説明

車両室内用内張り要素

【課題】広い面積で形成しうる、発光面を有する光学的及び触覚的に心地よい内張り部品を提供する。
【解決手段】自動車の室内用の内張り要素1において、基部2に、車両の室内4に面し光の出力に適した表面側に、半透明の保護層3を設ける。触覚特性を改善するため、保護層3は、弾力的に圧縮可能で、好ましくは半透明となるよう構成される。基部2は、例えば、プレート状の光伝導体10として構成され、伝導体は、独立した光生成器7、例えば発光ダイオード8に操作上連結されている。さらに別の手法としては、例えばエレクトロルミネセンスフィルムを貼付することで、光生成器7として直接基部2を形成することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両室内に面し発光に適した表面側に、半透明の保護層を設けた基部を有する内張り要素であって、車両、特に自動車の室内用の内張り要素に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許発明第 198 22 425 C1号明細書は、自動車の室内で使用する汎用タイプの内張り部品を開示している。これは、透明で、室内側に天然石の保護層を装着した光伝導基部を具備している。この天然石は、視覚的効果を得るため光の透過を可能にするよう十分に薄く裁断され、接着剤を用いて基部に結合される。オプションとして、この保護層は、粘着性の透明ニスで施工することも可能で、このニスは、事故による天然石の破砕の際、破片の飛散を防止する。
【0003】
このややエキゾチックな構造は、小さい、特に幅の狭い構成部品、例えば装飾用ストリップ等に、必然的により多く使用されがちである。
【0004】
この種の内張り部品は、室内側に使用される素材であるため、その分不快な感触をもたらす硬い表面を有する。
【0005】
さらに、独国特許出願公開第 198 45 100 A1号明細書では、エラストマー製の、おそらく透明の、基部の差込口にぴったりと嵌合する外側素材を有する内張り部品が開示されている。視覚的効果を得るため、外側素材に照明装置を埋め込んでもよい。
この構造においては、心地よい感触は生成可能であるが、光の強度が部分的に異なるため、光学的印象は不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、広い面積で形成しうる、発光面を有する光学的及び触覚的に心地よい内張り部品を提供する目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、この目的は、保護層が弾力的に圧縮可能となるよう構成されることによって達成される。
【0008】
この保護層は、好ましくは半透明となるよう構成され、その可視スペクトル域における光透過性(380〜780nm、通常550nmで測定される)は1〜25%、特に5〜10%である。
【0009】
本発明のある実施形態によれば、基部は、照明装置、例えば白熱灯又は発光ダイオード(LED)等と操作上連結されたプレート状光伝導体として構成される。この光伝導体は、好ましくは透明プラスチック、特にPMMA又はPCからなり、光伝導体の室内に面した表面側に光の出力を引き起こすことが可能な構造を有する。このタイプの構造は、例えば、光伝導体の表面に対するレーザー切除あるいはサンドブラストを用いた処理によって生成可能であるが、さらに、射出成形用金型の構築によって又はプリント加工によって、生成されてもよい。選択された形態次第で、この構造は、2つ表面の片側又は両側にも、あるいは適切な場合は、光伝導体内にも設置することができる。
【0010】
別の方法として、プレート状基部を、光生成器として直接形成し、例えば、エレクトロルミネセンスフィルム(ELフィルム)を具備するよう構成してもよい。ELフィルムは、立体的な裁断及び変形が可能な発光フィルムであり、さらにこのフィルムは、ランバート・ラジエータとして周知のように、あらゆる視野方向において均一であり、青から黄色まで(480〜580nm)広がる実質的には単彩の光と、それらの混合色、例えば白色を放射する。しかしながら、原理上は、他の平面発光体、例えばOLED(有機発光ダイオード)又はpolyLEDも使用可能である。
【0011】
半透明で弾力的に圧縮可能な保護層は、好ましくは、エラストマー、特にEPDM、シリコーン又はポリウレタンからなり、こうしたエラストマーは、その厚さ全体に亘ってあるいは部分的に、それ自体の硬度を低下させる発泡体構造を有する。このエラストマーは、内張り要素全体に車両室内に広がる大気条件下で心地よい感触を付与するため、好適には、室温で20〜70ショアA 、特に約40ショアAの硬度を有する。
【0012】
本発明の別の実施形態によれば、この保護層は、室内に向かってフィルムによって覆われたジェル状物質でできた層を具備し、このジェル状物質は、好ましくは室温で0.01〜10Pa・s、特に0.1〜1Pa・sの動的粘度(蜂蜜状)を有し、(室内側の内張り要素の表面に触れて)部分的圧力がかかると、フィルムの下のジェルを充填した隙間の残りの部分に粘着的に脇へと退避する。
【0013】
このジェル状物質は、好ましくは、2つのフィルムの間に配置され、この形で、平面基部に対して接着的に接合されてよい。室内側のフィルムは、保護層の剛性を過度に増加させないためには、第1として比較的薄い厚さでなければならないが、第2として十分な強度を備えなければならない。例えば、0.1〜1.5mm、特に0.5〜1.0mmの厚さを備えたポリウレタンフィルムが好適である。
【0014】
保護層全体の厚さは、好ましくは1.0〜5.0mm、特に2.0〜3.0mmであり、その結果、それらの縁端部には、内張り要素全体の印象を最適化する、視覚的かつ触知可能な曲線を設けることができる。
【0015】
図は、本発明の例示的かつ概略的な様々な実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る内張り部品の長手方向断面図である。
【図2】本発明に係る他の内張り要素の長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示す内張り要素1は、厚さDを有する基部2と、厚さDを有する保護層3とを具備する。この基部2は、車両室内4に向いた構造面5を有する透明プラスチック製の射出成形物として形成される。発光ダイオード8の形式の独立した光生成器7によって生成された光(矢印Aで図解的に示す)は、一体成形された側方光経路6(代替的に、グラスファイバ光伝導体を用いてもよい)を経由して、鏡面を設けた階段状の形をした偏光ゾーン9を用ることによって、基部2の水平な平面光伝導体10へ供給され、そこで内張り要素1の表面を覆うように分散される。
【0018】
構造面5を経由して、光は保護層3に進入し、この保護層は、半透明のエラストマーからなり、透明接着剤11を用いることにより基部2に接着的に接合されている。この保護層3は、コンパクトな素材の2つの外層12、13と、発泡体素材の発泡核層14とを有し、この核層は、基部2の構造面5に平行に延びている。この発泡核層14は、まず保護層3の圧縮性を増大させ、さらに、散乱を用いてより均一な光の通過を実現する。従って内張り要素1は、保護層3が接触により押圧されると(矢印B)弾力的に圧縮して変形されうるため、均一な光の出現と心地よい感触を有する。内張り要素1の縁取り材16から突出する、保護層3の部分の丸みを帯びた縁端部15は、触れられた場合に再度好適な印象を与える効果を高める。
【0019】
図2に係る実施形態においては、基部2は、平面支持体17を具備し、この支持体は、光特性に関しては所望に設計可能であり、車両室内4に向いた表面側にエレクトロルミネセンスフィルム18の形で光生成器7を装備している。この光生成器は、保護層3に対して直接的に非常に均一に矢印A方向に進入する光を生成する。
【0020】
半透明の保護層3は、その部分に、上部及び下部の半透明で柔軟なプラスチックフィルム19、20を具備し、これらプラスチックフィルムはその縁端部で互いに堅く接合されている。プラスチックフィルム19、20の間の空間には、混濁したジェル状物質21が充填されており、このジェル状物質は、室内に面した保護層3の表面に圧力(矢印B)がかかると、粘着的に横方向(矢印C)に退避する。
【0021】
選択された実施形態にかかわらず、保護層3は、可視スペクトル域において1〜25%、特に5〜10%、の光透過性を備え、全体として半透明な状態で作用する。この半透明性は、第1に光生成器7から車両室内4へ際立った量の光を放射するのに十分でありつつも、第2にたとえ暗闇でも眩しくなく心地よい、極めて均一な発光状態の達成をもたらす。さらに、所望の半透明性が全体として維持されるならば、付加的に半透明の織物被覆材を備えた保護層3を設けることが可能である。同様に、内在的に透明な基礎本体に対し薄い不透明層を貼付することで、これを生成することも可能である。
【0022】
本発明に係る内張り要素は、原理上、例えば立体的に成形された天井内張り、ドア被覆、ピラー被覆、サンバイザー、又は車両シートの背もたれの背面被覆材として、あらゆる所望の形状及び寸法に、設計可能である。照明を用いることで、車両室内全体に心地よい雰囲気を創り出すことが可能であるが、内張り要素は、位置確認用光の形で、あるいは操作要素と連動して、使用されてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 内張り要素
2 基部
3 保護層
4 車両室内
5 構造面
6 光経路
7 光生成器
8 発光ダイオード
9 偏光ゾーン
10 光伝導体
11 接着剤
12、13 外層
14 核層
15 縁端部
16 縁取り材
17 支持体
18 エレクトロルミネセンスフィルム
19、20 プラスチックフィルム
21 ジェル状物質
基部の厚さ
保護層の厚さ
A 矢印(光の光線経路)
B 矢印(接触時圧力)
C 矢印(ジェル状物質の退避)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両、特に自動車の室内用の内張り要素(1)であって、
前記車両の室内(4)に面し発光に適した表面側に、保護層(3)を設けた基部(2)を有し、
前記保護層(3)は、弾力的に圧縮可能となるよう構成されている
ことを特徴とする内張り要素。
【請求項2】
前記保護層(3)は、半透明となるよう設計される
ことを特徴とする請求項1に記載の内張り要素。
【請求項3】
前記半透明保護層(3)は、可視スペクトル域において1〜25%、特に5〜10%の光透過性を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の内張り要素。
【請求項4】
前記基部(2)は、プレート状の光伝導体(10)として設計され、
光生成器(7)と操作上連結されている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の内張り要素。
【請求項5】
前記光伝導体(10)は、透明プラスチック、特にPMMA又はPCからなり、
前記光伝導体の前記室内に面した前記表面側で、光の出力が引き起こされる構造を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の内張り要素。
【請求項6】
前記基部(2)は、光生成器(7)として直接形成される
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の内張り要素。
【請求項7】
前記基部(2)は、エレクトロルミネセンスフィルム(18)、OLED又はpolyLEDを具備する
ことを特徴とする請求項6に記載の内張り要素。
【請求項8】
前記半透明保護層(3)は、エラストマー、特にEPDM、シリコーン、又はポリウレタンからなる
ことを特徴とする請求項2ないし7のいずれか一項に記載の内張り要素。
【請求項9】
前記エラストマーは、発泡体構造を少なくとも部分的に有する
ことを特徴とする請求項6に記載の内張り要素。
【請求項10】
前記エラストマーは、20〜70ショアA、特に約40ショアAの硬度を有する
ことを特徴とする請求項8または9に記載の内張り要素。
【請求項11】
前記保護層(3)は、プラスチックフィルム(19)を用いて前記車両の前記室内(4)に向けて覆われたジェル状物質(21)の層を具備する
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか一項に記載の内張り要素。
【請求項12】
前記ジェル状物質(21)は、0.01〜10Pa・s、特に0.1〜1Pa・sの動的粘度を有する
ことを特徴とする請求項11に記載の内張り要素。
【請求項13】
前記ジェル状物質は、2つのプラスチックフィルム(19)、(20)の間に配置される
ことを特徴とする請求項9または10に記載の内張り要素。
【請求項14】
少なくとも前記室内側の前記プラスチックフィルム(19)は、0.1〜1.5mm、特に0.5〜1.0mmの厚さを有する
ことを特徴とする請求項11ないし13のいずれか一項に記載の内張り要素。
【請求項15】
前記保護層(3)は、全体として1.0〜5.0mm、特に2.0〜3.0mmの厚さを有する
ことを特徴とする請求項1ないし14のいずれか一項に記載の内張り要素。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−132387(P2009−132387A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−6684(P2009−6684)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【分割の表示】特願2004−535086(P2004−535086)の分割
【原出願日】平成15年8月14日(2003.8.14)
【出願人】(502156098)ジョンソン・コントロールズ・ゲー・エム・ベー・ハー (142)
【Fターム(参考)】