説明

車両後部の側部パネルの補強構造

【課題】上方への荷重を車体上部へ円滑に伝達し、クォータセンタパネルを通して周辺車体に分散する。
【解決手段】クォータセンタパネル15が設けられ、ストラットリーンフォースメントの下部がホイールハウスインナパネル1に設けたリヤショックアブソーバ取付部4に接合され、ストラットリーンフォースメントの上部がクォータインナパネル13に設けた窓部16の車両前後方向中間部に接合され、クォータセンタパネル15とストラットリーンフォースメントとが互いに接合されることで車両上下方向へ延びる閉断面部が形成され、クォータセンタパネル15が、クォータインナパネル13とクォータピラーリーンフォースメント14との接合部近傍に接合され、車両上方斜め前方側に広がる荷重分散面17を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両後部に設けられる側部パネルの補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両走行中の車体の揺動や上下動などを抑制するリヤサスペンションのリヤショックアブソーバは、リヤショックアブソーバリーンフォースメントをスポット溶接で接合して補強したホイールハウスインナパネルの上面に取付けられている。また、車両の中には、リヤショックアブソーバの取付部をさらに補強するため、ホイールハウスインナパネルの上部にストラットリーンフォースメントを設けるものが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
一方、従来の車両後部の側部パネルは、クォータインナパネル、クォータピラーリーンフォースメントを有するクォータピラーインナパネル、ホイールハウスインナパネル及びストラットリーンフォースメントなどによって構成されている。また、クォータインナパネルには窓部が形成され、ホイールハウスインナパネルの上面にはリヤショックアブソーバの取付部が設けられており、このリヤショックアブソーバの取付部は、車両前後方向に形成されるクォータインナパネルの窓部の底部の中間位置に配置されている。
そして、リヤショックアブソーバの取付部の補強を兼ねてストラットリーンフォースメントを車両上方の車体と接合する場合、ストラットリーンフォースメントがリヤショックアブソーバの取付部を介してリヤショックアブソーバからの荷重を車体上部へ伝達して分散させるために、ストラットリーンフォースメントの上部をリヤドアのリーンフォースメントへ斜め方向に繋げて配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−18087号公報
【特許文献2】特開2006−116990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の側部パネルの補強構造においては、ストラットリーンフォースメントが斜め方向に繋げられて配置されているので、リヤストラット部よりも車両前方側の空間領域が占有されてしまい、利用可能な空間が減らされることになるという問題があった。
また、リヤショックアブソーバからの荷重は、ストラットリーンフォースメントを介して斜め方向に伝達され、ベクトル分解した場合、余計な車両前後方向の荷重が増えてしまうことになるので、この余計な荷重に耐え得るような構造にする必要があった。そこで、従来の補強構造では、ストラットリーンフォースメント、リヤドアのリーンフォースメントに板厚の厚い部材を用いたりして剛性を向上させているが、部材の板厚アップは、重量増大やコスト高を招くおそれがあった。
さらに、シートベルトリトラクタを配置する場合に、空間の確保が難しくなるので、設置角度の自由度が低くなり、レイアウト上不利となるおそれがあった。リトラクタは、シートベルトの配索方向に向けるべきであり、設置角度がずれるとシートベルトの巻き取り及び引き出しに支障が出るおそれがあった。また、シートベルトの設置できる角度が決められてしまうと、配索レイアウトも決まってしまい、車両上方に設けられるシートベルトアンカの位置などに制約が生じるという問題を有していた。したがって、シートベルトを必要な角度に配索するためには、ストラットリーンフォースメントの幅を広げる必要があった。
【0006】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、リヤショックアブソーバからの上方への荷重をストラットリーンフォースメントを介して車体上部へ円滑に伝達でき、ストラットリーンフォースメントの下部からクォータセンタパネルを通して周辺の車体に分散できるとともに、クォータインナパネルの窓部の変形を防止でき、かつストラットリーンフォースメントを最短形状で形成することで軽量化を図ることが可能な車両後部の側部パネルの補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、ホイールハウスインナパネルにリヤショックアブソーバ取付部が設けられ、前記ホイールハウスインナパネル、断面ハット型形状のストラットリーンフォースメント、クォータインナパネル及びクォータピラーインナパネルもしくはクォータピラーリーンフォースメントによって囲まれた領域にクォータセンタパネルが設けられ、前記ストラットリーンフォースメントの下部が前記リヤショックアブソーバ取付部に接合されているとともに、前記ストラットリーンフォースメントの上部が前記クォータインナパネルに設けた窓部の車両前後方向中間部に接合されている車両後部の側部パネルの補強構造において、前記クォータセンタパネルと前記ストラットリーンフォースメントとが互いに接合されることによって車両上下方向へ延びる閉断面部が形成され、前記クォータセンタパネルが、前記クォータインナパネルと前記クォータピラーインナパネルもしくは前記クォータピラーリーンフォースメントとの接合部近傍に接合されることによって、少なくとも車両上方斜め前方側に向かって広がる荷重分散面を有している。
【0008】
また、本発明において、前記クォータセンタパネルは、前記ストラットリーンフォースメントの車両前方側に配置され、前記クォータセンタパネルには、シートベルトリトラクタを配置する貫通穴が設けられており、シートベルトの配索方向、前記貫通穴の対向する前後側辺の延在方向、前記ストラットリーンフォースメントの基部と前記クォータインナパネル及び前記クォータピラーインナパネルもしくは前記クォータピラーリーンフォースメントの接合部とを結ぶ線の方向が、一致するように設定されている。
【0009】
さらに、本発明において、前記側部パネルの車室内側を覆う内装トリムの取付部は、前記クォータセンタパネル及び前記ストラットリーンフォースメントに設けられている。
【0010】
そして、本発明において、前記ホイールハウスインナパネルの上部には、リヤショックアブソーバリーンフォースメントが設けられ、前記リヤショックアブソーバリーンフォースメントには、前記リヤショックアブソーバ取付部と、前記ストラットリーンフォースメントとの接合部が設けられ、前記リヤショックアブソーバリーンフォースメントにおける前記ストラットリーンフォースメントとの接合部には、上方へ向かって延びるフランジが設けられている。
【0011】
また、本発明において、前記ストラットリーンフォースメントの内側側面の下部は、車両幅方向の内側から外側へ向かいながら上方に延び、前記ストラットリーンフォースメントの内側側面の上部は、ほぼ真上に延びているとともに、前記ストラットリーンフォースメントの内側側面の上下中間部は、前記クォータセンタパネル側へ向かって湾曲しながら延びて繋がっている。
【発明の効果】
【0012】
上述の如く、本発明に係る車両後部の側部パネルの補強構造は、ホイールハウスインナパネルにリヤショックアブソーバ取付部が設けられ、前記ホイールハウスインナパネル、断面ハット型形状のストラットリーンフォースメント、クォータインナパネル及びクォータピラーインナパネルもしくはクォータピラーリーンフォースメントによって囲まれた領域にクォータセンタパネルが設けられ、前記ストラットリーンフォースメントの下部が前記リヤショックアブソーバ取付部に接合されているとともに、前記ストラットリーンフォースメントの上部が前記クォータインナパネルに設けた窓部の車両前後方向中間部に接合されているものであって、前記クォータセンタパネルと前記ストラットリーンフォースメントとが互いに接合されることによって車両上下方向へ延びる閉断面部が形成され、前記クォータセンタパネルが、前記クォータインナパネルと前記クォータピラーインナパネルもしくは前記クォータピラーリーンフォースメントとの接合部近傍に接合されることによって、少なくとも車両上方斜め前方側に向かって広がる荷重分散面を有している。
したがって、本発明の車両後部の側部パネルの補強構造によれば、クォータセンタパネル及びストラットリーンフォースメントの閉断面部からなる高剛性の支柱が得られることになり、車両後部の左右両側部を確実に補強することができる。また、本発明の補強構造においては、リヤショックアブソーバからの上方への荷重がストラットリーンフォースメントに伝達され、ストラットリーンフォースメントの下部から上部の車体に荷重伝達されるとともに、ストラットリーンフォースメントの下部からクォータセンタパネルを通して徐々に車両上方斜め前方側の荷重分散面に荷重分散されることになるので、クォータインナパネルの窓部底部前側半分及びクォータピラーインナパネルもしくはクォータピラーリーンフォースメントへ効果的に荷重分散することができる。その結果、本発明の補強構造によれば、クォータインナパネルの窓部の変形を確実に防止でき、最短形状に形成したストラットリーンフォースメントを配置することが可能となって軽量化を実現できるとともに、不要な力ベクトルの発生を低減させることができる。
【0013】
また、本発明の補強構造において、前記クォータセンタパネルは、前記ストラットリーンフォースメントの車両前方側に配置され、前記クォータセンタパネルには、シートベルトリトラクタを配置する貫通穴が設けられており、シートベルトの配索方向、前記貫通穴の対向する前後側辺の延在方向、前記ストラットリーンフォースメントの基部と前記クォータインナパネル及び前記クォータピラーインナパネルもしくは前記クォータピラーリーンフォースメントの接合部とを結ぶ線の方向が、一致するように設定されているので、クォータセンタパネルの上方へ広がる面を確保し、クォータインナパネル及びクォータピラーインナパネルもしくはクォータピラーリーンフォースメントへの荷重分散を効率良く行うことが可能となる。したがって、本発明の補強構造によれば、リトラクタの配置空間をコンパクトにできるとともに、車両前方からの荷重で車両に減速荷重が掛かったときの搭乗者の車両前方への移動荷重に起因するシートベルトの引っ張り荷重をクォータセンタパネルを介してストラットリーンフォースメントの基部にも分散させることができ、シートベルトの保持機能を効果的に発揮させることができる。
【0014】
さらに、本発明の補強構造において、前記側部パネルの車室内側を覆う内装トリムの取付部は、前記クォータセンタパネル及び前記ストラットリーンフォースメントに設けられているので、内装トリムの取付強度を確保することができる。しかも、クォータセンタパネルには、シートベルトリトラクタが高剛性で懸架されているので、リトラクタと内装トリムとの位置合わせ精度を向上させることができる。シートベルトは、内装トリムの長孔から車室内側に引き出されるようになっているので、長孔とシートベルトの位置精度向上と保持性向上を図ることができ、シートベルトと長孔との干渉を防止できる。また、内装トリムに設けられた肘掛部からの入力荷重は、クォータセンタパネルやストラットリーンフォースメントにて受けることが可能となるので、肘などの荷重による内装トリムの変形を低減させることができる。
【0015】
そして、本発明の補強構造において、前記ホイールハウスインナパネルの上部には、リヤショックアブソーバリーンフォースメントが設けられ、前記リヤショックアブソーバリーンフォースメントには、前記リヤショックアブソーバ取付部と、前記ストラットリーンフォースメントとの接合部が設けられ、前記リヤショックアブソーバリーンフォースメントにおける前記ストラットリーンフォースメントとの接合部には、上方へ向かって延びるフランジが設けられているので、リヤショックアブソーバからの上下方向の荷重をホイールハウスインナパネルの上部と共にリヤショックアブソーバリーンフォースメントが受け、ストラットリーンフォースメントに確実に伝達することができる。特に、リヤショックアブソーバリーンフォースメントの上方に延びたフランジとストラットリーンフォースメントの前後の下部側面部との接合部には、リヤショックアブソーバからの上下方向、特に下方向の荷重が剥離方向ではなく、せん断方向に掛かることになるので、当該接合部の剥がれを防止することができる。また、耐荷重性の向上によって、各部品の板厚を下げることができ、重量及びコストの低減を実現できる。
【0016】
また、本発明の補強構造において、前記ストラットリーンフォースメントの内側側面の下部は、車両幅方向の内側から外側へ向かいながら上方に延び、前記ストラットリーンフォースメントの内側側面の上部は、ほぼ真上に延びているとともに、前記ストラットリーンフォースメントの内側側面の上下中間部は、前記クォータセンタパネル側へ向かって湾曲しながら延びて繋がっているので、ストラットリーンフォースメントの下部の荷重がクォータセンタパネルにより分散され、ストラットリーンフォースメントの上部には余り荷重が掛からず、ストラットリーンフォースメントのハット型形状の断面を小さくすることができ、湾曲形状でも荷重分散を行うことができる。
したがって、本発明の補強構造によれば、ストラットリーンフォースメントの上部及び前部における空間を大きく確保でき、内装トリムに設けられる肘掛部を広く取ることや、ドリンクホルダーなどを設けることができ、車室内の居住性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る側部パネルの補強構造が適用された車両後部の車室内側から見た側面図である。
【図2】図1の車両において、ストラットリーンフォースメントを取外した状態のクォータセンタパネルを示す拡大側面図である。
【図3】図2の状態において、車両前方から見た拡大斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る補強構造において設けられるリヤショックアブソーバリーンフォースメントを示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態におけるストラットリーンフォースメント付近を一部破断にして示す斜視図である。
【図6】図3におけるA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜図6は本発明の実施形態に係る車両後部の側部パネルの補強構造を示すものである。
【0019】
本発明の実施形態に係る側部パネルの補強構造が適用される車両後部の左右両側部には、図1〜図6に示すように、車両前後方向に沿って延びる上方へ湾曲した形状のホイールハウスインナパネル1が設けられている。そして、ホイールハウスインナパネル1の上面には、車両走行中の車体の揺動や上下動などを抑制するリヤショックアブソーバ2の上端部がマウント部材3を介して取付けられている(図6参照)。
このため、ホイールハウスインナパネル1の上部には、リヤショックアブソーバ取付部4と、車両上下方向に沿って延在し、リヤショックアブソーバ2からの荷重を車両上方へ伝達する断面ハット型形状のストラットリーンフォースメント5が設けられており、このストラットリーンフォースメント5の下端部は、車両前後方向の位置で外側へほぼ直角に折り曲げられ、リヤショックアブソーバ取付部4に載置されてスポット溶接などで接合されることにより取付けられている。
【0020】
本実施形態のリヤショックアブソーバ取付部4の周辺には、ホイールハウスインナパネル1の下面にスポット溶接などで接合されて取付けられたリヤショックアブソーバパネル6が配設されており、リヤショックアブソーバパネル6の車室内側寄りには、リヤショックアブソーバ2の上端部2aを挿通する挿通孔7が穿設されている。また、リヤショックアブソーバパネル6の上面には、更なる補強のためのリヤショックアブソーバリーンフォースメント8がスポット溶接などで接合されて取付けられている。
【0021】
本実施形態のリヤショックアブソーバリーンフォースメント8は、図1〜図6に示すように、車両前後方向に所定の幅を有し、ホイールハウスインナパネル1の車両幅方向へ延びる平面形状のパネルを用いて形成されている。リヤショックアブソーバリーンフォースメント8の車室内側寄りの平坦面部には、リヤショックアブソーバ2の上端部2aを挿通する貫通孔9がリヤショックアブソーバパネル6の挿通孔7と対応して穿設されており、車室内側端部は、ホイールハウスインナパネル1に沿って下方へ屈曲されている。
一方、リヤショックアブソーバリーンフォースメント8の車両外側であって、ストラットリーンフォースメント5との接合部には、車両上方へ向かって延びるフランジ10,11が設けられており、図3及び図5に示すように、これらフランジ10,11をストラットリーンフォースメント5の下部側面部5aにスポット溶接で接合させることによって、リヤショックアブソーバリーンフォースメント8がストラットリーンフォースメント5に取付けられている。この際、ストラットリーンフォースメント5の車室内側の面には、切欠き部5bが設けられているため、当該切欠き部5bから図示しない溶接ガンを挿入することにより、フランジ10,11と下部側面部5aとの溶接作業を簡単に行うことが可能になっている。
【0022】
本実施形態のフランジ10,11は、リヤショックアブソーバリーンフォースメント8の車両前後方向で前後に設けられており、ストラットリーンフォースメント5の前後面に対応する下部側面部5aにそれぞれ重ね合わせられて接合されている。このため、フランジ10,11は、リヤショックアブソーバリーンフォースメント8の車両前後に位置する端部を上方へ向かって起立してほぼ直角に折り曲げることにより形成されている。
また、リヤショックアブソーバリーンフォースメント8の前後に位置するフランジ10,11間の基板部分には、図3〜図5に示すように、車両前後方向に沿って延びるビード12が全幅にわたって形成されており、このビード12の存在によって、フランジ10,11への上下方向の荷重に対する基板部分の曲げ変形を低減させるようになっている。本実施形態のビード12は、上方に向かって凸形状に形成されている。
【0023】
一方、本実施形態の側部パネルの補強構造では、図1〜図3に示すように、ホイールハウスインナパネル1、断面ハット型形状のストラットリーンフォースメント5、クォータインナパネル13及びクォータピラーリーンフォースメント(もしくはクォータピラーインナパネル)14によって囲まれた領域S(図2参照)にクォータセンタパネル15が設けられている。そして、ストラットリーンフォースメント5の下部は、リヤショックアブソーバ取付部4に接合されているとともに、ストラットリーンフォースメント5の上部は、クォータインナパネル13に設けた窓部16の底部16aの車両前後方向中間部に接合されている。
本実施形態のクォータセンタパネル15とストラットリーンフォースメント5とは、図1、図3及び図6に示すように、重ね合わせた部分をスポット溶接などで互いに接合することによって、クォータセンタパネル15の平面部分とストラットリーンフォースメント5のハット型断面部分とで囲まれた車両上下方向へ延びる閉断面部Cが形成されており、高剛性の支柱が得られるように構成されている。そして、この閉断面部Cは、リヤショックアブソーバリーンフォースメント8を下方から接合することにより蓋がされ、バルク構造となっており、このような構造によって、ストラットリーンフォースメント5の支柱剛性の向上が図られている。
【0024】
また、本実施形態の側部パネルの補強構造においては、クォータセンタパネル15が、スポット溶接などにより、クォータインナパネル13とクォータピラーリーンフォースメント14との接合部近傍に接合されており、クォータセンタパネル15によって、少なくとも車両上方斜め前方側に向かって広がる荷重分散面17を有している。この荷重分散面17は、リヤショックアブソーバ2からの上方への荷重をクォータインナパネル13の窓部16の底部16aの前側半分及びクォータピラーリーンフォースメント14へ分散するものであり、クォータインナパネル13の窓部16の変形を防ぎ、ストラットリーンフォースメント5を最短形状に形成することを可能にするものである。
さらに、ホイールハウスインナパネル1の上部であって、ストラットリーンフォースメント5及びリヤショックアブソーバリーンフォースメント8が設置された近傍部位には、図1〜図3に示すように、アンカブラケット18aをクォータセンタパネル15の下部に接合することによって構成されたシートベルトリトラクタ19の懸架部18が設けられている。この近傍部位は、車両前後方向のホイールハウスインナパネル1と、車両上下方向のストラットリーンフォースメント5との交点で、リヤショックアブソーバリーンフォースメント8によって剛性が高められた部位であり、リトラクタ19に対して車両前方側の斜め上方に発生するシートベルト20からの荷重を吸収し、高い剛性の車体部位に伝達するのに適している部位である。シートベルト20は、クォータピラーリーンフォースメント14の上部に設けたシートベルトブラケット21及びシートベルトアンカ22によって引き回されている。
【0025】
しかも、本実施形態のクォータセンタパネル15は、図1及び図3に示すように、ストラットリーンフォースメント5の車両前方側に配置されている。そして、クォータセンタパネル15には、図2に示すように、シートベルトリトラクタ19を配置する貫通穴23が設けられており、シートベルト20の配索方向、貫通穴23の対向する前後側辺23a,23bの延在方向、ストラットリーンフォースメント5の基部とクォータインナパネル13及びクォータピラーリーンフォースメント14の接合部とを結ぶ線Oの方向が、一致するように設定されている。これによって、クォータセンタパネル15の上方へ広がる面が確保され、リヤショックアブソーバ2からの上方への荷重をクォータインナパネル13及びクォータピラーリーンフォースメント14へ効率良く分散できるように構成されている。
また、本実施形態の補強構造が適用される側部パネルの車室内側は、図6に示すように、内装トリム24によって覆われており、この内装トリム24の取付部24aは、高剛性のクォータセンタパネル15及びストラットリーンフォースメント5に設けられ、取付強度が確保されるようになっている。このため、後述の肘掛部25からの入力荷重を効率的に受けることが可能となる。
【0026】
さらに、本実施形態のストラットリーンフォースメント5の内側側面5cの下部は、図5及び図6に示すように、車両幅方向の内側から外側へ向かいながら上方に延びている。また、ストラットリーンフォースメント5の内側側面5cの上部は、ほぼ真上に延びているとともに、上端がクォータインナパネル13側へ向かってクランク形状に屈曲され、接合されるようになっている。そして、ストラットリーンフォースメント5の内側側面5cの上下中間部は、クォータセンタパネル15側へ向かって凸状に湾曲しながら延び、上下部に繋がっている。これによって、ストラットリーンフォースメント5の下部の荷重がクォータセンタパネル15により分散され、ストラットリーンフォースメント5の上部には余り荷重が掛からず、ストラットリーンフォースメント5のハット型形状の断面を小さくすることが可能となる上、ストラットリーンフォースメント5の上部及び前部における空間を大きく確保するが可能となっている。しかも、本実施形態の側部パネルの補強構造では、内装トリム24に設けられる肘掛部25を広く取り、ドリンクホルダー26などを設けることが可能になり、空間の有効利用を図ることが可能となる。
【0027】
このように、本発明の実施形態に係る車両後部の側部パネルの補強構造においては、ホイールハウスインナパネル1の上部にリヤショックアブソーバ取付部4が設けられ、ホイールハウスインナパネル1、断面ハット型形状のストラットリーンフォースメント5、クォータインナパネル13及びクォータピラーリーンフォースメント14によって囲まれた領域Sにクォータセンタパネル15が設けられ、ストラットリーンフォースメント5の下部がリヤショックアブソーバ取付部4に接合され、ストラットリーンフォースメント5の上部がクォータインナパネル13の窓部16の底部16aの車両前後方向中間部に接合されているとともに、クォータセンタパネル15とストラットリーンフォースメント5とが互いに接合されることによって車両上下方向へ延びる閉断面部Cが形成され、クォータセンタパネル15が、クォータインナパネル13とクォータピラーリーンフォースメント14との接合部近傍に接合されることによって、車両上方斜め前方側に向かって広がる荷重分散面17を有しているため、高剛性の支柱を得ることができ、従来の補強構造よりも車両後部の左右両側部を高い剛性で補強することができる。
また、本実施形態に係る車両後部の側部パネルの補強構造においては、リヤショックアブソーバ2からの上方への荷重が、車両上方位置のホイールハウスインナパネル1、リヤショックアブソーバパネル6及びリヤショックアブソーバリーンフォースメント8に伝わり、更にストラットリーンフォースメント5の下部から車体上部のクォータインナパネル13に伝達されるとともに、クォータセンタパネル15を通して車両上方斜め前方側の荷重分散面17に分散されるため、リヤショックアブソーバ2からの上方への荷重をクォータインナパネル13の窓部16の底部16aの前側半分の部分やクォータピラーリーンフォースメント14にも分散でき、荷重分散機能を高めることができるとともに、クォータインナパネル13の窓部16の変形を確実に防止できる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【0029】
例えば、既述の実施の形態におけるホイールハウスインナパネル1のリヤショックアブソーバ取付部4は、ホイールハウスインナパネル1を2つに分割して板厚の厚いリヤショックアブソーバパネル6を設けても良い。
【符号の説明】
【0030】
1 ホイールハウスインナパネル
2 リヤショックアブソーバ
3 マウント部材
4 リヤショックアブソーバ取付部
5 ストラットリーンフォースメント
5a 下部側面部
5c 内側側面
6 リヤショックアブソーバパネル
8 リヤショックアブソーバリーンフォースメント
10,11 フランジ
12 ビード
13 クォータインナパネル
14 クォータピラーリーンフォースメント
15 クォータセンタパネル
16 窓部
17 荷重分散面
18 シートベルトリトラクタの懸架部
19 シートベルトリトラクタ
20 シートベルト
23 貫通穴
24 内装トリム
24a 内装トリムの取付部
C 閉断面部
S 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールハウスインナパネルにリヤショックアブソーバ取付部が設けられ、前記ホイールハウスインナパネル、断面ハット型形状のストラットリーンフォースメント、クォータインナパネル及びクォータピラーインナパネルもしくはクォータピラーリーンフォースメントによって囲まれた領域にクォータセンタパネルが設けられ、前記ストラットリーンフォースメントの下部が前記リヤショックアブソーバ取付部に接合されているとともに、前記ストラットリーンフォースメントの上部が前記クォータインナパネルに設けた窓部の車両前後方向中間部に接合されている車両後部の側部パネルの補強構造において、
前記クォータセンタパネルと前記ストラットリーンフォースメントとが互いに接合されることによって車両上下方向へ延びる閉断面部が形成され、前記クォータセンタパネルが、前記クォータインナパネルと前記クォータピラーインナパネルもしくは前記クォータピラーリーンフォースメントとの接合部近傍に接合されることによって、少なくとも車両上方斜め前方側に向かって広がる荷重分散面を有していることを特徴とする車両後部の側部パネルの補強構造。
【請求項2】
前記クォータセンタパネルは、前記ストラットリーンフォースメントの車両前方側に配置され、前記クォータセンタパネルには、シートベルトリトラクタを配置する貫通穴が設けられており、シートベルトの配索方向、前記貫通穴の対向する前後側辺の延在方向、前記ストラットリーンフォースメントの基部と前記クォータインナパネル及び前記クォータピラーインナパネルもしくは前記クォータピラーリーンフォースメントの接合部とを結ぶ線の方向が、一致するように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両後部の側部パネルの補強構造。
【請求項3】
前記側部パネルの車室内側を覆う内装トリムの取付部は、前記クォータセンタパネル及び前記ストラットリーンフォースメントに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両後部の側部パネルの補強構造。
【請求項4】
前記ホイールハウスインナパネルの上部には、リヤショックアブソーバリーンフォースメントが設けられ、前記リヤショックアブソーバリーンフォースメントには、前記リヤショックアブソーバ取付部と、前記ストラットリーンフォースメントとの接合部が設けられ、前記リヤショックアブソーバリーンフォースメントにおける前記ストラットリーンフォースメントとの接合部には、上方へ向かって延びるフランジが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両後部の側部パネルの補強構造。
【請求項5】
前記ストラットリーンフォースメントの内側側面の下部は、車両幅方向の内側から外側へ向かいながら上方に延び、前記ストラットリーンフォースメントの内側側面の上部は、ほぼ真上に延びているとともに、前記ストラットリーンフォースメントの内側側面の上下中間部は、前記クォータセンタパネル側へ向かって湾曲しながら延びて繋がっていることを特徴とする請求項1または4に記載の車両後部の側部パネルの補強構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−95359(P2013−95359A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242123(P2011−242123)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】