説明

車両周辺視認装置

【課題】 運転者の意志により、必要な時に即座に周辺画像を表示できる車両周辺視認装置を提供する。
【解決手段】 運転者は運転中、視界が悪い場面に遭遇したとき、コマンド『モニタ』を発声すると、音声認識制御部60がこの音声を認識し、切替部40に対して撮像部10の画像信号を表示部80に送るように切り替えさせる切り替え信号を発する。すると、切替部40はそれに応じて、撮像部10からの画像信号のみを表示部80に送るよう切り替える。これにより車両前方の左右の様子を表示部に表示させ、安全を確認した後には、運転者が、コマンド『モニタオフ』の発声を行い、それを音声認識制御部60が認識し、切替部40を制御して元の表示画面に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車両外部に搭載された撮像手段により、車両周辺における、ともにほぼ水平かつ互いにほぼ反対方向の2方向の周辺画像を同時に撮像し、当該画像を前記車両内部に設けられた表示手段において視認可能に表示する車両周辺視認装置に関する。
【0002】
【従来の技術】交差点、細街路から幹線道路への進入、車庫から道路への進入など見通しの悪い場所では、運転者は車両周辺の状況に気を配る必要があり、適切な場所で適切な時に、車両の前方左右の情景を撮像した画像(以下「周辺画像」という)を表示することが、課題となっている。これに対応して、従来より特開平08−293098号公報、特開平10−264722号公報に記載されるような周辺画像を撮像する撮像装置を備えた車両周辺視認装置が開発されている。
【0003】これらのうち、特開平08−293098号公報の装置では、予めカーナビゲーションシステムに見通しの悪い交差点を登録しておき、走行中にカーナビゲーションシステムの車両位置検出装置が監視位置に到達したことを検出すると、撮像装置を起動させ、車両左右側方の周辺画像を取り込んで、それを車室内のディスプレイに表示する。
【0004】また、特開平10−264722号公報の装置では車速およびシフトポジション(ドライブまたはニュートラルなど)を検知し、車速およびシフトポジションが所定の条件を満たすと、撮像装置により得られる周辺画像を車室内のディスプレイに表示させるようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、見通しの悪い状況は、予め登録されている交差点のみならず、その他の交差点等においても日常的に発生している。また車速、シフトポジションなどで判断すると、必要のない場面で周辺画像が表示される場合がある。たとえば、渋滞、信号待ちなどである。
【0006】この発明は、従来技術における上述の問題の克服を意図しており、運転者の意志により、必要な時に即座に周辺画像を表示できる車両周辺視認装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、請求項1の発明は、車両外部に搭載された撮像手段により、車両周辺における、ともにほぼ水平かつ互いにほぼ反対方向の2方向の周辺画像を同時に撮像し、当該周辺画像を前記車両内部に設けられた表示手段において視認可能に表示する車両周辺視認装置であって、さらに、前記表示手段を、前記周辺画像を表示する第1表示状態とその他の表示状態である第2表示状態とで切り替える切替手段と、運転者の音声による少なくとも周辺表示開始命令を認識し、当該周辺表示開始命令に基づいて前記切替手段による前記第2表示状態から前記第1表示状態への切り替えを制御する音声認識制御手段と、を備えている。
【0008】また、請求項2の発明は、請求項1に記載の車両周辺視認装置であって、前記音声認識制御手段が、さらに、運転者の音声による周辺表示終了命令を認識し、当該周辺表示終了命令に基づいて前記切替手段による前記第1表示状態から前記第2表示状態への切り替えをも制御している。
【0009】さらに、請求項3の発明は、請求項1に記載の車両周辺視認装置であって、さらに、車両の速度および加速度のうちの少なくとも一方を検出する検出手段と、前記検出手段による速度および加速度のうちの少なくとも一方の検出結果に基づいて車両が発進状態にあるか否かを判断し、発進状態にあると判断された場合に、前記切替手段による前記第1表示状態から前記第2表示状態への切り替えを制御する制御手段と、を備えている。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0011】<1.第1の実施の形態>図1はこの発明の第1の実施の形態に係る車両周辺視認装置1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、車両周辺視認装置1は、自動車に搭載され、主に撮像部10、自動車の位置およびその進路を知らせる公知のカーナビゲーションシステム(以下「カーナビゲーション」と略称する)20、テレビ放送電波を受信して映像信号を得るテレビチューナ30、切替部40、入力部50、音声認識制御部60、マイク70、表示部80を備えた装置である。
【0012】図2は車両周辺視認装置1における撮像部10の自動車に搭載した状態を示す斜視図である。撮像部10は、車両前方左右の情景を撮像する公知の撮像手段であり、車両前部のバンパー5上面中央のナンバープレート6近傍において、左右からの光(入射光L)を入射させる受光部11をバンパー5上方に露出させた状態で設置されている。
【0013】以下、撮像部10の構成の概要を説明する。図2に示したようにケース110のX軸の正側及び負側の側面には、入射光Lを透過させる透明の窓部111(一方図示省略)がそれぞれ設けられている。また、受光部11は図示しない光学系を防水性のケース110(図2参照)内に収納した構造となっている。そして、窓部111から入射した左右からの入射光Lはその光学系によって、それぞれ個別にバンパー5内部に設けられた図示しないCCDイメージセンサの受光面に集光されるようになっている。
【0014】このような構成により、撮像部10は受光部11の2つの窓部111に入射した光をCCDイメージセンサによって捉えることにより、車両前方左右の情景の画像である周辺画像の画像信号を生成することができる。
【0015】切替部40は、各種映像機器、第1の実施の形態では、撮像部10、カーナビゲーション20、テレビチューナ30のうちのいずれからの画像信号を、後述する表示部80に送信するかを切り替える切替手段である。これにより、どの映像機器による画像を表示部80に表示するかを切り替える。なお、この切り替えは、後述の入力部50および音声認識制御部60からの切り替え信号によって切り替えられるものとなっている。
【0016】入力部50は、通常の切替操作、すなわち、搭乗者による手動の表示切り替えを行うためのスイッチであり、車室内の搭乗者の手が届く範囲内に設置されている。入力部50は搭乗者による操作に応じて切替部40に切り替え信号を送信する。
【0017】音声認識制御部60は、図示しないCPU、RAM、ROM等を備えたマイクロコンピュータにより構成されており、運転者の車両周辺画像を表示する意志を認識するとともに、それに応じて切替手段による表示部80の表示切り替えを制御する音声認識制御手段である。この音声認識制御部60は、公知の音声認識手法を実現するプログラムを備えており、マイク70によって得られた運転者の発した肉声の音声信号を得ることができる。具体的な音声認識手法としては、以下のような方法を用いている。まず、マイク70により音声信号を周波数分析し、これを所定の音素モデルを参照して音素分解した後に、誤り率を低減するために所定の単語モデルを参照して単語認識して、後述する特定のコマンドのみを認識する。その際、予めROMに記憶された上記音素モデル、単語モデルを含む辞書ファイルを参照する。
【0018】また、音声認識制御部60は得られたコマンドに対応して切替部40による表示切替えを制御する。具体的には、コマンドに対応した切り替え信号を切替部40に送信することにより行う。
【0019】表示部80は、車室内に設置され、図示しない表示制御回路を備えた液晶ディスプレイであり、映像機器としての撮像部10、カーナビゲーション20、テレビチューナ30からの画像信号を基に画像を表示する。
【0020】つぎに、車両周辺視認装置1の音声による車両周辺表示とその他の表示との切り替え動作について説明する。
【0021】運転中、撮像部10以外の映像機器、具体的にはカーナビゲーション20またはテレビチューナ30による画像を表示部80で表示した状態(第2表示状態)で、視界が悪い場面に遭遇したときなどに、運転者は周辺画像の表示開始に対応するコマンド(周辺表示開始命令)として『モニタ』と発声する。すると、音声認識制御部60がこの音声を認識し、切り替え信号を発する。すると、切替部40はその切り替え信号を受け取り、それに応じて撮像部10からの周辺画像の画像信号のみを表示部80に送るよう切り替える。
【0022】図3は表示部80による周辺視認画面の状態を示す図である。第1の実施の形態の車両周辺視認装置1における表示部80では、撮像部10によって得られた車両前方の左右の様子を同時に同一画面上に分割表示する(第1表示状態)。つまり、左右の像、すなわち、撮像部10の受光部11における2つの窓部111に入射する入射光Lによる2つの像のそれぞれ(左画像81aおよび右画像81b)を合成して周辺画像81として同一の画面に表示させる。
【0023】このようにして車両前方の左右の様子を表示部80に表示させ、それを運転者が視認して安全を確認した後には、運転者が、周辺画像の表示終了に対応するコマンド(周辺表示終了命令)として『モニタオフ』と発声する。すると、それを音声認識制御部60が認識し、切替部40を制御して表示部80による表示を元の表示画面(第2表示状態)に切り替える。
【0024】このような音声による切り替えにより、運転者が必要なときに、ハンドルから手を離すことなく、即座に車両周辺画像を表示することができ、安全性が向上する。
【0025】以上説明したように、この発明の第1の実施の形態によれば、運転者の音声による周辺表示開始命令であるコマンド『モニタ』を認識し、そのコマンドに基づいて表示部80の表示状態を第2表示状態から第1表示状態へ切り替えるため、運転者の意志により、ハンドルから手を離すことなく必要な時に即座に周辺画像を表示できる。
【0026】また、さらに、運転者の音声による周辺表示終了命令であるコマンド『モニタオフ』を認識し、そのコマンドに基づいて表示部80の表示状態を第1表示状態から第2表示状態へ切り替えるので、運転者の意志により、周辺画像の表示が不要になると即座に周辺画像の表示を終了できる。
【0027】また、コマンドが上記『モニタ』、『モニタオフ』のように限定された単語のみによるものであるので、多語彙の音声認識を行う場合に比べて、音声認識のための辞書ファイルが小さくて済み(上記の音声認識手法では、音素モデルや単語モデルが小さく、文認識が不要なので言語モデルも不要)、高い認識率を得られるとともに、辞書ファイルを記憶するために必要な記憶素子の記憶容量が小さくて済む。
【0028】<2.第2の実施の形態>図4は第2の実施の形態に係るに係る車両周辺視認装置2の構成を示すブロック図である。第1の実施の形態では、元の画像への切り替えを、周辺画像の表示終了に対応するコマンド『モニタオフ』の音声を認識し、それに基づいて行うものとしたが、第2の実施の形態では車両の速度(以下「車速」という)または加速度によって車両の動作状態を検出し、それに基づいて周辺画像の表示を終了するものとしている。
【0029】すなわち、図4に示すように、車速を検知する速度計90および、車速の変化を基に加速度を算出するとともに、速度および加速度の少なくとも一方に基づいて、車両が停止または徐行の状態から通常の走行速度に移行する発進状態にあるか否かを判断し、発進状態にあると判断された場合に、周辺画像の表示を終了させる(上記第1表示状態から第2表示状態へ切り替える)ように切替部40を制御する制御部95を備えている。具体的な制御としては、速度計90により検出された車速が所定以上に上昇した時、例えば30km/h以上になった時や、その車速を基に制御部95において求められた加速度が所定以上上昇した時、例えば0.1G以上になったときに、車両が発信状態にあると判断して表示部80による周辺画像の表示を終了する。
【0030】なお、周辺画像の表示開始は第1の実施の形態と同様に、運転者により発声されるコマンド『モニタ』(周辺表示開始命令)の音声に対応して行うことは第1の実施の形態と同様であり、その他、各部の装置構成も第1の実施の形態と同様である。
【0031】このような構成を備えるので、第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、運転者の意志により、ハンドルから手を離すことなく必要な時に即座に周辺画像を表示できることに加え、さらに、速度および加速度のうちの少なくとも一方の検出結果に基づいて、表示部80における周辺画像の表示を終了させることができ、その操作のための運転者の作業負担を軽減できる。
【0032】<3.変形例>上記実施の形態において車両周辺視認装置の例を示したが、この発明はこれに限定されるものではない。
【0033】例えば、上記実施の形態では、予め設定されたコマンド『モニタ』および『モニタオフ』を認識するものとしたが、フラッシュROM等の不揮発性の記憶手段を備え、これらのコマンドに対応する任意の言葉を運転者が吹き込み、これを基に得られた音素モデル、単語モデル等を不揮発性の記憶手段に記憶しておき、音声認識の際に参照するなど、運転者の任意に設定できるものとしてもよい。
【0034】また、上記実施の形態では、運転者が発声したコマンドのみを受け付けるものとしたが、同乗者の発声したコマンドをも受け付けるものとしてもよい。
【0035】さらに、上記実施の形態では、コマンド『モニタ』に対応して表示画面を切り替えて周辺画像を表示した(第1表示状態)後、コマンド『モニタオフ』に対応して元の表示画面(第2表示状態)に戻すものとしたが、表示手段のオン/オフの切り替えも切替手段により行えるものとし、表示手段(表示部80)による元の表示状態がオフ状態(第2表示状態)であった場合には、コマンド『モニタ』に対応して表示手段による表示を開始した後、周辺画像を表示し、コマンド『モニタオフ』に対応して表示手段をオフする(第2表示状態)ものとしてもよい。
【0036】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1ないし請求項3の発明によれば、運転者の音声による少なくとも周辺表示開始命令を認識し、当該周辺表示開始命令に基づいて表示手段の表示状態を第2表示状態から第1表示状態へ切り替えるため、運転者の意志により、必要な時に即座に周辺画像を表示できる。
【0037】特に、請求項2の発明によれば、さらに、運転者の音声による周辺表示終了命令を認識し、当該周辺表示終了命令に基づいて前記表示手段の表示状態を第1表示状態から第2表示状態へ切り替えるので、運転者の意志により、周辺画像の表示が不要になると即座に周辺画像の表示を終了できる。
【0038】特に、請求項3の発明によれば、さらに、速度および加速度のうちの少なくとも一方の検出結果に基づいて車両が発進状態にあるか否かを判断し、発進状態にあると判断された場合に、表示手段の表示状態を第1表示状態から第2表示状態へ切り替えるため、周辺画像の表示を自動的に終了させることができ、そのための運転者の作業負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態に係る車両周辺視認装置の構成を示すブロック図である。
【図2】車両周辺視認装置における撮像部の自動車に搭載した状態を示す斜視図である。
【図3】表示部による周辺視認画面の状態を示す図である。
【図4】第2の実施の形態に係るに係る車両周辺視認装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1,2 車両周辺視認装置
10 撮像部
40 切替部
60 音声認識制御部
80 表示部
90 速度計(速度の検出手段)
95 制御部(90と併せて加速度の検出手段、制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両外部に搭載された撮像手段により、車両周辺における、ともにほぼ水平かつ互いにほぼ反対方向の2方向の周辺画像を同時に撮像し、当該周辺画像を前記車両内部に設けられた表示手段において視認可能に表示する車両周辺視認装置であって、さらに、前記表示手段を、前記周辺画像を表示する第1表示状態とその他の表示状態である第2表示状態とで切り替える切替手段と、運転者の音声による少なくとも周辺表示開始命令を認識し、当該周辺表示開始命令に基づいて前記切替手段による前記第2表示状態から前記第1表示状態への切り替えを制御する音声認識制御手段と、を備えることを特徴とする車両周辺視認装置。
【請求項2】 請求項1に記載の車両周辺視認装置であって、前記音声認識制御手段が、さらに、運転者の音声による周辺表示終了命令を認識し、当該周辺表示終了命令に基づいて前記切替手段による前記第1表示状態から前記第2表示状態への切り替えをも制御することを特徴とする車両周辺視認装置。
【請求項3】 請求項1に記載の車両周辺視認装置であって、さらに、車両の速度および加速度のうちの少なくとも一方を検出する検出手段と、前記検出手段による速度および加速度のうちの少なくとも一方の検出結果に基づいて車両が発進状態にあるか否かを判断し、発進状態にあると判断された場合に、前記切替手段による前記第1表示状態から前記第2表示状態への切り替えを制御する制御手段と、を備えることを特徴とする車両周辺視認装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2001−219783(P2001−219783A)
【公開日】平成13年8月14日(2001.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−34832(P2000−34832)
【出願日】平成12年2月14日(2000.2.14)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】