説明

車両前部構造

【課題】車両の前面衝突によるダクトの後退初期はダクトの破損が生じず、ダクトの後退途中でダクトをエネルギー吸収部材として利用できる車両前部構造を得る。
【解決手段】車両幅方向に沿って配置されたバンパアブソーバ20の上方に上部ダクト22が、バンパアブソーバ20の下方に下部ダクト24が設けられている。上部ダクト22は、車両前後方向に沿って配置された縦壁部22A、22Bの車両前後方向の途中に屈曲部34Bを備えている。下部ダクト24も同様に縦壁部24A、24Bの車両前後方向の途中に屈曲部34Bを備えている。車両の前面衝突による上部ダクト22及び下部ダクト24の後退初期は、上部ダクト22及び下部ダクト24はラジエータサポート縦壁28に当接せず、上部ダクト22及び下部ダクト24の後退途中で屈曲部34Bがラジエータサポート縦壁28の前端部28Aに当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、発泡樹脂製のバンパアブソーバの上部にエンジンからの熱風の回り込みを抑制する仕切り板部からなるダクトを備えたフロントバンパ構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−42783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の構造では、ダクトの後端がバンパリインフォースの前端に当接しているため、軽衝突時においてもダクトの破損が生じる可能性がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、車両の前面衝突によるダクトの後退初期はダクトの破損が生じず、ダクトの後退途中でダクトをエネルギー吸収部材として利用することができる車両前部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る車両前部構造は、車両前部においてバンパリインフォースの前側に配置されると共に、車両幅方向に沿って延在されるバンパアブソーバと、前記バンパアブソーバの上方及び下方の少なくとも一方に設けられ、前記バンパアブソーバの車両後方側に配設されたエンジンからの熱風の回り込みを抑制する縦壁部を備えたダクトと、前記ダクトの車両後方側に配設され、冷却系部品を支持するラジエータサポートと、前記縦壁部の車両前後方向の途中に車両幅方向及び車両上下方向に沿って設けられ、車両の前面衝突による前記ダクトの後退途中に前記ラジエータサポートの前端部と当接する当接部と、を有するものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1記載の車両前部構造において、車両平面視にて前記ラジエータサポートの前端部と前記当接部との車両前後方向の間隔が、前記バンパアブソーバの車両前後方向の長さと等しく構成されているものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両前部構造において、前記縦壁部は車両前後方向に沿って配置されており、前記当接部は、前記縦壁部の車両前後方向の途中で車両幅方向に屈曲された屈曲部であるものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載の車両前部構造において、前記屈曲部の車両前方に前記屈曲部を補強するリブが設けられているものである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車両前部構造において、前記縦壁部は、前記バンパアブソーバの車両幅方向両端部に設けられており、前記ダクトは、前記縦壁部同士を繋ぐと共に車両幅方向及び車両前後方向に沿って配置された横壁部を備えるものである。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の車両前部構造において、前記縦壁部の後端部と前記ラジエータサポートの前端部とが車両幅方向にラップして配置されているものである。
【0012】
請求項1記載の本発明によれば、車両前部のバンパリインフォースの前側に車両幅方向に沿ってバンパアブソーバが延在されており、バンパアブソーバの上方及び下方の少なくとも一方に、バンパアブソーバの車両後方側に配設されたエンジンからの熱風の回り込みを抑制する縦壁部を備えたダクトが設けられている。ダクトの車両後方側には、冷却系部品を支持するラジエータサポートが配設されている。ダクトの縦壁部の車両前後方向の途中には、車両の前面衝突によるダクトの後退途中にラジエータサポートの前端部と当接する当接部が車両幅方向及び車両上下方向に沿って設けられている。これによって、車両の前面衝突によるダクトの後退初期は、ダクトとラジエータサポートは当接せず、荷重伝達がないため、ダクトの破損が生じない。ダクトの後退途中で縦壁部の当接部がラジエータサポートの前端部と当接することで、ダクトからラジエータサポートに荷重が伝達され、ダクトをエネルギー吸収部材として利用することができる。
【0013】
請求項2記載の本発明によれば、車両平面視にてラジエータサポートの前端部と縦壁部の当接部との車両前後方向の間隔が、バンパアブソーバの車両前後方向の長さと等しく構成されており、バンパアブソーバが潰れる程度の低速衝突時には、ダクトの縦壁部がラジエータサポートの前端部に当接せず、ダクトの破損を阻止することができる。
【0014】
請求項3記載の本発明によれば、ダクトは、車両前後方向に沿って配置された縦壁部の車両前後方向の途中で車両幅方向に屈曲された当接部としての屈曲部を備えており、車両の前面衝突によるダクトの後退初期は、ダクトの屈曲部とラジエータサポートの前端部は当接せず、ダクトの破損を阻止することができる。また、ダクトの後退途中でダクトの屈曲部がラジエータサポートの前端部と当接し、ダクトをエネルギー吸収部材として利用することができる。
【0015】
請求項4記載の本発明によれば、ダクトの屈曲部の車両前方に屈曲部を補強するリブが設けられており、ダクトの屈曲部がラジエータサポートの前端部に当接した後にリブが潰れることで、高速衝突時にのみ効果的にエネルギーを吸収することができる。
【0016】
請求項5記載の本発明によれば、ダクトは、バンパアブソーバの車両幅方向両端部に設けられた縦壁部同士を繋ぐと共に、車両幅方向及び車両前後方向に沿って配置された横壁部を備えており、縦壁部同士を繋ぐ横壁部によりダクトの強度が増し、ダクトのエネルギー吸収効率を向上することができる。
【0017】
請求項6記載の本発明によれば、ダクトを構成する縦壁部の後端部とラジエータサポートの前端部とが車両幅方向にラップして配置されており、ダクトの後端部とラジエータサポートの前端部との間から風が抜けることが抑制される。このため、車両後方側のエンジンからの熱風の回り込みをより効果的に抑制することができると共に、車両前方側から冷却系部品へ効率的に冷風を取り込むことができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、請求項1記載の本発明に係る車両前部構造は、車両の前面衝突によるダクトの後退初期にはダクトの破損が生じず、ダクトの後退途中でダクトをエネルギー吸収部材として利用することができるという優れた効果を有する。
【0019】
請求項2記載の本発明に係る車両前部構造は、バンパアブソーバが潰れる程度の低速衝突時に、ダクトの破損を阻止することができるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項3記載の本発明に係る車両前部構造は、簡易な構成により、ダクトの後退初期にはダクトの破損が生じず、ダクトの後退途中でダクトをエネルギー吸収部材として利用することができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項4記載の本発明に係る車両前部構造は、リブが潰れることで、高速衝突時にのみ効果的にエネルギーを吸収することができるという優れた効果を有する。
【0022】
請求項5記載の本発明に係る車両前部構造は、ダクトのエネルギー吸収効率を向上することができるという優れた効果を有する。
【0023】
請求項6記載の本発明に係る車両前部構造は、車両後方側のエンジンからの熱風の回り込みをより効果的に抑制することができると共に、車両前方側から冷却系部品へ効率的に冷風を取り込むことができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態に係る車両前部構造が適用された車両の前部を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る車両前部構造の全体構成を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る車両前部構造の全体構成を示す平面図である。
【図4】(A)は図3に対応する車両前部構造の車両幅方向端部付近を示す平面図であり、(B)は車両の前面衝突によるダクトの後退途中の車両前部構造の車両幅方向端部付近を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1〜図4を用いて、本発明に係る車両前部構造の一実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0026】
図1には、本実施形態に係る車両前部構造が適用された車両の前部が斜視図にて示されている。図2には、本実施形態に係る車両前部構造の全体構成が斜視図にて示されており、図3には、この車両前部構造の全体構成が平面図にて示されている。図1及び図3に示されるように、自動車の車両10の前部11の両サイドには、車両前後方向に沿って延在する車両骨格部材としてのフロントサイドメンバ12が配設されている。フロントサイドメンバ12の車両前方には、補強板14、15を介して衝撃吸収部材としてのクラッシュボックス16が設けられている。クラッシュボックス16の車両前方側には、車両幅方向に沿って延在するフロントバンパリインフォースメント18が配設されている。
【0027】
フロントバンパリインフォースメント18は、車両側面視にて断面「口、日、目」の字状等に形成された金属製のバンパ骨格部材である。フロントバンパリインフォースメント18は、車両幅方向中央部が車両幅方向両端部よりも車両前方側に突出するように屈曲した形状とされている。
【0028】
フロントバンパリインフォースメント18の車両前方側には、車両幅方向に沿って延在するエネルギー吸収部材(緩衝部材)としてのバンパアブソーバ20が設けられている。バンパアブソーバ20は、車両側面視にて断面が略矩形状に形成されており、ウレタンフォーム等の発泡性の樹脂材料によって形成されている。バンパアブソーバ20の後面部は、フロントバンパリインフォースメント18の前面部に面接触状態で配置されており、図示しないクリップ等の取付具によりバンパアブソーバ20がフロントバンパリインフォースメント18に固定されている。衝突体がバンパアブソーバ20に衝突すると、バンパアブソーバ20が車両前後方向(バンパアブソーバ20の厚さ方向)に潰れて衝撃エネルギーを吸収するようになっている。なお、バンパアブソーバ20は、必ずしも発泡性を有している必要はなく、例えば、車両後方側に開口した略U字状の樹脂部材により形成してもよい。
【0029】
図1〜図3に示されるように、バンパアブソーバ20の上面部20A及びフロントバンパリインフォースメント18の上面部18Aには、車両正面視にて略コ字状の板材で形成されたダクトとしての上部ダクト22が設けられている。バンパアブソーバ20の下面部20B及びフロントバンパリインフォースメント18の下面部18Bには、車両正面視にて上部ダクト22とは逆向きの略コ字状の板材で形成されたダクトとしての下部ダクト24が設けられている。上部ダクト22と下部ダクト24は、バンパアブソーバ20及びフロントバンパリインフォースメント18に、例えばクリップ等の取付具によって取り付けられている。
【0030】
フロントバンパリインフォースメント18の車両後方側には、両サイドのフロントサイドメンバ12の間に車両上下方向及び車両幅方向に沿って延在する枠状のラジエータサポート26が配設されている。ラジエータサポート26は、フロントサイドメンバ12の車両幅方向内側に車両上下方向に沿って配置された左右一対のラジエータサポート縦壁28と、左右一対のラジエータサポート縦壁28の上端同士と下端同士をそれぞれ繋ぐように車両幅方向に沿って配置された上下一対のラジエータサポート横壁30と、を備えている。ラジエータサポート縦壁28は、フロントサイドメンバ12又はクラッシュボックス16に図示しないブラケットにより固定されている。
【0031】
ラジエータサポート26を構成する左右一対のラジエータサポート縦壁28と上下一対のラジエータサポート横壁30との内側には、冷却系部品32が固定支持されている。冷却系部品32は、例えば、ラジエータ、エアコンコンデンサー、またはこれらを一体化したものである。なお、バンパアブソーバ20の車両前方側には、バンパアブソーバ20と上部ダクト22と下部ダクト24を車両前方から覆うバンパーカバー(図示省略)が設けられている。
【0032】
図2に示されるように、上部ダクト22は、バンパアブソーバ20の上面部20A及びフロントバンパリインフォースメント18の上面部18Aから車両上方側に延びた左右一対の縦壁部22A、22Bと、これらの縦壁部22A、22Bの上端同士を繋ぐように車両幅方向及び車両前後方向に沿って配置された横壁部22Cと、を備えている。この上部ダクト22は樹脂製である。図2及び図3に示されるように、左右一対の縦壁部22A、22Bは、バンパアブソーバ20の上面部20A及びフロントバンパリインフォースメント18の上面部18Aの車両幅方向両端部に略車両前後方向に沿って配置されている。それぞれの縦壁部22A、22Bは、車両前側に車両上下方向に沿って配置された前壁部34Aと、車両前後方向の途中(中間部)で前壁部34Aの後端から車両幅方向外側に屈曲された屈曲部(当接部)34Bと、屈曲部34Bの外側端部から車両後側に車両上下方向に沿って配置された後壁部34Cと、を備えている。
【0033】
横壁部22Cは、車両前側に車両幅方向に沿って配置された前壁部36Aと、車両前後方向の中間部で前壁部36Aの後端から車両上方側に屈曲された屈曲部36Bと、屈曲部36Bの上端部から車両後側に車両幅方向に沿って配置された後壁部36Cと、を備えている。車両幅方向両側の前壁部34Aと前壁部36A、車両幅方向両側の屈曲部34Bと屈曲部36B、車両幅方向両側の後壁部34Cと後壁部36Cはそれぞれ連続して形成されている。
【0034】
縦壁部22A、22Bにおける屈曲部34Bの前方の前壁部34Aの外側面には、屈曲部34Bを補強する複数のリブ38が車両前後方向に沿って設けられている。本実施形態では、前壁部34Aの上下に2つのリブ38が設けられている。
【0035】
縦壁部22A、22Bに形成された屈曲部34Bは、車両幅方向及び車両上下方向に沿って設けられており、車両の前面衝突による上部ダクト22の後退途中でラジエータサポート縦壁28の前端部28Aと当接するようになっている。
【0036】
下部ダクト24は、上部ダクト22とほぼ上下対称に形成されており、バンパアブソーバ20の下面部20B及びフロントバンパリインフォースメント18の下面部18Bから車両下方側に延びた左右一対の縦壁部24A、24Bと、これらの縦壁部24A、24Bの下端同士を繋ぐように車両幅方向及び車両前後方向に沿って配置された横壁部24Cと、を備えている。この下部ダクト24は樹脂製である。それぞれの縦壁部24A、24Bは、上部ダクト22と同様に、車両前側に車両上下方向に沿って配置された前壁部34Aと、車両前後方向の途中(中間部)で前壁部34Aの後端から車両幅方向外側に屈曲された屈曲部(当接部)34Bと、屈曲部34Bの外側端部から車両後側に車両上下方向に沿って配置された後壁部34Cと、を備えている。
【0037】
横壁部24Cは、上部ダクト22の横壁部22Cと上下対称に形成されており、車両前側に車両幅方向に沿って配置された前壁部36Aと、車両前後方向の中間部で前壁部36Aの後端から車両下方側に屈曲された屈曲部36Bと、屈曲部36Bの下端部から車両前後方向及び車両幅方向に沿って配置された後壁部36Cと、を備えている。
【0038】
縦壁部24A、24Bにおける屈曲部34Bの前方の前壁部34Aの外側面には、屈曲部34Bを補強する複数(本実施形態では2つ)のリブ38が車両前後方向に沿って設けられている。
【0039】
縦壁部24A、24Bに形成された屈曲部34Bは、車両幅方向及び車両上下方向に沿って設けられており、車両の前面衝突による下部ダクト24の後退途中にラジエータサポート縦壁28の前端部28Aと当接するようになっている。
【0040】
また、車両正面視にて上部ダクト22の縦壁部22A、22Bと下部ダクト24の縦壁部24A、24Bとは、車両幅方向のほぼ同じ位置に設けられているが、車両幅方向にずれた位置(車両幅方向の異なる位置)に設けてもよい。
【0041】
ラジエータサポート26を構成する左右一対のラジエータサポート縦壁28は、車両平面視にて左右対称とされ、車両幅方向外側に開口された断面ハット状に形成されている。ラジエータサポート縦壁28の前端部28Aは、上部ダクト22における縦壁部22A、22Bの後端(後壁部34Cの後端)及び下部ダクト24における縦壁部24A、24Bの後端(後壁部34Cの後端)の車両幅方向内側に配置されている。すなわち、車両平面視にてラジエータサポート縦壁28の前端部28Aと、縦壁部22A、22Bの後端及び縦壁部24A、24Bの後端とが車両幅方向にラップするように配置されている(図3中のラップ長さCを参照)。ラジエータサポート縦壁28の前端部28Aと、縦壁部22A、22Bの後端及び縦壁部24A、24Bの後端との間には、シート状のスポンジ40が介在されて前端部28Aと縦壁部22A、22Bの後端及び縦壁部24A、24Bの後端とに接着されている(図3参照)。ラジエータサポート縦壁28の前端部28Aと、縦壁部22A、22Bの後端及び縦壁部24A、24Bの後端とは、締結具等で連結されていない。
【0042】
図3に示されるように、車両平面視にてラジエータサポート縦壁28の前端部28Aと、上部ダクト22における縦壁部22A、22Bの屈曲部34B(下部ダクト24における縦壁部24A、24Bの屈曲部34B)との車両前後方向の間隔Aは、バンパアブソーバ20の車両前後方向の長さBと等しくなるように構成されている。
【0043】
図1等に示されるように、バンパアブソーバ20の上面部20A及びフロントバンパリインフォースメント18の上面部18Aに車両正面視にて略コ字状の上部ダクト22と、バンパアブソーバ20の下面部20B及びフロントバンパリインフォースメント18の下面部18Bに車両正面視にて略コ字状の下部ダクト24とをそれぞれ設けることにより、車両10の前方側から上部ダクト22及び下部ダクト24に沿って冷却系部品32へ効率的に冷風を取り込むようになっている。その際、ラジエータサポート縦壁28の前端部28Aと、縦壁部22A、22Bの後端及び縦壁部24A、24Bの後端とがラップするように配置されることで、車両前後方向に沿った横壁となるため、ラジエータサポート縦壁28の前端部28Aと縦壁部22A、22Bの後端及び縦壁部24A、24Bの後端との間から風が抜けるのが阻止されるようになっている。
【0044】
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0045】
図3及び図4(A)に示されるように、上部ダクト22の縦壁部22A、22Bと下部ダクト24の縦壁部24A、24Bの車両前後方向の途中(中間部)に、後壁部34Cから車両幅方向内側に屈曲された屈曲部34Bが形成されている。これによって、車両等の構造体50(バリア:図4(B)を参照)が車両10の前部11に衝突したとき、上部ダクト22及び下部ダクト24の後退初期は、上部ダクト22及び下部ダクト24はラジエータサポート縦壁28に当接せず、荷重伝達がないため、上部ダクト22及び下部ダクト24の破損が生じない。本実施形態では、車両平面視にて上部ダクト22及び下部ダクト24の屈曲部34Bがラジエータサポート縦壁28との間隔Aだけ車両後方側に移動する間は、ラジエータサポート縦壁28の前端部28Aに当接しない。
【0046】
そして、図4(B)に示されるように、車両10の前面衝突による上部ダクト22及び下部ダクト24の後退途中で、上部ダクト22及び下部ダクト24の屈曲部34Bがラジエータサポート縦壁28の前端部28Aに当接する。これによって、上部ダクト22及び下部ダクト24からラジエータサポート縦壁28に荷重が伝達され、上部ダクト22及び下部ダクト24をエネルギー吸収部材として利用することができる。すなわち、車両10の前面衝突時に上部ダクト22及び下部ダクト24をエネルギー吸収に使用することで車両保護性能を向上させることができる。
【0047】
また、図4(A)、(B)に示されるように、車両平面視にてラジエータサポート縦壁28の前端部28Aと上部ダクト22及び下部ダクト24の屈曲部34Bとの車両前後方向の間隔Aが、バンパアブソーバ20の車両前後方向の長さBと等しくなるように構成されており、バンパアブソーバ20が潰れる程度の低速衝突時には、上部ダクト22及び下部ダクト24の屈曲部34Bがラジエータサポート縦壁28の前端部28Aに当接せず、上部ダクト22及び下部ダクト24の破損を阻止することができる。
【0048】
上部ダクト22及び下部ダクト24の屈曲部34Bの車両前方に屈曲部34Bを補強する複数のリブ38が設けられており、屈曲部34Bがラジエータサポート縦壁28の前端部28Aに当接した後にリブ38が潰れることで、高速衝突時にのみ効果的に衝撃エネルギーを吸収することができる。
【0049】
上部ダクト22は、バンパアブソーバ20の車両幅方向両端部に設けられた縦壁部22A、22Bの上端同士を繋ぐ横壁部22Cを備えており、下部ダクト24は、バンパアブソーバ20の車両幅方向両端部に設けられた縦壁部24A、24Bの下端同士を繋ぐ横壁部24Cを備えている。すなわち、バンパアブソーバ20の上下の縦壁部22A、22Bと横壁部22C、縦壁部24A、24Bと横壁部24Cとで箱形状とされることで、上部ダクト22と下部ダクト24の強度が増し、上部ダクト22と下部ダクト24のエネルギー吸収効率を向上することができる。
【0050】
ラジエータサポート縦壁28の前端部28Aと、上部ダクト22の縦壁部22A、22Bの後端及び下部ダクト24の縦壁部24A、24Bの後端とがラップするように配置されており、ラジエータサポート縦壁28の前端部28Aと縦壁部22A、22Bの後端及び縦壁部24A、24Bの後端との間から風が抜けるのを防止することができ、車両前方側から冷却系部品32へ効率的に冷風を取り込むことができる。
【0051】
なお、上述した実施形態では、バンパアブソーバ20の上下に上部ダクト22と下部ダクト24が設けられているが、これに限定されず、上部ダクト22と下部ダクト24のどちらか一方を設ける構成としてもよい。
【0052】
また、上述した実施形態では、上部ダクト22の縦壁部22A、22Bと下部ダクト24の縦壁部24A、24Bは、バンパアブソーバ20の長手方向と直交する方向(車両前後方向)に設けられているが、これに限定されず、上部ダクト22の縦壁部22A、22Bと下部ダクト24の縦壁部24A、24Bをバンパアブソーバ20の長手方向と交差する方向に設けてもよい。
【0053】
また、上述した実施形態では、上部ダクト22の縦壁部22A、22Bと下部ダクト24の縦壁部24A、24Bにそれぞれ屈曲部34Bを設け、屈曲部34Bが後退途中でラジエータサポート縦壁28の前端部28Aに当接する構成であるが、これに限定されず、上部ダクト22の縦壁部と下部ダクト24の縦壁部が後退途中でラジエータサポート縦壁28に当接する構成であれば、他の構成でもよい。例えば、上部ダクト22の縦壁部と下部ダクト24の縦壁部をバンパアブソーバ20の長手方向と交差する方向に設け、上部ダクト22の縦壁部と下部ダクト24の縦壁部が後退途中でラジエータサポート縦壁28に当接する構成でもよい。
【0054】
さらに、上述した実施形態では、上部ダクト22の縦壁部22A、22Bと下部ダクト24の縦壁部24A、24Bは、バンパアブソーバ20の長手方向両端部に設けられているが、これに限定されず、他の位置に設けてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 車両
11 前部
18 フロントバンパリインフォースメント(バンパリインフォース)
20 バンパアブソーバ
22 上部ダクト(ダクト)
22A、22B 縦壁部
22C 横壁部
24 下部ダクト(ダクト)
24A、24B 縦壁部
24C 横壁部
26 ラジエータサポート
28 ラジエータサポート縦壁
28A 前端部
32 冷却系部品
34B 屈曲部(当接部)
38 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部においてバンパリインフォースの前側に配置されると共に、車両幅方向に沿って延在されるバンパアブソーバと、
前記バンパアブソーバの上方及び下方の少なくとも一方に設けられ、前記バンパアブソーバの車両後方側に配設されたエンジンからの熱風の回り込みを抑制する縦壁部を備えたダクトと、
前記ダクトの車両後方側に配設され、冷却系部品を支持するラジエータサポートと、
前記縦壁部の車両前後方向の途中に車両幅方向及び車両上下方向に沿って設けられ、車両の前面衝突による前記ダクトの後退途中に前記ラジエータサポートの前端部と当接する当接部と、
を有する車両前部構造。
【請求項2】
車両平面視にて前記ラジエータサポートの前端部と前記当接部との車両前後方向の間隔が、前記バンパアブソーバの車両前後方向の長さと等しく構成されている請求項1に記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記縦壁部は車両前後方向に沿って配置されており、
前記当接部は、前記縦壁部の車両前後方向の途中で車両幅方向に屈曲された屈曲部である請求項1又は請求項2に記載の車両前部構造。
【請求項4】
前記屈曲部の車両前方に前記屈曲部を補強するリブが設けられている請求項3に記載の車両前部構造。
【請求項5】
前記縦壁部は、前記バンパアブソーバの車両幅方向両端部に設けられており、
前記ダクトは、前記縦壁部同士を繋ぐと共に車両幅方向及び車両前後方向に沿って配置された横壁部を備える請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の車両前部構造。
【請求項6】
前記縦壁部の後端部と前記ラジエータサポートの前端部とが車両幅方向にラップして配置されている請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の車両前部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−126350(P2012−126350A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281943(P2010−281943)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】