説明

車両前部構造

【課題】車両前部に配置された前部空間内の被冷却体を効率良く冷却することができる車両前部構造を得る。
【解決手段】車両前部構造10は、パワーユニット室14内の後部に配置された冷却ユニット22と、冷却ユニット22の後側に配置され作動により冷却ユニット22を通過して車外に排出される空気流を生成するファンユニット30と、冷却ユニット22及びファンユニット30を覆い、該冷却ユニット22とファンユニット30との間に空気流路32を形成するファンシュラウド36と、パワーユニット室14内に配置されたインバータ16の内部と空気流路空気流路38とを連通する連通ダクト20と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部の前部空間内に被冷却体が配置された車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータと三相交流発電電動機とが隣接配置された車載用電気装置に適用され、三相交流発電電動機のロータを冷却するためのファンの作動によって、インバータを冷却する冷却空気の流れを生成させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−269600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の如き技術では、インバータ及び電動機の冷却後における空気流の排出について考慮されておらず、冷却効率向上の観点からは改善の余地がある。
【0005】
本発明は、車両前部に配置された前部空間内の被冷却体を効率良く冷却することができる車両前部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係る車両前部構造は、車体前部に配置された前部空間内の後部又は該前部空間の後側に配置された熱交換器と、前記熱交換器の後側に配置され、作動により前記熱交換器の空気側流路を通過して車外に排出される空気流を生成する空気流生成手段と、前記熱交換器及び空気流生成手段を覆い、該熱交換器と空気流生成手段との間に空気流路を形成する被覆部材と、前記前部空間内に配置された被冷却体の内部と前記被覆部材が形成する空気流路とを連通する連通ダクトと、を備えている。
【0007】
請求項1記載の車両前部構造では、熱交換器用の空気流生成手段が作動すると、該熱交換器及び被覆部材で覆われた空気流路を通過して車外に排出される空気流が生じる。ここで、本車両前部構造では、連通ダクトが被冷却体内部と空気流路とを連通している。このため、空気流生成手段の作動に伴って、被冷却体内を通過して空気流路を経由して車外(前部空間の外側)に排出される空気流が生成される。この空気流によって被冷却体が効率良く冷却される。
【0008】
このように、請求項1記載の車両前部構造では、車両前部に配置された前部空間内の被冷却体を効率良く冷却することができる。
【0009】
請求項2記載の発明に係る車両前部構造は、請求項1記載の車両前部構造において、前記被冷却体の内部に外気を導入するための外気導入ダクトをさらに備えた。
【0010】
請求項2記載の車両前部構造では、空気流生成手段の作動に伴って、外気が被冷却体内を通過して空気流路を経由して車外に排出される。これにより、前部空間内から吸い込んだ空気で冷却する場合と比較して、被冷却体が効率良く冷却される。
【0011】
請求項3記載の発明に係る車両前部構造は、請求項請求項1又は2記載の車両前部構造において、前記連通ダクトは、車体に対し前記被冷却体を支持する支持部材を兼ねる。
【0012】
請求項3記載の車両前部構造では、連通ダクトが支持部材を兼ねるため、前部空間内の構造が簡素化される。
【0013】
請求項4記載の発明に係る車両前部構造は、請求項3記載の車両前部構造において、前記連通ダクトは、前記被冷却体よりも車両前側に突出した突出部を有する。
【0014】
請求項4記載の車両前部構造では、車両の前面衝突の際に、被冷却体よりも先に連通ダクトの突出部が前面衝突に伴う荷重を受けることとなりやすい。この連通ダクトが被冷却体を支持しているので、被冷却体が直接的に衝突荷重を受けることが抑制される。
【0015】
請求項5記載の発明に係る車両前部構造は、請求項4記載の車両前部構造において、前記連通ダクトは、車両前後方に延在されると共に該前後方向に離れた複数箇所で前記車体に固定されており、前記固定部間で曲げられて車幅方向に張り出されると共に、前記前部空間内で前記被冷却体の前側又は後側でかつ前記突出部の後側に配置された部品を前記車体に対し支持する曲がり部が、前記連通ダクトに形成されている。
【0016】
請求項5記載の車両前部構造では、連通ダクトの突出部が衝突荷重を受けると、該連通ダクトの曲がり部は、その基端及び終端が前後に近づくように変形される。これにより、曲がり部に支持された部品は車幅方向又は上下方向の位置が変化され、その前側又は後側に配置された被冷却体との干渉が抑制される。
【0017】
請求項6記載の発明に係る車両前部構造は、請求項1〜請求項5の何れか1項記載の車両前部構造において、前記前部空間内に配置され前記被冷却体とは異なる他の被冷却体の内部と、前記被覆部材が形成する空気流路又は前記連通ダクトの内部とを連通する他の連通ダクトをさらに備えた。
【0018】
請求項6記載の車両前部構造では、空気流生成手段の作動によって、被冷却体及び他の被冷却体を冷却して前部空間側に排出される空気流が生じる。これにより、被冷却体及び他の被冷却体を、独立した(並列の)空気流によって効率良く冷却することができる。なお、連通ダクトと他の連通ダクトとは、互いに独立して空気流路に連通されても良く、合流して空気流路に連通されても良い。
【0019】
請求項7記載の発明に係る車両前部構造は、請求項1〜請求項6の何れか1項記載の車両前部構造において、前記熱交換器は、前記前部空間内で前記熱交換に対する前側に配置されたパワーユニットを冷却するためのラジエータを含んで構成されており、前記被冷却体は、前記パワーユニットの少なくとも一部を構成する電動機用のインバータである。
【0020】
請求項7記載の車両前部構造では、パワーユニット(駆動源)を冷却するための熱交換器用の空気流生成手段を用いて、該パワーユニットの少なくとも一部を成す電動機用のインバータを効率良く冷却することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明に係る車両前部構造は、車両前部に配置された前部空間内の被冷却体を効率良く冷却することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車両前部構造を示す側断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る車両前部構造を模式的に示す斜視図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る車両前部構造が模式的に示す斜視図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る車両前部構造を示す側断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る車両前部構造を模式的に示す斜視図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る車両前部構造を模式的に示す図であって、(A)は衝突前の平面図、(B)は衝突後の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1の実施形態に係る車両前部構造10について、図1及び図2に基づいて説明する。先ず、車両前部構造10が適用された自動車Vの前部の概略構成を説明し、次いで、車両前部構造10の具体的な構成を説明することとする。なお、図中に適宜記す矢印FRは車両前後方向の前方向を、矢印UPは車両上下方向の上方向を、矢印Wは車幅方向をそれぞれ示す。以下の説明で、特記なく前後、上下の方向を用いるときは、上記した車両前後方向、車両上下方向を示すものとする。
【0024】
(車体の概略構成)
図1には、車両前部構造10が適用された自動車Vの前部が模式的な側断面図にて示されている。また、図2には、図1で示す一部部品を省略した斜視図が示されている。これらの図に示される如く、自動車Vの前端側には、パワーユニット12が配設された前部空間としてのパワーユニット室14が配置されている。この実施形態におけるパワーユニット12は、それぞれフロントホイールWf及び図示しないリヤホイールの少なくとも一方を駆動するための駆動源として内燃機関であるエンジンと電動機としての電動モータとを含んで構成されている。したがって、この実施形態に係る自動車Vは、2つの駆動源を有するハイブリッド自動車とされている。
【0025】
フロントホイールWfを駆動する場合の具体例を説明すると、パワーユニットは、車幅方向に沿ったクランクシャフトを有する横置きのエンジンと、該エンジンに動力伝達可能に連結されたトランスアクスルとを主要部として構成されている。トランスアクスルは、電動モータ、ジェネレータ、動力分割機構、無段変速機等である変速機等を含んで構成されている。したがって、この実施形態に係るパワーユニットは、パワープラントとして捉えることも可能である。
【0026】
また、パワーユニット室14内には、パワーユニット12の電気モータ、ジェネレータ及び図示しない駆動用のバッテリに電気的に接続されたインバータ16が配置されている。詳細は後述するが、インバータ16は、自動車Vの骨格を構成するフロントサイドメンバ18に連通ダクト20を介して支持されている。フロントサイドメンバ18は、左右一対設けられ、それぞれ前後方向に長手とされている。各フロントサイドメンバ18の前端は、車幅方向に長手とされたフロントバンパリインフォースメント21にて架け渡されている。
【0027】
パワーユニット室14の後端部は、車室Cとの間を隔てるダッシュパネル24にて規定されている。ダッシュパネル24は、フロアパネル26の前端部に接合されている。フロアパネル26における車幅方向の中央部には、車両前後方向に長手とされると共に該長手方向と直交する断面視で車両上下方向に下向きに開口する[コ」字状を成すフロアトンネル28が形成されている。
【0028】
そして、車両前部構造10が適用された自動車Vでは、パワーユニット室14の後部内(ダッシュパネル24の下方)に、冷却ユニット22が配置されている。すなわち、この実施形態では、冷却ユニット22がパワーユニット12に対する車両前後方向の後側に配置されている。
【0029】
冷却ユニット22は、パワーユニット12との間で冷却水を循環させて該パワーユニット12を冷却するラジエータ22A、及び図示しない空調装置の冷凍サイクルを構成するコンデンサ22Bを含んで構成されている。ラジエータ22A、コンデンサ22Bは、それぞれ熱交換器とされている。本発明における熱交換器は、ラジエータ22A及びコンデンサ22Bの双方と捉えても良く、何れか一方と捉えても良い。
【0030】
また、冷却ユニット22の後方には、空気流生成手段としてのファンユニット30が配置されている。図示例では、ファンユニット30は軸流ファンを備えて構成されているが、ファンユニット30はクロスフローファン等の他の形式のファンを備えて構成されても良い。この実施形態では、ファンユニット30はフロアトンネル28内に配置されている。このファンユニット30の作動によって、フロアトンネル28を通過する強制冷却風が生じる構成とされている。この強制冷却風は、自動車Vのフロア下でかつフロアトンネル28の前方に形成された空気取り入れ口32から導入され、冷却ユニット22、ファンユニット30を通過してフロアトンネル28の下向き開口部28Aから車外へ排出されるようになっている。
【0031】
この実施形態では、空気取り入れ口32は、パワーユニット室14を下方から覆うアンダカバー34に形成されている。アンダカバー34には、空気取り入れ口32から冷却ユニット22の前面までの間に流路を形成するダクト部34Aが一体に設けられている。一方、冷却ユニット22の背面からファンユニット30までの間には、該冷却ユニット22及びファンユニット30を覆う被覆部材としてのファンシュラウド36によって、空気流路38が形成されている。
【0032】
この実施形態では、冷却ユニット22と、ファンユニット30と、ファンシュラウド36とは、一体として車体へ組み付け可能に、該車体への組み付け前にアセンブリ化されている。したがって、このアセンブリの後部がフロアトンネル28内に配置されており、ファンシュラウド36の前部はパワーユニット室14内(ダッシュパネル24の前側)に配置されている。
【0033】
また、この実施形態では、ファンユニット30の停止状態においても、自動車Vの走行風が空気取り入れ口32から導入されて冷却ユニット22に導かれるようになっている。したがって、パワーユニット12や空調装置の軽負荷時には、空気取り入れ口32を停止して主に走行風を冷却ユニット22での熱交換に供することができる。
【0034】
(車両前部構造の要部構成)
図1及び図2に示される如く、車両前部構造10は、一端側がインバータ16内に連通されると共に、他端側がファンシュラウド36内の空気流路38に連通された連通ダクト20を備えている。
【0035】
より具体的には、前後方向に長手とされた連通ダクト20の前側開口端20Aは、インバータ16の電気系を被覆するケーシング16Aに、該ケーシング16A内の空気を吸引可能に接続されている。また、連通ダクト20の後側開口端20Bは、ファンシュラウド36における冷却ユニット22の後方でかつパワーユニット室14内に位置する部分に接続されている。
【0036】
これにより、ファンユニット30の作動(空気流路38内の負圧)によって、ケーシング16A内の空気が空気排出口16Bから吸い出される構成である。この空気吸い出しに伴って、ケーシング16Aの空気取り入れ口16Cからケーシング16A内に空気が流入するようになっている。そして、この実施形態では、車両前部構造10は、一端側開口端40Aが車外に臨んで開口すると共に、他端側開口端40Bが空気取り入れ口16Cに接続された外気導入ダクト40を備える。
【0037】
これにより、ファンユニット30の作動によって外気(フレッシュエア)がケーシング16A内に導入される構成である。すなわち、ケーシング16A内の電気系を冷却した外気が、連通ダクト20、空気流路38、フロアトンネル28を通じて車外に排出される構成とされている。この実施形態では、外気導入ダクト40の開口端40Aは、グリル部42で前向きに開口されている。
【0038】
連通ダクト20の機械的構造について補足する。連通ダクト20は、全体として前後方向に長手の中空構造とされており、一方(左側)のフロントサイドメンバ18に支持されている。より具体的には、連通ダクト20は、フロントサイドメンバ18に対し前後方向に離れた複数の結合部44において、フロントサイドメンバ18に固定的に結合されている。書く結合部44は、フロントサイドメンバ18における衝突時の変形モードに影響を与えない(他の部分に対し影響が小さい)部分に固定されている。このように確りとフロントサイドメンバ18に結合された連通ダクト20は、フロントサイドメンバ18に対しインバータ16を支持する支持部材(キャリア)としても機能する構成とされている。
【0039】
この実施形態では、連通ダクト20は、左側のフロントサイドメンバ18に対する車幅方向内側に沿って配置され、その前側開口端20Aがインバータ16のケーシング16Aの空気排出口16Bに対し下方から接続されている。一方、連通ダクト20の後側開口端20Bは、ファンシュラウド36の連通口36Aに対して上側から接続されている。
【0040】
次に、第1の実施形態に係る車両前部構造10の作用を説明する。
【0041】
上記構成の車両前部構造10が適用された自動車Vでは、パワーユニット12の冷却要求、空調の要求に応じてファンユニット30が作動される。すると、空気取り入れ口32からダクト部34A内を通じて冷却ユニット22に冷却風Fcが導かれ、この冷却風との熱交換により冷却水や空調冷媒の冷却が果たされる。冷却水や空調冷媒との熱交換後の冷却風は、空気流路38、ファンユニット30、フロアトンネル28を通じて、該フロアトンネル28下向き開口部28Aから車外に排出される。
【0042】
また、ファンユニット30の停止の際(パワーユニット12の冷却要求、空調の負荷が比較的低い場合)には、走行風が空気取り入れ口32からダクト部34A内を通じて冷却ユニット22に冷却風として導かれる。この場合も、ファンユニット30の作動時と比較して風量(交換熱量)が少ないものの、冷却風との熱交換により冷却水や空調冷媒の冷却が果たされる。
【0043】
ここで、車両前部構造10では、ケーシング16Aと空気流路38とが連通ダクト20を通じて連通されている。このため、ファンユニット30が作動して空気流路38に負圧が生じると、ケーシング16Aには、空気取り入れ口16Cから導入され、空気排出口16Bから排出される空気流(冷却風)Fiが生じる。この空気流は、空気流路38を通じてフロアトンネル28の下向き開口部28Aから車外に排出される。したがって、車両前部構造10では、この空気流によって被冷却体としてのインバータ16(ケーシング16A内の電気系)が効率良く冷却される。
【0044】
例えばパワーユニット室14内に配置したファンにてインバータ16に冷却風を当てる比較例では、インバータ16を冷却後の空気流がパワーユニット室14から効率的に排出されないので、冷却効率が低くなりやすい。
【0045】
これに対して車両前部構造10では、上記の通りインバータ16を冷却後の空気流がパワーユニット室14の外側に排出されるので、ケーシング16A内を空気流が効率的に通過することとなり、上記比較例と比較して、インバータ16の冷却効率が高い。したがって、インバータ16の冷却要求が高い場合にファンユニット30を作動する構成(設定、制御)とすることで、インバータ16を効率的に冷却することができる。
【0046】
特に、車両前部構造10では、一端側開口端40Aが車外に臨む外気導入ダクト40の他端側開口端40Bが空気取り入れ口16Cに接続されているので、ファンユニット30の作動に伴って外気が冷却風としてケーシング16A内に導入される。このため、パワーユニット室14内の空気をケーシング16A内に導入してインバータ16を冷却する比較例と比較して、該インバータ16を効率的に冷却することができる。
【0047】
このように、第1の実施形態に係る車両前部構造10では、車両前部に配置されたパワーユニット室14内のインバータ16を効率良く冷却することができる。
【0048】
また、車両前部構造10では、パワーユニット12(駆動源)を冷却するためのラジエータを含む冷却ユニット22用のファンユニット30を用いて、該パワーユニット12の一部を成すモータ用のインバータ16を効率良く冷却することができる。パワーユニット12とインバータ16とは、冷却要求が高くなるタイミングが重なる場合が多く、共通のファンユニット30を用いて両者を効率的に冷却することができる。
【0049】
さらに、車両前部構造10では、連通ダクト20がインバータ16の支持部材を兼ねるため、パワーユニット室14内の構造が簡素化される。すなわち、部品点数の低減やレイアウト効率の向上が図られる。
【0050】
(他の実施形態)
以下、本発明の他の実施形態について説明する。なお、上記第1の実施形態又は前出の構成と基本的に同一の部品・部分については、上記第1の実施形態又は前出の構成と同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
(第2の実施形態)
図3には、第2の実施形態に係る車両前部構造50が図2に対応する斜視図にて示されている。この図に示される如く、車両前部構造50は、連通ダクト20に加えて連通ダクト52を備えている点で、第1の実施形態に係る車両前部構造10とは異なる。
【0052】
連通ダクト52は、その前側の開口端52Aが図示を省略したパワーユニット12を構成する電気モータのハウジング(ヨーク)に接続されている。連通ダクト52の後側開口端52Bは、空気流路38に連通されている。図3に示す例では、後側開口端52Bは、連通ダクト20の中間部20Cに接続(合流)されることで、連通ダクト20を介して空気流路38に連通されている。なお、連通ダクト52の合流部分以降の連通ダクト20の流路断面積を合流部分に対する前側の部分の流路断面積よりも大きくしても良い。また、連通ダクト52の後側開口端52Bがファンシュラウド36に接続されることで空気流路38に連通される構成としても良い。
【0053】
車両前部構造50では、ファンユニット30の作動によってインバータ16を冷却する冷却風に加えて、他の被冷却体としての電気モータを冷却する冷却風が生成される構成である。なお、電気モータを本発明の被冷却体、インバータ16を本発明の他の被冷却体として捉えても良い。車両前部構造50の他の構成は、図示しない部分を含め、車両前部構造10の対応する構成と同様に構成されている。
【0054】
したがって、第2の実施形態に係る車両前部構造50によっても、基本的に第1の実施形態に係る車両前部構造10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、車両前部構造50では、ファンユニット30の作動によってパワーユニット12を構成する電気モータを良好に冷却することができる。例えば、パワーユニット12の電気モータがインバータ16と共通の連通ダクト20による冷却風にて冷却される比較例では、冷却風が直列に流れることとなる。このため、インバータ16を冷却した後の冷却風にて電気モータを冷却することとなり、電気モータの冷却効率が低い。
【0055】
これに対して車両前部構造50では、インバータ16とパワーユニット12の電気モータとが、独立した(並列の)経路を流れる冷却風にてそれぞれ冷却される。このため、上記比較例と比較して、パワーユニット12の電気モータの冷却効率が高い。特に、電気モータのハウジング内に外気を導入する外気導入ダクトを備えた構成とすることで、該電気モータの冷却効率を一層高くすることができる。
【0056】
なお、上記した第1及び第2の実施形態では、インバータ16が連通ダクト20に支持された例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、インバータ16は、直接的に又は図示しないブラケット等を介してフロントサイドメンバ18に支持されても良い。
【0057】
(第3の実施形態)
図4には、第3の実施形態に係る車両前部構造60が図1に対応する側断面図にて示されており、図5には、車両前部構造60が図2に対応する斜視図にて示されている。これらの図に示される如く、車両前部構造60は、前端がケーシング16Aに接続された連通ダクト20に代えて、連通ダクト62を備えている点で、第1の実施形態に係る車両前部構造10とは異なる。以下、具体的に説明する。
【0058】
連通ダクト62は、その前端62Aがインバータ16の前面よりも前側に突出しており、該前端62Aよりも後側に配置された接続口62Bにおいてケーシング16Aの空気排出口16Bに接続されている。すなわち、連通ダクト62における前端62Aを含む前端側の一部が、本発明の突出部に相当する。連通ダクト62の後側開口端62Cは、連通ダクト20の後側開口端20Bと同様にファンシュラウド36に接続され、空気流路38に連通されている。
【0059】
そして、連通ダクト62におけるインバータ16の後面と後側開口端62Cとの間は、曲がり部としての湾曲部62Dとされている。湾曲部62Dは、車幅方向外向きに開口する略U字状を成すように平面視で湾曲されており、他の部分に対し車幅方向内向きに張り出されている。
【0060】
この連通ダクト62の湾曲部62Dには、パワーユニット室14内に配置される部品の一例としての補機バッテリ64が支持されている。補機バッテリ64は、インバータ16の後方に配置されており、その車幅方向の内側部分が湾曲部62Dに結合されている。連通ダクト62は、連通ダクト20と同様に、複数の結合部44にてフロントサイドメンバ18に結合されると共に、フロントサイドメンバ18に対しインバータ16を支持する支持部材(キャリア)としても機能する構成である。
【0061】
また、車両前部構造60では、補機バッテリ64の後方に他の部品の一例であるブレーキ装置66が配置されている。図6(A)にも示される如く、インバータ16と補機バッテリ64とブレーキ装置66とは平面視で前後方向に沿った直線L上に配置されている。車両前部構造60の他の構成は、図示しない部分を含め、車両前部構造10の対応する構成と同様に構成されている。
【0062】
したがって、第3の実施形態に係る車両前部構造60によっても、基本的に第1の実施形態に係る車両前部構造10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。また、車両前部構造60では、連通ダクト62によって、適用された自動車Vのパワーユニット室14内に配置された部品が効果的に保護される。以下、具体的に説明する。
【0063】
自動車Vに前面衝突が生じると、フロントバンパリインフォースメント21が後方に変位又は変形され、連通ダクト62の前端62Aに突き当たる。インバータ16は連通ダクト62に支持されているので、後方に移動され、フロントバンパリインフォースメント21との直接の干渉が防止又は効果的に抑制される。すなわち、前面衝突に対するインバータ16の保護(衝突安全)が図られる。
【0064】
さらに、連通ダクト62は、フロントバンパリインフォースメント21又はフロントサイドメンバ18を介して前突荷重を受け、長手方向に圧縮を受ける。すると、湾曲部62Dは、その車幅方向外向きの開口幅が縮小される(基端及び終端が前後に近づく)ように変形され、図6(B)に示される如く、開口側と反対の頂部が車幅方向内向きに移動される。このため、湾曲部62Dに支持された補機バッテリ64が、インバータ16、ブレーキ装置66に対し相対的に車幅方向内側に移動される。
【0065】
これにより、図6(B)に示される如く、インバータ16、補機バッテリ64が後方に移動されることによる該インバータ16、補機バッテリ64、及びブレーキ装置66の干渉が防止又は効果的に抑制される。また、これにより、前面衝突のエネルギ吸収ストロークが長くなる。
【0066】
このように、車両前部構造60では、連通ダクト62によってパワーユニット室14内に配置された部品の衝突に対する保護(衝突安全)が図られる。換言すれば、パワーユニット室14内に配置された部品の衝突に対する保護を図るための制約が少なくなり、連通ダクト62を備えない比較例と比較して、レイアウト(部品配置)や衝突安全対応の自由度が高くなる。
【0067】
なお、第3の実施形態では、連通ダクト62が車幅方向内側に張り出す湾曲部62Dを有する例を示したが、本発明はこれに限定されず、車幅方向外側や上下方向の何れかに張り出された張出部を備えた構成としても良い。さらに、張出部は、前端62Aよりも後に配置された部品を支持すれば足り、例えばインバータ16の前側に位置する部品を支持する構成としても良い。また、張出部の数は、1つには限られず、複数設けても良い。負食う数の張出部の張り出し向きや張り出し位置は、上記した各構成の組み合わせとすることも可能である。
【0068】
また、上記した第3の実施形態に係る車両前部構造60に、第2の実施形態に係る車両前部構造50の連通ダクト52を設けた構成としても良い。
【0069】
さらに、上記した各実施形態では、冷却ユニット22がパワーユニット室14内の後部配置された例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、冷却ユニット22をファンシュラウド36及びファンユニット30と共にフロアトンネル28内に配置するなど、パワーユニット室14の後方に配置しても良い。この場合、連通ダクト20、62等は、フロアトンネル28(フロアパネル26)貫通してファンシュラウド36に接続される構成としても良く、下方からファンシュラウド36に接続される構成としても良い。
【0070】
またさらに、上記した各実施形態では、冷却ユニット22への冷却風が空気取り入れ口32から導入される例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、空気取り入れ口32に代えてまた加えて、フロントバンパカバーに形成した空気取り入れ口から冷却ユニット22へ冷却風を導入する等、他の構成としても良い。
【0071】
また、上記した各実施形態では、被冷却体としてインバータ16が冷却される例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、駆動用バッテリ等の他の被冷却体の冷却に本発明を適用しても良い。駆動用バッテリの冷却に適用する例では、連通ダクトはバッテリケース内に連通される構成としても良い。この構成では、バッテリケースを含むバッテリを被冷却体と捉えることができる。
【0072】
さらに、上記した各実施形態では、内燃機関を含むパワーユニット12が車室Cの前方に位置するパワーユニット室14に配置されてフロントホイールWfを駆動する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、パワーユニット12がフロントホイールWfに代えて又はフロントホイールWfと共にリヤホイールを駆動する構成としても良い。また例えば、パワーユニット12が車室Cの後方に位置するパワーユニット室に配置され、フロアトンネル28を通じて冷却ユニット22との間で冷却水を循環させる構成としても良い。さらに、パワーユニットが内燃機関を含まない構成としても良い。またさらに、インバータ16や電気モータ以外の被冷却体の冷却に本発明を適用する場合、パワーユニット12が電気モータを含まない構成(一般的なFF車やFR車)としても良い。
【0073】
その他、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で、各種変形して実施可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0074】
10 車両前部構造
12 パワーユニット
14 パワーユニット室(前部空間)
16 インバータ(被冷却体)
20 連通ダクト
22 冷却ユニット(熱交換器)
22A ラジエータ(熱交換器)
22B コンデンサ(熱交換器)
30 ファンユニット(空気流生成手段)
36 ファンシュラウド(被覆部材)
38 空気流路
40 外気導入ダクト
50・60 車両前部構造
52・62 連通ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部に配置された前部空間内の後部又は該前部空間の後側に配置された熱交換器と、
前記熱交換器の後側に配置され、作動により前記熱交換器の空気側流路を通過して車外に排出される空気流を生成する空気流生成手段と、
前記熱交換器及び空気流生成手段を覆い、該熱交換器と空気流生成手段との間に空気流路を形成する被覆部材と、
前記前部空間内に配置された被冷却体の内部と前記被覆部材が形成する空気流路とを連通する連通ダクトと、
を備えた車両前部構造。
【請求項2】
前記被冷却体の内部に外気を導入するための外気導入ダクトをさらに備えた請求項1記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記連通ダクトは、車体に対し前記被冷却体を支持する支持部材を兼ねる請求項1又は請求項2記載の車両前部構造。
【請求項4】
前記連通ダクトは、前記被冷却体よりも車両前側に突出した突出部を有する請求項3記載の車両前部構造。
【請求項5】
前記連通ダクトは、車両前後方に延在されており、
該連通ダクトの中間部には、車幅方向又は上下方向に張り出されると共に、前記前部空間内で前記被冷却体の前側又は後側でかつ前記突出部の後側に配置された部品を支持する曲がり部が形成されている請求項4記載の車両前部構造。
【請求項6】
前記前部空間内に配置され前記被冷却体とは異なる他の被冷却体の内部と、前記被覆部材が形成する空気流路又は前記連通ダクトの内部とを連通する他の連通ダクトをさらに備えた請求項1〜請求項5の何れか1項記載の車両前部構造。
【請求項7】
前記熱交換器は、前記前部空間内で前記熱交換に対する前側に配置されたパワーユニットを冷却するためのラジエータを含んで構成されており、
前記被冷却体は、前記パワーユニットの少なくとも一部を構成する電動機用のインバータである請求項1〜請求項6の何れか1項記載の車両前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−86660(P2013−86660A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229180(P2011−229180)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】