説明

車両前部構造

【課題】ステアリングギヤ機構の後方に配置された熱交換器に導かれる空気流量の偏りを抑制することができる車両前部構造を得る。
【解決手段】車両前部構造10は、車幅方向に延在されたステアリングギヤ機構20に対する車両後方に配置された冷却ユニット34と、少なくとも一部がステアリングギヤ機構20のハウジング20Hに設けられ、車両前方からの空気流を冷却ユニット34における正面視でステアリングギヤ機構20に覆われる部分に導く導風構造50と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングギヤ機構の後方に熱交換器が配置された車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両下向きの開口部からのラジエータへの走行風の流入、該開口部への走行風の流出を促進させるガイドを設けた構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−347309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、熱交換器の前方に車両の構成部品が配置される構成においては、熱交換器の各部への空気流量を均一化するとの観点で改善の余地がある。
【0005】
均等に冷却風を導くことが望まれる。
【0006】
本発明は、ステアリングギヤ機構の後方に配置された熱交換器に導かれる空気流量の偏りを抑制することができる車両前部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明に係る車両前部構造は、車幅方向に延在されたステアリングギヤ機構に対する車両後方に配置された熱交換器と、少なくとも一部が前記ステアリングギヤ機構のハウジングに設けられ、車両前方からの空気流を前記熱交換器における正面視で前記ステアリングギヤ機構に覆われる部分に導く導風構造と、を備えている。
【0008】
請求項1記載の車両前部構造では、例えば走行風やファンの作動等によって前方から熱交換器に向かう空気流が生成されると、該空気流の一部はステアリングギヤ機構に至る。この空気流は、ステアリングギヤ機構のハウジングに設けられた導風構造によって、熱交換器における正面視でステアリングギヤ機構に覆われた部分(ハウジング背後部分)に導かれる。すなわち、ステアリングギヤ機構のハウジングに導風構造が設けられていない構成と比較して、熱交換器におけるハウジング背後部分に多くの空気流が導かれる。
【0009】
このように、請求項1記載の車両前部構造では、ステアリングギヤ機構の後方に配置された熱交換器に導かれる空気流量の偏りを抑制することができる。
【0010】
請求項2記載の発明に係る車両前部構造は、請求項1記載の車両前部構造において、前記導風構造は、前記空気流に車両下方から上方に向かう速度成分を付与するように形成された翼形状部を含んで構成されている。
【0011】
請求項2記載の車両前部構造では、ステアリングギヤ機構のハウジングに形成された翼形状部によって、前方から後方に向かう空気流に上向きの速度成分が付与される。これにより、後方に向かう空気流は、ステアリングギヤ機構のハウジングを下方から回り込むようにして、熱交換器におけるハウジング背後部分に効率的に導かれる。
【0012】
請求項3記載の発明に係る車両前部構造は、請求項2記載の車両前部構造において、前記導風構造は、前記翼形状部の下方で車幅方向に沿って配置され、車両前方からの空気流を受け止めて前記翼形状部側に導く導風部材をさらに含んで構成されている。
【0013】
請求項3記載の車両前部構造では、導風部材にて受け止められた空気流が翼形状部に導かれ、該翼形状部にて車両上向きの速度成分が付与される。これにより、導風部材を備えない構成と比較して、熱交換器におけるハウジング背後部分に導かれる空気流量が増す。
【0014】
請求項4記載の発明に係る車両前部構造は、請求項3記載の車両前部構造において、前記翼形状部及び導風部材の少なくとも一方には、前記空気流に車幅方向に向かう速度成分を付与するように該空気流を案内する形成された案内部材が設けられている。
【0015】
請求項4記載の車両前部構造では、翼形状部と導風部材との間に形成された案内部材によって熱交換器に向かう空気流に車幅方向成分が付与される。これにより、例えばステアリングギヤ機構の車体への取付部等の障害物が熱交換器の前方に位置する場合に、該障害物を回り込むように熱交換器に空気流を導くことができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明に係る車両前部構造は、ステアリングギヤ機構の後方に配置された熱交換器に導かれる空気流量の偏りを抑制することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る車両前部構造を拡大して示す側断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両前部構造を模式的に示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両前部構造が模式的に示す図であって、(A)は正面図、(B)は図3(A)の3B−3B線に沿った断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車両前部構造の導風構造を破断して示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係る車両前部構造を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る車両前部構造10について、図1及び図2に基づいて説明する。先ず、車両前部構造10が適用された自動車Vの前部の概略構成を説明し、次いで、車両前部構造10の具体的な構成を説明することとする。なお、図中に適宜記す矢印FRは車両前後方向の前方向を、矢印UPは車両上下方向の上方向を、矢印Wは車幅方向をそれぞれ示す。以下の説明で、特記なく前後、上下の方向を用いるときは、上記した車両前後方向、車両上下方向を示すものとする。
【0019】
(車体の概略構成)
図5には、車両前部構造10が適用された自動車Vの前部が模式的な側断面図にて示されている。この図に示される如く、自動車Vの前端側には、パワーユニット12が配設された前部空間としてのパワーユニット室14が配置されている。この実施形態におけるパワーユニット12は、それぞれフロントホイールWf及び図示しないリヤホイールの少なくとも一方を駆動するための駆動源として内燃機関であるエンジンを含んで構成されている。この実施形態では、パワーユニット12は、車幅方向に沿ったクランクシャフトを有する横置きのエンジンを含み、フロントホイールWfを駆動する構成とされている。なお、自動車Vは、パワーユニット12が駆動源として電気モータをさらに含むハイブリッド自動車とされても良い。
【0020】
また、パワーユニット室14内には、自動車Vの骨格を構成するフロントサイドメンバ16の前部が配置されている。フロントサイドメンバ16は、左右一対設けられ、それぞれ前後方向に長手とされている。各フロントサイドメンバ16の前端は、車幅方向に長手とされたフロントバンパ18を構成するバンパリインフォースメント18Rにて架け渡されている。フロントバンパ18は、バンパリインフォースメント18Rがバンパカバー18Cに覆われて構成されている。なお、バンパリインフォースメント18Rとバンパカバー18Cとの間にアブソーバ等を配設しても良い。
【0021】
さらに、パワーユニット室14内におけるパワーユニット12の後方には、操舵によりフロントホイールWfを転舵するためのステアリングギヤ機構20が配置されている。ステアリングギヤ機構20の主要部は、車幅方向に長手とされており、図示は省略するが、左右両端がそれぞれタイロッドを介してフロントホイールWfのナックルアームに連結されている。このステアリングギヤ機構20は、ステアリングシャフト22(図2〜4参照)を介して図示しないステアリングホイールに連結されている。そして、乗員によるステアリングホイールの操作力が、ステアリングシャフト22を介してステアリングギヤ機構20に伝わり、フロントホイールWfに転舵力として伝わる構成とされている。この実施形態では、ステアリングギヤ機構20は、マニュアルステアリングギヤとして構成されているが、パワーアシスト機能を有しても良く、操舵により生じる電気信号に基づいて左右のフロントホイールWfに転舵力を与えるものであっても良い。
【0022】
図3及び図4に示される如く、ステアリングギヤ機構20は、ブラケット24を介してサスペンションメンバ(サブフレーム)26のサイドレール26Sに連結されている。この実施形態では、ステアリングギヤ機構20は、ハウジング20Hから左右2箇所で下方に張り出した取付フランジ20Fにおいて、ボルト・ナットを含む締結具によって、ゴムブッシュ28を介してブラケット24に弾性的に結合されている。なお、図示は省略するが、サスペンションメンバ26は、平面視で略矩形枠状を成す井形フレームとされ、サイドレール26Sの後端間はリヤクロス26R(図1及び図3(A)参照)にて架け渡されている。
【0023】
以上説明したステアリングギヤ機構20には、後述する導風構造50を介してリヤエンジンマウント25が支持されている。リヤエンジンマウント25は、パワーユニット12の後部を弾性的に支持する構成とされている。換言すれば、パワーユニット12の後部は、リヤエンジンマウント25、導風構造50、及びステアリングギヤ機構20を介して、サスペンションメンバ26に支持されているものと捉えることができる。
【0024】
以上説明したパワーユニット室14の後端部は、車室Cとの間を隔てるダッシュパネル30にて規定されている。ダッシュパネル30は、フロアパネル32の前端部に接合されている。フロアパネル32における車幅方向の中央部には、車両前後方向に長手とされると共に該長手方向と直交する断面視で車両上下方向に下向きに開口する[コ」字状を成すフロアトンネル32Tが形成されている。
【0025】
(冷却ユニット)
そして、図1及び図5に示される如く、車両前部構造10が適用された自動車Vでは、パワーユニット室14の後部内(ダッシュパネル30の下方)に、冷却ユニット34が配置されている。すなわち、この実施形態では、冷却ユニット34がパワーユニット12、ステアリングギヤ機構20のそれぞれに対する車両前後方向の後側に配置されている。
【0026】
冷却ユニット34は、パワーユニット12との間で冷却水を循環させて該パワーユニット12を冷却するラジエータ、及び図示しない空調装置の冷凍サイクルを構成するコンデンサを含んで構成されている。ラジエータは、冷却水と空気との熱交換器とされ、コンデンサは、空調冷媒と空気との熱交換器とされている。本発明における熱交換器は、ラジエータ及びコンデンサの双方と捉えても良く、何れか一方と捉えても良い。冷却ユニット34は、サスペンションメンバ26のリヤクロス26Rによって下方から支持されている。
【0027】
また、冷却ユニット34の後方には、ファンユニット36が配置されている。図示例では、ファンユニット36は軸流ファンを備えて構成されているが、ファンユニット36はクロスフローファン等の他の形式のファンを備えて構成されても良い。この実施形態では、ファンユニット36はフロアトンネル32T内に配置されている。さらに、冷却ユニット34、ファンユニット36、及びこれらの間の空間は、ファンシュラウド38によって覆われている。この実施形態では、冷却ユニット34と、ファンユニット36と、ファンシュラウド38とは、一体として車体へ組み付け可能に、該車体への組み付け前にアセンブリ化されている。
【0028】
そして、車両前部構造10では、ファンユニット36の作動によって、冷却ユニット34及びフロアトンネル32Tを通過して該フロアトンネル32Tの下向き開口部32TLから排出される強制冷却風が生じる構成とされている。また、この実施形態では、ファンユニット36の停止状態においても、自動車Vの走行風が冷却ユニット34に導かれるようになっている。したがって、パワーユニット12や空調装置の軽負荷時には、ファンユニット36を停止して主に走行風を冷却ユニット34での熱交換に供することができる。
【0029】
これら強制冷却風や走行風(以下、まとめて「空気流」という場合がある)は、バンパカバー18Cに形成した前側空気取入口40、フロア下でかつ冷却ユニット34に対する前方に形成された下側空気取入口42から導入されるようになっている。下側空気取入口42は、パワーユニット室14を下方から覆うアンダカバー44に形成されており、アンダカバー44には、フロア下からの空気流を冷却ユニット34の下部に導くガイド壁44Gが形成されている。ガイド壁44Gは、下側空気取入口42の前縁から冷却ユニット34の上下方向中間部に向けて斜め上後方に延びている。
【0030】
そして、前側空気取入口40から導入された空気流は、パワーユニット12の下方、ガイド壁44Gの上方を通過して後述する導風構造50に至る構成とされている。一方、下側空気取入口42から導入された空気流は、ガイド壁44Gの下方を通過して後述する導風構造50に至る構成とされている。なお、アンダカバー44における下側空気取入口42の後縁からは、空力部材(スパッツ又はフラップ等)46が垂下されている。これにより、自動車Vの走行に伴って生じた走行風の一部が空力部材46によって受け止められ、下側空気取入口42からパワーユニット室14内に走行風が流入することが促進されるようになっている。
【0031】
(導風構造)
図1及び図2に示される如く、車両前部構造10では、ステアリングギヤ機構20に導風構造50が設けられている。導風構造50は、図2及び図3(A)に示される如く、冷却ユニット34の前方を横切って配置されたステアリングギヤ機構20の背後に空気流を導くように構成されている。以下、具体的に説明する。
【0032】
導風構造50は、ステアリングギヤ機構20における機構部を収容するハウジング(ボックス)20Hに形成された翼形状部52を有する。図1及び図4に示される如く、翼形状部52は、少なくとも下面が空気流に下方から上方へ向かう速度(ベクトル)成分を付与する形状の翼面とされている。また、翼形状部52の下方には、導風部材としての導風クロスメンバ54が配置されている。導風クロスメンバ54は、車幅方向に長手とされると共に該車幅方向の両端が取付フランジ20Fに連結されており、翼形状部52との間に空気流路が形成されるように該翼形状部52に対し上下方向に離間されている。
【0033】
導風クロスメンバ54は、前方及び上方を共に向くように傾斜又は湾曲されると共に、翼形状部52との上下方向の間隔が前端側よりも後端側で狭くされている。これにより、導風クロスメンバ54は、前方からの空気流を受け止めつつ該空気流を翼形状部52側に導くようになっている。翼形状部52及び導風クロスメンバ54の車幅方向の長さ(設置範囲)は、冷却ユニット34の車幅方向の長さ(設置範囲)に略一致されている。
【0034】
また、導風構造50は、翼形状部52と導風クロスメンバ54との間に設けられた案内部材としてのガイドフィン56を有する。この実施形態では、ガイドフィン56は、翼形状部52又は導風クロスメンバ54に一体に形成され、図3(B)に示される如く閉断面視で湾曲形成されている。この湾曲形状は、前方からの空気流に車幅方向の速度(ベクトル)成分を付与する形状とされている。この実施形態では、走行風を左右の取付フランジ20Fの背後(に対向する冷却ユニット34の部分)に導くように、複数のガイドフィン56が左右にそれぞれ設けられている(図3(B)の矢印を参照)。
【0035】
以上説明した導風構造50では、翼形状部52と導風クロスメンバ54とがアルミ鍛造によって一体に形成されている。また、この実施形態では、ガイドフィン56についても翼形状部52及び導風クロスメンバ54と一体に形成されている。さらに、導風構造50では、リヤエンジンマウント25が導風クロスメンバ54に直接的に締結等によって結合されている。
【0036】
このリヤエンジンマウント25は、図3(A)に示される如く、冷却ユニット34の前方に位置し、該冷却ユニット34の一部を前方から覆っている。図示は省略するが、導風クロスメンバ54の下面側に、走行風をリヤエンジンマウント25の背後(に対向する冷却ユニット34の部分)に導くように形成されたガイドフィンを設けても良い。
【0037】
また、この実施形態では、ファンシュラウド38は、冷却ユニット34の前側まで延び、該冷却ユニット34の前側に空気流を冷却ユニット34に導くダクト38Dを形成している。このファンシュラウド38の前部であるダクト38Dは、導風構造50(翼形状部52)の少なくとも後部を覆っている。
【0038】
次に、実施形態に係る車両前部構造10の作用を説明する。
【0039】
上記構成の車両前部構造10が適用された自動車Vでは、パワーユニット12の冷却要求、空調の要求に応じてファンユニット36が作動される。すると、各空気取入口40、42から冷却ユニット34に強制冷却風が空気流として導かれ、この冷却風との熱交換により冷却水や空調冷媒の冷却が果たされる。冷却水や空調冷媒との熱交換後の冷却風は、ファンユニット36、フロアトンネル32Tを通じて、該フロアトンネル32T下向き開口部32TLから車外に排出される。
【0040】
また、ファンユニット36の停止の際(パワーユニット12の冷却要求、空調の負荷が比較的低い場合)には、走行風が各空気取入口40、42から冷却ユニット34に走行風が空気流として導かれる。この場合、ファンユニット36の作動時と比較して風量(交換熱量)が少ないものの、冷却風との熱交換により冷却水や空調冷媒の冷却が果たされる。この際、冷却ユニット34における前方に空気流を遮るものがない部分では、該空気流が直接的に導かれる。
【0041】
ここで、車両前部構造10では、冷却ユニット34の前方に配置されたステアリングギヤ機構20に導風構造50が設けられているため、冷却ユニット34におけるステアリングギヤ機構20にて前方から覆われた部分に空気流(冷却風)が導かれる。例えば導風構造50を有しない比較例では、ステアリングギヤ機構20に当たった空気流は、主に、冷却ユニット34におけるステアリングギヤ機構20よりも下側部分に導かれ、冷却ユニット34の上部では空気流量が相対的に少なくなる。このため、冷却ユニット34の各部で熱交換に供される空気流量に偏りが生じることとなる。
【0042】
これに対して車両前部構造10では、上記の通りステアリングギヤ機構20に導風構造50が設けられており、導風構造50は翼形状部52を有する。このため、前方からの空気流は、翼形状部52の翼面にて上方に向かう速度成分が付与され、ステアリングギヤ機構20の背後すなわち冷却ユニット34における正面視にてステアリングギヤ機構20に覆われた部分に導かれる。すなわち、前方からの空気流は、図1の矢印Fにて示される如く、ステアリングギヤ機構20を下方から回り込むようにして該ステアリングギヤ機構20の背後に導かれる。これにより、冷却ユニット34の各部で熱交換に供される空気流量の偏りが低減される。
【0043】
このように、車両前部構造10では、ステアリングギヤ機構20の後方に配置された冷却ユニット34に導かれる空気流量の偏りを抑制することができる。
【0044】
しかも、導風構造50は、受け止めた空気流を翼形状部52側に導く導風クロスメンバ54を有するため、導風クロスメンバ54を有しない構成と比較して、翼形状部52にてステアリングギヤ機構20の背後に導かれる空気流量が増す。これにより、冷却ユニット34の各部で熱交換に供される空気流量の偏りが一層低減される。
【0045】
さらに、導風構造50は、前方からの空気流に車幅方向の速度成分を付与するガイドフィン56を有する。このため、ステアリングギヤ機構20のハウジング20Hから下方に張り出した取付フランジ20Fの背後すなわち冷却ユニット34における取付フランジ20Fに覆われた部分にも空気流を導くことができる。特に、リヤエンジンマウント25の背後に空気流を導くガイドフィンが設けられた構成では、冷却ユニット34におけるリヤエンジンマウント25に覆われた部分にも空気流を導くことができる。
【0046】
これらによって車両前部構造10では、冷却ユニット34の前方をステアリングギヤ機構20が横切る構成において、各部に導かれる空気流量が略均一化され(交換熱量のばらつきが抑制され)、冷却ユニット34による熱交換効率が向上される。
【0047】
なお、上記した実施形態では、翼形状部52がハウジング20Hに一体に形成された例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ステアリングギヤ機構20を構成する円筒形状のハウジング20Hに翼形状部材を取り付けて翼形状部としても良い。
【0048】
また、上記した実施形態では、翼形状部52が主に下面である翼面で空気流を冷却ユニット34の上部に導く例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、冷却ユニット34の上面に、下方に向かう速度成分を空気流に付与する形状の翼面を形成して、ステアリングギヤ機構20の背後に空気流を導く構成としても良い。
【0049】
さらに、上記した実施形態では、翼形状部52が導風クロスメンバ54(及びガイドフィン56)と一体化された例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、導風クロスメンバ54は長手方向両端がサイドレール26Sに連結された構成としても良い。換言すれば、サスペンションメンバ26を構成するクロスメンバを導風クロスメンバ54として利用する構成としても良い。
【0050】
またさらに、上記した実施形態では、バンパカバー18Cの前側空気取入口40及びアンダカバー44の下側空気取入口42を共に有する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、前側空気取入口40及び下側空気取入口42の何れか一方だけから空気流を導入する構成としても良い。
【0051】
また、上記した実施形態では、冷却ユニット34がパワーユニット室14内の後部に配置された例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、冷却ユニット34をファンシュラウド38及びファンユニット36と共にフロアトンネル32T内に配置するなど、パワーユニット室14の後方に配置しても良い。
【0052】
さらに、上記した実施形態では、内燃機関を含むパワーユニット12が車室Cの前方に位置するパワーユニット室14に配置されてフロントホイールWfを駆動する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、パワーユニット12がフロントホイールWfに代えて又はフロントホイールWfと共にリヤホイールを駆動する構成としても良い。また例えば、パワーユニット12が車室Cの後方に位置するパワーユニット室に配置され、フロアトンネル32Tを通じて冷却ユニット34との間で冷却水を循環させる構成としても良い。さらに、パワーユニットが内燃機関を含まない構成としても良い。
【0053】
その他、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で、各種変形して実施可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0054】
10 車両前部構造
20 ステアリングギヤ機構
20H ハウジング
34 冷却ユニット(熱交換器)
50 導風構造
52 翼形状部
54 導風クロスメンバ(導風部材)
56 ガイドフィン(案内部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延在されたステアリングギヤ機構に対する車両後方に配置された熱交換器と、
少なくとも一部が前記ステアリングギヤ機構のハウジングに設けられ、車両前方からの空気流を前記熱交換器における正面視で前記ステアリングギヤ機構に覆われる部分に導く導風構造と、
を備えた車両前部構造。
【請求項2】
前記導風構造は、前記空気流に車両下方から上方に向かう速度成分を付与するように形成された翼形状部を含んで構成されている請求項1記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記導風構造は、前記翼形状部の下方で車幅方向に沿って配置され、車両前方からの空気流を受け止めて前記翼形状部側に導く導風部材をさらに含んで構成されている請求項2記載の車両前部構造。
【請求項4】
前記翼形状部及び導風部材の少なくとも一方には、前記空気流に車幅方向に向かう速度成分を付与するように該空気流を案内する形成された案内部材が設けられている請求項3記載の車両前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−100023(P2013−100023A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244793(P2011−244793)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】