説明

車両前部構造

【課題】コスト及び質量の増加を抑制しつつ、高速走行時におけるエンジンルームの通気抵抗を低減できるようにする。
【解決手段】車両前部14において車両外側と車両内側とに連通する開口部12からエンジンルーム16内に外気を取り入れ、該外気によりエンジンルーム16内の冷却ユニット18を冷却する。この開口部12の車両内側の圧力は、高速走行時に、該開口部12の車両外側に対して相対的に上昇するので、エンジンルーム内に流入する外気の風量が抑制される。加えて、冷却ユニット18に取り付けられた電動ファン10の回転速度を車速に応じて変化させることにより、開口部12からエンジンルーム16内に流入する風量をより細やかに制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のフード前端部上面に通気口を形成すると共に、該通気口を開閉するシャッターと該シャッターを閉状態に保持するロック機構とを設け、通気口に対面したラジエータをエンジンルーム内に設け、シャッターを閉状態に保持するロック機構を車両走行時に解除すると、フード前端部上面に生ずる空気流の負圧力によりシャッターが開状態となり、ラジエータを通過した冷却風が通気口から排気されるようにした構造が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭61−37540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両の走行抵抗に占める空気抵抗の割合は、高速走行時に大きくなるため、燃費向上のためには空気抵抗の低減が不可欠である。空気抵抗の1つであるエンジンルームの通気抵抗の大きさは、該エンジンルームへ流入する外気の風量に依存する。従って、通気抵抗の低減のためには、エンジンルームへ流入する外気の風量を低減することが必要となる。
【0005】
一方、エンジンルーム内を冷却するために必要とされる風量は、低速走行かつ高負荷時の条件を考慮して決められることが多く、高速走行時にはエンジンルーム内に流入する外気の風量が過剰となる傾向がある。
【0006】
高速走行時の余剰風量を低減させる手段として、例えば上記した従来例に記載されているようなグリルシャッターがあるが、シャッターという可動部品を制御するためにECUやモータを搭載することとなり、高コスト及び質量増にならざるを得ない。具体的には、シャッターが可動部品であるため、故障を考慮した対策が必要になり、コスト増となる。またシャッターを作動させるモータを搭載するために質量増となる。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して、コスト及び質量の増加を抑制しつつ、高速走行時におけるエンジンルームの通気抵抗を低減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、エンジンルーム内の冷却ユニットに取り付けられ、回転速度を車速に応じて変化させることが可能に構成され、高速走行時には該回転速度が下げられる電動ファンと、車両外側と車両内側とに連通し、前記冷却ユニットを冷却するための外気を前記エンジンルーム内に取入れ可能に構成され、車両前部のうち高速走行時に前記車両内側の圧力が前記車両外側に対して相対的に上昇する部位に設けられた開口部と、を有している。
【0009】
請求項1に記載の車両前部構造では、車両前部において車両外側と車両内側とに連通する開口部からエンジンルーム内に外気を取り入れ、該外気によりエンジンルーム内の冷却ユニットを冷却することができる。この開口部の車両内側の圧力は、高速走行時に、該開口部の車両外側に対して相対的に上昇するので、エンジンルーム内に流入する外気の風量が抑制される。
【0010】
加えて、冷却ユニットに取り付けられた電動ファンの回転速度を車速に応じて変化させ、高速走行時には該回転速度を下げることにより、開口部からエンジンルーム内に流入する風量をより細やかに制御することができる。
【0011】
このように、当該車両前部構造によれば、開口部の位置を工夫することで、コスト及び質量の増加を抑制しつつ、高速走行時におけるエンジンルームの通気抵抗を低減することができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両前部構造において、前記開口部、又は該開口部より車両内側で前記冷却ユニットの車両前方に設けられ、高速走行時に該冷却ユニットに向かう前記外気の流れを規制する壁部を有している。
【0013】
請求項2に記載の車両前部構造では、開口部、又は該開口部より車両内側で冷却ユニットの車両前方に設けられた壁部が、該開口部からエンジンルーム内に流入し冷却ユニットに向かう外気の流れを規制する。低速走行時には、開口部からエンジンルーム内に流入した外気により冷却ユニットを冷却することができる。一方、高速走行時に、外気の流れが壁部により大きく規制され、開口部の車両内側の圧力は、車両外側に対して相対的に上昇する。これにより、高速走行時に開口部からエンジンルーム内に流入する外気の風量を抑制して、該エンジンルームの通気抵抗を低減することができる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2に記載の車両前部構造において、前記壁部は、高速走行時に前記外気の流れを妨げて前記開口部の前記車両内側の圧力を上昇させるように構成されている。
【0015】
請求項3に記載の車両前部構造では、開口部より車両内側で冷却ユニットの車両前方に設けられた壁部が、高速走行時に、該冷却ユニットに向かう外気の流れを妨げる。従って、高速走行時に、開口部の車両内側の圧力が、車両外側に対して相対的に上昇する。これにより、高速走行時にエンジンルーム内に流入する外気の風量を抑制して、該エンジンルームの通気抵抗を低減することができる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項3に記載の車両前部構造において、前記壁部は、バンパリインフォースメント又は該バンパリインフォースメントの前面側に配置される部材である。
【0017】
請求項4に記載の車両前部構造では、壁部としてのバンパリインフォースメント又は該バンパリインフォースメントの前面側に配置される部材が、開口部からエンジンルーム内に流入し冷却ユニットに向かう外気の流れを規制する。このため、壁部を設けるために新たな部品を追加することなく、コスト及び質量の増加を抑制しつつ、高速走行時におけるエンジンルームの通気抵抗を低減することができる。
【0018】
請求項5の発明は、請求項2に記載の車両前部構造において、前記開口部は、高速走行時に負圧が生じる少なくとも前記エンジンルームの下側に設けられ、前記壁部は、車両側面視で車両後方側の斜め下方へ延び、高速走行時に、前記冷却ユニットに向かう前記外気の少なくとも一部を、該開口部へ向けて偏向させるデフレクタである。
【0019】
請求項5に記載の車両前部構造では、低速走行時に、少なくともエンジンルームの下側に設けられた開口部からエンジンルーム内に流入した外気により、冷却ユニットを冷却することができる。一方、高速走行時には、車両側面視で車両後方側の斜め下方へ延びる、壁部としてのデフレクタが、冷却ユニットに向かう外気の少なくとも一部を、エンジンルームの下側の開口部へ向けて偏向させる。この開口部には、高速走行時に負圧が生じる。このため、デフレクタにより車両下方へ偏向した外気を、エンジンルームの下側を流れる床下流れと円滑に合流させて、車両後方へ流すことができる。
【0020】
請求項6の発明は、請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の車両前部構造において、前記開口部が、高速走行時に負圧が生じるエンジンフードの車両前方部に設けられている。
【0021】
請求項6に記載の車両前部構造では、低速走行時に、エンジンフードの車両前方部に設けられた開口部からエンジンルーム内に流入した外気により、冷却ユニットを冷却することができる。この開口部には、高速走行時に負圧が生じるので、開口部の車両内側の圧力が車両外側に対して相対的に上昇する。このため、エンジンルーム内に流入する外気の風量を抑制して、該エンジンルームの通気抵抗を低減することができる。
【0022】
請求項7の発明は、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の車両前部構造において、前記開口部が、高速走行時に負圧が生じる車両側部に設けられている。
【0023】
請求項7に記載の車両前部構造では、低速走行時に、車両側部に設けられた開口部からエンジンルーム内に流入した外気により、冷却ユニットを冷却することができる。この開口部には、高速走行時に負圧が生じるので、開口部の車両内側の圧力が車両外側に対して相対的に上昇する。このため、エンジンルーム内に流入する外気の風量を抑制して、該エンジンルームの通気抵抗を低減することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車両前部構造によれば、コスト及び質量の増加を抑制しつつ、高速走行時におけるエンジンルームの通気抵抗を低減することができる、という優れた効果が得られる。
【0025】
請求項2に記載の車両前部構造によれば、高速走行時にエンジンルーム内に流入する外気の風量を抑制して、該エンジンルームの通気抵抗を低減することができる、という優れた効果が得られる。
【0026】
請求項3に記載の車両前部構造によれば、高速走行時にエンジンルーム内に流入する外気の風量を抑制して、該エンジンルームの通気抵抗を低減することができる、という優れた効果が得られる。
【0027】
請求項4に記載の車両前部構造によれば、壁部を設けるために新たな部品を追加することなく、コスト及び質量の増加を抑制しつつ、高速走行時におけるエンジンルームの通気抵抗を低減することができる、という優れた効果が得られる。
【0028】
請求項5に記載の車両前部構造によれば、デフレクタにより車両下方へ偏向した外気を、エンジンルームの下側を流れる床下流れと円滑に合流させて、車両後方へ流すことができる、という優れた効果が得られる。
【0029】
請求項6に記載の車両前部構造によれば、エンジンルーム内に流入する外気の風量を抑制して、該エンジンルームの通気抵抗を低減することができる、という優れた効果が得られる。
【0030】
請求項7に記載の車両前部構造によれば、エンジンルーム内に流入する外気の風量を抑制して、該エンジンルームの通気抵抗を低減することができる、という優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1及び図2は、第1実施形態に係り、図1(A)は、低速走行時において、開口部からエンジンルーム内に外気が流入している状態を示す断面図である。図1(B)は、高速走行時において、開口部からエンジンルーム内に流入する外気の風量が抑制されている状態を示す断面図である。
【図2】車速と冷却ユニット通過風量との関係を示す線図である。
【図3】図3及び図4は、第2実施形態に係り、図3(A)は、低速走行時において、開口部からエンジンルーム内に外気が流入している状態を示す断面図である。図3(B)は、高速走行時において、開口部からエンジンルーム内に流入する外気の風量が抑制されている状態を示す断面図である。
【図4】図4は、車両平面視において、高速走行時の車両前部の圧力分布を示す模式図である。
【図5】図5及び図6は、第3実施形態に係り、図5(A)は、低速走行時において、開口部からエンジンルーム内に外気が流入している状態を示す断面図である。図5(B)は、高速走行時において、開口部からエンジンルーム内に流入する外気の風量が抑制されている状態を示す断面図である。
【図6】車両側面視において、高速走行時の車両前部の圧力分布を示す断面図である。
【図7】第4実施形態に係り、(A)は低速走行時において、開口部からエンジンルーム内に外気が流入している状態を示す断面図である。(B)は、高速走行時において、下部グリルから流入した外気の一部が、デフレクタにより開口部側に偏向して、該開口部からエンジンルームの床下に流出している状態を示す断面図である。
【図8】図8及び図9は、第5実施形態に係り、図8(A)は、低速走行時において、開口部からエンジンルーム内に外気が流入している状態を示す断面図である。図8(B)は、高速走行時において、開口部からエンジンルーム内に流入する外気の風量が、ガイドにより抑制されている状態を示す断面図である。
【図9】(A)低速走行時において、開口部からエンジンルーム内に外気が流入している状態を示す断面図である。(B)高速走行時において、上側の開口部のガイドに沿って流れる外気が、該ガイドの突起において剥離することで、該開口部からエンジンルーム内に流入する外気の風量が抑制されている状態を示す断面図である。
【図10】第6実施形態に係り、(A)は、低速走行時において、開口部からエンジンルーム内に外気が流入している状態を示す断面図である。(B)は、高速走行時において、開口部からエンジンルーム内に流入する外気の風量が、壁部により抑制されている状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。
【0033】
[第1実施形態]
図1(A)において、本実施形態に係る車両前部構造S1は、電動ファン10と、開口部12とを有している。
【0034】
電動ファン10は、エンジンルーム16内の冷却ユニット18に取り付けられ、回転速度を車速に応じて変化させることが可能に構成されている。この電動ファン10は、冷却ユニット18の大きさに対応したファンシュラウド20と共に、冷却ユニット18の例えば後面側に配設されている。冷却ユニット18とは、ラジエータコアや空調装置のコンデンサ等の熱交換器である。
【0035】
また電動ファン10は、制御装置(図示せず)により、車速センサ(図示せず)により検出される車速に応じて変化させることが可能に構成され、高速走行時には該回転速度が下げられるようになっている。これにより、低速走行時には、例えば電動ファン10の回転速度を大きくして、冷却ユニット18を通過する風量を十分に確保することができ、また高速走行時には、電動ファン10の回転速度を小さくして、冷却ユニット18を通過する風量を抑制できるようになっている。なお、低速走行時とは、例えば40km/h以下での走行時を意味し、高速走行時とは、例えば80km/h以上での走行時を意味する。40km/hと60km/hの間は中速域である。
【0036】
エンジンルーム16における冷却ユニット18や電動ファン10の車両後方には、パワーユニット(図示せず)が搭載されており、該パワーユニットの車両下側には、例えばアンダカバー48が設けられている。
【0037】
開口部12は、車両外側と車両内側とに連通しており、冷却ユニット18を冷却するための外気をエンジンルーム16内に取入れ可能に構成されている。この開口部12は、車両前部14のうち高速走行時に車両内側の圧力が車両外側に対して相対的に上昇する部位、例えばバンパカバー24におけるバンパリインフォースメント22の車両前方に、少なくとも1箇所設けられている。
【0038】
ここで、「車両内側の圧力が車両外側に対して相対的に上昇する」とは、車両外側及び車両内側の双方が正圧であるものの、車両内側の圧力の上昇率の方が車両外側よりも大きい場合、又は車両内側が正圧となり車両外側が負圧となる場合をいう。
【0039】
バンパリインフォースメント22は、開口部12より車両内側で冷却ユニット18の車両前方に設けられ、車幅方向に延びている。このバンパリインフォースメント22は、高速走行時に、冷却ユニット18に向かう外気の流れを規制する壁部の一例であり、該外気の流れを妨げて開口部12の車両内側の圧力を上昇させるように構成されている。なお、高速走行時に冷却ユニット18に向かう外気の流れを規制する壁部は、バンパリインフォースメント22に限られず、該バンパリインフォースメント22の前面側に配置される衝撃吸収材等の部材(図示せず)であってもよい。
【0040】
バンパリインフォースメント22と開口部12を有するバンパカバー24との間には、所定の間隙26が確保されている。開口部12からエンジンルーム16内に流入した外気は、バンパリインフォースメント22に当たって上下に分岐し、該間隙26を通って冷却ユニット18に向かうようになっている。
【0041】
開口部12の車両上方には、エンジンフード32の前縁に沿った上部グリル34が設けられている。この上部グリル34は、高速走行時に負圧が生じる部位となっている。冷却ユニット18の上端の車両前方側には、上部グリル34から流入した外気を冷却ユニット18へ導くための上壁部28が設けられている。この上壁部28は、例えばダクトの一部である。加えて、冷却ユニット18の下端の車両前方側には、開口部12から流入した外気を冷却ユニット18へ導くための下壁部30が設けられている。
【0042】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図1(A)において、本実施形態に係る車両前部構造S1では、低速走行時には、車両前部14において車両外側と車両内側とに連通する開口部12からエンジンルーム16内に外気を取り入れ、該外気によりエンジンルーム16内の冷却ユニット18を冷却することができる。このとき、開口部12からエンジンルーム16内に流入した外気の進行方向は、バンパリインフォースメント22によって上下に分岐するように規制される。これにより、該外気は、バンパカバー24との間の間隙26を通って矢印A方向及び矢印B方向に流れる。
【0043】
バンパリインフォースメント22の上方(矢印A方向)へ流れた外気は、上部グリル34から、エンジンルーム16内に矢印C方向に流入した外気と共に、上壁部28によって冷却ユニット18へ安定して導かれる。一方、バンパリインフォースメント22の下方(矢印B方向)へ流れた外気は、下壁部30によって冷却ユニット18へ安定して導かれる。開口部12及び上部グリル34からエンジンルーム16内に流入した外気が、冷却ユニット18を通過することで、該冷却ユニット18が冷却される。
【0044】
一方、図1(B)において、開口部12の車両内側の圧力は、高速走行時に、該開口部12の車両外側に対して相対的に上昇する。具体的には、開口部12より車両内側で冷却ユニット18の車両前方に設けられたバンパリインフォースメント22が、該開口部12からエンジンルーム16内に流入し冷却ユニット18に向かう外気の流れを妨げる。これにより、開口部12の車両内側の圧力が、車両外側に対して相対的に上昇する。この結果、開口部12からエンジンルーム16内に外気が流入し難くなるため、外気の多くはエンジンフード32に沿って矢印D方向に流れると共に、アンダカバー48に沿って矢印E方向に流れて行く。即ち、開口部12からエンジンルーム16に流入する外気の風量が、高速走行時に伴う車両内外の圧力変化によって減少する。
【0045】
また高速走行時に、エンジンフード32に沿って矢印D方向に流れる外気により、上部グリル34付近に負圧が生じるため、該上部グリル34からエンジンルーム16内への外気の流入は抑制される。従って、本実施形態では、高速走行時に、開口部12や上部グリル34からエンジンルーム16内に流入する外気の風量を抑制して、エンジンルーム16の通気抵抗を低減することができる。
【0046】
加えて、冷却ユニット18に取り付けられた電動ファン10の回転速度を車速に応じて変化させることにより、開口部12からエンジンルーム16内に流入する風量をより細やかに制御することができる。例えば、低速走行時には、電動ファン10の回転速度を大きくして、冷却ユニット18を通過する風量を十分に確保することができ、また高速走行時には、電動ファン10の回転速度を小さくして、冷却ユニット18を通過する風量を抑制することができる。
【0047】
ここで、車速と冷却ユニット通過風量との関係を示す図2の線図を用いて、本実施形態の効果を説明する。図2における実線L1は、開口部の位置を工夫していない比較例において、電動ファン10を最大の速度で回転させた場合を示している。また図2における破線L2,L3の間の領域は、本実施形態の場合を示している。本図に示されるように、本実施形態の構成によって、比較例よりも冷却ユニット18の通過風量を抑制可能であることがわかる。
【0048】
なお、図2における下側の破線L2は、電動ファン10を停止させた場合を示し、上側の破線L2は、電動ファン10を最大の速度で回転させた場合を示している。また冷却ユニット18の必要通過風量は、該破線L2,L3の間の領域内にある。即ち、本実施形態では、電動ファン10の回転速度を車速に応じて制御することで、車速と冷却ユニット通過風量との関係を、破線L2,L3の間の領域内で適切に設定することができる。
【0049】
このように、当該車両前部構造によれば、開口部12の位置を工夫することで、新たな部品を追加することなく、即ちコスト及び質量の増加を抑制しつつ、高速走行時におけるエンジンルーム16の通気抵抗を低減することができる。またこれによって、車両の空気抵抗を減少させて、燃費を向上させることができる。
【0050】
なお、高速走行時に、開口部12や上部グリル34からエンジンルーム16内に流入する外気の風量が抑制されるが、少なくとも冷却ユニット18の冷却に必要な風量は確保されている。
【0051】
[第2実施形態]
図3(A)において、本実施形態に係る車両前部構造S2では、開口部12が、車両前部14のうち高速走行時に負圧が生じる車両側部に、例えば左右一対設けられている。車両平面視におけるバンパカバー24の左右の角部には、例えば車両内側を中心とした湾曲部24Aが夫々設けられており、該湾曲部24Aに開口部12が夫々設けられている。即ち、高速走行時に負圧が生じる車両側部とは、例えば該湾曲部24Aである。
【0052】
冷却ユニット18は、開口部12よりも車両後方に位置しており、該開口部12からエンジンルーム16内に流入した外気を冷却ユニット18へ導くために、壁部36が設けられている。この壁部36は、開口部12の車両後方側の端部から冷却ユニット18の車幅方向外側端部へ延びている。
【0053】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0054】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図3(A)において、本実施形態に係る車両前部構造S2では、低速走行時には、外気が、車両前部14の左右の湾曲部24Aに設けられ車両外側と車両内側とに連通する開口部12からエンジンルーム16内に、夫々矢印A方向に流入する。この外気は、壁部36により冷却ユニット18へ導かれる。そしてこの外気が、冷却ユニット18を通過することで、該冷却ユニット18が冷却される。開口部12に流入しなかった外気は、車両前部14の左右に矢印F方向に流れて行く。
【0055】
一方、図3(B)に示されるように、高速走行時に、矢印F方向に流れる外気の流速が増加するため、図4に示されるように、開口部12には負圧38が生じる。図4では、車両外側に向かう圧力分布が負圧38を示し、車両内側に向かう圧力分布が正圧40を示している。車両前部14の中央部の正圧40は、一般に車両前部14の例えばバンパカバー24に設けられる中央グリル42を通じて、外気が車両内側に流入することを想定したものである。
【0056】
開口部12に負圧38が生じることで、開口部12の車両内側の圧力は、車両外側に対して相対的に上昇する。この結果、図3(B)に示されるように、開口部12からエンジンルーム16内に外気が流入し難くなるため、外気の多くは車両前部14の左右(矢印F方向)に流れて行く。このため、エンジンルーム16内に流入する外気の風量を抑制して、該エンジンルーム16の通気抵抗を低減することができる。
【0057】
なお、高速走行時に、開口部12からエンジンルーム16内に流入する外気の風量が抑制されるが、少なくとも冷却ユニット18の冷却に必要な風量は確保されている。
【0058】
電動ファン10の回転速度の制御については、第1実施形態と同様である。
【0059】
[第3実施形態]
図5(A)において、本実施形態に係る車両前部構造S3では、開口部12が、高速走行時に負圧が生じるエンジンフード32の車両前方部に設けられている。この開口部12は、エンジンフード32の前縁に沿った上部グリル34(第1実施形態)と同様のもの、又はエンジンフード32に設けた外気取入れ口である。
【0060】
バンパカバー24において、開口部12の車両下方かつバンパリインフォースメント22より車両下方には、下部グリル44が設けられている。冷却ユニット18の下端の車両前方側には、該下部グリル44からエンジンルーム16内に流入した外気を冷却ユニット18へ導くための下壁部30が設けられている。この下壁部30は、例えばダクトの一部であり、バンパカバー24又は冷却ユニット18の支持部材(図示せず)等に取り付けられている。
【0061】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0062】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図5(A)において、本実施形態に係る車両前部構造S3では、低速走行時には、外気が、エンジンフード32の車両前方部に設けられた開口部12からエンジンルーム16内に矢印A方向に流入する。この外気は、上壁部28により冷却ユニット18へ導かれる。
【0063】
また外気は、バンパカバー24の下部グリル44からも、エンジンルーム16内に矢印B方向に流入する。この外気は、下壁部30によって冷却ユニット18へ安定して導かれる。開口部12及び下部グリル44からエンジンルーム16内に流入した外気が、夫々冷却ユニット18を通過することで、該冷却ユニット18が冷却される。開口部12付近を通ったもののエンジンルーム16内に流入しなかった外気は、エンジンフード32に沿って矢印D方向に流れて行く。
【0064】
一方、図5(B)に示されるように、高速走行時に、エンジンフード32に沿って矢印D方向に流れる外気の流速が増加するため、図6に示されるように、開口部12には負圧38が生じる。図6では、車両外側に向かう圧力分布が負圧38を示し、車両内側に向かう圧力分布が正圧40を示している。バンパカバー24の部分の正圧40は、下部グリル44の他、一般に車両前部14に設けられるグリル(図示せず)を通じて、外気が車両内側に流入することを想定したものである。下部グリル44の車両下側の負圧38は、外気がエンジンルーム16の床下(アンダカバー48の車両下側)を流れることにより生ずる。
【0065】
開口部12に負圧38が生じることで、開口部12の車両内側の圧力は、車両外側に対して相対的に上昇する。この結果、図5(B)に示されるように、開口部12からエンジンルーム16内に外気が流入し難くなるため、外気の多くはエンジンフード32に沿って矢印D方向に流れて行く。下部グリル44からエンジンルーム16内に流入する外気の量は、高速走行時に増加するものの、下部グリル44付近に生ずる負圧38(図6)により、その増加を抑制することが可能である。このため、エンジンルーム16内に流入する外気の風量を抑制して、該エンジンルーム16の通気抵抗を低減することができる。
【0066】
なお、高速走行時に、開口部12や下部グリル44からエンジンルーム16内に流入する外気の風量が抑制されるが、少なくとも冷却ユニット18の冷却に必要な風量は確保されている。
【0067】
電動ファン10の回転速度の制御については、第1実施形態と同様である。
【0068】
[第4実施形態]
図7(A)において、本実施形態に係る車両前部構造S4では、開口部12が、高速走行時に負圧が生じるエンジンルーム16の下側に設けられている。この開口部12は、エンジンルーム16の下側における冷却ユニット18よりも車両前方側に設けられている。なお、開口部12は、バンパカバー24の一部に設けられていてもよいし、またバンパカバー24と、該バンパカバー24より車両後方の部材(例えばアンダカバー48)との間の隙間であってもよい。
【0069】
車両前部構造S4は、高速走行時に冷却ユニット18に向かう外気の流れを規制する壁部としてのデフレクタ46を有している。このデフレクタ46は、例えば開口部12の後端において、車両側面視で車両後方側の斜め下方へ延びており、高速走行時に、冷却ユニット18に向かう外気の少なくとも一部を、開口部12へ向けて偏向させることができるようになっている。デフレクタ46は、バンパカバー24、ダクトである下壁部30、又は冷却ユニット18の支持部材(図示せず)等に取り付けられている。
【0070】
デフレクタ46の車両前方のバンパカバー24には、第3実施形態と同様の下部グリル44が設けられている。デフレクタ46は、下部グリル44の開口領域の車両後方に設けられ、かつ車両正面視で該開口領域の一部と重なっている。具体的には、デフレクタ46の上端の高さが、下部グリル44の上端の高さと下端の高さの間に設定されている。下部グリル44の開口領域とデフレクタ46との車両上下方向の重なり量はLである。またデフレクタ46は、車両正面視で冷却ユニット18の一部と重なっている。これにより、例えば高速走行時に下部グリル44からエンジンルーム16内に入り込もうとした砂利等の異物(図示せず)をデフレクタ46で跳ね返し、該異物が冷却ユニット18に当たることを抑制できるようになっている。なお、デフレクタ46は、下部グリル44の車両後方において、車幅方向の全体にわたって設けられていてもよいし、また車幅方向の一部に設けられていてもよい。
【0071】
他の部分については、第1実施形態又は第3実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0072】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図7(A)において、本実施形態に係る車両前部構造S4では、低速走行時には、エンジンルーム16の下側に設けられた開口部12から該エンジンルーム16内に矢印F方向に外気を取り入れ、下部グリル44から矢印B方向に外気を取り入れ、更に上部グリル34から矢印C方向に外気を取り入れ、これらの外気により、エンジンルーム16内の冷却ユニット18を冷却することができる。上部グリル34付近を通ったもののエンジンルーム16内に流入しなかった外気は、エンジンフード32に沿って矢印D方向に流れて行く。
【0073】
一方、図7(B)に示されるように、高速走行時に、エンジンルーム16の床下(アンダカバー48の車両下側)を流れる外気、及びエンジンフード32に沿って矢印D方向に流れる外気の流速が増加するため、開口部12及び上部グリル34には夫々負圧が生じる。
【0074】
開口部12に負圧38が生じることで、開口部12の車両内側の圧力は、車両外側に対して相対的に上昇する。この結果、図7(B)に示されるように、開口部12からエンジンルーム16内に外気が流入し難くなる。従って、エンジンルーム16の下部には、主に下部グリル44から外気が流入するようになる。しかしながら、この外気の少なくとも一部は、壁部としてのデフレクタ46によって開口部12へ向けて偏向し、かつ開口部12には負圧が生じているので、下部グリル44からエンジンルーム16内に流入した外気は、その一部が矢印B方向に流れて冷却ユニット18に至り、残りの大部分は開口部12を通じてエンジンルーム16の床下(アンダカバー48の車両下側)に矢印E方向に流出し、床下流れと円滑に合流して車両後方へ流れて行く。これにより、下部グリル44から流入し冷却ユニット18に至る外気の風量が抑制される。
【0075】
また高速走行時に、エンジンフード32に沿って矢印D方向に流れる外気により、上部グリル34付近に負圧が生じるため、該上部グリル34からエンジンルーム16内への外気の流入は抑制される。このため、エンジンルーム16の通気抵抗を低減することができる。
【0076】
これに加えて、デフレクタ46は、下部グリル44の開口領域の車両後方に設けられ、かつ車両正面視で該開口領域の一部及び冷却ユニット18の一部と重なっているので、例えば高速走行時に下部グリル44からエンジンルーム16内に入り込もうとした砂利等の異物(図示せず)をデフレクタ46で跳ね返すことができる。これにより、異物が冷却ユニット18に当たることを抑制して、該冷却ユニット18を保護することができる。またデフレクタ46により冷却ユニット18を保護することで、バンパカバー24の意匠の自由度を増加させることができる。
【0077】
なお、車速の増加に、開口部12や下部グリル44からエンジンルーム16内に流入する外気の風量が抑制されるが、少なくとも冷却ユニット18の冷却に必要な風量は確保されている。
【0078】
電動ファン10の回転速度の制御については、第1実施形態と同様である。
【0079】
[第5実施形態]
図8(A)において、本実施形態に係る車両前部構造S5では、上側の開口部12に、高速走行時に、冷却ユニット18に向かう外気の流れを規制する壁部の一例たるガイド50が設けられている。この開口部12は、第1実施形態における上部グリル34に対応している。また下側の開口部13にも、壁部の一例たるガイド52が設けられている。この開口部13は、第3実施形態及び第4実施形態における下部グリル44に対応している。
【0080】
ガイド50,52は、例えば共にバンパカバー24の前面の意匠面に沿って一体成形されている。ガイド50は、開口部12の下端から、該開口部12の開口領域を狭めるように、車両上側に延びて終端している。またガイド52は、開口部13の上端から、該開口部13の開口領域を狭めるように、車両下側に延びて終端している。このようにガイド50,52が延びる方向を規定したのは、高速走行時には、車両側面視での外気の流れが、開口部12付近では車両上側(図8(B)の矢印D方向)に向かい、開口部13付近では車両下側(図8(B)の矢印E方向)に向かうことを考慮したものである。
【0081】
ガイド50,52の寸法は、車両の冷却ユニット18を適切に冷却するのに必要な風量を考慮して設定される。従って、必要風量が少ない場合には、ガイド50,52の寸法が大きく設定され、必要風量が多い場合には、ガイド50,52の寸法が小さく設定される。
【0082】
図9(A)に示されるように、ガイド50の上端に、車両外側に凸となる突起50Aを設け、ガイド50に沿って流れる外気に剥離を促すようにしてもよい。突起50Aの寸法は、車両の冷却ユニット18を適切に冷却するのに必要な風量を考慮して設定される。従って、必要風量が少ない場合には、車両前方への突起50Aの突出量や車幅方向長さが大きく設定され、必要風量が多い場合には、これらの寸法が小さく設定される。図示は省略するが、下側の開口部13に対応するガイド52の下端にも、同様の突起を設けてもよい。
【0083】
他の部分については、第1実施形態、第3実施形態又は第4実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0084】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図8(A)において、本実施形態に係る車両前部構造S5では、低速走行時には、上側の開口部12から矢印A方向に外気を取り入れると共に、下側の開口部13から矢印B方向に外気を取り入れ、これらの外気により、エンジンルーム16内の冷却ユニット18を冷却することができる。この点は、ガイド50に突起50Aが設けられている例でも同様である(図9(A))。
【0085】
一方、図8(B)に示されるように、車速が増加すると、上側の開口部12のガイド50に沿って流れる外気の慣性が増加するため、該外気の一部は開口部12からエンジンルーム16内に矢印A方向に流入するものの、該外気の多くは開口部12に流入せずに、エンジンフード32に沿って矢印D方向に流れて行く。これに伴い、開口部12付近に負圧が生じることで、開口部12の車両内側の圧力は、車両外側に対して相対的に上昇する。この結果、外気が、開口部12からエンジンルーム16内に流入し難くなる。
【0086】
図9(B)において、ガイド50に突起50Aが設けられている例では、外気の流れが該突起50Aを乗り越えることで、ガイド50からの剥離が促される。このため、外気が、開口部12からエンジンルーム16内に、より一層流入し難くなる。またこれによって、ガイド50を小さくすることができる。
【0087】
またこのとき、下側の開口部13のガイド52に沿って流れる外気の慣性が増加するため、該外気の一部は開口部13からエンジンルーム16内に矢印B方向に流入するものの、該外気の多くは開口部13に流入せずに、エンジンルーム16の床下(アンダカバー48の車両下側)に矢印E方向に流れて行く。これに伴い、開口部13付近に負圧が生じることで、開口部13の車両内側の圧力は、車両外側に対して相対的に上昇する。この結果、開口部13からエンジンルーム16内に外気が流入し難くなる。
【0088】
このようにして、本実施形態に係る車両前部構造S5では、外気の慣性により、開口部12,13からエンジンルーム16内に流入する外気の風量を抑制して、エンジンルーム16の通気抵抗を低減することができる。
【0089】
なお、高速走行時に、開口部12,13からエンジンルーム16内に流入する外気の風量が抑制されるが、少なくとも冷却ユニット18の冷却に必要な風量は確保されている。
【0090】
電動ファン10の回転速度の制御については、第1実施形態と同様である。
【0091】
[第6実施形態]
図10(A)において、本実施形態に係る車両前部構造S6では、車両下側の開口部13より車両後方側で冷却ユニット18の車両前方側に、高速走行時に冷却ユニット18に向かう外気の流れを規制する壁部の一例としてのデフレクタ54が設けられている。
【0092】
このデフレクタ54は、例えば開口部13に対応するダクトの下壁部30から車両上方に立設され、車両正面視で該開口部13の開口領域と一部重なっている。具体的には、デフレクタ54の上端の高さが、開口部13の上端の高さと下端の高さの間に設定されている。これにより、例えば高速走行時に開口部13からエンジンルーム16内に入り込もうとした砂利等の異物(図示せず)をデフレクタ54で跳ね返し、該異物が冷却ユニット18に当たることを抑制できるようになっている。なお、デフレクタ54は、開口部13の車両後方において、車幅方向の全体にわたって設けられていてもよいし、また車幅方向の一部に設けられていてもよい。
【0093】
他の部分については、第1実施形態、第3実施形態、第4実施形態又は第5実施形態と同様であるので、同一の部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0094】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図10(A)において、本実施形態に係る車両前部構造S6では、低速走行時には、上側の開口部12から矢印A方向に外気を取り入れると共に、下側の開口部13から矢印B方向に外気を取り入れ、これらの外気により、エンジンルーム16内の冷却ユニット18を冷却することができる。
【0095】
このとき、下側の開口部13からエンジンルーム16内に流入した外気は、デフレクタ54によって車両上方側に偏向して流れ、冷却ユニット18に至る。冷却ユニット18の中央部の前方にはバンパリインフォースメント22が設けられているが、開口部13から流入した外気をデフレクタ54により車両上方側に偏向させることで、冷却ユニット18の中央部を通過する外気の風量を増加させ、該冷却ユニット18における風速分布を均一化させ、該冷却ユニット18の放熱効率を高めることができる。
【0096】
一方、図10(B)に示されるように、車速が増加すると、上側の開口部12付近の外気の一部は該開口部12からエンジンルーム16内に矢印A方向に流入するものの、該外気の多くは開口部12に流入せずに、エンジンフード32に沿って矢印D方向に流れて行く。これに伴い、開口部12付近に負圧が生じることで、開口部12の車両内側の圧力は、車両外側に対して相対的に上昇する。この結果、外気が、開口部12からエンジンルーム16内に流入し難くなる。
【0097】
またこのとき、下側の開口部13から外気の一部が、開口部13からエンジンルーム16内に矢印B方向に流入するが、この外気の流れはデフレクタ54により妨げられ、車両上方に偏向して冷却ユニット18に至る。これに伴い、開口部13の車両内側の圧力が、車両外側に対して相対的に上昇し、該開口部13からエンジンルーム16内に外気が流入し難くなる。従って、開口部13付近の外気の多くは、該開口部13に流入せずに、エンジンルーム16の床下(アンダカバー48の車両下側)に矢印E方向に流れる。
【0098】
従って、本実施形態では、高速走行時に、開口部12,13からエンジンルーム16内に流入する外気の風量を抑制して、エンジンルーム16の通気抵抗を低減することができる。
【0099】
これに加えて、デフレクタ54は、開口部13の開口領域の車両後方に設けられ、かつ車両正面視で該開口領域と一部重なっているので、例えば高速走行時に開口部13からエンジンルーム16内に入り込もうとした砂利等の異物(図示せず)をデフレクタ54で跳ね返すことができる。これにより、異物が冷却ユニット18に当たることを抑制して、該冷却ユニット18を保護することができる。またデフレクタ54により冷却ユニット18を保護することで、バンパカバー24の意匠の自由度を増加させることができる。
【0100】
なお、高速走行時に、開口部12,13からエンジンルーム16内に流入する外気の風量が抑制されるが、少なくとも冷却ユニット18の冷却に必要な風量は確保されている。
【0101】
電動ファン10の回転速度の制御については、第1実施形態と同様である。
【0102】
(他の実施形態)
上記各実施形態において、開口部12,13の配置例を記載したが、開口部12,13の配置箇所は、当該配置例に限られるものではなく、車両前部14のうち高速走行時に車両内側の圧力が車両外側に対して相対的に上昇する部位であればよい。
【0103】
また上記各実施形態において、高速走行時に冷却ユニット18に向かう外気の流れを規制する壁部として、バンパリインフォースメント22(第1実施形態)、デフレクタ46(第4実施形態)、ガイド50,52(第5実施形態)、デフレクタ54(第6実施形態)を挙げたが、壁部はこれらに限られない。
【0104】
各実施形態は、単独で用いられるものに限られず、複数の実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0105】
10 電動ファン
12 開口部
13 開口部
14 車両前部
16 エンジンルーム
18 冷却ユニット
22 バンパリインフォースメント
32 エンジンフード
38 負圧
46 デフレクタ
54 デフレクタ
S1 車両前部構造
S2 車両前部構造
S3 車両前部構造
S4 車両前部構造
S5 車両前部構造
S6 車両前部構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルーム内の冷却ユニットに取り付けられ、回転速度を車速に応じて変化させることが可能に構成され、高速走行時には該回転速度が下げられる電動ファンと、
車両外側と車両内側とに連通し、前記冷却ユニットを冷却するための外気を前記エンジンルーム内に取入れ可能に構成され、車両前部のうち高速走行時に前記車両内側の圧力が前記車両外側に対して相対的に上昇する部位に設けられた開口部と、
を有する車両前部構造。
【請求項2】
前記開口部、又は該開口部より車両内側で前記冷却ユニットの車両前方に設けられ、高速走行時に該冷却ユニットに向かう前記外気の流れを規制する壁部を有する請求項1に記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記壁部は、高速走行時に前記外気の流れを妨げて前記開口部の前記車両内側の圧力を上昇させるように構成されている請求項2に記載の車両前部構造。
【請求項4】
前記壁部は、バンパリインフォースメント又は該バンパリインフォースメントの前面側に配置される部材である請求項3に記載の車両前部構造。
【請求項5】
前記開口部は、高速走行時に負圧が生じる少なくとも前記エンジンルームの下側に設けられ、
前記壁部は、車両側面視で車両後方側の斜め下方へ延び、高速走行時に、前記冷却ユニットに向かう前記外気の少なくとも一部を、該開口部へ向けて偏向させるデフレクタである請求項2に記載の車両前部構造。
【請求項6】
前記開口部が、高速走行時に負圧が生じるエンジンフードの車両前方部に設けられている請求項1〜請求項5の何れか1項に記載の車両前部構造。
【請求項7】
前記開口部が、高速走行時に負圧が生じる車両側部に設けられている請求項1〜請求項6の何れか1項に記載の車両前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−192908(P2012−192908A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60321(P2011−60321)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】