説明

車両床下構造

【課題】排気装置周辺の温度上昇をより簡単な構成で抑制する。
【解決手段】本発明の車両床下構造10では、フロアパネル14とアンダーカバー26との間に排気装置22と対向するようにして潜熱蓄熱装置28が配置されている。従って、排気装置22内を排気ガスが通過することにより排気装置22が加熱されて、この排気装置22より熱が放出された場合でも、この排気装置22より放出された熱が潜熱蓄熱装置28によって潜熱により蓄えられる。これにより、排気装置22の周辺の温度上昇を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両床下構造に係り、特に、車体下部にアンダーカバーを備えて構成された車両床下構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両床下構造としては、次のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。例えば、特許文献1には、車両用アンダーカバー装置の例が開示されている。この特許文献1に記載の例では、車体の下部に、フロアパネル及び排気装置を下方より覆うアンダーカバーが設けられている。また、このアンダーカバーには、排気装置周辺の冷却を促進するためのスリット及びスライド式カバーが設けられている。
【特許文献1】特開平7−215074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の例では、アンダーカバーに設けられたスリットを開閉するためには、スライド式カバーを駆動させる必要がある。このため、このスライド式カバーを駆動させるための駆動機構が必要となる。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、排気装置周辺の温度上昇をより簡単な構成で抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の車両床下構造は、車体下部に設けられたフロアパネルと、前記フロアパネルよりも下方に設けられ、エンジンから延出された排気手段と、前記フロアパネルよりも下方で前記排気手段と対向するようにして配置された潜熱蓄熱手段と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の車両床下構造では、フロアパネルよりも下方で排気手段と対向するようにして潜熱蓄熱手段が配置されている。従って、排気手段内を排気ガスが通過することにより排気手段が加熱されて、この排気手段より熱が放出された場合でも、この排気手段より放出された熱が潜熱蓄熱手段によって潜熱により蓄えられる。これにより、排気手段の周辺の温度上昇を抑制できる。
【0007】
このように、請求項1に記載の車両床下構造によれば、フロアパネルよりも下方で排気手段と対向するようにして潜熱蓄熱手段を配置しただけの簡単な構成により、排気手段の周辺の温度上昇を抑制できる。
【0008】
請求項2に記載の車両床下構造は、請求項1に記載の車両床下構造において、前記排気手段よりも下方にアンダーカバーを備え、車両の走行に伴い前記フロアパネルと前記アンダーカバーとの間に空気流れを形成可能に構成されている。
【0009】
請求項2に記載の車両床下構造では、排気手段よりも下方にアンダーカバーが備えられ、車両の走行に伴いフロアパネルとアンダーカバーとの間に空気流れが形成されるように構成されている。従って、車両走行時には、フロアパネルとアンダーカバーとの間に空気流れが形成され、この空気流れにより排気手段の周辺が冷却される。これにより、車両の走行に伴って排気手段の周辺の温度上昇を抑制できる。
【0010】
請求項3に記載の車両床下構造は、請求項1又は請求項2に記載の車両床下構造において、前記潜熱蓄熱手段は、前記フロアパネルと前記排気手段との間に配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の車両床下構造では、潜熱蓄熱手段がフロアパネルと排気手段との間に配置されている。従って、排気手段からフロアパネル側へ熱が放出された場合でも、この熱が潜熱蓄熱手段によって潜熱により蓄えられる。これにより、フロアパネルの温度上昇も抑制できる。
【0012】
請求項4に記載の車両床下構造は、請求項3に記載の車両床下構造において、前記潜熱蓄熱手段は、潜熱蓄熱材と前記潜熱蓄熱材が封入された容器とを備え、前記容器は、前記フロアパネルと対向する第一の対向面と、前記排気手段と対向し前記第一の対向面よりも熱放射率の高い材料で構成された第二の対向面と、を備えて構成されたことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の車両床下構造では、潜熱蓄熱手段が、潜熱蓄熱材と、潜熱蓄熱材が封入された容器と、を備え、この容器の排気手段と対向する第二の対向面が、フロアパネルと対向する第一の対向面よりも熱放射率の高い材料で構成されている。ここで、一般に、熱放射率の高い材料は、同時に熱の吸収率も高い材料である。従って、上述の如く、排気手段と対向する第二の対向面が熱放射率の高い材料で構成されていれば、排気手段から放出される熱を第二の対向面を介して潜熱蓄熱材により素早く蓄えることができる。これにより、排気手段の周辺の温度上昇をより確実に抑制できる。
【0014】
また、フロアパネルと対向する第一の対向面は、換言すれば、第二の対向面よりも熱放射率の低い材料で構成されている。従って、潜熱蓄熱材の放熱過程においては、容器全体が同じ熱放射率の材料で構成されている場合に比して、フロアパネル側への熱の放出量を少なくできる。これにより、潜熱蓄熱材の放熱過程におけるフロアパネルの温度上昇をより確実に抑制できる。
【0015】
請求項5に記載の車両床下構造は、請求項1又は請求項2に記載の車両床下構造において、前記排気手段よりも下方にアンダーカバーを備え、前記潜熱蓄熱手段は、前記排気手段と前記アンダーカバーとの間に配置されていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の車両床下構造では、潜熱蓄熱手段が排気手段とアンダーカバーとの間に配置されている。従って、排気手段から下方、すなわち、アンダーカバー側へ放出された熱を潜熱蓄熱手段によって潜熱により蓄えることができる。
【0017】
請求項6に記載の車両床下構造は、請求項5に記載の車両床下構造において、前記フロアパネルと前記排気手段との間に配置され、前記排気手段から放出された熱を前記潜熱蓄熱手段側へ反射可能な熱反射材を備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の車両床下構造では、フロアパネルと排気手段との間に排気手段から放出された熱を潜熱蓄熱手段側へ反射可能な熱反射材が配置されている。従って、排気手段からフロアパネル側に放出された熱を熱反射材によって潜熱蓄熱手段側へ反射させることができる。これにより、フロアパネルの温度上昇を抑制できる。また、排気手段からフロアパネル側への熱の拡散を防いで潜熱蓄熱手段によって効率良く排気手段からの熱を蓄えることができる。
【0019】
請求項7に記載の車両床下構造は、請求項5に記載の車両床下構造において、前記潜熱蓄熱手段は、前記アンダーカバーに接して配置されていることを特徴とする。
【0020】
請求項7に記載の車両床下構造では、潜熱蓄熱手段がアンダーカバーに接して配置されている。従って、潜熱蓄熱手段の放熱過程においては、潜熱蓄熱手段からの熱をアンダーカバーの広い面を介して外部に放出できる。
【0021】
請求項8に記載の車両床下構造は、請求項1乃至請求項7に記載の車両床下構造において、前記排気手段よりも下方にアンダーカバーを備え、前記アンダーカバーには、放熱手段が設けられていることを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載の車両床下構造では、アンダーカバーに放熱手段が設けられている。従って、潜熱蓄熱手段からの熱をアンダーカバーの広い面を介してより効率的に外部に放出できる。
【発明の効果】
【0023】
以上詳述したように、本発明によれば、排気手段周辺の温度上昇をより簡単な構成で抑制することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[第一実施形態]
はじめに、図1,図2を参照しながら、本発明の第一実施形態について説明する。
【0025】
図1は、本発明の第一実施形態に係る車両床下構造10が適用された車両12の斜視図、図2は、図1の2−2線断面図である。なお、これらの図において、矢印Frは、車両前後方向前側、矢印Upは、車両上下方向上側、矢印Outは、車両幅方向外側をそれぞれ示している。
【0026】
図1に示されるように、本発明の第一実施形態に係る車両床下構造10は、例えば、乗用自動車等の車両12に好適に装備されるものである。この本発明の第一実施形態に係る車両床下構造10が適用された車両12では、例えば図1の2−2線断面図である図2に示されるように、車体の下部にフロアパネル14が設けられている。このフロアパネル14には、車両幅方向中央部に車両前後方向に沿ってトンネル部16が設けられている。このトンネル部16は、下方側から上方側へ凹むと共に下方側に開口する凹状に構成されている。
【0027】
なお、本実施形態において、このフロアパネル14には、トンネル部16を挟んだ両側に平坦部18が構成されている。また、この平坦部18には、車両前後方向に沿ってリインフォースメント20が設けられている。
【0028】
また、この車両12では、トンネル部16の内側に排気装置22が配置されている。この排気装置22は、トンネル部16に沿って車両前後方向に延在されている。また、この排気装置22は、その前端が車体前部に設けられたエンジンに連結され、その後端が排気ガスを排出可能な排気口として構成されている。なお、排気装置22は、特に図示しないが、複数の排気管24、触媒、マフラ、テールパイプ等を有して構成されている。
【0029】
また、この車両12では、図1,図2に示されるように、車体の下部にアンダーカバー26が設けられている。アンダーカバー26は、車両走行時における車体下部の空気抵抗を低減するためのもので、図2に示されるフロアパネル14全体を覆う平板材で構成されている。また、アンダーカバー26は、図2に示されるように、フロアパネル14と、このフロアパネル14よりも下方に設けられた排気装置22とを下方より覆うように設けられている。なお、アンダーカバー26は、融点が高く難燃性で熱放射率の高い材料、例えば、高放熱性アルミニウムにより構成されている。
【0030】
そして、このアンダーカバー26を備えて構成された車両12では、走行に伴い走行風が次の如く車体を通過する構成とされている。すなわち、走行に伴い、車体前部のフロントグリルからエンジンコンパートメントに走行風が取り込まれ、この走行風はエンジンコンパートメントを経由した後にフロアパネル14とアンダーカバー26との間に取り込まれて、その後にアンダーカバー26の後端から車両後方に排出されるように構成されている。
【0031】
また、この車両12では、例えば図1の2−2線断面図である図2に示されるように、フロアパネル14と排気装置22(排気管24)との間に潜熱蓄熱装置28が設けられている。この潜熱蓄熱装置28は、排気装置22の上側を囲む断面円弧状に構成されて排気装置22と径方向に対向するようにして配置されている。また、この潜熱蓄熱装置28は、排気装置22に沿って車両前後方向に延在されている。
【0032】
また、本実施形態において、潜熱蓄熱装置28は、中空の容器30に潜熱蓄熱材32が封入された構成とされている。なお、潜熱蓄熱材32としては、融解により潜熱として熱を蓄えることが可能な材料が好適に用いられ、例えば、酢酸ナトリウム水和物や塩化カルシウム水和物等の無機水和塩、或いは、パラフィン、各種糖アルコールなどが好適に用いられる。
【0033】
また、潜熱蓄熱装置28の容器30は、フロアパネル14と対向して配置された上側ケース30Aと、排気装置22と対向して配置された下側ケース30Bとに上下二分割された構成とされている。この上側ケース30A及び下側ケース30Bにより構成された容器30全体は、例えば、軽量化の観点からアルミニウムで構成されているが、上側ケース30Aは、熱放射率の低い材料で構成され、一方、下側ケース30Bは、上側ケース30Aよりも熱放射率の高い材料(例えば、高放熱性アルミニウム)で構成されている。
【0034】
次に、本発明の第一実施形態に係る車両床下構造10の作用について説明する。
【0035】
以上のような構成において、車両走行時には、車体前部のフロントグリルからエンジンコンパートメントに走行風が取り込まれ、この走行風はエンジンコンパートメントを経由した後にフロアパネル14とアンダーカバー26との間に取り込まれて、その後にアンダーカバー26の後端から車両後方に排出される。
【0036】
従って、フロアパネル14とアンダーカバー26との間に空気流が存在するため、排気装置22内を排気ガスが通過することにより排気装置22が加熱されて、この排気装置22より熱が放出された場合でも、この排気装置22から放出される熱は、その空気流によって冷却される。これにより、フロアパネル14や排気装置22の周辺の部品の温度上昇が抑制されて、フロアパネル14や排気装置22の周辺の部品が過熱状態となることが防止される。
【0037】
また、車両12が走行後に停止した場合でエンジンがかけられた状態でも、エンジンコンパートメント内のラジエータファンの作動によってフロアパネル14とアンダーカバー26との間の空気流が保たれる。従って、車両走行時と同様に、排気装置22から放出される熱は、その空気流によって冷却される。これにより、フロアパネル14や排気装置22の周辺の部品の温度上昇が抑制されて、フロアパネル14や排気装置22の周辺の部品が過熱状態となることが防止される。
【0038】
一方、車両12が走行後に停止した状態でエンジンも停止された状態では、エンジンコンパートメント内のラジエータファンの作動停止に伴い、フロアパネル14とアンダーカバー26との間の空気流が生じない。そのため、高温状態となった排気装置22から放射と対流で放熱が発生する。
【0039】
ところが、本実施形態では、上述の如く、排気装置22から放出された熱は、排気装置22の上方周囲に配置された潜熱蓄熱装置28に吸収される。つまり、この潜熱蓄熱装置28の中に保持された潜熱蓄熱材32に熱が伝達されて、潜熱蓄熱材32の温度が上昇し、潜熱蓄熱材32の融点に達した段階で、潜熱蓄熱装置28が潜熱蓄熱材32を融解しながら融解潜熱の形で蓄熱を行う。従って、排気装置22から放出される熱の大部分が潜熱蓄熱材32に蓄えられる。これにより、車両走行時と同様に、フロアパネル14や排気装置22の周辺の部品の温度上昇が抑制されて、フロアパネル14や排気装置22の周辺の部品が過熱状態となることが防止される。
【0040】
特に、本実施形態では、潜熱蓄熱装置28に設けられた容器30の排気装置22と対向する下側ケース30Bが熱放射率の高い材料で構成されている。ここで、一般に、熱放射率の高い材料は、同時に熱の吸収率も高い材料である。従って、上述の如く、排気装置22と対向する下側ケース30Bが熱放射率の高い材料で構成されていれば、排気装置22から放出される熱を下側ケース30Bを介して潜熱蓄熱材32により素早く蓄えることができる。これにより、排気装置22の周辺の温度上昇をより確実に抑制できる。
【0041】
また、本実施形態では、潜熱蓄熱装置28がフロアパネル14と排気装置22との間に配置されている。従って、排気装置22からフロアパネル14側へ熱が放出された場合でも、この熱を潜熱蓄熱装置28によって蓄えることができる。これにより、フロアパネル14の温度上昇もより確実に抑制できる。
【0042】
なお、上述の如く、潜熱蓄熱装置28に蓄えられた熱は、潜熱蓄熱材32の温度が低下して凝固点に達すると、この凝固に伴って放出される。このとき、車両12が走行状態にあれば、上述の如く熱を蓄えた潜熱蓄熱装置28は、フロアパネル14とアンダーカバー26との間に存在する空気流によって冷却される。このため、潜熱蓄熱装置28から放出される熱によってフロアパネル14や排気装置22の周辺の部品が過熱状態となることはない。
【0043】
また、車両12が停止した状態であっても、潜熱蓄熱材32の特性として、潜熱蓄熱材32からの熱の放出は徐々に進行する。このため、フロアパネル14や排気装置22の周辺の部品の温度上昇は穏やかで、自然の冷却でもフロアパネル14や排気装置22の周辺の部品が過熱状態となることはない。
【0044】
特に、本実施形態では、排気装置22と対向して配置された下側ケース30Bの材質が上側ケース30Aよりも熱放射率の高い材料、すなわち、例えば、高放熱性アルミニウムで構成されている。従って、潜熱蓄熱装置28からの放射熱を一般に耐熱性の高い排気装置22側へ向かわせることができる。そして、本実施形態では、排気装置22の下方のアンダーカバー26も同様に高放熱性アルミニウムで構成されている。従って、上述の如く潜熱蓄熱装置28から排気装置22側への放射熱を車両12への影響の少ない地面側へ放出できる。これにより、潜熱蓄熱材32の放熱過程における排気装置22の周辺の部品の温度上昇をより確実に抑制できる。
【0045】
また、本実施形態では、潜熱蓄熱装置28に設けられた容器30のフロアパネル14と対向する上側ケース30Aが熱放射率の低い材料で構成されている。従って、上述の如く、潜熱蓄熱材32の放熱過程においては、容器30全体が同じ熱放射率の材料で構成されている場合に比して、フロアパネル14側への熱の放出量を少なくできる。これにより、潜熱蓄熱材32の放熱過程におけるフロアパネル14の温度上昇をより確実に抑制できる。
【0046】
以上のように、本発明の第一実施形態に係る車両床下構造10によれば、フロアパネル14とアンダーカバー26との間に排気装置22と対向するようにして潜熱蓄熱装置28を配置しただけの簡単な構成により、フロアパネル14及び排気装置22の周辺の部品の温度上昇を抑制できる。
【0047】
また、上述の如く、フロアパネル14及び排気装置22の全体をアンダーカバー26で覆っても、排気装置22の放出熱によりフロアパネル14や排気装置22の周辺の部品が過熱状態となることを抑制して、しかも、アンダーカバー26により車両走行時における車体下部の空気抵抗の大幅な低減を図ることができる。
【0048】
また、本実施形態では、潜熱蓄熱装置28がアンダーカバー26に下方から覆われるように構成されている。従って、車両走行に伴い潜熱蓄熱装置28が汚れたり破損したりすることを防止できる。これにより、車両走行に伴い潜熱蓄熱装置28の蓄熱性能が低下することを防止できる。
【0049】
[第二実施形態]
次に、図3を参照しながら、本発明の第二実施形態について説明する。
【0050】
図3は、本発明の第二実施形態に係る車両床下構造40が適用された車両42の下部の断面図である。なお、この図において、矢印Upは、車両上下方向上側、矢印Outは、車両幅方向外側をそれぞれ示している。
【0051】
本発明の第一実施形態に係る車両床下構造40は、上述の本発明の第一実施形態に係る車両床下構造10に対し、次の如く構成を変更されたものである。従って、本発明の第二実施形態では、上述の第一実施形態と異なる構成について説明し、同一の構成については同一の符号を用いることとしてその説明を省略する。
【0052】
本発明の第二実施形態に係る車両床下構造40が適用された車両42では、排気装置22(排気管24)とアンダーカバー26との間に潜熱蓄熱装置48が配置されている。この潜熱蓄熱装置48は、排気装置22の下方側で排気装置22と対向する平板状に構成されている。また、この潜熱蓄熱装置48は、排気装置22に沿って車両前後方向に延在されている。さらに、潜熱蓄熱装置48は、アンダーカバー26の上面に接して配置されている。
【0053】
また、本実施形態において、潜熱蓄熱装置48は、中空の容器50に潜熱蓄熱材52が封入された構成とされている。なお、潜熱蓄熱材52としては、第一実施形態の潜熱蓄熱材32と同様に、融解により潜熱として熱を蓄えることが可能な材料が好適に用いられ、例えば、酢酸ナトリウム水和物や塩化カルシウム水和物等の無機水和塩、或いは、パラフィン、各種糖アルコールなどが好適に用いられる。
【0054】
また、この車両42では、フロアパネル14と排気装置22との間に熱反射材54が配置されている。この熱反射材54は、平滑なアルミニウム製の板材を断面円弧状にして構成されると共に、排気装置22の上側を囲むように排気装置22と径方向に対向して配置されている。そして、この構成により、熱反射材54は、排気装置22から放出された熱を潜熱蓄熱装置48側へ反射可能とされている。
【0055】
次に、本発明の第二実施形態に係る車両床下構造40の作用について説明する。
【0056】
以上のような構成において、車両走行時には、車体前部のフロントグリルからエンジンコンパートメントに走行風が取り込まれ、この走行風はエンジンコンパートメントを経由した後にフロアパネル14とアンダーカバー26との間に取り込まれて、その後にアンダーカバー26の後端から車両後方に排出される。
【0057】
従って、フロアパネル14とアンダーカバー26との間に空気流が存在するため、排気装置22内を排気ガスが通過することにより排気装置22が加熱されて、この排気装置22より熱が放出された場合でも、この排気装置22から放出される熱は、その空気流によって冷却される。これにより、フロアパネル14や排気装置22の周辺の部品の温度上昇が抑制されて、フロアパネル14や排気装置22の周辺の部品が過熱状態となることが防止される。
【0058】
また、車両42が走行後に停止した場合でエンジンがかけられた状態でも、エンジンコンパートメント内のラジエータファンの作動によってフロアパネル14とアンダーカバー26との間の空気流が保たれる。従って、車両走行時と同様に、排気装置22から放出される熱は、その空気流によって冷却される。これにより、フロアパネル14や排気装置22の周辺の部品の温度上昇が抑制されて、フロアパネル14や排気装置22の周辺の部品が過熱状態となることが防止される。
【0059】
一方、車両42が走行後に停止した状態でエンジンも停止された状態では、エンジンコンパートメント内のラジエータファンの作動停止に伴い、フロアパネル14とアンダーカバー26との間の空気流が生じない。そのため、高温状態となった排気装置22から放射と対流で放熱が発生する。
【0060】
ところが、本実施形態では、上述の如く、排気装置22から下方へ放出された熱は、この排気装置22の下方に配置された潜熱蓄熱装置48に直接的に到達される。また、排気装置22からフロアパネル14側に放出された熱は、熱反射材54によって潜熱蓄熱装置48側へ反射されて潜熱蓄熱装置48に到達される。
【0061】
そして、このようにして、潜熱蓄熱装置48に排気装置22から放出された熱が到達されると、この潜熱蓄熱装置48の中に保持された潜熱蓄熱材52に熱が伝達されて、潜熱蓄熱材52の温度が上昇し、潜熱蓄熱材52の融点に達した段階で、潜熱蓄熱装置48が潜熱蓄熱材52を融解しながら融解潜熱の形で蓄熱を行う。従って、排気装置22から放出される熱の大部分が潜熱蓄熱材52に蓄えられる。これにより、車両走行時と同様に、フロアパネル14や排気装置22の周辺の部品の温度上昇が抑制されて、フロアパネル14や排気装置22の周辺の部品が過熱状態となることが防止される。
【0062】
特に、本実施形態では、排気装置22からフロアパネル14側に放出された熱を熱反射材54によって潜熱蓄熱装置48側へ反射させることができる。これにより、フロアパネル14の温度上昇を確実に抑制できる。また、排気装置22からフロアパネル14側への熱の拡散を防いで潜熱蓄熱装置48によって効率良く排気装置22からの熱を蓄えることができる。
【0063】
なお、上述の如く、潜熱蓄熱装置48に蓄えられた熱は、潜熱蓄熱材52の温度が低下して凝固点に達すると、この凝固に伴って放出される。このとき、車両42が走行状態にあれば、上述の如く熱を蓄えた潜熱蓄熱装置48は、フロアパネル14とアンダーカバー26との間に存在する空気流によって冷却される。このため、潜熱蓄熱装置48から放出される熱によってフロアパネル14や排気装置22の周辺の部品が過熱状態となることはない。
【0064】
また、車両42が停止した状態であっても、潜熱蓄熱材52の特性として、潜熱蓄熱材52からの熱の放出は徐々に進行する。このため、フロアパネル14や排気装置22の周辺の部品の温度上昇は穏やかで、自然の冷却でもフロアパネル14や排気装置22の周辺の部品が過熱状態となることはない。
【0065】
また、本実施形態では、潜熱蓄熱装置48がアンダーカバー26に接して配置されている。従って、潜熱蓄熱装置48の放熱過程においては、潜熱蓄熱装置48からの熱をアンダーカバー26の広い面を介して外部に放出できる。
【0066】
以上のように、本発明の第二実施形態に係る車両床下構造40によれば、フロアパネル14とアンダーカバー26との間に排気装置22と対向するようにして潜熱蓄熱装置48を配置しただけの簡単な構成により、フロアパネル14及び排気装置22の周辺の部品の温度上昇を抑制できる。
【0067】
また、上述の如く、フロアパネル14及び排気装置22の全体をアンダーカバー26で覆っても、排気装置22の放出熱によりフロアパネル14や排気装置22の周辺の部品が過熱状態となることを抑制して、しかも、アンダーカバー26により車両走行時における車体下部の空気抵抗の大幅な低減を図ることができる。
【0068】
また、本実施形態では、潜熱蓄熱装置48がアンダーカバー26に下方から覆われるように構成されている。従って、車両走行に伴い潜熱蓄熱装置48が汚れたり破損したりすることを防止できる。これにより、車両走行に伴い潜熱蓄熱装置48の蓄熱性能が低下することを防止できる。
【0069】
次に、図4を参照しながら、本実施形態に係る車両床下構造10,40の変形例について説明する。
【0070】
上記各実施形態では、アンダーカバー26が平板状に構成されるように説明したが、次のようにしても良い。すなわち、図4に示されるように、アンダーカバー26の下面に車両前後方向に延びる放熱フィン56を設けても良い。このようにすると、この放熱フィン56を設けることで、アンダーカバー26の下面が凹凸状となってその表面積が増加されるので、アンダーカバー26からの放熱効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第一実施形態に係る車両床下構造が適用された車両の斜視図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】本発明の第二実施形態に係る車両床下構造が適用された車両の下部の断面図である。
【図4】本実施形態に係る車両床下構造に設けられたアンダーカバーの変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0072】
10,40 車両床下構造
14 フロアパネル
22 排気装置(排気手段)
24 排気管
26 アンダーカバー
28,48 潜熱蓄熱装置(潜熱蓄熱手段)
30,50 容器
30A 上側ケース(第一の対向面)
30B 下側ケース(第二の対向面)
32,52 潜熱蓄熱材
54 熱反射材
56 放熱フィン(放熱手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体下部に設けられたフロアパネルと、
前記フロアパネルよりも下方に設けられ、エンジンから延出された排気手段と、
前記フロアパネルよりも下方で前記排気手段と対向するようにして配置された潜熱蓄熱手段と、
を備えたことを特徴とする車両床下構造。
【請求項2】
前記排気手段よりも下方にアンダーカバーを備え、
車両の走行に伴い前記フロアパネルと前記アンダーカバーとの間に空気流れを形成可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両床下構造。
【請求項3】
前記潜熱蓄熱手段は、前記フロアパネルと前記排気手段との間に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両床下構造。
【請求項4】
前記潜熱蓄熱手段は、
潜熱蓄熱材と、
前記潜熱蓄熱材が封入された容器と、
を備え、
前記容器は、
前記フロアパネルと対向する第一の対向面と、
前記排気手段と対向し前記第一の対向面よりも熱放射率の高い材料で構成された第二の対向面と、
を備えて構成されたことを特徴とする請求項3に記載の車両床下構造。
【請求項5】
前記排気手段よりも下方にアンダーカバーを備え、
前記潜熱蓄熱手段は、前記排気手段と前記アンダーカバーとの間に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両床下構造。
【請求項6】
前記フロアパネルと前記排気手段との間に配置され、前記排気手段から放出された熱を前記潜熱蓄熱手段側へ反射可能な熱反射材を備えたことを特徴とする請求項5に記載の車両床下構造。
【請求項7】
前記潜熱蓄熱手段は、前記アンダーカバーに接して配置されていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の車両床下構造。
【請求項8】
前記排気手段よりも下方にアンダーカバーを備え、
前記アンダーカバーには、放熱手段が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の車両床下構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−1309(P2008−1309A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175198(P2006−175198)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】