説明

車両座席用アームレストの大型表皮一体成形軟質ポリウレタンフォーム

【課題】セトリングが少なく、且つクラッシングを必要とせず、低密度で特定の範囲の柔らかい触感の車両座席用の大型表皮一体成形アームレストとなるような軟質ポリウレタンフォームを提供。
【解決手段】軟質ポリウレタンフォーム3は、体積が5000〜12000ccの車両座席用アームレスト5の軟質ポリウレタンフォーム3であって、該軟質ポリウレタンフォーム3の成形密度が40〜70Kg/m3であり、且つ車両座席用アームレスト5は成形品の硬さの指標である負荷子φ50における78.4N荷重時のたわみが20〜35mmである。前記軟質ポリウレタンフォームは、例えば特定の組成の有機ポリイソシアネートと、特定のポリオキシアルキレンポリオールとを組み合わせることにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両座席用の大型表皮一体成形アームレストの軟質ポリウレタンフォーム(以下、「軟質フォーム」と略記する)に関するものである。詳しくは体積が5000ccから12000ccの車両座席用大型アームレストであって、金型内に装着された表皮内で発泡成形された表皮一体成形軟質フォームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
軟質フォームは、そのクッション性によりクッション材やバックレスト材、ヘッドレスト、アームレスト、家具、寝具、雑貨類に幅広く使用されている。軟質フォームの製造に用いられる有機ポリイソシアネートは、主にトリレンジイソシアネート(以下、「TDI」と略記する)であるが、有機ポリイソシアネートとして、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」と略記する)及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(以下、「P−MDI」と略記する)の混合物を使用したり(特開昭62−172011号公報)、又はジフェニルメタンジイソシアネート及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートをポリオール類と反応させたプレポリマー変性体(特開昭63−38369号公報)も軟質フォームの製造に使用されている。
【0003】
このTDI類を用いた軟質フォームの製造においては、TDIの高い蒸気圧のため製造作業環境の悪化が問題となる。
また、TDI類を用いたモールドフォームの発泡挙動において、最大発泡高さに対するガス抜け後の沈み込み率(以下、「セトリング」とも記す)が10%以下の軟質フォームでは、脱型時の独立気泡が多く、そのまま放置すると気泡内の反応熱によって暖められた炭酸ガスが、温度の低下とともに体積が減少し、著しい収縮が発生する。そのため脱型後、直ちに機械的に圧縮する等の操作(以下、「クラッシング」とも記す)を一回又は数回繰り返してセルの連通化を行っている。
【0004】
金型内に表皮材等を装着し、そこに軟質フォーム反応混合液を注入して成形体を得る表皮一体成形によりアームレスト等のようにモールドフォーム内に大型の金属製やプラスチック製のインサートが入る成形体を成形する場合、クラッシング操作ができないことから、TDIと比較して脱型時に連通化した気泡が多く得られやすいMDIとP−MDIの混合物が主として用いられている。セトリングは小さい方が脱型直後の製品外観は良好になるが、セトリングが小さいと脱型時の独立気泡が多く収縮が発生しやすくなり又、収縮を防ぐためにセトリングが10%を越える軟質フォームを用いた場合には、表皮一体成形で十分な形状が得られず成形性が悪化するなどの問題点がある。
【0005】
(近年のニーズ)
さらに近年はコスト低減要求が強くコストダウンのための軟質フォームの低密度化が要望され、また車両用では燃費規制に対応する軽量化のための低密度化も要望されており、このような低密度化の要望に応えるため発泡剤としての水の使用量はさらに増加の傾向にある。しかし、発泡剤に主として水を用い、有機ポリイソシアネートの組成を、主にMDI及びP−MDIとした場合、モールドフォーム製造時のセトリングと収縮のバランスをとることが極めて難しくなる。
【0006】
また車両座席用アームレストにおいては、その収納機能により背もたれとして用いられる場合もあり、特定の範囲の柔らかい触感を要求されることが多いが、先に述べた低密度化に対応するための発泡剤である水の増量により、有機ポリイソシアネートと水が反応して生成される尿素の影響で触感が硬くなり低密度と特定の範囲の柔らかい触感を両立することも極めて難しくなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、特定の組成のMDI及びP−MDI類からなる有機ポリイソシアネート成分と、特定のポリオキシアルキレンポリオールとを反応させて得られる軟質フォームであって、セトリングが少なく、且つクラッシングを必要とせず、低密度である特定の範囲の柔らかい触感の車両座席用の大型表皮一体成形アームレストとなるよう軟質フォームを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは種々検討の結果、セトリングが少なくクラッシングを必要としない車両座席用の大型表皮一体成形アームレストに適した特定の範囲の柔らかい触感の軟質フォームを見出した。
【0009】
即ち本発明の軟質フォームは、特定の体積を持った車両座席用の大型表皮一体成形アームレストにおいて、成形品の硬さの指標である負荷子φ50において78.4N荷重時のたわみが20mmから35mmであり、軟質フォームの成形密度が40kg/m3から70kg/m3である。このような軟質フォームは、最大発泡高さに対するガス抜け後の沈み込み率が10%以下であり、且つ金型内及び解放容器に注入して発泡させた際、クラッシング操作をせずに放置しても実質的に収縮が発生しないことを特徴とし、発泡剤は主に水を使用し、有機ポリイソシアネート及びポリオキシアルキレンポリオールとして、以下に示す組成のものを使用することにより得られる。
【0010】
有機ポリイソシアネート(A):
ポリメチレンポリフェニルイソシアネート30〜70重量%と、ジフェニルメタンジイソシアネート70〜30重量%の混合物であり、前記ジフェニルメタンジイソシアネート中に含まれる、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート及び2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが、5〜20重量%である有機ポリイソシアネート。
【0011】
ポリオキシアルキレンポリオール(B):
ポリオキシアルキレンポリオール(b)の含有量が、1重量%から40重量%であり、ポリオキシアルキレンポリオール(b)は、アルキレンオキサイド中のエチレンオキサイド含有量が、30重量%以上であるポリオキシアルキレンポリオール。
【発明の効果】
【0012】
軟質フォームの製造において、有機ポリイソシアネートとして主にポリメチレンポリフェニルイソシアネート類を使用し、発泡剤を水とした系において生じ易い問題点、即ち独立気泡の増加によって生じる軟質フォームの収縮、及び低密度化時の成形性と触感の悪化を特定の組成の有機ポリイソシアネートを使用し、且つ特定のポリオキシアルキレンポリオールを用いることによって解決できた。即ち物性を著しく低下させること無く成形密度が40Kg/m3から70Kg/m3でセトリングが10%以下と少なく成形性が良好で、且つクラッシング操作をしなくても収縮しない車両座席用の大型表皮一体成形アームレストに適した軟質フォームの製造が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係わる車両座席用の大型表皮一体成型アームレストの一例を示す透過説明図である。
【図2】本発明に係わる車両座席用の大型表皮一体成型アームレストのたわみを測定する方法について示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
(有機ポリイソシアネート(A))
本発明で用いられる有機ポリイソシアネート(A)のうち、P−MDIの構造を式1に示す。一般にP−MDIとは、式1に示した構造の化合物の他、その他の低活性成分、例えばイソシアヌレート化合物のような3量化物、構造を特定できないタール状物等も含まれる。また、P−MDIに2核体(式1のn=0:MDI)を含める場合もあるが、本発明におけるP−MDIとは、2核体以外の3核体以上及び低活性成分を指す(式1のn≧1)。
【0015】
【化1】

ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(n≧1)
本発明で使用される有機ポリイソシアネート(A)中のP−MDIは、30〜70重量%、であり、MDI中の2,2'−MDIと2,4’−MDIの含量が5〜20重量%である。
【0016】
(ポリオキシアルキレンポリオール(B))
一般にポリオキシアルキレンポリオール(B)は、官能基数2〜4の活性水素化合物にアルキレンオキサイドを付加重合した構造の化合物及びその混合物である。活性水素化合物としては、例えばグリセリン、トリエタノールアミン、トリメチロールプロパン、アニリン、ビスフェノールA、ジエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0017】
上記活性水素化合物に付加重合させるアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等が挙げられ、プロピレンオキサイド、及びエチレンオキサイドが多用される。
【0018】
本発明で用いられるポリオキシアルキレンポリオール(B)は、該(B)中のポリオキシアルキレンポリオール(b)の含有量が、1重量%から40重量%であり、ポリオキシアルキレンポリオール(b)は、開始剤1molに対してアルキレンオキサイドを40mol以上、好ましくは50molから90mol含有する。また、ポリオキシアルキレンポリオール(b)はアルキレンオキサイド中のエチレンオキサイド含有量が、30重量%以上であることが好ましい。
【0019】
本発明で用いられるポリオキシアルキレンポリオール(B)は、(B−I):開始剤官能基数が2であり、アルキレンオキサイド中のエチレンオキサイドの含有量が30〜50重量%であるポリオキシアルキレンポリオール、および開始剤官能基数が3であり、アルキレンオキサイド中のエチレンオキサイドの含有量が5〜20重量%であるポリオキシアルキレンポリオールであることが好ましい。
【0020】
さらに、本発明で使用するポリオキシアルキレンポリオール(B−I)の少なくとも一部が、(B−II):ポリオキシアルキレンポリオールをエチレン性不飽和単量体の重合により変性したポリマーポリオール(商品名)で置き換えることができる。エチレン性不飽和単量体は特に限定されないが、アクリロニトリル、スチレン、メタクリル酸メチル、塩化ビニリデン等であり、これらの重合体は通常直径0.1〜10μmの微粒子状でポリオキシアルキレンポリオール中に分散される。
上記ポリマーポリオールを一部併用することにより、フォームの通気性及び硬さを調整することができる。
【0021】
(発泡剤(C))
発泡剤としては水を使用するが、補助的発泡剤として二酸化炭素、窒素、空気、又は炭化水素類が併用されてもよい。
【0022】
(触媒(D))
触媒としては、トリエチレンジアミン、ビス(ジメチルアミノ)エチルエーテル等の従来公知の触媒及び末端の活性水素が水酸基で置換された触媒が使用できる。
【0023】
整泡剤としては、シリコーン系界面活性剤、例えば、東レ・ダウコーニング社製のSF−2969、及びSRX−274C、日本ユニカー社製のL−3601及びL−5309等が使用できる。架橋剤としては、従来公知の架橋剤が使用できるが、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン系の架橋剤も使用できる。
【0024】
(その他の助剤)
その他の助剤としては、難燃剤、減粘剤、老化防止剤、顔料等、公知のものがすべて使用できる。
【0025】
(軟質フォームの製造方法)
本発明の軟質フォームは、特定の組成を有する上記有機ポリイソシアネート(A)と、特定の組成の上記ポリオキシアルキレンポリオール(B−I)と(B−II)を使用し、発泡剤を水として、その他の助剤を含有する混合物(これを「レジンプレミックス」と呼ぶ)とを所定のNCOインデックスとなるように混合し、成形型内にあらかじめセットされた表皮材等に注入成形することにより、成形密度が40Kg/m3から70kg/m3で成形性が良く特定の範囲で触感の柔らかい車両座席用の大型表皮一体成形アームレストが得られる。
【0026】
本発明の軟質フォームの製造方法は特に限定されないが、通常はレジンプレミックスを有機ポリイソシアネートと混合させる方法がとられる。レジンプレミックスと有機ポリイソシアナートを混合する方法については、公知の高圧発泡機や低圧発泡機等を用いる方法がとられる。低圧発泡機の場合には2種を越える成分の混合が可能であるため、ポリオキシアルキレンポリオール成分、水成分、触媒成分、難燃剤成分、有機ポリイソシアナート成分等を別々に混合ヘッド内で混合して軟質フォームを製造することもできる。
【0027】
本発明は特に車両座席用の大型表皮一体成形アームレストの製造に用い、あらかじめ金型内にセットした表皮材内に混合液を吐出し、発泡、充填、硬化させて目的の一定形状の表皮一体成形物を得ることができる。この金型の材質は、アルミ製、鉄製の物が多く用いられるが、エポキシ樹脂等の樹脂類も発泡時の内圧に耐える強度を持つものであれば本発明に使用できる。
【0028】
表皮は特に限定されないが、布(ファブリック)又は、布(ファブリック)とスラブフォームのラミネート物(布とスラブフォームの2層構造体)、又は布(ファブリック)とスラブフォーム及びウレタン等のフィルムのラミネート物(布とスラブフォーム及びフィルムの3層構造体)が好ましく用いられ、硬化時間は通常30秒〜30分であり、型温は室温から50℃程度で製造が行われる。
【0029】
(測定方法)
本発明における車両座席用の大型表皮一体成形アームレストの成形密度と硬さの指標である負荷子φ50における78.4N荷重時のたわみ(以下、「たわみ」と略記する)の測定方法を示す。
【0030】
成形密度:JIS−K6400記載の方法に準じて測定を実施した。JIS規格での見かけ密度を指す。本特許ではフォーム内部を100×100×25mmに切り抜いた直方体のフォームサンプルを用いて測定を行った。
【0031】
たわみ:雰囲気条件、気温21±5℃、湿度10〜70%において、製品中心部分およびその近傍の複数箇所についてφ50mm円柱で圧縮速度200mm/mで78.4N荷重時のたわみ量の測定を行った。たわみ量が最大となった箇所の値を製品のたわみとした。
【実施例】
【0032】
以下、本発明について実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されない。
実施例中の部及び%はそれぞれ重量部及び重量%を表す。
【0033】
(軟質フォームの製造)
B−I:ポリオキシアルキレンポリオールとしては表1に示す原料を使用した。
【0034】
【表1】

B−II:開始剤官能基数3、開始剤1molに対してアルキレンオキサイドを88mol含有、アルキレンオキサイド中のエチレンオキサイドの量が14重量%のポリオキシアルキレンポリオール(a−3)に、不飽和結合を有する化合物でラジカル重合させてなるポリマー微粒子を分散させたポリマーポリオール。
有機ポリイソシアネートとしては表2に示す原料を使用した。
【0035】
【表2】

(製造例−1〜2及び比較製造例−1〜3)
表3に示すポリオキシアルキレンポリオール混合物を用いて、水2.5部、触媒1(ビス(ジメチルアミノ)エチルエーテル)/商品名:Minico−TMDA:活材ケミカル(株)社製)0.3部、触媒2(トリメチルアミノプロピルエタノールアミン/商品名:POLYCAT17:エアープロダクツジャパン(株)社製)4.0部、整泡剤(SF―2969:東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)社製)0.5部を添加し、混合してレジンプレミックスを調整した。
【0036】
このレジンプレミックスとイソシアネート混合物(A−1)をレジンプレミックスの活性水素との当量比(NCO/OH)0.9で混合し、直ちに円柱容器(直径150φ×200mm:材質PP製)へ注入し発泡させる。混合開始から3分後の軟質フォームのセトリング、10分後の収縮度合い及び脱型操作時の変形等から見る硬化状態を表3に示す。
【0037】
なお、脱型時硬化状態は以下の基準で評価した。
良好:混合開始から10分後に脱型操作した際に永久変形が生じない。
不足:混合開始から10分後に脱型操作した際に永久変形が生じる。
【0038】
【表3】

製造例−1〜2の軟質フォームは、セトリングが少ないにも関わらず収縮が生じず、脱型時硬化状態も良好であることより表皮一体成形に適することが判る。一方、本発明の範囲外であるポリオキシアルキレンポリオール混合物を使用した比較製造例−1の軟質フォームはセトリングが大きく脱型時硬化状態も不足しており、また比較製造例−2の軟質フォームは脱型時硬化状態が良好であるが収縮が発生しており、比較製造例−3の軟質フォームは脱型時硬化状態も不足しており収縮も発生している。比較製造例−4の軟質フォームは脱型時硬化状態が不足しており、比較製造例−5については収縮が発生していることから、何れも表皮一体成形に適さないことが判る。
【0039】
(製造例−3及び比較製造例−6〜7)
製造例−1〜2及び比較製造例−1〜5の手法と同様に、製造例−2のレジンプレミックスに表2に示すイソシアネート混合物をレジンプレミックスの活性水素との当量比(NCO/OH)1.0で混合し、直ちに円柱容器(直径150φ×200mm:材質PP製)へ注入し発泡させる。混合開始から3分後の軟質フォームのセトリング、10分後の収縮度合い及び脱型操作時の変形等から見る硬化状態を表4に示す。
硬度、引張強度、伸び、引裂強度は以下の方法で測定した。
【0040】
硬度:JIS−K6400記載のD法の方法に準じて測定を実施した。本特許ではフォーム内部を100×100×25mmに切り抜いた直方体のフォームサンプルを用いて測定を行った。
引張強度:JIS−K6400記載の方法に準じて2号形試験片にて測定を実施した。
伸び:JIS−K6400記載の方法に準じて2号形試験片にて測定を実施した。
引裂強度:JIS−K6400記載の方法に準じて4号形試験片にて測定を実施した。
【0041】
【表4】

製造例−3の軟質フォームは、成形密度が65.1Kg/m3でセトリングが3%であるにも関わらず収縮が発生しないことから、表皮一体成形に適することが判る。また本発明の範囲外であるイソシアネート組成を使用した比較製造例−6の軟質フォームは著しく機械強度が悪く、比較製造例−7は収縮が発生し、且つ脱型時の硬化が不足しているため成形が困難である。
【0042】
高圧発泡機による発泡例:
(実施例−1及び比較例−1〜3)
製造例−1と比較製造例−1〜3のレジンプレミックスに表2に示すイソシアネート混合物(A−1)をレジンプレミックスの活性水素との当量比(NCO/OH)1.0で高圧発泡機(クラウス・マファイ・ジャパン(株)社製)を用いて総吐出量12Kg/minで混合した軟質フォーム反応混合液を円柱容器(直径150φ×200mm:材質PP製)へ注入し発泡させる。
【0043】
円柱容器に得られた軟質フォームの混合開始から3分後のセトリング、10分後の収縮度合い及び脱型操作時の変形等から見る硬化状態を表5に示す。
また金型内に図1に示す表皮材及び金属製とプラスチック製のインサートを装着し、そこに前記と同条件で混合した軟質フォーム反応混合液を580g注入して得られる車両座席用の大型表皮一体成形アームレスト(体積およそ8500cc)において、軟質フォームの混合開始から1分後の脱型操作時の変形等から見る硬化状態及び金型形状に対する表皮一体成形品の形状追従性(以下、張り感と記す)及び脱型1時間後の収縮度合いと表皮材の縫い目から漏れる軟質フォームの数を表5に示す。
【0044】
尚、本実施例及び比較例で表皮一体成形アームレストの発泡成形に用いた表皮材は、布(ファブリック)とスラブフォーム及びウレタン系のフィルムのラミネート物(布とスラブフォーム及びフィルムの3層構造体)を用いた。
【0045】
【表5】

実施例−1の軟質フォームは、成形密度が65Kg/m3でセトリングが5%であるにも関わらず、表皮一体成形アームレストの成形時において脱型操作時に変形が生じず、硬化状態が良好であり又、金型形状に対する表皮一体成形品の張り感も良好であり、表皮材の縫い目から漏れる軟質フォームも全く無く、たわみ値が20mm/78.4Nであることから触感が柔らかい表皮一体成形アームレストの成形に適することが判る。また本発明の範囲外である表3に示すポリオキシアルキレンポリオール混合物を用いた比較例−1の軟質フォームは脱型時の硬化が不足しているため、表皮一体成形アームレストの脱型操作時に変形が生じ易く張り感も無い。また表皮材の縫い目から漏れる軟質フォームも5粒あり表皮一体成形に適さないことが判る。
【0046】
一方、比較例−2の軟質フォームは、セトリングが0%であり表皮一体成形アームレストの成形時において成形品に収縮が生じていることから表皮一体成形に適さないことが判る。
【0047】
比較例−3の軟質フォームについては、セトリングが21%あり、脱型時の硬化が不足しているため、表皮一体成形アームレストの脱型操作時に変形が生じ易く張り感も無い。また表皮材の縫い目から漏れる軟質フォームも10粒あり表皮一体成形に適さないことが判る。
【0048】
比較例−1から10の軟質フォームは、何れも本発明のたわみ値20mm/78.4Nより低い値となっており、触感が硬く背もたれとした時に違和感があり、表皮一体成形アームレストに適さないことが判る。
【符号の説明】
【0049】
1 表皮材
2 芯金(鉄・アルミなどの一般的な金属材)
3 軟質フォーム
4 カップホルダー(ポリプロピレンなどの一般的なプラスチック材)
5 車両座席用の大型表皮一体成型アームレスト
6 冶具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積が5000ccから12000ccの車両座席用アームレストの軟質ポリウレタンフォームであって、該軟質ポリウレタンフォームの成形密度が40kg/m3から70kg/m3であり、且つ車両座席用アームレストは成形品の硬さの指標である負荷子φ50における78.4N荷重時のたわみが20mmから35mmであることを特徴とする表皮一体成形軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
有機ポリイソシアネート(A)、ポリオキシアルキレンポリオール(B)及び発泡剤(C)を少なくとも含有する組成物を反応させて得られ、前記有機ポリイソシアネート(A)およびポリオキシアルキレンポリオール(B)が下記要件を満たす請求項1記載の表皮一体成形軟質ポリウレタンフォーム;
有機ポリイソシアネート(A)とポリオキシアルキレンポリオール(B)の反応において、ポリオキシアルキレンポリオール(B)中のポリオキシアルキレンポリオール(b)の含有量が、1重量%から40重量%である
有機ポリイソシアネート(A)が、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート30〜70重量%と、ジフェニルメタンジイソシアネート70〜30重量%の混合物である
前記ジフェニルメタンジイソシアネート中に含まれる、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート及び2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが、5〜20重量%である
ポリオキシアルキレンポリオール(b)が、開始剤1molに対してアルキレンオキサイドを40mol以上含有する。
【請求項3】
前記ポリオキシアルキレンポリオール(b)においてアルキレンオキサイド中のエチレンオキサイド含有量が、30重量%以上であることを特徴とする請求項2記載の表皮一体成形軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
前記ポリオキシアルキレンポリオール(b)は、開始剤の官能基数が2であり、アルキレンオキサイド中のエチレンオキサイド含有量が、30〜50重量%であり、且つポリオキシアルキレンポリオール中のアルキレンオキサイドの含有量が、開始剤1molに対して50molから90molであることを特徴とする、請求項2記載の表皮一体成形軟質ポリウレタンフォーム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−239516(P2012−239516A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109607(P2011−109607)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】