車両前部構造
【課題】大型の熱交換器を配置してもフードの変形ストロークを確保でき、冷却性能と歩行者保護性能との両立が可能な車両前部構造を得る。
【解決手段】ラジエータサポートロア46が閉断面部60を構成して熱交換器36の下部を支持し、熱交換器36を支持する支持面48Aが車両下方へ凹んでいるので、ラジエータサポートロア46の剛性を確保しながら、熱交換器36の配置位置を下げることができる。このため、大型の熱交換器36が配置されても、フード20の変形ストロークLが確保される。
【解決手段】ラジエータサポートロア46が閉断面部60を構成して熱交換器36の下部を支持し、熱交換器36を支持する支持面48Aが車両下方へ凹んでいるので、ラジエータサポートロア46の剛性を確保しながら、熱交換器36の配置位置を下げることができる。このため、大型の熱交換器36が配置されても、フード20の変形ストロークLが確保される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルーム内に熱交換器が配置される車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両前部においては、フードに覆われるエンジンルーム内に熱交換器(コンデンサ、ラジエタ)を配設する構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような構造では、フードに歩行者が衝突した際におけるフードの変形ストローク(変形可能なストローク)を確保するために、フードと熱交換器との間に所定の隙間を設けた状態としている。
【0003】
ここで、このような車両前部構造では、大型の熱交換器を配置した場合には、フードの変形ストロークを確保しにくく、冷却性能と歩行者保護性能との両立が難しい。
【特許文献1】特開2004−98814公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、大型の熱交換器を配置してもフードの変形ストロークを確保でき、冷却性能と歩行者保護性能との両立が可能な車両前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載する本発明の車両前部構造は、エンジンルームを覆うフードと、前記フードから離れて前記エンジンルーム内の上部で車両幅方向を長手方向として配置され、熱交換器の上部を支持するラジエータサポートアッパと、前記エンジンルーム内の下部に配置され、車両幅方向に延在する閉断面部を構成して前記熱交換器の下部を支持し、前記熱交換器を支持する支持面が車両下方へ凹むラジエータサポートロアと、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載する本発明の車両前部構造によれば、ラジエータサポートロアが閉断面部を構成して熱交換器の下部を支持し、熱交換器を支持する支持面が車両下方へ凹んでいるので、ラジエータサポートロアの剛性を確保しながら、熱交換器の配置位置を下げることができる。このため、大型の熱交換器が配置されても、フードと熱交換器との距離を長くすることができるので、フードに歩行者が衝突した場合には、フードの変形ストロークが確保され、フードが大きく変形することで、歩行者に対する衝突エネルギーも十分に吸収される。
【0007】
請求項2に記載する本発明の車両前部構造は、請求項1記載の構成において、前記ラジエータサポートアッパは、車両正面視で前記熱交換器の上方に対応する範囲が車両下方側へ下げられていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載する本発明の車両前部構造によれば、ラジエータサポートアッパは、車両正面視で熱交換器の上方に対応する範囲が車両下方側へ下げられているので、フードに歩行者が衝突した場合には、フードの変形量を確保しやすく、フードが大きく変形することで、歩行者に対する衝突エネルギーも十分に吸収される。
【0009】
請求項3に記載する本発明の車両前部構造は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記ラジエータサポートロアは、前記支持面が形成された第1部材と、前記第1部材の車両下方側に配置された第2部材と、を備え、前記第1部材の両端部と前記第2部材の両端部とが結合されて前記閉断面部を構成しており、前記第1部材が、該第1部材の両端部に比べて車両上方側に形成される天板部を備え、前記支持面が、前記天板部に比べて車両下方側に形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載する本発明の車両前部構造によれば、天板部が第1部材の両端部に比べて車両上方側に形成されるので、第1部材の断面高さを確保することができ、支持面が天板部に比べて車両下方側に形成されるので、第1部材の断面高さを確保しながら、熱交換器の配置位置を下げることができる。
【0011】
請求項4に記載する本発明の車両前部構造は、請求項3記載の構成において、前記支持面が、前記第1部材の両端部に比べて車両下方側に形成されることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載する本発明の車両前部構造によれば、支持面が、第1部材の両端部に比べて車両下方側に形成されるので、第1部材の断面高さを確保しながら、熱交換器の配置位置を大幅に下げることができる。
【0013】
請求項5に記載する本発明の車両前部構造は、請求項1から4のいずれか一項に記載の構成において、前記支持面には、前記熱交換器の下部側が嵌合可能な複数の嵌合部が車両前後方向にずれた位置に形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載する本発明の車両前部構造によれば、支持面には、熱交換器の下部側が嵌合可能な複数の嵌合部が車両前後方向にずれた位置に形成されているので、エンジンバリエーションによって熱交換器の取付位置が車両前後方向に異なる複数の車種に適用しても、ラジエータサポートロアの剛性を確保しながら、熱交換器の配置位置を下げることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車両前部構造によれば、大型の熱交換器を配置してもフードの変形ストロークを確保でき、冷却性能と歩行者保護性能との両立が可能になるという優れた効果を有する。
【0016】
請求項2に記載の車両前部構造によれば、フードとラジエータサポートアッパとの間隔を確保することができるという優れた効果を有する。
【0017】
請求項3に記載の車両前部構造によれば、ラジエータサポートロアの断面剛性を確保しながら熱交換器の配置位置を下げることでフードの変形ストロークを確保できるという優れた効果を有する。
【0018】
請求項4に記載の車両前部構造によれば、ラジエータサポートロアの断面剛性を確保しながら熱交換器の配置位置を大幅に下げることができるという優れた効果を有する。
【0019】
請求項5に記載の車両前部構造によれば、熱交換器の取付位置が車両前後方向に異なる複数の車種に対応して、冷却性能と歩行者保護性能との両立を図ることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[第1実施形態]
本発明における車両前部構造の第1の実施形態を図面に基づき説明する。なお、図中の矢印UPは車両の上方向、矢印FRは車両の前方向、矢印INは車両幅方向内側をそれぞれ示す。
【0021】
図1には、本実施形態に係る車両前部構造の全体構成を示す縦断面図が示されている。図1に示されるように、車両前部10の前面部には、フロントバンパ12が配設されている。フロントバンパ12は、略車両幅方向に沿って延在しており、前面部に配置されるフロントバンパカバー13と、フロントバンパカバー13の車両後方側に配設されるフロントバンパリインフォースメント14と、を備えている。フロントバンパリインフォースメント14の長手方向の両端部は、車両前後方向に延在する左右一対のフロントサイドメンバ(図示省略)の前端部に結合されている。
【0022】
フロントバンパカバー13の上方には、空気取入部となるラジエータグリル16が配設されている。フロントバンパ12の車両後方側は、内燃機関であるエンジン(図示省略)が配設されるエンジンルーム18とされ、エンジンルーム18の車両上方側には、エンジンルーム18を開閉可能に覆うフード20が配置されている。
【0023】
フード20は、フード20の車両外側部(閉止状態で上部)を構成するフードアウタパネル21と、フード20の車両内側部(閉止状態で下部)を構成するフードインナパネル22とによって構成されており、フードアウタパネル21の外周縁部21Aとフードインナパネル22の外周縁部22Aとがヘミング加工によって互いに結合されている。
【0024】
フード20の前部におけるフードインナパネル22側には、下方へ突出するストライカ24が取り付けられている。ストライカ24は、ラジエータサポート30におけるラジエータサポートアッパ32に固定されたフードロック26と対向する位置に配設されており、フードロック26に対して係脱可能とされている。また、ラジエータサポートアッパ32の上方には、クールエアインテーク28が配設されており、エアクリーナ(図示省略)等を介してエンジン(図示省略)に接続されている。クールエアインテーク28は、アクセルペダル(図示省略)の踏み込み時における車外冷気(空気)の吸引用とされている。
【0025】
ラジエータサポートアッパ32の下方には、熱交換器36が配設されている。熱交換器36は、それぞれ熱交換器とされる、エンジン冷却用のラジエータ38と、ラジエータ38の車両前方側に間隔を置いて配置されると共にラジエータ38と一体化されたエアコン用のコンデンサ40と、を含んで構成されている。ラジエータ38及びコンデンサ40は、フロントバンパリインフォースメント14の長手方向に沿って配置された薄型構造体であり、正面視(図2参照)で略矩形状を成しており、車両水平面に対して略垂直に立設されている。また、本実施形態における車両は、大容量の冷却性能、冷房性能を必要とする車両であるため、エンジンルーム18には、大型の熱交換器36を搭載している。
【0026】
熱交換器36の車両後方側には、箱体状のファンシュラウド42が取り付けられており、ファンシュラウド42内にファン44が配設されている。ファン44は、駆動回転によって熱交換器36に対して車両後方側への吸引力を作用させるようになっている。熱交換器36(ラジエータ38及びコンデンサ40)、ファンシュラウド42、及びファン44は、一体化(ユニット化)されており、1ユニットとしてラジエータサポート30に取り付けられて支持されるようになっている。
【0027】
図2に示されるように、ラジエータサポート30は正面視で略矩形枠状に構成されており、ラジエータ38(熱交換器36)の上部を支持して車両幅方向を長手方向として配置されるラジエータサポートアッパ32と、ラジエータ38(熱交換器36)の下部を支持して車両幅方向を長手方向として配置されるラジエータサポートロア46と、ラジエータサポートアッパ32の長手方向の両端部とラジエータサポートロア46の長手方向の両端部とを車両上下方向に繋ぐ左右一対のラジエータサポートサイド52と、ラジエータサポートアッパ32の長手方向の端部から車両後方側かつ車両上方側へ斜めに延びてエプロンアッパメンバ(図示省略)の前端部に結合されるラジエータサポートアッパサイド54と、を含んで構成されている。
【0028】
ラジエータサポートアッパ32は、車両正面視で熱交換器36(ラジエータ38、コンデンサ40)の上方に対応する範囲のみが車両下方側へ下げられている。ラジエータサポートアッパ32の端部は、ラジエータサポートアッパサイド54の端部と重ね合わされている。ラジエータサポートアッパサイド54は、車両下方側が開放された断面ハット形状に形成されている(図示省略)。図1に示されるように、フード20から離れてエンジンルーム18内の上部に配置されるラジエータサポートアッパ32も、車両下方側が開放された断面ハット形状に形成されている。ラジエータサポートアッパ32には、ラジエータ38の取付用とされる孔32Aが貫通形成されており、ラジエータ38の上端部38Aに固定されたゴムマウント56が嵌合されるようになっている。
【0029】
エンジンルーム18内の下部に配置されるラジエータサポートロア46は、車両幅方向に延在する閉断面部60を構成してラジエータ38(熱交換器36)の下部を支持し、ラジエータ38(熱交換器36)を支持する支持面48A(取付面)が車両下方へ凹んだ形状となっている。
【0030】
図3及び図4に示されるように、ラジエータサポートロア46は、支持面48Aが形成されると共に車両下方側が開放された断面形状の第1部材としてのラジエータサポートロアアッパメンバ48と、ラジエータサポートロアアッパメンバ48の車両下方側に配置されて車両上方側が開放された断面ハット形状の第2部材としてのラジエータサポートロアリインフォース50と、を備えており、ラジエータサポートロアアッパメンバ48の両端部48B、48Cとラジエータサポートロアリインフォース50の両端部50A、50Bとが重ね合わされた状態で結合されて閉断面部60を構成している。
【0031】
ラジエータサポートロアアッパメンバ48は、その両端部48B、48Cに比べて車両上方側に形成される天板部48Dを備えている。天板部48Dと支持面48Aとは段差を形成しており、支持面48Aは、平面状とされて天板部48Dに比べて車両下方側に形成されている。図4に示されるように、本実施形態では、天板部48Dは、平面視で車両後方向きに開放された略U字状に形成されており、支持面48Aは、車両幅方向の中間部における車両後方側に形成されている。また、支持面48Aは、車両前後方向の前後端部とされる両端部48B、48Cに比べて車両上方側に設けられている。なお、支持面48Aと天板部48Dとの間は、傾斜状の傾斜部48Eによって繋がれている。また、天板部48D、傾斜部48E及び支持面48Aと、車両後方側の端部48Cと、の間は、車両後方へ向けて車両下方側へ傾斜した傾斜部48Fによって繋がれている。
【0032】
支持面48Aの車両上下方向位置は、路面干渉のギリギリの位置まで下げることが可能である。具体的には、支持面48Aを天板部48Dから20mm程度(ラジエータサポートロアリインフォース50から支持面48Aまでの間隔が5mm程度の位置まで)下げることができる。
【0033】
また、支持面48Aの面積は、ラジエータ38を1個分支持する面積よりも広い面積とされており、支持面48Aにおける車両幅方向の両サイド寄りには、車両前後方向にずれた位置に複数の嵌合部としての嵌合孔49が貫通形成されている。図3に示されるように、嵌合孔49は、ラジエータ38(熱交換器36)の下部側、すなわち、下端部38Bに固定されたゴムマウント58が嵌合可能となっている。車両前後方向にずれた位置に複数の嵌合孔49を形成することで、エンジンバリエーションによってラジエータ38の取付位置が異なる複数の車種に対応できるようになっている。
【0034】
なお、図4に示されるように、車両前方側の嵌合孔49と車両後方側の嵌合孔49とは、車両幅方向にも、ずれた位置に形成されている。これにより、取付位置に応じて図3に示されるラジエータ38側のゴムマウント58の位置も変えれば、ラジエータ38の組付誤りを容易に防ぐことが可能となる。
【0035】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果を説明する。
【0036】
図1に示されるように、ラジエータサポートロア46が閉断面部60を構成して熱交換器36の下部を支持し、熱交換器36を支持する支持面48Aが車両下方へ凹んでいるので、ラジエータサポートロア46の剛性を確保しながら、熱交換器36の配置位置を下げることができる。このため、大型の熱交換器36が配置されても、フード20とラジエータサポートアッパ32との間隔、ひいては、フードアウタパネル21とクールエアインテーク28との間隔を確保できるので、フード20に歩行者(頭部インパクタ64)が衝突(二次衝突)した場合には、フード20の変形ストロークL(変形可能なストローク)が確保され、フード20が大きく変形することで、歩行者(頭部インパクタ64)に対する衝突エネルギーも十分に吸収される。
【0037】
すなわち、図3に示されるように、ラジエータサポートロアアッパメンバ48の天板部48Dがラジエータサポートロアアッパメンバ48の両端部48B、48Cに比べて車両上方側に形成されるので、ラジエータサポートロアアッパメンバ48の断面高さHを確保することができ、支持面48Aが天板部48Dに比べて車両下方側に形成されるので、ラジエータサポートロアアッパメンバ48の断面高さHを確保しながら、熱交換器36の配置位置を下げることができ、かつ、図2に示されるように、ラジエータサポートアッパ32は、車両正面視で熱交換器36の上方に対応する範囲が車両下方側へ下げられているので、図1に示されるフード20の変形ストロークLを確保することができ、フード20に歩行者(頭部インパクタ64)が衝突した場合におけるフード20の変形量を確保しやすい。
【0038】
ここで、歩行者が走行中の車両のフロントバンパ12に衝突すると、歩行者は、フード20に二次衝突することがあるが、このとき、フード20は、歩行者から荷重を受け、車両下方側へ変形ストロークLの限度まで大きく変形しながら衝突エネルギーを効果的に吸収していく。
【0039】
このように、本実施形態に係る車両前部構造によれば、ラジエータサポートロア46の断面剛性や耐久強度を確保しながら熱交換器36の配置位置を下げることができるので、大型の熱交換器36を配置してもフード20の変形ストロークLを確保でき、冷却性能と歩行者保護性能との両立が可能になる。
【0040】
補足すると、冷却性能、冷房性能を向上させるためには、大型(大容量)の熱交換器36(ラジエータ38及びコンデンサ40)をエンジンルーム18に配置する必要があるが、フード20の意匠的な制約によって、エンジンルーム18の絶対的スペースが小さい場合には、大型の熱交換器36をそのままエンジンルーム18に配置したのでは、フード20の変形ストロークL(フード20とラジエータサポート30等との間の歩行者保護必要ストローク長)を確保できない。ここで、ラジエータサポートロア46は、車両としての性能を満足するために、具体的には、路面干渉の観点から、所定位置より車両下方側へは下げられないという制約があるので、ラジエータサポートロア46全体を車両下方側へ下げることはできない。従って、ラジエータサポートロア46全体を車両下方側へ下げることによって、フード20の変形ストロークLを確保するという構成は採用することができない。また、同様に車両としての性能を満足するために、車両前部10(フロントボデー)におけるラジエータサポートロア46(シェル、ラジエータサポート30回り)は、所定の剛性や耐久強度を確保しなければならず、ラジエータサポートロアアッパメンバ48の断面高さH(図3参照)を低くすることもできない。従って、ラジエータサポートロアアッパメンバ48の断面高さH(図3参照)を低くすることによって、フード20の変形ストロークLを確保するという構成も採用することができない。さらに、フード20の変形ストロークLを確保するために、熱交換器36(ラジエータ38及びコンデンサ40)を小型化すると、冷却性能、冷房性能がレベルダウンすることになる。しかし、本実施形態に係る車両前部構造(ラジエータサポート構造)によれば、冷却性能と歩行者保護性能との両立を図ることができる。
【0041】
また、図3に示される支持面48Aには、熱交換器36の下部側とされるゴムマウント58が嵌合可能な複数の嵌合孔49が車両前後方向にずれた位置に貫通形成されているので(図4参照)、熱交換器36の取付位置が車両前後方向に異なる複数の車種に適用しても、ラジエータサポートロア46の剛性を確保しながら、熱交換器36の配置位置を下げることができる。
【0042】
[第2実施形態]
次に、車両前部構造の第2の実施形態を図5に基づき説明する。なお、第2の実施形態は、ラジエータサポートロアアッパメンバ48における支持面48Aの車両上下方向位置(高さ位置)が特徴であり、他の構成については、第1の実施形態とほぼ同様の構成であるので、実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
図5に示されるように、ラジエータサポートロアアッパメンバ48は、車両後方側の端部48Cから車両前方へ向けて車両下方側へ傾斜した傾斜部48Gを備えており、支持面48Aが傾斜部48Gの下端部から水平方向に延びている。これにより、車両後方側の端部48Cと支持面48Aとは段差を形成し、支持面48Aは、ラジエータサポートロアアッパメンバ48の両端部48B、48Cに比べて車両下方側に形成されている。このような構成によれば、ラジエータサポートロア46の断面高さH(断面剛性)を保ちながら熱交換器36の配置位置を大幅に下げることができる。
【0044】
[実施形態の補足説明]
なお、上記実施形態では、図2に示されるように、ラジエータサポートアッパ32は、車両正面視で熱交換器36の上方に対応する範囲のみが車両下方側へ下げられているが、例えば、ラジエータサポートアッパを車両正面視で水平方向に(直線状に)延在させる構成にし、フードの変形時には、ラジエータサポートアッパにおける熱交換器の上方に対応する範囲が車両下方側へ変形してラジエータサポートアッパがフードと共に衝突エネルギーを吸収するようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、図3等に示されるように、ラジエータサポートロア46がラジエータサポートロアアッパメンバ48とラジエータサポートロアリインフォース50とが結合されて閉断面部60を構成しているが、ラジエータサポートロア46は、一部材により閉断面部を構成してもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、ラジエータサポートロア46がラジエータサポートロアアッパメンバ48とラジエータサポートロアリインフォース50とが上下に重ね合わされた状態で結合されているが、ラジエータサポートロアは、例えば、二部材が車両前後方向に重ね合わされた状態で結合される等のように、他の形態で複数部材が結合されたものであってもよい。
【0047】
さらに、上記実施形態では、図1に示されるように、ラジエータ38とコンデンサ40とが一体化されて、ラジエータサポートロア46及びラジエータサポートアッパ32に支持されているが、熱交換器としてのラジエータ38と熱交換器としてのコンデンサ40とがそれぞれ別個にラジエータサポートロア46及びラジエータサポートアッパ32に支持されてもよい。
【0048】
さらにまた、上記実施形態では、支持面48Aには、熱交換器36の下部側が嵌合可能な複数の嵌合孔49が車両前後方向にずれた位置に貫通形成されているが、例えば、支持面には、熱交換器の下部側が嵌合可能な複数の嵌合凹部(嵌合部)が車両前後方向にずれた位置に形成されてもよい。
【0049】
なお、上記実施形態では、ラジエータサポートロアアッパメンバ48における車両後方側の端部48Cとラジエータサポートロアリインフォース50における車両後方側の端部50Bとの接合部の車両上下方向位置(高さ位置)と、ラジエータサポートロアアッパメンバ48における車両前方側の端部48Bとラジエータサポートロアリインフォース50における車両前方側の端部50Aとの接合部の車両上下方向位置(高さ位置)とは、等しい車両上下方向位置に図示されており、支持面48Aは、これらの車両上下方向位置に比べて車両上方側又は車両下方側に形成されているが、いずれか一方の接合部の車両上下方向位置を他方の接合部の車両上下方向位置に比べて車両上方側に設定してもよく、また、支持面48Aの車両上下方向位置をいずれか一方の接合部の車両上下方向位置と等しく設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両前部構造の全体構成を示す縦断面である。
【図2】図1の2−2線断面に相当する断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態におけるラジエータサポートロアを示す拡大断面図である(図4の3−3線断面に相当する。)。
【図4】本発明の第1の実施形態におけるラジエータサポートロアを示す斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態におけるラジエータサポートロアを示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0051】
18 エンジンルーム
20 フード
32 ラジエータサポートアッパ
36 熱交換器
46 ラジエータサポートロア
48 ラジエータサポートロアアッパメンバ(第1部材)
48A 支持面
48B、48C ラジエータサポートロアアッパメンバの両端部(第1部材の両端部)
48D 天板部
49 嵌合孔(嵌合部)
50 ラジエータサポートロアリインフォース(第2部材)
50A、50B ラジエータサポートロアリインフォースの両端部(第2部材の両端部)
60 閉断面部
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルーム内に熱交換器が配置される車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両前部においては、フードに覆われるエンジンルーム内に熱交換器(コンデンサ、ラジエタ)を配設する構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような構造では、フードに歩行者が衝突した際におけるフードの変形ストローク(変形可能なストローク)を確保するために、フードと熱交換器との間に所定の隙間を設けた状態としている。
【0003】
ここで、このような車両前部構造では、大型の熱交換器を配置した場合には、フードの変形ストロークを確保しにくく、冷却性能と歩行者保護性能との両立が難しい。
【特許文献1】特開2004−98814公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、大型の熱交換器を配置してもフードの変形ストロークを確保でき、冷却性能と歩行者保護性能との両立が可能な車両前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載する本発明の車両前部構造は、エンジンルームを覆うフードと、前記フードから離れて前記エンジンルーム内の上部で車両幅方向を長手方向として配置され、熱交換器の上部を支持するラジエータサポートアッパと、前記エンジンルーム内の下部に配置され、車両幅方向に延在する閉断面部を構成して前記熱交換器の下部を支持し、前記熱交換器を支持する支持面が車両下方へ凹むラジエータサポートロアと、を有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載する本発明の車両前部構造によれば、ラジエータサポートロアが閉断面部を構成して熱交換器の下部を支持し、熱交換器を支持する支持面が車両下方へ凹んでいるので、ラジエータサポートロアの剛性を確保しながら、熱交換器の配置位置を下げることができる。このため、大型の熱交換器が配置されても、フードと熱交換器との距離を長くすることができるので、フードに歩行者が衝突した場合には、フードの変形ストロークが確保され、フードが大きく変形することで、歩行者に対する衝突エネルギーも十分に吸収される。
【0007】
請求項2に記載する本発明の車両前部構造は、請求項1記載の構成において、前記ラジエータサポートアッパは、車両正面視で前記熱交換器の上方に対応する範囲が車両下方側へ下げられていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載する本発明の車両前部構造によれば、ラジエータサポートアッパは、車両正面視で熱交換器の上方に対応する範囲が車両下方側へ下げられているので、フードに歩行者が衝突した場合には、フードの変形量を確保しやすく、フードが大きく変形することで、歩行者に対する衝突エネルギーも十分に吸収される。
【0009】
請求項3に記載する本発明の車両前部構造は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記ラジエータサポートロアは、前記支持面が形成された第1部材と、前記第1部材の車両下方側に配置された第2部材と、を備え、前記第1部材の両端部と前記第2部材の両端部とが結合されて前記閉断面部を構成しており、前記第1部材が、該第1部材の両端部に比べて車両上方側に形成される天板部を備え、前記支持面が、前記天板部に比べて車両下方側に形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載する本発明の車両前部構造によれば、天板部が第1部材の両端部に比べて車両上方側に形成されるので、第1部材の断面高さを確保することができ、支持面が天板部に比べて車両下方側に形成されるので、第1部材の断面高さを確保しながら、熱交換器の配置位置を下げることができる。
【0011】
請求項4に記載する本発明の車両前部構造は、請求項3記載の構成において、前記支持面が、前記第1部材の両端部に比べて車両下方側に形成されることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載する本発明の車両前部構造によれば、支持面が、第1部材の両端部に比べて車両下方側に形成されるので、第1部材の断面高さを確保しながら、熱交換器の配置位置を大幅に下げることができる。
【0013】
請求項5に記載する本発明の車両前部構造は、請求項1から4のいずれか一項に記載の構成において、前記支持面には、前記熱交換器の下部側が嵌合可能な複数の嵌合部が車両前後方向にずれた位置に形成されることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載する本発明の車両前部構造によれば、支持面には、熱交換器の下部側が嵌合可能な複数の嵌合部が車両前後方向にずれた位置に形成されているので、エンジンバリエーションによって熱交換器の取付位置が車両前後方向に異なる複数の車種に適用しても、ラジエータサポートロアの剛性を確保しながら、熱交換器の配置位置を下げることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車両前部構造によれば、大型の熱交換器を配置してもフードの変形ストロークを確保でき、冷却性能と歩行者保護性能との両立が可能になるという優れた効果を有する。
【0016】
請求項2に記載の車両前部構造によれば、フードとラジエータサポートアッパとの間隔を確保することができるという優れた効果を有する。
【0017】
請求項3に記載の車両前部構造によれば、ラジエータサポートロアの断面剛性を確保しながら熱交換器の配置位置を下げることでフードの変形ストロークを確保できるという優れた効果を有する。
【0018】
請求項4に記載の車両前部構造によれば、ラジエータサポートロアの断面剛性を確保しながら熱交換器の配置位置を大幅に下げることができるという優れた効果を有する。
【0019】
請求項5に記載の車両前部構造によれば、熱交換器の取付位置が車両前後方向に異なる複数の車種に対応して、冷却性能と歩行者保護性能との両立を図ることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[第1実施形態]
本発明における車両前部構造の第1の実施形態を図面に基づき説明する。なお、図中の矢印UPは車両の上方向、矢印FRは車両の前方向、矢印INは車両幅方向内側をそれぞれ示す。
【0021】
図1には、本実施形態に係る車両前部構造の全体構成を示す縦断面図が示されている。図1に示されるように、車両前部10の前面部には、フロントバンパ12が配設されている。フロントバンパ12は、略車両幅方向に沿って延在しており、前面部に配置されるフロントバンパカバー13と、フロントバンパカバー13の車両後方側に配設されるフロントバンパリインフォースメント14と、を備えている。フロントバンパリインフォースメント14の長手方向の両端部は、車両前後方向に延在する左右一対のフロントサイドメンバ(図示省略)の前端部に結合されている。
【0022】
フロントバンパカバー13の上方には、空気取入部となるラジエータグリル16が配設されている。フロントバンパ12の車両後方側は、内燃機関であるエンジン(図示省略)が配設されるエンジンルーム18とされ、エンジンルーム18の車両上方側には、エンジンルーム18を開閉可能に覆うフード20が配置されている。
【0023】
フード20は、フード20の車両外側部(閉止状態で上部)を構成するフードアウタパネル21と、フード20の車両内側部(閉止状態で下部)を構成するフードインナパネル22とによって構成されており、フードアウタパネル21の外周縁部21Aとフードインナパネル22の外周縁部22Aとがヘミング加工によって互いに結合されている。
【0024】
フード20の前部におけるフードインナパネル22側には、下方へ突出するストライカ24が取り付けられている。ストライカ24は、ラジエータサポート30におけるラジエータサポートアッパ32に固定されたフードロック26と対向する位置に配設されており、フードロック26に対して係脱可能とされている。また、ラジエータサポートアッパ32の上方には、クールエアインテーク28が配設されており、エアクリーナ(図示省略)等を介してエンジン(図示省略)に接続されている。クールエアインテーク28は、アクセルペダル(図示省略)の踏み込み時における車外冷気(空気)の吸引用とされている。
【0025】
ラジエータサポートアッパ32の下方には、熱交換器36が配設されている。熱交換器36は、それぞれ熱交換器とされる、エンジン冷却用のラジエータ38と、ラジエータ38の車両前方側に間隔を置いて配置されると共にラジエータ38と一体化されたエアコン用のコンデンサ40と、を含んで構成されている。ラジエータ38及びコンデンサ40は、フロントバンパリインフォースメント14の長手方向に沿って配置された薄型構造体であり、正面視(図2参照)で略矩形状を成しており、車両水平面に対して略垂直に立設されている。また、本実施形態における車両は、大容量の冷却性能、冷房性能を必要とする車両であるため、エンジンルーム18には、大型の熱交換器36を搭載している。
【0026】
熱交換器36の車両後方側には、箱体状のファンシュラウド42が取り付けられており、ファンシュラウド42内にファン44が配設されている。ファン44は、駆動回転によって熱交換器36に対して車両後方側への吸引力を作用させるようになっている。熱交換器36(ラジエータ38及びコンデンサ40)、ファンシュラウド42、及びファン44は、一体化(ユニット化)されており、1ユニットとしてラジエータサポート30に取り付けられて支持されるようになっている。
【0027】
図2に示されるように、ラジエータサポート30は正面視で略矩形枠状に構成されており、ラジエータ38(熱交換器36)の上部を支持して車両幅方向を長手方向として配置されるラジエータサポートアッパ32と、ラジエータ38(熱交換器36)の下部を支持して車両幅方向を長手方向として配置されるラジエータサポートロア46と、ラジエータサポートアッパ32の長手方向の両端部とラジエータサポートロア46の長手方向の両端部とを車両上下方向に繋ぐ左右一対のラジエータサポートサイド52と、ラジエータサポートアッパ32の長手方向の端部から車両後方側かつ車両上方側へ斜めに延びてエプロンアッパメンバ(図示省略)の前端部に結合されるラジエータサポートアッパサイド54と、を含んで構成されている。
【0028】
ラジエータサポートアッパ32は、車両正面視で熱交換器36(ラジエータ38、コンデンサ40)の上方に対応する範囲のみが車両下方側へ下げられている。ラジエータサポートアッパ32の端部は、ラジエータサポートアッパサイド54の端部と重ね合わされている。ラジエータサポートアッパサイド54は、車両下方側が開放された断面ハット形状に形成されている(図示省略)。図1に示されるように、フード20から離れてエンジンルーム18内の上部に配置されるラジエータサポートアッパ32も、車両下方側が開放された断面ハット形状に形成されている。ラジエータサポートアッパ32には、ラジエータ38の取付用とされる孔32Aが貫通形成されており、ラジエータ38の上端部38Aに固定されたゴムマウント56が嵌合されるようになっている。
【0029】
エンジンルーム18内の下部に配置されるラジエータサポートロア46は、車両幅方向に延在する閉断面部60を構成してラジエータ38(熱交換器36)の下部を支持し、ラジエータ38(熱交換器36)を支持する支持面48A(取付面)が車両下方へ凹んだ形状となっている。
【0030】
図3及び図4に示されるように、ラジエータサポートロア46は、支持面48Aが形成されると共に車両下方側が開放された断面形状の第1部材としてのラジエータサポートロアアッパメンバ48と、ラジエータサポートロアアッパメンバ48の車両下方側に配置されて車両上方側が開放された断面ハット形状の第2部材としてのラジエータサポートロアリインフォース50と、を備えており、ラジエータサポートロアアッパメンバ48の両端部48B、48Cとラジエータサポートロアリインフォース50の両端部50A、50Bとが重ね合わされた状態で結合されて閉断面部60を構成している。
【0031】
ラジエータサポートロアアッパメンバ48は、その両端部48B、48Cに比べて車両上方側に形成される天板部48Dを備えている。天板部48Dと支持面48Aとは段差を形成しており、支持面48Aは、平面状とされて天板部48Dに比べて車両下方側に形成されている。図4に示されるように、本実施形態では、天板部48Dは、平面視で車両後方向きに開放された略U字状に形成されており、支持面48Aは、車両幅方向の中間部における車両後方側に形成されている。また、支持面48Aは、車両前後方向の前後端部とされる両端部48B、48Cに比べて車両上方側に設けられている。なお、支持面48Aと天板部48Dとの間は、傾斜状の傾斜部48Eによって繋がれている。また、天板部48D、傾斜部48E及び支持面48Aと、車両後方側の端部48Cと、の間は、車両後方へ向けて車両下方側へ傾斜した傾斜部48Fによって繋がれている。
【0032】
支持面48Aの車両上下方向位置は、路面干渉のギリギリの位置まで下げることが可能である。具体的には、支持面48Aを天板部48Dから20mm程度(ラジエータサポートロアリインフォース50から支持面48Aまでの間隔が5mm程度の位置まで)下げることができる。
【0033】
また、支持面48Aの面積は、ラジエータ38を1個分支持する面積よりも広い面積とされており、支持面48Aにおける車両幅方向の両サイド寄りには、車両前後方向にずれた位置に複数の嵌合部としての嵌合孔49が貫通形成されている。図3に示されるように、嵌合孔49は、ラジエータ38(熱交換器36)の下部側、すなわち、下端部38Bに固定されたゴムマウント58が嵌合可能となっている。車両前後方向にずれた位置に複数の嵌合孔49を形成することで、エンジンバリエーションによってラジエータ38の取付位置が異なる複数の車種に対応できるようになっている。
【0034】
なお、図4に示されるように、車両前方側の嵌合孔49と車両後方側の嵌合孔49とは、車両幅方向にも、ずれた位置に形成されている。これにより、取付位置に応じて図3に示されるラジエータ38側のゴムマウント58の位置も変えれば、ラジエータ38の組付誤りを容易に防ぐことが可能となる。
【0035】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果を説明する。
【0036】
図1に示されるように、ラジエータサポートロア46が閉断面部60を構成して熱交換器36の下部を支持し、熱交換器36を支持する支持面48Aが車両下方へ凹んでいるので、ラジエータサポートロア46の剛性を確保しながら、熱交換器36の配置位置を下げることができる。このため、大型の熱交換器36が配置されても、フード20とラジエータサポートアッパ32との間隔、ひいては、フードアウタパネル21とクールエアインテーク28との間隔を確保できるので、フード20に歩行者(頭部インパクタ64)が衝突(二次衝突)した場合には、フード20の変形ストロークL(変形可能なストローク)が確保され、フード20が大きく変形することで、歩行者(頭部インパクタ64)に対する衝突エネルギーも十分に吸収される。
【0037】
すなわち、図3に示されるように、ラジエータサポートロアアッパメンバ48の天板部48Dがラジエータサポートロアアッパメンバ48の両端部48B、48Cに比べて車両上方側に形成されるので、ラジエータサポートロアアッパメンバ48の断面高さHを確保することができ、支持面48Aが天板部48Dに比べて車両下方側に形成されるので、ラジエータサポートロアアッパメンバ48の断面高さHを確保しながら、熱交換器36の配置位置を下げることができ、かつ、図2に示されるように、ラジエータサポートアッパ32は、車両正面視で熱交換器36の上方に対応する範囲が車両下方側へ下げられているので、図1に示されるフード20の変形ストロークLを確保することができ、フード20に歩行者(頭部インパクタ64)が衝突した場合におけるフード20の変形量を確保しやすい。
【0038】
ここで、歩行者が走行中の車両のフロントバンパ12に衝突すると、歩行者は、フード20に二次衝突することがあるが、このとき、フード20は、歩行者から荷重を受け、車両下方側へ変形ストロークLの限度まで大きく変形しながら衝突エネルギーを効果的に吸収していく。
【0039】
このように、本実施形態に係る車両前部構造によれば、ラジエータサポートロア46の断面剛性や耐久強度を確保しながら熱交換器36の配置位置を下げることができるので、大型の熱交換器36を配置してもフード20の変形ストロークLを確保でき、冷却性能と歩行者保護性能との両立が可能になる。
【0040】
補足すると、冷却性能、冷房性能を向上させるためには、大型(大容量)の熱交換器36(ラジエータ38及びコンデンサ40)をエンジンルーム18に配置する必要があるが、フード20の意匠的な制約によって、エンジンルーム18の絶対的スペースが小さい場合には、大型の熱交換器36をそのままエンジンルーム18に配置したのでは、フード20の変形ストロークL(フード20とラジエータサポート30等との間の歩行者保護必要ストローク長)を確保できない。ここで、ラジエータサポートロア46は、車両としての性能を満足するために、具体的には、路面干渉の観点から、所定位置より車両下方側へは下げられないという制約があるので、ラジエータサポートロア46全体を車両下方側へ下げることはできない。従って、ラジエータサポートロア46全体を車両下方側へ下げることによって、フード20の変形ストロークLを確保するという構成は採用することができない。また、同様に車両としての性能を満足するために、車両前部10(フロントボデー)におけるラジエータサポートロア46(シェル、ラジエータサポート30回り)は、所定の剛性や耐久強度を確保しなければならず、ラジエータサポートロアアッパメンバ48の断面高さH(図3参照)を低くすることもできない。従って、ラジエータサポートロアアッパメンバ48の断面高さH(図3参照)を低くすることによって、フード20の変形ストロークLを確保するという構成も採用することができない。さらに、フード20の変形ストロークLを確保するために、熱交換器36(ラジエータ38及びコンデンサ40)を小型化すると、冷却性能、冷房性能がレベルダウンすることになる。しかし、本実施形態に係る車両前部構造(ラジエータサポート構造)によれば、冷却性能と歩行者保護性能との両立を図ることができる。
【0041】
また、図3に示される支持面48Aには、熱交換器36の下部側とされるゴムマウント58が嵌合可能な複数の嵌合孔49が車両前後方向にずれた位置に貫通形成されているので(図4参照)、熱交換器36の取付位置が車両前後方向に異なる複数の車種に適用しても、ラジエータサポートロア46の剛性を確保しながら、熱交換器36の配置位置を下げることができる。
【0042】
[第2実施形態]
次に、車両前部構造の第2の実施形態を図5に基づき説明する。なお、第2の実施形態は、ラジエータサポートロアアッパメンバ48における支持面48Aの車両上下方向位置(高さ位置)が特徴であり、他の構成については、第1の実施形態とほぼ同様の構成であるので、実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
図5に示されるように、ラジエータサポートロアアッパメンバ48は、車両後方側の端部48Cから車両前方へ向けて車両下方側へ傾斜した傾斜部48Gを備えており、支持面48Aが傾斜部48Gの下端部から水平方向に延びている。これにより、車両後方側の端部48Cと支持面48Aとは段差を形成し、支持面48Aは、ラジエータサポートロアアッパメンバ48の両端部48B、48Cに比べて車両下方側に形成されている。このような構成によれば、ラジエータサポートロア46の断面高さH(断面剛性)を保ちながら熱交換器36の配置位置を大幅に下げることができる。
【0044】
[実施形態の補足説明]
なお、上記実施形態では、図2に示されるように、ラジエータサポートアッパ32は、車両正面視で熱交換器36の上方に対応する範囲のみが車両下方側へ下げられているが、例えば、ラジエータサポートアッパを車両正面視で水平方向に(直線状に)延在させる構成にし、フードの変形時には、ラジエータサポートアッパにおける熱交換器の上方に対応する範囲が車両下方側へ変形してラジエータサポートアッパがフードと共に衝突エネルギーを吸収するようにしてもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、図3等に示されるように、ラジエータサポートロア46がラジエータサポートロアアッパメンバ48とラジエータサポートロアリインフォース50とが結合されて閉断面部60を構成しているが、ラジエータサポートロア46は、一部材により閉断面部を構成してもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、ラジエータサポートロア46がラジエータサポートロアアッパメンバ48とラジエータサポートロアリインフォース50とが上下に重ね合わされた状態で結合されているが、ラジエータサポートロアは、例えば、二部材が車両前後方向に重ね合わされた状態で結合される等のように、他の形態で複数部材が結合されたものであってもよい。
【0047】
さらに、上記実施形態では、図1に示されるように、ラジエータ38とコンデンサ40とが一体化されて、ラジエータサポートロア46及びラジエータサポートアッパ32に支持されているが、熱交換器としてのラジエータ38と熱交換器としてのコンデンサ40とがそれぞれ別個にラジエータサポートロア46及びラジエータサポートアッパ32に支持されてもよい。
【0048】
さらにまた、上記実施形態では、支持面48Aには、熱交換器36の下部側が嵌合可能な複数の嵌合孔49が車両前後方向にずれた位置に貫通形成されているが、例えば、支持面には、熱交換器の下部側が嵌合可能な複数の嵌合凹部(嵌合部)が車両前後方向にずれた位置に形成されてもよい。
【0049】
なお、上記実施形態では、ラジエータサポートロアアッパメンバ48における車両後方側の端部48Cとラジエータサポートロアリインフォース50における車両後方側の端部50Bとの接合部の車両上下方向位置(高さ位置)と、ラジエータサポートロアアッパメンバ48における車両前方側の端部48Bとラジエータサポートロアリインフォース50における車両前方側の端部50Aとの接合部の車両上下方向位置(高さ位置)とは、等しい車両上下方向位置に図示されており、支持面48Aは、これらの車両上下方向位置に比べて車両上方側又は車両下方側に形成されているが、いずれか一方の接合部の車両上下方向位置を他方の接合部の車両上下方向位置に比べて車両上方側に設定してもよく、また、支持面48Aの車両上下方向位置をいずれか一方の接合部の車両上下方向位置と等しく設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両前部構造の全体構成を示す縦断面である。
【図2】図1の2−2線断面に相当する断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態におけるラジエータサポートロアを示す拡大断面図である(図4の3−3線断面に相当する。)。
【図4】本発明の第1の実施形態におけるラジエータサポートロアを示す斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態におけるラジエータサポートロアを示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0051】
18 エンジンルーム
20 フード
32 ラジエータサポートアッパ
36 熱交換器
46 ラジエータサポートロア
48 ラジエータサポートロアアッパメンバ(第1部材)
48A 支持面
48B、48C ラジエータサポートロアアッパメンバの両端部(第1部材の両端部)
48D 天板部
49 嵌合孔(嵌合部)
50 ラジエータサポートロアリインフォース(第2部材)
50A、50B ラジエータサポートロアリインフォースの両端部(第2部材の両端部)
60 閉断面部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームを覆うフードと、
前記フードから離れて前記エンジンルーム内の上部で車両幅方向を長手方向として配置され、熱交換器の上部を支持するラジエータサポートアッパと、
前記エンジンルーム内の下部に配置され、車両幅方向に延在する閉断面部を構成して前記熱交換器の下部を支持し、前記熱交換器を支持する支持面が車両下方へ凹むラジエータサポートロアと、
を有することを特徴とする車両前部構造。
【請求項2】
前記ラジエータサポートアッパは、車両正面視で前記熱交換器の上方に対応する範囲が車両下方側へ下げられていることを特徴とする請求項1記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記ラジエータサポートロアは、前記支持面が形成された第1部材と、前記第1部材の車両下方側に配置された第2部材と、を備え、前記第1部材の両端部と前記第2部材の両端部とが結合されて前記閉断面部を構成しており、
前記第1部材が、該第1部材の両端部に比べて車両上方側に形成される天板部を備え、前記支持面が、前記天板部に比べて車両下方側に形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両前部構造。
【請求項4】
前記支持面が、前記第1部材の両端部に比べて車両下方側に形成されることを特徴とする請求項3記載の車両前部構造。
【請求項5】
前記支持面には、前記熱交換器の下部側が嵌合可能な複数の嵌合部が車両前後方向にずれた位置に形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両前部構造。
【請求項1】
エンジンルームを覆うフードと、
前記フードから離れて前記エンジンルーム内の上部で車両幅方向を長手方向として配置され、熱交換器の上部を支持するラジエータサポートアッパと、
前記エンジンルーム内の下部に配置され、車両幅方向に延在する閉断面部を構成して前記熱交換器の下部を支持し、前記熱交換器を支持する支持面が車両下方へ凹むラジエータサポートロアと、
を有することを特徴とする車両前部構造。
【請求項2】
前記ラジエータサポートアッパは、車両正面視で前記熱交換器の上方に対応する範囲が車両下方側へ下げられていることを特徴とする請求項1記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記ラジエータサポートロアは、前記支持面が形成された第1部材と、前記第1部材の車両下方側に配置された第2部材と、を備え、前記第1部材の両端部と前記第2部材の両端部とが結合されて前記閉断面部を構成しており、
前記第1部材が、該第1部材の両端部に比べて車両上方側に形成される天板部を備え、前記支持面が、前記天板部に比べて車両下方側に形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両前部構造。
【請求項4】
前記支持面が、前記第1部材の両端部に比べて車両下方側に形成されることを特徴とする請求項3記載の車両前部構造。
【請求項5】
前記支持面には、前記熱交換器の下部側が嵌合可能な複数の嵌合部が車両前後方向にずれた位置に形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両前部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2007−331440(P2007−331440A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162610(P2006−162610)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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