説明

車両周囲画像撮像システム

【課題】車両周囲画像撮像システムにおいて、高性能な演算処理装置を必要とせず、かつ適正に周囲画像を補正する。
【解決手段】カメラ傾斜角センサ20(第1の検出器)によって検出されたカメラ10の傾き角度αiと車両傾斜角センサ40(第2の検出器)によって検出された車両200の傾き角度βとの差γi(傾き角度差分値)が、予め設定された基準値Γi(初期値や設計値等)から変化したときは、その変化量Δγi(ずれ量)に応じて俯瞰画像(周囲画像)の補正を行うものであり、差γiを算出する演算処理は軽負荷であるため高性能な演算処理装置を必要とせず、また、カメラ10の傾き角度αiの変化のみに応じて俯瞰画像の補正を行うのではなく、車両200の傾き角度βとの相対的な関係γiの変化に応じて補正を行うため、適正に俯瞰画像を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられた複数の撮像手段で撮像された画像を合成して車両周囲画像を得る車両周囲画像撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されたカメラで撮影された車両後方の画像を車載モニタに表示することで、運転者の死角になり易い車両後方の状況を、車載モニタに表示された画像として視認させ、車両後退時の視認性を向上させることが行われている。
【0003】
また、互いに異なる方向に向けた複数のカメラで撮影された画像を、例えば車両の上方に仮想的に設けられた視点から見下ろした画像に変換(視点変換)するとともに、これらの画像を一つの画像に合成して、車両の周囲画像(俯瞰画像等とも称する)を得ることも行われている。
【0004】
このような周囲画像を得るための視点変換および合成の処理は、各カメラが車両に設置された状態で、その姿勢(傾き角度)が予め設定された設計値の通りにセットされていることが必要であり、姿勢が設計値からずれていると、視点変換および合成の処理によって得られる周囲画像は不正確なものとなる。
【0005】
カメラの姿勢は、そのカメラが車両に設置された初期の段階においては略設計値通りの姿勢となっているが、車両の振動等の影響により経時的に徐々に変化したり、カメラへの接触や車両の事故などによって変化することがある。
【0006】
ところで、カメラの傾きではなく車両が走行する路面に傾斜が有った場合も、その路面の傾斜によって、周囲画像が不正確なものとなるが、その場合の周囲画像を調整する技術が提案されている(特許文献1)。
【0007】
この技術は、車両に取り付けられたジャイロセンサによって車両の傾きを検出し、得られた周囲画像の画像認識結果およびジャイロセンサによる車両の傾きに応じて、周囲画像を補正するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−245821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、この技術は路面の傾きに対応したものであり、カメラの傾きに対応したものではない。
【0010】
また、この技術は走行している路面の傾斜に対応して即時に画像の補正を行う必要があるため、その画像の調整等に要する演算速度が速い高性能の演算処理装置が必要である。
【0011】
しかも、車両が走行する路面の傾きは刻々と変化するが、この変化に対応して画像を表示させるためには、画像の補正を常時行い続ける必要があり、この観点からも演算処理装置が高性能であることが要求される。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、高性能な演算処理装置を必要とせず、かつカメラの姿勢変化によって周囲画像を補正する必要が生じた場合に、適正に周囲画像を補正することができる車両周囲画像撮像システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る車両周囲画像撮像システムは、第1の検出器によって検出されたカメラの傾き角度と第2の検出器によって検出された車両の傾き角度との差(傾き角度差分値)が、予め設定された基準値(車両にカメラを設置した当初の値である初期値や設計値等)から変化したときは、その変化量(ずれ量)に応じて周囲画像の補正を行うものであり、傾き角度差分値を算出する演算処理は軽負荷であるため高性能な演算処理装置を必要としない。
【0014】
また、カメラの傾き角度の変化のみに応じて周囲画像の補正を行うのではなく、車両の傾き角度との相対的な関係(差分)の変化に応じて補正を行うため、適正に周囲画像を補正するものである。
【0015】
すなわち、本発明に係る車両周囲画像撮像システムは、車両に取り付けられた複数のカメラと、前記複数のカメラによって得られた複数の画像を視点変換して合成した単一の周囲画像を生成する画像処理部と、前記複数のカメラのそれぞれの傾きの角度を検出する第1の検出器と、前記車両の傾きの角度を検出する第2の検出器と、前記第1の検出器によって検出されたカメラ傾きの角度と前記第2の検出器によって検出された車両傾きの角度との差である傾き角度差分値を求め、求められた傾き角度差分値の、前記傾き角度差分値について予め設定された基準値に対する差であるずれ量に応じて、前記画像処理部による視点変換および合成の処理を変化させる制御部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る車両周囲画像撮像システムによれば、高性能な演算処理装置を必要とせず、かつ車載カメラの姿勢変化によって周囲画像を補正する必要が生じた場合に、適正に周囲画像を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両周囲画像撮像システムを示すブロック図である。
【図2】フラッシュメモリに記憶されている、ずれ量とマッピングデータとの対応関係を示すテーブル(表)である。
【図3】図1に示した実施形態の車両周囲画像撮像システムの作用を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る車両周囲画像撮像システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態である車両周囲画像撮像システム100の構成を示すブロック図である。
【0020】
図示の車両周囲画像撮像システム100は、車両200の一部を含んだ車両200の周囲の領域を撮影する4つのカメラ10(車両200の前方を撮影する前カメラ11、車両200の後方を撮影する後カメラ12、車両200の右側方を撮影する右カメラ13、車両200の左側方を撮影する左カメラ14)と、各カメラ11〜14にそれぞれ搭載された、各カメラ11〜14のそれぞれの傾きの角度α1〜α4を検出するカメラ傾斜角センサ20(第1の検出器の一例:前カメラ11用のカメラ傾斜角センサ21、後カメラ12用のカメラ傾斜角センサ22、右カメラ13用のカメラ傾斜角センサ23、左カメラ14用のカメラ傾斜角センサ24)と、各カメラ11〜14によって撮影された画像を視点変換(例えば、車両200の真上から見下ろす視点での画像に変換)して合成した単一の俯瞰画像(周囲画像の一例)を生成する視点変換モジュール30(画像処理部の一例)と、車両200の傾きの角度βを検出する車両傾斜角センサ40(第2の検出器の一例)と、各カメラ傾斜角センサ21〜24によって検出された、対応するカメラ11〜14の傾きの角度α1〜α4と車両傾斜角センサ40によって検出された車両200の傾きの角度βとの差である傾き角度差分値γ1〜γ4(γ1=α1−β、γ2=α2−β、γ3=α3−β、γ4=α4−β)を求め、求められた傾き角度差分値γ1〜γ4の、傾き角度差分値γ1〜γ4についてそれぞれ予め設定された基準値Γ1〜Γ4に対する差であるずれ量Δγ1〜Δγ4(Δγ1=γ1−Γ1、Δγ2=γ2−Γ2、Δγ3=γ3−Γ3、Δγ4=γ4−Γ4)に応じて、視点変換モジュール30による視点変換および合成の処理を変化させる表示制御モジュール50(制御部の一例)と、画像を表示する表示装置90(表示部の一例)と、表示装置90に対する表示の制御を行う映像表示モジュール60(制御部の一部機能(警告を表示する機能)を実現する構成の一例)と、各種データを記憶したフラッシュメモリ70とを備えた構成である。
【0021】
ここで、前カメラ11は車両200の前部に設置され、後カメラ12は車両200の後部に設置され、右カメラ13は車両200の右側部に設置され、左カメラ14は車両200の左側部に設置されている。
【0022】
また、視点変換モジュール30、車両傾斜角センサ40、表示制御モジュール50、映像表示モジュール60およびフラッシュメモリ70は、単一のカメラ電子制御ユニット80として、車両200の車室内で乗員の目につきにくい場所に設置されている。
【0023】
これに対して表示装置90は、カメラ電子制御ユニット80とは別体に、車室内で乗員の目に付きやすい場所(例えば、インストルメントパネルやダッシュボード等)に設定されている。
【0024】
各カメラ傾斜角センサ21〜24および車両傾斜角センサ40としては、例えばジャイロセンサを適用することができるが、本発明の車両周囲画像撮像システムにおいては、第1の検出器および第2の検出器としてジャイロセンサ以外のものであっても、傾きの角度を検出する機能を有するものであれば如何なるものを適用してもよい。
【0025】
カメラ電子制御ユニット80における車両傾斜角センサ40が検出する車両200の傾き角度βは、カメラ電子制御ユニット80内での車両傾斜角センサ40の設置姿勢と車両200に対するカメラ電子制御ユニット80の設置姿勢とが組み合わされたものとなる。
【0026】
一方、各カメラ11〜14に設置されたカメラ傾斜角センサ21〜24が検出する各カメラ11〜14の傾き角度α1〜α4は、対応するカメラ11〜14に対するカメラ傾斜角センサ21〜24の設置姿勢と車両200に対する各カメラ11〜14の設置姿勢とが組み合わされたものとなる。
【0027】
ここで、表示制御モジュール50は、上述した視点変換および単一の画像への合成の処理を、予め設定されたマッピングテーブルを用いた変換により行うものであり、このマッピングテーブルは、フラッシュメモリ70にマッピングデータ71として記憶されている。
【0028】
マッピングデータ71としてフラッシュメモリ70に記憶されているマッピングテーブルは、通常は、各カメラ11〜14のそれぞれ基準となる傾き角度(設計値または車両200に各カメラ11〜14を設置した際の初期的な傾き角度である初期値)に対応した標準の1つだけである。
【0029】
しかし、本実施形態の車両周囲画像撮像システム100は、上述した標準のマッピングデータ71(後述するマッピングデータ71g)の他に、互いに異なる複数のマッピングデータ71をフラッシュメモリ70に記憶している。
【0030】
これら複数のマッピングデータ71は、互いに異なるものとして設定されているため、視点変換モジュール30の視点変換および合成の処理に適用するマッピングデータ71を入れ替えることによって、視点変換モジュール30による視点変換および合成の処理の内容を変化させることができる。
【0031】
標準のマッピングデータ71g以外のマッピングデータ71は、各カメラ11〜14のうち1つ以上が上述した基準となる傾き角度からずれている場合(厳密には、車両200に対するカメラ11〜14の相対的な傾き角度(傾き角度差分値γi(i=1〜4)が基準値Γi(i=1〜4)からずれている場合)、そのずれを補正して、ずれが無かった(傾き角度差分値γiが基準値Γiの場合)としたら得られるであろう俯瞰画像に変換するマッピングテーブルである。
【0032】
そして、これら複数のマッピングデータ71のうち1つが、表示制御モジュール50によって選択されてフラッシュメモリ70から読み出され、視点変換モジュール30に送られて、視点変換モジュール30は、その送られてきた1つのマッピングデータ71に基づいて視点変換および合成の処理を行う。
【0033】
表示制御モジュール50による特定のマッピングデータ71の選択は、カメラ傾斜角センサ21〜24によって検出されたカメラ11〜14の傾きの角度α1〜α4と車両傾斜角センサ40によって検出された車両200の傾きの角度βとの差である傾き角度差分値γ1〜γ4と、傾き角度差分値γ1〜γ4について予め設定された基準値Γ1〜Γ4との差であるずれ量Δγ1〜Δγ4に応じたものとなる。
【0034】
ここで、傾きの角度α1〜α4はカメラ11〜14の傾きの角度であるため、単純にカメラ11〜14自体が傾いた場合にも、その傾きの角度α1〜α4は当然に変化するが、カメラ11〜14自体が車両200に対して傾いていない場合であっても、例えば車両200が坂道にあるときは、車両200自体が傾くとともに、傾きの角度α1〜α4も変化する。
【0035】
したがって、傾きの角度α1〜α4が、製造時の初期的な値や設計値等の基準値から変化したとしても、必ずしも、車両200に対するカメラ11〜14の設置状態が変化したとは限らない。
【0036】
一方、傾き角度差分値γ1〜γ4は、車両200に対するカメラ11〜14の相対的な傾き角度であるため、車両200が平地にあるときであっても坂道にあるときであっても、同じ値を示すものである。
【0037】
一方、傾き角度差分値γ1〜γ4が、これら傾き角度差分値γ1〜γ4について設定された基準値Γ1〜Γ4(カメラ11〜14およびカメラ電子制御ユニット80が車両200に設置された際の傾き角度差分値の初期値、または、その傾き角度差分値の設計値等)と同一でなくなったとき(ずれ量Δγ1〜Δγ4がゼロでなくなったとき)は、そのずれ量Δγがゼロでなくなったカメラ11〜14については、車両200に対する傾き角度が変化したと、表示制御モジュール50は判定することができる。
【0038】
そして、表示制御モジュール50は、そのずれ量Δγ1〜Δγ4の大きさに対応する1つのマッピングデータ71を、フラッシュメモリ70に記憶されている複数のマッピングデータ71のうちから選択するように構成されている。
【0039】
ここで、ずれ量Δγiの大きさに対応する1つのマッピングデータ71の特定させるためには、ずれ量Δγiの値ごとに1つのマッピングデータ71を対応させて記憶させていてもよいが、この場合、記憶させておくマッピングデータの数量が膨大なものとなる。
【0040】
そこで、本実施形態の車両周囲画像撮像システム100は、マッピングデータ71は、ずれ量Δγiを所定の数値範囲ごとに区切った範囲ごとにひと纏まりとし、その範囲ごとに1つのマッピングテーブルを対応づけてフラッシュメモリ70に記憶されており、これにより、フラッシュメモリ70に記憶させておくマッピングデータ71の数量を低減し、フラッシュメモリ70の記憶容量を節約している。
【0041】
具体的には、図2の一覧表に示すように、
(1)ずれ量Δγiが−0.5〜+0.5[deg]の範囲のときは、カメラ10の姿勢に変化がない標準のマッピングデータ71g(ずれ量Δγiを0としたときのマッピングデータ)が対応づけられている。
(2)ずれ量Δγiが−1.0〜−0.5[deg]の範囲のときは、カメラ10の姿勢が標準よりも傾き角度−0.5[deg]だけずれた状態での画像に対して俯瞰画像を得るためのマッピングデータ71fが対応づけられている。
(3)ずれ量Δγiが+0.5〜+1.0[deg]の範囲のときは、カメラ10の姿勢が標準よりも傾き角度+0.5[deg]だけずれた状態での画像に対して俯瞰画像を得るためのマッピングデータ71hが対応づけられている。
(4)ずれ量Δγiが−1.5〜−1.0[deg]の範囲のときは、カメラ10の姿勢が標準よりも傾き角度−1.0[deg]だけずれた状態での画像に対して俯瞰画像を得るためのマッピングデータ71eが対応づけられている。
(5)ずれ量Δγiが+1.0〜+1.5[deg]の範囲のときは、カメラ10の姿勢が標準よりも傾き角度+1.0[deg]だけずれた状態での画像に対して俯瞰画像を得るためのマッピングデータ71iが対応づけられている。
(6)ずれ量Δγiが−2.0〜−1.5[deg]の範囲のときは、カメラ10の姿勢が標準よりも傾き角度−1.5[deg]だけずれた状態での画像に対して俯瞰画像を得るためのマッピングデータ71dが対応づけられている。
(7)ずれ量Δγiが+1.5〜+2.0[deg]の範囲のときは、カメラ10の姿勢が標準よりも傾き角度+1.5[deg]だけずれた状態での画像に対して俯瞰画像を得るためのマッピングデータ71jが対応づけられている。
(8)ずれ量Δγiが−2.5〜−2.0[deg]の範囲のときは、カメラ10の姿勢が標準よりも傾き角度−2.0[deg]だけずれた状態での画像に対して俯瞰画像を得るためのマッピングデータ71cが対応づけられている。
(9)ずれ量Δγiが+2.0〜+2.5[deg]の範囲のときは、カメラ10の姿勢が標準よりも傾き角度+2.0[deg]だけずれた状態での画像に対して俯瞰画像を得るためのマッピングデータ71kが対応づけられている。
(10)ずれ量Δγiが−3.0〜−2.5[deg]の範囲のときは、カメラ10の姿勢が標準よりも傾き角度−2.5[deg]だけずれた状態での画像に対して俯瞰画像を得るためのマッピングデータ71bが対応づけられている。
(11)ずれ量Δγiが+2.5〜+3.0[deg]の範囲のときは、カメラ10の姿勢が標準よりも傾き角度+2.5[deg]だけずれた状態での画像に対して俯瞰画像を得るためのマッピングデータ71lが対応づけられている。
(12)ずれ量Δγiが−3.0[deg]以下の範囲のときは、カメラ10の姿勢が標準よりも傾き角度−3.0[deg]だけずれた状態での画像に対して俯瞰画像を得るためのマッピングデータ71aが対応づけられている。
(13)ずれ量Δγiが+3.0[deg]以上の範囲のときは、カメラ10の姿勢が標準よりも傾き角度+3.0[deg]だけずれた状態での画像に対して俯瞰画像を得るためのマッピングデータ71mが対応づけられている。
【0042】
なお、マッピングデータ71は、4つのカメラ11〜14から得られた4つの画像を単一の俯瞰画像に変換するために設定されているものであり、4つのカメラ11〜14のうち、ずれ量Δγがゼロでない(図2に示した対応表においては、ずれ量Δγ1が−0.5〜0.5の範囲以外の)カメラ10が1つでも存在するときは、標準のマッピングデータ71g以外のマッピングデータ71が適用されるのであり、図2に示した対応表では、単純に1つのカメラ10についてのずれ量Δγに、マッピングデータ71が1つ対応づけられているものとして記載しているが、実際には、各カメラ11〜14の各ずれ量Δγ1〜Δγ4組み合わせに応じて1つのマッピングデータ71が対応づけられている。
【0043】
しかも、各カメラ11〜14の傾きの角度α1〜α4は、それぞれ3次元の空間における傾きの角度を一意に特定するために、互いに直交する3つの軸(鉛直方向に延びた鉛直軸(z軸、ヨー軸)に対する傾きの角度(ヨー角)、車両の前後方向に沿って水平に延びた前後軸(x軸、ロール軸)に対する傾きの角度(ロール角)、車両の左右方向に沿って水平に延びた左右軸(y軸、ピッチ軸))に対する傾きの角度(ピッチ角)として規定されるため、カメラ11の傾きの角度α1は、x軸に対する傾きの角度αx1、y軸に対する傾きの角度αy1およびz軸に対する傾きの角度αz1によって規定され、カメラ12の傾きの角度α2は、x軸に対する傾きの角度αx2、y軸に対する傾きの角度αy2およびz軸に対する傾きの角度αz2によって規定され、カメラ13の傾きの角度α3は、x軸に対する傾きの角度αx3、y軸に対する傾きの角度αy3およびz軸に対する傾きの角度αz3によって規定され、カメラ14の傾きの角度α4は、x軸に対する傾きの角度αx4、y軸に対する傾きの角度αy4およびz軸に対する傾きの角度αz4によって規定される。
【0044】
これに伴い、傾き角度差分値γ1〜γ4、基準値Γ1〜Γ4およびずれ量Δγ1〜Δγ4も、それぞれ上記3軸のそれぞれについて規定されている。
【0045】
すなわち、車両200に対するカメラ11の傾き角度差分値γ1のうちx軸に対する傾き角度差分値γx1、y軸に対する傾き角度差分値γy1、z軸に対する傾き角度差分値γz1、基準値Γ1のうちx軸に対する基準値Γx1、y軸に対する基準値Γy1、z軸に対する基準値Γz1、ずれ量Δγ1のうちx軸に対するずれ量Δγx1、y軸に対するずれ量Δγy1、z軸に対するずれ量Δγz1が規定され、車両200に対するカメラ12の傾き角度差分値γ2のうちx軸に対する傾き角度差分値γx2、y軸に対する傾き角度差分値γy2、z軸に対する傾き角度差分値γz2、基準値Γ2のうちx軸に対する基準値Γx2、y軸に対する基準値Γy2、z軸に対する基準値Γz2、ずれ量Δγ2のうちx軸に対するずれ量Δγx2、y軸に対するずれ量Δγy2、z軸に対するずれ量Δγz2が規定され、車両200に対するカメラ13の傾き角度差分値γ3のうちx軸に対する傾き角度差分値γx3、y軸に対する傾き角度差分値γy3、z軸に対する傾き角度差分値γz3、基準値Γ3のうちx軸に対する基準値Γx3、y軸に対する基準値Γy3、z軸に対する基準値Γz3、ずれ量Δγ3のうちx軸に対するずれ量Δγx3、y軸に対するずれ量Δγy3、z軸に対するずれ量Δγz3が規定され、車両200に対するカメラ14の傾き角度差分値γ4のうちx軸に対する傾き角度差分値γx4、y軸に対する傾き角度差分値γy4、z軸に対する傾き角度差分値γz4、基準値Γ4のうちx軸に対する基準値Γx4、y軸に対する基準値Γy4、z軸に対する基準値Γz4、ずれ量Δγ4のうちx軸に対するずれ量Δγx4、y軸に対するずれ量Δγy4、z軸に対するずれ量Δγz4が規定される。
【0046】
この結果、図2に示した対応表では、単純に1つのカメラ10について1つの軸(例えば、ピッチ軸)についてのずれ量Δγに対して、マッピングデータ71が1つ対応づけられているものとして記載しているが、実際には、各カメラ11〜14の各軸に対するずれ量Δγx1、Δγy1、Δγz1、Δγx2、Δγy2、Δγz2、Δγx3、Δγy3、Δγz3、Δγx4、Δγy4、Δγz4の組み合わせごとに、マッピングデータ71が1つずつ対応づけられている。
【0047】
なお、基準値Γ1(Γx1、Γy1、Γz1)、Γ2(Γx2、Γy2、Γz2)、Γ3(Γx3、Γy3、Γz3)、Γ4(Γx4、Γy4、Γz4)の他、各カメラ11〜14の傾きの角度α1〜α4についての基準となる値(カメラ11〜14が車両200に設置された際の傾き角度α1〜α4の初期値、または、その傾き角度α1〜α4の設計値等。以下、カメラ傾き角度基準値Α1、Α2、Α3、Α4という。)および車両200の傾きの角度βについての基準となる値(カメラ電子制御ユニット80が車両200に設置された際の傾き角度βの初期値、または、その傾き角度βの設計値等。以下、車両傾き角度基準値Βという。)も、フラッシュメモリ70に記憶されている。
【0048】
本実施形態は説明の煩雑さを避けるために、1つのカメラ10について1つの軸についてのずれ量Δγに対してマッピングデータ71が1つ対応づけられているものとして説明するが、本発明の現実の実施にあたっては、上述したように各カメラ11〜14の各軸に対するずれ量Δγx1、Δγy1、Δγz1、Δγx2、Δγy2、Δγz2、Δγx3、Δγy3、Δγz3、Δγx4、Δγy4、Δγz4の組み合わせごとに、マッピングデータ71が1つずつ対応づけられているものとし、そのうちの1つが選択されるものとすればよい。
【0049】
フラッシュメモリ70に記憶されているOSDデータ72は、映像表示モジュール60が有するオンスクリーンディスプレイ(On-Screen Display)機能により、表示装置90に俯瞰画像に重畳表示される警告を表す可視情報であり、例えば、「カメラの取り付け角度にずれがあります」等の文字情報を適用することができる。
【0050】
この警告は、例えば図2に示したずれ量Δγiが−3.0以下または3.0以上のときに表示されるものである。
【0051】
すなわち、検出されたずれ量Δγiが予め設定されているずれ量Δγiの上限値(閾値、ずれ量として想定された最大値)である3.0を上回った場合は、表示制御モジュール50が、その上限値のずれ量Δγi=3.0に対応するマッピングデータ71mを選択して、視点変換モジュール30がその選択されたマッピングデータ71mにしたがって各カメラ11〜14で得られた4つの画像を視点変換および合成処理して俯瞰画像を得、映像表示モジュール60が、フラッシュメモリ70に記憶されているOSDデータ72を読み出して、視点変換モジュール30で得られた俯瞰画像にそのOSDデータ72を重畳させて表示装置90に表示出力させる。
【0052】
同様に、検出されたずれ量Δγiが予め設定されているずれ量Δγiの下限値(閾値、ずれ量として想定された最大値(絶対値として))である−3.0を下回った場合は、表示制御モジュール50が、その下限値のずれ量Δγi=−3.0に対応するマッピングデータ71aを選択して、視点変換モジュール30がその選択されたマッピングデータ71aにしたがって各カメラ11〜14で得られた4つの画像を視点変換および合成処理して俯瞰画像を得、映像表示モジュール60が、フラッシュメモリ70に記憶されているOSDデータ72を読み出して、視点変換モジュール30で得られた俯瞰画像にそのOSDデータ72を重畳させて表示装置90に表示出力させる。
【0053】
検出されたずれ量Δγiが予め設定されているずれ量Δγiの下限値である−3.0と上限値である3.0との間の範囲の値の場合は、表示制御モジュール50が、検出されたずれ量Δγiの値に対応する範囲(図2の表の最上段に記載の範囲)に対応するマッピングデータ71(マッピングデータ71b〜71lのうちいずれか1つ)を選択して、視点変換モジュール30がその選択されたマッピングデータ71にしたがって各カメラ11〜14で得られた4つの画像を視点変換および合成処理して俯瞰画像を得、映像表示モジュール60が、視点変換モジュール30で得られた俯瞰画像を表示装置90に表示出力させる。
【0054】
次に、本実施形態の車両周囲画像撮像システム100の作用を、図3に示したフローチャートにしたがって説明する。
【0055】
まず、各カメラ11〜14から、各カメラ11〜14によって撮影された画像が視点変換モジュール30に入力される(S1)。
【0056】
すなわち、前カメラ11によって撮影された車両前方の画像と、後カメラ12によって撮影された車両後方の画像と、右カメラ13によって撮影された車両右側方の画像と、左カメラ14によって撮影された車両左側方の画像とが、カメラ電子制御ユニット80の視点変換モジュール30に入力される。
【0057】
一方、各カメラ11〜14にそれぞれ取り付けられたカメラ傾斜角センサ21〜24が、対応するカメラ11〜14の傾きの角度α1〜α4を検出し、これらの傾きの角度α1〜α4がカメラ電子制御ユニット80の表示制御モジュール50に入力される(S2)。
【0058】
ここで、各カメラ傾斜角センサ21〜24は、各カメラ11〜14ごとに3つの傾きの角度(ヨー角、ロール角、ピッチ角)を検出しているが、以下の説明では、前述したように説明の簡略化のために、各カメラ11〜14の傾きの角度をそれぞれ単一の傾きの角度α1〜α4で代表させている。
【0059】
カメラ傾斜角センサ21〜24がカメラ11〜14の傾きの角度α1〜α4を検出して結果を表示制御モジュール50に入力するタイミングは、カメラ11〜14によって撮影された画像が視点変換モジュール30に入力されるタイミングと同期しているのが好ましいが、必ずしも同期していなくてもよい。
【0060】
また、カメラ電子制御ユニット80の車両傾斜角センサ40が車両200の傾きの角度βを検出し、この傾きの角度βも表示制御モジュール50に入力される(S3)。この傾きの角度βの表示制御モジュール50への入力タイミングも、傾きの角度α1〜α4の表示制御モジュール50への入力タイミングと同期しているのが好ましいが、必ずしも同期していなくてもよい。
【0061】
表示制御モジュール50は、カメラ傾き角度基準値Α1〜Α4をフラッシュメモリ70から読み出して、入力されたカメラ11〜14の傾きの角度α1〜α4とカメラ傾き角度基準値Α1〜Α4との差分Δα1(=α1−Α1)、Δα2(=α2−Α2)、Δα3(=α3−Α3)、Δα4(=α4−Α4)を算出する(S4)。
【0062】
また、表示制御モジュール50は、車両傾き角度基準値Βをフラッシュメモリ70から読み出して、入力された車両200の傾きの角度βと車両傾き角度基準値Βとの差分Δβを算出する(S5)。
【0063】
次いで、表示制御モジュール50は差分Δα1、Δα2、Δα3、Δα4と差分Δβとを大小比較する(S6)。
【0064】
ここで、各カメラ11〜14についての差分Δα1〜Δα4と差分Δβとが全て同じ値のとき(S6においてNoの場合)は、全てのカメラ11〜14が、特付け状態における傾き角度に異常がないことを示していて、この場合は、表示制御モジュール50は、フラッシュメモリ70に記憶されているマッピングデータ71のうち、標準のマッピングデータ71gを選択し(S7)、その選択したマッピングデータ71gを視点変換モジュール30に入力する。
【0065】
視点変換モジュール30は、入力されたマッピングデータ71gにしたがって、カメラ11〜14から入力された画像に対して視点変換処理と合成処理とを併せて行い、単一の俯瞰画像を生成し(S8)、生成された俯瞰画像を映像表示モジュール60に入力する。
【0066】
映像表示モジュール60は、入力された俯瞰画像を表示装置90において可視画像として表示されるように、その表示装置90に対応したエンコードを俯瞰画像に施して、その俯瞰画像を表示装置90に表示させる(S9)。
【0067】
一方、ステップ6(S6)の差分Δα1、Δα2、Δα3、Δα4と差分Δβとの大小比較において、いずれかのカメラ11〜14についての差分Δα1、Δα2、Δα3、Δα4が車両200についての差分Δβと一致しないとき(S6においてYesの場合)は、表示制御モジュール50は、各カメラ11〜14についての傾き角度差分値γ1〜γ4を算出する(S10)。
【0068】
さらに、表示制御モジュール50は、各カメラ11〜14についてのずれ量Δγ1〜Δγ4を算出する(S11)。
【0069】
そして、表示制御モジュール50は、各カメラ11〜14についてのずれ量Δγ1〜Δγ4の組み合わせに対応する1つのマッピングデータ71を、図2に示した対応表から選択し(S12)、その選択したマッピングデータ71を視点変換モジュール30に入力する。
【0070】
ここで、図2に示した表は、1つのずれ量Δγに対して1つのマッピングデータ71が対応して記載されているが、既述したように、実際には、4つのずれ量Δγ1〜Δγ4の組み合わせ、さらに各ずれ量Δγiには3軸(ヨー軸、ロール軸、ピッチ軸)回りのずれ量Δγxi、Δγyi、Δγziが設定されているため、厳密には12個のずれ量Δγx1、Δγy1、Δγz1、Δγx2、Δγy2、Δγz2、Δγx3、Δγy3、Δγz3、Δγx4、Δγy4、Δγz4の組み合わせに対応して、1つのマッピングデータ71が設定されている。
【0071】
また、表示制御モジュール50は、算出されたずれ量Δγiが想定されている上限値の3.0を上回った場合や想定されている下限値の−3.0を下回った場合(S13においてYesの場合)は、その旨を表す警告フラグを立てて(S14)、その警告フラグを、選択されたマッピングデータ(この警告フラグが立てられたときに選択されたマッピングデータはマッピングデータ71aまたはマッピングデータ71mである。)とともに視点変換モジュール30に入力する。
【0072】
算出されたずれ量Δγiが想定されている上限値3.0と下限値−3.0の間のときは(S13においてNoの場合)は、選択されたマッピングデータ71を視点変換モジュール30に入力する。
【0073】
視点変換モジュール30は、入力されたマッピングデータ71にしたがって、カメラ11〜14から入力された画像に対して視点変換処理と合成処理とを併せて行い、単一の俯瞰画像を生成し(S8)、生成された俯瞰画像を映像表示モジュール60に入力する。
【0074】
警告フラグがたてられているとき(S14)は、警告フラグも映像表示モジュール60に入力する。
【0075】
映像表示モジュール60は、入力された俯瞰画像を表示装置90において可視画像として表示されるように、その表示装置90に対応したエンコードを俯瞰画像に施して、その俯瞰画像を表示装置90に表示させる(S9)。
【0076】
ここで、警告フラグが立てられているとき(S15においてYesの場合)は、映像表示モジュール60が、フラッシュメモリ70に記憶されているOSDデータ72を読み出して、視点変換モジュール30で得られた俯瞰画像にそのOSDデータ72を重畳させて表示装置90に表示出力させる(S16)。
【0077】
警告フラグが立てられていないときは、表示装置90にOSDデータ72を重畳表示させることなく処理を終了する。
【0078】
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る車両周囲画像撮像システム100によれば、各カメラ11〜14に設けたカメラ傾斜角センサ21〜24により検出されたカメラ11〜14の傾きの角度α1〜α4と車両200に設けた車両傾斜角センサ40によって検出された車両200の傾きの角度βとの差分である傾き角度差分値γ1〜γ4を算出し、これらと基準値Γ1〜Γ4との差であるずれ量Δγ1〜Δγ4に応じて、予め設定されたマッピングデータ71の1つを選択するだけの簡単な演算で、カメラ11〜14の姿勢変化(傾きの角度の変化)によって生じた誤差を補正した状態の俯瞰画像を得ることができる。
【0079】
したがって、先行技術のような高度の演算処理を行う必要が無いため、高性能の演算処理装置を必要としない。
【0080】
しかも、俯瞰画像の生成は、予め設定されたマッピングデータ71を用いた変換により行うものであり、俯瞰画像を得るための演算処理の負荷を軽減することができる。
【0081】
また、本実施形態の車両周囲画像撮像システム100によれば、カメラ11〜14の姿勢(傾きの角度α1〜α4)の変化のみによって俯瞰画像を補正する必要があるか否かを判定するのではなく、車両200の傾きの角度βとの相対的な関係の大きさに基づいて、補正をする必要性を判定していることになるため、車両200に対するカメラ11〜14の設置姿勢には問題がないにも拘わらず、例えば車両200が坂道を走行している状況等において、カメラ11〜14の設置姿勢に変化が生じた等の誤った判定を行うことがなくなり、真に俯瞰画像の補整が必要な場合に、適正に俯瞰画像を補正することができる。
【0082】
さらに、ずれ量Δγiが予め設定された閾値である上限値(3.0)を上回ったときは、複数のマッピングデータ71のうち、ずれ量Δγiとして想定された最大値3.0に対応したマッピングデータ71mを選択するとともに、または、ずれ量Δγiが予め設定された閾値である下限値(−3.0)を下回ったときは、複数のマッピングデータ71のうち、ずれ量Δγiとして想定された最小値−3.0に対応したマッピングデータ71aを選択するととも、選択されたマッピングデータ71mまたは71aに基づいて生成され、表示装置90に表示された俯瞰画像に、警告を表す可視情報であるOSDデータ72が併
せて表示されるため、カメラ11〜14の設置姿勢が基準値から大きくずていることを、表示装置90に可視的に表示されたOSDデータ72によって、車両200の使用者に視認させることができ、これによってカメラ11〜14の設置状態の点検や修理を早期に促すことができる。
【0083】
なお、表示装置90は、オンスクリーンディスプレイ(On-Screen Display)機能を有し、上述した警告を表す可視情報をオンスクリーンディスプレイ機能によって、俯瞰画像に重畳して表示することで、画像データ上での重畳的処理を行う必要がなく、簡単に重畳表示を行うことができる。
【0084】
本実施形態の車両周囲画像撮像システム100は、上述した処理のうちステップ2(S2)〜ステップ16(S16)の補正を行うタイミングは、カメラの傾きの角度αiに物理手的なずれが有る場合(例えば、接触等によってカメラ10が物理的に、その傾き角度αiが変化した場合等)や、車両200の傾きの角度βとの関係で、相対的に傾きの角度が変化したように見える場合(車両200が走行する道路が傾いているために、表示装置90に表示される画像がずれているように見える場合等)を想定して、以下のタイミングに設定されている。
【0085】
すなわち、下記(1)から(3)のうち少なくとも1つのタイミングで行うように設定されている。
(1)カメラ電子制御ユニット80への電源投入時
(2)低速走行時に、予め定めた周期でカメラ10の傾きの角度αiを検出し、一定時間内にその傾きの角度αiが変化しなかったとき
(3)停車時に、予め定めた周期でカメラ10の傾きの角度αiを検出し、一定時間内にその傾きの角度αiが変化しなかったとき
そして、本実施形態の車両周囲画像撮像システム100は、上述したタイミングでのみ補正を行うため、常時補正のための処理を行っている先行技術のものと比べて、処理の負荷を軽減することができる。
【0086】
(実施例1)
上述した実施形態において、カメラ傾き角度基準値Αiが例えば20[度]、車両傾き角度基準値Βが例えば5[度]であり、検出されたカメラ10の傾きの角度αiが例えば25[度]、車両200の傾きの角度βが例えば10[度]であったとき、カメラ10についての差分Δαも車両200についての差分Δβも、ともに5[度]であるため、図3に示した処理におけるステップ6(S6)では、差が無いとの判定となり、標準のマッピングデータ71gが選択されて(S7)、そのマッピングデータ71gで規定される俯瞰画像が表示される(S9)。
【0087】
このとき、OSDデータ72の重畳表示(S16)はない。
【0088】
(実施例2)
上述した実施形態において、カメラ傾き角度基準値Αiが例えば20[度]、車両傾き角度基準値Βが例えば5[度]であり、検出されたカメラ10の傾きの角度αiが例えば26[度]、車両200の傾きの角度βが例えば10[度]であったとき、カメラ10についての差分Δαは6[度]、車両200についての差分Δβは5[度]であるため、図3に示した処理におけるステップ6(S6)では、差が有るとの判定となり、ステップ7(S7)において傾き角度差分値γiを算出し、算出結果として16[度]を得る(S10)。
【0089】
次いで、ずれ量Δγiを算出するが、基準値Γiはカメラ傾き角度基準値Αiと車両傾き角度基準値Βとの差である15[度]であるから、ずれ量Δγiは1[度]と算出される(S11)。
【0090】
この結果、マッピングデータ71は、図2に示した表にしたがって、1[度]のずれ量Δγiに対応したマッピングデータ71iが選択されて(S12)、そのマッピングデータ71iで規定される俯瞰画像が表示される(S9)。
【0091】
このときも、OSDデータ72の重畳表示(S16)はない。
【符号の説明】
【0092】
10,11,12,13,14 カメラ
20,21,22,23,24 カメラ傾斜角センサ
30 視点変換モジュール
40 車両傾斜角センサ
50 表示制御モジュール
60 映像表示モジュール
70 フラッシュメモリ
71,71a〜71m マッピングデータ
72 OSDデータ
80 カメラ電子制御ユニット
90 表示装置
100 車両周囲画像撮像システム
200 車両

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられた複数のカメラと、
前記複数のカメラによって得られた複数の画像を視点変換して合成した単一の周囲画像を生成する画像処理部と、
前記複数のカメラのそれぞれの傾きの角度を検出する第1の検出器と、
前記車両の傾きの角度を検出する第2の検出器と、
前記第1の検出器によって検出されたカメラ傾きの角度と前記第2の検出器によって検出された車両傾きの角度との差である傾き角度差分値を求め、求められた傾き角度差分値の、前記傾き角度差分値について予め設定された基準値に対する差であるずれ量に応じて、前記画像処理部による視点変換および合成の処理を変化させる制御部と、を備えたことを特徴とする車両周囲画像撮像システム。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記視点変換および合成の処理を、マッピングテーブルを用いた変換により行うものであり、
前記マッピングテーブルとして、前記ずれ量に対応して互いに異なる複数のマッピングテーブルを備え、
前記制御部は、前記画像処理部による視点変換および合成の処理に用いられるマッピングテーブルを、前記複数のマッピングテーブルのうちから、前記ずれ量に対応したマッピングテーブルを選択することにより、前記視点変換および合成の処理を変化させるものであることを特徴とする請求項1に記載の車両周囲画像撮像システム。
【請求項3】
前記マッピングテーブルは、前記ずれ量の範囲ごとに対応して設定されていて、前記制御部は、前記ずれ量の範囲に対応したマッピングテーブルを選択することを特徴とする請求項2に記載の車両周囲画像撮像システム。
【請求項4】
前記画像処理部により生成された前記周囲画像を表示する表示部を備え、
前記制御部は、前記ずれ量が予め設定された閾値を超えたときは、前記複数のマッピングテーブルのうち、前記ずれ量として想定された最大値に対応したマッピングテーブルを選択するとともに、前記選択されたマッピングテーブルに基づいて生成され、前記表示部に表示された周囲画像に、警告を表す可視情報を併せて表示させることを特徴とする請求項2または3に記載の車両周囲画像撮像システム。
【請求項5】
前記表示部は、オンスクリーンディスプレイ(On-Screen Display)機能を有し、前記警告を表す可視情報を前記オンスクリーンディスプレイ機能によって、前記周囲画像に重畳して表示することを特徴とする請求項4に記載の車両周囲画像撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−20308(P2013−20308A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151035(P2011−151035)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000001487)クラリオン株式会社 (1,722)
【Fターム(参考)】