締結するためナット21と螺合するボルト20が立設され、ボディ1の車幅方向中間部分には、ブラケット17,18を締結するためボルト23と螺合するボルト孔22が形成されている。一方、バンパ3の下部3cには、ブラケット16,17,18,19を固定するための係合ピン24が挿通されるピン層通孔25が形成されている。ブラケット16,17,18,19の下部には、係合ピン24と係合するピン係合孔26がそれぞれ形成されている。なお、ブラケット16,19の上部には、バンパ支持部材2の両端部が載置され、両者が締結固定される。
【0022】
ラジエータグリル4の上部4aには、ボディ1に設けられた複数の係合凹部27とそれぞれ係合する係合突部28が、車幅方向に離間して複数形成されている。ラジエータグリル4の上部4aは、係合突部28と係合凹部27との係合により、ボディ1に固定される。
【0023】
また、ラジエータグリル4の下部4bには、上記複数の係合ピン10が突出形成されている。各係合ピン10を、バンパ3の取付穴13に挿通してバンパ支持部材2の係合孔11とそれぞれ係合することにより、ラジエータグリル4の下部4bがバンパ支持部材2に固定される。係る状態で、ラジエータグリル4の下部4bは、バンパ3の開口6の上部を車幅方向のほぼ全域に亘って覆う。また、係る状態で、ラジエータグリル4の下端は、バンパ3の開口6の上端よりも車両前方で僅かに下方に突出した位置に設定される。換言すると、ラジエータグリル4の下端とバンパ3の開口6のうち横方向の隔壁12aによって最上部に区画される部分の下端(開口6を上下に分割する隔壁12a)との間の距離は、比較的大きく設定されている。
【0024】
バンパ3及びラジエータグリル4をボディ1に組み付ける場合、図1に示すように、まずバンパ支持部材2及びブラケット16,17,18,19をボディ1に固定する。次に、バンパ3の上壁部3bをバンパ支持部材2に固定すると共に、バンパ3の下部3cをブラケット16,17,18,19に固定する。
【0025】
最後に、ラジエータグリル4の上部4aをボディ1に固定すると共に、図2及び図3に示すように、ラジエータグリル4の下部4bの係合ピン10をバンパ3の取付穴13に挿通してバンパ支持部材2の係合孔11に係合し固定する。係る状態で、バンパ3の開口6の上部を車幅方向のほぼ全域に亘って覆う。
【0026】
上記構成では、ラジエータグリル4は、その上部4aがボディ1に固定され、下部4bはバンパ支持部材2を介してボディ1に固定される。すなわち、ラジエータグリル4の下部4bとボディ1との間に介在する部材がバンパ支持部材2のみである。このため、上部4aと下部4bとの間での被取付部分(ボディ1の係合凹部27とバンパ支持部材2の係合孔11)の位置ずれを小さく抑えることができ、ラジエータグリル4の組み付け作業性の向上や、取付位置のバラツキの低減を図ることができる。
【0027】
また、ラジエータグリル4を取り付けるための専用のブラケット等の部材を必要としないため、コストの低減を図ることができる。
【0028】
また、ラジエータグリル4の下部4bがバンパ3の開口6の上部を覆っているので、車両前方から視た際に開口6の上部がラジエータグリル4の下部4bによって区画されているように見える。すなわち、ラジエータグリル4と開口6とが一体に形成されているように見せることができる。これにより、ラジエータグリル4とバンパ3とを一体成形することによるコストの増大を招くことなく、ラジエータグリル4とバンパ3とを別体としつつ、ラジエータグリル4とバンパ3との外観上の一体感を与えることができる。
【0029】
さらに、ラジエータグリル4の下端と開口6を上下に分割する横方向の隔壁12aとの間の距離が、比較的大きく設定されているため、ラジエータグリル4とバンパ3との間で取付誤差が生じた場合であっても、ラジエータグリル4の下端と隔壁12aとの間の距離(形成される空間の高さ)のバラツキが目立たず、取付誤差による外観上の見栄えの低下を抑えることができる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、ラジエータグリル4を組み付ける際の被取付部分の位置ずれを小さく抑えることができ、ラジエータグリル4とバンパ3との外観上の一体感が得られ、且つ、コストの低減が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、様々な車両の前部構造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態を示す車体前部構造の分解斜視図である。
【図2】図1の車体前部構造の要部断面図である。
【図3】図1の車体前部構造の要部分解斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1:ボディ
2:バンパ支持部材
3:バンパ
4:ラジエータグリル
4a:ラジエータグリルの上部
4b:ラジエータグリルの下部
6:開口
10:係合ピン(連結部)
11:係合孔
13:取付穴


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のボディの前面に固定されるバンパ支持部材と、
前記バンパ支持部材に固定されるバンパと、
前記バンパの上方に配置されるラジエータグリルと、を備え、
前記バンパは、開口と、該開口の上方を区画する上部と、該上部に形成された取付穴とを有し、
前記ラジエータグリルは、前記ボディに固定される上部と、前記開口の一部を覆う下部と、前記取付穴を挿通して前記バンパ支持部材に固定される連結部と、を有する
ことを特徴とする車両前部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−88817(P2006−88817A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−275086(P2004−275086)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】